【革の知識】「シエナ」の透明感あふれる発色と経年変化は、1枚ずつのハンドメイドの着色から生まれる!

ホンモノ素材辞典vol.4

植物タンニンなめし(ヌメ革)の牛革の中でも、透明感あふれる発色と上質な質感が魅力の、タリア・トスカーナの大手タンナー・MPG社が作るシエナについて今回は解説します。

 

透明感ある発色のイタリア製傑作ヌメ革

イタリアで作られる、数々の名レザー。中でも植物タンニンなめし(ヌメ革)の牛革は、ブッテーロなど雰囲気のいい革がそろっています。さらに、そんなヌメ革の中でも、上品な質感と得も言われぬ発色、筋のいい経年変化をすることで人気が高いのが、イタリア・トスカーナの大手タンナー・MPG社が作る「シエナ」です。
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植物のタンニンで革をなめした後に加脂をして、1枚ずつハンドメイドで着色していきます。ラッカーや顔料でべったりと染色するのではなく、透明感を残した染色で、色気のあるムラ、グラデーションが現れ、どのカラーでも独自の味わいが楽しめます。またキレイに色落ちしていくエイジングの妙も計算済みなのです。

 

折り曲げる財布だから「シエナ」の特性が活きる

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適度な 張りとしなやかさのバランスが良く、革内部にまで含浸したオイルが手に吸い付くような独特の肌触りを生むのが、シエナの特徴です。

 

折り曲げた部分がやや明るく見えるのは、染みこんだオイルが繊維中を移動し、革色が変わる「プルアップ」という特性です。ですので、「薄い財布」のような、折り曲げる箇所が多い財布に向いていると言えます。
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また、この革の最大の魅力は、自然な色ムラのある色彩美と発色の良さ、グラデーションのある深い光沢。写真のように、色の濃淡が製品にいい「表情」をつけてくれています。それと引き換えに、シエナはひっかき傷やアタリと呼ばれる圧迫痕がつきやすいという弱点も持ちます。それを補ってあまりある色彩と光沢が醸し出す気品が魅力です。

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革素材は時と共に、細かな傷や、使用者の手の脂を吸い込むことで、色や風合いが変化していきます。こうしたエイジングもまた、革素材の製品を持つ楽しみ。シエナの場合、きらきらと革の表面で生まれていた光沢が、少しずつ、革の内側へと沈み込むような落ち着いたものへと変わっていきつつ、革本来が持つ艶やかさを失うことはありません。

 

■ホンモノケイカク
http://hon-mono-keikaku.com/

【革のダイアモンド】「コードバン」てよく聞くけど、ちゃんと説明できる?

ホンモノ素材辞典vol.3

今回の「素材辞典」は、古くから存在する素材ながら、人気が衰えるどころか、近年はその存在価値がどんどん増し、同時に価格も高騰している、コードバンについて解説します。

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今や入手が超困難なコードバン原皮

コードバンは、牛ではなく、馬の殿部、つまりお尻の革である、というところまではよく知られているのですが、実はコードバンは、表面の皮の部分ではありません。表皮を削って剥いた、その下にある「コードバン層」と呼ばれる、繊維部分をなめして作られたのが、コードバンなのです。

 

この「コードバン層」が含まれるのは殿部のみ。そのため、1頭からは、お尻の右側と左側から1枚ずつ、とても小さな面積しか採れません。その形が中央でくっついたものを業界では「メガネ」と呼びます。

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コードバンの滑らかさの秘密は、その繊維の並び方。コラーゲンの繊維が絡み合っている一般的な皮革素材と違って、コードバン層は繊維が整然と並んでいるのが大きな違い。表皮を剥いてその断面を露出させることで、この独特の肌触りは生まれています。

 

ちなみに競走馬であるサラブレッドにはこの「コードバン層」がほとんど存在しません。ヨーロッパで農耕や食肉のために飼育されている、特定の馬種だけから採取できます。足が短く筋肉でお尻が盛り上がった農耕馬だけが持つ特別な部位なのです。そのうえ、コードバン層が採れる農耕馬は、もともと生産数が少なかったうえ、農業の機械化が進んだ現在、その数ははっきりと減少傾向にあります。

20180208_honmono03(写真/PIXTA)

 

 

限られた作り手が生み出す革のダイアモンド

コードバンの主要なタンナーは世界で2社。アメリカのホーウィン社と、日本の新喜皮革です。ほかにもアルゼンチンやイギリスなどにもタンナーは存在しますが、生産量の面で言えば、上記の2社の寡占状態と言って良いでしょう。

 

さらに日本にはタンナーからなめした革を仕入れてアニリン染めなどの2次加工を行う職人工房、レーデルオガワなども存在します。世界屈指の加工技術とも言われ、特にアニリン染料を使った加工は、透明感のある世にも美しい発色です。

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エイジングにより、さらに魅力を増すコードバン

エイジングと呼ばれる経年変化で、革を自分色に育てる楽しみもまた、コードバンの特筆すべき魅力です。さまざまなフィニッシュ加工があるので、それぞれの変化がありますが、多くは使ううちに使用者の皮脂でさらに艶が深くなり、また色も濃くなっていきます。

 

またエイジングによって艶が出るのと同時に起こるのが、変形です。前述のようにコードバン層は繊維が整然と並んでいるため、引っ張り強度が比較的弱く、使用しているうちに内容物などのシルエットがくっきり浮き出して「アタリと呼ばれるクセ」がつき、使い手の手に馴染んだものになっていきます。靴のアッパーなどに使われる理由は、まさにその性質を生かしたもの。逆に、極端な変形を嫌うのであれば、財布などの場合はヒップポケットに入れないといった配慮も必要になるでしょう。

20180208_honmono04(写真/PIXTA)

 

また、コードバンは単層構造であるため、一般的な皮革素材のように「浮き」と呼ばれる上下層の剥離が起こらないことも特徴です。

 

一方で、エイジングが進むと傷や油分、水分に対する弱さも増していくので、皮革素材用トリートメントなどを使ったお手入れも欠かさないようにし、気長につき合っていきたいものです。

 

 

■ホンモノケイカク
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年に1度しか生産されない別注コードバン財布! 最高峰の職人技を堪能せよ!

革財布の定番ブランド・キプリスのコードバン・ハニーセル長財布が、コードバンの歴史を変えたと言われる「アニリン染め」仕様となって生まれ変わり、別注ショップ「ホン・モノ・ケイカク」で販売されている。本作は日本の職人技術を大切にするキプリスらしい逸品。年に1度だけの完全限定生産のプレミアム財布が登場だ。

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職人の高度な技術により完成したプレミアムモデル

キプリスは、最高峰の職人技術にこだわる日本屈指のレザーブランド。その代表作といえば、革新的なカード収納機構を備えた「ハニーセル長財布」だ。なかでもコードバンを使ったホン・モノ・ケイカク限定のハニーセル長財布は人気で、生産数は多くないが、毎年この時期に注文が殺到する。

 

そんな逸品がワンランク上の素材を身にまとい、進化を遂げた。外装に使うのは、コードバン専門の加工・染色工房として40年以上の歴史を持つレーデルオガワが手がける「アニリン染めコードバン」。コードバン独特の光沢を最大限に生かし、革の表面にだけ染料を入れることで美しい艶と透明感を宿す。コードバンの歴史を変えたとも言われる特殊な染色方法を実践できる工房は、同社だけだ。

 

この世界屈指の美コードバンに合わせる内装素材は、アンティーク仕上げの上質なキップスキン、姫路産のシラサギレザーだ。本作は革の染色、縫製に職人の叡智を集結させた極上品である。

 

日本の職人魂がみなぎる! 国産のハイクオリティ財布

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キプリスは、幅広いライフスタイルで訴求する革小物を手掛けるモルフォ社が展開するブランド。1995年4月、モルフォ社の創業とともにデビューしたカンパニーブランドだ。日本製にこだわり、熟練職人のハンドメイドで仕上げられる商品は、ハイクオリティの極み。本作でも縫製やコバなどのディテールで、その緻密さが見て取れる。

20171108_ashida03↑半世紀におよぶ経験を持つ職人と、その技術を継承する若い職人たち。仕事に対する真摯な姿勢でユーザーの心に響くものを創り続ける職人魂こそ、キプリスのアイデンティティだ

 

 

門外不出の特殊技術「アニリン染め」を行う染色工房・レーデルオガワ

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革の中まで染料を入れる“水染め”とも異なる、レーデルオガワの特殊技術「アニリン染め」。工程ごとにキャリア10年以上の熟練職人を配置し、職人はひとつの工程に専念する。脂と水の抜け具合、革の乾燥具合(自然乾燥)も、すべて職人の経験と感覚で判断。全作業に高い技術と経験が求められるため、同社は分業制を採用している。

20171108_ashida05↑仕上がりの善し悪しを決める重要な工程が磨き。メノウで磨くことで革に光沢を与える。その作業は、まるでバーテンダーがグラスを磨くかのように、慎重かつ滑らかな動きで行われる

 

蜂の巣形状のカードスロットなど使い手に寄り添った親切機構

20171108_ashida09↑ブラックの内装にはレッド、チョコの内装にはチャコールのシラサギレザーを採用。このレザーも外装のコードバン同様、アニリン仕上げを施しているので、透明感のある艶が上品な印象を与える

20171108_ashida06↑開閉のしやすい二方ファスナーを採用し、男性の手にしっくり馴染むサイズ感でまとめた。ハニーセルは財布を開いた際にも美しいのが特徴だ。内装のシラサギレザーは、肌目が強く繊維が締まった欧州産の牛キップを姫路の高度な技術でなめした革。ナチュラルなアンティーク仕上げで、深みのあるグラデーションと独特のムラが美しい

20171108_ashida07↑マチが広く、札入れ室には紙幣がたっぷり入る。「ハニーセル」による圧倒的なカード収納量はもちろんだが、マルチポケットやコインポケットなど充実した財布機能を備えている

20171108_ashida08↑中央部には、コイルファスナーによる開閉式のコインケースをデザイン。スムーズに開け閉めできるので会計時にもたつくことなく、容量も申し分ない。内装は汚れにくいPUレザーを使う

 

 

【主な仕様】
●サイズW205×H93×D24㎜ ●重さ210g ●カード収納枚数:21枚 ●価格 5万7600円(税込・送料込)

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