故障した家電、自分で直してみませんか? 修理サイト「iFixit」が自己責任ではあるけど、使える

電子機器は、落下や水没、または部品の劣化など様々な理由で壊れます。そんなとき、私たちユーザーは販売元や修理専門プロへ修理費を払うか、新たに購入するしか選択肢はないのでしょうか? わかりやすい修理マニュアルがあれば、自分で修理できることもあるはず。今回は無料で修理方法を教えてくれる「iFixit(アイフィックスイット)」の活用法をご紹介します。

 

「誰でも書ける、作れる」無料のリペアガイド

カリフォルニア州、サンルイスオビスポを本拠地とする「iFixit(アイフィクスイット)」は、世界の電子機器ユーザーが修理・分解情報を無料で提供するコミュニティを運営し、修理に必要な専用パーツと修理キットを販売するベンチャー企業です。最新のデジタルガジェットも分析しており、写真や動画をふんだんに使って分解レポートを公開すると同時に、修理しやすさを10段階で評価していることでも話題となっています。

 

日本のサイトからひらめいた

創業は2003年。創始者のカイル・ウィーンズ氏とルーク・ソウルズ氏が工科大学の学生時代に、落下し故障させてしまった「iBook」の修理を試み、発売元のメーカーが修理マニュアルを提供していないことに気づいたことがきっかけでした。試行錯誤の末、修理に成功したウィーンズ氏は、同様の問題を抱える人々のために「分解・修理方法の共有」と「マニュアル化」を思いついたのです。

 

また、創業初期の分解画像・修理マニュアル公開については、日本で運営されている「KODAWARISAN」というサイトからひらめきを得たそう。ウィーンズ氏は「KODAWARISAN」の運営者とも交流を続けており、2010年には表敬訪問もしています。日本とのつながりがあったとは意外ですね。

購入したモノを自分で修理できるということは長く使えるだけではなく、製品や販売企業への愛着がより深まり、環境保護にも役立つという信念を元に運営され、現在(2018年6月末時点)12か国語に翻訳されるまでに成長しました。

 

iFixitのサイトでは、修理したい製品名やモデル機種を入力すると、これまで投稿された修理や分解のマニュアルが一覧表示されます。ユーザーによって作られたガイドのなかには、文字や写真、動画による説明はもちろんのこと、難易度や、手順、所要時間も書かれており、分解や修理に慣れていない人でも失敗しにくい工夫がなされています。修理に関する疑問があれば、アンサーフォーラムに相談することも可能。

 

修理工具・パーツも揃うストア

修理ガイドページには、必要な工具と部品が一緒に表示され、オンラインストアで注文ができます。工具や部品をどこに使うかも解説されているうえ、購入した工具はサイト上のマニュアル通りの色・形状なので、作業時の間違い防止にも役立っています。修理工具の多くが生涯保証の対象で、検査・整理整頓ツールも充実しており、世界中の一般ユーザーからプロの修理業者まで、多くの人たちから高い信頼を得ています。

コミュニティメンバーとして世界の仲間と”切磋琢磨”も可能!

アカウント登録を行うと、修理分解マニュアルを投稿できるようになります。修理ガイドの書き方や写真の撮り方についてもガイドラインがあるので、要領よく、読み手にとって分かりやすいマニュアルが作成可能。他のメンバーが作ったマニュアルを修正したり加筆したりすることもできるので、世界中のメンバーたちと切磋琢磨しながら、よりレベルの高い所を目指すというのもよいかもしれません。

 

しかし、気を付けておくこともあります。日本からの修理工具やパーツの注文は、現在カルフォルニア州からの国際便のため、現時点では、商品到着まで10日以上かかること、日本においてはユーザー自らが行う分解修理は「メーカー保証対象外」のため、完全に自己責任であることに注意してください。

 

近年、テクノロジーの進化でモノを自分で修理したり、町の修理屋に頼んだりすることが難しくなっています。使っているモノが故障などを起こしたら、製品メーカーに出すほかない現在の状況。それに対して、欧米では修理屋を中心に反対の声が上がっており、「修理する権利」を求める声が高まっています。そのような背景を考えると、iFixitが画期的な存在であることが分かりますよね。同サイトは世の中を変える1つのきっかけになるかもしれません。