異色だけど便利なiPhoneケースをためしてみた! フリップケース派も安心なバッテリーケース「INVOL Ceramic Battery Flip Set」

新しいiPhoneに乗り換えるとき、いつも悩むことがあります。それは「バッテリーケース」をどうしようか、ということ。バッテリーケースとは、その名の通りモバイルバッテリーを搭載したスマホケースのことです。カバンからLightningケーブルを伸ばして接続する必要がなく、ケースから直接充電できるので、持ち運びの際の非常用バッテリーとして小回りが利きます。

 

特に「iPhone X」には、Apple純正のバッテリーケースが存在しないため、サードパーティ製のアクセサリーから選ぶ必要が出てきます。そこで、今回はフリップ型の「INVOL Ceramic Battery Flip Set for iPhone X」を紹介したいと思います。バッテリーケース選びの参考にしてください。

フリップカバー側にバッテリーがあるのはユニーク

「INVOL(インヴォル)」とは、「SoftBank SELECTION」で提供されているiPhone向けケースのオリジナルブランドです。同ブランドのケースは、デザインにこだわるだけではなく、ユニークな機能を搭載しており、実用面でも役に立つのが特徴であります。

 

今回紹介する「INVOL Ceramic Battery Flip Set for iPhone X」も、一見するとレザー製のシンプルなフリップ型ケースに思えるが、実は1500mAhのモバイルバッテリーを内蔵していて、ちょっとした充電が行えます。

 

↑カバー素材には、牛本革を使用。表面の右下端には「INVOL」のロゴマークが控えめに刻印されている↑カバー素材には、牛本革を使用。表面の右下端には「INVOL」のロゴマークが控えめに刻印されている

 

「セラミックバッテリー」は、電解質に固体であるリチウムセラミックを利用するバッテリーのことです。一般的なリチウムイオンバッテリーと比べると、折り曲げや衝撃にも強く、経年劣化による発火や液漏れを起こすリスクもありません。

 

↑カバーを開いた図。左側にあるカードポケットには、交通系ICカードなどがピッタリ収まる↑カバーを開いた図。左側にあるカードポケットには、交通系ICカードなどがピッタリ収まる

 

カバーを開くと、左側にバッテリーが備わっていて、右側にはケースに装着したiPhone Xを固定するためのゲルパッドがあります。

 

↑パッケージに同梱されているケース部分↑パッケージに同梱されているケース部分

 

まずは、iPhone Xをパッケージに同梱されているケースに装着。左側面および、上下、ボタン周りは解放されていて、四隅はガードされていますね。

 

↑パッケージに同梱されているケース部分↑ゲルパッド表面から保護フィルムを取り外してケースを装着する

 

そして、ケースごとカバーに装着しました。カメラ部分の切込みを合わせるようにするとピッタリ収まるようになっています。カバー素材は背の部分が最初は硬く、カバーが少し浮いてしまいました。しっかり閉じるには、iPhone 画面側を下にしておく必要があります。

 

↑閉じてもちょっと浮いてしまう。とは言え、素材は牛革なので、使い込んでいくうちに柔らかくなっていくだろう↑閉じてもちょっと浮いてしまう。とは言え、素材は牛革なので、使い込んでいくうちに柔らかくなっていくだろう

 

革が傷む可能性もあるので、メーカー推奨ではありませんが、反転して折りたたむこともできます。

 

↑電話するときにカバーが邪魔ならこうやって持つこともできそうだ↑電話するときにカバーが邪魔ならこうやって持つこともできそうだ

 

一般的なバッテリーケースは、端末の背面側にバッテリーを備えていることがほとんど。同製品のようにフリップカバーのカバー側にバッテリーがあるのは珍しいと思います。

 

↑筆者が使っているバッテリーケースの例。背面側にバッテリーを搭載し、カバー自体にLightningのプラグがあり、ボタンで充電のオンオフを切り替える仕組み↑筆者が使っているバッテリーケースの例。背面側にバッテリーを搭載し、カバー自体にLightningのプラグがあり、ボタンで充電のオンオフを切り替える仕組み

 

また、サードパーティ製のiPhone用バッテリーケースでは、背面側のみが覆われており、画面側、あるいは側面も、傷や衝撃から保護されないものも多いです。それを考えると、iPhone Xの画面側もしっかりと保護できる構造は、フリップ型ならではのメリットでしょう。

 

しかし、そのカバー側にバッテリーがあるため、カバーを開いたときに重みを感じるというデメリットもあります。ここはどちらを選択しても一長一短となるでしょう。

充電ケーブルが内蔵されている

実際に充電を行う際には、バッテリーの右上端にある端子を引き抜き、そのままiPhone Xに装着すればオーケー。

 

↑この部分にひっかかりがあるので、爪の先などを使って引き抜く。するとLightningケーブルが現れる↑この部分にひっかかりがあるので、爪の先などを使って引き抜く。するとLightningケーブルが現れる

 

なお、端子を引き抜いた際に、3つのLEDライトが光るので、バッテリー残量の大まかな目安を把握できます。

 

↑iPhone Xにつなげると充電が始まる。X以外のiPhoneシリーズもLightningコネクタを使用する最近のモデルなら充電可能。つまり、友人のiPhoneを充電するモバイルバッテリーとしても活躍できる↑iPhone Xにつなげると充電が始まる。X以外のiPhoneシリーズもLightningコネクタを使用する最近のモデルなら充電可能。つまり、友人のiPhoneを充電するモバイルバッテリーとしても活躍できる

 

ケース自体の充電はmicro USB経由で行います。充電時と同様、ケースからLightningケーブルを引き抜いた状態にすると、micro USB用の端子が。ここにケーブルを接続すると、充電ができます。

 

↑バッテリーケースを充電するには、この部分にmicroUSBを接続する。さらにケースのLightningケーブルをiPhoneに接続すれば、ケースを充電しながら、同時にケースからiPhoneを充電できる↑バッテリーケースを充電するには、この部分にmicroUSBを接続する。さらにケースのLightningケーブルをiPhoneに接続すれば、ケースを充電しながら、同時にケースからiPhoneを充電できる

 

同ケースのバッテリー容量は1500mAh。一般的なスマホのバッテリー容量が3000mAh前後であることを考えると、何度もiPhoneを満充電させられるほどの容量はないでしょう。実際に検証として、LEDライトが3つの状態で充電をスタートしてみた結果としては、約1時間でiPhone Xのバッテリーが25~30%分回復。この時点で、点灯しているLEDライトは既に2つに減っていました。

 

とは言え、iPhone X自体の電池持ちは良いです。通常使用なら、朝から晩まで電池がもたないというケースも少ないはず。また、ワイヤレス充電スタンドなどを自宅やオフィスに用意しておけば、充電をし忘れるという事態もあまりないでしょう。バッテリーケースの役目としては、「Apple Pay」のSuicaで電車に乗る人などが、電池切れスレスレのピンチを防ぐために予備として携帯する程度になるかと思います。

 

最後になりますが、同ケースは「ブラック」「レッド」「ブルー」の3色を展開。実売価格は、どれも1万800円(税込)となります。オンラインショップであるSoftBank SELECTIONのアクセサリーは、ソフトバンクユーザー以外でも購入できるので、気になる人はチェックしてみてください。

スマホで振り返る2017年――1年を彩った印象的なプロダクト&サービスの数々(後編)

2018年も始まり、およそ一週間後には世界最大のエレクトロニクス製品・サービスの見本市「CES 2018」が開幕されますが、ますます我々の日常生活においてテクノロジーがめまぐるしく進化していくでしょう。本記事では、そんな新たな年の進化を見逃さないために、生活必需品とまで言えるまでに普及してきたスマートフォンを始め、タブレット、スマートウォッチといった通信関連の商品・サービスに注目して、2017年がどんな1年だったのかを探っていきたいと思います。年中モバイルを追い続ける筆者が昨年で「印象的だったな」と感じた20のネタをピックアップ!本記事では前編に続き、後半の10個をご紹介します。

 

前編はこちら

 

(1)「iPad Pro」に10.5インチサイズが登場し、普及のきっかけに

iPad Proは12.9インチモデルと9.7インチモデルの2種類が展開されてきましたが、2017年に9.7インチが10.5インチモデルへと刷新されました。従来よりもベゼルが薄くなり、旧9.7インチとさほど変わらないサイズ感のまま大画面化した同モデルに人気が集中。

 

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筆者も、空港などでiPad Proを持ち歩いている人をよく見かけるようになりました。

 

(2)LINEの「Clova」が発表され、次第にスマートスピーカー祭りへ

「スマートスピーカー」の先陣を切ったのはLINEClovaでした。7月から先行体験版の受付が始まり、8月から順次発送に。10月の正式版発売では「LINE MUSIC」がセットになったお得なパックも展開されました。

 

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その後、10月にGoogleが「Google Home」関連デバイスを、翌11月にAmazonが「Alexa」とEcho関連デバイスを発売。様々なメディアにスマートスピーカーの比較記事が掲載されるようになり、その実力が次第に明らかになってきましたね。あとはAppleの「Home Pod」がいつ日本市場に参入するのかが気になりますね。

 

(3)久々のSペンにファンが歓喜した「Galaxy Note 8」リリース

サムスンは8月に、スタイラスペンを内蔵するスマホ「Galaxy Note8」を発表しました。国内で取り扱われるNoteシリーズとしては、NTTドコモが2014年10月に発売した「Galaxy Note Edge SC-01G」から3年ぶりとなる新モデルとなります。

 

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同機は、「S8/S8+」に採用された縦横18.5:9のインフィニティディスプレイを踏襲するほか、トレンドであるデュアルレンズの背面カメラを搭載。また、Sペンを使ってアニメーションを描く機能など、新機能がふんだんに追加されています。国内未発売の「Galaxy Note7」で生じた発火問題を見事乗り越え、安全性にもしっかりと配慮した同機。2017年を代表する名機の一つに仕上がりました。

 

(4)シリーズの象徴であるホームボタンを撤廃――「iPhone X」に衝撃走る

新設された社屋「Apple Park」にあるスティーブ・ジョブズ・シアターにて、スペシャルイベントが開催されました。やはり、注目はシリーズ10周年を迎えたiPhone。ホームボタンを撤廃した「iPhone X」のデザイン変更は大きな話題となりました。

 

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象徴的な変化は、ホームボタンがなくなったこと。画面下部には、ホームインジケーターバーが表示され、ここをスワイプアップすると、ホーム画面に戻ります。また従来シリーズでは、ホームボタンに指紋認証機能が搭載されていましたが、これも廃止。そのかわりTureDepthカメラシステム(インカメラ)に組み込まれた「FaceID」機能で、顔認証を利用するように変わりました。

 

(5)ついにセルラー通信機能を搭載した「Apple Watch Series 3」も話題に

iPhone Xと同日に発表された「Apple Watch Series 3」も大きな進化を遂げました。リューズにある赤丸が目印の「GPS+セルラーモデル」では、ウォッチ単体で通信を利用することが可能に。つまり、iPhoneが手元になくても、通話などの機能を利用できます。ただし、通信を利用するには大手3キャリアとの専用プランを契約する必要です。

 

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また、小さな変化ですが、気圧高度計を内蔵したことも改良点の一つ。ランニングなどの際にどのくらいの高度変化があったのかを測定できるようになりました。ちなみに、ディスプレイ内部にアンテナを忍ばせることで、従来デザインをほぼ変えずに通信機能の追加が実現されていることもポイント。

(6)Androidベースのコミュニケーションロボット「Xperia Hello!」登場

ソニーのスマートプロダクトから、コミュニケーションロボット「Xperia Hello!」が登場。瞬き、首をかしげるなどのジェスチャーによる感情表現が可能で、胸部にはタッチディスプレイが搭載されています。

 

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「ハイエクスペリア」と呼び掛けて、音声コマンドにて操作。ディスプレイをタッチする必要があることもあります。どことなくスマートスピーカーっぽいですが、あくまでもコミュニケーションロボットという扱いです。卓上に置けて扱いやすいサイズ感がポイント。そして、顔認識により、登録者を見かけると、ニュースや交通情報などをガンガン話し掛けてきます。能動的に発話できることは、同機ならではの特徴です。

 

(7)NTTドコモから2つ折りのスマホ「ZTE M」が発表される

NTTドコモが冬春モデルとして発表したZTE製のスマホ「M Z-01K」は、2つ折りにたためるディスプレイを搭載。

 

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普通のスマホとして使うときの「通常モード」、広げて1枚のディスプレイとして表示する「大画面モード」、各画面を別々に使用する「2画面モード」、同じ画面を表示する「ミラーモード」の4つを切り替えて使用できる。同機は2018年1月以降に発売予定。気になる人は年明けからチェックしておきましょう。

 

(8)トレンドはAIチップ内蔵のCPU! SIMフリーでは「HUAWEI Mate 10 Pro」が先行搭載

今年発表されたiPhoneでは、チップセットに機械学習処理を行うための「ニューラルエンジン」が組み込まれました。また、SIMフリースマホでもHUAWEIが提供するハイエンドモデル「Mate 10 Pro」がAI対応チップセットを搭載しています。

 

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こうしたチップセットの恩恵は利用者には直接的に見えづらいものですが、大きな部分では、機械学習的な処理の負荷を低減・効率化しています。それにより、どうやらレスポンスのアップや、電池持ちの向上が期待できるらしいです。

 

Mate 10 Proでは、カメラにもAI対応チップセットを上手く活用しています。具体的には、被写体を自動的に認識し、花や食べ物など、被写体に合わせた撮影モードの調整を実行可能。2018年のハイエンドモデルには、こうしたAIチップセットを活用した端末が増えるかもしれませんね。

 

(9)「Xperia XZ Premium」がMVNOでセット販売開始へ

HUAWEIを筆頭に、ASUSやモトローラなど、海外メーカーが中心を担っているSIMフリー市場。日本メーカーからは、目立った端末がしばらく登場していませんでした。そんな中、11月にソニーがXperia XZ PremiumをSIMフリーモデルとして販売すると発表。国産ハイエンドモデルの取り扱いは非常に稀なので、「おっ……」と目に留まります。

 

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しかし、複数キャリアで販売されるわけではなく、あくまでも「nuroモバイル」限定のセットプランで購入できるというものに留まりました。

 

(10)GoogleのVRプラットフォーム「Daydream」が日本上陸へ

Googleは12月、日本においてVRのプラットフォーム「Daydream」の提供を開始しました。また、Googleストアにて、VRヘッドセットの「Daydream View」も販売しています。

 

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なお、ラインアップはチャコールブラックの1色のみ。ちなみに、Daydreamをサポートしている端末は、限られており、既存の全てのスマホで利用できるわけではないので注意が必要です。NTTドコモでは、LGのV30+を購入する場合には、Daydream Viewがプレゼントされるキャンペーンも実施しています。なくなり次第終了となるので、お得に試したい人は早めに。

 

2017年を振り返り–2018年はAIの普及に注目

こうして振り返ってみると、2017年は多くのメーカーにとって「変革」が求められた1年だったのかもしれませんね。2018年はこうした変革が受け入れられて、洗練されていくのか、または新たな変化が求め続けられるのか、気になるところです。また、AIがスマートフォンやスピーカーなど、私たちの身近な場所に進出してきた1年でもありました。こちらは2018年も増々私たちの生活に深く関わってくることになるでしょう。少しずつAI任せになっていく生活は、少し怖くもありつつ、同時に楽しみでもあります。

【西田宗千佳連載】顔認証はセキュリティを超えて新しい産業を生み出す

「週刊GetNavi」Vol.61-4

↑Face ID↑Face ID

 

iPhone Xにおいて「Face ID」が導入され、顔の立体構造を使った顔認証が使われたことには大きな意味がある。一番の影響は、「立体構造を把握するセンサーの出荷量と、それを使うソフトの量が劇的に増える」ということだ。技術は使われるほど安くなり、磨かれる。タッチパネルやモーションセンサー、GPSがスマホのブレイクによって当たり前になったように、そして、指紋センサーがiPhoneでの採用以降当たり前になったように、顔認証を使う機器やソフトはどんどん増えていくだろう。

 

iPhoneのFace IDで採用された技術はアップル社の独自性が高く、他社がそのまま真似するのは簡単ではない。しかし、技術は魔法ではないので、アプローチを変えて同じような結果を再現することは十分可能である。開発に10か月程度はかかると想定しても、2018年末以降に登場する高級スマホには、iPhone Xと同じような「高度顔認証」を搭載するものが増えてくることだろう。

 

立体構造を把握する技術には、セキュリティ以外にも多くの展開が考えられる。iPhone Xの「アニ文字」という機能は、顔の表情を取り込んで、CGキャラクターに自分の表情をさせて、他人に送ることができる。これと同じような機能は、チャットソフトなどに続々と搭載されていくことだろう。今でも、Snapchatなどのアプリでは、自分の顔にヒゲやうさ耳を「盛る」ことができるが、そういったエフェクトを、より高度なレベルで施せるようになってくるのだ。現在、ビデオチャットを利用することに気が進まない人の多くは、自分の顔や表情に自信がないからではないだろうか。これは日本人には多く見られる傾向といわれる。だが、CGキャラクターを「アバター」としてコミュニケーションできるようになれば、事情は大きく変わってくるのではないだろうか。

 

スマホの使い方はだいたい決まってきた。そこに新しい変化をもたらすのは「カメラ」をセンサーとして使うことだと考えている。iPhone Xがやっているような「立体把握」は、カメラから取り込んだデータを生かすうえでは、より大きな可能性をもつものである。

 

これは別にスマホだけに限った話ではない。パーツが安くなれば、PCやテレビにも組み込むことが簡単になる。ビデオチャットをPCやテレビで使いやすくなるだろうし、同じ機構を使い、顔認識でなく「指認識」を行えば、リモコンなどの特別な機器を用意することなく、空間で指を動かして機器を操作する……といったことも十分に可能になる。

 

iPhoneという「ヒット商品」に使われることによる数のインパクトが、セキュリティだけでなく、様々な産業への変化を促すことになっていきそうだ。

 

●Vol.62-1は「ゲットナビ」2月号(12月22日発売)に掲載予定です。

 

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【西田宗千佳連載】セキュリティの担保には「二要素」が必要

「週刊GetNavi」Vol.61-3

↑Face ID↑顔認証システム「Face ID」

 

前回の記事で、「顔認証をはじめとした生体認証は、パスワードと同じ程度の強度しかない」と書いた。実際その通りで、セキュリティを担保するためには、まず「スマートフォンやPCを他人に渡さない」ことが最も重要である。他人の手に渡った時にも「守れる確率を高める」のがパスワードや生体認証の役割ではあるが、それも100%安全というものではない。

 

とはいえ、スマホやPCを他人に渡さないよう気を付けつつ、パスワードや生体認証で守れば、二重の努力で安全性が高まる。どちらかを怠るよりもはるかに安全であることは間違いない。

 

セキュリティの世界には「二要素認証」という考え方がある。これはすなわち、認証するために必要な情報を2つ用意する、というものだ。

 

例えば、ウェブサイトの認証に「IDとパスワード」だけを使うことは一要素認証だ。ID・パスワードが漏れると、自分以外でも簡単にサービスに入れてしまう。店などへの「顔パス」も一要素認証。「顔」という情報しか使っておらず、似た人が来たら通れてしまうかもしれない。

 

しかし、要素が2つになるとかなり難しくなる。実は二要素認証は、我々の生活においてもありふれたもので、決して特別なものではない。例えば、キャッシュカードで現金を引き出すのは二要素認証となる。「カードを持っている」ことと「キャッシュカードの暗証番号を知っている」ことの2つの要素が必要になるからだ。「写真入りの身分証明証を提示する」ことも二要素認証である。「身分証明書を持っている」ことと「本人を顔写真から確認できる」ことという2つの要素があるからである。

 

二要素認証とは、
・本人だけが知っていること
・本人だけが所有しているもの
・本人自身の特性
のうち、二つを同時に満たす必要があることを指すのだ。

 

前出の2つの例も、こうした原則に則っている。スマホやPCのロックも、同様にこれらのうち2つの条件を満たしていることに注目していただきたい。

 

現在、スマートフォンはどんどん「自分だけのもの」であることを前提にしはじめている。家族やパートナーであろうと、渡すこと・見ることはマナー違反になってきた。その理由は、セキュリティ上「自分しか持つことができない」ということが望ましいからだ。

 

いまやスマホは「自分のセキュリティ情報が集まる場所」であり、だからこそ紛失には十分な注意を払わなくてはならない。そして、万が一紛失した時のために、パスコード設定や生体認証の導入が必要なのだ。

 

では、iPhone Xの普及により、生体認証に求められる要素はどう変わっていくのだろうか? 次回のVol.61-4ではそのあたりを解説していこう。

 

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【西田宗千佳連載】「生体認証」のセキュリティは高くない!

「週刊GetNavi」Vol.61-2

↑Face ID↑顔認証システム「Face ID」

 

iPhone Xでは顔認証が採用された。その前からアップル製品では、指紋認証が基本だ。ほかのPCやスマホも同様で、ちょっと気が利いたものなら、指紋認証センサーが搭載されるようになっている。Windows PCに関しては、マイクロソフトが定めた「Windows Hello」という仕組みがあり、これに則ったセンサーやカメラを搭載することで、顔認証・指紋認証でWindowsにログインできるようになっている。筆者もWindows Hello対応の顔認証を日常的に使っているが、パスワードなどよりずっとすばやく簡単にログインできるので、非常に重宝している。

 

こうした、人間の顔や指紋、虹彩といった情報を使う認証方式のことを「生体認証」という。これらのものは、基本的に「自分の体についている」もので、「簡単にコピーできない」ことを前提としている。映画などでの印象から、「指紋や虹彩認証を使うのは、非常に安全性が高い、秘匿性の高いもの」という印象もあるだろう。

 

だが、それは間違いだ。

 

実際には、生体認証のセキュリティは高いものではなく、パスワードとまったく同じ強さしかない。スマホにしろPCにしろ、生体認証しか使えないシステムというものはなく、必ずパスワードなどが併用されている。生体認証は100%確実なものではないため、トラブルを回避するには、パスワードを併用せざるを得ない。結局のところ、生体認証ができなくても、パスワードを知っていればログインできてしまうのだ。

 

そもそも、生体認証も内部ではパスワードやパスコードのようなものに変換されて処理されている。簡単にいえば「システム内にパスワードが記録されており、生体認証が行われることで入力が代替される」ものだと考えたほうが良い。

 

だから開発している各社も、生体認証を「100%の精度を備えた、完全無欠のセキュリティを目指すもの」とは考えていない。メディアでは、指紋認証や顔認証を「こうやって突破した」というセキュリティ破りの記事が多数公開されているが、そのことは、あまり大きな問題ではない。写真を見せただけで認証できるような、ゆるすぎる顔認証システムはともかく、「本人以外は努力や準備をしないと突破できない認証」というレベルで十分なのだ。むしろ、「本人を確実に見間違わない」ことが大切で、アップルの顔認証であるFace IDも、そこに注力している。

 

では、本当に安全な認証とはなんなのだろう? 次回のVol.61-3以降ではそのあたりを解説していこう。

 

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【西田宗千佳連載】iPhone Xがもたらした「顔認証」新世代

「週刊GetNavi」Vol.61-1

20171205-i01(1)↑iPhone X

 

顔の立体構造の把握が認識精度と速度を両立

11月に発売されたiPhone Xは、「ホームボタン」を過去のものにした。それと同時に導入されたのが顔認証システム「Face ID」だ。発売前は「指紋認証のほうが使いやすいのでは」との懸念もあったが、それも杞憂に過ぎなかった。とにかく素早く正確なのだ。画面を見つめればすぐにロックが解除され、指紋認証よりも早い。iPhoneが自分を「顔パス」してくれるような感じで、認証があることを意識させない。過去のスマホ用顔認証とは、かなり趣の違うシステムである。

↑Face ID↑顔認証システム「Face ID」

 

多くの「顔認証システム」は、カメラでとらえた平面の画像で顔を識別する。その場合、帽子やメガネの有無、髪型の違い、ヒゲの濃さなど、いろいろな条件で「本人かどうか」の判定が難しくなる場合がある。そこで条件をゆるくすると誤認識が増え、厳しくすると使い勝手が落ちる。精度は認識速度に比例し、安全性を担保しようとするほど、動作が遅くなってしまう。

 

一方でFace IDは、赤外線センサーと画像センサーを組み合わせた「True Depthカメラ」を使い、「顔の立体構造」を把握し、それを元に認証する。だから、メガネや髪型、ヒゲの有無、化粧など、表面的な部分に多少違いがあっても、顔の形の特徴が変わっていなければ「本人」と認識する。立体情報なので分析に時間がかかりそうに思えるが、むしろ「本人を特定するための特徴的な手がかり」が増えるので、認識速度は上げやすい。だから、Face IDは指紋認証と同等以上の使い勝手を実現できたのだ。

 

顔を立体として認識するシステムは、これまでスマホには大規模に導入された例がなく、iPhone Xがもっとも先進的だ。だが、こうした取り組みはIT機器全体では初めてではない。業務用のものでは存在したし、マイクロソフトがWindows 10用の認証システムとして提供している「Windows Hello」の顔認証システムも、赤外線センサーを併用したカメラが使用されている。そのため、マイクロソフトの「Surfaceシリーズ」などのWindows Hello搭載PCは、素早くて快適な顔認証を実現している。

 

ただし、Windows HelloとFace IDにも違いはある。Windows Helloは認証に特化しており、顔を完全な立体データとしてまでは把握していない。認識データは変わらないため、長い間使わないうちに太ってしまったり、あまりに髪型が変わったりすると、再認識が必要になることもある。一方でFace IDは、顔をかなりの精度で立体データとして認識したうえで、認識のたびに学習を続け、常に「最新のその人の風貌」で認識率が高まるようにするという工夫がされている。

 

どちらにしろ、こうした「立体構造を使った顔認識」自体は望ましい技術であり、今後さらに普及していくだろう。

 

だが、顔認識の普及は「セキュリティの向上」を意味しているわけではない。むしろ顔認識とセキュリティの高さにはなんの関係もない、と考えるべきだ。それはなぜなのか? では、セキュリティ向上にはなにが重要なのか? 顔認証に今後どのような広がりがあるのか? そのあたりは次回のVol.61-2以降で解説する。

 

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iPhone Xの「気になるとこ」超要約! Face ID、サイズ感、ポートレート撮影が丸わかり

iPhone10周年の節目に登場した「iPhone X」――。来たる11月3日に、ついに発売を迎えます。ホームボタンが廃止され、全面に広がる有機ELディスプレイを新搭載。使い慣れた「iPhone」とは異なる挑戦的な姿勢に、多くの人が興味を持っていることでしょう。

 

今回は、発売前の実機を手にする機会を得たので、数ある特徴の中でもiPhone Xの独自性が高いインカメラ――「TrueDepthカメラ」に焦点を当て「ポートレート撮影」や、特に気になる顔認証機能「Face ID」をじっくり検証してみました。

 

【気になるとこ1】「Face ID」の動作はスムーズ?

とにもかくにも、まずは「Face ID」について。こちらはTrueDepthカメラによって、ユーザーの顔を認識し、画面ロック解除やコンテンツ購入時の認証に利用できる機能です。iPhone Xでは、ホームボタンが廃止されていることもあり、「Face ID」の使い勝手は、そのまま端末の使い勝手に直結してくるところ。

 

登録方法は、従来の指紋認証機能「Touch ID」の登録と似ています。まずは、「設定」アプリの「Face IDとパスコード」から「Face ID」をタップ。その後は、画面表示の指示に従って、顔の情報を登録していきましょう。カメラを見ながら首をぐるっと回して、立体的な情報を覚えさせます。登録時には、何とも言えない「未来感」が伝わってきました。

 

↑Face IDの登録画面。画面を見ながら顔の角度を変えていく。一周分、円が緑色になるようにゆっくりと首を回そう。赤外線カメラとドットプロジェクタにより立体的な情報が登録される↑Face IDの登録画面。画面を見ながら顔の角度を変えていく。一周分、円が緑色になるようにゆっくりと首を回そう。赤外線カメラとドットプロジェクタにより立体的な情報が登録される

 

実際の使い心地は、非常に良好でした。iPhone Xは「サイドボタンを押す」または「画面をタップする」とスリープ状態が解除されるのですが、次の瞬間には画面ロックが解除されています。そのまま画面下端をスワイプアップすれば、ホーム画面が起動。先述の通り、鍵のアイコンが開錠される表示はありますが、実際の操作ではその表示を待つ必要はありません。スリープ復帰後、すぐにスワイプアップすればOK。流れるような操作が実現します。

 

↑ロック画面では、上部に鍵のアイコンが表示されている。顔を認識させると、ここが「開錠」された状態になり、ロックが解除されたことがわかる↑ロック画面では、上部に鍵のアイコンが表示されている。顔を認識させると、ここが「開錠」された状態になり、ロックが解除されたことがわかる

 

またFace IDでは、顔の正面だけでなく、立体的な情報を照らし合わせているので、iPhone Xを顔の正面まで持ちあげる必要はありません。普段通りの姿勢でも、問題なく使用できます。「寝ている間にロックを解除されやすいのでは?」と疑問に思う人も多いでしょうが、その心配は不要。設定項目で、「Face IDを使用するには注視が必要」をオンにしておけば、iPhoneを見たときのみに認証されるようになります。なお、同項目はデフォルトで有効になっています。

 

【気になるとこ2】結局ちゃんと認証できるの?

他社スマホの顔認証機能というと、機種によっては、眼鏡の有無でも認証できなくなることがあります。では、iPhone XのFace IDではどうなのでしょうか? みなさんが実際気になるのはここでしょう。今回は様々な条件で検証を行い、使い勝手を調べてみました。なおFace IDの登録は、メガネや帽子などを一切身に着けずに行っています。

 

(1)暗所でも解除できるのか? → 〇

↑写真は顔認証時のイメージを「ポートレート」で撮影したもの(以下同)。まずは光の入らない廊下にて。薄暗い場所でも問題なく認証できた↑写真は顔認証時のイメージを「ポートレート」で撮影したもの(以下同)。まずは光の入らない廊下にて。薄暗い場所でも問題なく認証できた

 

(2)帽子をかぶると? → 〇

↑帽子をかぶって検証。こちらも問題なくクリア↑帽子をかぶって検証。こちらも問題なくクリア

 

(3)マフラーを深く巻くと? → ×

↑顔が隠れるくらいにマフラーを巻いた状態では、Face IDでは認証できなかった。この場合はパスコードを入力して画面ロックを解除することに↑顔が隠れるくらいにマフラーを巻いた状態では、Face IDでは認証できなかった。この場合はパスコードを入力して画面ロックを解除することに

 

(4)眼鏡をかけても大丈夫か? → 〇

↑眼鏡をかけた状態で検証。問題なく認証された↑眼鏡をかけた状態で検証。問題なく認証された

 

(5)サングラスではどうか? → 〇

↑目が完全に隠れるサングラスで。意外にこれは認証された↑目が完全に隠れるサングラスで。意外にこれは認証された

 

(6)マスクをつける場合は? → ×

↑一般的なマスクを装着。顔の大部分が隠れることもあり、Face IDは使えなかった↑一般的なマスクを装着。顔の大部分が隠れることもあり、Face IDは使えなかった

 

(7)顔の輪郭が隠れたらどうか? → 〇

↑プチ仮装して検証。輪郭は完全に隠れているが、スムーズに認証された↑プチ仮装して検証。輪郭は完全に隠れているが、スムーズに認証された

 

どうやら口周りが隠れていると、Face IDではうまく認証できないことが分かりました。マスクやマフラーで口元を隠すことが多い人は、パスコードを4桁に変更しておくと良いかもしれません。一方、帽子や髪型などが変わっても、メガネ・サングラスの装着の有無でも、認証結果はさほど影響を受けませんでした。日々の生活の大部分で、快適に利用できることが期待されます。

 

想像していた以上の高度な認識率。実機に触る前に抱いていた、Face IDに対するほのかな不信感はいっさい消えてしまいました。指紋認証から顔認証への変更は大きな変化ではありますが、従来のiPhoneユーザーでも違和感なく移行できるでしょう。

 

【気になるとこ3】8/8 Plusと比べてサイズは大きいの? 小さいの?

 

↑iPhone X(シルバー)。側面にはステンレススティールを採用。前面・背面はガラスとなっており、ワイヤレス充電に対応↑iPhone X(シルバー)。側面にはステンレススティールを採用。前面・背面はガラスとなっており、ワイヤレス充電に対応

 

Face IDの実力は堪能して頂いたと思いますが、せっかく実機が手元にあるのでその他の気になる点にも少しだけ触れたいと思います。iPhone Xと言えば、ご存知の通り凹型のディスプレイが特徴的。サイズは5.8インチであり、iPhone 8と8 Plusの間くらい。シリーズ初となる有機ELディスプレイを採用していて、コーナーに沿って曲線的なエッジを実現しています。視野角も非常に広いのが特徴です。

 

↑左からiPhone 8、iPhone 8 Plus、iPhone X。画面はXが最も縦に長い↑左からiPhone 8、iPhone 8 Plus、iPhone X。画面はXが最も縦に長い

 

解像度は、2436×1125ピクセルで、458ppi。従来のiPhoneよりも高精細なディスプレイは「Super Retina HD Display」と呼称されます。HDRコンテンツを視聴できることもポイントです。

 

↑静止画を表示してみた↑静止画を表示してみた

 

【気になるとこ4】「TrueDepthカメラ」って何がすごいの?

上部の「凹」部分に位置するのが「TrueDepthカメラ」。冒頭ではインカメラと紹介しましたが、正確にはフロントカメラのほか、赤外線カメラ、投光イルミネータ、近接センサー、環境光センサー、ドットプロジェクタなどが集まったカメラシステムです。iPhone X独自の機能で、Face IDと同じく注目度の高いカメラのすごさをサクっと解説します。

 

iPhone Xでは、「ポートレート」撮影が背面カメラだけではなく、前面のTrurDepthカメラでも使用可能となるのがポイント。なお、「ポートレート」はiPhone 7 Plusで初搭載された撮影モードで、背景をぼかす「被写界深度エフェクト」により、被写体を際立たせられます。

 

↑iPhone Xを使って自撮りでポートレート撮影。被写界深度エフェクトにより背景がぼけている↑iPhone Xを使って自撮りでポートレート撮影。被写界深度エフェクトにより背景がぼけている

 

注目したいのは「ポートレートライティング」機能。プロのカメラマンに撮ってもらったかのような照明効果を追加できます。iPhone 8 Plusの背面カメラ、およびiPhone Xの背面・前面カメラで使用可能です。

 

↑撮影時、または写真の編集時に照明のエフェクトを選択できる。背面カメラでも同様の感覚で使用可能だ↑撮影時、または写真の編集時に照明のエフェクトを選択できる。背面カメラでも同様の感覚で使用可能だ

 

背面カメラでは、自分のポートレートを撮影するのに、人に頼まなければいけませんでした。でも、人に撮ってもらうのが苦手な人も多いはず。前面カメラなら、自分の思うままに撮影可能。この点は、ほかのiPhoneにはない魅力の一つです。

 

次世代機が誕生するたび、未体験の新機能を打ち出してきたiPhoneですが、iPhone Xが搭載するFace IDや独自のポートレート機能は、不安を一切感じさせない確かな使い勝手と機能性を与えてくれるでしょう。