M2 Extremeは48コアCPU? 次期Mac Proの予測スペックがとんでもない

米アップルの次期Mac Proで選択可能なプロセッサ「M2 Extreme」は48コアCPU、160コアGPU、384GB RAMの搭載に対応するとの情報を、海外テックサイトのMacworldが伝えています。

↑Hadrian/Shutterstock.comより

 

さまざまなMacがアップル独自開発の「MXチップ(Xは数字)」に切り替わる中、いまだに米インテルのプロセッサを搭載しているMac Pro。一方で今年3月に発表されたデスクトップ向けパソコン「Mac Studio」で選択可能な「M1 Ultra」は、20コアCPU、最大64コアGPU、最大128GB RAMの搭載が可能というスペックでした。

 

Macworldの報告によれば、来年にはM2 Extremeがリリースされ、次期Mac Proにて選択可能になるとのこと。また同サイトは、その他の未発表Macに搭載されるであろうM2シリーズのスペックも予測しています。

 

M2 Pro:最大10コアCPU、最大20コアGPU、最大48GB RAM
M2 Max:最大10コアCPU、最大40コアGPU、最大96GB RAM
M2 Ultra:最大24コアCPU、最大80コアGPU、最大192GB RAM

 

さらに最近の報道では、「iPhone 15 Pro」の「A17」にさきがけて、M2プロセッサに先進の3nmプロセスが導入される、との報道も登場しています。これらの情報が正しければ、M2 Extremeを搭載した次期Mac Proは圧倒的な性能と省電力さを実現した、まさに次世代のワークステーションとして登場するのかもしれません。

 

Source: Macworld via 9to5Mac

次期iPadやMacはイベント発表なし、iPhone 15はTouch ID採用せず?

米アップルから近日中のリリースが期待されている新型iPad ProやMacはイベントでは発表されず、また来年の「iPhone 15(仮称)」では画面下指紋認証(Touch ID)が採用されないことを、ブルームバーグのMark Gurman記者が報じています。

↑アップル

 

アップルによる10月のリリースが期待されているプロダクトとしては、次期iPad ProやMacBook Pro、Mac mini、Apple TVなど。次期iPad ProやMacBook Pro、Mac miniでは「M2」チップの搭載、次期Apple TVは「A14」チップの搭載とRAM容量の増加が期待されています。

 

しかし今回の報道によれば、これらの製品はイベントではなく、プレスリリースやメディアブリーフィング、アップルオンラインストアの更新などでの発表になるそうです。

 

iPhone 15シリーズでは、一部のAndroidスマートフォンのように画面をタッチするTouch IDにより、ロック解除や支払いができるシステムの採用が期待されています。今回の報道によれば、アップルは引き続き同システムのテストを続けているものの、iPhone 15シリーズでの採用はないようです。

 

さらに報道では、アップルがスマートスピーカー「HomePod」の睡眠トラッキング機能をテストした、とも報じています。しかし、同機能の一般向けの提供はおそらくないとのこと。アップルがHomePodにて今後どんな展開を検討しているのかも、気になるところです。

 

Source: Bloomberg via MacRumors

Mac版ZoomでOSを乗っ取れる脆弱性が発覚! 速やかなアップデートがおすすめ

ビデオ会議アプリのZoomは日本を含む全世界で広く使われていますが、そのmacOS版にハッカーがroot権限(なんでもできる権限)でアクセスし、OS全体の制御を乗っ取れる脆弱性が見つかったと報告されています。しかも、この脆弱性はまだ完全に修正されていないそうです。

↑Zoomに脆弱性があることが発覚

 

これは元NSA(米国家安全保障局)のMacセキュリティ専門家Patrick Wardle氏が、世界最大のセキュリティ国際会議「DEFCON」にてプレゼンテーションしたもの。すでに関連バグのいくつかはZoom社が修正したものの、まだ対応されてない脆弱性が明かされた格好です。

 

Wardle氏によれば、この脆弱性はZoomアプリのインストーラーを対象としているそうです。Zoomをインストールまたはアンインストールするには特別な権限が必要(そのため、ユーザーがパスワードを入力して許可する)ですが、自動更新機能がこの特別権限をバックグラウンドで実行し続けることを発見しました。

 

つまり、ユーザーがインストーラーに特別な権限を与えてしまえば、後は見えないところで、その権限を使い続けるというわけです。とはいえ、これはZoom社がアップデートを配信するたびに、アプリを更新するため必要な権限です。そのパッケージが同社の暗号署名付きであると確認してからアップデータ(アップデート機能)を実行する分には、何の問題もありません。

 

ところが、この暗号チェックにバグがあり、ハッカーがアップデータを騙して、悪意あるファイルをZoomの署名付きだと思い込ませることができました。そのため、ハッカーがあらゆる種類のマルウェアを送り込んだ上に、アップデータに権限を昇格させて実行できてしまったわけです。

 

この権限昇格攻撃により、ハッカーはMac上でrootまたはスーパーユーザー(最も強い権限を持つアカウント)権限を得ることができたそうです。理論的には、Mac上のあらゆるファイルを追加、削除、変更することも可能でした。

 

昨年12月、Wardle氏はこの脆弱性をZoom社に知らせたところ、修正プログラムを発行したとのこと。が、この修正にも別のバグが含まれており、まだ悪用される危険が残っていたそうです。そのため第2のバグとコードの修正方法もZoom社に報告したものの、半年以上も対応がなかったので一般公開に踏み切ったと語られています。

 

このバグはMac版Zoomアプリの最新版でも残っているものの、Wardle氏は修正するのは非常に簡単であり、これを公にしたことで同社がすぐ対処するよう「歯車を動かす」のを期待していると語っています。

 

これを受けてZoom社は「わが社はmacOS用のZoom自動アップデータに新たに報告された脆弱性を認識しており、その対処に真摯に取り組んでいます」との声明を出しました。その後、実際にmacOSアプリのバージョン5.7.3~5.11.3にはOSのルート権限を取得できる脆弱性があったと認め、いま配布中のバージョン5.11.4では修正されているようです。

 

ともあれWardle氏の呼びかけが届いたことに、胸をなで下ろしたいところです。以前のバージョンを使っている方は、速やかにアップデートをお勧めします。

 

Source:The Verge

MacでiPhoneやiPadアプリが動く! すごく簡単になりました

アップルが独自開発したM1やM2チップなど「Appleシリコン」を搭載したMacは、実は一部のiPhoneやiPadアプリを動かすことができます。ただ、2020年末から可能ではあったものの、当時は特殊なMacアプリを使うなどと手間がかかり、それに見合うだけの実用性があるとも思えませんでした。

↑iOS/iPadOSアプリをMacで利用するのが簡単になりました

 

それから約2年が経ち、より簡単になったということで、米AppleInsiderが「最新のmacOS Monterey+AppleシリコンMacでiOSアプリを動かす」ガイドを公開しています。

 

まずMacのApp Storeの左下にある自分の名前をクリックし、そこで「iPhoneおよびiPad App」を選びます。そこには過去に購入したiOSやiPadOSアプリが並んでいますので、右下にあるiCloudダウンロードのアイコンをクリックすればMacでアプリを動かせます。

↑Image:AppleInsider

 

ただし、条件がいくつかあります。1つは、そのアプリをiPhoneやiPad上で購入済みであること。Mac側のApp Storeで新たに買うことはできず、先にアップルのモバイル端末で買っておく必要があります。

 

もう1つは、「現在お使いのApple IDで買っている」ことです。違うApple IDで買ったアプリは表示されません。

 

最後に、「ファミリー共有」を設定してる場合、家族が購入したアプリを入手するには、右上のドロップダウンメニューからユーザーを切り替える必要があります。

 

こうしてMacのApp StoreからダウンロードしたiOSアプリは、Macアプリと同じように動かすことができます。もし元々がiOSアプリだと知らなければ、Mac専用アプリではないと気づかないほど自然に見えます。

↑Image:AppleInsider

 

ただし、あくまでiPhone/iPadアプリとして振る舞うため、画面いっぱいに表示されるわけではありません。が、普通のMacアプリと同じくウィンドウを広げたり最大化したりもでき、特に操作に困ることはないはず。以前は狭いウインドウのまま、iPhoneやiPadのようにタッチ操作しか想定せずで、ほとんど何も出来ないこともありましたが、現在ではかなり改善されています。

 

もっとも、すべてのアプリが動くわけではありません。なぜならアプリ開発者が「iOS/iPadOSアプリをMacで動かしてもいい」と明示的にオプトイン(同意)する必要があるためです。

 

ハイテク大手の場合はオプトインしていない場合が多く、お気に入りのアプリが動かないことも珍しくないでしょう。想定していないMacでのバグまで責任が取れない、あるいはMac版があればそちらをどうぞ、ということでしょう。

 

とはいえ、Macに乏しいカジュアルゲームを補充したり、またMacネイティブ版がないメディアプレイヤーのiOS版を使ったり、いろいろと便利になるはず。別に追加のお金はかからないので、チャレンジしてみてもよさそうです。

Source:AppleInsider

M2搭載13インチMacBook Pro、約50万円も高いMac Proベースモデルより高速だと判明!

M2チップを搭載した新型の13インチMacBook Proが、約50万円は高いMac Proのベースモデル(最小限構成)よりも高速になりそうなことが、ベンチマーク結果から明らかとなりました。

 

この製品のベンチマークと称されるデータが定番テストアプリGeekbenchの公式集計サイトGeekbench Browserに出現したことは、昨日もお伝えしたばかりです。そのシングルコアスコアは1,919、マルチコアスコアは8,928であり、M1チップ搭載の前モデル13インチMacBook Proよりも約20%は高速化していました。

 

それに対して、最小構成のMac Pro(8コアIntel Xeon Wプロセッサ搭載)では平均マルチコアスコアが8,027。つまり17万8800円~の新13インチMacBook ProがMac Proベースモデル(66万2800円)よりもマルチコア性能が約11%も上回ることになります。

 

Mac Proの上位構成でCPUを12コアにすると、M2チップの性能を超える性能を発揮できますが、プラス14万円もの追加費用がかかります。

 

もっともMac Proには豊富な拡張性や、様々なグラフィックカードを挿せたり、より大容量のRAMや内蔵ストレージを積んだりできるため、単純な比較はできません。とはいえ、このベンチマーク結果はお手ごろ価格で買えるM2搭載MacBookの高いコストパフォーマンスを裏付けたといえそうです。

 

ちなみに、様々なMacモデルのGeekbench 5マルチコアスコア平均値は次の通りです

  • M1 Ultra版Mac Studio:23,366
  • 28コアのIntel Xeon W搭載Mac Pro。20,029
  • 14インチおよび16インチMacBook Pro(M1 Max版):12,162 – 12,219
  • 12コアIntel Xeon W搭載Mac Pro。11,919
  • 13インチMacBook Pro(M2搭載):8,928(サンプル数は1,平均値ではない)
  • 8コアのIntel Xeon Wを搭載したMac Pro。8,027
  • 13インチMacBook ProとMacBook Air(M1搭載):7,395~7,420

新型の13インチMacBook Proは、本日(17日)の午後9時から注文受付が始まります 。しかし、すでにM1 Macを持っているユーザーは、その価格に見合う性能アップがあるかどうかは(円安による値上げもあり)よく考えた方がよさそうです。

 

Source:MacRumors

WWDC22で登場の「macOS Ventura」はMacにiPhoneが物理合体、ウェブ会議が高画質に

米アップルは開発者向け会議「WWDC2022」にて、次期Mac向けOSとなる「macOS Ventura」を発表しました。

↑アップルより

 

macOS Venturaの発表で注目を浴びたのは、上画像のように「iPhoneをMacのウェブカメラにする機能」。これは、高画質なiPhoneの背面カメラをウェブカメラとして利用できるのがメリットです。MacとiPhoneとの接続はワイヤレスでおこなわれ、センターフレームやポートレートモード、スタジオ照明などの機能が利用可能。さらにiPhoneの超広角カメラが手元までを撮影し、ユーザーの顔とデスク上を同時に表示する「デスクビュー」も利用できます。

↑アップルより

 

アプリとウィンドウの自動整理機能「ステージマネージャー」にも注目。ユーザーが作業している現在のウィンドウを中央に目立つように表示され、そのほかウィンドウは左側に表示されます。また、ウィンドウのグループ化も可能です。

 

macOS Venturaのそのほかの新機能は、主要アプリの刷新です。たとえば「Handoff」をFaceTimeでも使えるようになり、iPhoneでの通話をMacに引き継ぐことが可能。メールとメッセージアプリも刷新されます。Safariブラウザーでは次世代の認証情報である「パスキー」により、生体認証でより安全にサインインができるようになります。ゲームではEAの「GRID Legends」やカプコンの「バイオハザード ヴィレッジ」、Hello Gamesの「No Man’s Sky」が投入されます。

 

macOS Venturaは来月中にパブリックベータが配布され、この秋には正式版が無料アップデートとして提供されます。なにより、MacにiPhoneを合体させることでどれだけ高画質なウェブ会議機ができるのかを楽しみにしたいものです。

 

Source: アップル

米小売店サイトに「Mac」新製品ページ出現! ただし信ぴょう性は……

アップルがまもなく開催する開発者向けイベント「WWDC 2022」(日本時間の7日午前2時~)では、新型MacBook Airなどハードウェア製品の発表も予想されています。そんななか、アップルの正規販売代理店が「M2 Mac mini」と「Mac mini tower」なる未知の新製品ページを公開したことが注目を集めています。

↑Jon Prosser氏のレンダリング画像

 

これらは米国の家電小売店B&H Photoが2つの製品ページを、公式サイトに掲載したというものです。それぞれ「Apple MAC MINI 8/256 M2」および「Apple MAC MINI TOWER 8/256 M1P」とされ、記事執筆時点でも消されずに残っています。

 

もちろん、これは「噂を聞いた従業員が、気まぐれで作ってみただけ」の可能性もあります。アップルの正規販売代理店のサイトには根拠のないプレースホルダー(後から修正を前提として、暫定で作ってみたデータ)が掲載されることが珍しくなく、過去にも「AirPods X世代」や「Apple TV X世代」のプレースホルダーが見つかったものの空振りに終わっています

 

とはいえ、次期「M2」チップ搭載Mac miniが開発中との噂話は何度も伝えられてきたことです。まず昨年5月に有名リーカー(注目の未発表製品にまつわる有力情報を発信する人)Jon Prosser氏が「薄くなってMagSafe充電コネクタ搭載」の予想レンダリング画像を公開し、米9to5Macも「M2 Mac mini」と「M2 Pro Mac mini」が2022年内に発売予定と報じていました

 

さらに有名リーカーLeaksApplePro氏が「M2 Mac miniの設計図」と称する画像をツイートしています。この画像は以前と同じものの再投稿ではありますが、WWDC直前につぶやいたことがなんとも意味深です。

 

あと10数時間で始まるWWDC 2022では、おそらく新型MacBook Airの発表は確実と思われますが、ほかにサプライズがないか楽しみにしたいところです。

Source:B&H Photo(1),(2)
via:9to5Mac

将来のMacBookではApple Pencilが使えるようになる? アップルが特許を更新

MacBookでタッチパネル画面が使いたい、あるいはApple Pencilを使いたいとのぼやきは、ユーザーなら誰しも一度は口にしたことがあるはず。そんな願いを叶えるように、アップルが「MacBookのキーボードにApple Pencilを取り外し可能な形で装着できる」と思しき特許の更新を申請したことが明らかとなりました。

 

この特許は、まずApple PencilをMacBook内にセットすると、マウスとして使えるというもの。また照明システムも組み込まれており、Apple Pencilに「F1」や「F2」といった文字を表示してファンクションキー代わりにもできます。要するにApple PencilをM1 MacBook ProにあるTouch Barと置き換え、2つの機能を兼ねさせることが狙いのようです。

USPTO/Apple

 

アップルが初めて本特許を申請したのは1年以上も前のことですが、今回の申請では新たなアイディアも追加されています。たとえばApple Pencilを置き場所に保持するために(iPadのように)磁力を使うというぐあいです。

USPTO/Apple

 

どれだけのMacユーザーが(Apple Pencilが使える)タッチスクリーン機能を望んでいるのか。米9to5Macが読者に投票してもらったところ、4600票のうち半数近くが「イエス」だったそうです。

 

しかし、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏は否定的だったようで「タッチ画面は(Macのように)垂直型にしたくないんだ。素晴らしいデモができるが、短時間で疲れが出てきて、長時間だと腕を下ろしたくなる。役に立たないし、人間工学的に最悪だ」と述べていました。

 

また、現代のアップル幹部らも(タッチ画面の)iPadとMacを融合させるつもりはない、と何度も語っています。マーケティング担当副社長のグレッグ・ジョズウィアック氏も、両方の製品をより良いものにしていくだけで、「統合」などの理論に「巻き込まれる」つもりはないとして、iPadとMacの2本立てを堅持する意図を示していました

 

その一方で、アップルは20インチの折りたたみデバイスを開発中であり、iPadとMacのハイブリッドにするとの噂話もありました。同社が手のひらを返すのは珍しくないだけに(最近のハイエンドMacBook ProでTouch Barを廃止して物理ファンクションキーを復活させたなど)Apple Pencil対応のMacBookが出る可能性もなくはなさそうです。

 

Source:USPTO,Patently Apple
via:9to5Mac

iPhone 14の性能は現行iPhoneとあまり変わらない可能性出てきた、一方Macは大幅進化?

アップルは独自開発チップ(通称「Appleシリコン」)をiPhoneやMacに搭載し、競合他社のスマートフォンやPCに対して「省電力性能とパフォーマンスの両立」という強みを実現してます。

 

そのうち「A16」チップや「M2」チップ、さらにはM1チップファミリーの「最終」版に関する計画を「かなり信頼できる情報源」から得たという噂話が報じられています。

 

ここでいうA16とは、今年秋に登場が噂されている「iPhone 14(仮)」シリーズの一部に搭載されると予想されるもの。またM2チップは次期Mac向けであり、M1チップファミリーとは現行のMacやiPadに搭載されたM1 ProやM1 Ultraなど「M1」チップの延長上にあるプロセッサーのことです。

 

この噂の発信源は、有名リーカー(注目の未発表製品にまつわる有力情報を発信する人)ShrimpApplePro氏がツイートしたことです。それによれば、まずA16はA15やM1チップと同じく、TSMCの5nmプロセス技術をベースにした「N5P」により製造されるそうです。

 

ちなみに半導体における「製造プロセス」とは、回路内の配線幅のこと。一般的には7nmや5nmといった数字が小さくなればなるほど集積度が高まり、結果的に処理速度や省電力性能が良くなる傾向があります。

 

これまでの報道では、A16はTSMCの「N4P」技術が使われるとの観測もありました。いかにも4nmのような呼び方ですが、実はTSMCはN4Pを「TSMCの5nmファミリーの3番目の大きな強化」だと説明しています。つまり配線幅は5nmのまま、4nm相当の性能を引き出す「ブランド名」とも推測されていたわけです。

 

それでも進歩には違いなかったはずですが、もしもN5Pだとすれば、A15と同じ製造技術が使われることになります。このことから、A16はさほど性能が向上しない可能性が出てきました。

 

今回の情報によると、A16の改良は「少し強化されたCPU、 LPDDR5 RAMやGPU」により実現するそうです。特にLPDDR5 RAMは、現行のiPhone 13シリーズに採用されたLPDDR4X RAMと比べて最大1.5倍高速だと言われています。RAMが速くなればゲームの読み込みや起動までの時間も短くなり、ゲーマーにとってはうれしいはずです。

 

次に「M2」チップは、4nmを飛び越して3nmプロセスを採用する初のAppleシリコンとなるようです。以前はM2世代は4nmで、次の「M3」世代でようやく3nmプロセスになるとの説もありましたが、前倒しになるのかもしれません。

 

第3にShrimpApplePro氏は、アップルがコアを更新した「M1シリーズの最終SoC(チップ)」に取り組んでいると主張しています。M1~M1 Ultraチップでは高効率(消費電力が少ない)の「Icestorm」コアと高性能な「Firestorm」コアを使っていますが、これらが高効率の「Blizzard」コアと高性能の「Avalanche」コアに置き換えられるそうです。

 

もっとも、アップルはMac Studio向けのM1 Ultraを「最後のM1ファミリー」と呼んでいました。この新型チップは、別のブランド名を付けて次期Mac Proなどに搭載される可能性もありそうです。

 

iPhone 14シリーズではA16チップは高価なProモデルのみ、通常価格モデルはA15(ないし、そのバリエーション)に留まるとの予想もありました。しかし搭載チップが違ったとしても、それほど性能差は大きくならないのかもしれません。

Source:ShrimpApplePro(Twitter)
via:MacRumors

アップル27型ミニLEDディスプレイの発売が延期? 中国が影響か

アップルは3月に27型5K外付けディスプレイ「Studio Display」を発売したばかりですが、今後は27インチでミニLEDバックライトとProMotion(最大120Hzの可変リフレッシュレート)を搭載した「Studio Display Pro」を発売予定だと噂されてきました。

 

もともと本製品は6月に登場すると見られていましたが、10月に延期されたとのアナリスト情報が伝えられています。

 

ディスプレイ専門サプライチェーン調査会社DSCCのアナリスト(兼CEO)Ross Young氏は、噂のミニLED搭載27インチ単体ディスプレイが10月まで延期されたとツイートしています、そもそも「6月に登場」と言い出したのもYoung氏でしたが、予想を修正したことになります。

 

Young氏いわく、この延期は新型コロナ禍により台湾Quantaの(中国)工場でロックダウンが相次いでいることが原因だそうです。それに対応して別の施設に生産を移しているために遅れるとのことです。

 

現在14インチ/16インチMacBook Pro(2021)の納期が大幅に遅れているのも、その組み立てを一手に引き受けるQuantaの上海工場がロックダウンにより操業率が大幅に落ちていることが原因と言われています。そのため、Quantaが生産拠点を上海から他の地域(重慶)に移すことを検討しているとも報じられていました

 

アップル純正のStudio Displayについては、Mac Studioなどと組み合わせることで「Hey Siri」やWebカメラも利用できて便利な反面で、最新製品としては物足りないとの声もあります。たとえば14インチおよび16インチMacBook Pro(2021)などに搭載されたミニLEDバックライト画面が、Studio Displayにはありません。

 

アップル純正の外付けミニLED搭載ディスプレイとしては、すでにPro Display XDRが販売中です。が、価格は58万円以上~(税込)であり、買い求めやすい製品とは言えません。「Studio Displya XDR」が本当に発売されるのであれば、高くともその半額程度がユーザーから期待されそうです。

Source:Ross Young(Twitter)
via:9to5Mac

【西田宗千佳連載】今後登場するMac Pro用CPUはMac Studioとは違う、特別構造なのではないか

Vol.114-4

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはアップルが発表した、独自のCPU技術を駆使したMac Studio。本製品の登場で、次期Mac Proはどのような製品になるのかを予想する。

 

M1 Ultraより速いプロセッサーを、アップルはどう考えているのだろうか? Appleシリコン版Mac Proが登場する場合、M1 Ultraよりも高速なプロセッサーが求められる可能性もある。

 

筆者は、Mac Pro向けのAppleシリコンは、ほかとはちょっと違うモノになると予想している。

 

前回の連載でも解説したが、M1シリーズには“拡張性が低い”という欠点がある。PCI-Expressによる拡張を想定しておらず、メモリーもプロセッサーに一体化されている。だから消費電力が低い割に高速なのだが、Mac Proのように拡張性が重要な用途には向かない。

 

そのため、Appleシリコン版Mac Proでは、M1 Ultraともさらに違うプロセッサーが使われるのだろう、と予測している。

 

さすがにその構造を正確に予測するのは難しい。インテルやAMDのプロセッサーのように、シンプルに外部接続を前提としたものになる可能性はあるものの、それだとAppleシリコンの良さが出にくいので、なにか不利をカバーする仕込みが、M1シリーズにはあるのではないか……という気もする。

 

では速度はどうするのか? 「M1 UltraではM1 Maxを2つつなげたのだから、今度は4つでも8つでもつなげばいいのでは」という声もある。だが、そう簡単にはいかない。

 

M1 Ultraで採用された「UltraFusion」は、プロセッサーとして実装する際に2つのM1 Max同士を密結合する技術だ。ただ、その特性上非常に微細なものであるため、さらに2倍・4倍と実装を増やしていくのは技術的に困難だろう。

 

サーバーのような高性能PCでは、複数のCPUを搭載する際にひとつのパッケージには入れず、マザーボード上などに複数搭載する形になっている。そうするとデータ転送や消費電力で不利になり、「2つ積んだから2倍」と単純には高速化しなくなる。

 

だが、そうしたやり方を採らないと、多数のプロセッサーを搭載するのは難しい。そうすると、「多数のM1を外部接続することを前提とした特別な構造」のものを作り、多少実効値が落ちても数でカバー……というパターンになるのではないか。

 

また、そもそもM1シリーズ共通の課題として、CPU・GPU1コアあたりの性能は同じであるという点がある。複数のCPU・GPUを活用できるアプリは速くなるが、そうでないものはコアの速度に引っ張られてしまう。M1 Ultraなのに思ったほど速度が上がらないパターンはこれが原因だ。

 

となると、根本的にコアを高速化するには、アーキテクチャを進化させた、仮に「M2」とでもいうべき次世代プロセッサーが必要になる。

 

アップルは当然「M2」をすでに準備済みだろう。いつ出てくるかはわからないが、iPhoneのプロセッサーが年々変わるように、タイミングを見てM1を置き換えていくものと想定される。

 

ただ、それと前述のMac Pro用Appleシリコンの登場時期がどう関係するかはわかりづらい。M2(仮称)アーキテクチャからMac Pro用も作るのか、それともM1ベースで作り、その後にM2搭載のMacもでてくるのか。

 

この辺は注意深く見守っていきたい。

 

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M1 Ultra、M1 Maxよりも実際の使用では40~100%も高速! 特にビデオレンダリング処理が圧倒的

「超強力なMac mini」ことMac Studioが発売されてから、上位モデルに積まれたM1 Ultraにつき数々のベンチマークが公開されてきました。

 

では下位モデルのM1 Maxと比べれば、実用する上でどれほどパフォーマンスの違いがあるのか? それをプロフェッショナルが検証した結果が報告されています。

 

米テック系サイトEngadgetが行ったのは、実際の使用シーンから離れがちなベンチマークテストを可能な限り現実的なものにすることです。

 

そのため、読者から最も頻繁に行う負荷の高いタスクが何かと尋ねて、Adobe LightroomとPremiere Pro、DaVinci ResolveとFusion、Blenderの3Dモデリング、TensorFlowやPyTorchなどの機械学習テストなどのリストを作成。いわば「ユーザーが最も軽く動いてもらいたい」アプリについて、ベンチマークテストを行ったしだいです。

 

M1 Ultraは、2つのM1 Maxチップを合体させ、プロセッサは20のCPUコア+64のGPUコア、最大128GBのRAMを搭載しています。少なくとも、これまでMacで積まれたチップの中では最も高性能と言えるスペックです。

 

それに相応しく、CPU負荷の高いタスクに関しては、M1 UltraはM1 Maxの約2倍の速さだったそうです。かたやGPUを多用する場合は、それほど劇的な差は付かなかったものの、それでも概ね40~80%の範囲に収まっているとのことです。

 

そしてM1 Ultraが真価を発揮するのは高負荷のビデオレンダリングであることは、アップルが発表した当時に主張していた通りのようです。

 

Engadgetによれば、M1 Ultraは「M1 Ultraは、ハードウェアアクセラレータが効果を発揮するときに最高のパフォーマンスを発揮」する構成であり、「ビデオレンダリングやAI処理など、特定のタスクを高速化するために作られたチップ」とのことです。

 

実際に10本の8Kビデオクリップを同時に処理するテストでは、M1 Ultraはわずか29秒で作業を完了しました。これは16コアのAMD 5950XプロセッサととNVIDIA RTX 3080 TiのGPUカードを搭載したWindows PCの約2倍も速かったと述べられています。

 

M1 Ultra搭載Mac Studioは税込で約50万円~とお高くも思えますが、負荷の高い動画レンダリングなどクリエイティブのプロ向け用途に限れば非常にコストパフォーマンスが高く(ゲームライブラリはWindowsよりも乏しいですが)むしろ「安い」と言えるのかもしれません。

 

Source:Engadget
via:9to5Mac

iPhoneやMacで音声通話がクリアになる隠し設定「声を分離」が注目を集める

新型コロナ禍が長く続くなかでビデオ通話などの回数が増えてきましたが、iPhoneやMacで音声通話がクリアに聞こえるようになる隠し設定が注目を集めています。

 

Twitterユーザーのcan duruk氏は、iPhoneとAirPodsの組み合わせで通話しているとき、(コントロールセンター内に)「声を分離(Voice Isolation)」なる隠し設定を見つけたとつぶやいています。

 

この機能はiOS 15やiPadOS 15、ないしmacOS Montereyをインストールした製品なら、ほぼ例外なく使えるものです。空間オーディオをサポートしている製品は、本機能も対応しているようです。

 

一応アップルはFaceTimeの公式ガイドでも案内はしていますが、非常に見つけにくく、通話中のときのみ設定にアクセスできます。右上隅から下にスワイプして(Macでは右上隅をクリック) コントロールセンターを開き、「声を分離」ボタンをタップします。

Apple

ほか「標準」は元のまま。そして「ワイドスペクトル」は自分の声と周囲のすべての音を拾うものであり、コンサート会場の音をそのまま相手に届ける以外は使いたくはなさそうです。

 

さて「声を分離」は、自分の声だけをはっきり聞こえるようにして、それ以外の音は除去されます。The VergeのライターがiPhoneで設定をオンにして試したところ、約3m先で吠えていた犬の声が完全に消え、交通の音もほぼすべて聞こえなくなったそうです。またMacBookではファンの音も、キーボードを打つ音も、完全に遮断されたと述べています。

 

ただし「声を分離」には、2つの問題があります。1つはiOSやmacOSの共通設定はなく、通話アプリごとに有効にする必要があること。2つ目は、対応するアプリが限られていることです。

 

もっともiPhone用アプリの対応状況はかなり良く、Snapchat、WhatsApp、Slack、Signal、Instagramでもすべてサポートされている一方で、意外なことにTikTokでは使えません。またZoomのiOSに対応していましたが、Macでは使えず。さらにブラウザ内のアプリではコントロールセンター内のメニューが使えないため、Google Meetなどは除外されます。

 

実はiPhone 12以前のモデルでは電話のノイズキャンセリング機能はありましたが、iPhone 13シリーズでは使えなくなっています。それはバグではなくアップルが意図した通りの動作であり、今後は「声を分離」を使おう、という記事もありました

 

これほど優れた「声を分離」機能がほとんど知られていないのは非常にもったいないことであり、アップル公式にアピールを望みたいところです。

 

Source:The Verge,Apple

【西田宗千佳連載】Mac Studioが出たからといって、現行のMac Proに意味がないとは言えない

Vol.114-3

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはアップルが発表した、独自のCPU技術を駆使したMac Studio。本製品の登場で、現行のMac Proはどのような位置付けになるのかを解説する。

↑2019年に登場したMac Pro(画像左)

 

現在のMacのラインナップをみると、ほぼすべてがAppleシリコンへの移行を終えている。ただし唯一、インテルのCPUを使ったモデルも残っている。それがMac Proだ。

 

アップルはMac Studioの発表に際し、スピードの比較対象としてMac Proをピックアップしていた。実際問題として、多くの処理において、単純な性能であればMac ProよりもMac Studio(特にM1 Ultra搭載版)のほうが速く、消費電力が少ない……ということはあり得る。

 

特に動画を扱う場合には、M1 Max・Ultraに、プロ向けの「Apple ProRes」処理を高速化する機能が搭載されていること、SSDが高速であることなどもあり、有利な点はあるだろう。

 

Mac Proは「Pro」と名がついているため、これまで最高速のMacとして扱われてきた。だが、現在はすでに違う。では、Mac Proに意味がないか、というとまったくそんなことはないのだ。

 

理由は2つある。

 

ひとつ目は、業務フローの中で、まだ「Appleシリコンへの完全移行にリスクがある」場合だ。M1をベースとしたAppleシリコンの上では、すでにほとんどの作業が可能になっている。だが、企業や大学などで独自に開発されたソフトや、特定の業務だけに使われるマイナーなソフトの場合、Appleシリコンへの最適化が終わっていないことは多い。

 

Macの置き換えで業務が滞る可能性があるなら、まだ置き換えたくない……というところはあるはず。そろそろ少数派になってはいるだろうが、コアな業務に関わるものほど、移行措置には慎重になるものだ。

 

そして2つ目が「PCI-Expressでの拡張カードを必要とする用途」。完全に特定業種向けではあるが、特定の処理を速くしたり、特殊な機器を接続したりする用途のために、独自の拡張カードを設計することはある。同様に、GPUとしてAMDやNVIDIAのモノがどうしても必要である、というニーズもある。

 

そうすると、現状外付けGPUを搭載できるのはMac Proだけなので、Mac Proを選ばざるを得ない(ただし、Mac Proで使える外付けGPUは、アップルからの提供としてはAMD製に限られる)。

 

こうしたニーズであればWindowsでも……と思わなくもないが、やはり業務でMacが必要、というクリエイターや開発関係部門はある。そうした部分では、いまのM1をベースとしたAppleシリコン搭載Macでは限界がある。

 

また、メモリー搭載量が「最大でも128GB」ということも制約となる。なにしろ、現行Mac Proは「最大1.5TB」のメモリーが搭載できるのだから。

 

アップルは、Mac ProのAppleシリコン対応版については、また別の機会にアナウンスするとしている。ということは、それらの機器は、単に速いプロセッサーが搭載されているということではなく、Mac Proで現在実現されている拡張性を備えたモノ……ということになるのではないか、と予想している。

 

すなわち、文字通りの“Pro向け”であるという特性がさらに強くなるのだろう。

 

では、その速度はどうなるのだろう? M1はM1 Ultraで良好なパフォーマンスを示したが、さらに高速化する方法はどうなるのだろうか? その点は次回解説する。

 

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【西田宗千佳連載】アップルMac Studioの高性能をWindowsと比較するのは難しい

Vol.114-2

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはアップルが発表した、独自のCPU技術を駆使したMac Studio。本製品はどれくらい高性能なのかを探る。

↑M1 Ultra搭載のMac Studioは最大128GBのユニファイドメモリーを備え、18本の8K ProRes 422ビデオストリームを同時に再生可能。PCでの重い作業を驚異的なスピードとパフォーマンスで処理できる。SSDのアクセス速度は最大7.4GB/秒と超高速なのも魅力的だ

 

アップルが3月末に発売したハイエンドMacである「Mac Studio」は、高性能であることがなによりも特徴だ。

 

実際ベンチマークをとってみると、ほかのMacに比べてCPUコア・GPUコアが多い分、性能はストレートに向上している。

 

ただ気になるのは“Windowsと比較してどうなのか”ということだろう。これは意外と難しい。

 

特に大きく違うのがGPUだ。WindowsとmacOSでは、グラフィックの処理がかなり違う。同じGPUであっても、Windowsで使う処理に特化したアプリケーションと、macOSに特化したプリケーションとでは、パフォーマンスがかなり異なる。

 

アップルは、iPhone/iPad/Macでのグラフィック処理に「Metal」という技術を使っている。当然、アップル製品に使われるプロセッサーはすべて、Metalに特化した作りになっている。

 

だが、Metalはほかのプラットフォームでは使われていない。ほかのプラットフォームと同じように評価するには、Metal以外でテストをするか、Metalに最適化したアップル向けのソフトと、Metal以外に最適化したWindowsなど向けのアプリをそれぞれ用意し、「同じ用途・同じ機能のアプリ」として比較する必要がある。

 

Mac Studioが発売されて以降、「アップルがいうほど速くないのではないか」という記事も出回っているが、それらは必ずしも間違いではない。だが、ポイントはちょっとズレている。Macに最適化されている訳ではない、Metal向けではないテストで比較してしまうと、Mac Studioといえど性能は出しきれないのだ。

 

そうすると、実際にはなにで評価すべきか? やはり、WindowsとMacで両方にあるソフトで、作業時間などで比較するのが適切だろう。

 

筆者の手持ちのデータで言えば、Mac Studioは確かに速い。Macの中では間違いなくトップの性能である。一方、世の中に存在するすべてのWindows PCよりも速いのか……というと、そうもいかない。

 

特にGPUについては、Mac StudioのGPUは「ハイエンドGPUと同等」ではあるものの、NVIDIAやAMDの最高性能のGPUの方が性能は上、という部分も多い。

 

ゲームや機械学習向けには、Windowsのほうが優れている部分もあるだろう。それは、開発環境やニーズが影響する部分も大きい。

 

一方で、CG制作などの場合だと、話が少し変わってくる。

 

Mac Studioに使われる「M1 Ultra」は、最大128GBのメモリーを、CPUとGPUが共有する構造になっている。極論、最大のビデオメモリーは128GB、とも言える。もちろん実効ではもっと少ない。とはいえ、100GBを超える容量のデータをGPUが一度に扱うこともできるのは間違いない。

 

Windowsで使われる外付けGPUの場合、GPUが使うビデオメモリーはGPU側についている。その結果として、Windows PCのビデオメモリーはゲーム用で十数GB、ワークステーション用でも32GB程度となっている。GPUが処理する場合、データをストレージからメインメモリー、メインメモリーからビデオメモリーへと転送する必要があるため、処理効率も落ちやすい。

 

ゲームなどではそこまで巨大なデータは使わないが、開発環境やCG制作では、巨大なデータを扱うこともある。そのときの効率では、結局Mac Studioのほうが良い……という可能性は高い。

 

さらに、Mac Studioは放熱効率が高く、フルパワーで動いても動作音が静かだ。作業環境として望ましいのは間違いない。

 

というわけで、性能評価は“場合による”のである。

 

では、Mac Studioはいつまで最高性能のMacでいるのだろうか? その点を次回予測してみたい。

 

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【西田宗千佳連載】驚きの方法で高性能を実現したアップルの「Mac Studio」

Vol.114-1

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはアップルが発表した、独自のCPU技術を駆使したMac Studio。製品の登場を支えた技術の秘密は何なのか。

↑M1 Ultra搭載のMac Studioは最大128GBのユニファイドメモリーを備え、18本の8K ProRes 422ビデオストリームを同時に再生可能。PCでの重い作業を驚異的なスピードとパフォーマンスで処理できる。SSDのアクセス速度は最大7.4GB/秒と超高速なのも魅力的だ

 

M1 Max以上の高性能CPUはあるか

アップルが3月に発売した「Mac Studio」は、多くの関係者の度肝を抜いた。

 

アップルはMacの独自半導体への移行を進めているが、残すのはハイエンド系だけになっていた。だから高性能をウリにした製品が出てくるのは予測の範囲内だった。

 

ただ、アップルがどう「M1 Max」より高性能なプロセッサーを作るのかは、PC業界内でも意見が分かれていた。

 

アップルのM1シリーズは、スマートフォンであるiPhoneのプロセッサーから派生している。そのため、CPUとGPUを混載し、さらに高速なバスで同じチップの中にメインメモリーまで搭載する構造になっている。これはベーシックなM1から、ハイエンドのM1 Maxまで変わらない。この構造であるから、データのムダな転送を減らし、効率的に扱うことで速度を稼いでいる。

 

ただ、半導体製造には技術的な限界がある。CPUやGPUを際限なく増やせるなら性能も上げやすいが、ある規模以上になると製造が難しい。実は、M1 Maxは限界に近い規模であり、単純に同じアプローチでさらに規模が大きく、性能が高いプロセッサーを作るのは無理だ、と考えられていた。

 

プロユースにも耐えうるM1 Ultraの実力

一般的なPCの場合、GPUを外付けにしたり、CPUを複数搭載したりすることで性能向上を図るのが通例だ。だからアップルも、M1シリーズを複数積んだ高性能Macを作るのではと予測されていた。

 

そして実際、Mac StudioはM1 Maxを2つ搭載したMacになった。ただし、実現の方法は非常に独特なものだ。単純にプロセッサーを2つ搭載するのではなく、最初からM1 Maxに“2つのM1 Maxを高速につなぐ”、“2基つなげても、ソフトから見るとひとつのプロセッサーに見える”機能を搭載しておき、それを使用して、製造の段階で2基のM1 Maxがつながった特別なプロセッサーを作ったのである。アップルはこれを「M1 Ultra」と名付けた。

 

2021年秋に発表されたとき、M1 Maxは単に高性能なM1だった。だが実は、M1 Ultraを実現する機構が隠されている、野心的なプロセッサーでもあった。そして、そのことはM1 Ultra登場まで秘密とされていた。

 

筆者も、Mac Studioをアップルから借り受け、性能をテストしてみた。実に速く素晴らしい。M1 Maxの倍の速度で動き、動作音はほとんどしない。M1 Ultra搭載モデルは約50万円という高価な製品だが、Macでなにかを作ってお金を稼ぐプロ向けのPCだから、十分価格に見合うものと言える。

 

ただ、Mac Studioにはいくつか疑問もある。性能はWindows PCと比較してどうなのか? アップルはMac Proについては後日別途に発表するとしているが、それはMac Studioとどう違うものになるのだろうか? そして、性能向上は今後どのように実現していくのだろうか?

 

そのような謎については、次回解説していく。

 

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新型チップ「M2」搭載MacBook AirとMac miniが6月に同時発表されるウワサ

今年はまもなく、「M2」(M1チップの後継プロセッサ)を積んだ新型MacBook Airが発表されるとの噂話が盛んとなっていました。この製品が6月に開催されるWWDC(世界開発者会議)でお披露目されるとともに、M2搭載のMac miniまで同時に発表されるとの観測が伝えられています。

 

有名リーカー(注目の未発表製品にまつわる有力情報を発信する人)LeaksAppleProはツイッターで「WWDCでM2 MacBook AirとM2 Mac miniが発表されるらしい」とつぶやいています。LeaksAppleProの噂話は百発百中とはいきませんが、第3世代AirPods 3については正式発表前に実物の写真を公開していました

 

今年のWWDCは6月6日(米現地時間)から始まります。この場では次期iOSやmacOSなど新たなが発表されるものですが、過去にはMac Proなどハードウェア製品が発表されたこともありました。

 

その一方で、アップルは「M2」搭載の新型Macを9種類以上もテストしているとの有力な噂話もありました。M2はM1よりも高速かつグラフィック性能が強化され(GPUが7~8個から9~10個に増やされる等)発熱や消費電力が少なくなり、バッテリー持ちも良くなると期待されています。

 

もっとも新型MacBook Airの発売は2022年後半にずれ込んだ、量産は早くても2022年第2四半期(7~9月)になるとの有名アナリスト予測もあり、予断を許しません。

 

しかし円安がすごいペースで進んでいるなかでは、お手ごろ価格が好評だったMacBook AirやMac miniも相当なお値段になる可能性も否定できません。円安が落ち着くか、アップルが日本のMacユーザーを思いやってくれることを祈りたいところです。

 

Source:LeaksApplePro(Twitter)
via:Cult of Mac

アップル「Studio Display」は在宅作業で周辺機器を増やしすぎた人こそ買うべき

クリエイタースタジオに導入されるような、高性能なデスクトップPC「Mac Studio」とあわせて発表された「Studio Display」。このディスプレイは、どのような人が使うといいのでしょうか。本記事では、筆者の環境に導入した感想とあわせて、その魅力を紐解いていきます。

↑13インチのMacBook Proと比較。存在感があります

 

Studio Displayはこれまでにない、新ジャンル製品

まずは価格から見ていきます。最小構成で19万9800円(税込)は、27インチのディスプレイとしては、明らかに高級品の部類。もちろん、5120×2880ドットと5K解像度なうえに、10億色の表現に対応していたり、P3規格の広色域を実現していたりと、忠実な色の再現性にこだわるクリエイター向けの製品という側面はあります。

 

しかし、Apple M1チップを搭載する24インチの「iMac」が最小構成価格15万4800円(税込)であることを考えると、ディスプレイがPC本体の価格を超えているのは珍しいです。

 

一方、よりハイエンドなディスプレイ「Pro Display XDR」と比べると、途端にお買い得な印象も出てきます。Pro Display XDRは32インチ(6016×3384ドットの6K)で、XDR(Extreme Dynamic Range)技術に対応するプロシューマー向けのディスプレイですが、その価格は58万2780円(税込)。個人利用ではなかなか手が出しにくい価格です。

 

40万円近い差を知ると、「Studio Displayにできて、Pro Display XDRにできないことはない」と考えそうになりますが、そんなことはありません。Pro Display XDRにはカメラもスピーカーも搭載されていませんが、Studio Displayには、122度の視野角を持つうえにセンターフレームに対応した12メガピクセルのカメラと、6ウェイのスピーカー、スタジオ品質をうたうマイクアレイが搭載されています。

 

しかも、Siriの呼び出しや、ドルビーアトモス規格のオーディオ再現性能も備えており、さらには、A13 Bionicチップも内蔵しています。

 

価格と仕様面を見ると、Studio Displayはこれまでのアップルのラインナップにはなかった、新たなジャンルの製品であることがわかります。iMacは、手軽にアップルの世界に入るためのデスクトップPCに位置付けることができるでしょう。そして、Pro Display XDRは、純粋にプロ環境の映像再現に特化したデバイスです。

 

対してStudio Displayは、Siriやセンターフレームなど、iPhoneやiPadで培った技術を、ディスプレイという形状に盛り込み、すでにアップル製のPCを使っているユーザーの環境をアップグレードさせるための「多機能型ディスプレイ」といえそうです。

 

スタンド形状は3種類。見た目の質感には徹底したこだわりを感じる

Studio Displayは、スタンド形状に「傾きを調整できるスタンド」「傾きと高さを調整できるスタンド」「VESAマウントアダプタ」の3つのオプションをそろえています。傾きと高さを調整できるスタンドのモデルは24万3800円(税込)で、ほかの2種類を選ぶと19万9800円(税込)です。

↑アップルの製品サイトなどで購入時に、オプションを選べます

 

さらなるオプションとしては、強い光の下でも写り込みを防げるという「Nano-textureガラス」も用意。これに傾きを調整できるスタンドもしくはVESAマウントアダプタを選ぶと24万2800円(税込)、傾きと高さを調整できるスタンドは28万6800円(税込)です。

 

今回は傾きと高さを調整できるスタンドのモデルを試用しましたが、片手でラクに調整できるほどスムーズなほか、安定性が高いです。さらに見た目は、アルミ製スタンドとボルトとのコントラストが美しく、質感に徹底的にこだわるアップルらしさが強く感じられます。

 

上下にはメッシュ状の細かな穴が設けられており、ここにスピーカーとマイクが収まっています。またカメラは、ベゼル上部にさり気なく配置。表面ガラスの奥に埋め込まれており、注意して見なければ存在に気付きません。

 

【製品外観フォトギャラリー】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは閲覧できません。

 

設定はほとんど不要で、軽快な使用感

ユーザーインターフェイスは、徹底して“アップル的”です。というのも、Studio Displayにはボタンやスイッチの類がひとつもありません。同梱のLightningケーブルで出力側のMacと接続すると、自動的に電源がオンになり、解像度も自動で調整されます。

↑接続するだけで電源が入り、解像度や輝度の設定も不要

 

MacBookと接続した場合、標準設定ではStudio Displayはサブディスプレイとして扱われます。MacBookのディスプレイでカーソルを端まで移動させると、Studio Displayの端からカーソルが出現。また、MacBookを閉じれば、MacBookのディスプレイがオフになると同時にStudio Displayがメインのディスプレイに切り替わります。

 

Studio Displayを接続すると、Mac側では同時に内蔵のマイクとスピーカー、カメラを認識します。マイク・スピーカーは「設定」アプリの「サウンド」から切り替えられ、カメラは、Web会議アプリの設定画面から切り替えられます。

↑設定アプリから、サウンドへ進むと、マイク、スピーカーが切り替えられます

 

多くのディスプレイのように、ベゼル下や本体サイドに設けられたスイッチやボタンで入力元を切り替えたり、解像度をあわせたりする必要はありません。設定というほどの設定もいらず、基本的には、つなぐだけで次の瞬間からディスプレイとして機能するため、使用感は軽快です。

 

導入で机がスッキリ! 3台のデバイスを一気に置き換えできた

ここで、今回Studio Displayを試用した筆者の環境に触れておきましょう。筆者はふだん、AirPods Maxを接続した15インチのMacBook ProをWeb会議用に、13インチのMacBook Proをメインの作業用に、iPad miniをサブのブラウザー用端末として使っています。

 

15インチのMacBook Proはスタンドに固定していますが、ほかの3つのデバイスは、気分や作業の内容に応じて随意に移動させるため、机の上は、なんとなく雑然とした印象です。

↑必要に応じてデバイスを足していく内に、雑然としてしまった机の上

 

13インチのMacBook Proだと、Web会議をしながら作業をするには表示領域が小さかったため、元々持っていた古い15インチをWeb会議専用機にしました。その後SNSやチャットツールを使う機会も多くなり、さらにiPad miniを導入。もちろん、同一のアカウントでログインしているから、データの連携は完璧です。

 

しかし、AirPods Maxを装着し、3台のデバイスを使い分けながら仕事をする自分の姿に疑問を抱かないわけでもありません。PCを使っているつもりで、PCに使われる側になっていないか? と。

 

ここに、Studio Displayを導入してみると、15インチのMacBookが不要になり、iPad miniは動画鑑賞など、趣味の領域で活躍させることに。AirPods Maxも同様です。詳細は後で述べますが、筆者の環境なら、Studio Displayのマイクとスピーカーがあれば、音声品質は十二分以上に満足できます。

 

導入後、はじめに述べたStudio Displayの「多機能型ディスプレイ」という評価は改めて正しいと思いました。Studio Displayだけで、3台のデバイスを机の上から取り除くことができたのです。

 

その代わりに、13インチのMacBook Proを閉じたままで使うため、純正の「Magic Keyboard」「Magic Trackpad」「Magic Mouse」を導入。これで美しく、整然とした机になりました。

↑Studio Displayが3つのデバイスの機能を置き換え、机の上はとてもスッキリ

 

ビジュアルを扱う作業でポテンシャルを発揮。スピーカーの音質は特に優秀

ディスプレイとして使用感は、27インチの作業領域に改めて余裕があることを感じます。元々13インチのMacBook Proを使っていたため、同じように作業するとStudio Display では2台分以上のスペースがあります。そのため、たとえばPhotoshop CCとブラウザーを同時に開き、ブラウザーの内容を参照しながら画像編集、といった複数のアプリを開いての作業も快適です。

 

もちろん、Web会議をしながらメモを取るようなビジネス作業もまったく苦労はしません。まだノートPCだけで作業しているという人は、導入すると快適さに驚くでしょう。

 

また、画素密度は218ppiと、よほど顔を近づけて見なければ、ピクセルが視認できないほどの細かさ。さらに輝度は高く、色域が広いため、色再現性も高く、画像編集時の色確認もスムーズにできました。ビジュアルを扱う作業が多いのであれば、この広大なサイズと優れた表示性能は最大限に活かせそうです。

↑27インチ(5120×2880ピクセル)で、画素密度は218ppi。ピクセルは非常に細かく、美しい色彩表現が楽しめます

 

一方、スピーカーの音質は特に優秀。PCやディスプレイに内蔵されているスピーカーの音質は、貧弱であることも多い分、ボリューム感には驚きます。また、音は確かにスピーカー部分から出力されていますが、音楽の再生や映像の鑑賞時において、ディスプレイ前面から音が前に飛び出してくるような迫力も感じられました。

 

Studio Displayを買うべきなのは、どんな人?

Studio Displayは、当初「Mac StudioやMac Mini、あるいはMac Proと組み合わせて使うのが基本のディスプレイ」と認識していました。

 

ですが、MacBookとの組み合わせが、実はStudio Displayの最もおもしろい使い方に感じました。時に持ち歩くMacBookの環境を100%維持しつつ、デスクトップPCライクに使えるようにする装置だと捉えると、また異なった魅力があるように見えます。

 

では、安価なディスプレイをつなぐことと、どこに違いがあるのか? それは、やはりアップル製品同士のスムーズな連携と、Studio Displayそのものが持っているハード的な付加価値という点でしょう。

 

見た目はシンプルなディスプレイですが、その本質は高精細な5Kディスプレイと、リモート時代に対応できる高機能なマイクとスピーカー、カメラの集合体。個人的には、業務がリモート環境に切り替わり、次第に増えてきた周辺機器の類を、1つのデバイスで補ってくれる存在でした。

 

お気に入りのマイク、お気に入りのスピーカー、お気に入りのカメラを組み合わせていて、既存の環境に満足しているなら、導入は見送った方が懸命かもしれません。

 

ですが、すでにmacOS環境があり、日によって自宅で作業したり、屋外で作業したりとフレキシブルな働き方をしている人、それにともなって、複数の周辺機器で机の上がごちゃついてきた人には、特に導入をおすすめしたい製品です。

 

【フォトギャラリー】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは閲覧できません。

Mac Studio用の小型で高品質なディスプレイ「Mini Pro Display XDR」が実現→実はiPad Proでした

パワフルなMac Studioや16インチMacBook Pro(2021)を買うと外付けディスプレイも一緒に使いたくなりますが、アップル純正の最高級ディスプレイ・Pro Display XDRは税込50万円以上で高すぎる……。そんな人向けに高品質なディスプレイを小型かつ安上がりに済ませる方法が紹介されています。

↑Tom氏のツイートから

 

このアイディアを実現に移したのがYouTuberのByte ReviewことTom氏です。Tom氏がTwitterで公開した「Mac Studio with Mini Pro Display XDR」は、Mac Studioの上にサイズぴったりの小型ディスプレイが載せられ、まるでセットとして作られたような一体感が醸し出されています。

 

もちろんアップル純正のディスプレイにこんな「mini」製品は存在しませんが、コンパクトな画面内にはmacOSの画面が表示されています。ある人は偽物のレンダリングだと言い、すぐに別の人がレンダリングではないと訂正するリプライが繰り広げられました。

 

タネを明かせば、12.9インチiPad Pro(2021)を、macOSやiPadOSの標準機能SideCarを使ってMac Studioのディスプレイ代わりにしているだけです。

 

最新の12.9インチiPad Proに採用されたLiquid Retina XDRディスプレイは、Pro Display XDRと同じく「ミニLEDバックライト」技術を採用しています。この技術は従来の液晶画面の延長にありつつも、バックライトを微細なミニLEDに置き換え、ローカルディミング(部分的に制御できる技術)と組み合わせることで、高コントラストの鮮やかな画面や低消費電力を実現するものです。世代的にはiPad Proのほうが新しく、画質に遜色はないと思われます。

 

「それを理解するのに数分かかったよ」との声もあれば、「うぉー、アップル製レジだ」という声もあり。誰もが総じてクールなセットアップだと拍手を送っています。このうちレジに似ていることはTom氏も同意しており「しかも、かなり高価なものだ」と付け加えています。

 

12.9インチiPad Proは確かに安くはありませんが(税込で約13万円~)それでもPro Display XDRの4分の1ほどで済みます。アップル製品はデザインの統一性もあるため、こうしたお遊びがしやすいのかもしれません。

Source:Byte Review(Twitter) 
via:Cult of Mac

A15搭載の新iPhone SEやM1搭載iPad Airなど、まとめてわかるアップル5つの新製品情報

アップルは日本時間の3月9日午前3時から、オンラインで発表会イベントを実施しました。ここでは、発表された新製品の主な特徴と価格、発売日をまとめて紹介します。

 

新製品その1 iPhone 13と同じA15搭載で5万7800円からの新iPhone SE

コンパクトなサイズと手頃な価格で根強い人気を集める「iPhone SE」が2年ぶりに刷新。6コアCPUと4コアGPUのA15 Bionicチップを搭載しました。

↑新iPhone SE。前モデルは2020年登場だったので、2年ぶりです

 

このA15 Bionicチップ搭載により、2021年発売の「iPhone 13」と同等の処理性能を手に入れたことになります。ストレージ容量は64GB、128GB、256GBの3種類で、直販価格は5万7800円(税込)から。iPhone 13の直販価格が8万6800円(税込)からなので、iPhone 13より3万円近くも価格を抑えながら、最新の処理性能を楽しめることになります。

↑A15 Bionicチップの搭載で4.7インチのiPhone 8に比べて1.8倍高速になりました

 

カラーバリエーションはミッドナイト、スターライト、(PRODUCT)REDの3色を用意。そのほか主なスペックは、4.7インチのRetina HDディスプレイ(1334×750ピクセル)、色温度を自動調整するTrue Toneディスプレイ採用、触覚タッチ対応、ホームボタン内蔵のTouch ID、12メガピクセルの広角リアカメラ、7メガピクセルのフロントカメラなどとなっています。

↑スマートフォンの中で最も頑丈とうたうガラスを前面と背面に採用。また、IP67等級の耐水性能と防塵性能を備えています

 

↑5G対応もトピックです

 

サイズは約幅67.3×高さ138.4×厚み7.3mmで、重量は約144g。3月11日から予約注文の受付を開始し、3月18日に発売する予定です。

 

新製品その2 MacBookに搭載のM1がiPad Airにも来た! 新たなカラバリにも注目

スペック面で意表を突いて来たのが新しい「iPad Air」です。

↑新iPad Air

 

iPad Airは今回で第5世代となりますが、プロセッサーにはなんとApple M1チップ(8コアCPU、8コアグラフィックス、Apple Neural Engine、8GB RAM)を搭載。A14 Bionicチップを搭載していた第4世代のiPad Airと比べると、CPUの処理性能は最大60%、グラフィックスの処理性能は最大2倍に向上しているとのことです。

↑M1搭載のiPad Airは同価格帯の「最も売れているWindowsノートPC」より最大で2倍高速としています

 

これまで、M1を搭載するiPadは最小構成で9万4800円(税込)のiPad Proのみでした。高機能なiPadを求める人にとって、新たに有力な選択肢が生まれた格好です。

 

フロントカメラは広角の12メガピクセル。FaceTimeなどビデオ通話の使用時に、自動的に話者を中央に配置する「センターフレーム」に対応しています。

↑iPad全モデルがセンターフレームに対応

 

↑iPad Airも5Gに対応しています

 

なお、オプションとしてApple Pencil(第2世代)、Magic Keyboard、Smart Keyboard Folioに対応する点などは、第4世代のiPad Airと同様。10.9インチ(2360×1640ピクセル)のLiquid Retinaディスプレイや、Touch IDセンサーを兼ねたトップボタンなども、第4世代から変わっていません。

 

デザインも基本的には第4世代を踏襲しますが、カラーバリエーションは、スペースグレイ、スターライト、ピンク、パープル、ブルーの5色展開となりました。

↑iPad Airのカラバリ。左からパープル、ブルー、ピンク、スターライト、スペースグレイ

 

サイズは約幅178.5×高さ247.6×厚み6.1mmで、重量はWi-Fiモデルが約461g、Wi-Fi+Cellularモデルが462g。ストレージは64GBと256GBから選択できます。

 

価格はWi-Fiモデルの64GBが7万4800円(税込)、256GBが9万2800円(税込)。Wi-Fi+Cellularモデルの64GBが9万2800円、256GBモデルが11万800円です。3月11日から予約注文の受付を開始し、3月18日から販売を開始します。

 

新製品その3 制作スタジオ向けデスクトップ「Mac Studio」が、M1シリーズ最上位チップ「M1 Ultra」を携えて登場

発表イベントの特設サイトには、数日前から「最高峰を解禁(米国版では「Peek performance」と表記)」という文字がありました。「最高峰」が何を意味するのか、SNSなどを中心に議論になっていたのです。

 

その答えを明かすかのように発表されたのが、M1シリーズ最上位チップ「M1 Ultra」を搭載した「Mac Studio」です。

↑右下のボックスがMac Studio。ディスプレイは後述のStudio Displayです

 

Mac Studioは、およそ幅197×奥行き197×高さ95mmというコンパクトなボディながら、16コアのIntel Xeonを搭載するMac Proや、10コアのIntel Core i9を搭載する27インチiMacをも超えるパフォーマンスを実現したというデスクトップマシンです。

 

M1 Ultraは、アップルが「パーソナルコンピュータ史上、最もパワフル」と説明するチップで、2つのM1 Maxをつなぎ合わせる「UltraFusion」という方式で製造されています。

↑新たに発表されたM1 Ultra

 

↑2つのM1 Maxのダイをつなげることで低遅延、膨大な帯域幅、優れた電力効率を実現。驚異的なパフォーマンスを実現するとうたうチップです

 

↑2つのダイの間で2.5TB/秒の帯域幅、PC用のチップとしては史上最多という1140億個のトランジスタ、800GB/秒のメモリー帯域幅など、スペック面でまさに圧倒的なチップです

 

20コアCPU、64コアGPU、32コアNeural Engineなど、コア数も驚異的。そのCPU処理性能は27インチiMac(10コアIntel Core i9搭載)の最大3.8倍、GPU処理性能は27インチiMac(Radeon Pro 5700 XT搭載モデル)の最大3.4倍を実現しています。

↑最上位のMacProよりも最大80%高速化

 

これにより、「複雑な粒子シミュレーション」や「巨大な3D環境のレンダリング」など、「かつてないほど負荷の高い作業」をパワフルにこなせるとアップルは説明しています。

 

底面の空気口から吸気し、チップの真上に取り付けられたファンでチップを冷やしつつ、背面の排気口から排熱するという排熱設計にも特徴があります。

↑底部には穴が開いており、そこから吸気します

 

↑背面の穴から排気

 

ラインナップは、M1 Max搭載モデル(最小構成32GBメモリー、512GB SSD)とM1 Ultra搭載モデル(最小構成64GBメモリー、1TB SSD)の2モデル展開で、価格はM1 Maxモデルが24万9800円(税込)から、M1 Ultraモデルが49万9800円(税込)から。

 

インターフェイスは、M1 Max搭載モデルがUSB Type-C×2、SDXCカードスロット×1、Thunderbolt 4×4、USB Type-A×2、HDMI×1、10GB Ethernet端子×1、3.5mmヘッドフォンジャック×1を搭載。一方のM1 Ultra搭載モデルは、SDXCカードスロット×1、Thunderbolt 4×6、USB Type-A×2、HDMI×1、10GB Ethernet端子×1、3.5mmヘッドフォンジャック×1をそろえています。

↑最大で4台の32インチRetina 6Kディスプレイ「Pro Display XDR」に加え、1台の4Kテレビと接続できます

 

なお、注文画面で最もハイエンドなスペックにカスタマイズした場合、M1 Ultra(20コアCPU、64コアGPU、32コアNeural Engine)、128GB メモリー、8TB SSDという仕様になり、価格は93万9800円となります。

 

すでに予約注文の受付が始まっており、3月18日に発売予定です。

 

ここまでハイスペックなモデルなら、Mac Proを置き換える存在になるのかとも思えましたが、発表会中には「Mac Proについては、また次の機会」とのコメントも聞けました。M1 Ultraという新しいチップ、Mac Studioという新しいシリーズが加わったことで、今後、Macの製品ラインアップがどのように展開していくかも楽しみです。

 

新製品その4 空間オーディオやセンターフレーム対応の5Kディスプレイ「Studio Display」

またMac Studioと合わせて、27インチディスプレイ「Studio Display」も発表されました。5120×2880ピクセルの5K仕様で、ディスプレイでありながらA13 Bionicチップを搭載。6基のスピーカーユニットによる空間オーディオの再生や、センターフレームに対応する12メガピクセルの超広角カメラ、「Hey Siri」の呼びかけでのSiriの起動、「スタジオ品質」をうたうマイクアレイの搭載といった機能を持ちます。

↑Studio Display

 

↑Macシリーズ初対応のセンターフレーム

 

また、標準で傾きを調整できるスタンドを備えますが、オプションとして、傾きと高さを調整できるスタンドと、VESAマウントアダプタも用意されるとのことです。

↑ディスプレイは最大30度まで傾けられます。また、横から見る限りはかなりスリムな印象です

 

↑VESAマウントアダプタを装着すれば横掛けはもちろん、縦掛けも可能

 

↑3基のUSB Type-Cと1基のThunderbolt 3を装備。Thunderbolt 3は、MacBookの充電も可能です

 

価格は19万9800円(税込)から。すでに予約注文の受付を開始しており、3月18日に発売予定です。

 

新製品その5 iPhone 13とiPhone 13 Proに新緑を思わせる新色

iPhone 13とiPhone 13 Proに、新色が追加されたのも今回のトピックです。

↑新色追加のiPhone 13とiPhone 13 Pro

 

iPhone 13、iPhone 13 miniの「グリーン」は、ややくすんだ渋めのグリーン。これまでのアップル製品には見られなかった色味で、新鮮に思えます。iPhone 13 Pro、iPhone 13 Pro Maxの「アルパイングリーン」も色の系統としてはiPhone 13のグリーンに似ていますが、iPhone Proシリーズ特有の磨りガラスの質感、ステンレスフレームの光沢感が加わり、より高級感のある仕上がりになっています。

 

iPhone 12、iPhone 12 miniにも「グリーン」というカラーバリエーションが存在していましたが、あちらは淡い色味でした。はっきりと濃い緑系統の色は、iPhone 11 Proの「ミッドナイトグリーン」以来です。これからiPhone 13シリーズに買い替える予定のある方は、要注目ですね。

 

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【西田宗千佳連載】「自社のための自作プロセッサー」へ舵を切る大手IT企業群

Vol.98-4

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「Appleシリコン」。ついに登場した話題のアップル製CPU搭載モデルが一躍好評を博している理由とは。

 

アップルが自分でプロセッサーを作るのは、「自分たちの製品計画に特化したものを求めている」からだ。プロセッサーの設計は簡単なことではないが、アップルはすでに10年選手であり、iPhoneという、世界でもっとも売れる製品などで多くの経験を積んでいる。

 

アップルがプロセッサーを作れるなら、他の大企業にもできる、ということでもある。真偽は不明ながら、2020年末には、マイクロソフトが新たに「ARMを使った自社オリジナルプロセッサーを開発する計画がある」との報道が流れた。「Surface Pro X」では「Microsoft SQ」というプロセッサーを搭載しているのだが、これはSnapdragon 8cxを多少カスタマイズしたもので、完全なオリジナルではない。報道を信じるなら、今度は少し違うようだ。

 

マイクロソフトはノートPC向けだけでなく、サーバー用のプロセッサーもにらんでいるようだ。同じように、クラウドインフラ大手のアマゾン・ウェブサービスは、機械学習用にオリジナルのARM系プロセッサー「Graviton」を開発し、クラウドインフラを求める企業に対して提供している。ハードディスクなどのストレージ事業で知られるウェスタンデジタルは、ストレージをコントロールするためのプロセッサーを、オープンソースのプロセッサーアーキテクチャである「RISC-V」を使って開発している。

 

過去、オリジナルのプロセッサーを作るビジネスの代表的なものとして、ゲーム機があった。これはゲーム機が販売数量を稼げるから可能なことだった。しかし、昨今では、ソフト開発効率とプロセッサー開発コストのリスクを重くみて、主要なゲーム機のプロセッサーは、AMDとの共同開発に切り替わっている。

 

その一方で、スマートフォンやPC、クラウド向けサーバーなどでは、自分たちがリスクを取って、より独自性の高いプロセッサーを開発する流れが加速している。アップルはその最右翼だ。15年前には「自分で半導体工場を持つ」ことでしか最先端のプロセッサーを作るのは難しかった。しかしいまは台湾・TSMCやサムスンのような「最先端技術による半導体製造を請け負う企業」が登場したことにより、リスクを小さくして、自社オリジナルのプロセッサーを製造することができるようになっている。

 

とはいえ、一定以上の規模のない製品では、オリジナルのプロセッサーを使うのは難しいだろう。率直に言えば、日本のPCメーカーやスマホメーカーの規模感では難しい。そういった企業には、インテルやAMD、クアルコムがプロセッサーを提供し続けることになる。

 

自らプロセッサーを作る超大手と、大手プロセッサーメーカーと組む企業の間での競争は、2021年の後半あたりから加速し始めるのではないか。M1 Macの登場は、その先触れとも言える存在だったのである。

 

 

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【西田宗千佳連載】伸びきれていない「ARM系Windowsマシン」の可能性

Vol.98-3

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「Appleシリコン」。ついに登場した話題のアップル製CPU搭載モデルが一躍好評を博している理由とは。

 

M1搭載Macは、いわゆる「ARM系CPU」を使ったプロセッサーである。ARMはCPUのアーキテクチャを他社にライセンスする企業であり、インテルやAMDのように「プロセッサーそのものを売る」会社ではない。なので、アップルはARMにライセンスを受けて自社でプロセッサーを作っている。

 

他のスマホメーカーは、ARMからライセンスを受けた別のメーカーからプロセッサーの供給を受ける形になっている。その最大手は、みなさんもご存知の「Snapdragon」シリーズを作っているクアルコムだ。

 

クアルコムはスマホ向けプロセッサーだけでなく、ノートPC向けのSnapdragonも作っている。また、マイクロソフトと協力し、「Surface Pro X」シリーズ向けにオリジナルのプロセッサーも作った。

 

だが残念ながら、これまで、それらの「ARMを使ったノートPC」は、あまり高い評価を受けていない。消費電力の低さは注目されるものの、M1 Macのように性能や快適さが注目されたことはほとんどない。

 

これには理由が3つある。

 

一つ目の理由は、ARM版のWindowsでは、これまでアプリケーションの互換性に制限があったことだ。2020年末になってようやく、すべてのx86系CPU向けアプリがARM版Windows上で動くようになったが、それでもまだテスト段階であり、認知度は高くない。

 

二つ目はメモリの扱い。M1は高速なメインメモリをCPU・GPUと混載する形で構成している。結果としてメモリの扱いが効率的で、動作速度に反映されている。それに対してこれまでのPC向けARM系プロセッサーは、スマホの延長線上で作られており、メモリの量や帯域に課題があった。最新のプロセッサーでは改善が進み、クアルコムはすでに「インテルのCore iシリーズより速い」と謳っている。

 

三つ目がコストだ。現状、PC向けのSnapdragonは比較的高価で、搭載PCもそこまで安くはない。インテルやAMDによるx86系プロセッサーを使ったノートPCと同じような価格帯では、パフォーマンス的に大きな向上が見えない以上、選択肢が多い「既存のx86系PC」を選ぶのが普通、といえるだろう。

 

こうした課題はこれから解消されてくる可能性もある。M1の登場により、「x86系でなければならない理由はない」ことが見えてきたからだ。実用性という意味では、Windowsでは当面インテル・AMDが優位な時期が続くだろう。だが、数年のうちに「ARM系Windowsを選ぶ人」も増えてくる可能性はある。事実、ChromebookではCPUの種類はあまり重要になっておらず、単純に価格によって採用するプロセッサーが違ってくるという印象だ。いずれPCにもそういう時代がやってくる可能性は高い。

 

では、「x86系ではないプロセッサーの増加」はどんな意味を持っているのか? そこは次回のウェブ版で解説したい。

 

 

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【西田宗千佳連載】Apple M1は「ノート型特化」だからこそ快適なMacを生み出せた

Vol.98-2

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「Appleシリコン」。ついに登場した話題のアップル製CPU搭載モデルが一躍好評を博している理由とは。

 

Apple M1を搭載したMacは高性能だ。特に、インテルCPU版のMacBook AirやMacBook Proと比較した場合のパフォーマンス向上ははっきりしている。動画圧縮の速度が上がったり、ゲームプレイ時のフレームレートがアップしたりと、性能向上を体感できる部分は多い。

 

だが、「どんなPCよりも速い」と考えるのは間違いだ。現状のM1が高く評価されているのは、あくまで「一般的なノートPC用プロセッサーとして」である。例えば、同じMacでもiMac ProやMac Proほどの性能はないし、Windowsでいえば、ゲーミングPCほどのグラフィック性能もない。外部インターフェイスの数と速度も弱い。なので、「これさえあればハイパフォーマンスなPCやMacは必要ない」と考えるのは間違っている。

 

M1の重要な特性は、「ノートPCとしての快適さに特化している」という点だ。バッテリーは長持ちし、ハイパフォーマンスが必要なシーンでもなかなか発熱せず、ファンも回らない。一般的なPCでは、CPU&GPUがフルに性能を発揮するにはAC電源に接続し、十分な電力が供給されていることが条件となるが、M1 Macの場合、バッテリーでもAC電源でも性能がほとんど変わらない。

 

これはいうならば、いままでのノートPCより、iPadの特性に近い。本当に一日中どこでもフルパワーで動き、発熱も騒音もない。「どういう使い方に向くのか」という点を大きく変えたのがM1 Macの特徴なのだ。

 

逆に言えば、現状のM1は「ノートPC以外」をあまり想定していない。Mac miniにも使われているが、これは例外的な存在だ。常に十分な電力が供給されており、より高い性能が必要とされる用途に向けては別のプロセッサーが必要になる……ということでもある。

 

従来、PC用のプロセッサーは「汎用」だった。CPUがあってGPUがあり、メモリを別途搭載することで構成されていた。汎用性があるゆえ、自作PCのようなものも存在するのだ。だが、交換できるということは、用途に特化した設計は難しくなる、ということでもある。ゲーム機のように特化した設計の機器は、パーツの交換はできないがそのぶんコストパフォーマンスの良い設計にできる。アップルがM1でやったのは、「ノートPC専用設計のプロセッサーを作って、いま求められるノートPCとして快適な製品を作ること」にほかならない。パフォーマンスが高いのはその結果だ。逆に言えば、ゲーミングPCやデスクトップ型には、そのままでは適応しづらい。

 

アップルがそうした「ハイパフォーマンス向け」でどういう回答を出すのかはまだわからない。しかし少なくとも、M1と同じように「専用設計」になるのは間違いない。メモリやGPUの違いで機器のバリエーションを増やすということはなく、「同じようなプロセッサーを何種類か性能で使い分ける」といった展開をしてくると予想される。

 

では、なぜアップルだけがM1で「高性能なノートPC特化のプロセッサー」を作れたのだろうか? インテルやクアルコムだって、同じようなものは作っているはずだ。そのあたりの理由は、次回のウェブ版で解説することとしよう。

 

 

 

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あなたにも「内なるスティーブ・ジョブズ」がいる。ジョブズのビジネス術を理解するための8つのメソッド

初めて手にしたアップル社製品。それは人それぞれだと思う。筆者の場合は、2010年に購入した第4世代iPod Shuffleだった。アップルデビューは、自分でも驚くくらい遅い。仕事関係ではMacを使っている人たちが多いが、初めて触ったPCがwindowsだった筆者は、なんとなく乗り換えないままここまで来ている。

 

 

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茂木健一郎氏のアップル愛あふれるひと言

そんな筆者がiPhone 5sを手にしたのは、こちらも遅ればせながら3年前だった。Macと違って、iPhoneは4のあたりから欲しくて欲しくて仕方がなかった。プライベートの旅行や仕事で時々訪れたアメリカのデパートには、必ずと言っていいほどアップル製品の自動販売機が置かれていた。いつか必ず手に入れると決めてから、かなりの時間が経ってしまった。

 

だから、マイファースト・iPhoneを手にした時のインパクトは人並み以上だったに違いない。docomoのお店の窓口のお姉さんも、筆者に真新しい箱を手渡し、開けさせてくれた。理由を尋ねると、その儀式的な瞬間にこだわりたい人が多いのだという。

 

話が前後するが、スティーブ・ジョブズが亡くなった直後に追悼番組が放送されていた。この番組にゲストとして出演していた茂木健一郎氏が語った言葉が、とても印象的だった。

 

「アルゴリズムの優劣がコンピューティングでは決してなくて、エクスペリエンス全体がコンピューティングだと思う」

 

そしてポケットからiPhoneを取り出し、「これがコンピューティングだ」とおっしゃった。このひと言が、筆者のiPhoneへのパッションをさらにかき立てることになったのだ。

 

 

ジョブズが残した言葉

「図解」スティーブ・ジョブズ全仕事』(桑原晃弥・著/学研プラス・刊)は、「はじめに」の前に記された印象的な言葉から始まる。

 

次にどんな夢を描けるか。それがいつも重要だ。

 

あんなに小さな音楽プレーヤー、そしてあんなに使いやすいスマートフォンが作られた過程にいくつもあるに違いない要所には、夢のかけらがきらめいているのだろう。ユーザーは、日々製品を使っていく中でそのきらめきを感じることができるからこそ、ますますアップル製品に愛着が湧く。茂木先生のあの番組でのひと言も、そういうことだったんじゃないだろうか。

 

もちろん筆者も、毎日手に取るiPhone7を通じて同じことを感じている。

 

 

あなたの中のジョブズ的な部分

映画を見ても伝記本を読んでも、スティーブ・ジョブズという人はエキセントリックな天才というイメージで描かれることが圧倒的に多い。本書は、こうしたイメージに疑問を感じ取ろうとするところから出発する。

 

「スティーブ・ジョブズはすごい人物だが、その下で働くのは大変そうだね」 「彼は天才だ。学んだり、真似したりする対象ではない」――ジョブズに関心がある人の多くが口にする言葉だ。でも、それは本当だろうか。

『「図解」スティーブ・ジョブス全仕事』より引用

 

そして著者の桑原さんは、次のようなジョブズ像をあえて示す。

 

天才というより、平凡だが夢を持った若者が挫折をくり返しながら円熟していく成長物語の主人公というべきではないだろうか。天才というなら、困難の中で自己実現を果たす生き方の天才というのが正解だ。だから、私たち自身の規範にできるし、学んだり、真似したりすることもできる。というのが私の考えである。

『「図解」スティーブ・ジョブズ全仕事』より引用

 

誰の内側にもジョブズ的な部分がある、ということなのだろう。

 

 

8つのメソッド

本書は、以下のように8つのメソッドに分けた構成になっている。

 

1. 問題解決の新しい道を開いた――挑戦力のメソッド

2. 「ノー」を発想の中心に置いた――貫徹力のメソッド

3. チャンスのつくり方を変えた――逆境力のメソッド

4. プレゼンテーションを劇場化した――説得力のメソッド

5. 世界的ヒットでライフスタイルを変えた――独創力のメソッド

6. チームづくりの常識を変えた――人材力のメソッド

7. イノベーションを戦略に高めた――改革力のメソッド

8. 大きなビジョンを身近に引き寄せた――情熱力のメソッド

 

このように考えると、スティーブ・ジョブズはつくづくメソドロジーの人なのだと思う。はてなキーワードによれば、メソドロジーは、「能力を伝授するために体系づけた方法論」と定義されている。

 

そして、天才と呼ばれることが多かった自分が宿す能力を多くの人たちに伝授することを通じて、数々のヒット商品を形にしていったのではないだろうか。

 

 

ジョブズという多面体クリスタル

ジョブズの名前を聞いて、ほとんどの人がスタイリッシュなプレゼンテーションを最初に思い浮かべるだろう。でもそれは、スティーブ・ジョブズという多面体クリスタルのような存在の一面にすぎない。

 

ドラマチックなプレゼンテーションは氷山の一角であって、それを実現させるための数限りないメソドロジーが広がっていたのだろう。そういったジョブズらしさをイラストと共に味わっていくという本書のコンセプトは、中学生にも大企業のエグゼクティブにも同じように伝わりやすいに違いない。

 

すべての根底にあったのは、夢だったのかもしれない。ただそれは、思い描くだけのものでは決してなかった。きちんと計画し、多くのメソドロジーを通じて実現されるべきものだったのだ。

 

【著書紹介】

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図解 スティーブ・ジョブズ全仕事

著者:桑原晃弥
出版社:学研プラス

2011年10月に逝去したアップル社の天才CEO スティーブ・ジョブズがその生涯に成し遂げた業績と手法を詳細図解で徹底検証。イノベーション、チームマネジメント、プレゼン、交渉術…彼のビジネスメソッドのすべてがわかる決定版!

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