無印良品が展開するレーベル「MUJI Labo(ムジ ラボ)」の売上が飛躍的に伸びています。『アパレルウェブ』の記事によれば、2017年の秋冬シーズンは前年比180%の売上で推移。とくにメンズラインは前年比360%と、飛躍的な売上げアップを記録しています。購買層の構成を見ると、20〜30代男性が前年までの43%から65%に拡大。Tシャツ、デニムパンツ、スニーカーといったベーシックなアイテムに人気が集まっています。
MUJI Laboが人気を高めた大きなきっかけは、2017年の春夏シーズンに実現した5年ぶりのリニューアル。メンズウェアは「エヌハリウッド」のデザイナーである尾花大輔氏、レディスウェアは「タロウ ホリウチ」の堀内太郎氏をデザインディレクターとして招聘し、自由な発想で新しいベーシックな衣服作りに挑戦しています。
月ごとにアイテムのテーマを決め、揃えていくと4ヶ月でワードローブが完成するという展開も画期的で新鮮です。また、ベーシックと言いつつトレンドも適度に加味し、スタンドカラーのシャツやシューレースを省いたスニーカーなどをリリース。単なる無難や量産型とは異なるワンランク上のベーシックを提案しています。
そして何より、個人的にはMUJI Laboのコンセプトに共感しています。以下、公式サイトからそのまま引用します。
隙間がないほどにぎっしりと服が並んだクローゼットよりも、自分の生活に寄りそう、ほんとうに必要なものを数点だけ、ゆとりをもってしまっているクローゼットに豊かさを感じます。服は本来、たくさん持つ必要はないのかもしれません。飾り立てるファッションから距離を置いた、実験室。ここから、将来の無印良品のベーシックが生まれます
MUJI Laboは展開しているアイテム数も少ないため、4ヶ月で完成するワードローブが膨張し過ぎることもありません。
私はかつて、雑誌『メンズクラブ』で「達人の履歴書」という連載を担当していました。まさしく“おしゃれの達人”たちからお話を伺うことのできる貴重な体験となったのですが、そこで得た教訓のひとつが、本当におしゃれな人ほど実際に稼働しているワードローブは少数精鋭ということです。
膨大な服のコレクションを所有している達人も少なくありませんが、日常的に着回すレギュラークラスの服に関しては、気に入ったトレンチコートを何十年も愛用していたり、好きなバスクシャツを色違いで揃えつつ生産終了に備えてストックを準備していたりと、徹底的に絞り込んでいるのです。
茶道、武道、芸術における修行のステージを“守破離”と表現しますが、個人的には着こなしやおしゃれもそうあるべきだと考えています。簡潔に言えば、基本を身につける段階、幅を広げる段階、自分のスタイルを確立する段階という3ステップがあるということ。40にして迷わずではないですが、おしゃれな大人はたいてい最終段階の“離”に達しています。自分のスタイルが確立しているからこそ、着回す服は少なくて済むのです。
ワードローブの軸となる服を絞り込む際は、「着たい」「着るべき」「着ることができる」のバランスを考慮すべきというのが私の持論。求める要素をすべて満たす服を見つけるのは簡単ではありませんが、ワンランク上のベーシックを選りすぐって提示してくれるMUJI Laboなら、しっくりくる服や最適解に近い服が見つけやすいはずです。
いろいろと書いてしまいましたが、とりあえず着るだけでバランスの良いおしゃれが完成するからこそ、一足飛びで正解が知りたい若者にもウケた……それこそがMUJI Laboが好調な理由だとは思います(笑)。
【著者プロフィール】
「着こなし工学」エバンジェリスト 平 格彦
1974年、東京都生まれ。O型。天秤座。ライター/編集者。コラムニスト。プランナー。AllAbout「メンズファッション」ガイド。[着こなし工学]ファウンダー。JAPAN MENSA会員。野菜ソムリエ。大学でマーケティングを専攻した後、新卒で出版社へ入社して広告部、ファッション誌編集部を経て退職。2年間のニート期間を経て転職した出版社を1日で辞めた伝説を持つ。その後、フリーランスに。メンズファッション関連だけで35以上のメディアに関わってきた実績を持ち、客観的、横断的、俯瞰的にファッションを分析するのが得意。そんな視点を活かして[着こなし工学]を構築中。編集力を応用して他分野でも活動。
分散型個人メディア[Masahiko Taira](プロトタイプ) : www.masahikotaira.com