寫樂じゃなくて、そっち…!?「世界一の日本酒」を決めるコンペで意外な「返り咲き」蔵元の心境は?

「SAKE COMPETITION(サケコンペティション) 」は、市販酒を対象とした世界最大規模の日本酒コンペ。日本酒の総出品数は約455蔵から1772点を数え、事実上の「世界一の日本酒」を決めるコンペとなっています。先日、速報として「SAKE COMPETITION 2018」各部門の受賞酒をレポートしましたが、今回はその表彰式で受賞した蔵元やコンペの仕掛け人にインタビューを行い、その背景を明らかにしていきます!

 

部門のトップとなった注目の蔵元にインタビュー

↑スパークリング部門のトップ3。中央が岩手県の「南部美人 あわさけスパークリング」。スパークリング部門では2年連続の1位です。左が2位の広島県「一代 弥山(いちだい みせん) スパークリング」、右が3位の大分県「八鹿(やつしか) スパークリング Niji」

 

まずは昨年、「南部美人特別純米酒」がインターナショナルワインチャレンジ(IWC)2017において、「チャンピオンサケ」を受賞した南部美人。日本酒のプロ中のプロが審査する本コンペでも、純米大吟醸部門(出品数445点)とスパークリング部門(出品数74点)の2部門で1位に輝くという快挙を達成しました。

↑南部美人の久慈浩介社長

 

受賞の喜びを、南部美人代表の久慈浩介社長は以下のように語ります。

 

「瓶内二次発酵で透明、かつシャンパン並みのガス圧を持った日本酒を『世界の乾杯酒にしよう』という想いで造っているのがスパークリング。純米大吟醸は、世界一を目指すわが蔵のフラッグシップです。また、スパークリングには『進化』や『挑戦』、純米大吟醸には『伝統への回帰』を求めているのですが、その両方で評価されたことが本当にうれしいですね」(久慈社長)

 

意外な返り咲きを果たした「寫樂」蔵元は、受賞に驚きながらも納得

↑純米部門のトップ3。中央が福島県の「會津宮泉(あいづみやいずみ) 純米酒」、左が2位の宮城県の「あたごのまつ 特別純米 冷卸(ひやおろし)」、右が3位の宮城県「蔵王 K(ざおう ケー) 純米酒」

 

続いて純米酒部門(出品数456点)で1位に輝いた宮泉銘醸(みやいずみめいじょう)。宮泉銘醸は、「寫樂」(しゃらく)の銘柄で2014年に純米酒と純米吟醸の2部門で1位を獲得し、一躍スター蔵元として脚光を浴びましたが、今回は、それ以来のトップとなります。同蔵で全国的に有名なのはもちろん、フルーティで滑らかな飲み口の「寫樂」ですが、今回はやや辛口で、キレ良く仕上げたという地元銘柄「會津宮泉」(あいづみやいずみ)がトップに(「寫樂」も5位をマーク)。宮森義弘社長は、意外ともいえるこの結果をどう捉えているのでしょうか。

↑宮泉銘醸の宮森義弘社長

 

「当然かもしれませんが、流通に関係なく、すべての銘柄に全力投球しているので、地元向けの『會津宮泉』が1位になったのは、驚きがある一方ですごくうれしいです。もともと、『會津宮泉』も『寫樂』も、どちらも造るレベルは同じ。造りのクオリティを引き上げてきた結果が『會津宮泉』の受賞なんです。地元の有志にいい報告ができることもうれしいですね。特に目標としている『飛露喜』(ひろき)の廣木(健司)さん。10年前は、彼に追いつくことに必死でしたが、最近、ようやく同じ目線で日本酒を語れるようになってきました。いままでは『もう追い抜いている』とか、冗談で言ってはいたんですけどね(笑)。そんな先輩や後輩たちとともに、これからも会津を盛り上げていきますよ!」(宮森社長)

 

ちなみに、宮森さんが目標とする廣木健司さんは、主要銘柄の「特別純米」の造りで、「ややドライでシャープな酒質を目指す」とのこと。奇しくも、今回1位を受賞した「會津宮泉」の方向性と一致しており、今後のトレンドを象徴しているようにも見えて、興味深いですね。

 

吟醸部門1位の蔵は「昨年の受賞で手ごたえを感じていた」

↑吟醸部門のトップ3。中央が1位の岡山県「極聖(きわみひじり) 大吟醸」、左が2位の兵庫県「福寿 超特撰(ふくじゅ ちょうとくせん) 大吟醸」、右が3位の栃木県「 燦爛(さんらん) 大吟醸 雫酒(しずくざけ)」

 

「SAKE COMPETITION」は完全なるブラインドで評価されるため、銘柄の知名度は一切関係ありません。そのため、大都市の有名酒販店であまり見かけない酒が1位になることも。今回は吟醸部門(出品数198点)でトップとなった「極聖(きわみひじり) 大吟醸」がその好例となりました。

 

蔵元は岡山県の宮下酒造。日本酒を筆頭に、クラフトビール「独歩」やクラフトジン、ウイスキーなど幅広く手掛けています。全国新酒鑑評会では、現在8年連続で金賞を獲得する実力蔵ですが、実は「SAKE COMPETITION」に出品を始めたのは昨年の2017年から。専務で工場長も務める宮下晃一さんに、受賞への想いを聞いてみました。

↑宮下晃一専務

 

「去年、初の出品で『極聖 純米大吟醸 天下至聖』がSuper Premium部門のGOLD第2位、吟醸部門において『極聖 大吟醸』がGOLD第8位という結果で、手ごたえを感じていましたが、今年は栄えある1位ということで本当にうれしいです。味の特徴は華やかで、豊かな甘みがありながらも後味はすっきりしていて飲みやすいと思います。贅沢な造りをしていますので、特別な日に飲んでいただきたいですね」(宮下専務)

 

「十四代」が10位を逃すほど、全体のレベルは確実に上がっている

最後は主催者側の声を紹介します。インタビューに応えてくれたのは、以前当サイトで単独インタビューを行ったこともある、「はせがわ酒店」の長谷川浩一社長。「SAKE COMPETITION」発起人のひとりであり、いまの日本酒ブームを作った立役者でもあります。

↑はせがわ酒店の長谷川浩一社長

 

「W受賞の『南部美人』がすごいと思う一方で、『極聖』のようなあまり知られていない蔵がいきなり1位になるのが、このコンペの面白いところ。この銘柄、オレだってよく知らないもん。あと、やっぱり強いと思ったのは『作』(※)だね。一方で、10位入賞常連の『十四代』が入っていなかったのが驚き。高木酒造(十四代の蔵元)だって毎年レベルをぐんぐん上げているのにね。受賞するかどうかは本当に微差ですけど、それだけ全体のレベルが上がっているってことでしょうね。その点は、SILVER(トップ10入りを逃した次点の銘柄)を見ればよくわかる。十四代を含め、そうそうたる面々ですよ。

※作(ざく)……三重県の清水清三郎商店の銘柄。今年は純米吟醸部門1位で、昨年は純米部門でワンツーフィニッシュ

↑「芳醇旨口」と呼ばれる日本酒の新しい流れを作り、現在でも高い人気を誇っている「十四代」。今回は惜しくも10位入賞を逃しましたが、その華やかな酒質は地酒ファン垂涎の的となっています

 

あと、大会の規模が大きくなるのはうれしいけど、これ以上出品点数が増えると、きき酒をする会場を探すのも大変なんだよね……。でも、何とか2020年、オリンピックイヤーまでは続けていきますよ。世界の注目が集まるこのタイミングで、大いに盛り上げていきたいですね。今後もぜひ、ご期待ください!」(長谷川社長)

 

長谷川社長はまた、「いまごろ、受賞した蔵には問い合わせの電話がジャンジャンかかっているでしょうね。今年もまた争奪戦ですよ」と語ってくれました。受賞酒が早々に売り切れてしまう前に、以下でチェック頂き、ご自身の舌で楽しんでみてください!

 

SAKE COMPETITION 2018の結果

【純米酒部門】

GOLD 10点/SILVER 36点/予審通過 166点/部門出品数 456点

1位 福島県会津若松市 宮泉銘醸株式会社
會津宮泉(アイヅミヤイズミ) 純米酒

2位 宮城県大崎市 株式会社新澤醸造店
あたごのまつ 特別純米 冷卸(ヒヤオロシ)

3位 宮城県白石市 蔵王酒造株式会社
蔵王 K(ザオウ ケー) 純米酒

4位 栃木県さくら市 株式会社せんきん
クラシック仙禽 無垢(センキン ムク)

5位 福島県会津若松市 宮泉銘醸株式会社
寫楽(シャラク) 純米酒

6位 京都府京都市 松本酒造株式会社
澤屋(サワヤ)まつもと 守破離 山田錦(シュハリ  ヤマダニシキ)

7位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人 特別純米(トウヨウビジン)

8位 滋賀県甲賀市 笑四季酒造株式会社
笑四季(エミシキ) センセーション 白ラベル

9位 福島県河沼郡 合資会社廣木酒造本店

飛露喜(ヒロキ) 純米

10位 広島県呉市 宝剣酒造株式会社
宝剣(ホウケン) 純米酒

【純米吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 44点/予審通過 178点/部門出品数 534点

1位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 恵乃智(ザク メグミノトモ)

2位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 純米吟醸 一歩(イッポ) 山田錦

3位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 純米吟醸 50

4位 福島県会津若松市 名倉山酒造株式会社
善き哉(ヨキカナ)

5位 栃木県宇都宮市 株式会社虎屋本店
七水 55(シチスイ ゴーゴー)

6位 高知県香美郡 株式会社アリサワ
文佳人 吟の夢(ブンカジン ギンノユメ) 純米吟醸

7位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米吟醸 愛山(アイヤマ)

8位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 雅乃智 雄町(ザク ミヤビノトモ オマチ)

9位 山形県鶴岡市 冨士酒造株式会社
栄光冨士(エイコウフジ) 純米吟醸 朝顔ラベル 生貯(ナマチョ)

10位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米吟醸 雄町(オマチ)

【純米大吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 35点/予審通過 156点/部門出品数 445点

 

1位 岩手県二戸市 株式会社南部美人
南部美人(ナンブビジン) 純米大吟醸

2位 茨城県石岡市 合資会社廣瀬商店
SEN(セン)
3位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 雅乃智 中取り(ザク ミヤビノトモ ナカドリ)

4位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 朝日米(ザク アサヒマイ)

5位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米大吟醸 極上ノ斬(ゴクジョウノキレ)

6位 群馬県前橋市 株式会社町田酒造店
町田酒造35 プレミアム 純米大吟醸

7位 茨城県石岡市 府中誉株式会社
渡舟(ワタリブネ) 純米大吟醸 斗壜取り(トビンドリ)

8位 栃木県小山市 小林酒造株式会社
鳳凰美田 赤判(ホウオウビデン アカバン)

9位 茨城県結城市 結城酒造株式会社
結ゆい(ムスビユイ) 純米大吟醸 雫酒(シズクザケ)

10位 愛媛県西条市 石鎚酒造株式会社
石鎚(イシヅチ) 純米大吟醸

【吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 10点/予審通過 69点/部門出品数 198点

1位 岡山県岡山市 宮下酒造株式会社
極聖(キワミヒジリ) 大吟醸

2位 兵庫県神戸市 株式会社神戸酒心館
福寿 超特撰(フクジュ チョウトクセン) 大吟醸

3位 栃木県芳賀郡 株式会社外池酒造店
燦爛(サンラン) 大吟醸 雫酒(シズクザケ)

4位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 大吟醸 山田錦 中取り

5位 京都府京都市 月桂冠株式会社
伝匠月桂冠 大吟醸(デンショ ゲッケイカン)

6位 福島県岩瀬郡 松崎酒造店
廣戸川(ヒロトガワ) 大吟醸

7位 栃木県芳賀市 株式会社外池酒造店
燦爛(サンラン) 大吟醸

8位 宮城県加美郡 株式会社山和酒造店
わしが國(クニ) 大吟醸 雫搾り斗瓶取り(シズクシボリ トビンドリ)

9位 群馬県前橋市 株式会社町田酒造店
町田酒造35 MAX(マックス) 大吟醸

10位 愛媛県西条市 石鎚酒造株式会社
石鎚 真精(シンセイ)大吟醸 袋吊り雫酒(フクロツリ シズクサケ)

【SUPER PREMIUM部門】

GOLD 3点/SILVER 2点/部門出品数 48点

1位 栃木県さくら市 株式会社せんきん
醸(カモス)

2位 兵庫県神戸市 白鶴酒造株式会社
白鶴 超特撰 天空(ハクツル チョウトクセン テンクウ) 純米大吟醸 白鶴錦(ハクツルニシキ)

3位 秋田県潟上市 小玉醸造株式会社
太平山(タイヘイザン) 純米大吟醸 天巧(テンコウ) 20

【スパークリング部門】

GOLD 3点/SILVER 5点/部門出品数 74点

 

1位 岩手県二戸市 株式会社南部美人
南部美人 (ナンブビジン)あわさけスパークリング

2位 広島県廿日市市 中国醸造株式会社
一代 弥山(イチダイ ミセン) スパークリング

3位 大分県玖珠郡 八鹿酒造株式会社
八鹿(ヤツシカ) スパークリング Niji

 

【海外出品酒部門】

GOLD 1点/SILVER 2点/部門出品数 17点

1位 アメリカ Arizona Sake LLC
Junmai Ginjo Nama

SILVER カナダ Ontario Spring Water Sake Company
Izumi Namanama

SILVER カナダ Ontario Spring Water Sake Company
Izumi Shiboritate

 

【ラベルデザイン部門】

GOLD 10点/SILVER 6点/部門出品数 152点

1位 兵庫県加西市 富久錦株式会社
新緑の播磨路(シンリョクノハリマジ)

2位 山口県阿武町阿武町 阿武の鶴酒造合資会社
純米吟醸酒 名聲希四海(メイセイキシカイ)

3位 佐賀県伊万里市 古伊万里酒造有限会社
monochrome+(モノクローム プラス)

4位 福岡県三井郡 株式会社みいの寿
三井の寿(ミイノコトブキ) 純米大吟醸 三井神力(ミイシンリキ)

5位 愛知県常滑市 澤田酒造株式会社
白老 自然栽培米 純米酒(ハクロウ シゼンサイバイマイ ジュンマイシュ)

6位 新潟県長岡市 越銘醸株式会社
山城屋(ヤマシロヤ)

7位 山口県阿武町 阿武の鶴酒造合資会社
阿武の鶴(アブノツル) 点と線(テントセン)

8位 茨城県石岡市  府中誉株式会社
太平海 純米吟醸 雄町 1314(タイヘイカイ ジュンマイギンジョウ オマチ イチサンイチヨン)

9位 福島県東白川郡 株式会社矢澤酒造
純米大吟醸 白孔雀(ジュンマイダイギンジョウ シロクジャク)

10位 新潟県新潟市 峰乃白梅酒造株式会社
峰乃白梅 KING OF MODERN LIGHT純米吟醸 無濾過生原酒(ミネノハクバイ キング オブ モダン ライトジュンマイギンジョウ ムロカナマゲンシュ)

 

「世界一の日本酒」が決まったので、覚えて帰って! 「SAKE COMPETITION 2018」結果速報

「SAKE COMPETITION(サケコンペティション) 」は、市販酒を対象とした世界最大規模の日本酒コンペ。2012年からスタートし、今年で7回目。日本酒の総出品数は約455蔵から1772点を数え、 前回の記録1730点を更新。事実上の「世界一の日本酒」を決める大会となっています。審査される部門は、純米大吟醸部門、純米吟醸部門、純米酒部門、吟醸部門、Super Premium部門(※)、発泡清酒部門、ラベルデザイン部門に、新設された「海外出品酒部門」を加えた合計8部門。

※720mlで税抜1万円以上、1800mlで税抜1万5000円以上のもの

出品酒は、ラベルを隠した完全なブラインドで審査されるのが特徴。技術指導者、有識者、蔵元のなかから選抜された審査員(予審の審査員は37名、決審の審査員は41名、発泡清酒部門の審査員は15名)の採点を集計したものが結果となります。つまり、結果を見れば「プロ中のプロ、数十名が選んだ『絶対に外れのないお酒』がわかる」というわけです。6月11日(月)、その結果がザ・ペニンシュラ東京で行われた表彰式で発表されました。以下で一気に見ていきましょう。

↑審査の様子。出品酒はすべて銀色のフィルムが張られ、銘柄がわからないようになっています

 

福島・寫楽の地元銘柄がサプライズでトップに!

【純米酒部門】

GOLD 10点/SILVER 36点/予審通過 166点/部門出品数 456点

↑1位を受賞した宮泉銘醸の社長、宮森義弘さん

 

1位 福島県会津若松市 宮泉銘醸株式会社
會津宮泉(アイヅミヤイズミ) 純米酒

2位 宮城県大崎市 株式会社新澤醸造店
あたごのまつ 特別純米 冷卸(ヒヤオロシ)

3位 宮城県白石市 蔵王酒造株式会社
蔵王 K(ザオウ ケー) 純米酒

4位 栃木県さくら市 株式会社せんきん
クラシック仙禽 無垢(センキン ムク)

5位 福島県会津若松市 宮泉銘醸株式会社
寫楽(シャラク) 純米酒

6位 京都府京都市 松本酒造株式会社
澤屋(サワヤ)まつもと 守破離 山田錦(シュハリ  ヤマダニシキ)

7位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人 特別純米(トウヨウビジン)

8位 滋賀県甲賀市 笑四季酒造株式会社
笑四季(エミシキ) センセーション 白ラベル

9位 福島県河沼郡 合資会社廣木酒造本店

飛露喜(ヒロキ) 純米

10位 広島県呉市 宝剣酒造株式会社
宝剣(ホウケン) 純米酒

 

三重・作の強さが目立ち、山口・東洋美人の健闘も光る

【純米吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 44点/予審通過 178点/部門出品数 534点

1位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 恵乃智(ザク メグミノトモ)

2位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 純米吟醸 一歩(イッポ) 山田錦

3位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 純米吟醸 50

4位 福島県会津若松市 名倉山酒造株式会社
善き哉(ヨキカナ)

5位 栃木県宇都宮市 株式会社虎屋本店
七水 55(シチスイ ゴーゴー)

6位 高知県香美郡 株式会社アリサワ
文佳人 吟の夢(ブンカジン ギンノユメ) 純米吟醸

7位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米吟醸 愛山(アイヤマ)

8位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 雅乃智 雄町(ザク ミヤビノトモ オマチ)

9位 山形県鶴岡市 冨士酒造株式会社
栄光冨士(エイコウフジ) 純米吟醸 朝顔ラベル 生貯(ナマチョ)

10位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米吟醸 雄町(オマチ)

 

岩手を代表する地酒が貫禄を見せ、ここでも作の2本がランクイン

【純米大吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 35点/予審通過 156点/部門出品数 445点

1位 岩手県二戸市 株式会社南部美人
南部美人(ナンブビジン) 純米大吟醸

2位 茨城県石岡市 合資会社廣瀬商店
SEN(セン)
3位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 雅乃智 中取り(ザク ミヤビノトモ ナカドリ)

4位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 朝日米(ザク アサヒマイ)

5位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米大吟醸 極上ノ斬(ゴクジョウノキレ)

6位 群馬県前橋市 株式会社町田酒造店
町田酒造35 プレミアム 純米大吟醸

7位 茨城県石岡市 府中誉株式会社
渡舟(ワタリブネ) 純米大吟醸 斗壜取り(トビンドリ)

8位 栃木県小山市 小林酒造株式会社
鳳凰美田 赤判(ホウオウビデン アカバン)

9位 茨城県結城市 結城酒造株式会社
結ゆい(ムスビユイ) 純米大吟醸 雫酒(シズクザケ)

10位 愛媛県西条市 石鎚酒造株式会社
石鎚(イシヅチ) 純米大吟醸

 

昨年より出品を始めた岡山の新星、極聖が1位に
【吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 10点/予審通過 69点/部門出品数 198点

1位 岡山県岡山市 宮下酒造株式会社
極聖(キワミヒジリ) 大吟醸

2位 兵庫県神戸市 株式会社神戸酒心館
福寿 超特撰(フクジュ チョウトクセン) 大吟醸

3位 栃木県芳賀郡 株式会社外池酒造店
燦爛(サンラン) 大吟醸 雫酒(シズクザケ)

4位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 大吟醸 山田錦 中取り

5位 京都府京都市 月桂冠株式会社
伝匠月桂冠 大吟醸(デンショ ゲッケイカン)

6位 福島県岩瀬郡 松崎酒造店
廣戸川(ヒロトガワ) 大吟醸

7位 栃木県芳賀市 株式会社外池酒造店
燦爛(サンラン) 大吟醸

8位 宮城県加美郡 株式会社山和酒造店
わしが國(クニ) 大吟醸 雫搾り斗瓶取り(シズクシボリ トビンドリ)

9位 群馬県前橋市 株式会社町田酒造店
町田酒造35 MAX(マックス) 大吟醸

10位 愛媛県西条市 石鎚酒造株式会社
石鎚 真精(シンセイ)大吟醸 袋吊り雫酒(フクロツリ シズクサケ)

 

栃木の「変わった蔵」が高級酒部門で栄冠を掴む

【SUPER PREMIUM部門】

GOLD 3点/SILVER 2点/部門出品数 48点

1位 栃木県さくら市 株式会社せんきん
醸(カモス)

2位 兵庫県神戸市 白鶴酒造株式会社
白鶴 超特撰 天空(ハクツル チョウトクセン テンクウ) 純米大吟醸 白鶴錦(ハクツルニシキ)

3位 秋田県潟上市 小玉醸造株式会社
太平山(タイヘイザン) 純米大吟醸 天巧(テンコウ) 20

 

南部美人が昨年に続いて2年連続で受賞

【スパークリング部門】

GOLD 3点/SILVER 5点/部門出品数 74点

1位 岩手県二戸市 株式会社南部美人
南部美人 (ナンブビジン)あわさけスパークリング

2位 広島県廿日市市 中国醸造株式会社
一代 弥山(イチダイ ミセン) スパークリング

3位 大分県玖珠郡 八鹿酒造株式会社
八鹿(ヤツシカ) スパークリング Niji

 

【総評】

実力のある蔵元の地元銘柄に注目

2014年大会では、「寫樂(しゃらく)」で純米酒部門、純米吟醸部門の1位を獲得し、一躍スターとなった宮泉銘醸。2016年、2017年と10位入賞を逃していましたが、今年は純米部門で1位に返り咲き。しかも、「寫樂」ではなく、やや辛口に仕上げたという地元銘柄「會津宮泉(あいづみやいずみ)」での受賞となり、会場の大きなどよめきを呼びました。なお、吟醸部門3位、7位に入賞した外池酒造店も、首都圏向けの銘柄「望bo:」ではなく、地元銘柄の「燦爛(さんらん)」での入賞です。つまり、実力のある蔵元であれば、どれを飲んでも旨いことを示しており、これをきっかけに実力蔵の地元銘柄に光が当たることになるかもしれません。

 

安定感を見せたのが三重県の作と岩手の南部美人

安定感を見せたのは、三重の「作(ざく)」と岩手の「南部美人」。作は昨年、純米の1位、2位の獲得をはじめ、純米吟醸で4位と8位を受賞し、大きな話題となりました。今年も純米吟醸の1位と8位、純米大吟醸の3位と4位に入るなど、抜群の安定感。すでに入手困難になりつつある銘柄ですが、今回の受賞でその流れに拍車がかかりそうです。

↑「作」の蔵元の清水慎一郎さん(左)と内山智広杜氏(右) ※写真は昨年のもの

 

極聖とAKABUが知名度を上げていく予感

注目の銘柄は、吟醸部門1位の極聖(きわみひじり)。2017年から本コンペに出品を始めたという新参ながら、2017年はSUPER PREMIUM 部門で2位、吟醸部門で8位に入っており、今回は2年目にして吟醸部門のトップに輝くことになりました。受賞した3作は大吟醸あるいは純米大吟醸で、今後も高級酒の名手として注目されていくことでしょう。

 

さらに、蔵の実力が問われる純米吟醸部門で、複数受賞した銘柄も注目です。ひとつは、純米部門7位、純米吟醸2位、3位、吟醸部門で4位に輝いた東洋美人。もうひとつは、純米吟醸で7位、10位、純米大吟醸で5位に入ったAKABU(アカブ)です。東洋美人は、地酒ファンの間では押しも押されぬ人気銘柄である一方、AKABUは、20代半ばの杜氏、古舘龍之介さんを筆頭に、若手が中心となって醸す蔵。都内飲食店でも見かけることが多くなっていましたが、今回の複数入賞により、今後、さらに知名度が上がるのは間違いありません。

↑AKABUの純米吟醸

 

SUPER PREMIUM部門の株式会社せんきんは、他のお酒とはひと味違う、甘酸っぱい濃厚な酸味が特徴の「仙禽(せんきん)」の銘柄で、地酒ファンにはよく知られた蔵元。今回受賞した「醸」は、山田錦、亀ノ尾、雄町という3種類の酒米を贅沢に磨いて使用したといい、どんな味かまったく想像できないのが興味深いところ。

 

品質競走が激化し、有名銘柄がしのぎを削る時代に

今回の「SAKE COMPETITION 2018」を総じてみると、実力のある蔵元がしっかり受賞したといった印象。「十四代」「磯自慢」「獺祭」「開運」といった有名銘柄のGOLD入賞はありませんでしたが、次点にあたるSILVER部門にはこれらの銘柄がひしめいていて、いかに近年の日本酒レベルが向上したのかがよくわかる結果となっています。さらに、SUPER PREMIUM部門2位の「白鶴」、吟醸部門5位の「月桂冠」が入賞するなど、資本を生かした灘・伏見の銘柄も加わり、さらに品質競走が激化してきた印象。ユーザーとしては選択肢が増えてうれしい限りです。なにはともあれ、プロがお墨付きを与えた銘柄の数々、みなさんもいち早く楽しんでみてください!

その他の部門

【海外出品酒部門】

GOLD 1点/SILVER 2点/部門出品数 17点
1位 アメリカ Arizona Sake LLC
Junmai Ginjo Nama

SILVER カナダ Ontario Spring Water Sake Company
Izumi Namanama

SILVER カナダ Ontario Spring Water Sake Company
Izumi Shiboritate

 

【ラベルデザイン部門】

GOLD 10点/SILVER 6点/部門出品数 152点

1位 兵庫県加西市 富久錦株式会社
新緑の播磨路(シンリョクノハリマジ)

2位 山口県阿武町阿武町 阿武の鶴酒造合資会社
純米吟醸酒 名聲希四海(メイセイキシカイ)

3位 佐賀県伊万里市 古伊万里酒造有限会社
monochrome+(モノクローム プラス)

4位 福岡県三井郡 株式会社みいの寿
三井の寿(ミイノコトブキ) 純米大吟醸 三井神力(ミイシンリキ)

5位 愛知県常滑市 澤田酒造株式会社
白老 自然栽培米 純米酒(ハクロウ シゼンサイバイマイ ジュンマイシュ)

6位 新潟県長岡市 越銘醸株式会社
山城屋(ヤマシロヤ)

7位 山口県阿武町 阿武の鶴酒造合資会社
阿武の鶴(アブノツル) 点と線(テントセン)

8位 茨城県石岡市  府中誉株式会社
太平海 純米吟醸 雄町 1314(タイヘイカイ ジュンマイギンジョウ オマチ イチサンイチヨン)

9位 福島県東白川郡 株式会社矢澤酒造
純米大吟醸 白孔雀(ジュンマイダイギンジョウ シロクジャク)

10位 新潟県新潟市 峰乃白梅酒造株式会社
峰乃白梅 KING OF MODERN LIGHT純米吟醸 無濾過生原酒(ミネノハクバイ キング オブ モダン ライトジュンマイギンジョウ ムロカナマゲンシュ)

 

「日本酒の流れ」が変わった!? 世界一を決める「SAKE COMPETITION 2018」で審査員に見えてきたこと

今年も、事実上の世界一の日本酒を決めるコンペティション「SAKE COMPETITION(サケコンペティション) 2018」が開催されます。本コンペは一般の消費者がお店で手に取れる「市販酒」のトップを決めるために、2012年からスタート。審査は全国の日本酒の技術指導にあたる方や、推薦された蔵元など、プロ中のプロがブラインドできき酒を行って決めるため、銘柄の知名度は一切関係なし。ひたすら味わいのみが審査対象という、このうえなくフェアなコンペです。

↑昨年の「SAKE COMPETITION 2017」表彰式

 

同コンペは年々参加する蔵も増えてきたうえ、受賞によりスターダムに駆け上がった銘柄が誕生し、部門で1位に輝いた銘柄はいち早く品切れとなるなど、市場に与える影響も大きくなってきました。今回は、そんな「SAKE COMPETITION 2018」の審査の第一段階となる予審会が5月16日に行われましたので、その様子をレポートしていきます。

 

「真剣勝負」の緊張感が漂う審査会場

↑予審会の様子

 

今回の出品数は、455蔵総出品数1772点で、過去最多の出品数を記録しました。審査される部門は、これまでの純米大吟醸部門、純米吟醸部門、純米酒部門、吟醸部門、Super Premium部門(720mlで税抜1万円以上、1800mlで税抜1万5000円以上)、ラベルデザイン部門の7部門に加え、新設された「海外出品酒部門」を合わせた合計8部門。5月16日の予審で決審へ進むお酒を絞り込み、5月18日の決審で最終的な順位を決めます。なお、予審の審査員は37名、決審の審査員は41名(発泡清酒部門の審査員は15名)。各審査員がそれぞれのお酒に1(最高点)~5(最低点)点の間で点数をつけ、それを集計したものが結果となります。

 

今回取材した予審会の会場は、体育館ほどの広さ。中には長テーブルが等間隔で置かれ、その上には4合瓶サイズの酒瓶がズラリ。酒瓶はすべて銀色のフィルムで覆われており、酒銘は一切確認できないので、必然的にブラインドの審査となります。全国から集められた審査員は、チェックシートを片手に一定のリズムで粛々と出品酒をきき(※)、テーブルからテーブルへと移動しながら、点数をつけていきます。審査員同士の私語は一切なく、声を立てることすらはばかられるような緊張感が漂っていました。

※酒をきく(唎く)……お酒の品質を判定すること

↑すべての酒瓶は銀色のフィルムで覆われ、酒銘が隠されています

 

会場には「海外出品酒部門」に参加したカナダの蔵元も

さて、そんななかでキャッチしたのが、「海外出品酒部門」に出品する蔵元の一人。カナダ・トロントで「泉(IZUMI)」という銘柄を手がける、「Ontario Spring Water Sake Company」の蔵元、Ken Valvur さんです。

↑Ken Valvur さん

 

Kenさんの「Ontario Spring Water Sake Company」は北米東部の最初の醸造所。オンタリオ州のおいしい湧き水を仕込み水に使用し、「真澄」で知られる宮坂醸造(長野県)などのアドバイスを受けながら、2011年に醸造をスタート。現在は、トロントの高級レストランで提供されています。ご本人にお話を聞いてみると、目指している味わいは、「甘味と酸味のバランスのよさ」とのこと。「私たちのお酒は、カナダ人にとって親しみやすい白ワインのような、フルーティで甘みを感じる酒質を狙っています。かなり受け入れられるようになってきたので、現在少しずつドライなタイプも増やしているところです」と、カナダならではのアプローチを話してくれました。果たして海外で醸されたお酒は日本の審査員の目にどう映るのか、Kenさんの蔵の成績とともに「海外出品酒部門」の結果に注目していきたいところです。

審査員が評価される大会でもある

↑廣木健司さん(写真は昨年のもの)。今年の「飛露喜 特別純米」にはドライでシャープな印象をプラスしたいと話してくれました

 

先に述べたように、確かなきき酒の力を持つ日本酒業界の精鋭たちが審査員を務める本コンペ。予審会では、スター銘柄「飛露喜(ひろき)」を醸す、廣木健司(ひろき・けんじ)さんに少しだけお話を聞くことができました。廣木さんは本コンペについて「今後の日本酒の潮流を作る、日本酒の未来が見える、それだけ大きな大会。審査員の質もしっかり担保されており、その意味では、審査員も評価されているコンペともいえます」と話してくれました。

 

第1回から審査員を努める広島「宝剣」の土井鉄也氏にインタビュー

↑土井鉄也さん

 

そんなプロ中のプロのみが参加を許される審査員のなかで、第1回大会から名を連ねているのが、「呉(くれ)のドイテツ」こと宝剣酒造の蔵元、土井鉄也(どい・てつや)さんです。広島は呉市の銘酒「宝剣」(ほうけん)といえば、広島産の酒米、八反錦(はったんにしき)を使った、やわらかくキレのあるお酒で有名。土井さん自身は、かつて伝説の不良として知られ、家業を継いだのちに20代の若さで「全国きき酒選手権大会」で全国優勝を果たすという濃い目のキャラクター。そんな土井さんにとって、「SAKE COMPETITION」とはどのようなものなのか、お話をうかがいました。

 

「きき酒は舌だけで行うと思われがちですが、実は頭もものすごく使います。1(最高点)~5(最低点)点の間で点数つけていきますが、ひとつひとつのジャッジをきちんと記憶して、自分の中の審査の基準がブレないように心がけています。何百種類もきいていると、例え0.1ずつずれていったとしても、終わる頃には大幅に基準がずれてしまう。ですから、即座に判断することも大事ですが、引っかかったら、面倒くさがらずもう一度きくのも重要。そうやって、細かく修正しながらきいています。ひょっとしたら、私のジャッジで造り手の人生が変わるかもしれないですから。そこを意識して、『自分の酒以上に真剣にきかねば』という気持ちで取り組んでいます」(土井さん)

 

「エレガントで派手さのあるお酒」から「キレイな甘さを感じるお酒」へ

↑Super Premium部門に出品されていた「宝剣」の純米大吟醸。つまり、土井さんは審査する側であり、審査される側でもあるわけです

 

――審査員としても参加している土井さんにとって、このコンペはどのような意義があるのでしょう?

 

「審査員として参加すると、世の中のお酒の流れというのが手に取るようにわかる。2、3年までは、甘さが引き立ち、エレガントで派手さのあるお酒が多かった印象。でも、いまは香りも控えめになり、甘みも抑え気味で、キレイな甘さを感じるようになりました。一方、蔵元という立場から見たら、いかに世の中の流れに流されず、自分のお酒を貫くことができるか、ここ数年、すごく考えさせられました。もちろん、酒造りの筋は決めていますが、時代の流れも気にしないとダメ。そのうえで、いまは自分が好きな食中酒を貫いている自負がありますね。このコンペに参加することで、自分自身の酒造りを振り返る、いい機会をもらっている気がします」(土井さん)

 

「酒本来の香り」か「あってはならない香り」かを見極めるのが重要

――では、審査の際に心がけていることはありますか?

 

「審査員も人間なので、好みというものがあります。僕の場合、基準を3点に決めて、少しクセのある酒を4点にしています。重要なのは、そのクセが、『酒が持つ本来の香り』なのか、それとも酒造りの道具によってついた、『あってはならない香り』なのかを見極めます。例えば、粕の香りだったら、4点でよしとする。明らかに道具由来の香りは5点。味わい全体の話でいえば、バランスを重視していますね」(土井さん)

――さきほど、お酒の「甘味」についてのお話が出ましたが、最近のお酒の傾向として、「酸」もキーワードのひとつになっているように思います。土井さんは、日本酒の酸についてはどのように評価されていますか?

 

「そこも全体のバランスだと思います。酸が浮く…つまり、芯が細く、酸のみが際立ったらダメですが、甘味がきちんとあって、調和が取れていればOKだと思っています。一方、自分自身の酒(宝剣)は辛口で、ほどよい甘さを感じる味。自分は食べるのも飲むのも好きなので、長く飲める酒がいい。家では自分の酒だけを飲んで、常にどういう状態か確認しています。その代わり、外ではよそのお酒を飲んで勉強させてもらっていますね」(土井さん)

 

「もう一杯」と飲みたくなる酒をブレずに造っていく

――いま、酒造りがひと段落したところで、少し気が早いかもしれませんが、次のお酒造りに向けて考えていることはありますか?

「この5年、継続的に設備投資をしてきて、昨年は甑(こしき・米の蒸し器のこと)を新調しました。皆さんの家でも炊飯器を変えたら、ごはんの味って変わりますよね。酒造りにとっても、甑を変えると酒米の蒸し上がりが変わるため、非常に重要です。昨シーズンは新しくしてから7か月使用しましたが、微妙な操作で蒸気の出し方も変わりますし、その期間だけでは甑の特徴を見極めるのは無理。仕込みが終わったいま、やっと状態が見極められるようになりました。だからこそ、来年はいっそういい酒が造れると思います。特に、お客様がお代わりをしてくださるようなお酒が造れたらいいですね。『もう一杯』と飲みたくなるような酒を、これからもブレずに造っていきます」(土井さん)

 

「僕のお酒はあまり派手な酒じゃないから」と、控えめに語る土井さん。いえいえ、その実直な味わいは、「呉のドイテツここにあり」と確かな存在感で、飲み手を魅了しています。さて、そんな土井さんが「造り手の人生を変えるかもしれない」「真剣勝負で取り組んだ」と語る「SAKE COMPETITION 2018」。審査の結果やいかに? 運命の結果発表は6月11日(月)。果たして、栄冠はどの蔵に輝き、どのような日本酒のトレンドが生まれるのか。固唾を飲んで見守りましょう!

世界一の日本酒を決める「SAKE COMPETITION 2018」去年とはココが違う!

「SAKE COMPETITION(サケ コンペティション)」 実行委員会は、世界最多出品酒数を誇り、日本酒コンペティション「SAKE COMPETITION 2018」の開催を決定しました。「SAKE COMPETITION」は「ブランドによらず消費者が本当においしい日本酒にもっと巡り会えるよう、 新しい基準を示したい」という理念のもと2012年から始まりました。そのため市販酒のみが対象となっており、審査方法は完全に銘柄を隠し、酒の中身のみで競うことに徹底し、どんなブランドでも1位を獲るチャンスがあるコンペティションです。

↑昨年の「SAKE COMPETITION 2017」表彰式

 

「海外出品酒部門」を新設し、授賞パーティが一般参加可能に

昨年の「SAKE COMPETITION 2017」は参加蔵数、約453蔵(海外蔵:7場)、出品酒は1730点を超える世界最大規模。事実上の「世界一の日本酒」を決めるコンペとなっています。市販酒のみを対象に、この規模で審査するコンペはほかにはなく、年々注目度は上がってきています。例年1位を獲得した日本酒は、即日完売し全国から問い合わせが殺到。 地元の人にしか知られていないような地酒でも、全国的な知名度を獲得し、一躍脚光を浴びる大きなチャンスとなっています。

↑2017年の各部門の受賞酒。左からラベルデザイン部門「越後鶴亀 越王 純米大吟醸」(株式会社越後鶴亀/新潟県)、発泡清酒(スパークリング)部門「南部美人 あわさけ スパークリング」(株式会社南部美人/岩手県)、純米酒部門「作 穂乃智」(清水清三郎商店株式会社/三重県)、吟醸部門「来福 大吟醸 雫」(来福酒造株式会社/茨城県)、純米吟醸部門「土佐しらぎく 純米吟醸 山田錦」(有限会社仙頭酒造/高知県)、純米大吟醸部門「開運 純米大吟醸」(株式会社土井酒造場/静岡県)、Super Premium部門「七賢 純米大吟醸 大中屋 斗瓶囲い」

 

今年は海外からの出品酒のみで構成される「海外出品酒部門」を新設。2017年の「純米酒部門」 「純米吟醸部門」「純米大吟醸部門」「吟醸部門」「Super Premium部門」「ラベルデザイン部門」 「(発泡清酒)スパークリング」と合わせて、全8部門での審査を行います。審査は5月16日~5月18日にかけて行われ、 6月11日の表彰式にて受賞作が発表となります。ちなみに、「Super Premium部門」「ラベルデザイン部門」は、元サッカー日本代表の中田英寿氏の発案により、設立されたものです。

 

また、本年より、授賞パーティが一般参加できるようになった点に注目です。 授賞パーティでは、ザ・ペニンシュラ東京の24階レストラン「Peter」を貸切とし、ブッフェスタイルのディナーを実施。SAKECOMPETITION2018の上位入賞酒100種類以上の日本酒を用意し、日本酒との相性を考えたスペシャルディナーとともに楽しめる形になっています。ディナーのチケット価格は2万1600円とかなりのものですが、世界最高峰の日本酒が一度に楽しめるまたとないチャンス。思い切って参加してみてはいかがでしょうか。

↑授賞パーティが行われる「Pater」内観

 

【授賞パーティチケット情報】

◆日時:6月11日(月)授賞パーティ(19:00~21:30予定)
◆会場:ザ・ペニンシュラ東京24階レストラン:「Peter」
◆発売期間:4月27日(金)~ 5月25日(金)まで
◆チケット金額:2万1600円(税込)
◆住所:東京千代田区有楽町1-8-1 24階
◆アクセス:日比谷線・千代田線・三田線
「日比谷駅」地下通路 A6 ・A7出口直結