TikTokクリエイター・まいきちインタビュー後編! 不登校を経てからTikTokで生きていくことを決めた少女の「どうせ生きているなら、楽しんだほうがよくない?」マインド

2017年、中学1年生ときにTikTokを始めると、かわいさだけではない個性の強さで、またたく間に同世代の心をつかんだまいきちさん。14歳でフォロワー88万人を抱え、2020年には自身が作詞を手がけた楽曲で歌手としてメジャーデビューをするなど、TikTokドリームを体現している。が、本人はクールに「1歳から芸能活動をしているから、実はけっこう芸歴が長いんです」と話すのだ。そんなまいきちさんの幼少期から、マインドを変えた「どん底」まで語ってもらった。

 

【関連記事】TikTokクリエイター・まいきちインタビュー前編!「一夜でフォロワーが20万人に」中学生TikTokerのパイオニアが動画1つに6時間かける理由

 

まいきち…2005年1月30日生まれ、大阪府出身。中学1年生でTikTokを開始したことがきっかけで、2019年にユニバーサルミュージックと専属契約し、2021年2月26日に『どこでもスタート』でメジャーデビュー。2021年よりファッションメディア『Ranzuki』の専属モデルに就任した。YouTubeでは魅力的な歌声を披露している。XInstagramTikTokYouTube

 

まいきちさん 公式TikTok @maikichi0130

 

【まいきちさん撮り下ろし写真】

 

1歳のときから洋楽で踊っていた

──お父さんがミュージシャンだと聞きました。どんな音楽を聴いて育ったんですか?

 

まいきち 両親が音楽を通じて出会って、音楽があふれる家で育ちました。邦楽だとBOOWYとか桑田佳祐さんとか、一番聴いていたのはビートルズとかレッドホットチリ・ペッパーズ、プリンスとかです。

 

──物心ついたときの音楽体験、覚えていますか?

 

まいきち 物心がつく前ですが、1歳のとき、MIKAの『グレース・ケリー』という曲で立って踊りだしたらしいです。物心がついてからは、曲を作ったりパパにドラムやギター、ピアノを教えてもらっていました。

 

──どうやって曲を作っていたんですか?

 

まいきち まずテーマを決めて、私が単語をあげていって、口ずさんだ音をデモにしてくれました。ママは歌う人だったので、パパとママで急にセッションを始めたりとかありましたね。ママはすごくて、家で鼻歌を歌っていると「そこ音程ちがうよ」と指摘してくるんですよ。だから歌うのがイヤな時期もありました。

 

──音楽に対して妥協しないお母さんだったんですね。幼少期は音楽を肌で感じる生活を送り、小学生はどんな生活を送っていましたか?

 

まいきち 中華学校に通っていました。お友達は多様で、それぞれが思っていることを言い合える関係でぶつかったりもしていて、それはそれでいいことじゃないですか。でも、5年生のときに日本の学校に編入したときに「みんな言っていることと思っていることが違う」とうことに気づいて。

 

転校先の中学校で大歓声!

──本音と建前があると。

 

まいきち そう。当時、そのときにボーカル&ダンススクールに通っていたんですが、それもあって目立ってしまったようで、嫌がらせを受けるようになったんですよ。日本人の中では、こういうことをうまく交わしていかなきゃいけないんだな、と学びました。中学生になると芸能系の学校に通うことになって、入学式から「事務所、どこなん?」って会話するようなところで。バッチバチでしたね。

 

──野心がすごそうですね。

 

まいきち そこでもぶつかっちゃって。だからもう、一人でいることを楽しむようにしましたね。休み時間は一人で本を読んだり、それで知識を得られることに楽しさを見いだしていました。そのあと、中学3年生のときに上京することになるんです。

 

──中学生で一人でですか?

 

まいきち お父さんと二人でです。ユニバーサルミュージックさんに入ったタイミングだったので、東京の学校に行くことについてわくわくしました。しかも、転校のあいさつを全校生徒の前でマイクでしなきゃいけなくて。そのときすでにTikTokをやっていたので、私が壇上に上がると、「キャーーー!」ってなって。「ご存知のとおり、まいきちです」みたいな。

 

──かっこいい! 堂々としたあいさつですね。

 

まいきち 自信を持って胸を張れるキャラのほうが印象がいいかなと思って。学校は楽しかったんですが、中学3年の3学期にそのまま卒業式を迎えてしまいました。

 

不登校だった高校時代「TikTokで食べていく」

まいきち でも、一番大変だったのは高校時代です。入ったときから「うわ、まいきちかよ」みたいな反応をされて。入学して3か月は通いましたがいろいろあり、もう行く必要がないかな、と思ってそれからは学校に行きませんでしたね。その代わり、TikTokなどでライブ配信を始めるようになりました。それと同時に、「これからは、これで食べていかなきゃいけないのかもしれない」と思うようになって。

 

──高校生ですでに、食べていくことを想定したんですか。

 

まいきち 今も「どうやって生きていけばいいんだろう……という不安もあるし、めちゃくちゃ不安定な職業だと思っています。人気が落ちていく可能性を常に秘めているし、そういう不安と戦いながら毎日投稿しなきゃいけないし……というプレッシャーとストレスを感じて、精神的に落ち込んでしまったのが高校1、2年生のときだったんです。それが高校3年生のときに「こんなことをしていても意味がないな」と、急にマインドが変わりまして。「生きているのなら、楽しんだほうがよくない?」と。

 

──転機があったんですね。

 

まいきち やっぱり、最終的に笑っているヤツが勝ち、みたいなところってあるじゃないですか。昔はそれってきれいごとだと思っていたんですが。ライブ配信で悩みごとを打ち明けてくれる方が多んですが、私自身もそういう方たちにきれいごとを言っているんですよ。「笑っていれば大丈夫だから。時間はすぎるものだから」って。きれいごとだと思うけど、きれいごとを言っていきたいし、それを信じていきたいんです。……と、そんなふうにマインドが変わりまして。

 

「ただ生きているだけで正解なんだ」

──スムーズに行かない出来事があったからこそ、とても説得力がありますね。

 

まいきち ずっとそういうことを考えていたから、伝えられてうれしいです。友達がいなくて遊びに行くこともなくて、一人で考えて一人で会話をしていたんです。

 

──そういうことをメモしたりも?

 

まいきち はい、スマホのメモ帳に、思ったことをいっぱいぶわーーーって書いてます。めっちゃしょうもないんですけど、これです。(スマホ画面を見せながら)

 

──すごい! びっしり書いてありますね。この言葉を公にしたら、救われる同世代の子、多そうですね。

 

まいきち 「ひまわりになりたい」とか、意味分からないこと書いてるけど(笑)。でもこれをつまんで歌詞にすることも多いんですよね。「ただ生きているだけで正解なんだって思います」「笑顔って、すてき。例外はない」とか、いっぱい書いてる(笑)。

 

──いい言葉ですよ。

 

まいきち 自分でも覚えてないことばかりです。

 

──いつからメモし始めたんですか?

 

まいきち 中学3年生くらいですね。学校に行けなくなったくらいから。

 

──傷ついてきた過去があるからこそ、表現で昇華しているように想います。

 

まいきち たしかに傷ついているなあって思いますが、それを経験できて、その経験をよかったと感じられる自分でよかった、と思います。高校2、3年のあのときから立ち上がった自分を、自分でも褒めてあげたいんです。

 

──どん底を自覚すると、もう上がるしかないですもんね。

 

まいきち そう! マジでそう。ずっと底にいると、ほんとうに上がるしかないんです。そのマインドで生きている今は、とてもいい状態です。

 

まいきちさん 公式TikTok @maikichi0130

 

 

撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 構成/BuzzTok NEWS Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/

TikTokクリエイター・まいきちインタビュー!「一夜でフォロワーが20万人に」中学生TikTokerのパイオニアが動画1つに6時間かける理由

2017年、中学1年生ときにTikTokを始めると、かわいさだけではない個性の強さで、またたく間に同世代の心を掴んだ、まいきちさん。14歳でフォロワー88万人を抱え、2020年には自身が作詞を手がけた楽曲で歌手としてメジャーデビューをするなど、TikTokドリームを体現している。が、本人はクールに「1歳から芸能活動をしているから、実は結構芸歴が長いんです」と話すのだ。そんなまいきちさんの、動画制作やファッションのこだわり、そして、「私がかわいい!」と公言する理由とは? 前後編に分けてのロングインタビューを。

 

まいきち…2005年1月30日生まれ、大阪府出身。中学1年生でTikTokを開始したことがきっかけで、2019年にユニバーサルミュージックと専属契約し、2021年2月26日に『どこでもスタート』でメジャーデビュー。2021年よりファッションメディア『Ranzuki』の専属モデルに就任した。YouTubeでは魅力的な歌声を披露している。XInstagramTikTokYouTube

まいきちさん 公式TikTok @maikichi0130

 

【まいきちさん撮り下ろし写真】

 

中学生で「Musical.ly」に没頭

──子役をやっていたんですね。

 

まいきち そうなんです。TikTokを始める前も、歌手デビューを目指してダンスボーカルグループのコンサートに参加したりして。その活動をするために、当時住んでいた大阪と東京を行き来しているときに、趣味でTikTokを始めたんです。そしたら伸びちゃって、いろんなことがパパパッと進んじゃって。

 

──どこで火がつくか分からないですよね。

 

まいきち TikTokで火がついたのは思いがけないことでした。

 

──それまで、歌手になるためのレッスンもしたり?

 

まいきち めちゃくちゃレッスンしたし、オーディションもいっぱい受けたし、ライブもやったし。だから、2020年に『どこでもスタート』で歌手デビューしたとき、「なんでこの子こんなに歌えるの!?」という声を多くいただきましたが、それまでたくさんやっていたんですよね。

 

──そうだったんですね。そもそも、2017年にTikTokを始めたのって世間的にも早いですよね。TikTokの日本サービスが開始されたのも同年ですし。

 

まいきち 最初は、そのとき流行っていた「Musical.ly(ミュージカリー)」という動画アプリをやっていて。

 

──2017年に、TikTokの親会社である中国の大手企業「Toutiao」が買収した、音楽動画制作アプリですね。

 

まいきち そうです。まずはミュージカリーをYouTubeの広告で見て、「なにこれ! やってみたい!」となったのが始まりです。友達と遊ぶときに撮ったり、1日7本投稿とかしていました。フォロワーを増やそうとしていたわけじゃなく、手軽に編集できて投稿して、自分の力で作った動画を見て大満足……という感じで承認欲求を満たしていたんです。そんなとき、ある日ずーーっと通知がピコピコ鳴って。「なになに!?」と思ったら、いいねが1万。急に跳ねて、「ママ! パパ! 起きて起きて! 見てこれ!」みたいな。フォロワー数も2万人に増えていました。

 

いっきにフォロワー数が20万人に

──急ですね!

 

まいきち その動画のコメント欄に「1コメ!」と書かれて。これは有名な子には毎回ついているコメントで、「私にもついてくれた!」ってすごくうれしかったのを覚えています。それで親にフォロワー数が増えたこと、いいねがたくさんついたことなどを報告したら「なにそれ?」って。今のパパだったら「よし! もっとガンガン伸ばそうぜ!」となるけど、当時は大人にとってTikTokって「子どもが遊ぶもの。どうせすぐやめるでしょ」みたいな感覚で。

 

──確かにそうでした。これほどまで主要メディアになると思っていた大人は少なかったでしょうね。

 

まいきち でもその後、親が「え! もう20万人!?」とびっくりするスピードで伸びて、上京する流れになって。同時に、2018年にSNSが乗っ取られて初めて炎上も体験しました。

 

──どんな被害に遭ったのでしょう。

 

まいきち Twitter(現X)とInstagramを同時に乗っ取られて、暴露系クリエイターさんにかなりひどいDMを送られてしまったんです。それを晒されてしまい。そんなことを私が送るはずないって普通に考えたら分かると思うんですが、「まいきち、性格悪い!」とめちゃくちゃ叩かれました。そのとき初めて、「ネットって怖いな」と思ったんです。

 

──遊びで始めて、バズって、炎上も経験して。そして歌手デビューへと繋がって。ほんの2、3年でひと通り経験したんですね。

 

まいきち 歌手デビューは、2019年にユニバーサルミュージックから声をかけていただいたのが始まりでした。作詞してMVを撮るのが夢だったから、すごくうれしかったです。

 

──『どこでもスタート』のMV撮影、いかがでしたか?

 

まいきち 朝3時から撮影でしたが、すっごくわくわくして、中3のくせに大人ぶって眠気を覚ますドリンクを飲んだら体調を崩しちゃって(笑)。現場では、出演してくれる子が「まいきちさんのTikTok、いつも見てます!」と言ってくださるので、彼女たちの前でだけ明るくしていて、控室に入った瞬間にぐったり、みたいな。

 

歌手にモデルに、次々とデビューへ

──かわいいエピソードですね(笑)。この曲、タイトルも歌詞もとても素敵ですよね。

 

まいきち タイトルをスタッフさんに伝えたとき「『どこでも』ってなに?『ここから』のほうがいいんじゃない?」と指摘されて。そのとき、中3の自分は、前に踏み出せないる……そういう空間にいる……という認識で、だから私は「ここ」に限定せずに「どこからでも、何歳でも、いつでも、スタートしていいじゃないか」という思いを込めたつもりで『どこでもスタート』にしたんです。

 

──自分の伝えたいことをそんなふうに言語化できるからこそ、響く曲ができあがったんですね。

 

まいきち 次に作るなら、めちゃくちゃかわいい曲を作りたいんです。私はファッションもお化粧も好きで、化粧をした自分を自撮りして「今日のうち、かわいい」と毎日思っています。「かわいい」と思うとその日が前向きになれるから。

 

──TikTokを見ると、ジャンル限定せずいろいろなファッションをしてますよね。

 

まいきち そう、系統を毎日変えています。好きなものも毎日変わるし。今は『Ranzuki』で専属モデルをしていますが、それぞれのモデルが“ギャル”と“清楚”にわかれるなかで、私は“個性派”といわれています。「まいきちちゃんは、“まいきちちゃん”だもんね」みたいな扱い。

 

──現時点でのTikTokの最新動画では、地雷系のメイクとファッションをしています。朝、その日の気分で決めるんですか?

 

まいきち 意識してメイクしているわけではないんですよ。メイクしていたらそれになる。ちなみに今日の私服は、「高円寺にいそうな人」です。

 

──確かに! 高円寺感ありますね!

 

まいきち ちなみにメンヘラの女の子をイメージして撮ったり。こういう子は路上が似合うだろうなと思って原宿の路上で取りました。こクラブに行きそうな子も、そういうメイクとファッションに変えるんです。

 

──場所も考えているんですか! 完成度高いですね。一番反応がいいのはどれですか?

 

まいきち Tシャツ姿のラフな感じとか。部屋着も人気です。みんなの中での私のイメージが「部屋にいる子」というのが強いと思うので。だからこういう、制服の清楚系も人気があります。

 

1動画につき30テイク

──毎日撮っているんですよね。

 

まいきち 毎日毎日、コンセプトを決めて写真を撮って投稿して、TikTokと同時にXにもポストして。こだわりもすごいんです。1枚の写真を載せるために、死ぬほど写真を撮っています。

 

──何枚くらい撮りますか?

 

まいきち 同じ画角の写真を300枚とか。スマホの写真フォルダには10万枚入ってますね。

 

──10万!

 

まいきち それくらい力を入れています。自撮りじゃなく、カメラマンさんに依頼することもあります。

 

──1カットにつき300枚のなかから、どうやってセレクトしますか?

 

まいきち これは感覚ですね。「あ、これ、バズる。イケる」みたいな。動画も同じように、下書きに1000動画のストックがあります。1動画につき30回くらい撮るし、15秒の動画に6時間かけたり。

 

──手間をかければかけるほど、バズりやすい、という傾向も?

 

まいきち 時間をかけて撮った動画は、絶対にバズってきました。友達の前で撮っていると「もうそれでいいじゃん!」とうんざりされますが、妥協が許せないんですよね。めんどうだとも思わない。一方で、「やらなきゃ。かわいく撮らなきゃ」という気持ちがストレスになるときもあります。

 

──毎日見せ方を考えて、当然疲弊する日もありますよね。

 

まいきち その上、いつ炎上するか分からないし。毎日生きること自体、すごく大変ですよ。

 

──炎上しないコツなどあるのでしょうか。

 

まいきち マイナスなことはあまり言わないようにしています。人って落ち込むと、気を引くために棘のある発言をしがちだと思うんです。そういうことをしない、とか。あと、調子の乗らないことと、ファンの子ひとりひとりを心の底から大事にすること、はずっと意識しています。

 

生きるモチベーションはファンの言葉

まいきち だから、さっきも「私、今日もかわいい」と言いましたが、それもあえて言っています。毎日「かわいい」とか「応援しています」というコメントをくれるのに、本人が「かわいくない」と否定的なことを言うと、すごく悲しいと思うんですよね。「どれだけ『かわいい』と送っても、伝わらないんだな」と。そういう気持ちになってほしくないので、今日も私は「私、かわいい」というプラスな発信をするし、「生きていてよかった」「みんなと出会えてよかった」と言うんです。そうやってすごしていると、炎上しなくなると思います。

 

──ファンの方との信頼関係を感じます。

 

まいきち それは大きいですね。炎上する子って、人気になったら、過去にファンからもらったプレゼントを蹴っている動画が流出するような子が多いんですよね。私はファンからの手紙は箱に入れてずっと取ってあるし、つらいときに読んでいます。

 

──これまで一番心に残ったファンの言葉は?

 

まいきち いっぱいありますが、例えば女の子からの手紙で、「四六時中まいきちちゃんのことを思って生活しています。勉強のモチベも、かわいくなりたいモチベもまいきちゃんだし、恋愛していて傷ついたときに元気をくれるのもまいきちちゃんです」という内容です。TikTokのコメント欄にも素敵な言葉があふれています。スマホを開くと、自分を肯定してくれる人間がいるって……それってすごく大きいんですよね。

 

──絶大な支えですね。

 

まいきち 私の活動の原動力は、ファンの声と、「もっと自分を知ってほしい。見てほしい」という気持ちです。

 

<後編に続く>
TikTokクリエイター・まいきちインタビュー! 不登校を経てからTikTokで生きていくことを決めた少女の「どうせ生きているなら、楽しんだほうがよくない?」マインド

 

まいきちさん 公式TikTok @maikichi0130

 

 

撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 構成/BuzzTok NEWS Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/

TikTokクリエイターSATOYUインタビュー「俺、人気ないのかな……」自信をなくした元トラック運転手に舞い降りた、唯一無二のキャラクター

自身の声や顔で最大限まで遊びながら、TikTokのエフェクトを駆使してエンタメに昇華し、フォロワー数440万人を誇るSATOYUさん。2023年12月14日に開催された「TikTok Creator Awards Japan 2023」で「Rising Creators of the Year」に選出されたほか、海外にもその名が轟き世界中にファンを有する。そんなSATOYUさんの、TikTokサクセス・ストーリーとは。

 

SATOYU●さとゆ…2020年3月にTikTokを開設。声マネ動画、NCP、月歩がバズりTikTokライブも話題に。2023年12月14日に開催された「TikTok Creator Awards Japan 2023」で「Rising Creators of the Year」に選出。声マネからナレーター仕事に繋がり、映画予告『アナザーラウンド』『FALL』のナレーションを担当。式HPInstagramYouTubeX

 

SATOYUさん公式TikTok @satoyu727

 

【SATOYUさん撮り下ろし写真】

 

「楽天スーパーセール!」でいきなり再生回数100万回超え

──TikTokを始めてから約4年で、現在はナレーション業や大手企業のPR動画にも出演するなど活躍中です。どんなきかっけでTikTokを始めたんでしょうか。

 

SATOYU 友達に勧められて、最初は遊び半分でスマホのなかにあった動画を投稿していた程度でした。今はもう消していますが、細々と声真似動画をアップしていたんです。

 

──手応えはいつ頃から感じましたか?

 

SATOYU これまで4回バズった実感がありまして、初バズりは「楽天スーパーセール」のCMでおなじみの若本規夫さんの声真似でした。再生数が100Mを越えて、「いいね」も10万超えたので「これはバズったな!」と。

 

──2020年3月29日の動画ですね。若本規夫さんといえば『ドラゴンボールZ』のセル、『サザエさん」のアナゴさん、『人志松本のすべらない話』のナレーションなどでおなじみですよね。なぜバズったと思いますか?

 

SATOYU 若本さんの声まねをする人はたくさんいるんですよ。なかでも僕は、若本さんのシャウトが得意で……ちょっと若本さんが声優を務めた『プリズン・ブレイク』のティーバッグ、やっていいですか?

「スコフィーールドッッ!」

これです。

 

──うわー! 目の前でやっていただいて、すごい贅沢!(笑)

 

SATOYU 全然やりますよ。おそらく、この声まねがズバ抜けてうまかったからだと思うんです。ずっと練習していたので。2回目が、2020年12月からやり始めた、「ピカチュウ」のエフェクトをつけてドスの効いた声を出すという動画で。3回目が2022年頃に始めたモフモフ衣装のNPCキャラクターです。

 

バズったNPCが、急に落ち込んだ理由

──NPCとはゲーム用語で、ゲーム上でプレイヤーが操作しないキャラクターのことですよね。主人公が訪れる街などに、それぞれの役割で立っているような。TikTokクリエイターの夏絵ココさんがここに着目し、TikTokライブでファンタジー世界の住民のような猫耳美少女姿で登場し、ギフトが届いたらゲームキャラクターのように無機質に動く「無言配信」というスタイルを確立しました。SATOYUさんも、そうした夏絵さんのキャラクターをヒントにしたのでしょうか。

 

SATOYU そうですね。「こういう原始人みたいなキャラいそうだよね」と思いつき、ちょうど自宅にあったキャンプ用のもふもふクッションを切って着てみたんです。ヒゲは、最初は妻のアイライナーを借りて描いていました。消費量が多いので、今は100均で買っています。

 

──すべて身近にあったものだったんですね。そういった人気キャラクターを生み出すまでに、分析したりも?

 

SATOYU TikTokを見ていただけです。分析とか計算とかできないんですよ。それまでも結構なキャラクターをやってきて、そのなかのいくつかがバーンと当たっただけなんです。でも、NPCがバズった後に数字が落ちていきまして。いいときで1万人を超えていた同時接続人数が、3、4か月をすぎると100人を下回るようになっていったんです。

 

──なぜでしょう。

 

SATOYU 視聴者さんが飽きたんでしょうね。ずっと同じことをしていたら、僕が視聴者でも飽きると思います。シビアですよね。それでいろいろやりました。「ストリートファイター」のリュウとか、地雷系女子とか、10~20キャラクターはやったかなあ。この時期は“壁”でしたね。

 

「普通に働いたほうがいいのかな?」

──TikTokで初めて壁にぶつかったんですね。

 

SATOYU しかもこの時期、上京を決めたときだったんですよ。それまでは地元・愛知でトラック運転手をやっていて、ちょうど仕事を辞めたばかりで、「ヤバいな」と。

 

──どのくらいの期間、そういった状況が続きましたか?

 

SATOYU 3、4か月くらいですね。「自分、人気ないんだな……」と、メンタルにきました。結構考えて落ち込んで、一度ネガティブなことを考え出すと止まらなくて、「普通に働いたほうがいいのかな」とか。

 

──その時期、奥さまの反応はいかがでしたか?

 

SATOYU 彼女は冷静で肝が座っているんですよ。「大丈夫大丈夫、私、稼げるし」って。本当にすごいです。支えられましたね。それを経て、スーツ姿で歩く動画「月歩」で4回目のバズりを経験しました。

 

──「月歩」では、フォロワー数が100万人増えたそうですね。

 

SATOYU TikTokライブをやると、1日2万人ずつ増えていた時期でした。同時接続は最高5万人で、配信を見に来てくれた人が1000万人に達したこともありました。

 

──1000万人!? それはすごい。

 

SATOYU なぜそんなに来ていただけたのかは分かりません(笑)。

 

Tシャツをスーツに変え、大バズリ!

──「月歩」はどんな発想から生まれたんですか?

 

SATOYU もともと「歩きダンス」というパフォーマンスを海外TikTokクリエイターがやっていて、「流行ってるしやってみようかな」という感じでラフなTシャツ姿の「月歩」を投稿たんです。そのときの「いいね」は2000くらいで、可もなく不可もなくという数字でした。そんななか、コメント欄に「オシャレをしてやってみたら?」と書いてあって。ちょうどその日、映画の試写会のMCをやる仕事があり、スーツを着ていたんです。以前、友達の結婚式で着るために「洋服の青山」で勧められるままに買ったダブルのスーツで。

 

──それがお馴染みのスーツだったんですね! それももともと自宅にあったものだったとは。

 

SATOYU それがおしゃれかどうかはわかりませんでしたが、とりあえずスーツ姿で「月歩」をやってみたんです。すると思ったより再生回数が伸びて。そうしたら今度は妻が「これをTikTokライブのほうでもやってみたら?」とアドバイスしてくれて。僕は「ライブでやる必要あるかなあ?」と懐疑的でしたが、一応やってみたら1発目から同時接続人数が1万人超えたんです。

 

──周囲の方のさまざまな後押しがあったんですね。

 

SATOYU 「月歩」はいろんな偶然が重なって生まれました。たまたまそのコメントが目に入り、たまたまスーツを着ていたからやってみて、妻がアドバイスをくれて。普段はスーツなんて絶対着ていないですからね。

 

──「月歩」は海外受けもいいのではないかと思います。

 

SATOYU 海外の方が来てくれると、雰囲気ががらっと変わりますね。日本の方たちは「シェア」をあまり押さないイメージですが、海外の人たちはみんな「シェア」をしてくれるのですごく広がっていくし、一気にバズるんです。でも、やっぱり飽きられた経験を経ているので、「次もなにか用意しておかないと」と冷静に考えていました。すると最近は、海外の方たちにNPCキャラが受けはじめて、すごくうれしいんです。この前のTikTokライブは同時接続人数1万7千人で、バズっている実感があります。

 

──英語コメントでよく「OHIO」と言われているのを見かけます。

 

SATOYU そうなんですよ! 最初はそのミームがわからず「どういう意味?」状態で。調べてみて意味がわかると、イジられているんだなと。じゃあそれに乗っかろうと思い、「ジョジョの奇妙な冒険」のエンリコ・プッチのスタンド「メイド・イン・ヘブン」を文字って「メイド・イン・オハイオ!」とやったら、コメント欄に「OHIO!」「OHIO FINAL BOSS!」というコメントで溢れ返りました。

 

──それで代名詞的存在になり。

 

SATOYU とにかく目立ちたいんです、僕は。だからイジってくれてもいいし、それで「面白いヤツだ」と思われたら本望なんですが、最近では「こいつはOHIOだけど別に悪くないOHIOだよ」というコメントもあり、よくわからないんですが認められるようになりました(笑)。

 

──2023年にはANAのPR動画にご出演されたり、もうスーツ姿で歩くだけで仕事になる状態ですよね。

 

SATOYU いつも着ているスーツがダブルスーツで、パイロットさんもダブルスーツなので、そういうところでイメージが重なり起用してくれたのかもしれません。

 

オンラインゲームのボイスチャットでアナゴさん

──「友達が勧めてくれた」というきっかけでTikTokをはじめたと聞きましたが、昔から友達のなかで人を笑わせるのが好きだったんでしょうか。

 

SATOYU 「地元でおもしろいやつ」みたいな立ち位置でしたね。隙あらば笑わせたくて、面白いヤツになりたくて、隣の席の子をなんの脈略もなく勢いで笑わせたり。でも勧めてくれた友達も、「まさかここまでいくとは」とめっちゃびっくりしています。

 

──芸人さんを目指した時期もありましたか?

 

SATOYU ありました。もうひとり、僕と同じようにまわりを笑わせたいヤツがいて。その子と「吉本行きたいよね」なんて話をするだけで終わったんですけどね。

 

──周囲の友達を笑わせる以外に、表現の場はありましたか?

 

SATOYU それでいうと、中学生のときから今と同じようなことをやっていましたね。「APEX」のようなオンラインゲームをやっていて、ボイスチャットで「サザエさん」のアナゴさんの声マネで、「そっちあぶないぞ~! 気をつけて~!」とかふざけてしゃべっていました。

 

──当時一緒にやっていた人たち、「あのときの彼が!?」と驚くでしょうね。

 

SATOYU そうそう、一緒にやっていた人が僕の配信に来てくれたこともあったんです。「あのときから才能あったもんね」というコメントをくれて、覚えていてくれてうれしかったですね。

 

──オンラインゲームのボイスチャットが、SATOYUさんの原点だったんですね。

 

SATOYU そうだ、そのあと、高校生になるとスマホアプリの「斉藤さん」をやるようになったんですよ。誰かに声マネを披露したくて、最初にやったときは「俺の声マネ、どう思ってくれるんだろう」とドキドキしたのを覚えています。

 

TikTokがなくても、どこかで同じことをやっていた

──「斎藤さん」、なつかしい! iPhone版が2011年にリリースされた、ランダムに選ばれた相手と通話することができる「見知らぬ誰かと一期一会のコミュニケーションを楽しむ」をテーマに掲げたアプリですね。初めて人はどんなリアクションでしたか?

 

SATOYU 「おお! すごい!」みたいに言ってくれてうれしかったですね。自分のなかで唯一、人に褒めてもらえる特技だったのかもしれません。

 

──TikTok以前にも披露する場があったんですね。社会人になってからの表現の場はいかがでしたか?

 

SATOYU 8年ほど勤めていましたが、そういった場所はありませんでした。ただ、トラックの中では一人なので、ずっと声マネの練習していて。めちゃくちゃいい環境でした。TikTokをやり始めてからは、よりトラックの中でも練習に没頭するようになりました。そんななかで、就職してからは正直、40代、50代、60代……という、この先の未来の想像がついてしまっていたので、ちょっとちがう未来も見てみたいと思ったんです。それで本格的にクリエイターを目指すべく上京を決めました。

 

──会社を辞める相談は、奥さまにはしましたか?

 

SATOYU 「クリエイター1本でもやっていけるんじゃないか?」と思える時期だったので、打ち明けたときは「頑張ろう! 一緒にやっていこう!」と応援してくれました。妻も収入はあったし、もう本当に、妻の力は大きいですよね。

 

──もしTikTokを選択しない人生だったとしたら、どうなっていたでしょう。

 

SATOYU トラック運転手は一人になれる時間が好きなので続けているでしょうし、そのうえで、結局ほかのプラットフォームでやっていたと思います。とはいえ、ほかの場所だと伸びなかったかもしれません。TikTokの雰囲気と、僕のやりたいこととの相性が合致した結果が、いまなんだと思います。
場所はどこであれ、バズろうがそうじゃなかろうが、表現することが好きなんです。楽しいんですよね。これはずっと昔から変わらないし、これからも変わらないんだろうなあと思います。

 

──身一つが武器になっているさまは、TikTokクリエイターならではです。最後に、今後の展望を教えてください。

 

SATOYU 今までも未来のことはわからないまま、とにかく目の前にあるものを触っていく感覚で活動していました。「高い目標がないとダメだ」と言う人もいるかもしれませんが、目に見える手前のものに進んでいくだけでも十分だと思うんです。目の前が見えなくなるのは、立ち止まったときだけです。壁を感じたあの時期に「もう無理だ」「これから先もバズることがあるんだろうか」と止まりそうになりましたが、進んでいった結果、「月歩」があったし、またNPCがバズった。これからも前に進んでいくのみ、です。

 

SATOYUさん公式TikTok @satoyu727

 

撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 構成/BuzzTok NEWS Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/

TikTokクリエイターMumei後編! ボーイッシュ野球少女が、黒髪清楚なヒロインに「変わったやん!って言われたい」

TikTokフォロワー数400万人を越えるMumeiさん。高校生のときにアカウントを開設すると、自由きままにアップしていたダンス動画が「かわいすぎる」「中毒性ある」とじわじわ話題を呼び、またたく間に人気インフルエンサーになった、まさにTikTokドリームの渦中にいる女の子だ。2022年には「TGC teen 2022 Tokyo」でランウェイデビューを果たし、昨年にはアーティストデビュー。そして3月には初のフォトブックの発売も決定している。巧みすぎる編集や、YouTubeのような大掛かりな企画などがひしめくTikTok界で、“圧倒的なカワイイとダンス”で王道を貫き独走しているMumeiさんに聞いた、友達のこと、中学のこと、そして、フォロワーへの愛。

 

【関連記事】TikTokクリエイター Mumeiインタビュー前編「15秒の動画に3時間かける」強すぎるこだわりで、実家の部屋の壁を白く塗り直すまで

 

Mumei●むめい…高校生だった2020年7月、TikTokにダンス動画を投稿すると「かわいすぎる」と話題に。かわいさだけではない、中毒性のある表現力でまたたくまにフォロワーを増やし、2023年には「超十代 -ULTRA TEENS FES- 2023@TOKYO」「TGC teen」に出演、さまざまな企業とのコラボを行っているほか、アーティストデビューも果たし幅広く活躍中。初のスタイルブック「むめいです。」(小学館集英社プロダクション)が発売中。

mumeiさん 公式TikTok @mumeixxx

 

【Mumeiさん撮り下ろし写真】

 

他校の生徒にも学校バレ

──高校生時代の体育祭の動画などを見て思うのですが、こんな子がいたら、学校は大騒ぎじゃないですか?

 

Mumei 学校の友達は普通でした。ただ友達から「他校の友達から、『そっちの学校にMumeiちゃんいるやろ』って言われた」という話をされて、その友達が「そんなに有名になったんだ!」とびっくりする、みたいなことは多かったです。

 

──他校の学生がMumeiさんの高校に集まることも?

 

Mumei そうですね。ちょっと怖いなと思ったのが、最寄り駅がバレてしまったことです。ファンの方は「応援しています」と話しかけてくれるからいいんですが、そうではないけど私の存在は知っているような人からの視線は苦手でした。はじめたきっかけが友達との遊びの延長線上だったので、「本名がバレてやばい」みたいな感覚もなかったんですよ。今思うと、もっと考えるべきだったなと感じます。

 

──危機感がなかった?

 

Mumei そう、顔を出してネットで活動するということのリスクですね。

 

「今の友達がいなかったら終わっていた」

──往年のアイドルたちは、友達が通学路をがっちりガードしてくれたという話をよくします。Mumeiさんもそうでしたか?

 

Mumei 見にきてくださる他校の方も多いので、友達が「来てるで、隠れて隠れて!」と守ってくれていましたね。一方で、同じ学校でも私のことをよく思わない人もいたと思います。悪口も言われていたと思いますが、ダイレクトに私の耳に入ってくるわけではないし、自分、メンタル強いんで。そんなの気にしていたら終わりやし、負けやし。噂されてるんやろうな、って自分でもわかりますが、前に出て活動しているので噂されるのは仕方がないと思っています。

 

──信頼できる友達がいるからこそ、強くなれるんでしょうか。

 

Mumei 身近な友達はいい子ばかりです。友達自体は少ないんですが、仲が深いですね。

 

──友達の支えを実感したのはどんなときですか?

 

Mumei 外で遊んでいるとき、自分は気づかなかった盗撮に気づいてくれて「撮られてるよ」と、壁になってくれたり。TikTokをやりすぎて勉強がおろそかになると、勉強を教えてくれたり、授業中にこっそり答えを教えてくれることもあったり。

 

──いいお友達ですね!

 

Mumei いやほんまに、マジで、今の友達がいいひんかったら終わりだと思っています。

 

圧倒的な表現力の一方、恥じらいも

──ご家族の中のMumeiさんはどんなキャラクターなんでしょう。YouTubeを見るととても明るくポジティブに感じますが。

 

Mumei 静かな方です。しゃべるの苦手やし。でも、SNSで活動をしているときは自分が楽しいと思うことなので、無意識にテンションが上って、気持ちが高くなるんです。

 

──抜きん出た表現力も、自然と湧き上がってくるのでしょうか。

 

Mumei 表現力……よく言っていただくんですか、とにかく前に出ることがうれしくて楽しくて仕方がない感じです。あとは、母が若い頃にストリートでギターを弾いて歌うアーティストだったり、親戚中みんな音楽をやっていて、それに影響されている部分もあります。

 

──そうだったんですね! 幼少期から根づいたものだったんですね。

 

Mumei ただ、やっぱり最初は恥ずかしかったんです。カメラの前で1人で表現することが。自分で見返して共感性羞恥でむずがゆくなってしまうというか。でも、見てくれるみんなが「表現力がすごい」と言ってくださるから、恥じらいをなくしていこうと意識を変えていくようになりました。

 

──吹っ切れたタイミングがあったんですね。

 

Mumei いや、実はまだ、吹っ切れてはいないです。今でも恥ずかしい気持ちはありますが、とにかく頑張っています!

 

野球とキックボクシングで鍛えられたメンタル

──高校生以前、中学時代のMumeiさんについてもうかがいたいんですが、野球部だったり、今と印象が全く違いますよね。

 

Mumei そうです。ボーイッシュ系でした。このときにメンタルが鍛えられたと思います。野球もキックボクシングも、メンタルが強くないと続けられないことなので。

 

──自分で「やりたい」と言ったんですか?

 

Mumei そうですね。自分、影響されやすくて、弟や周りの人がやっていたら、負けず嫌いな気持ちになって「自分もやる!」みたいな。でも、かわいい女の子への憧れは小学生の頃からずっとありました。“高校デビュー”という言葉があるじゃないですか、それを自分も頑張らないとな、と思ったんです。“高校=青春”で、恋愛! みたいなイメージがあって、みんなが思い描くような女の子になりたいなって。

 

──みんなが思い描く女の子とは、例えば?

 

Mumei 黒髪ロングの清楚系です。自分もそれに憧れがあって、それに寄せて高校生活を送っていました。

 

──アニメの主人公のような。

 

Mumei そうです。アニメの主人公ってほぼみんなそれですよね。そもそも中学時代はSNSは見ても使ってもいないし、LINEもしていないし、ひたすら勉強と運動だけをやっていました。それが楽しかったんです。

 

素顔は、県知事に恐縮する19歳

──中学時代の同級生がいまのMumeiさんを見たら、驚きますよね。

 

Mumei 多分驚きます。だから同窓会、行きたいんです。道端でも、ばったり会って「え!?」みたいな反応をもらったことがあって、そういう反応をしてくれたり「変わったやん!」と言われることがうれしくて。頑張ったおかげで変わることができたんだなって、うれしいんですよね。

 

──昨年は楽曲「堂々」や「IF」を公開し、アーティスト活動も開始しました。

 

Mumei ボカロPさんとコラボして作りました。自分のやり方は、「有名な人からのオファーor依頼する」のではなく、「身近な人と一緒に大きくなりたい」というスタンスなんです。なので、世間は知られていないけどステキなボカロPさんと一緒に作りました。アーティスト活動はこれからもどんんどんやっていきたいです!

 

──活動の幅が広がっていきますね。出身地である滋賀県のPRなど、自治体とも仕事していますよね。

 

Mumei そう! ひこにゃんとも会って、かわいかったです。あと迫力のあるおじさんたちがたくさんいて……大人がいっぱいいて、県知事さんが目の前にいて、ほんまに怖くてめっちゃ緊張しました。あんな大物に会えるなんて……。

 

「フォロワーさんの意見を聞くのが大好き」

──(笑)。最後に、今後の展望を教えてください。

 

Mumei YouTubeの登録者数100万人を目指しつつ、TikTokを毎日投稿して、フォロワーさんと距離を縮めていきたいです。自分、ファンのことが大好きなので、名前と顔を覚えたい!

 

──前編でも「フォロワーさんにとってうれしいことをやる」といった話があったように、フォロワーの存在をとても尊重されているように感じます。そういった気持ちが動画にも反映されていますか?

 

Mumei むしろそれが一番大きいですね。自分は、フォロワーさんの意見を聞くのが大好きなんです。「◯◯系が好き」と言われたらそれを踊るし、「△△系の服がいいな」と言われればその服でダンスをするし。海外から応援してくださる方もいるので、その人たちに向けて英語表記をしたり、世界を意識した音源を使ったり、幅広い方に理解してもらえるようにしています。

 

──だから「Mumei」という名前なんでしょうか? 「無名」であるからこそ何色にも染まるといいますか。

 

Mumei ……! それでいこう! 決めました。それいいな。どんな女の子にも変わることができるよ、っていうコンセプトだよと。

 

──あ、そういう由来じゃないんですね(笑)。

 

Mumei 違います(笑)。本名で活動したくなくて、「何にしよう。名無し……名無し……うーん、無名でいいやん!」って感じで、数分考えて適当につけたんです。それがこんなふうになるなんて、人生、なにが起こるか本当にわからないですよね。

 

 

mumeiさん 公式TikTok @mumeixxx

 

撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 構成/BuzzTok NEWS Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/

TikTokクリエイターMumei「15秒の動画に3時間かける」強すぎるこだわりで、実家の部屋の壁を白く塗り直すまで

TikTokフォロワー数400万人を越えるMumeiさん。高校生のときにアカウントを開設すると、自由きままにアップしていたダンス動画が「かわいすぎる」「中毒性ある」とじわじわ話題を呼び、またたく間に人気インフルエンサーになった、まさにTikTokドリームの渦中にいる女の子だ。2022年には「TGC teen 2022 Tokyo」でランウェイデビューを果たし、昨年にはアーティストデビュー。そして3月には初のフォトブックの発売も決定している。巧みすぎる編集や、YouTubeのような大掛かりな企画などがひしめくTikTok界で、“圧倒的なカワイイとダンス”で王道を貫き独走しているMumeiさんに聞いた、はじまり、こだわり、そして、整形秘話。

 

Mumei●むめい…高校生だった2020年7月、TikTokにダンス動画を投稿すると「かわいすぎる」と話題に。かわいさだけではない、中毒性のある表現力でまたたくまにフォロワーを増やし、2023年には「超十代 -ULTRA TEENS FES- 2023@TOKYO」「TGC teen」に出演、さまざまな企業とのコラボを行っているほか、アーティストデビューも果たし幅広く活躍中。初のスタイルブック「むめいです。」(小学館集英社プロダクション)が発売中。。

mumeiさん 公式TikTok @mumeixxx

 

【Mumeiさん撮り下ろし写真】

 

きっかけは、友達とのフォロワー数対決

──インタビューはあまり受けていないですよね。

 

Mumei そうなんです。自分、しゃべるの苦手なので。

 

──え! TikTokを見ていると全くそうは思わないですし、YouTubeでは明るいキャラクターを見せてくれていますよね。

 

Mumei ほんとうは言葉をうまく伝えられなくて。頑張っています(笑)。

 

──そういったギャップも魅力ですよね! まずは、TikTokを始めたきっかけからお聞きしたいです。

 

Mumei 高校1年生のときにTikTokの存在を知って、クラスのみんながやっていて流行っていたので自分もやろうかな、という感じで始めました。最初は友達と、「どっちが多くフォロワーできるか、対決しよう!」という遊び方をしていたんです。

 

──友達との遊びの一貫だったんですね。

 

Mumei そうですね。それに、TikTokに上げへんくても、Instagramのストーリーに上げたり、SNS全般をプリクラ感覚で使っていました。

 

──じゃあ、こんなふうに公にするつもりはなかったんですか?

 

Mumei 最初はなかったです。時間が経つにつれて、「TikTok、楽しいやん!」となり、投稿頻度が高くなり続けていたら、フォロワーさんにとってうれしいことをやると応援してくれるようになったので「これ、ちょっと頑張ろうかな」という気持ちになったんです。

 

勉強を忘れて没頭し「この道に進む!」

──当初はどんな動画を上げて、友達と対決していたんですか?

 

Mumei 自分が踊りたい音源で踊って、上げているだけでした。フォロワーさんが何を楽しみにしているかとか考えずに、自分がしたいことをただずっとやっていただけでした。

 

──ちなみに、対決の結果はいかがでしたか?

 

Mumei 最初は同じくらいで、動画を上げれば上げるほどフォロワーさんが増えていっていましたが、勉強もしなきゃいけなくて。テスト勉強期間に入って、対決からフェードアウトしていきましたね。

 

──勉強がおろそかになるくらい、TikTokにのめり込んでしまったんですね。

 

Mumei そうなんです。悪い意味で集中して没頭してしまって。それで勉強しなさすぎて、TikTokと距離を置こうとしたんですが、距離を置くことができなくて。

 

──お母さまはなんと言っていましたか?

 

Mumei 最初の頃は、できるかぎり隠れて撮っていたんです。でも高校1年生のはじめ頃に結果的にバレてしまい、その頃には「このくらいフォロワーさんがいるし、この道に進みたい!」と話しました。

 

15秒の動画を撮るのに3時間

──高校1年の最初って、やり始めてすぐの頃じゃないですか?

 

Mumei 本当に最初の頃は全然だったんですが、1つの動画がバズっていっきにフォロワーさんが増えて。バズった気持ちがうれしくて、「次もバズらせたろう!」という感じでのめり込んでいったんです。

 

──1日にどれくらいやってしまうものなんですか?

 

Mumei 見るのだけだと半日くらいですかね。私は洋楽が好きで、洋楽の音源が流れてくると「これめっちゃ楽しい!」と延々とスクロールしていたらいつの間にか時間が経っている、という感じで。

 

──撮るときはどれくらい時間をかけますか?

 

Mumei 何時間撮っているかわからないですね……ちょっと没頭しすぎて……。いつの間にか2、3時間経っていることは普通にあります。たった15秒の動画で。

 

──たった15秒で!

 

Mumei ほんまにそう。夢中になって、時間の感覚、マジでわからないです。

 

──どんなところにこだわって、時間が経ってしまうんでしょうか。

 

Mumei 例えばメイク、絶対に失敗したらアカン部分を納得いくまでやり直したりとか。ちょっと映り方が悪いと、何回でも、何十回でも撮り直して、気づくと数時間経っているんです。

 

「髪の毛が理想的になびいてない! もう一回!」

──ちなみに最近何度も取り直した動画は?

 

Mumei 私が得意な変身系で、メガネをかけた三つ編みの冴えない女の子が、急に髪の毛サラサラな清楚系に変身するという動画です。変身するときの、髪の毛のなびかせ方がどうしても理想どおりにいかなくて。できる限りアニメに近い描写を再現したいんですが、現実ではなかなか難しいんですよね。

 

──動画を確認すると、確かにアニメーションっぽいなびかせ方ですね。

 

Mumei これができるまで何度も見返して「また全然なびいてないや……」で、撮り直し、みたいな。頭の中のイメージと一致させたいんですよね。

 

──メイクも同じように、アニメのようなイメージがあって、近づけるように?

 

Mumei そうですね。普段はアイライン細めに書いていますが、アニメって目がはっきりしているじゃないですか。だからアイラインを太めに描いたり。チークを濃くしてみたり。

 

──そういったこだわりは、「この道に進もう」と決意してから生まれたんでしょうか。

 

Mumei そうですね、それと同時に、フォロワーさんから自分でもわからへんところを見られることに気づいたんです。腕につけたままの髪の毛のゴムを見られて指摘されたりして、細かい所まで見てくれているんだなぁと驚きました。

 

母にお願いして実家の壁を白に

Mumei あと、最初は意識していなかったのが、部屋の色です。

 

──確かに当初は、実家感がありますよね。

 

Mumei カーテンが青で壁がマーブルっぽい感じで、映えなくて。お母さんにめちゃめちゃお願いして、カーテンを白にして、壁を白く塗り直しました。自分がしたいことがわかるように、はっきり映るような背景にしました。

 

──お母さま……ありがたいですね……!

 

Mumei お願い、めっちゃ聞いてくれています(笑)。

 

──鼻を整形していることを公表していますが、それもお母さまの協力があったのかと思います。

 

Mumei そうですね。事前に成功例や失敗例を一緒に調べました。カウンセリングにもいっぱい行って、信用できる先生にお願いして。

 

──とてもしっかり準備されてたんですね。

 

Mumei 自分ひとりでは行動できないので、周りの人に協力してもらいながら、そのためにはしっかりとした事前準備が必要なんですよね。周りの人に恵まれていると思います。

 

自撮りもイヤになるほどのコンプレックス

──整形した時期はいつ頃ですか?

 

Mumei 高校1年生の終わり頃です。整形したいと思ったのは、YouTubeを始めたいなと思ったからなんです。TikTokは加工ができるからいいんですが、YouTubeは無加工の、ありのままの自分が映るじゃないですか。それで、YouTubeの画面に映ったときの自分、「鼻、デカ!」みたいな。気になったら止まらなくなって、お母さんにお願いして整形をしたんですが、「整形した事実をみんなに話さない」という選択肢はありませんでした。

 

──もともと写真を撮ったり鏡を見るときなど、コンプレックスに感じていたんですか?

 

Mumei コンプレックス、ありました。昔はTikTokもほかの加工アプリも知らなかったから、自撮りすらイヤだったんです。でもTikTokに出会って、きれいな人がたくさんいて、「私の顔に合う、理想の鼻はこれだ」という形にも気づくことができました。

 

──それで理想の鼻を手に入れてたんですね。

 

Mumei はい! とはいえ、今もずっと一生懸命研究しています。自分に合うメイクや髪型を。どうやったらビジュアルの良い自分を保つことができるのか……もうずーーっと探しています。

 

<後編に続く>
TikTokクリエイター Mumeiさんインタビュー後編! ボーイッシュ野球少女が、黒髪清楚なヒロインに「変わったやん!って言われたい」

 

mumeiさん 公式TikTok @mumeixxx

 

撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 構成/BuzzTok NEWS Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/

 

TikToker マツダ家の日常・関ミナティ・後編「日本だけでは興奮できない体になってしまった」動画作りの背景にあった、少年時代の1人遊び

日本のTikTokerの中でもいち早く世界に轟いたクリエイターといえば、マツダ家の日常にほかならない。メンバーの関ミナティさんが試行錯誤の末にたどり着いた、ブルーオーシャンで見た、絶景とは。さらに、動画制作の根源でもあるといえる、知られざる少年時代の“一人だけの遊び”を明かしてくれた。

 

【関連記事】TikTokerマツダ家の日常・関ミナティインタビュー前編! 投稿1本目で金脈を掘り当てた彼らが気づいた「いい動画」「悪い動画」

 

(写真前列中央右)関ミナティ●せき・みなてぃ…2020年11月TikTokアカウント「マツダ家の日常」を開設すると、関暁夫の物まねで都市伝説風にコンビニ商品を紹介する動画が大バズリ。2021年、「TikTok流行語大賞2021」で「いやヤバいでしょ」のフレーズがチャレンジ部門を受賞。現在、ショート動画の合計再生回数が毎月約5億回再生を誇る。著書に「TikTokハック あなたの動画がバズり続ける50の法則」(KADOKAWA)がある。SNSコンサルティング「マツダ家コンサル」も行っている。写真は「M2DK/マツダ家の日常」より

 

マツダ家の日常 公式TikTok @matsudake

 

【この記事の写真一覧】

 

すぐ海外に届くと思いきや「あれ? これもダメ?」

──至るところがブルーオーシャンといいますか、釣り糸を垂らせば必ず何かが釣れる状態のように見えますが、試行錯誤していた時期はなかったんでしょうか。

 

 ありましたよ。ラップ期の2021年頭ですね。ラップがバズって日本の多くの方に見てもらえたものの、興奮しきれない自分もいました。それは、世界に響かせることができなかったからです。

 

──その頃から海外を視野に入れていたんですね。

 

 はい、海外に届けたいと思いいろんな動画を撮りましたが、日本では再生されるものの海外ではまったくで……。で、自分たちでもおもしろいと思えてたどり着いたのが、非言語の「No edit動画」でした。スゴ技をマネする動画があるじゃないですか。僕らはそれを「編集なし」と謳って、めちゃくちゃ編集してスゴ技に見せるという動画シリーズで、それが初めて海外まで届き、ハマったんです。そこに至るまで、かなり試行錯誤しています。

 

──たしかに、ラップから「No edit」の合間にいろいろやっていらっしゃいますね。といっても、期間的には短いと思うんですが。

 

 いやいや、僕らの中ではめちゃくちゃ長かったんですよ。すぐに海外に届けられると思っていたのに、「あれ? コレもダメ?」みたいな感じで。

 

──「No edit」はどこからヒントを得たんですか?

 

 当時は、スゴ技をやるのが世界的なトレンドで、「スゴ技動画を流した後に、自分も挑戦して成功させる」という動画がすごく流行っていて。で、その次に「スゴ技動画を流した後に、自分も挑戦したけど、失敗する」という動画が流行りました。僕らは、この大きな2つの流れを掛け合わせて「スゴ技に失敗するけど、編集して成功したように見せる」。しかも、「編集していません」というタイトルで。

このシリーズの1本目を投稿したとき、日本の人はツッコんでくれると予想していました。「いや、編集してるじゃん!」と。それはそのとおりになった上、予想外なことに、海外の人も同じようにツッコんでくれたんです。英語やタイ語など、いろんな言語でツッコんでくれたり、「彼は一切編集してないな」とノッてくれる人もいたり、国を越えてコメント欄で遊んでくれていたんです。このコメント欄を見て、「あ、これはイケるな」と確信してシリーズ化しました。

 

──見事に海外まで届き、ちょっと有言実行すぎませんか?

 

 いやいや(笑)。楽しくやらせてもらっていただけです。

↑「No edit!!編集無し!!」M2DK/マツダ家の日常 (@matsudake) オフィシャルより/2021-10-20

 

中毒性の高い“バズり汁”を有効活用

──日本だけじゃ満足できない体になってしまったのは、なぜなんでしょう。やはり、一度でも“バズり”を体験したらそうなってしまうのでしょうか。

 

 まさにそうです。僕らがTikTokを始めた頃は、『ポケットからきゅんです!』という曲が日本でとんでもないバズり方をしていました。「みんなこれをやっていて、すごいなあ」と眺めていた場所に、自分たちが来てしまった。でも、そんなすごい場所から日本を眺めると、狭かったんです。世界の60億、70億という規模の場所でバズったらどうなるんだろう、と。目指したいと思いました。

 

──世界を見据えるスピード感が、TikTokならではですね。

 

 10年前に「海外で有名になる」のは、夢物語だったと思います。でも今は、誰でもすぐに有名になる可能性を秘めてる。見据えないのはもったいないと思います。僕たちのYouTube『M2DK.マツダ家の日常』は、1か月の再生回数が5億回とかなんですが、少し前だと「毎月5億再生」ってありえなかったと思います。でも今は違う、現実的な数字になったんです。

 

──5億……。“バズり”を知る前と知った後では、物の見え方や意識に変化はありますか?

 

 明確に変化はあります。バズると、“バズり汁”が頭から出るんですよ。

 

──バズり汁! 初めて聞くワードです(笑)。

 

 これはバズり経験がある“クリエイターあるある”だと思いますよ。バズると、本当にこれまで味わったことのない感覚というか……これまで刺激が入らなかった脳のある部分に、ドバッと刺激が入る感覚があるんですよ。それを“バズり汁”と呼んでいるんですけど。バズり汁が出ると、いろんなことが思いつくようになるんですよ。「こんな動画を撮ったらうまくいくんじゃないか」「こんな企画もできそうだ」と、次々と沸いてくる。そしてそれが、ことごとくうまくいく。

 

──バズり汁……すごい……。

 

 ただマイナス面もあります。とにかく中毒性が強く、「とにかくまたあのバズり汁を出したいッッ!」と思ってしまうんです。その点、僕らは自分たちのアカウントだけではなく、各クライアントさんのアカウントもやらせてもらっているので、淀みなく全てにフルパワーで頭を使うことができているし、どのアカウントがバズってもめっちゃうれしいんです。

 

──常にバズり汁が出っぱなしなんですね。

 

 今も出ています。

 

──出っぱなしで体に弊害はないんでしょうか。

 

 今のところないですねえ。いいことに使おうとすると疲れないですし。しんどくなることもあるんですよ。「マツダ家を最大化するためにどうすればいいか」という方向に頭を使おうとすると、ダメですね。途端に、「数字が落ちたらヤバい」という焦燥感に苛まされてしまうんです。今のように「誰かを支援できないか」「誰かをバズらせることはできないか」という考え方をすると、良質なパワーになるんです。これは3年前に気づきました。

↑開始2秒でチーズが美味しそうに映る M2DK/マツダ家の日常 (@matsudake) オフィシャルより/2022-5-14

 

映画「激突!」に感銘を受け、人形遊びを追求した少年期

──気付く前は、しんどくなった瞬間もあったんでしょうか。

 

「このままいくと、しんどくなりそうだな」と思ったときがあったんです。物理的に自分たちができることは限られているけど、「あれもしたい、これもしたい」という常に求め続ける欲求が肥大化して、さばききれなくなりフラストレーションが溜まりそうだな、と。

 

──それを今は、各クライアントに分散して注ぐことができるようになった。

 

 はい、そういうことができるなと、気付いたんです。

 

──考え方がフレキシブルですし、根っからクリエイター気質なのかなと感じました。学生時代から、「他の子どもと違うな」など感じたことはありましたか?

 

 それは自覚があったかもしれません。僕は幼少期から自分1人の部屋があり、子ども向けではない映画を1人で見たりしていました。

 

──例えばどんな映画ですか?

 

 覚えているのは、幼稚園の頃にスティーヴン・スピルバーグの「激突!」を見たこととか。

 

──主人公が乗る車が、謎のタンクローリーに追いかけ回される映画ですね。

 

 そうですそうです! 父親から「面白いから一緒に観よう」と誘われて見たのが、衝撃的に面白くて。それまで僕が見ていたアニメは、分かりやすい悪者と味方がいて、最後に悪者が「やられた~」と言うんですが、「激突!」は敵の顔が見えないんですよ。だから敵の顔を頭の中で想像するんです。自分が思い描く、最も怖いキャラクターとして想像して。そんなふうに自由度があることが革命的でした。「こんなに面白いものを作れる人がいるんだ!」と衝撃を受けたことを今でも覚えています。それから、映画や物語にハマるようになりました。

 

──当時からクリエイティブの素養があったんですね。

 

 いや、そんなにかっこいいものじゃないですよ。僕は部屋で、ずっと1人遊びをしていたんです。高校生くらいまで、マジで人形で遊んでいたんですよ。その人形遊びの題材探しのために映画を見ていたほどです。

 

──人形遊びというのは、ストップモーションを撮ったり、ということですか?

 

 いや、普通に、こうやって持って遊ぶだけです。

 

──普通に!

 

 頭の中にはストーリーが山ほどあり、部屋には数えきれいない種類のフィギュアがブワーーッと置いてあって。「このキャラとこのキャラを使うときは、こういうストーリーで」とか、それぞれに物語があるんですよ。それをその時々の気分でやったり、話を作ったりしていました。

↑M2DK/マツダ家の日常

 

TikTokがなかったら、3人でコテージを作っていた

──楽しすぎる放課後じゃないですか!

 

 ちゃんと声を出しながらやるし、自分で作った話で号泣したりとかもありました(笑)。

 

──最高ですね(笑)。お友だちやご兄弟を巻き込んだりはなかったんですか?

 

 そこはやっぱり恥ずかしいので、ずっと隠していました。

 

──親御さんは、部屋にフィギュアがたくさんあるのは、コレクション趣味だと思っていたんですかね。

 

 いや、あることすら知らなかったと思います。1つの隠しボックスに詰め込んで、クローゼットのめっちゃ奥に入れていたので。

 

──般的な年頃の男子は、セクシーグッズを隠すものですよね(笑)。

 

 僕は大量のフィギュアを隠していました(笑)。

 

──想像してストーリーを作ることが習慣化していたんですね。部活で、演劇部で脚本を書いたりなどはしなかったんですか。

 

 全然ないです。本当に1人の遊びでした。

 

──初期メンバーの2人は、そういった趣味嗜好を共有できる友人なんでしょうか。

 

 はっきり言ったことはないですが、「関はそういうのが得意なんやろうな」というのは知っています。

 

──今、そのバックボーンが動画制作で昇華していると考えると、TikTokがなかったらもったいないことになっていましたよね。

 

 TikTokがなかったら……それを想像すると、僕たち3人はキャンプやコテージ宿泊にハマっていたので、コテージ作りに振り切っていたんだろうなと思います。

 

──コテージ作りというのは、DIYということですか?

 

 いえ、仕組みづくり、ですかね。「こういうコテージがあったら泊まりたい」というコテージを作り、それを全国、世界に展開させるにはどうすればいいのか、という事業をやっていたと思います。

 

──「多くの人に楽しんでもらいたい」という根底は、今と同じですね。

 

 そうなんです。楽しんでもらいたいし、自分たちも楽しみたい。常にそれが一番です。

 

──そんな初期メンバー3人から、今は「マツダ家」のメンバーは何人いらっしゃいますか?

 

 40人ほどですね(※2023年取材当時)

 

──志同じ仲間が集まったんですね。

 

 振り切ったことをやっているからこそ、振り切っている人たちが集まってくれました。

 

──皆さんの動画作りには、プロ意識が働いているように思います。プロとしてのこだわりはどういったところにありますか?

 

 動画を作る瞬間だけ頑張っても意味がないと思っていまして、動画のこと、広告のこと、クリエイターたちが発展していくにはどうしたらいいのか……ということを常に生活の中心に置いていられるかどうかが、プロ意識なのかなと思います。

↑GoogleのPR動画は初期のコンビニグルメ紹介を踏襲し、ファンから「懐かしい!」の声も M2DK/マツダ家の日常 (@matsudake) オフィシャルより/2023-4-7

 

TikTok広告代理店のパイオニアに

──最後にお聞きしたいのですが、今後、Tik Tokはどうなっていくと思いますか?

 

 これからも広がり続けていくだろうし「TikTokで稼いでいます」という人がめっちゃ増えるだろうなと思います。今はまだそこまでできている人は少ないですが、TikTokはビジネスの可能性が無限にあります。僕たちの会社も、そんなクリエイターさんのお手伝いをさせてもらえたらと思っています。

 

──マツダ家さんのコンサル業もさらに需要が高まりそうです。

 

 昨年から大きな変化を実感したんですが、ナショナルクライアントと直接仕事をするようになりました。これは少し前のTikTokではなかったことらしくて。僕らがお手伝いすることで目に見えた成果があり、大きな企業と直接やらせてもらえる機会が増えました。

 

──コンサル業も、始めてすぐに軌道に乗ったんですか?

 

 そうですね。最初は仕事にするつもりも全くなく、タダでやっていたんですよ。「なんか詳しいって聞いたんですけど、僕のアカウントってどうすればいいですか?」という相談にアドバイスをしたりとか。そうしたら「めっちゃ伸びました!」という報告をいただき。そういったことが続き、「これ、仕事にしたほうがいいんじゃないか?」と。でもその時点では、企業と一緒にやることは想像していなかったです。TikTokでコンサルができる人たちは、世界中探してもあまりいないと思います。

 

──パイオニア的存在ですよね。

 

 で、昨年から「TikTokで広告」の流れがきて。その頃から僕らがやっているのが、「このクリエイターさんで、こういったPR動画を作る」という業務で。

 

──まさに広告代理店の仕事ですね。

 

 そうです。そのクリエイターさんが普段投稿している動画よりも、僕らが一緒にやったPR動画のほうが伸びがいいというケースがめちゃくちゃ出てきている状態なので、今後もっと広がっていくと思います。

 

──もちろんその次の展開も考えていらっしゃって。

 

 もちろんです。次はクリエイターさんの支援ですね。TikTokのクリエイターさんはマネタイズが難しいので、「マツダ家と組むことによって新しいビジネスができる」という展望をお見せできればと思います。

 

 

マツダ家の日常 公式TikTok @matsudake

 

撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 構成/BuzzTok NEWS Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/

TikTokerマツダ家の日常・関ミナティインタビュー前編! 投稿1本目で金脈を掘り当てた彼らが気づいた「いい動画」「悪い動画」

フォロワー数620万人超を誇る日本のトップTikTokerマツダ家の日常。始まりは、Mr.都市伝説こと芸人の関暁夫さんの語り口をオマージュし、コンビニグルメを紹介する「ロスチャイルドファミリーマート」だった。秒でバズった彼らだが、納得せずにはいられないロジカルな戦略があったのだ。メンバーの関ミナティさんにインタビューを敢行した。

 

関ミナティ●せき・みなてぃ…2020年11月TikTokアカウント「マツダ家の日常」を開設すると、関暁夫の物まねで都市伝説風にコンビニ商品を紹介する動画が大バズリ。2021年、「TikTok流行語大賞2021」で「いやヤバいでしょ」のフレーズがチャレンジ部門を受賞。現在、ショート動画の合計再生回数が毎月約5億回再生を誇る。著書に「TikTokハック あなたの動画がバズり続ける50の法則」(KADOKAWA)がある。SNSコンサルティング「マツダ家コンサル」も行っている。

マツダ家の日常 公式TikTok @matsudake

 

【この記事の写真一覧】

 

お風呂で1度練習した程度の物まねで、大バズリ!

──Tik Tokを始めたきっかけは、お友達同士の“ノリ”だったと聞きました。

 

 はい、親友3人でキャンプに行ったとき、僕が酔った勢いでMr.都市伝説 関暁夫さんの物まねをすると、1人が「面白いからTikTokに投稿したい!」と言い出したのが始まりでした。

 

──もともと関暁夫さんの物まねが得意だったんですか?

 

 いえ、前日に関さんの都市伝説の番組を見て、1人でふざけて風呂場で練習した程度なんです(笑)。それでキャンプの日、暖炉のあるコテージに泊まって、1人が暖炉に火をつけようとしていたら、湿っていてなかなかつかなくて。最初は「頑張れー」なんて応援していたんですが、だんだん暇になってきたので、僕が関暁夫さんの物まねをしながらその状況を解説し始めまして。

「いい? これは何者かの力によって火をつけさせてもらえないってこと。前の『ヤリすぎ都市伝説』でも言ったでしょ?」

みたいなことをずっと言っていたんですよ。そしたら深夜ノリもあって2人が死ぬほど笑ってくれて、僕は調子に乗って2時間くらいずっとやっていて。

 

──思った以上に軽い感じで始めたんですね。

 

 そうなんですよ。そのときに思ったのが、この日がめちゃくちゃ楽しくて、「3人でもこんなに楽しいんだから、100人でこの楽しさが共有できたらどれほど楽しいだろう」ということ。TikTokで発信することで楽しむ仲間ができたら面白いなと。

 

──それで初投稿されたのが、2020年11月27日、ファミリーマートの「紅茶の生チーズケーキ」を、関暁夫さん風にレポートする「ロスチャイルドファミリーマートシリーズ」の第一弾でした。当初からシリーズ化を見据えていたんですか?

 

 そこまで深く考えていませんでしたが、「もしこれがバズったら、コンビニの商品は新しいものがどんどん出るし、シリーズとして続けられるな」とは思いながら投稿しましたね。

 

──当初から戦略手的な思考がうかがえますが、ユーザーとしてもTik Tokをそういった目でご覧になっていたんですか?

 

 TikTokをやる前は、「これは面白いな。これはあんまり面白くないな。なんでだろう」程度に見ていましたが、投稿する側になってからは「これはなぜバズっているのか」「なぜバズっていないのか」ということを徐々に言語化できるようになっていきました。

 

いいグルメ動画=「次の日に行けるお店」

──マツダ家さんは1本目からバズり、ロスチャイルドファミリーマートシリーズが定着すると1か月も経たぬうちにフォロワー数が10万人を突破しました。その理由も分かっていたんでしょうか。

 

 そうですね、その当初から僕の中で仮説を立てていて、ラッキーなことにそれがハマったんだなと思いました。

 

──仮説?

 

 1本目を投稿する前、「ごはんを食べに行く動画がすごい流れてくるなあ。再生数もいいね数もすごいし」と思ってTikTokを見ていました。じゃあ、都市伝説風にグルメを紹介する動画はどうだろうと考え、でもそれだけでは自信がなくて。まずは自分の中で、“いいグルメ動画”を定義する必要があると思いました。そこで至ったのが、“いいグルメ動画”=「身近にあり、次の日にすぐ食べに行けるお店をレポートする」ではないかと。全国の人たちが等しく「次の日にすぐ食べに行けるお店」はつまり、コンビニですよね。そうやって、「コンビニ商品を都市伝説風に紹介する」にたどり着いたんです。

 

──すでにロジックを考えていた上で制作していたんですね。“グルメ動画”といいつつ、食べないし味をレポートするわけではないという振り切り方も、ほかの動画との差別化だったんでしょうか。

 

 あ、それは、僕が一切顔出しをしたくなかったから食べなかったんです。食べると顔が映っちゃうじゃないですか。そういえばそうだった、食べなかった理由、今思い出しました(笑)。

↑初めての顔出しの瞬間「Mr.都市伝説 関ミナティでカレーの惑星紹介」M2DK/マツダ家の日常 (@matsudake) オフィシャルより/2020-12-18

 

──顔出しNGだったんですね! 初の顔出しは、関暁夫さんを彷彿させる黒スーツとセンターパートにサングラス姿で登場した、12月18日でした。この頃はもう、TikTokに本腰を入れていらっしゃったということなんですか。

 

 そうですね。初期メンバーの3人とも自営業で、すでにTikTokに全振りしていました。

 

──全員が同じタイミングでTikTok1本に絞ることは、勇気がいることではなかったですか?

 

 いえ、逆に、ほかの業務もしながらTikTokに微力しか注げないことのほうが、僕らにとっては恐怖でした。1本目で”バズる”という体験をしたとき、「3人で地面を掘っていたら急に金がバーーッと出てきて『やべえ! すげえ!』となったけど、ふと周りを見ると、みんなは気づかずスルーしている」という感覚を覚えたんです。みんなは気づかないけど、ここをもっとちゃんと掘ったら、もっとすごいことになるんじゃないか、と。

↑初期メンバーはザッカーバーグとイーロンでおなじみ M2DK/マツダ家の日常 (@matsudake) オフィシャルより/2021-1-7

 

勝因は、1日20時間TikTok漬け

──嗅覚がすごいですね。

 

 単純に興奮していたし楽しいから「ここに全振りしよう!」となったんです。「儲かりそうだからやろう」ではなかったですね。マネタイズを意識したら絶対に縮小してしまうだろうなということは、感覚としてわかっていたので。なので、儲けを優先せず、「自分たちのチームをいかに最大化できるか」ということを目標にやっていくようになりました。

 

──全振りを考えたのはいつ頃ですか?

 

 2、3本目を投稿した頃ですね。

 

──早い!

 

 3人で言葉にしたわけではなく、自然と「こっちやな」と暗黙の了解でしたね。

 

──2021年になると、完全に顔出ししてラップ動画を投稿するようになりましたが、これも流行りを察知してですか?

 

 そうですね。当時は「ロスチャイルドファミリーマートを、やればバズる」というのは分かってきて、正直飽きてもいました。「これをずっとやっていてもなあ」と。それで、なにか違うシリーズをやってみようと探ると、そのときはかっこいいラップを巧みに披露するブームだったんです。で、都市伝説をかけ合わせてちょっとふざけたラップをやってみたらどうだろうと思い投稿すると、バズってくれました。

 

──すごく気軽に「バズった」とおっしゃいますが、普通ではありえないことだと思うんですよね。出す動画がすべてバズるなんて。なにがほかのTikTokerとの違いなんでしょうか。

↑「Mr.都市伝説 関ミナティでラップ」M2DK/マツダ家の日常 (@matsudake) オフィシャルより/2021-1-5

 

 TikTokについて考える量と時間が違うと思います。当時は、僕らのほかにTikTokのことを1日20時間考えている人なんていなかったんですよ。特別才能があるというわけではなく、それだけ時間と労力をかければ誰でもそうなると思います。

もし才能があるとすれば、そこにいかにハマれるか、ということでしょうか。僕らは文字通り、寝る時間以外はずっとTikTokを触っている状態で、そんな生活に慣れることができたのが勝因だったのかもしれません。そのときほかにも同じような人がいれば、同じような結果が出ていたと思いますよ。

 

──力の注ぎ方が、ほかのTikTokerとは違ったと。「ずっとTikTokを触っている」とはいえ、普通は皆さん流し見していると思いますが、マツダ家さんはどんなポイントを見ていらっしゃるんですか?

 

 初期の頃は、「面白いのに、なんでこの動画はバズっていないんだろう」とか、逆に「僕は面白いとは思えないけど、なんでバズっているんだろう」という疑問がどんどん沸いてきました。それに対して、1つひとつ仮説を立てて検証していくような見方をしていましたね。「これがバズらないのは、面白くなるのが10秒以降だから、最初に興味を引けずに飛ばされてしまうんだろうな」とか。

 

最初の2秒で、バズが決まる

──すごく細かく見ていらっしゃるんですね。

 

 あとはコメント欄もチェックします。自分の感覚とTikTokの中の空気の感覚とが、ズレていないかが分かるんですよね。例えば、「こういうコメントが多いだろう」と思って開くと、全然違うコメントが多かった場合、「自分の感覚がズレているな、チューニングを合わせないとな」と意識できます。僕らの動画の根底には「見た人をがっかりさせたくない」というポリシーがあるんです。無料とはいえ、視聴者からは時間をもらっている。だから「今回はあんまり面白くなかったな」とは思わせたくないんです。

 

──コンテンツを提供する側が常に直面する葛藤といいますか、「自分が面白いと思う」ものと「見る人が面白いと思う」かをすり合わせるのは、とても難しいことだと思います。

 

 僕らの場合は「自分たちが楽しいこと、うれしいこと」=「多くの人に喜んでもらえること」なんです。たとえ「僕らはこれがおもしろいと思う!」というものがあったとしても、それが多くの人におもしろいと思えなかったら、結果、僕はそれが楽しいとは思えないんです。そうやって需要と供給が重なったことは、ラッキーだと思いますね。

↑『X-ファイル』のテーマ曲をバックに、都市伝説風ワードを散りばめスイーツを紹介「Mr.都市伝説 関がコンビニスイーツ紹介」M2DK/マツダ家の日常 (@matsudake) オフィシャルより/2020-11-27

 

──さきほど「最初の10秒」とおっしゃったように、すごくシビアな時間感覚が必要とされるんですね。

 

 例えば、僕らの最近の動画を例にあげると、“最初の2秒”が、食べ物を食べるシーンです。複雑な説明一切なしに、
・おいしそうな食べ物がある
・それを口に運ぶ
これが“最初の2秒”のツカミなんですが、この“最初の2秒”で、多くの人に受け入れられるか否かが決まってしまうんです。

 

──たしかに分かりやすいですね。

 逆に、例えばツカミで「今東京で大変なことが起こっているんです」というセリフを言うとします。そうすると、この言葉を理解できる人以外は離脱します。興味があって、しっかり聞いてくれる人にしか見てもらえない。どんどん狭くなっていくんです。“最初の2秒”が、「今、東京で大変なことが起こっているんです」VS「おいしそうな食べ物を食べる」だとしたら、後者が圧勝するんですよね。……という感じで、動画を作る前に案を対戦させているんです。

 

──さまざまな案を上げて、精査して、勝ち残った「より多くの人の興味を引く」動画を制作していると。

 

 さらにその食べ物も戦わせます。
「そば」
VS
「チーズの乗った食べ物」
ならば、チーズが強いよなとか。

 

──企画会議すら面白そうですね。

 

 僕らは今、さまざまな企業のTikTokアカウント運用をサポートする「マツダ家コンサル」というコンサル業をしていますが、たくさんのクライアントさんと企画会議をしていて、すごく楽しんでやっています。

 

──コンサルは、戦略から企画、リサーチ、そして撮影から編集まで、一手に引き受けていらっしゃるんですよね。

 

 例えば、マツダ家の動画制作中、「これ、A社さんの動画のほうが合うんじゃないか?」となったり、A社の動画を作っているときに「これはA社では無理だけど、B社さんだったらできるな」とか。企画を考えれば考えるほど、どこかで使えるという状況です。

 

──もう余すところがないですね。

 

 そうですね。クライアントさんが増えれば増えるほど、企画の精度が上がっている状態です。やっぱり、本気でアカウントを運用しないと、見えてこないものはあるんだなと思います。

 

<後編に続く>
TikToker マツダ家の日常・関ミナティ・後編「日本だけでは興奮できない体になってしまった」動画作りの背景にあった、少年時代の1人遊び

 

マツダ家の日常 公式TikTok @matsudake

 

撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 構成/BuzzTok NEWS Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/

TikTokerブチギレ氏原インタビュー後編!結成から現在まで同居する相方は「卑怯者」、芸人への道を反対した母親は「手の平返し」!?

2020年4月、無事コロナ禍のTikTokに現れたり、森羅万象にブチギレ続けたり、生配信で集まった視聴者からのコメントにも瞬時にブチギレると、またたく間に人気TikTokerに躍り出たブチギレ氏原さん相方・サカモトさんと一緒にお笑いコンビ「ゴンゴール」として活動していましたが、2022年7月、TikToker&YouTuberとしてかじを切り、「GGチャンネル」として生まれ変わると、同年9月21日配信のYouTube動画「【生配信】」 】来たコメント全てにキレる生配信~Special Guest 轟さん(宮博之)~』で、まさかの昨日100万円のスパチャが集まり、翌日に本人が『の雷さんのキレる生配信、スパチャ額「世界一だった」とツイート、非公式ながらデイリーランキング世界1位という功績を残した。そんな氏原さんの「キレ芸」の原点を、学生時代まで​​遡る。

 

【関連記事】TikTokerブチギレ氏原インタビュー前編!テレビからTikTokに振りきり「コンビニで値段を見ずに買い物ができるようになった」

 

ブチギレ氏原●ぶちぎれ・うじはら…2009年、相方のサカモトとお笑いコンビ「ゴンゴール」を結成。ケイダッシュステージに所蔵していたが、2021年4月、「ブチギレ氏原」の名前でTikTokで森羅万象にキレ散らかす動画をアップすると話題に。2022年7月に事務所を退所しフリーに。現在「GGチャンネル」として活動。

ブチギレ氏原公式TikTok @ujiharagongoal

 

【ブチギレ氏原さんの撮り記録写真】

 

ファーストコンタクトを無視した相方

──相方のサカモトさんとはずっと一緒に住んでるんですね。

 

氏原 はい。僕がかなり早い段階で一般の生活が本当になにもできないことが分かって、仕事がなんにもできないサカモトが家の掃除とか生活についてやってくれています。僕は仕事は全力でやってちゃんと稼ぐから、と。もうきっちり分けよう! という感じです。

 

──いい関係ですね。

 

氏原 それもケンカしてキレてる最中に「せめてなんかやれよ!」という流れで、1つずつそうなっていったんです。

 

──とはいえ、ピリピリしていた時期よりもサカモトさんへの愛があるのでは。

 

氏原 変わらないと思いますけどね(笑)。今日も普通にちょっと怒りましたし。

 

──出会いは高校時代に遡ると、長い付き合いですよね。

 

氏原 こいつは俺の幼なじみの幼なじみで、中3のときに幼なじみが「おまえの行ってる塾にサカモトが来るよ」と言うから、サカモトの連絡先を聞いてメールしたんです。「俺、◯◯の幼なじみの氏原っていうんだけど、よろしくー」って。こいつ無視したんですよ

 

──(笑)。

 

氏原 消化器ぶちまけたりして調子に乗ってましたし、「もう終わってるヤツだな」って印象です。

 

──あははは! むしろサカモトさんのほうが激ヤバな人物だったと。

 

氏原 激ヤバですよ。だって高校のあだ名「卑怯者」ですからね。

 

コンビに決めた理由は「顔がよかった」

──なぜですか(笑)。

 

氏原 日常で些細な卑怯を繰り返していたからです。たとえば、工業高校の電機科だったんですが、文化祭でクラス一丸となってフィーリングカップルの電光掲示テーブルを作ったんです。イケてるグループも真面目グループも壁を取っ払ってほんとうに一丸となって。そんな中でこいつは、「漢検の勉強する」って1人だけノータッチ。そういうことの積み重ねで「卑怯者」と。

 

──漢検(笑)。サカモトさんはそう呼ばれていたことを知っていたんですか?

 

サカモト いや、覚えてないですね。「犬」とは呼ばれていたけど。

 

──犬!(笑)

 

氏原 そうそう、「鳥」って呼ばれてるヤツもいて、そいつとセットな感じだったんですよ。

 

──そんなサカモトさんとコンビを組もうと思ったのはなぜですか?

 

氏原 顔が整っていて、明るいヤツだから。それだけです。

 

──理由が明確ですね(笑)。

 

氏原 高校時代に一度誘って断られて、大学でお互いに上京したときに再会したら、こいつ、俳優のオーディション雑誌を持っていたんです。それで「俳優になるなら、芸人にしない?」と改めて誘って。

 

──そこで晴れてコンビの結成となったんですね。

 

氏原 それからフリーライブなどに出ながら、お笑い養成所に通わずに入れる事務所を探した結果、ケイダッシュステージに入れることになりました。

 

スタッフは強力な元芸人たち

──それが2009年で。当時は、今「GGチャンネル」としてTikTokなどで活動する未来が来るとは予測できないですよね。GGチャンネルのメンバーはサカモトさんのほかに、3名いらっしゃるんですよね。

 

氏原 はい、1人は同じ事務所だった同期で、彼も事務所を辞めるタイミングで「がっつりやってもらえないか」と誘って、編集スタッフも元芸人なんです。そしてもう1人は、DMで「弟子にしてください」と送ってきた変わったヤツです。やっぱり、いくら「自分がやりたいことをやりたい」とはいえ、本当に1人でやるには限界があるんです。組織にしないと続かないと思って、今のメンバーと一緒にやっています。

 

──スタッフを芸人仲間で固めているのには、理由がありますか?

 

氏原 ずっと、芸人をやっていた10年間はムダだと思っていたんですが、TikTokでバズったとき、「芸人は、ネットの中では明らかにレベルが違うな」と客観的に思ったんです。芸人時代はムダではなかったんだと。だから編集やディレクターも、元芸人だからこそ相当強いのではないかなと。

 

──プロフェッショナルだからこそ、笑いのツボを抑えた動画を作ることができるのだと思いますが、そうではない方が作るのと、決定的な違いはどんなところでしょう。

 

氏原 笑いが起きる理由を言語化できるということだと思います。狙って作れる、ということですね。

 

少年時代、母親に3時間怒られ続け……

──そういった背景を前提にしつつ、やっぱり氏原さんの“キレ”の瞬発力やバリエーションがすさまじいと思います。いつもどこでインスピレーションを得ているんでしょうか。

 

氏原 多分、子どもの頃の経験が影響していると思います。僕の母親は長時間ずっと怒ってくる人で、それにいちいち反論していて、それが原点なんじゃないのかなと思っているんですけど。

 

──お母さん、どんなときに怒るんですか?

 

氏原 僕には双子のきょうだいがいて、そいつが、先生が親に電話をかけてくるレベルにも満たない僕の悪さを母親に通報していて。リビングで正座させられて5時間も詰めてくるんですよ。

 

──5時間!?

 

氏原 いや、5時間は言いすぎました。実際は3時間くらいですね。

 

──十分長いです(笑)。

 

氏原 それでいちいち反論していると、母親は「こいつ、反省していないな」とジャッジして、折れるまでずーーっとネチネチ理詰めで来るんですよ。

 

──終着点はどこにあるんですか?

 

氏原 本当にイヤな思い出すぎて覚えていないですけど、どうやって終わっていたんだろ……お互い疲れて終わるか、きょうだいが「もうやめなよ」と言うか、まあ僕が一応謝って終わっていた気がします。

 

──ちゃんと謝って偉いですね……。

 

氏原 3時間キレられたら謝りますよそりゃあ。

 

母親とまともに話すのは5年ぶり

氏原 だから30歳くらいまで母親のことを「ムカつくな、あいつ……!」ってなっちゃってて、会いたくなくて、きょうだいの結婚式も出なかったりして。それで、僕がやっとこういう状態になれたのと、きょうだいに子どもができて母親が顔を見に行くというので「子どもの顔を見る名目で母親にも会うか」ってことで、再会したんです。

 

──何年ぶりですか?

 

氏原 何年か前に友達から「母親に腹が立っていることを言ったほうがいいよ」とアドバイスされたタイミングが4、5年前にあって、そのときに言ったら……反論してきたんですよね、なんか。

 

──(笑)。

 

氏原 「あんたはなにも分かってない! お母さんにも事情があった!」って。それで「こいつほんとナイな」って、より加速しちゃって。その後も芸人時代の単独ライブにも来ていましたが、会いはしたけどしゃべりはしなかったので、ちゃんとしゃべったのは5年ぶりですね。

 

──お母さん、強そうですね(笑)。

 

氏原 母親は変わらなそうだなと思いましたね。この前も、何事もなかったかのように普通に話してきて。まあ、それが楽といえば楽でしたけどね。

 

──お母さんは今のご活躍をご存知なんでしょうか。

 

氏原 LINEで定期的に「この前バズっていたね」と連絡が来ることはありますが、「手の平返しやがって!」が本音です(笑)。芸人になりたいと言ったときは引くほど反対してきたのに、成功したら「よく頑張ったわね」じゃねえよと。

 

亡くなる直前の、父の助言

──たしかに(笑)。反対されたんですね。

 

氏原 高校受験のときに、芸人になるために「大学に行く必要なんてないから」と工業高校を選んだんですけど、そしたら母親側の親戚総動員で全員に取り囲まれて猛反対されたんです。「絶対に成功するわけないんだからやめろ」と。人が聞いたら引いちゃうくらいの止め方でしたね。

 

──(笑)。それを振り切って芸人になって、かっこいいです。

 

氏原 高校生の漫才大会でちょっといい成績を残したときに、1回目の手のひら返しがありましたね。その後、芸人になる前にアメリカに行きたかったんですが「芸人になるなら留学費用は一切出さない」と言われました。そのとき、亡くなる直前の父親に言われたんです。「お母さんは頑固な人だから、もう大学には行ってあげろ。その後好きなことやればいいから」と。

 

──お父さんはいろいろと汲んでいますね。

 

氏原 そうですね。そんなことがありましたが、今となっては「当時は芸人の情報も少なかったし、止めて当然かな」とは思いますが、悔しいからそんなことは母親には伝えません(笑)。

 

──お母さんも同じように考えてくれる日が来ることを、願っています……!

 

氏原 もっと大きくなっていろんな仕事をさせてもらえるようになるまで、母親には生きていてもらえたらなって感じです。

 

 

ぶちギレ氏原公式TikTok @ujiharagongoal

 

撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 構成/BuzzTok NEWS Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/

TikTokerブチギレ氏原インタビュー前編!テレビからTikTokに振りきり「コンビニで値段を見ずに買い物ができるようになった」

2020年4月、突如コロナ禍のTikTokに現れるや、森羅万象にブチギレ続け、生配信で寄せられた視聴者からのコメントにも瞬時にブチギレると、またたく間に人気TikTokerに躍り出たブチギレ氏原さん。相方・サカモトさんとともにお笑いコンビ「ゴンゴール」として活動していたが、2022年7月、TikToker&YouTuberとしてかじを切り、「GGチャンネル」として生まれ変わると、同年9月21日配信のYouTube動画「【生配信】来たコメント全てにキレる生配信~ Special Guest 轟さん(宮迫博之)~」で、なんと94万6482円のスパチャが集まり、デイリーランキング世界1位という功績を残した。月収3000円の芸人から独立を経て、TikTokドリームの渦中にいる氏原さんにインタビュー!

 

ブチギレ氏原●ぶちぎれ・うじはら…2009年、相方のサカモトとお笑いコンビ「ゴンゴール」を結成。ケイダッシュステージに所蔵していたが、2021年4月、「ブチギレ氏原」の名前でTikTokで森羅万象にキレ散らかす動画をアップすると話題に。2022年7月に事務所を退所しフリーに。現在「GGチャンネル」として活動。

ブチギレ氏原 公式TikTok @ujiharagongoal

 

【ブチギレ氏原さんの撮り下ろし写真】

 

動画で勝負をするために、事務所を退所

──それまで、オードリーやトム・ブラウンなどが所属する芸能事務所ケイダッシュステージに所属していましたが、2022年7月に退所され、現在はフリーで活動されているんですね。

 

氏原 はい。テレビじゃなくネットで勝負したいので退所したいと相談したら、快く送り出してくれました。

 

──いつから独立を考えていたんでしょうか。

 

氏原 明確には覚えていませんが、僕らがTikTokをやり始めたのがコロナ禍の2020年4月で、当時はYouTuberの方たちの「これからは個人の時代だ」という考え方が広がり始めていて。そういう風潮を眺めながら徐々に考えていたと思います。

 

──先輩芸人からなにかアドバイスをもらったり?

 

氏原 いろんな人たちに意見を聞きました。例えばある先輩は「テレビでやるなら事務所に残っていいと思うけど、完全にネットで勝負するなら、独立もアリなんじゃないか」とか。

 

漠然とした不安も「すぐに行動したかった」

──葛藤はありませんでしたか?

 

氏原 ちょっと怖かったですね。「困ったときに、もう事務所に相談できないのか」「本当に大丈夫だろうか」という漠然とした不安はありましたが、今思えば、僕は自分で全て決めたい人だったので、独立は自分に合っていたかなと思います。やっぱり事務所にいると、迷惑がかからないよう念のため「これやっていいですか?」と事務所に確認をしてから動いていたので、機動力も上がったと思います。

 

──TikTokではキレちらかしていますが、インタビューの受け答えは常識的ですよね。

 

氏原 まあ(笑)、前がヤバかったので。前がヤバすぎて、急いで常識を身につけているところなんですよ。今のスタッフの1人がもともと同期の芸人なんですけど、昔からいつも「おまえ、ヤバいぞ」と注意してくれていたんです。

 

──(笑)。どんなときに教えてくれるんですか?

 

氏原 「氏原は、人の”意見”を“否定”と捉えるクセがあるから。あれは“意見”だからね」とか。

 

──大人ですね~!

 

氏原 あとは、人に自分の意見を押し付けすぎちゃったりが多くて。そういうときですね。

 

ピリピリしていた木造アパート時代

──動画では、相方のサカモトさんによくキレていらっしゃいます。マジギレなのかと思ってしまうこともあります(笑)。

 

氏原 いや~! 前に付き合いで30歳以上の女性が働く飲み屋さんに行ったんですけど、こいつ(取材場所で体育座りをして聞くサカモトさんを指差し)、「35歳のおばさんが~」みたいなことを言い出したんですよ! それでキレました。「ここにいる女性みんな30歳以上だし、おばさんはまずいでしょ?」って。(サカモトさんに向け)なにちょっとイヤな顔してんだよ! ネタになったからいいだろ。

 

──常識的なキレ方(笑)。

 

氏原 特にTikTokを始めた前後は完全にヤバいときで、こいつにキレることが多かったんですよ。

 

サカモト ピリピリしてましたね。ずっと一緒に住んでいるんですが、当時は家も木造だったし。

 

氏原 YouTubeでの生配信もやり始めて、それが収益化する前は月収3000円とかでしたから。

 

──月収3000円というのは、お笑いライブの出演などですか?

 

氏原 いや、ちょこっと出たネット番組のギャラとかです。

 

──いつ頃から収益化したんですか?

 

氏原 2020年8月くらいだと思います。収益化してスパチャ機能がついたときに生配信をしたら、スパチャがすごい入ってきたんです。

 

1時間23万円投げる視聴者も!

──ファンの方がたくさんいらっしゃることを実感されたんですね。

 

氏原 いや、そんなキレイな言葉じゃなくて……「おい! 金がめちゃくちゃ入ってくるぞ!」って(笑)、それが正直な気持ちでした。1時間の生配信で20~30万、70万円入ってくるときもありましたから。びっくりしましたね。

 

──プロの芸人による「来たコメントにキレる」という発想は、氏原さんの発明だったと思います。それで右肩上がりに?

 

氏原 上がりはしないんですよ。1時間で読めるコメント数は決まっているので。生配信の数を増やせばいいんでしょうけど、体力的にきついですからね。

 

──たしかに、いつも全力でキレていますもんね。

 

氏原 ちゃんとムラはありますよ(笑)。もう3年以上もやっているとね。それを感じ取ったのか、それから来てくれなくなる人もちゃんといますからね。

 

──一方で、当初からスパチャし続けている古参ファンの方もいらっしゃいますよね。センスのあるコメントで有名なファンの方もいますよね。「たかぎさん」という女性とか。

 

氏原 頭おかしいですよね(笑)。

 

スタッフ 上限がないTikTokでは、たかぎさんのギフト最高額は1時間23万円です。

 

──23万! なにをやっている方なんでしょう……。

 

氏原 「車屋さん」と言っていましたね。たかぎさんはほかにも推しがいるみたいで、お金がどうなっているのか不思議ですよ。

 

有名芸人とのコラボや、大規模キャパで有観客ライブも

──昨年3月には都内最大級のキャパを誇る大型ライブハウスの豊洲PITで有観客ライブを実施したり、ほかのYouTuberとのコラボなども行っています。

 

氏原 2022年6月にやったカジサックさんとのコラボはよかったですね。お互いのいいところが出ていたと思うし、昔からテレビで見ていた人と一緒にやることで「頑張ってここに来たんだな」と思いました。

 

──今後も目標はありますか?

 

氏原 登録者100万人と、有観客ライブを武道館でやりたいです。

 

──3000円から70万円という振り幅を経験していますもんね、実現への期待感があります。ちなみに、3000円から70万円の世界に突然来ると、どんな変化が起こりますか?

 

氏原 なんだろう、なにが変わったかな?

 

サカモト 2人ともお金を持ったところで趣味も広がらないし、今までと同じ生活を送るんですが、2人でテンションが上ったのは、コンビニで値段を見ずに買い物が出来た瞬間ですね。

 

氏原 ああ、たしかにそれだね。

 

サカモト それまでは、赤いきつねで200円使ったらおにぎりなんて買えない……みたいな生活でしたから。好きなものを買えるようになったのはうれしかったです。

 

相方は「氏原がバスっているのが気に食わない」!?

──あとは、ピリピリしていた家の中がマイルドになって、氏原さんがサカモトさんに優しくなったり?

 

氏原 家は木造じゃなくなりましたが、優しくはなっていないですね。

 

──(笑)。

 

氏原 こいつ、俺がバズっていることを「気に食わない」と言っていたから。

 

──えええ!(笑)

 

氏原 お金が入ってくるようになったのに、その考えってマズいよ。でも、ポジティブに解釈すると、自分もまだ演者としての気持ちがあるんだなと思うことにして、自分を納得させました。

 

──それでずっとコンビを続けていらっしゃるんですね。いい関係ですね。

 

氏原 もう共依存になっちゃってるだけだと思いますよ。

 

<後編に続く>

TikTokerブチギレ氏原インタビュー後編!結成から現在まで同居する相方は「卑怯者」、芸人への道を反対した母親は「手の平返し」!?

 

 

ブチギレ氏原 公式TikTok @ujiharagongoal

撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 構成/BuzzTok NEWS Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/

TikTokクリエイター・夏絵ココインタビュー「加工と無加工が全然違うじゃないか」という声すらも。彼女が見出すコミュニケーションの美しさとは?

フォロワー数160万人を誇り、「TikTok AwardsJapan 2022」では「LIVE Creator of the Year」にて最優秀賞を受賞されたことで話題となった夏絵ココさん。カメラを前に、まるで仮想現実を思わせる世界観で、ひとことも話さず配信をやりきる「無言配信」では、同時視聴者数5万人を記録したこともあるパイオニア的存在だ。2023年8月には楽曲「Virtual mod Real」をリリースし、アーティストデビューも果たした。その名が世界に轟く夏絵ココさんに、深掘りインタビュー!

 

夏絵ココ●なつえ・ここ…2021年10月31日に誕生し、TikTok LIVEを開始。2022年には言葉を発さず、身振り手振りだけでリアクションする「無言配信(思考実験)」が話題となり約2000人だったフォロワー数が半年で150万人となる大人気クリエイター。配信中はゲームに出てくるNPC(Non Player Character)のような動きのクオリティが高く国内外で注目されている。無言配信のパフォーマンスが終わるとコメントやギフティングへのお礼などを直接伝える時間を設け、「無言配信」と「会話」の両方を楽しめる構成となっている。また、2023年7月にはそのパフォーマンスが海外の配信者でもトレンドとなり、「NPC LIVE Streamer」の生みの親として大手海外メディアINSIDERでも取り上げられ、世界からも注目されるTikTokクリエイター。TicTok公式HPX(旧Twitter)InstagramYouTube

夏絵ココ 公式TikTok @natuecoco

 

【夏絵ココさんの撮り下ろし写真】

 

配信1分前まで、照明の色に悩み続ける

──夏絵さんといえば「無言配信」ですが、一番のこだわりはどんなところですか?

 

夏絵 まず照明です。照明の色を、その日のテーマに合わせて組んでいます。白系の衣装でかわいいメイクをしていたら、ピンク色で、クールな印象の日は紫や青、森にいそうな格好をしていたら緑、とか。見る人が一番目につくのは、私の姿と色だと思いますし、色の印象はキャラにダイレクトに反映されると思うので、すごく大事にしています。

 

──どれくらい機材があるんでしょうか。

 

夏絵 いろんなものを試しすぎて未使用機材もたくさんありますが、いまレギュラーで稼働しているのは4種類です。常に照明のトレンドをチェックしていて、かわいいライトがあったらすぐに買って、顔に当ててみたり、背後から当ててみたり、いろいろなパターンで試してみます。

 

──例えば、「今日はこの衣装でいこう」となると、1日がかりで考えたり?

 

夏絵 そうですね。1分前まで妥協したくなくて、ライブ配信30分前はもうカツカツです。頭の中で「これにしよう」と決めていざスマホに映すと、想定していた光と全く違ったりするので、納得がいかなくて。ギリギリまで粘って、ずっと照明をイジっています。妥協できない性格なんですよ。そこが不器用だなと、自分でも思います。

 

プライベートではお気に入りの森で撮影

──当初から、照明の大切さに気づいていたんですか?

 

夏絵 そうですね。私はもともとカメラが趣味なんです。一眼を片手にいろいろな場所に行ったり、人物を撮るために照明を組むのも好きで。そういうとき、キャラ物のコスプレだといつになく力が入るので、プライベートで撮影していても照明を大掛かりにしてしまいがちです。

 

──プライベートではどんな撮影をしていたんでしょうか。

 

夏絵 森に行ったりしていましたね。まずは、自分が撮りたい日差しが、きれいに差し込む森を探すんです。スタジオでも、十字の窓枠があって、顔に差す光が十字になっているところがタイプですね。

 

──光を妥協すると、写真にもちぐはぐさが表れたり?

 

夏絵 分かりやすく言うと「今日、盛れてない……!」となりますね。

 

──好きな森があるんでしょうか。

 

夏絵 鬱蒼と生い茂ったファンタジックな世界観で、乗馬もできる森があるんですよ。ざわざわとした、理想的な木々なんですよねえ。

 

──理想のファンタジー世界を常に頭の中にありそうです。

 

夏絵 頭の中には、いつも人以外のなにかがいます(笑)。エルフとか、人魚とか、妖精とか。そういった理想の姿があり、そこに向かって自分を作り上げていきたい、という感じです。

 

CLAMP作品のキャラに感銘を受け「やりたい!」

──今の夏絵さんの「猫耳にロリータファッション」にたどり着いたのも、頭の中を具現化した結果ですか?

 

夏絵 この子は、CLAMPさんの「ちょびっツ」というマンガの登場人物「ちぃ」がヒントです。ちぃは人型パソコンで、主人公とはぐれた際に変なスカウトに捕まってしまい、のぞき部屋に連れていかれてしまうシーンがありまして。そのときのちぃが、きょとんとした顔をしながら人間がやらないような行動に出て、でも外見は完璧な人間で……というそのコントラストがすごく頭に残っていて、「私もこれをやってみたい」と思ったのが、きっかけだと思います。私のほかのキャラクターも、そんなふうに自分の頭の中の「これ、やりたい!」を目指して作り込んでいます。

 

──表現方法として、VTuberという手段もあったかと思いますが、「自分でやる」ことに意義があるのですね。

 

夏絵 自分が一番自分自身をよりよく表現できることを知っているし、生身の体を使ったほうが、表現が多彩にできると思ったんですよね。VTuberの良さと生身の人間の良さはベクトルが全く違うと思いますが、私は生っぽさが好みだった、という感じです。

 

──生身だからこそ、どうしても納得できないコンディションの日もあるかと思いますが、どうしていますか?

 

夏絵 ダメなときはやらないと決めています。自分が納得いかないものをリスナーさんに見せることができないというか、そんなものを見せられてもイヤだと思うんです。

 

気づかぬうちに、NOまばたき

──妥協がないからこそ、ここまで作り込んだ世界を続けられるのだと思いますが、個人的にすごいと思うのは、夏絵さんのまばたきについてです。無言配信でキャラクターになりきるとき、ほとんどまばたきしていないですよね。

 

夏絵 ああ、たしかに。配信が始まるとモードに入るというか、あのしぐさをすると、自然と目を閉じることができなくなるんです。リスナーさんからも言われたことがあって、そのときに初めて気づいて「私、してないんだ!」と驚きましたね。

 

──もし自分が「はい、今から夏絵さんの無言配信をやってください」と言われたら、ずっと目まぐるしく考えると思うんですよ。「次にアレして、あの動きして、これやって……あああどうしよう!」と。でも、夏絵さんからはそういった水面下の足掻きが全く見えません。

 

夏絵 私は、ギフトをいただいたら声を出して反応していますが、このときのやりとりって、「イエーイ!」と来たから「イエーイ!」と返しているというか、考えるより先に呼応する感覚です。いろんな人とあいさつやハイタッチしている感じが近いかもしれません。ハイタッチって、考えてやるものではないですもんね。

 

──2023年4月には初の対面イベント「夏絵ココ展~リアル思考実験~」を開催し、1時間の無言パフォーマンスに挑戦しました。私も拝見しましたが、夏絵さんはお客さんと交流しながら猫のように自由気ままに動き続け、ライブ配信がそのまま現実にスライドしたような独特の緊張感でした。

 

夏絵 あれは台本もなく、1時間アドリブでやったんですが。

 

──え! 全部アドリブですか!?

 

夏絵 はい、普段は1時間座りっぱなしでライブ配信していますが、このときは1時間動き回ることができて、いつもより可動域が広くてむしろ楽でした。

 

アートを吸収し、動画に昇華

──逆に楽……。来ていらっしゃった方から、どんな感想が届きましたか?

 

夏絵 「新しすぎて、『これが夏絵ココだ!』と思った」とか、「現実の世界ではない場所に連れていかれて、夢のような感覚だった」とか、「忘れがたい、覚えていたい。けど、夢のようだったから、いつか記憶からなくなってしまうんだろうというのが、今からもうわかる」とか。すっごく厚みのあるレポートをいただき、ほんとうにうれしかったです。

 

──普段インプットをしていないと、なかなかできないパフォーマンスだと思います。感性はどんなふうに磨いていますか?

 

夏絵 美術館を巡ってアート作品に触れるのが大好きで、よく前情報なく観に行っています。

 

──最近、心を動かされた作品は?

 

夏絵 ポーラ美術館の企画展「部屋のみる夢ーボナールからティルマンス、現代の作家まで」で観た作品です。空間が隙なく出来上がっていて、その光景が美しすぎて。窓枠の影が絵画の横に重なるように照明が組まれていたり、木漏れ陽が差す壁の横に、木漏れ陽をモチーフにした作品があったりして。そういった絵画に、筆の通った跡を見つけると「この人は、この一瞬に美しさを見出して描いたんだな」と、作者の臨場感を感じることができて、没頭してしまいます。

 

人間だからこそ生じる日々の変化を、大切にしたい

──先ほど「思考実験」という単語が登場しましたが、夏絵さんが以前からずっと掲げているキーワードですよね。一体どういうことなんでしょうか。

 

夏絵 私がいて、リスナーさんがいて、それぞれがいろんなことを思い巡らせながら“思考”しますよね。例えば、私は衣装に合わせて毎回メイクを変えています。それは人間にしかできないことだし、私自身も一番楽しい工程で。

 

──AIやVTuberとの大きな違いの1つですね。

 

夏絵 そうですね。メイクの仕方や服装、髪形など、意図的に変えることもあればコンディションによって変化が生じることもある。リスナーさんがそんな毎日の少しずつの変化・変貌に気づき、そこに対話が生まれることに、思考実験の源があると思っています。

 

──かみくだくと、「それぞれが何をどう感じてもいいし、それを受けた夏絵さんも、何をどう感じてもいい」という、自由度の高いコミュニケーションの一貫という感じでしょうか。

 

夏絵 「太った」「痩せた」「メイクがいつもと違う」と、毎日異なる印象を持ち、その上で取るコミュニケーションに魅力を感じているし、それが真のコミュニケーションだと思うんです。それをすごく大切にしたいから、どんな声も受け止めるし、「なんでも言ってくれ」という姿勢で挑んでいます。

 

──だから、とにかくかわいく映るような加工一辺倒ではないのですね。

 

夏絵 かわいいと思われたいとか、考えていないですね。そりゃあ言われたらうれしいですが、「かわいいって言われたい!」という欲望はないんです。だって、人間なんだから当たり前のように毎日違いますもん。こうしてしゃべっている間だって、私の情報がアップデートされて見る目も変わるかもしれませんし、そうやって毎日毎日変わっていく人間って、美しいな、と思います。

 

「いじってくれてありがとう」を伝えたかった

──2023年5月、夏絵さんが話題になった出来事がありました。「爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル」(フジテレビ系)で、エハラマサヒロさんが夏絵さんのものまねをしたことで、審査員席の鈴木 福さんが「なんでこの人がバズってるのか分からない人ランキング、僕の中で1位」とコメントし、夏絵さんご自身もX(旧Twitter)で「うっす」と反応しましたよね。その後、TikTok Liveでもそのことに触れ、さらに話題になりました。

 

夏絵 そうなんですよ。鈴木 福さんが遊んでくれたので「私も一緒に遊びたい! 仲間に入れて!」という気持ちをTikTok Liveで伝えてみたんです。「いじってくれてありがとう!」の気持ちで。リスナーさんはその場でとても楽しんでくれました。

 

──猫耳がアイコンの夏絵さんですが、まさに猫のような好奇心を感じますね。

 

夏絵 そう、好奇心ですね。つついてくれたから、私もコミュニケーションを取りたくて。すべては思考実験なんです。

 

どんな声にも「存分に遊んでくれ!」と思える理由

──2022年12月に「TikTok Awards Japan 2022」で初めて公の場にご出演されたことは、思考実験の最たるものだったと思います。

 

夏絵 あのときはわくわくしましたね。「いつもの無言配信と同じように、しゃべらないほうが面白いだろうな」とか「絶対に、『加工と無加工が、全然違うじゃないか!』と言われるぞっ」とか考えて。一番大きな思考実験になると思ったので、「もう存分に遊んでくれ!」という状態で出ました。

 

──怖さはなかったですか?

 

夏絵 いろんなことを思われても「そう思ったことも含め、あなたなんだから、別によくない? 私はそんなあなたを見て楽しむね」と思っていました。そんなふうに怖さがないのは多分、共感性が薄いからかもしれません。例えば、お友達から「イヤなことがあって、髪を切ったんだよね」という連絡がきたとする。多分正解は「イヤなこと? 何があったの?」と聞くことだと思いますが、私は「髪切ったの? 写真見せて」と言ってしまうんです。それでお友達から「いや、違うから」と言われてしまうことが、これまで結構多くて。そんなふうに、共感性が備わっているみんなの中にいると、「私って全く違う生物なんだな」と感じて、人に対して猫ちゃんやワンちゃんの気持ちを理解するような考えが働くんです。

 

海外リスナーの「これは陰謀か!?」に大興奮

──一方で、そもそも言語や文化が全く違う、海外からの反応はいかがですか?

 

夏絵 最初に私のところに海外の方が流れ着いてきたときのこと、今でも覚えています。ずーっと「なんなんだこれは?」と言われていて、そんななか「これは、アメリカの政策の新しい陰謀か?」というコメントがついたんです。「えっ、陰謀!? なにそれ! めっちゃ面白いな!」と興奮しました。で、「分かった、私もそれに乗る!」となり、その日から数週間ほどは、もっと陰謀みを感じられるように、機械的に動いてみたり、AIっぽさを出してみたりして遊びました。

 

──リスナーの声で夏絵さんが変化していくのは、すてきなコミュニケーションですね。

 

夏絵 AIっぽさを出すと、案の定、陰謀を疑うようなコメントが増えて。「ロボットか? これはロボットなのか?」みたいな(笑)。さらに「男なのか? 女なのか!?」という論争も激しくなり、その辺は世界共通の反応でしたけど(笑)。

 

「好きになってもらいたい」欲を出した夏絵ココの、次の一手

──TikTokという限られたなかで、プラットフォームを生かしたクリエイティビティを発揮している夏絵さんですが、今後挑戦したいことを教えていただけますか?

 

夏絵 もっと広く共感していただける表現で、アーティスト活動をしていきたいですね。2023年8月にはアーティストデビュー曲「Virtual mod Real」をリリースしましたが、文字を書いてみたり、絵を描いてみたりもやってみたい。今はコアなリスナーさん以外の方には分かりずらい表現だと思うので、皆さんがひと目で分かるような“夏絵ココ”を展開してみたいと思っています。ちょっと欲が出てきちゃったんです。もっといろんな人に楽しんでもらいたいな、好きになってもらいたいな、って。

 

──「好きになってもらいたい」、とても清々しい素直なお気持ちですね。

 

夏絵 TikTokを始めたころは、「とにかくみんなで遊ぼう!」くらいのノリで、お互い猫ちゃんで、お互いじゃれ合っているような感覚でした。すべてが新鮮で、刺激的で。今は当時と比較すると、“夏絵ココ”をもっと落ち着いて見てくださるようになり、すると「この人、結局なんなんだろう?」という空気が感じられるようになりました。だから、歩み寄りたくなったんです。猫ちゃん同士ではなく、人間として。

 

──その変化もまた、思考実験の一部なんですね。

 

夏絵 そうですね。これからの自分の変化も、皆さんの変化も、とても楽しみです。

 

 

夏絵ココ 公式TikTok @natuecoco

 

撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/

TikTok、広告なしの有料プランを一部地域でテスト中と認める。月額750円に?

人気のショート動画共有サービスTikTokが、広告なしで見られる有料プランのテスト中であることが明らかとなりました。

↑「YouTubeプレミアム」のような展開に?

 

米Android Authorityは、TikTokアプリの最新バージョン内に、広告なしの月額定額プランを提供することを示す文字列を見つけたとのこと。この有料プランは「月額4.99ドル(約750円)で広告なしの体験を楽しんでください」と説明されています。

Image:Android Authority

 

TikTokは米TechCrunchに対し、実際に有料プランをテストしているが、「米国外で英語圏の、単一市場のみ」を対象にしていると回答しました。ただし、米国で実施予定というAndroid Authorityの主張は否定しています。

 

さてAndroid Authorityの調査結果に戻ると、有料プランの効果はTikTok側が配信している広告だけが対象であり、1回限りのインフルエンサーマーケティング(強い影響力を持つインフルエンサーが企業のPRをする)は対象外のようです。

 

TikTokはほとんどの収入を広告費で稼いでいますが、他社のオンライン広告費が落ち込んでいるのに対して大健闘しています。また、同プラットフォームにはクリエイターに収益を分配する仕組みがいくつかあるほか、クリエイターが自由に特典を設定して視聴者に月額サービスを提供する「LIVEサブスクリプション」機能もあります。

 

TikTokが広告の削除と引き換えの課金を行なうのは、今回が初めてのことです。すでにYouTubeも広告なしの有料プラン「YouTubeプレミアム」を提供していますが、TikTokも同じ道をたどるのか、今後を見守りたいところです。

 

Source:Android Authority, TechCrunch

フランス政府も公務員の業務用スマホでTikTok禁止! ただしキャンディークラッシュと同じ「娯楽アプリ」として

フランス政府は、公務員が業務用スマートフォンで動画投稿アプリTikTokを使うことを禁止すると発表しました。ただし、TwitterやNetflix、キャンディークラッシュなどの「娯楽」アプリ全般が取り締まられたかっこうです。

↑まさかキャンディークラッシュと同じ理由とは…

 

これに先立ち米国や英国も政府の端末でTikTokを使用禁止としましたが、それは中国企業ByteDanceが運営するTikTokからユーザーデータが中国政府に渡る恐れがあるため、とされていました。

 

今回のフランス政府も、公務員と政府のデータが危険に晒されるサイバーセキュリティ上の懸念からとされつつ、娯楽アプリ一般が「行政の設備で使うにはサイバーセキュリティとデータ保護の水準場十分ではない」ためと説明されています。つまり、中国ほか特定の国を対象としたものではありません。

 

政府は禁止されるアプリの正確なリストを明かしていませんが、行政の組織的なコミュニケーションなど、業務上の理由があれば免除もあり得ると述べています。Twitterなどを業務連絡に使っている部署であれば、例外が認められるのかもしれません。

 

もっとも、TikTokをめぐる国際的な緊張は、日増しに高まっています。カナダやEUも政府職員の使用を禁止したほか、米国では中国の創業者に株式の売却を求め、従わなければ国内でのアプリ禁止もあり得ると迫ったとの報道もありました

 

TikTokは国境を越えて世界中の若者達に親しまれている人気アプリだけに、穏便な落とし所を探るよう祈りたいところです。

 

Source:Reuters
via:Gizmochina

TikTok、18才未満の視聴を1日60分に制限。曜日ごとのペアレンタルコントロールも可能に

人気のショート動画共有アプリTikTokが、18才未満のユーザーにつき、自動的に1日60分の利用制限を設定することを発表しました。

↑TikTok

 

もしも60分を超えた場合でも、パスコードを入力すれば視聴が続けられます。また、この機能を完全に無効化もできますが、その場合は1日に100分以上TikTokを使うと、新たな時間制限を設定するよう促されるとのことです。

 

また18才未満のTikTokユーザーには毎週、視聴時間を振り返る通知が送られます。これによりアプリに費やす時間を意識し、時間制限を外すかどうかを考えることを求められるわけです。

 

TikTokの信頼・安全部門責任者のCormac Keenan氏は声明で「どれくらいの視聴時間が適切なのか、視聴時間全般がもたらす影響について広く支持されている見解はないものの、10代の若者が独りでオンラインの世界を探求し始める際には、特別なサポートが必要なのではないかと認識しています」と述べています。

 

また、TikTokのペアレンタルコントロール(保護者が子供のデバイスを管理できる機能)である「ファミリー・ペアリング」にも3つの新機能が追加されました。保護者は自分のTikTokアカウントを子供のアカウントに紐付け可能となり、曜日ごとに時間制限も設定できるようになります。

 

TikTokの広報担当者Mahsau Cullinane氏はThe Vergeに対し、これら新機能は今後数週間のうちにロールアウトされると伝えています。TikTokは楽しいために時間を使ってしまいがちですが、ほどよい距離感で付き合っていきたいところです。

 

Source:TikTok

TikTok、アプリ内ショッピング機能を米国でテスト中。いずれ海外展開もアリ?

人気のショート動画共有サービスTikTokが、アプリ内ショッピング機能を米国でテスト開始したことが明らかとなりました。ユーザーはTikTokアプリを離れずに、直接買い物できるとのことです。

↑TikTok

 

TikTokにとってライブショッピング(動画内で見た商品をすぐに購入できるしくみ)は課題となっていましたが、消費の本場である米国では、アジアなどほかの地域よりも進展が遅れていました。

 

昨年、Spotifyのショッピングタブ(TikTokプロフィール内に商品リストのタブがあり、クリックすると店のサイトに飛ぶ)を実験的に導入していましたが、ようやく米国で本格的に展開する準備を進めているとのことです。

 

TikTokの広報担当者は、新機能を米国でテスト中だと認めましたが、それ以上の説明はしていません。これまでライブショッピング機能は英国や東南アジア諸国に限られていましたが、ニュースメディアSemaforによると、TikTokは新たなショッピングプログラムに米企業を招待しており、いずれ海外の業者にも間口が広げられる見通しだそうです。

 

これに先立ちTikTokは米企業と提携して、ホリデーシーズン(年末商戦)に向けて米国ユーザーにライブショッピング機能を提供するとも噂されていました。また実際、TikToはが米国内で倉庫管理や返品を処理するフルフィルメントセンター(物流拠点)の求人を募集しています

 

TikTokは若いユーザーに広く普及しているだけに、順調に行けばAmazonにとっても大きな脅威となるのかもしれません。

 

Source:Semafor
via:The Verge

10歳の娘が30万円以上のアプリ内課金! 父親がアップルに抗議、最終的に返金を受ける

自分の子供がTikTok内で30万円以上の課金をすることを止めなかったとして、父親がアップルに抗議した結果、最終的には返金を受けられたとのエピソードが報じられています。

 

英Telegraphに寄せられた「AH」と名乗る読者のメールによると、その人物は10歳の自閉症の少女の父親とのこと。昨年のクリスマスにiPhoneをプレゼントしたところ、娘はまもなく23回にわたって2013ポンド(約32万円)相当のTikTokコインを購入したそうです。それはアップルから直接メールで請求書が送られてきてから、初めて分かったと語られています。

 

父親は23回の買い物ごとにアップルに返金を求めたものの、すべて拒否されてしまいました。アイルランドにある欧州本社に連絡してもらちがあかず、法的手続きを案内されはしたが「ほとんど情報がなかった」そうです。AH氏は「こうして数分の間に失うには、額が大きすぎる」という悲しい結論に達したと語っています。

 

AH氏いわく「アップルが私のアカウントの異常な活動を特定し、疑わしい支払いをブロックして保護してくれなかったことに失望しています」「カスタマーサポートは存在しないも同然だ」とのことです。

 

皮肉なことに、娘が以前使っていたiPhoneではペアレンタルコントロールを有効にしていた一方で、新しいiPhoneでは無効のままだったそうです。もしも有効であれば、すべてのアプリ内課金は自動的にブロックされていたはずでした。

 

しかし、AH氏がTikTokに繰り返し問い合わせて(当初は「ルール違反はなかった」と回答)調査を行わせた結果、娘は「Ohidur247」というユーザーに投げ銭するためにコインを買っていたと判明。さらに、この人物が詐欺に関するガイドラインに違反していることが突き止められました。

 

この新たな情報を聞いたアップルは、AH氏に全額返金することを回答しつつ、同時にペアレンタルコントロールが重要だと念を押し、同じようなことが再び起きれば返金はしないと明確にしたそうです。

 

未成年者が親に隠れて高額なアプリ内課金をしてしまう話は数年前からあり、米国でも6歳児が1万6000ドル(当時166万円)以上も買いまくってしまったとの報告もありました。子供が買い物した瞬間と、メールで請求書が送られてくるまではタイムラグがあるため、親御さんはしっかりとペアレンタルコントロールを設定しておく方がよさそうです。

Source:Telegraph
via:PhoneArena

暮らしの中心になったSNS、2021年にどう変わっていくのか? ITジャーナリストが大胆予測!

2020年もそろそろ終わり。皆さんにとって、今年はどんな一年でしたか? ほとんどの人は新型コロナウイルスの影響で生活スタイルが一変した年ではないでしょうか。在宅ワークに切り替わって出勤が減ったり、旅行やレジャーを控えて家で過ごしたりすることが多くなりました。

 

そこで、WebサービスやSNSを使って交流を始める人が増えました。オンラインミーティングやオンライン飲み会、オンライン授業など、急にデジタル化が進みましたね。そんな今年のSNSを振り返りつつ、来年を大胆にも予測してみます。

 

【2020年の動き1】バトンやリレー、「#おうち時間」で交流

2020年4月に出された緊急事態宣言から一か月、SNSで流行ったことといえば「リレー」や「バトン」。「#○○リレー」や「#○○チャレンジ」などのハッシュタグを付けて、それぞれのルールに則った投稿をします。投稿するときに次の人を指名するサプライズ感も人気の理由でした。

 

Facebookでは、おにぎりを作る「#おにぎりリレー」、音楽アルバムを紹介する「#アルバムチャレンジ」、好きな本を7日間紹介する「#7日間ブックカバーチャレンジ」などがありましたね。腕立て伏せをする動画を載せる「#腕立て伏せチャレンジ」も盛んに投稿されました。

 

一方、Instagramでは若者を中心に「#にんじんリレー」が流行りました。ストーリーズ機能を使って、順番ににんじんを描いていくリレーです。わざと下手に、もしくはふざけて違う絵を描くなどして、回していきます。大人に流行ったリレーと異なり、遊び要素が強いリレーですね。

↑「#にんじんリレー」の投稿例

 

また、「#おうち時間」というハッシュタグで、手料理やテイクアウトのスイーツなどを投稿する人も多い年でした。若い世代は「#おうちピクニック」と題して、部屋の中にレジャーシートを広げ、カップケーキやドリンクなどを並べた様子を投稿することが流行りました。シートやお菓子はもちろんおしゃれに。「推し(好きなアイドルやキャラクターなど)」の写真を一緒に並べる人もたくさんいます。

 

バトンやリレーは、あまりにも目にする機会が増えてしまったこと、指名というシステムにプレッシャーを感じる人もいることなどから、少しずつ流行は終わりました。でも、また新型コロナが猛威を振るい始めた今、引き続き「#おうち時間」を楽しむことは大切ですね。テレワーク用に大きなディスプレイを買ったり、人気の調理家電で作った料理を載せたりと、友達にも役立つ投稿が喜ばれそうです。

 

【2020年の動き2】一般ユーザーも著名人もライブ配信

コロナ禍で急速に使われるようになった機能が、Instagramの「ライブ」配信機能でしょう。Instagramのストーリーズにある「ライブ」は、スマホだけでライブ配信ができることから、自分のフォロワーに向けて気軽にライブ配信を行っていました。もちろん、今でもよく使われています。

 

Instagramのライブ配信が注目を集めたのは、2020年5月に行われた俳優の石田ゆり子さんの配信がきっかけのひとつでした。他のユーザーと2人で配信できるコラボ機能を使って、芸能人の友人を突発的に招いてライブ配信を行ったのです。ゲストにはミュージシャンの星野源さん、俳優の斎藤工さん、妹の俳優石田ひかりさんなどが登場し、何が起きるかわからないライブ感に多数のユーザーが集まりました。また、星野源さんがInstagramに「うちで踊ろう」の動画をアップしたことも話題になりました。こちらはライブ配信ではなかったのですが、多数のコラボが生まれましたね。

 

SNSはスマホの性能やネット回線の速度が上がっていくにつれ、テキストから画像中心に、そして動画、ライブ配信へとコンテンツが変わってきています。ライブ配信はこれまで専用の機材などが必要でしたが、今ではスマホさえあればアプリですぐに配信できるようになりました。

 

何が起きるかわからない臨場感、そして配信者との距離の近さ、コンテンツを作り込まなくても配信できる気軽さなど、ライブ配信には魅力がいっぱい。好きな芸能人やアーティストがいるなら、Instagramのアカウントをフォローしておくことをおすすめします。突然ライブ配信を始めるかもしれませんよ。

↑Instagramのコラボ配信機能

 

ライブ配信はコミュニケーションやエンターテインメントの披露の場に使われていますが、今後はライブコマースに注目です。ライブコマースとは、インフルエンサーや人気のライバー(ライブ配信者)がライブ配信で商品を売ることです。イメージとしては、テレビショッピングが近いでしょう。

 

Instagramは、ライブ配信中の商品をInstagram内で購入できる「ライブショッピング機能」をアメリカでテスト中です。TikTokでも、アメリカでウォルマートがライブコマースを実施したばかり。中国ではライブコマース市場が急速な成長を遂げており、その市場規模は2020年末までにの9,000億元(約14兆円)に達するとの予測もあります。国内でも、ショッピングサイト運営会社などがライブ配信事業を始めています。自分の好きなインフルエンサーやライバーがおすすめしてくれる商品なら、つい買ってしまいそうです。コロナ禍でオンラインショッピングの需要が高まっている今、ライブコマースの成長にも注目です。

 

【2020年の動き3】InstagramがTikTokのような、TwitterがInstagramのような機能をリリース

今年は、他のSNSにある機能とそっくりな機能がリリースされる年でもありました。Instagramの「リール」は、TikTok対抗と言われる短尺動画の投稿機能です。最大15秒で音楽をBGMに付けられ、映像エフェクトも簡単に施せます。Instagramとしては、投稿を行う「フィード」、24時間で消える「ストーリーズ」、長尺動画「IGTV」に加えて短尺動画「リール」を実装したことで、様々なユーザーのニーズに応えられるプラットフォームへと成長しました。

↑Instagramの「リール」機能

 

そのInstagramのストーリーズに似ている機能をリリースしたSNSが、Twitterです。Twitterの「フリート」は24時間で消える投稿機能です。テキスト、画像、動画を投稿でき、絵文字やメッセージで反応するとDM(ダイレクトメッセージ)で送られるところ、誰が閲覧したか記録が残る点などが、ストーリーズと酷似しています。

 

リールもフリートもまだリリースされたばかりということもあり、エフェクトの種類や機能が少なく、まだ本家に追いつくには時間が掛かりそうです。しかし、同じような機能でも、それぞれのプラットフォームの個性が出てくると使われ方が変わります。両機能とも2021年以降が楽しみです。

↑Twitterの「フリート」機能

 

今年はTikTokの人気が急上昇し、TikTokから楽曲や小説がヒットするなど、コミュニケーション以外でもSNSの力を見せつけられる一年でした。一方で、災害も含めて未曾有の危機に陥ったとき、SNSにはデマやフェイクニュースが生まれやすいという傾向があり、人々のストレスが特定の人物への誹謗中傷に向かうこともありました。各プラットフォームは警告を出したり、きめ細やかに設定できる機能をリリースするなどして健全な環境作りへの施策を行っています。

 

コロナ禍でますますオンラインの比重が高まり、SNSも実際の生活と強く結びついていきます。2021年のSNSは、同じ時間を共有したり、ネットでのクチコミを重要視するなど、オンラインでも人の温度を感じる交流が増えそうです。