【西田宗千佳連載】Androidアプリも配布、劇的に変わる Windows 11の「Microsoft Store」

Vol.105-4

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは6年ぶりに刷新するOS、Windows 11。果たして、どんな特徴があるのだろうか。

 

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↑「マイクロソフト Windows 11」(価格未定/2021年末一般公開)

 

Windows 11でもっとも大きく変わるところはどこか? それは、アプリ配布ストアである「Microsoft Store」のビジネスモデルである……と言っても過言ではない。

 

現状、多くのユーザーはMicrosoft Storeをあまり使っていないのではないだろうか。使いやすいものではないし、そもそもWindowsアプリはここでないと入手できない、というわけでもない。アップルの「AppStore」やGoogleの「Google Play」とは違う、と思っている人が多いだろう。

 

アプリ入手の自由度の高さがPCの魅力でもあったが、一方で課題もここに集中していた。アプリを見つけて再インストールするのに手間がかかり、セキュリティ上問題があるアプリの排除がしづらかった。

 

だからマイクロソフトは、Microsoft Storeをスマホのアプリストアと同じように使える存在にしようとしたが、それはうまくいかなかった。有料アプリを配信する場合に手数料を取られることや、配信するアプリは通常のWindowsアプリと異なるパッケージにする必要があり、面倒だったことなどが理由だ。段階的に改善されてはいたが、課題が完全に解消されるには至らなかった。

 

だがWindows 11では、Microsoft Storeが完全刷新される。検索が強化されたり動作が軽くなったりと、純粋な使い勝手の改善も行われるのだが、前出の「Microsoft Storeの弱点」がおおむね解消されるのが大きい。ウェブアプリから通常のWindowsアプリまでをそのまま配布可能になったことに加え、「決済を自分たちで行う」場合には、配布にMicrosoft Storeを使ってもマイクロソフトへの料金支払いが発生しない、という方法も追加された。これにより、Microsoft Storeを避ける理由が大幅に減り、長年PCにつきまとってきた課題を解決するチャンスが生まれることになるわけだ。

 

そしてマイクロソフトは、ここにさらなる武器を用意する。それが「Androidアプリの配布」だ。

 

Windows 11には、AndroidアプリをそのままWindows上で動かすための互換レイヤーが用意される。特別な用意をしなくてもAndroidアプリをPC上で使うことが可能になるのだ。そして、そのためにはアプリ配布ストアが必要になる。そこでAmazonと提携し、自社タブレット「Fireタブレット」向けに配布しているアプリをそのままMicrosoft Storeでも配布可能にする。そうすると、Fireタブレット向けに提供されている各種Android向けアプリを、Windows上で使えるようになるわけだ。

 

Androidアプリストアの最大手であるGoogleの「Google Play」ではないため、アプリの種類などには制限もある。しかし、Windowsにとって大きな魅力になるのは間違いない。

 

ただ、7月末現在配布されている「Insider Preview版」にはAndroidアプリを動かす機能が搭載されておらず、実際の動作状況は確認できていない。秋の正式版公開に向けて機能追加が行われていく予定であり、その過程で、WindowsでのAndroidアプリの使い勝手も検証されていくと思われる。

 

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【西田宗千佳連載】ハードに依存する変化は少ないものの 「10より便利」になるWindows 11

Vol.105-3

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは6年ぶりに刷新するOS、Windows 11。果たして、どんな特徴があるのだろうか。

 

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↑「マイクロソフト Windows 11」(価格未定/2021年末一般公開)

 

Windows 11は、技術的に見るとWindows 10の延長線上にある。実のところ、多くの機能は「Windows 10のアップデートで実装する」とされてきた部分が多く、「まったく新しいハードウエアの能力を必要とするもの」はない。だから、「別に11という名前にする必要はなかったのでは」という声もあるのだが。マイクロソフトとしては、マーケティング的な理由でも、サポート的な理由でも「変えたかった」のであり、そこを否定しても仕方がないところがある。

 

前回解説したように、セキュリティ強化のためにTPM 2.0とセキュアブートを有効にしておく必要はあるものの、それ以外だと、Windows 10が快適に動作しているのであれば、Windows 11も問題なく動くだろう。メモリー容量が2GB・4GB、ストレージが32GBといった低スペックなPCの場合、そもそもWindows 10が快適に動作しない。Windows 11の動作条件を満たさなくなるものもあるだろうし、無理にWindows 11にするべきでもない。

 

機能アップという面で、はっきりと「Windows 11の方が有利になる」ことがわかっている部分もある。それはゲームだ。特に、ゲームの読み込み時間を短くする技術である「DirectStorage」がそれに当たる。

 

この技術は、グラフィック表示を司るGPUが、CPUを介さずに直接データを読み込むための機能。今まではCPUで読み込んでからGPUに転送していた関係で管理が複雑化し、読み込み速度を遅くする原因になっていた。DirectStorageはその解消を目指す。

 

実のところ、DirectStorageはWindows 10でも使えるようになるのだが、Windows 11は内部構造をより最適化しているので、さらに効果が上がる。特にこの機能は、高性能GPUと高速なSSDをセットで搭載したゲーミングPCで有効なものであり、Windows 11では「高性能なPCがより性能を生かせるようになる」と考えればいいだろう。

 

タッチ操作の改善も、Windows 10からの強化点と言って良い。Windows 10のタッチ操作は、2012年発表の「Windows 8」をベースに改善してきたものだった。スタートメニューの「タイル表示」などはその最たるものだ。

 

Windows 11ではUIデザインを刷新するとともに、タッチ操作のための専用モードを無くしている。とはいえ、それはタッチ操作から一歩後退したのではなく、「通常のWindowsの画面のまま、タッチ操作をより快適に行えるようにする」改善が行われている。例えばウインドウを動かすときなどは、タッチすると周辺に薄く「ここはタッチして操作できる領域」が表示され、指が画面から離れると消える。マウスとタッチで2つの操作を覚えるのがWindows 8スタイルだったとすれば、Windows 11では「マウス操作と同じ手法のまま、ちょっとタッチも使いやすくする」ようなやり方になった、といえば良いだろうか。

 

また、マルチディスプレイ対応も強化された。

 

Windows 10ではディスプレイを取り外すと設定がリセットされるため、「ノートPCに外部ディスプレイをつないで2画面で使う」場合、毎回ウインドウを並べ直すのが面倒だった。だが、Windows 11では設定を覚えるようになった。ディスプレイをつなぎ直すだけでウインドウの並びなどが再現されるので、かなり快適になった印象がある。

 

だが、どれも「小幅な変化」といえばそれまでかもしれない。Windows 11のもっとも大きな進化面は「アプリを配布するMicrosoft Storeの進化」である、と言っていい。どう変わったのかは、次回のウェブ版で解説する。

 

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【西田宗千佳連載】Windows 11は「セキュリティのベースライン改善」のために動作条件を変更

Vol.105-2

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは6年ぶりに刷新するOS、Windows 11。果たして、どんな特徴があるのだろうか。

 

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↑「マイクロソフト Windows 11」(価格未定/2021年末一般公開)

 

Windows 11の特徴のひとつとして、「動作ハードウエアの制限が厳しくなった」ことが挙げられる。

 

Windows 10の登場からは6年が経過している。PCのハードウエアも過去に比べてスローダウンしているとはいえ、かなり進化してきた。この辺で必要な性能の段階を上げ、これからの5年・10年に備えるというのは悪い話ではない。

 

ただ今回の場合、「ハードウエアの進化に合わせた」というイメージとは、ちょっと違う意味で厳しくなっている部分が多いのが特徴。ここ2年くらいの間に買った、性能的にも問題がなさそうなPCであっても、マイクロソフトがWindows 11発表当時に公開していた動作確認用アプリを動かすと「動作対象外」とされることがあったのだ。

 

理由ははっきりしている。Windows 11ではセキュリティ強化のために、暗号化機能である「TPM 2.0」やそれを活用する「セキュアブート」などが利用可能であることが必須となったからだ。正式公開前である「Insider Preview版」では条件を緩和し、それらの機能が使えないPCや、一部性能が条件に満たないPCでもインストールが可能となっているものの、正式版ではより厳格化される。

 

ただ、これまで個人向けのPCの場合、TPM 2.0などのセキュリティ系機能が重視されて来なかったのも、また事実だ。外部持ち出しでのセキュリティ対策が重要なノートPCでは以前から利用が進んでいたものの、自作PCなどを中心に、「機能は搭載されていてもオンになっていない」場合も多い。マイクロソフトとしてはWindows 10の段階で「ハードウエアとしてはTPM 2.0などを搭載していること」をライセンス提供の条件としていたのだが、動作させておくことが必須とはなっていなかった。

 

こうした部分に手を入れてきたのは、PCのセキュリティを高めるためである。

 

いわゆるマルウェアも機能が向上し、最近は「ランサムウエア」の被害が増えてきた。PCの中にあったデータを盾にせがる行為だ。ユーザーがアクセスできないようにして「アクセスしたければお金を払え」と言ってきたり、「データをネットにばら撒かれたくなければお金を払え」と言ってきたりする行為である。

 

被害を防止するために、これまではOSやアプリへの侵入を防ぐ「セキュリティ対策ソフト」で水際対策をしてきた。しかし、侵入対策・脆弱性対策は本質的に後手に回る部分があり、完璧ではない。

 

少しでも被害を減らすためには、OS自体への侵入を減らすだけでなく、ハードウエアを動かすために必要な「ファームウエア」の安全性を担保する必要が出てくる。TPM 2.0の活用やセキュアブートは、そうした「ハードウエアへの攻撃を防ぐ機能」でもある。これらがあっても100%攻撃を防げるわけではないが、危険性は確かに減る。非対応のPCを切り捨てることにはなるが、これぞまさに、「将来のためにベースラインを上げる」要素と言える。

 

とはいえ、いまや技術的に難しいものではなく、コストもたいしてかからない。「非対応」と表示されたPCでも、設定を変えるだけで有効になる場合が多い。だから「8年前のPCをまだ現役で使いたい」という話でなければそこまで難しい話ではない。

 

では、他のハードウエア条件はどうなのだろうか? 新ハードでないと生かせないWindows 11の機能などはあるのだろうか? その辺は次回で解説する。

 

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【西田宗千佳連載】マイクロソフトがWindows「11」を出す理由

Vol.105-1

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは6年ぶりに刷新するOS、Windows 11。長年続いたWindows 10から名称を変更した理由は何なのか?

↑「マイクロソフト Windows 11」(価格未定/2021年末一般公開)

 

OSの変更は必要だがどこかで線引きは必要

マイクロソフトが新OS(オペレーティング・システム)となる「Windowsイレブン」を発表した。突然の発表に驚いた読者も多いはずだ。すでに評価版であるInsider Previewの公開は始まっているが、不具合も想定されるので、まだ使用はオススメしない。一般向けの公開は今秋から年末にかけてとなる予定だ。

 

Windows 10が登場してからすでに6年が経過した。その間、名前が変わらなかったこともあり、「Windows 10は最後のWindowsとなる」と言われることもあった。だが、われている。それを続けるにも、ハードウエアの動作条件・サポート条件を明確にしていく必要はあり、どこかで線引きは必要になってくる。これ以上同じ名称のOSで、告知することなく動作環境の線引きやサポート期限の変更を行っていくと利用者にとってもわかりにくくなる。だから、これを機会に「名前を変えた」というのが実情であるようだ。アップルも2020年には、Mac向けのOSで19年間使い続けてきた「バージョン10(MacOS X)」の名前を捨て、バージョン「11」にした。今年は「12」となっている。Windowsが11になるのも同じようなものである。

 

新OS開発の頓挫を経てWindows11が登場

Windows 10が登場したころとは、マイクロソフト経営陣の陣容も変わっている。Surfaceをはじめとしたハードウエア製品を統括してきたパノス・パネイ氏は、現在同社のチーフ・プロダクト・オフィサーとして、Windowsも含めて会社全体を見る立場になっている。筆者はWindows 11に「彼の方針が色濃く出たOS」という第一印象を受けた。

 

同社はタッチや2画面などのハードウエアへの普及を狙い、「Windows 10X」と呼ばれるOSの開発を進めていた。だが、この計画は二転三転して結局キャンセルされ、その名前のOSは世に出ることはなかった。そこで開発が進んでいたユーザーインターフェースはWindows 10のアップデートへとフィードバックされ、さらにいくつか新しい機能を加えてWindows 11となって世に出ることになったというわけ。

 

そのためか、動作ハードの条件こそ厳しくなったものの、Windows 10が問題なく動作する環境なら、意外なほどトラブルなく動作する。そのせいか「名前は10のままでも良かったのでは」と言う声も聞かれるが、マイクロソフトの狙いを考えると、そうもいかないだろう。

 

では、具体的にどう変わるのだろうか? 性能が十分と思えるPCでも「Windows 11は動作対象外」となるものが出てきている。その条件はどこにあるのだろうか? そして、なぜ動作条件は変更されたのだろうか? その点は次回で解説していきたい。

 

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『ウィンドウズ10 基本&便利ワザまるわかり』――久しぶりにWindowsを使ってみて便利だなと思った機能はコレです

3月、数年ぶりにWindows搭載のノートパソコンを購入した。

 

普段はMacをメインに使っているが、Windows 7くらいまではWindowsをメインに使っていた。というか、当時はWindows関連の雑誌やムックで原稿を書く仕事を主にやっていた。

 

しかし、いったんMacを使ってみたら手になじみ、また、Windows 8くらいから使い勝手があまりよくないなと感じたこと、Windows関連の仕事がなくなっことから、完全にMacに移行していたのだ。

 

そんなとき、たまたま立ち寄った家電量販店で、お買い得なノートパソコンを見つけたので思わず購入。そして久しぶりにWindowsを使ってみたところ、意外と使い勝手がよいので、最近はMacitnoshと気分によって使い分けたりしている。

 

 

ウィンドウのスナップ機能がとても便利

僕は原稿を書くときに、いろいろなアプリを同時に起動していることが多い。一番多いのは、Webブラウザとテキストエディタ(またはWord)だ。

 

この2つのアプリを並べて起動して、原稿を書きながらWebブラウザで必要な情報を閲覧するというのが基本的なスタイルだ。

 

そのとき、毎回Webブラウザとテキストエディタを自分で横に並べて表示させるように調整していたのだが、Windowsでは便利な機能があることに気が付いた。

 

それは、ウィンドウをキレイに並べる機能。『ウィンドウズ10 基本&便利ワザまるわかり』(学研プラス・編/学研プラス・刊)によれば、以下のような感じだ。

ウィンドウのタイトルバーをデスクトップの左右の端までドラッグして移動すると、ウィンドウがスナップされ、デスクトップの1/2のサイズになる。

 

↑ウィンドウを画面端までドラッグ

 

↑するとそのウィンドウが1/2サイズでスナップされる

 

↑左側にWebブラウザ、右側にテキストエディタをスナップした状態

 

この機能を使うと、とてもすっきりと作業ができる。この機能を知ってから、ウィンドウの整理がとても楽になった。

 

また、ウィンドウを四隅にドラッグして移動すると、1/4サイズでスナップできる。画面の解像度が高い場合は、これで4つのウィンドウを表示すると作業効率がアップするシーンもあるだろう。

 

↑1/4サイズでのスナップも可能。画面の解像度が高い場合は使える機能だ

ちなみに、この機能にはショートカットキーが割り当てられている。スナップしたいウィンドウを選択した状態で「Windows」キー+左矢印キー(右矢印キー)を押すと、画面左側(右側)にスナップ。もう一度押すと解除される。また、「Windows」キー+上矢印キーで画面最大化、「Windows」キー+下矢印キーで画面最小化となる。

 

複数のウィンドウを画面上に並べて作業をすることが多い人は、この機能を覚えておいて損はないだろう。

 

 

画面の拡大/縮小機能は無効にできないの?

「Windowsは使いづらい」。そう思い込んでいてここ数年まったく使わなかったのだが、いざ使ってみると思いのほかよい。特にMicrosoft Office関連との相性はやはりよい。WordやExcelをよく使うので、このアプリをメインに使う場合はWindowsマシンで行うことが多くなった。

 

しかし、いくつか困った現象が起きている。Windows 10の標準機能だと思うのだが、「Ctrl」キーとタッチパッドの上下スライドで、使用中のアプリの画面の拡大/縮小ができる。しかし、意図しないときに画面の拡大/縮小が行われてしまうことがあるのだ。

 

どうしていきなりそうなるのかよくわからないので、この機能を無効にしたいと思っているのだが、なぜか設定項目が見つからない。どなたかこの機能を無効にする方法を知っていたら、教えていただきたいと思う。

 

【書籍紹介】

ウィンドウズ10 基本&便利ワザまるわかり

著者:学研プラス(編)
発行:学研プラス

ウィンドウズ10の基本&便利技、トラブル解決まで、これ1冊で実践的に役立つ活用法を網羅。1技読み切りスタイルで、270もの技を収録。初心者は序章から、中級者は気になる技から読み進められるなど、各レベルに応じた構成で即効、理解を深めやすい。

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