買うにしても借りるにしても、自分が住みたいと思う物件を見つけるのは大変ですよね。いろいろな物件を見て回って、自分の条件を満たしているかどうか冷静に考えることが大事ということは分かっていても、忙しい日々のなかでは下見の予約を入れるだけでも一苦労です。特に東京やニューヨーク、サンフランシスコといった人口が密集している大都市では物件も不動産業者も多種多様で、いったいどこから始めればいいのか困ってしまう人も多いのではないでしょうか。
そんななか、アメリカではロボットを使って物件の下見を行っている不動産業界のスタートアップ「ZENPLACE」が注目を集めています。利用者が候補の物件を訪れると、人間ではなくスクリーンのついたロボットが迎えてくれるというシステム。スクリーンには不動産業者の担当者が映し出され、ビデオでつながっているので、質問があれば、いつでもコミュニケーションが取れるのですね。
不動産業者からすると、本製品を使えば担当者が物件見学に同行しなくても済むので、アポイントメントもフレキシブルに受け付けることができます。
夫婦やカップルで下見をしたことがある人は予約を取るだけでも何回もやりとりを繰り返す、と言う苦い思いを経験したことがあるのではないでしょうか。ちょうど両方の時間の都合がつく時でも不動産側の都合がつかなかったり、不動産会社から提案された時間帯だと1人しか行けなかったり……考えるだけで頭が痛くなります。
ZENPLACEはすでにベイエリアで数百台のロボットを運用しているとのこと。これによって担当者たちのスケジュール管理が大幅に効率化されたそうです。CEOのメワワーラさんは海外メディアに対し、「物件購入や賃貸は、Uberでタクシーの予約をするのと同じくらい簡単になるべきだ」と語っています。地元メディアMercury NewsにZENPLACEが語ったところによると、このロボットの導入によって、担当者1人で1日に15〜20件の下見対応ができるようになったそうです。
上のビデオをご覧いただければ分かるように、物件検討のいろいろなプロセスが効率化されていることがわかります。訪問時には近辺の平均家賃や間取り、近所の公園の写真などをスクリーンで確認することができるとのこと。物件が気にいった場合、その場で申し込み手続きをしてしまうこともできます。
不動産業者の担当者が現地に来るわけではないので、じっくりと時間をかけて見学したり、一度見た場所をもう一度見たりすることも気軽にできるようになります。アポイントメントの取りやすさや気軽さという点で、消費者にとってもありがたいサービスではないでしょうか。
もちろん担当者と実際に会って話さないと信頼できないという方もいるでしょう。そういう方にとって、このロボットの対応は不満かもしれません。ロボットはモーターで動いているようなので、2階建ての物件の場合はもしかしたら訪問者がロボットを持ち上げないといけないのではないかという疑問も浮かびます。
自分が借りる側ではなく物件のオーナーとして貸す側になったと想像してみると、やはり不安は大きいかもしれません。入居者が本当に信頼できる人物かどうか、仲介業者にしっかり確かめてほしいと思う方は多いでしょう。このシステムを使うことで対面コミュニケーションが減ってしまうことには、そういったデメリットが存在しているかもしれません。
ZENPLACEはマシーンラーニングを使って、AIが建物や設備のメンテナンス、故障を予測するというサービスも管理者に提供しています。「この物件の食器洗い機は数か月以内に修理が必要になります」といった通知を受け取ることができるようです。トラブルが起きる前に設備修理などを行うことで、問題を未然に防ぐことができるわけですね。
さらには専用のアプリやAmazon Echo、Google Homeを使って、家賃の支払いや光熱費の管理、問題の報告をすることもできるそう。こういう観点でのスマートホームは新しいですね。
ロボットによる下見対応は、確かに物件見学のスケジューリングに関する問題を解決してくれそうです。ロボット大国日本にも導入できそうですが、はたしてサンフランシスコ以外の大都市にもこういったサービスは広がるのでしょうか。注目です。