予想を上回る革新性…「ゾゾスーツ」がもたらすのはオシャレで損をする人がいない世界?

2017年末に無料配布の予約を開始し、10時間で23万件の注文を記録して話題を集めた「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」。その発送が2018年1月末にスタートし、オリジナルブランド「ZOZO(ゾゾ)」の全貌も見えてきました。さらに、その発表と同じ日に、「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイの代表取締役社長・前澤友作氏のインタビュー記事を『WWD JAPAN』『Fashionsnap.com』『THE BRIDGE』『TechCrunch Japan』『BUSINESS INSIDER JAPAN』『東洋経済 ONLINE』の6メディアが一斉に公開。ウェブを中心に話題をさらいました。

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■ゾゾの“サイジングマーケティング”が与えるインパクト

注目すべきは、ファッション系のニュースメディアだけでなく、テクノロジー系やビジネス系にまで取り上げられている点。注目度の高さや広さ、またプロモーションの上手さも物語っています。ゾゾスーツとゾゾの要点を簡潔にまとめると以下の通り。

 

ゾゾスーツは瞬時に正確な採寸が可能で、計測の精度を上げるために発送が遅延した
ゾゾスーツでの採寸が前提のプライベートブランド「ゾゾ」は、数千〜数万のサイズパターンを用意したパターンオーダー方式
ゾゾはTシャツ(税込1200円)、デニム(税込3800円)の2アイテムからスタート
在庫ロスを是正し、無駄を究極的に省くことで低価格を実現

 

ゾゾスーツがアパレル業界に与えるインパクトは絶大です。ただし、採寸データを活用したサイジングマーケティングとも呼べる戦略はゾゾスーツに始まったことではありません。

 

クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏がプロデュースするオーダースーツのブランド「ディファレンス」は、1着目を店舗で採寸すれば、2着目からは採寸データが保存されたスマホのアプリでオーダーができるというのが大きな特長。店舗数が拡大しています。またセレクトショップの「ナノ・ユニバース」は、2秒で全身を採寸できる「3D SCAN」を全国6店舗に設置。会員限定のサービスとして提供しています。

 

もちろん、こうしたサービスと比較してゾゾスーツは、自宅で気軽に採寸できるという点が画期的。無料にすることで大量配布することに成功していますので、供給さえ追いつけばファッションに留まらない最強のフリーミアム(※基本的なサービスを無料で提供してユーザーを確保しつつ、一部のサービスは有料化してマネタイズを行うビジネスモデル。フリーとプレミアムを掛け合わせた造語)となる可能性を秘めています。

 

■自動&無料で似合う服を選んでくれるサービスが登場?

実際、スタートトゥデイの戦略はさらなる展開も見せていて、プライベートブランドとともに「スタートトゥデイ研究所」を発表しました。ファッションの黄金比を解明し“似合う”を数値化するのが目的のR&D機関で、その成果は「おまかせ定期便」というサービスなどにも活用されていくと考えられます。

 

おまかせ定期便は、申し込み時に好みや体型といった情報を伝えることで、それに合わせて50万点以上の商品から5〜10点を厳選。希望の頻度で送られてくるので実際に試着し、気に入らなかったものは返品するというサービスです。返送分を含めて送料は無料で、代金は購入した商品分のみということでとりあえず利用しても大きなデメリットはありません。

 

ちなみに、おまかせ定期便とともに「ZOZO販売員」の募集も始まっています。最初は専任スタッフが商品をセレクトするところから始め、徐々にゾゾスーツでの採寸データも統合してAI化していくのではないでしょうか。

 

先日の記事「ショップスタッフの言うことを鵜呑みにしてはいけない」 にも書いたように、ショップスタッフでさえピンきり。わざわざ店舗に行かなくても自動的に無料で似合う服を選んでくれるのであれば、それに越したことはないはずです。パーソナルスタイリストやショッピング同行サービスなども玉石混交ですので、無料のおまかせ定期便を利用する人が増えるのは必然。データの蓄積やスタートトゥデイ研究所の成果などで精度はどんどん高まっていくはずですので、そうなれば下手な専門家よりも信頼できるようになるかもしれません。

■そこにファッションの楽しさはあるか?

ゾゾスーツを起点とするサービス展開に関しては、“ゾゾvsユニクロ”などといったビジネスやマーケティングの観点で語られことが多いのですが、ユーザー目線で見ても革新的。オシャレに自信のない人でも間違いのない服選びができるようになるからです。これまでファッションで損をしてきた人も、損をしなくなる時代がすぐそこに来ているように思えます。

 

ただし、こうした変化の基点が「ゾゾスーツ」であり、すぐにイニシアティブを握れるとは限りません。それは、スタートトゥデイ研究所がアイデアの買い取り第1段として、ゾゾスーツよりも低コスト高精度な体型計測が可能となるアイデアを3億円で買い取ったことでも明らかです。

 

実は、ファッション分野を強化しているアマゾンも音声AIアシスタントの「アレクサ」とカメラを搭載した「エコー ルック」を発表。高度な機械学習アルゴリズムとファッションの専門家のアドバイスを融合し、2つの写真からどちらが似合っているかを判断するサービスを搭載しています。しかも、将来的にはカメラでの採寸も可能になるかもしれません。

 

いずれにしても、自動車の自動運転のようにコーディネートも自動的に任せられる未来が来ると思われます。その場合でも、移動における目的地のように、オシャレの目的を明確にした方が欲しい結果が得られるはずです。しかし、着る本人が、本当に似合っているのか、自分らしいのか、着るべきなのか、着たいのか……といった最低限の判断基準や知識を持っていないと、どんなに便利なサービスでも活用しきれない可能性はあります。そして、そこにファッションの楽しさは見いだせるのか? そこまで叶えることができるならば、ゾゾスーツは真に革新的なプロジェクトと言えるのではないでしょうか。

 

【著者プロフィール】

「着こなし工学」エバンジェリスト・平 格彦

1974年、東京都生まれ。O型。天秤座。ライター/編集者。コラムニスト。プランナー。AllAbout「メンズファッション」ガイド。[着こなし工学]ファウンダー。JAPAN MENSA会員。野菜ソムリエ。大学でマーケティングを専攻した後、新卒で出版社へ入社して広告部、ファッション誌編集部を経て退職。2年間のニート期間を経て転職した出版社を1日で辞めた伝説を持つ。その後、フリーランスに。メンズファッション関連だけで35以上のメディアに関わってきた実績を持ち、客観的、横断的、俯瞰的にファッションを分析するのが得意。そんな視点を活かして[着こなし工学]を構築中。編集力を応用して他分野でも活動。

分散型個人メディア[Masahiko Taira](プロトタイプ) : www.masahikotaira.com

送料自由化のZOZOTOWNが発表した「都道府県別 平均送料ランキング」に納得の声

10月24日、株式会社スタートトゥデイが「ZOZOTOWN」で実施している“送料自由”サービスの利用状況を公開。“最もお金を払っていない県”が判明し「やっぱりこういうのって地域性がでるんだな…」と注目が集まっている。

出典画像:「株式会社スタートトゥデイ」公式サイトより出典画像:「株式会社スタートトゥデイ」公式サイトより

 

送料ワーストは納得の結果に!?

送料を利用者側が最低“0円”から自由に設定できる同サービス。今回の発表によると、全国の平均送料は96円。“0円”を設定した注文の割合は43%という結果になった。

 

そんな中注目を集めたのは「都道府県別 平均送料ランキング」。同ランキングは、サービス開始日の10月1日(正午)から10月23日(午前0時)までの平均送料を算出したものとなっている。

出典画像:「株式会社スタートトゥデイ」公式サイトより出典画像:「株式会社スタートトゥデイ」公式サイトより

 

さっそくトップ3を見てみると、1位が「福島県(111.73円)」、2位が「岩手県(111.08円)」、3位が「青森県(110.79円)」と東北勢が占める結果に。ネット上では「東北民あったけえ…」「業者さんにお茶を振る舞って立ち話する姿が目に浮かんだ」との声が上がった。

 

一方でワースト3は、47位が「奈良県(86.05円)」、46位が「大阪府(88.68円)」、45位が「兵庫県(88.78円)」と近畿地方が席巻。この結果には「関西圏www」「さすが堅実というかケチというか…」「納得の結果過ぎて笑ったわ」との声が続出。

 

そして関西に住んでいるユーザーからは、「奈良県民だけど余裕で0円にするわ」「0円で良いって言ってるのに0円にしない心理がわからん」「関西人だけど、これは紛れもなく地域性だと思う」との声が。意外とランキングに納得する人も少なくないようだ。

 

「関西人=ケチ」は早計かも?

一方で今回のランキングには「何でこれを発表したんや…」「関西民を晒すのやめて」「またこれで関西圏の人=ケチってイメージが定着するやん」との声も。確かに同ランキングではあまりに“予想通り”な結果だったため面白がる人が続出したが、集計はあくまで「ZOZOTOWN」利用者に限ったもの。それも0円から3000円の中で送料を設定出来る同サービスにおいて、1位と47位の差は約20円。これをもって「関西人=ケチ」と決めつけない方がよさそうだ。

 

とはいえ「見事に商人の街が送料低いな」との声もあるように、興味深い偏りが出たのも事実。例えば商人文化が栄えてきた関西圏は言わずもがな、東北地方の中でも“仙台商人”で知られる宮城県は30位(96.39円)と頭一つ抜けて平均送料が低い。

 

賛否の声が上がった「都道府県別 平均送料ランキング」だが話題性は十分。あくまで1つの“データ”として楽しもう。