フロントグリルのようなパーツに仕掛けアリ! BMWのEVフラッグシップモデル「iX」を細部までチェック

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、古くからEVを販売してきたBMWが昨年末に発売したEVのフラッグシップモデル、iXを取り上げる。

※こちらは「GetNavi」 2022年6月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のGODカー】BMW/iX

SPEC【xDrive50】●全長×全幅×全高:4955×1965×1695mm●車両重量:2530kg●パワーユニット:モーター●最高出力:313PS(230kW)/8000rpm●最大トルク:40.7kg-m/5000rpm●WLTCモード一充電走行距離:650km

1070万円〜1280万円(税込)

 

世界最大級のバッテリーを搭載したゴージャスな1台だが、電費の伸びはイマイチ

安ド「殿! BMWの最新のEVを借りてきました! iX xDrive50です!」

 

永福「バッテリー容量111.5kWh。世界最大級だな」

 

安ド「世界最大級ですか! だから航続可能距離が650kmもあるんですね!」

 

永福「そのはずだが、私が200kmほど試乗した計算では、航続距離は450kmくらいという計算になった」

 

安ド「えっ!」

 

永福「それもバッテリーを使い切っての話だから、実質的には400kmくらいだ」

 

安ド「ずいぶん差がありますね!」

 

永福「あまりにも大きなバッテリーを積んでいるので、車両重量が2.5tに達しているのも原因だろう。加えて空気抵抗が大きいSUVタイプなので、高速巡行でも電費が伸びなかった」

 

安ド「エアコンを使ったからでしょうか?」

 

永福「私もそう思って消してみたが、考えてみたらこんなゼイタクなクルマに乗っていて、エアコンをケチるというのはどうなのかと思い直し、使うことにした」

 

安ド「言われてみれば……」

 

永福「世界最大級のバッテリーを積んだ、1300万円もするEVだ。エアコンをケチったりする必要がないように、というコンセプトのはずだろう」

 

安ド「豪邸に住んでいて電気代を節約するのは違和感がありますね!」

 

永福「つまり、豪邸という時点で、エコではないのだ」

 

安ド「言われてみれば……」

 

永福「こういうゴージャスなEVにも、エコだエコだと言って補助金を出すのはいかがなものか」

 

安ド「同感です! 補助金は僕のような貧乏人に出してほしいです!」

 

永福「お前が貧乏なのは浪費癖が原因だろう」

 

安ド「その通りです!」

 

永福「テスラのモデル3ロングレンジAWDなら、バッテリー容量79.5kWhで、もうちょっと長い距離を走れるぞ」

 

安ド「電費が良いんですね!」

 

永福「車両重量は1.8t。空気抵抗も小さいからな。テスラ モデル3がEVとして世界一売れている理由がよくわかる。しかもテスラは、世界じゅうに独自の充電ネットワークを設置している」

 

安ド「BMWはやってないんですか?」

 

永福「BMWディーラーにすら、急速充電器がほとんどない。これから整備するのかもしれないが、現状、国産メーカーのディーラーで充電しなければならない」

 

安ド「でも、このクルマで日産や三菱のディーラーに乗り付ければ、威張れそうですね!」

 

永福「私が三菱のディーラーで充電したときは、ほとんど無視だった。一方、レクサスのディーラーは大歓迎してくれた」

 

安ド「……なんとなく想像が付きます!」

 

永福「想像以上だった」

 

【GOD PARTS 1】ディスプレイ

ゆるやかな曲線を描く超大型ディスプレイ

インパネには「カーブド・ディスプレイ」と呼ばれる横長の曲面ディスプレイがあるだけで、開放感にあふれています。全情報がこのディスプレイに表示される仕組みですが、庶民としては、故障時の修理費用が高そうと考えてしまいます。

 

【GOD PARTS 2】センターコンソール

木目と組み合わされたキラキラ系コントローラー

「フローティング・センターコンソール」と呼ばれる運転席と助手席の間にあるひじ置き先端部に、操作スイッチが集中しています。BMWおなじみのiDriveコントローラーなどはクリスタル仕立てで、木目との奇妙な組み合わせが不思議です。

 

【GOD PARTS 3】リアシート

足元もフラットなゆったり快適空間

SUVらしく後席スペースは広く、赤茶色の上質な本革が採用されていて、豪華な空間になっています。BMWといえばFR(フロントエンジン・リア駆動)で足元に膨らみがあったものですが、iXにはそれもないので足元もゆったりしています。

 

【GOD PARTS 4】クリスタルフィニッシュ

キラキラ系のデザインアイコン

シート位置の調整つまみがドアに付いており、ここにもクリスタルのパーツが採用されています。運転者が決まっていれば頻繁に操作する部分ではないので、見栄え重視の設計なのでしょう。好みかどうかは別ですが……。

 

【GOD PARTS 5】ドアボタン

ワンボタンで開くが隠しドアノブもあり

ドアは未来のクルマっぽく、ボタンで開ける電子式になっています。押すと「ガチャッ」と少し開くので、あとは普通のクルマと同じようにドアを押して開けます。一度やってみれば怖いことはないのですが、電気が切れたときのことを考えてか(?)、ドアの下のほうには隠しドアノブも付いています。

 

【GOD PARTS 6】ゴールド加飾

豪華な雰囲気をさらに演出

ステアリングやインパネ中央の水平ラインなど、あちこちにゴールドのパネルが採用されています。ゴールドといえば高級感を演出する手法かもしれませんが、なんだか従来のBMWのイメージとは違うような気もします。

 

【GOD PARTS 7】カーボン素材

重量を下げるための軽量素材

大型バッテリーを搭載すると車体が重くなってしまいますが、iXではボディ素材に軽量かつ高剛性なカーボン素材を採用して軽量化を狙っているようです。バッテリーの重量を考えると焼け石に水でしょうけど。

 

【GOD PARTS 8】充電シーン

短時間で充電できる急速充電器が欲しい

EVに乗っていて一番気になるのは、出かけた先に急速充電器があるか否か。日産や三菱などのディーラーには置いてあることが多いのですが、BMWディーラーにはまだほとんど急速充電器は置いてないようです。インフラは重要ですね。

 

【GOD PARTS 9】ラゲッジスペース

広くて奥行きもあるので様々なシーンで活躍

最新SUVらしく大きなスペースが確保されていて、日常使用だけでなく、休日のアウトドアでも活躍することでしょう。ただハッチを開けた際、両脇に大きめな面積のボディ断面がむき出しになります。ココは未来っぽくありません。

 

【これぞ感動の細部だ!】キドニー・グリル

グリルのようでグリルでない

グリルは本来、エンジンルームへ空気を送るためにありますが、このiXのグリルには穴がありません。BMWのデザインアイコンである2つの大型グリルのように見せて、実はクリアパーツの裏側にはカメラやレーダーなど、センサー系メカニズムを搭載しているのです。さらにこの部分にはヒーター機能もあって、雪などでセンサー機能が妨げられないようになっています。

 

撮影/我妻慶一

 

 

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どれもハイレベルな完成度! ボディタイプの異なる新車3モデルに試し乗り

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのはトヨタの新型「ノア/ヴォクシー」とBMWのピュアEVである「iX3」、そして新型フォルクスワーゲン「ゴルフGTI」の3モデル。ミニバンにSUV、ハッチバックとボディタイプは異なるが、どれも人気モデルだけに完成度はハイレベルだ。

※こちらは「GetNavi」 2022年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【その1】まさに横綱相撲! 使い勝手は究極の域に到達

SUV

トヨタ

ノア/ヴォクシー

SPEC【ヴォクシーS-Z(ハイブリッド2WD)】●全長×全幅×全高:4695×1730×1895mm●車両重量:1670kg●パワーユニット:1797cc直列4気筒DOHC+電気モーター●最高出力:98[95]PS/5200rpm●最大トルク:14.5[18.9]kg-m/3600rpm●WLTCモード燃費:23.0km/L

●[ ]内は電気モーターの数値

 

走りの面でオススメなのは最新世代のハイブリッド仕様

新型ノア/ヴォクシーは基本骨格を一新し、運転支援システムも最新モデルに相応しい充実ぶりを誇る。だが、実車に接してとりわけ印象的だったのは使い勝手に配慮した作り込みの徹底ぶりだ。パノラミックと表現したくなる前席の視界の良さや、電動スライドドアに装備できる機械式サイドステップ、そして開口位置を選べるバックドアなど、実用性に優れた細やかな配慮はもはや究極の域。ノアとヴォクシーでは前後の造形でキャラクターを差別化しているが、見た目の洗練度も先代より着実に進化している。

 

パワーユニットは、最新世代となるハイブリッドと2Lガソリンの2本立て。その動力性能は後者でも不足はないが、走らせて楽しいのは間違いなく前者だ。絶対的な力強さに加え、アクセル操作に対する自然な反応は先代より引き締まった足回りにもピッタリ。ハイブリッドは装備まで考慮すると事実上の値下げとなり、コスパの面でも絶対にオススメだ。

 

[Point 1] 先進装備と実用度はトップレベル

視界の良さが特徴のインパネ回りは運転支援システムや使い勝手もハイレベル。2列目シートは3人掛け仕様も設定された。電動スライドドアの助手席側には機械式サイドステップも装備できる。

 

[Point 2] ヴォクシーはノアよりもアグレッシブ

外観がノアよりアグレッシブになるヴォクシーは、基本的なグレード構成もS-ZとS-Gの2種に絞られる。価格はノアの同グレードよりも若干高めの設定だ。

 

[Point 3] 荷室の使い勝手も向上

バックドアの開口位置を選べる(電動と機械式の2タイプ)荷室は容量、形状ともに申し分ない。3列目シートの格納操作も先代より容易になったのはうれしい。

 

[ラインナップ](グレード:エンジン/駆動方式/ミッション/税込価格)

X:2L、1.8L+電気モーター/2WD、4WD/CVT、電気式無段変速/267万円、(286万8000円)[305万円、(327万円)]

G:2L、1.8L+電気モーター/2WD、4WD/CVT、電気式無段変速/297万円(316万8000円)[332万円(354万円)]

Z:2L、1.8L+電気モーター/2WD、4WD/CVT、電気式無段変速/324万円(343万8000円)[359万円(381万円)]

S-G:2L、1.8L+電気モーター/2WD、4WD/CVT、電気式無段変速/304万円(323万8000円)[339万円(361万円)]

S-Z:2L、1.8L+電気モーター/2WD、4WD/CVT、電気式無段変速/332万円(351万8000円)[367万円(389万円)]

●[ ]内はハイブリッド車、( )内は4WD(E-Four)の価格

 

【その2】スポーティでありながら貫禄も旗艦級!

 

【その2】ピュアEVでも伝統的なBMWらしさが楽しめる!

EV

BMW

iX3

SPEC●全長×全幅×全高:4740×1890×1670mm●車両重量:2200kg●パワーユニット:交流電気モーター●最高出力:286PS/6000rpm●最大トルク:40.8kg-m/0〜4500rpm●WLTCモード最大航続距離:508km

 

走りの性能は最新EVに相応しいレベルを確保!

ほぼ同時期に上陸したBMWの最新ピュアEVでも、iXと比較すれば伝統的なBMWらしさが色濃いのがiX3。そのベースはSUVのX3で、内外装には随所に独自デザインを採用するが、一見する限りEVであることは意識させない。電気モーターはリアに搭載。組み合わせるバッテリーの総電力量は80kWhで、満充電時の最大航続距離は508km。最新のEVらしく高い数値となっている。

 

その走りは、見た目のイメージ通りだ。EVならではの静かさや滑らかな加速を実感させる一方、アクセル操作の反応やスポーティな身のこなしはBMWの伝統に通じる味付け。普段の生活においてEVを楽しみたい、というニーズにはピッタリの1台だ。

 

[Point 1] 内装はX3に準じたスポーティな仕立て

外観と同じく、内装も基本的な作りはX3と変わらない。BMWの内燃機関各車に通じるスポーティなテイストが持ち味となっている。

 

[Point 2] 外観は随所が独自の造形に

外観はMスポーツ仕様ということでスポーティ。随所にブルーのアクセントが入り、EVであることを主張する。税込価格は862万円。

 

[Point 3] 荷室は通常時510Lと十分な広さを確保

エンジンモデルのX3比には若干劣るが、荷室容量は通常時でも510Lと十分な広さ。後席をたたんだ最大時は1560Lまで拡大する。

 

 

【その3】軽快で力強い走りは伝統の旗艦ならでは

ハッチバック

フォルクスワーゲン

ゴルフ GTI

SPEC●全長×全幅×全高:4295×1790×1465mm●車両重量:1430kg●パワーユニット:1984cc直列4気筒DOHC+ターボ●最高出力:245PS/5000〜6500rpm●最大トルク:37.7kg-m/1600〜4300rpm●WLTCモード燃費:12.8km/L

 

積極的に操る魅力を備えた万能スポーツハッチバック

単に高性能というだけではなく、ゴルフのイメージリーダー的存在でもあったGTIが最新世代へとスイッチ。ベースとなる8代目はマイルドハイブリッドの投入でも話題を呼んだが、GTIは引き続きハイスペックな2Lのガソリンターボを搭載。駆動方式も先代と同じくFF方式を踏襲する。

 

その走りは、もちろんGTIの称号に相応しいレベルにある。2Lターボは、パワフルなだけではなく全域での扱いやすさを両立。トラクション性能にも優れるだけに、積極的に操る場面では能力を使い切る喜びも見出せる。また、先代比では身のこなしが一層軽快な点も持ち味のひとつ。快適性も上々とあって“万能なハッチバック”としての魅力度は高い。

 

[Point 1] 新しさと伝統が融合する

室内はメーターのグラフィックなどが専用仕立てとなるほか、伝統的なチェックのシート柄などでGTIらしさを演出。装備も充実している。

 

[Point 2] 走りはパワフルで軽快

GTIは“押し”の強いフロントマスクに加え、リアゲート中央の車名ロゴが「GOLF」ではなくなる(税込466万円)。軽快かつパワフルな走りが楽しめる。

 

[Point 3] パワーユニットは歴代でも最強レベル

一部例外を除けば、搭載する2Lガソリンターボのアウトプットは歴代GTIでも最強レベル。速さに加え、フレキシビリティの高さも魅力。

 

文/小野泰治 撮影/郡 大二郎、市 健治

 

 

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私鉄各社「事業計画」の新車両増備&設備投資に注目した【大手私鉄編】

〜〜春に発表の鉄道各社2022年度 事業計画③〜〜

 

2週にわたり鉄道各社が発表した「事業計画」「設備投資計画」を見てきた。各社とも今年はアフターコロナを見極め、次の時代に向けての計画案を打ち出しつつある。

 

今回は首都圏大手の3社と、東海・近畿・九州の大手各社の「事業計画」「設備投資計画」を見ていきたい。なお、近畿各社は単年度の計画は発表しないこともあり、中・長期計画の注目ポイントに迫った。

 

【関連記事】
私鉄各社「事業計画」の新車両導入&設備投資に注目する【首都圏大手私鉄編①】

 

【京成電鉄】3100系の増備と押上線の下り高架化を進める

京成電鉄は5月17日に「2022年度 鉄道事業設備投資計画」を発表した。鉄道事業では総額167億円の設備投資を行うとしている。計画では「(1)安全・安定輸送の追求」と「(2)人と環境に優しい取り組み」の2本柱を掲げている。

 

新車増備計画:成田スカイアクセス用の3100系を増備

今年度の計画に記述はなかったが、昨年の11月4日に発表した「2021年度 鉄道事業設備投資計画」の中で、アクセス特急用の3100形車両の2編成(16両)を導入するとあった。2019(令和元)年10月に登場した3100形は、2021(令和3)年9月までに6編成が導入されていて、さらに追加され8編成となる。

↑近未来的な正面デザインが特長の京成3100形、京成グループの標準車両で、新京成電鉄にも同形の80000形が走る

 

この3100形の増備とともに、駅や車内照明のLED化を図るとしている。LED照明の利用は省エネ効果が期待できるだけに、新車両の導入とともに、既存車両の照明の変更を多くの鉄道会社が行うようになっている。

 

設備投資計画:押上線の高架化もかなり進みつつある

京成押上線では東京都葛飾区内での連続立体交差事業が進められている。現在進められているのが京成立石駅(けいせいたていしえき)付近の高架化で、工事区間は四ツ木駅〜青砥駅間約2.2kmとなる。工事はまず仮の下り線工事を進めるとしている。

↑京成立石駅付近で進む立体交差事業。下りホームの後ろ側で仮の下り線の敷設工事が進む

 

工事完了すると2.2km間にある11か所の踏切が廃止される予定だ。仮の下り線の線路が現在の線路と平行に敷設中で、まずは下り線を移動した上で、次に上り線を移動、現在の上り線の位置から高架化する計画が立てられている。

 

同工事の完了は用地買収が遅れた影響もあり、当初は2022年度中の完成としていたものの、実際の完成は2027年度ごろになると見られている。

↑京成立石駅〜四ツ木駅間では仮の下り線の設置が進む。左の電車が走るところが現在の下り線で、工事の後は右の仮線へ移される

 

立体交差事業の他に計画されているのが「京成本線荒川橋梁架替(かけかえ)工事の推進」だ。京成電鉄の荒川橋梁が架けられたのは1931(昭和6)年3月のこと。地球温暖化のせいなのか、豪雨の際にはかなりの水位上昇も見られる。もしもの時に備えて、現在の架橋位置と堤防を高くして、街と路線を守ろうというのが、橋の架け替えの理由である。

 

国土交通省と京成電鉄では、同橋梁の掛け替えを20年近く前から検討を始めており、今年度の事業計画でも「沿線地域防災への取組みとして、国の荒川下流特定構造物改築事業である京成本線荒川橋梁架替工事について、工事に着手します」としている。完成予定は2037(令和19)年度とされている。

↑京成電鉄の荒川橋梁。荒川と平行する綾瀬川に全長446.99mの橋が架かる。工事では堤防とともに橋梁自体も高い位置に変更される

 

【相模鉄道】新横浜線に乗り入れる21000系の増備が進む

相鉄グループは4月26日に「2022年度 鉄道・バス設備投資計画」を発表。総額170億円のうち、鉄道事業へは164億円の投資が行われる。相模鉄道では2022年度末に羽沢横浜国大駅〜東急東横線日吉駅間を結ぶ新横浜線の開業を控えている。投資計画もこの新線開業に投入される新車の増備が記述されている。

 

新車増備計画:今年度に増備されるのは21000系3編成

新線乗り入れ用車両として増備されるのが相鉄21000系。2018(平成30)年2月に登場した20000系の8両編成版で、東急目黒線への乗り入れ用に新造された。今年度は3編成24両が導入の予定で、21000系は計7編成となる。将来は全9編成となる予定とされている。

 

さらに「既存車両のリニューアルを引き続き実施します」とあり、ますます「YOKOHAMA NAVYBLUE」塗装の車両に乗る機会が増えそうだ。

↑東急目黒線乗り入れ用車両の相模鉄道21000系。「YOKOHAMA NAVYBLUE」と呼ばれる濃いブルーで塗装される

 

設備投資計画:改良工事が進む海老名駅、鶴ケ峰駅も高架化が始まる

東急東横線との相互乗り入れが行われる新横浜線。羽沢横浜国大駅付近の工事はすでに終了していて、あとは東急電鉄側の工事の終了と、開業日を待つのみとなっている。他にも今年度の設備投資計画には鶴ケ峰駅付近の連続立体交差事業と、海老名駅の改良工事が記述された。

 

相鉄本線の鶴ケ峰駅は相鉄新横浜線が分岐する西谷駅(にしやえき)と、相鉄いずみ野線が分岐する二俣川駅(ふたまたがわえき)のちょうど中間にある駅で、新横浜線開業後には、通過する列車本数が増えることが予想されている。計画では「鶴ケ峰駅を含めた上下線約2.1km」が地下化される予定で、横浜市の都市計画事業として進められる。工事は2022年度下半期の着手を目指す。

 

今年度の計画では、さらに相鉄本線の終点、海老名駅の改良工事が進められる予定だ。北口改札を新設、「南口改札新設に向けた準備工事として鉄骨製作、架設や新駅舎構築」などが行われる。現在、海老名駅は他線との乗換えがやや不便となっているが、工事が完了すると乗換えも便利になりそうだ。

↑鶴ケ峰駅を通過する横浜行き12000系。現在同駅は地上駅だが地下化をめざして立体交差事業が始められる予定だ

 

【東京メトロ】3線の車両の増備が進められる

東京地下鉄株式会社(以下「東京メトロ」と略)からは2022(令和4)年3月に「2022年度(第19期)事業計画」が発表された。「さらなる安全・安心の提供と鉄道事業の進化による東京の多様な魅力と価値の向上」とする項目1の中で、「新型車両の導入」と「輸送サービスの改善」「新線建設」に関して触れている。いくつかの興味深い事柄も見られるのでチェックしておきたい。

 

新車増備計画:丸ノ内線の電圧を750Vに昇圧するプランも

まず「新型車両については、丸ノ内線、有楽町線・副都心線及び半蔵門線への導入を推進する」としている。それぞれすでに登場している丸ノ内線2000系、有楽町線・副都心線17000系、半蔵門線18000系が増備される。

↑丸の内線2000系電車。増備に伴い1988(昭和63)年生まれの02系が徐々に引退に。本年度から750V昇圧の検討も

 

興味深いのが銀座線・丸ノ内線の電圧を「標準電圧の750V化へ向けた取組みを推進する」と記述されていることだ。銀座線と丸ノ内線の電車は東京メトロで2線のみとなったサードレール(第三軌条)から電気を取り入れて走る方式を採用している。電圧は現在、直流600V方式だが、それを昇圧させ750Vを目指すとしている。説明には「輸送の安定性を高めるとともに、消費電力の削減等、環境負荷低減も図るため」としている。ちなみに、一般的な路線には直流1500Vが使われている。600Vの電圧は、やはり弱点があるということなのだろう。

↑2021(令和3)年8月から運転開始した半蔵門線18000系。グッドデザイン賞や鉄道友の会ローレル賞を受賞するなど評価も高い

 

設備投資計画:地下鉄内の複数の折り返し施設などの増強が図られる

事業計画の中では「輸送サービスの改善」として地下構内の施設の整備も行うとしている。

 

まずは東西線。列車の遅延防止・混雑緩和のため「飯田橋駅〜九段下駅間の折り返し設備整備」を行うとしている。地下鉄構内には、意外なところに側線や留置線が設けられ、路線を走る列車本数の調整や留置に使われている。飯田橋駅〜九段下駅にも側線が設けられているが、これを折り返し設備として有効活用しようというわけだ。

 

銀座線も列車の遅延防止のために、浅草駅構内の折返し設備整備を推進する、としている。浅草駅のホームの先には折返し用の3本の留置線がある。この折り返し用の留置線を、より使いやすいように整備するようだ。

 

【名古屋鉄道】9500・9100系の増備と立体交差化が進む

名古屋鉄道(名鉄)からは3月29日に「2022年度 名古屋鉄道 設備投資計画」が発表された。鉄道事業181億円、開発事業59億円、その他12億円と金額も細かく記述されている。この計画の中で鉄道事業では「1 安全・安定輸送確保」と「2 駅・車両の快適性・利便性の向上」の2つのポイントがあげられた。

 

新車増備計画:名鉄らしさが際立つ9500系・9100系

新車両の増備に関しては「2 駅・車両の快適性・利便性向上」の中に記された。具体的には「通勤型車両9500系及び9100系の新造」としている。

↑名鉄スカーレットと呼ばれる赤の正面デザインが目立つ9500系。9500系の2両編成版の9100系も新造される予定だ

 

9500系は2019(令和元)年12月に導入された新車両で4両編成だ。一方、9100系は9500系の2両編成版で、2021(令和3)年1月に走り始めている。名鉄の鋼製車両は赤一色で「名鉄スカーレット」として親しまれている。9500系・9100系はステンレス車体だが、正面から運転席入口まで名鉄スカーレットカラーを拡大し、名鉄らしい鮮やかな色合いの電車となっている。

 

9500系はすでに11編成まで導入されたが、2022年度に9500系は12編成目が、9100系は7編成目が導入予定。あわせて鋼製車両との置き換えが進むことになる。

 

設備投資計画:複数路線で進む立体交差、踏切の安全設備にも投資

名鉄は愛知県、岐阜県に営業キロ444.2kmという路線網を持つ。路線距離が長いせいもあり、沿線では現在4か所で高架化工事が進められている。どこで行われているか見ておこう。

 

◆知立駅(ちりゅうえき)付近(名古屋本線・三河線)

高架化されるのは名古屋本線の一ツ木駅〜知立駅〜牛田駅間1.6kmと、三河線の重原駅(しげはらえき)〜知立駅〜三河八橋駅間3.4km。知立駅は現在、地上駅だが、完成後には2階部が名古屋本線に、3階部が三河線のホームとなる。三河線は知立駅部分でスイッチバック方式となっている。計画を見るだけでも、大掛かりな工事になることが予想される。この高架化により計10か所の踏切がなくなる予定だ。

 

◆若林駅付近(三河線)

高架化工事が進む知立駅の東側にあたる三河線の三河八橋駅〜若林駅〜竹村駅間2.2kmでも高架化が進められる予定で、この工事完了後には4か所の踏切がなくなる。

 

◆喜多山駅付近(瀬戸線)

名鉄瀬戸線の喜多山駅前後の高架化工事で、小幡駅〜喜多山駅〜大森・金城学院前駅間1.9km間が高架化される。踏切は8か所なくなる予定だが、特に喜多山駅の東西側で瀬戸線と交差する国道302号(環状2号線)と県道59号線(瀬戸街道)といった交通量の多い幹線の踏切があり、同区間の立体交差化が急がれる理由となっている。

 

◆苅安賀駅(かりやすかえき)付近(尾西線/びさいせん)

尾西線の二子駅(ふたごえき)〜苅安賀駅〜観音寺駅(かんのんじえき)間1.8kmで進む高架化計画で3か所の踏切が消える。

 

こうした立体化とともに今回の事業計画には、踏切障害物検知装置の更新や、遠隔監視システム導入踏切の拡大により、踏切道の保安度向上を図ることが記述された。

↑独自の四角い警報灯が使われる名鉄の踏切。さらなる安全対策として複数の踏切で遠隔監視システムの導入が進められている

 

【近畿日本鉄道】新観光列車導入や駅周辺の開発計画が進む

ここからは近畿地方を拠点とする大手私鉄の事業計画・投資計画に話を進めたい。首都圏とは異なり、近畿地方の大手私鉄からは単年度の計画は発表されていない。中・長期計画のみとなる。

 

まずは私鉄最大の路線網を持つ近畿日本鉄道(以下「近鉄」と略)から。同社からは2021(令和3)年5月14日に「近鉄グループ中期経営計画2024」が発表されている。基本方針は「コロナ禍から回復し、新たな事業展開と飛躍に向かうための経営改革」としている。多彩な業種を持つ近鉄グループのプランということもあり、ここでは鉄道事業の一部に絞って見ていきたい。

 

新車増備計画:注目された新観光列車「あをによし」の導入

「中長期戦略/鉄道」の中で「魅力的な車両開発による観光需要の創出」があげられている。まずは名阪特急「ひのとり」デビュー1周年とし、2021(令和3)年2月で全72両(11編成)の投入が完了した。

↑名阪特急80000系「ひのとり」。6両と8両の編成があり、利用者の増減に合わせた運用が行われている

 

80000系「ひのとり」は、名阪特急用に2020(令和2)年3月14日に運行が始まった。余裕を持たせた座席配置で、密を避けたい時代にフィットしたこともあり、好評な運行を続けている。

 

中長期計画では2022年以降、新たな観光特急の運行を計画中と記されていたが、この最初の列車が観光特急「あをによし」となった。大阪難波駅〜近鉄奈良駅間と、京都駅〜近鉄奈良駅間を往復する。豪華な2人がけツインシートと、3〜4人がけサロンシートといった客席構成がユニークだ。

 

今年の4月29日からの運行だったが、筆者が走る前に近鉄京都線の沿線で写真を撮っていたところ、複数の人から「今日は『あをによし』が走るの?」と聞かれた。さらにみなが一度は「乗ってみたい」と話していたのが印象的だった。

↑新観光列車「あをによし」。日中は京都駅〜近鉄奈良駅間を、朝夕は大阪難波駅〜近鉄奈良駅間を走る。木曜日を除きほぼ毎日運行

 

「あをによし」は運賃+特急料金に加えて特別車両料金210円を払えば乗車できるとあってお得な印象が強い。沿線に住む人が興味を持ち乗ってみたいという列車は、これまであまりなかったように思う。沿線の人が興味を示してくれることは、鉄道会社にとってありがたいことではなかろうか。近鉄が今後、どんな新たな観光列車を導入してくるのか、興味深いところである。

 

設備投資計画:沿線の複数の駅で再開発が進められる

中期計画の「03重点施策の主な取り組み」では「駅周辺再開発の推進」も取り上げられている。5つの駅をあげているが、奈良線の駅が多く河内小阪駅、学園前駅、大和西大寺駅の3駅で再開発を計画している。

 

新観光列車「あをによし」が奈良線と京都線を走り、奈良線の複数の駅で再開発を行われることを見ても、近鉄が奈良線をかなり重視していることがわかる。

↑大和西大寺前駅では駅の南側を中心に土地区画整理事業が進められる。近鉄では「駅と周辺の一体的な再開発を推進」したいとする

 

【阪急・阪神】省エネ電車の導入と梅田エリアの開発

阪急阪神ホールディングスグループからは5月20日に「『長期ビジョン-2040年に向けて』及び中期経営計画の策定について」と題したプランが発表された。阪急電鉄と阪神電気鉄道の2社は阪急阪神ホールディングスグループの子会社にあたるが、両社とも中核企業ということもあり、プランの中でも大きく扱われている。

 

長期ビジョンの戦略1として「関西で圧倒的No.1の沿線の実現」を掲げている。具体的には「梅田エリアのバリューアップ」、「沿線主要エリアの活性化(千里中央地区の再整備構想)」、「鉄道新線等による交通ネットワーク(インフラ)の整備」の3テーマをあげている。

 

新車増備計画:阪急・阪神両社で進む次世代型電車の増備

中期経営計画の中の重点施策1として「収支構造の強靭化への取組」の「都市交通」の括りの中で、「鉄道の有料座席サービスの導入 2024年を目途(もくと)」を記載している。これまで有料座席サービスを行う車両を導入してこなかった同社グループ。近畿圏では近鉄、京阪、南海が有料座席サービスを行う中で、貴重な会社でもあったのだが、やはり収益力を上げるためには、有料座席サービスが必要不可欠と見ているのだろう。

 

また、重点施策4の「SDGs・2050年カーボンニュートラルに向けた対応」にある各事業の今後の主な取組内の「都市交通」に関して「鉄道車両の代替新造(省エネ車両)の推進」を掲げている。

 

両社はかなり前からこうした取組をしていて、たとえば2013(平成25)年から導入した阪急1000系(ほぼ同形の京都線用1300系も含む)は車体のリサイクルが容易なアルミダブルスキン構造で、客室照明や前照灯類などすべてLEDを採用している。

↑阪急電鉄の神戸線・宝塚線を走る1000系。9年ほど前に導入の車両だが、当初から環境に配慮した省エネ車両として造られた

 

一方の阪神電気鉄道の各駅停車用の5700系は「人と地球へのやさしさ」が考えられ新造されている。阪急電鉄の1000系・1300系が取り入れた要素を持つ省エネ車両で、旧型車の置き換え用に最近も増備された。

 

現在では当たり前のように導入される環境にやさしい車両づくりを一足先に進めていたわけで、先見の明があったということなのかもしれない。

 

設備投資計画:グループの北大阪急行の延伸工事も完了へ

阪急阪神ホールディングスグループは大阪メトロ御堂筋線へ乗り入れる北大阪急行線という鉄道会社の運営も行っている。同グループの計画書には「強固な交通ネットワークの構築を目指して」として「北大阪急行線の延伸」が記されている。北大阪急行線は千里中央駅〜箕面萱野駅(みのおかやのえき)間が工事中で、2023年度中には開業する予定としている。

↑北大阪急行線の終点駅・千里中央駅。北大阪急行線(右下)沿線は新大阪や梅田へのアクセスも便利で沿線人口も増えている

 

今年発表された計画では、2023(令和5)年3月開業予定の東海道支線の大阪駅から阪急電鉄の大阪梅田駅にかけて再開発を検討しており、「芝田1丁目計画」と名付けられたプランでは、大阪梅田駅に隣接した大阪新阪急ホテル・阪急ターミナルビルの建替え、阪急三番街の全面改修が計画されている。大阪駅、梅田駅の周辺がさらに大きく変わっていきそうだ。

↑進む東海道支線の大阪駅工事。右手に建つグランフロント大阪の複数のビル群も、阪急が開発事業者として加わり開発された

 

2031(令和13)年春に開業予定の「なにわ筋線」の新線計画にも阪急阪神ホールディングスが参画している。同新線は大阪市内に南北に延びる予定で、JR西日本、南海電気鉄道と共に将来は「阪急十三方面に分岐する路線(なにわ筋連絡線)について、国と連携しながら整備に向けた調査・検討を進めます」(大阪府ほか5社発表「なにわ筋線の整備に向けて」より)としている。線路幅はJR西日本や南海電気鉄道と異なることもあり、乗り入れは難しいが、どのような路線計画となるのか気になるところだ。

 

【関連記事】
街が変わる&より便利に!?大阪の「鉄道新線計画」に迫る

 

【南海電気鉄道】高野線向け8300系の導入も始まる

南海電気鉄道(以下「南海」と略)からは3月31日に「新中期経営計画『共創140計画』について」と題する、今年から2024(令和6)年度にかけての3年間にわたる計画が提案された。今の時代に対応していくには「1社単独では難しく、他者との『共創』がより一層重要になってくる」としている。

 

新車増備計画:8300系の増備さらに新線向け電車の計画も

具体的な車両計画は、同プランに記されていないが、最近の車両の導入を見ると、南海本線で8300系を増備し、さらに高野線へも2019(令和元)年11月からこの8300系6次車の導入を始めた。南海本線に導入された8300系の5次車と比べると15%の省エネ効果があるとされる。この導入により高野線の車歴60年と古強者だった6000系の引退が進められている。

 

共創140計画には、新車のイメージイラストが掲載されていたが、こちらは「なにわ筋線対応を含めた車両戦略の策定(「乗りたい電車づくり」の実現)」と解説されている。まだ車両イメージの段階で、具体的には明らかにされていないが、なんば筋線への乗り入れを考えた電車と推測されている。

↑南海本線を走る8300系。2015(平成27)年に導入以来、増備が進む。高野線用の8300系6次車もすでに登場している

 

設備投資計画:なんば筋線開通を柱に据えて未来を描く

南海が〝共創〟を掲げたのは、やはりなんば筋線の開業が将来に控えていることが大きいのであろう。なにわ筋線は、新大阪駅から大阪駅(新駅)を経て、中之島駅、西本町駅(いずれも仮称)、この先でJR線と南海線が分かれ、南海の新今宮駅に至る路線として計画されている。開業目標は2031(令和13)年で、共創140計画には「なにわ筋線開業に向けて沿線を磨く10年間」と記されている。具体的な戦略として、前述した新車両に加えて「新今宮駅、中百舌鳥駅(なかもずえき)、およびこれらに続く拠点駅の整備」をあげている。JR西日本と阪急阪神ホールディングスとの共同事業だけに、将来を見据えて、他社との調整が欠かせないものとなっている。

↑南海の大阪なんば駅。プランでは「シン・なんばターミナル共創エリア」とし、次世代型集客機能が融合した街区を目指すとする

 

さらに、南海本線・高野線の起点となる南海なんば駅周辺では「エンターテイメントシティ2050Namba」(仮称)という提案がなされている。現在の南海なんば駅の最寄りには、なにわ筋線の南海新難波駅も開業の予定で、この新駅まで含めての「共創エリア」とすることを目指している。

 

なんばは大阪南の繁華街だけに、今後どのように街の発展を目指していくか、調整役としての南海の存在が重要になるのかもしれない。

 

【京阪電気鉄道】プレミアムカーの連結が完了でより快適に

大阪と京都を結ぶ京阪本線などの路線を運営する京阪電気鉄道。同社からは2026年度を目標年次とする長期経営戦略「京阪グループにおける今後の方向性について」が2020(令和2)年11月5日に発表されている。2年前に発表されたものなので、すでに達成された計画もあり、簡単に触れておきたい。

 

新車増備計画:3000系全編成にプレミアムカーの連結が完了した

「各事業の施策(安全安心)」内で示されたのが「『プレミアムカー』サービスの拡大」で、2021(令和3)1月から3000系車両全編成の6号車に「プレミアムカー」を導入するとある。

↑京阪本線を走る3000系。コンフォート・サルーンの愛称を持つ。車体の色が異なる後ろから3両目がプレミアムカー

 

8000系と3000系編成に組み込まれた「プレミアムカー」。料金は乗車した距離で異なるが運賃+400円か500円で乗ることができる。プレミアムカーが目指す〝密集を避けて安心して移動できるサービスの拡充〟はちょうど時代に合ったこともあり好評なようだ。

 

逆に大量輸送時代の申し子だった5扉車の5000系は2021(令和3)年9月に最終運転を迎えた。初代3000系の2階建て車両など、時代を先取りした車両を導入することが多い鉄道会社だけに、次はどのような車両を登場させるか、気になるところだ。

 

設備投資計画:枚方市駅周辺の再開発など注目したいポイントも多い

設備投資計画としては枚方市駅周辺の再開発(2023年度完了予定)や、京橋駅周辺再開発、三条駅周辺再開発(いずれも完了時期は未定)といった駅周辺の再開発に関して触れている。

 

同計画で興味深いのは「デジタル技術を活用した業務効率化」として、橋梁などの鉄道設備の点検にドローンを活用して作業効率を上げるとしていることだ。今年発表された投資計画では、複数の鉄道会社でドローンの活用を検討とあったが、それを2年前に計画していたとはなかなかである。

 

【西日本鉄道】週末、大牟田線への自転車持ち込みが可能に

最後に西日本鉄道(以下「西鉄」と略)が3月25日に発表した「西鉄グループ〝修正〟第15次中期経営計画 2022年度計画」を見ていこう。巻頭に「聖域なき構造改革」を掲げていて、かなり大胆な取組が見て取れる。西鉄グループの計画の中の鉄道事業に限って見ていきたい。

 

新車増備計画:9000形などの増備で大きく変わった西鉄電車の〝顔〟

新車両の増備に関して具体的な記載はないが、「省エネ車両への代替による消費電力の削減」をうたっている。

↑2016年度から走る9000形。全照明にLEDを使用する省エネ電車で、編成を組みやすいように3両編成と2両編成が用意される

 

西鉄の車両の入れ替えのタイミングは早い。特急形車両に8000形という人気車両があったが、導入して30年たつ前に全車が引退、すでに低コストながら高品位な車体を売りにした3000形に置き換えている。

 

通勤形電車の主力となりつつある9000形は2016年度の導入ながら、前照灯や車内照明など照明装置はすべてLED化され、また車体はステンレス車体ながら組立にレーザー溶接を利用、正面のみ普通鋼製を利用している。正面を鋼製としたのはもしもの事故を考慮したもので、また日ごろの保守が容易ということが念頭に置かれている。列車の車両編成数を増減しやすいように、3両編成と2両編成を用意したところも興味深い。

↑地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」。行程によりカフェ、ランチ、ディナーそれぞれが楽しめる

 

車両・列車に関係する取り組みとしては「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」を活用した地域連携活動の推進が提案されている。地域のお祭り、沿線イベント・自治体と連携した企画列車の運行や体験イベントの実施を、この列車を通して行いたいとしている。

 

さらに西鉄では面白い試みも取り入れている。「ポストコロナの観光復活に向けた取り組み」として「サイクルトレインの実施」を進めているのだ。

 

サイクルトレインは、他社でもローカル線などでの取り組みが見られるが、同社は本線にあたる天神大牟田線で導入を図る。繁忙期を除く土曜・日祝日に自転車とともに乗車でき、持ち込み料1回につき300円がかかるが、自転車を折り畳んで輪行袋に入れる必要がなく、そのままの形で乗車できるのがポイントだ。自転車をのせることができる対象駅は、特急列車停車駅のみ、また乗車時には事前予約や、乗車できる扉が限られ、また車内ではベルトで固定するといった制限があるものの、新たな試みとして注目したい。

 

設備投資計画:進む天神大牟田線の立体交差化、さらに新駅も開業予定

天神大牟田線の福岡市内の連続立体交差事業も進められている。天神大牟田線の雑餉隈駅(ざっしょのくまえき)〜下大利駅(しもおおりえき)間で、2022年中には立体交差化が完了の予定。雑餉隈駅と春日原駅(かすがばるえき)の間には2023年度後半には新駅・雑餉隈新駅(仮称)が設けられることになる。

 

鉄道会社の事業計画・設備投資計画を見ると、次の時代へ向けた新たな取り組みが多く見られた。今後、どのような新型車両が登場してくるのか、一方で、旧型車両が消えていくのか、さらに立体交差事業も各地で進む。駅を含めどのような街造りが鉄道事業を通して行われていくのか多彩なプランが網羅される。そこには新しい時代の鉄道と日本の姿もおぼろげながら見えてくるようで、興味深い。

 

あおり運転を逃さない! カロッツェリア新型ドラレコ「VREC-DZ800DC」のこだわりを解説

今やドライブレコーダーは安心安全なドライブに欠かせない装備となりました。特に社会問題化しているあおり運転の頻発は、多くのドライバーにその必要性を実感させているようです。そんな中、カロッツェリアからその対策を施した、前後2カメラ型ドライブレコーダーユニット「VREC-DZ800DC」が登場しました。

 

ナイトサイトによって車監視能力を大幅にアップ

まずお伝えしておきたいことは、「VREC-DZ800DC」が開発陣のドライブレコーダーに対する徹底したこだわりから生まれたということです。イメージセンサーは、前後とも約200万画素の高画素「STARVIS」技術を搭載したソニー製CMOSセンサーを採用し、夜間での高感度・高画質に記録できる「ナイトサイト」にも対応しています。これにより、昼夜を問わず走行中の映像を鮮明に記録できるものとしています。

↑カロッツェリア「VREC-DZ800DC」。本体サイズ:W106.1×H78×D46.7mm /2ndカメラ:W63.2×H37.1×D31.6mm

 

【昼間撮影】

↑カロッツェリア「VREC-DZ800DC」で前後を捉えた映像。後続車も鮮明に捉えているのがわかる

 

【夜間撮影】

↑フロントは夜間でも白飛びの発生を最小限にとどめ、リアはスモークガラス越しでも鮮明な撮影を実現している

 

このナイトサイト機能をフル活用しているのが駐車監視機能です。たとえば街灯が一つしかないような薄暗い駐車場でも鮮明に記録できるので、車上荒らしなどのトラブル発生にもしっかりと対応してくれます。

 

駐車中の監視は、エンジン停止後最大40分間は検知前20秒と検知後20秒間を記録。駐車監視機能をONにすれば24時間365日、常にクルマを監視し続けるモードとなります(記録時間は検知後1分間/3分間/5分間から選択可能)。もちろん、バッテリー電圧を常に監視しながら作動するので、この使用によってバッテリーが上がってしまう心配もありません。

↑駐車中の監視もカロッツェリア「VREC-DZ800DC」が得意とするところ。二つの駐車監視モードを備えた

 

また、監視中は作動中であることを示すLEDランプが点灯するので、車上荒らしなどの抑止効果としても期待できます。ここからもドライブレコーダーで愛車を守ろうとする開発陣の想いが伝わってきますね。

 

検知能力アップの決め手は独自のアルゴリズム

カメラの画角にもこだわりを感じました。フロントは画角を広げた水平130°とし、リアはあえて少し狭い112°としています。これは撮影で捉えられる映像を目的に応じて最適化しているため。たとえば、前方の撮影では左右からの動きを広範囲に捉えられるようにし、一方で後方は主として後続車を大きめに映し出せるようにしたのです。

↑カロッツェリア「VREC-DZ800DC」のリアカメラ。後方車を捉えやすくするため、フロントよりも若干画角を狭めている

 

そして、本機が本領を発揮するのが「後方車両接近検知機能」です。これは、社会問題化しているあおり運転対策として新たに搭載された機能で、新開発の画像認識技術によって可能となったものです。そのポイントは検知タイミングを走行速度や周囲の環境によって最適化する独自のアルゴリズムを採用した点にあります。

 
今までの後方車検知は、多くが一定の距離に車両が後方から近づいてくると自動的に作動するというものでした。しかし、人間にとって煽られている感覚は速度や昼夜などで違ってきます。つまり、一定の距離で検知した場合、状況によっては煽られてもいないのに検知したり、場合によってはその逆もあるわけです。「VREC-DZ800DC」の開発陣はそこに着目したのです。

 

具体的には、走行している速度を踏まえつつ、一般道ならより近い距離まで近づいた時に検知し、高速道路なら少し離れた状況下でも近づいてくるクルマを検知します。一方、周囲の環境に対しては、明るい昼間ならより近い距離で、夜なら少し離れた距離でも検知するといった具合です。開発者によれば、この検知タイミングはこれらの状況の変化に対してバリアブルに対応できると言います。もちろん、この検知がフロントカメラにも反映されているのは言うまでもありません。

↑後方車両検知イメージ。速度域で検知タイミングを変化させる独自のアルゴリズムを採用した

 

警報と記録を確実に繰り返す安定した動作を確認

ただ、説明だけでは本当の効果はわかりません。そこでこの機能の効果を試すため、閉じられた専用エリアで安全を確かめて体験会が実施されました。先行車に乗車し、走行中に後方車が急接近することで、検知がどのタイミング行われるのかを体験するのです。

 

速度は40km/hをやや上回る程度。そこに後続車が近づいてきました。ほぼルームミラーいっぱいになったというところでVREC-DZ800DCは“ピロン”というアラート音を発し、同時に画面には赤の地色に白抜きで「後方注意!」の警告を表示。警告に合わせて、通常録画されていた映像とは別に、“イベント録画”として別フォルダに自動保存されることになります。ですので、上書きされる心配もありません。この機能で感心したのは、何度繰り返しても確実にこの記録を行っていたことです。

↑カロッツェリア「VREC-DZ800DC」の「後方車両接近検知機能」が作動した状態。アラーム音が鳴ると同時に表示される

 

↑時速40kmで走行中にこの位置まで迫られるとかなり怖い。「VREC-DZ800DC」はこうした状況を確実に映像として自動記録する

 

しかも、その検知タイミングは速度域で後続車を撮影するタイミングをしっかりと捉えています。後続車が近づいてくるのに対して恐怖を感じるのは人によってまちまちで、それは速度域や昼夜によっても違います。つまり、それに対応して開発したのが、走行速度や距離、周囲の明るさに柔軟に対応する、“人の感覚”に近いアルゴリズムでした。その上でドライバーの感覚に合った設定が選択できるようにしたのがこの機能なのです。

↑体験会ではこのぐらいの間隔にまで近づき、あおり運転を再現した

 

Wi-Fi接続機能を搭載してスマホ上で映像チェックが可能

パイオニアによれば「100%の検知を保証しているわけではありません」としながらも、「その検知精度を高めるために検知アルゴリズムを徹底的に検証しました」と話し、その精度には相当に自信がある様子。この効果によってあおり運転の被害が少しでも減ることを願いたいですね。

 

それとVREC-DZ800DCにはWi-Fi接続機能が装備されています。これは専用アプリをダウンロードしたスマホとWi-Fi接続することで、スマホ側から録画した映像の確認や、本体の設定が可能になるというものです。これは液晶モニターが2インチにとどまるVREC-DZ800DCにとって、映像のチェックや各種設定で大きなメリットを生み出します。特にトラブルが生じた際に第三者へ映像を送信しておけば、いざという時の安心にもつながるわけです。

↑スマホとWi-Fi連携することで、映像の確認以外に「後方車両接近検知設定」をはじめ、詳細な設定がスマホ上で行える

 

本体はフロントガラスに直付けするタイプとすることでガラスの反射が映像に映り込むことも抑えています。これもドライブレコーダーを隅々まで知り尽くしたカロッツェリアならではの究極のスタイル。VREC-DZ800DCはそんなこだわりから生まれたドライブレコーダーといえるでしょう。

↑「VREC-DZ800DC」はフロントガラスに直付けすることで、吊り下げるタイプよりも前方視界を広く取れるメリットもある

 

画質にも優れた入門機「VREC-DH301D」もラインナップ

これとは別にカロッツェリアでは、ドライブレコーダーの入門機として「VREC-DH301D」もラインナップしました。このモデルは画質にも優れたと好評だった「VREC-DH300D」の後継機で、フロント/リアカメラ共ソニー製CMOSセンサー「STARVIS」を採用し、フロントカメラには約370万画素の高画素タイプを採用。レンズもF1.4とすることで、昼夜を問わず、鮮明な記録を実現しているのがポイントです。ピアノブラックとマットを組み合わせた格好良さも個人的には魅力だと思っています。

↑カロッツェリア「VREC-DH301D」。本体サイズ:W90.5×H101.9×D36mm /リアカメラ:W58.9×H25.1×D31.5mm

 

VREC-DZ800DCは6月発売予定で、店頭予想価格は税込3万4000円前後。VREC-DH301Dは7月発売予定で、同じく店頭予想価格は2万8000円前後となっています。

 

 

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偉大な英雄を翼に乗せて大空へ! マラドーナのラストフライトはW杯カタール大会

2020年11月25日に心臓発作で亡くなった、元アルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナ。母国の英雄の突然の不幸に国中が悲嘆に暮れた。

 

 

その突然の死去からちょうど1年半の5月25日。英雄の勇姿がデザインされた航空機がブエノスアイレス郊外でお披露目された。「タンゴD10S」と命名された機体は、“空飛ぶ博物館”としてマラドーナに関する貴重な資料が機内に展示され、人工知能技術を使った「AIマラドーナ」と対話することができる。

 

 

アメリカで事業を展開するアルゼンチンのフィンテック企業「Give and Get」が資金を提供。機体には、アルゼンチンの有名アーティストであるマキシミリアーノ・バニャスコがマラドーナを象徴するシーンを描いた。

 

 

マラドーナが「神の手ゴール」と「5人抜き」でアルゼンチンを優勝に導いた1986年のワールドカップ(W杯)メキシコ大会。その時の、マラドーナがトロフィーにキスをしているシーンはあまりにも有名だ。

 

 

このお披露目イベントでは、マラドーナの長女ダルマさんと次女のジャンニーナさんも機内から登場。

 

 

ダルマさんは「私たちはこの熱狂を信じたり理解したりすることはできません。ファンはどこまでいくの? 飛行機まで」と、驚きと感謝の言葉を口にした。

 

 

「タンゴD10S」は今後、国内の巡回を経て、マラドーナがこの世を去って初の大会となる、11月にカタールで開催される2022年W杯にアルゼンチン代表を乗せてフライトする。W杯後はチャリティーオークションにかけられる予定で、それまでは個人や団体でのレンタルが可能だそうだ。

軽快で力強い走りは伝統の旗艦フォルクスワーゲン・ゴルフならでは

気になる新車を一気乗り! 今回は8代目「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に、早くも伝統のスポーツモデル「GTI」が追加設定されたので紹介します。

※こちらは「GetNavi」 2022年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

積極的に操る魅力を備えた万能スポーツハッチバック

ハッチバック

フォルクスワーゲン

ゴルフ GTI

SPEC●全長×全幅×全高:4295×1790×1465mm●車両重量:1430kg●パワーユニット:1984cc直列4気筒DOHC+ターボ●最高出力:245PS/5000〜6500rpm●最大トルク:37.7kg-m/1600〜4300rpm●WLTCモード燃費:12.8km/L

 

単に高性能というだけではなく、ゴルフのイメージリーダー的存在でもあったGTIが最新世代へとスイッチ。ベースとなる8代目はマイルドハイブリッドの投入でも話題を呼んだが、GTIは引き続きハイスペックな2Lのガソリンターボを搭載。駆動方式も先代と同じくFF方式を踏襲する。

 

その走りは、もちろんGTIの称号に相応しいレベルにある。2Lターボは、パワフルなだけではなく全域での扱いやすさを両立。トラクション性能にも優れるだけに、積極的に操る場面では能力を使い切る喜びも見出せる。また、先代比では身のこなしが一層軽快な点も持ち味のひとつ。快適性も上々とあって“万能なハッチバック”としての魅力度は高い。

 

[Point 1] 新しさと伝統が融合する

室内はメーターのグラフィックなどが専用仕立てとなるほか、伝統的なチェックのシート柄などでGTIらしさを演出。装備も充実している。

 

[Point 2] 走りはパワフルで軽快

GTIは“押し”の強いフロントマスクに加え、リアゲート中央の車名ロゴが「GOLF」ではなくなる(税込466万円)。軽快かつパワフルな走りが楽しめる。

 

[Point 3] パワーユニットは歴代でも最強レベル

一部例外を除けば、搭載する2Lガソリンターボのアウトプットは歴代GTIでも最強レベル。速さに加え、フレキシビリティの高さも魅力。

 

文/小野泰治 撮影/郡 大二郎

 

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私鉄各社「事業計画」の新車両増備&設備投資に注目する【首都圏大手私鉄編1】

〜〜春に発表の鉄道各社2022年度 事業計画その2〜〜

 

首都圏大手私鉄各社の「設備投資計画」が出そろった。それぞれアフターコロナを見極め、次の時代へ向けての積極的なプランを打ち出している。今回は首都圏大手が発表した事業計画の中で、新型車両の導入計画および立体化工事などの設備投資を中心に、首都圏大手6社の気になるポイントに注目してみた。

 

【関連記事】
鉄道各社「事業計画」の新車両導入&設備投資に注目する【JR編】

 

【東急電鉄】新横浜線開業目前で目黒線8両化が進む

東急電鉄が5月13日に発表した2022年度の「設備投資計画」。「事業基盤の強靭化と社会的価値の持続的提供のため総額444億円を投資」する。ちなみに首都圏大手9社の中で、最も金額が多い設備投資計画となった。

 

新車増備計画:2020系増備で8500系も残り1編成に

「新型車両の導入」プランでは、田園都市線用の2020系の10両一編成を導入する。この導入により、旧型車両(8500系)との置き換えが完了する。

↑最後まで残った田園都市線用の8500系8637編成。残念ながら5月末現在、朝夕のみの運用などに限られている

 

東急2020系は2018(平成30)年3月28日に東急の次世代の標準車両として開発され、田園都市線用だけでなく、すでに目黒線用に3020系、大井町線用には6020系が生み出され導入されている。モーターの高効率化、車内照明、ヘッドライト・尾灯のLED化により使用電力を軽減、2020系と旧型の8500系と比較すると使用電力が50%ほど軽減される。

 

一方、消えていく8500系は1975(昭和50)年に開発された車両で、47年にわたり田園都市線を走り続けてきた。東急電鉄の言わば〝ご長寿車両〟だった。今年の4月からは「ありがとうハチゴー」プロジェクトとして残る編成にヘッドマーク装着が行われ、撮影会、貸切イベントも開かれている。田園都市線の沿線で、旧型電車らしいモーターの甲高い音が聞けなくなるのは、ちょっと寂しいところである。

↑東急田園都市線の主力車両となりつつある2020系。2022年度の導入分で旧型8500系の置き換えが完了となる

 

設備投資計画:東急新横浜線開業に向けて最後の仕上げに

2022年度末にあたる2023(令和5)年3月に開業予定の東急新横浜線。相模鉄道の羽沢横浜国大駅と東急東横線の日吉駅間が結ばれることにより、東海道新幹線の新横浜駅利用が非常に便利になる。さらに、この新線開業により3都県、7社局14路線を結ぶ大鉄道ネットワークが完成される。今年は最後の仕上げの年となるわけだ。

 

この新線には主に目黒線を走る列車が乗り入れる予定だが、これまで6両だった同線の電車が徐々に8両編成化が進んでいる。中でも3020系の一部編成は早くも6両から8両となり走り始めている。今年度の設備投資計画では新横浜線開業までに東急電鉄の全26編成がすべて8両化される予定だ。すでに他社の乗り入れ車両である、都営三田線用の新型6500形も8両編成で走り始めている。東京メトロ、埼玉高速鉄道などの電車も追随予定で、来春にはさらなる輸送力増強が図られそうだ。

↑新横浜線開業を1年後に控えた3月31日。元住吉運転区では8両化された東急3020系と相模鉄道20000系が並ぶ様子が見られた

 

その他にも設備投資の一環として大井町線で実施している有料着席サービス「Qシート」の他路線展開も、今後検討していくとしている。

 

【東武鉄道】新特急車両の導入で東武特急の〝顔〟が変わる

4月28日に東武鉄道から2022年度「鉄道事業設備投資計画」が発表された。この計画では総額322億円の設備投資を行うとしている。その1「安全・安心の持続的な提供に向けて」のトップに「鉄道立体化の推進」を掲げている。首都圏の大手私鉄の中で最も立体化の推進に力を入れている様子がうかがえる。同件の詳細は後述するとして、まず車両に関して見ていこう。

 

新車増備計画:N100系を新造、一方で消滅した350系電車

「鉄道事業設備投資計画」の2に「さらなるサービス向上に向けて」として新型特急N100系に関して触れている。このN100系は2022年度に車両製作を行い、2023年に正式にお目見えとなる。走るのは東武スカイツリーライン・日光線・鬼怒川線で、浅草駅〜東武日光駅・鬼怒川温泉駅間に導入される。計画では6両×4編成、計24両を新造する。横3列のプレミアムシート、運転席越しの展望が楽しめる11立方メートルの個室「コクピットスイート」が設けられるなど贅沢な車両となりそうだ。

↑100系の「デラックスロマンスカーカラー」編成。昨年12月に登場したリバイバルカラーで他の100系も塗り替えが進められている

 

現在の、東武鉄道の特急形車両は、100系スペーシアに、200・250型りょうもう、他に500系リバティの3本立てで運行される。N100系は形式名にも「100」という数字が踏襲されるように100系スペーシアの後継にあたる車両となる。100系が登場したのは1990(平成2)年6月のことで、すでに30年以上走り続けている。

 

現在の100系は6両×9編成、計54両が走っていて、昨年からリバイバルカラーへの塗り替えが一部の編成で行われている。これはN100系の新造とどのような関連性があるのか気になるところだ。500系リバティも徐々に増備されており、将来はN100系と500系によって、現在の100系の運用が引き継がれることが予想される。

↑東武鉄道の特急型電車の中ではユニークな存在だった350系。定期運用は消滅したものの夜行団体臨時列車などでの運行が行われる

 

ちなみに、今年の3月までは350系という特急形電車が走っていた。元は1800系という急行型電車で、特急形として改造した4両編成の車両を350系とした。土休日に浅草駅〜東武日光駅間を走る特急「きりふり」に使われていたが、2022(令和4)年3月6日の運行をもって同列車の運行が終了、同時に350系電車の定期運行が終了している。

 

東武の投資計画には記されていないものの、4月28日に車両に関して気になる発表があった。東武アーバンパークライン(野田線)に5両編成の新型車両を導入するというのである。同線には現在60000系と10030系、8000系の3タイプが走っている。すべて6両編成で運転されている。新型は60000系の5両編成版となる。2024年度以降から順次導入される予定だとされる。

 

コロナ禍により、在宅勤務やテレワークが多くなり、電車通勤をする人が減っているとされるが、既存の編成車両数を減らすというのは、かなり思い切った計画である。将来、5両編成と6両編成を共存させていくのか、気になるところだ。

↑東武アーバンパークライン(野田線)を走る60000系。2024年度以降は5両編成の車両が登場することが発表された

 

設備投資計画:立体化工事が進む東武スカイツリーライン

東武鉄道の沿線では踏切を減らすために複数の高架化工事が進められている。投資計画に掲げられた区間を紹介しておこう。

 

◆竹ノ塚駅付近高架化
東武スカイツリーライン・竹ノ塚駅付近(西新井駅〜谷塚駅/やつかえき間)の高架化工事で2023年度に事業完成予定。

◆清水公園駅〜梅郷駅(うめさとえき)間高架化
東武アーバンパークライン・清水公園駅〜梅郷駅間が立体交差かの工事を施工中。2023年度中に野田市駅の供用開始および2面4線化される。

◆とうきょうスカイツリー駅付近高架化
東武スカイツリーライン・とうきょうスカイツリー駅付近(とうきょうスカイツリー駅〜曳舟駅間)の工事で、2022年度は上り線の高架橋工事が推進される。

↑とうきょうスカイツリー駅付近で進む高架化工事。まずは上り線の高架橋工事が進められている

 

◆春日部駅付近高架化
東武スカイツリーライン・東武アーバンパークラインが交わる春日部駅付近(一ノ割駅〜北春日部駅間、八木崎駅〜藤の牛島駅間)の高架化工事で、2022年度には春日部駅東側で仮上り線ホームと東口仮駅舎の工事を推進する。

◆大山駅付近高架化
東上線・大山駅付近(下板橋駅〜中板橋駅間)の高架化で、2022年度に連続立体交差化工事についての地元自治体と施行協定を締結のうえ、工事着手に向けて設計業務等を行う。

 

こうした立体化工事は地元の自治体との都市計画事業として行われている。交通渋滞の原因となりがちな開かずの踏切を減らし、高齢化社会が進む時代、危険性が高い踏切を減らす要望がそれだけ強くなっているということもあるのだろう。

 

【京王電鉄】ライナー用車両の新造と連続立体化工事の推進

5月2日に京王電鉄から2022年度の鉄道事業設備投資計画が発表された。その額は288億円で、首都圏大手の3位にあたる。【主な取り組み】の中で「1.より高度な安全・安心の追求」のトップとして「(1)京王線(笹塚駅〜仙川駅間)連続立体交差事業の推進」が上げられている。連続立体交差事業が同社最大の事業という位置づけなわけである。

 

【関連記事】
半世紀にしてようやく!京王線の連続立体交差事業に見る「踏切問題」を解決する難しさ

 

新車増備計画:好調な京王ライナー用の5000系を増備

まずは車両増備計画から見ると、5000系の新造車両1編成(10両)を増備するとある。5000系は2017(平成29)年9月に登場した車両で、ロングシート・クロスシートと座席が変換できるデュアルシート(マルチシート)の機能を生かして、有料座席指定列車の「京王ライナー」などに使われている。デュアルシートは、多くの会社の車両に使われる機能だが、クロスシート利用時にリクライニングできないといったマイナス要素があった。

 

本年度に増備される京王5000系は、日本初のリクライニング機能を取り入れたデュアルシートが使われる予定となっている。すでに導入されて4年になる座席指定列車「京王ライナー」だが、密を避けたいという思いを持つ利用者が増えたせいか、運行される列車は概ね好評のようである。

↑朝夕に運行される座席指定列車「京王ライナー」。今年度はリクライニング機能付きの5000系の新車が導入される予定だ

 

車両に関しては「車両やホーム上における防犯・安全対策」とある。具体例としては「車両併結による車内通路非貫通の解消」と記されている。これは8000系同士の連結時にあったもので、先頭車両同士が連結されることにより、通り抜けができない状態が生まれていた。この8000系の連結される側の運転室を廃止し、貫通幌を付けて通り抜けが可能にした車両が整備されている。外から良く見ると、後付けした連結部ということもあり、やや異なる姿だが、こうした変更も防犯・安全対策として有効なのであろう。

 

ちなみに、今年の3月のダイヤ改正で京王線の列車運行で変更があった。「準特急」という「特急」に準ずる列車が廃止され、「特急」のみに変更された。誤乗車を防ぐための工夫であるとともに、京王ライナーを「終日運行の検討を進める」と投資計画内にあるように、次の時代の列車運行のための布石でもあったのだろう。

 

設備投資計画:笹塚駅〜仙川駅間の連続立体化工事を進める

京王電鉄が進める事業として最も大掛かりなのが、京王線の立体交差化である。京王線の笹塚駅〜仙川駅間約7.2km区間で進められる連続立体交差事業で、「引き続き事業主体である東京都および世田谷区・渋谷区・杉並区とともに用地取得や高架化工事などを進める」とある。この高架化により途中7つの駅が高架化、25か所の踏切が廃止される予定だ。

↑代田橋駅〜明大前駅間の現状。高架化工事を進めるために都道413号線(右)の位置が変更された。中央の工事部分が高架化される

 

筆者は同路線の沿線に住んでいることもあり、日々、この事業の進み具合を目にしているが、用地取得は最終局面を迎えつつあり、また一部の高架化工事も順調に進められているように見える。

 

投資計画の最後の「DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した業務省力化等の推進」の中に「土木構造物や電気設備の維持管理業務のデジタル化に向けて検査システムの構築を進める」とあった。同社には900形電車DAX(Dynamic Analytical eXpressの略)という軌道検測車両(総合高速検測車)が在籍している。DXとは言葉が異なるものの、この車両が調べたデータなども取り入れた仕組みづくりが進められていると思われる。

↑偶数月の月初めに走る京王線の検査列車。中間にDAXを連結して軌道検測などの検査を行っている

 

【小田急電鉄】5000形増備+3000形をリニューアル

小田急電鉄からは4月28日に2022年度「鉄道事業設備投資計画」が発表された。「安全対策の強化」と「サービスの向上」を重点に、総額263億円の投資が行われるとされた。

 

トップに掲げられた「安全対策の強化」として1日の利用者数10万人以上の駅へ優先的にホームドア整備を推進するとしている。同条件に当てはまる駅としては本厚木駅が上げられ、まずは1・2番線にホームドアの導入を行う。

↑増備が進む小田急5000形(2代目)。ワイドサイズの車体を生かし「車内スペースを拡張し、広さ、明るさ」をより感じる造りに

 

新車増備計画:5000形の増備の一方で1000形の減車が進む

今年度に導入される車両は5000形で10両×3編成が新造される。この新造により1000形の一部が引退となる。特に引退が進められているのは1000形の未更新車と、ワイドドア車だ。ワイドドア車とは、側面の乗降扉が通常(扉幅は1.3m)を扉幅2mに広げた車両で、乗降時間を短くすることを目的に造られた。乗降時間を短くする試みとして成果はあったものの、座席定員数が減ったことが逆に不評だったとされる。

↑1000形ワイドドア車。運転室の後ろの扉以外はみな2mと幅広くされた。写真の1752編成は2021(令和3)年6月に廃車となった

 

1000形のワイドドア車は6両×6編成が走っていたが、2020(令和2)年11月から引退が進められ、最後の車両は、今年の5月に正式に引退となった。ちなみに乗降扉を1.6mと広げつつも、座席数を確保した2000形は今も9編成72両が走り続けている。

 

さらに車両計画では、3000形の6両×3編成をリニューアルするとしている。「省エネルギー化が図られる制御装置の搭載やオイルフリーコンプレッサーへの更新」が行われる予定だ。

 

↑小田急電鉄の主力車両3000形。6両・8両・10両のうち6両編成の車両からリニューアル工事が進められる

 

設備投資計画:横浜線跨線橋などで耐震補強工事が進む

車両以外の設備投資プランとしては中央林間駅の駅舎改良工事(2024年度竣工予定)、町田駅近くに架かる「横浜線跨線橋」や、渋沢駅〜新松田駅間にある「第1四十八瀬川橋梁」の耐震補強工事が行われる予定となっている。

 

【西武鉄道】西武新宿線の複数個所で地下化・立体化が進む

西武鉄道からは5月12日に2022年度「鉄道事業設備投資計画」が発表された。総額245億円で、安全対策、サービス向上、環境対策などの鉄道事業に関しての設備投資を行うとしている。

 

特に今年度は次世代の新宿線を目指し、複数個所での連続立体交差事業をさらに推し進めるとしている。

 

新車増備計画:増備が進む40000系、一方で引退が進む旧型電車

まずは新車両の導入計画から見ていこう。新車両としては「S-TRAIN」用として導入された40000系3編成30両を増備するとしている。40000系は2017(平成29)年3月25日に導入された車両で、クロスシート・ロングシートが転換できるデュアルシートを備えた車両として開発された。すでにデュアルシートを取り入れた0番台が6編成60両を導入。さらにロングシートに固定された50番台の導入が行われ、0番台を超える編成数がすでに走っている。

↑池袋線を走る40000系50番台。座席は固定式のロングシートのみとなっている。主に池袋線での運用が続く

 

西武鉄道では池袋線の特急として登場した001系ラビューが2022年(令和4)年2月までに7編成56両が導入され、池袋線の特急列車の運用についている。新宿線では従来の10000系ニューレッドアローが特急「小江戸」の運用されているが、こちらの後継車両の導入はまだ先のことになりそうだ。

 

40000系の増備で徐々に減る可能性があるのは、やはり新101系ということになるのだろう。新101系は西武鉄道では唯一残る3扉車で、1979(昭和54)年〜1984(昭和59)年製造と〝古参車両〟となっている。多摩川線などを走る路線も限られている。かつての西武鉄道の電車を思わせる赤電復活塗装車、黄色レトロ塗装車が残り人気があるものの、徐々に減りつつある。この3月初旬にも1編成が姿を消した。さらなる引退も進みそうな気配だ。

↑今年の3月初旬で姿を消した新101系の1259編成。最後は赤電復活塗装車として走った。写真は多摩湖線を走った当時のもの

 

【関連記事】
今のうちに乗っておきたい!懐かしの鋼製電車が走る「西武鉄道」の3路線

 

設備投資計画:東京都内で進む西武新宿線の立体化工事

これまで立体交差区間が限られていた新宿線で、新たな立体交差事業が進められている。次の区間だ。

 

◆中井駅〜野方駅間の連続立体交差事業
2014(平成26)年1月、工事に着手したもので、野方駅〜中井駅間2.4kmの地下化工事が進められる。この工事により7か所の踏切が廃止される。予定は本年の計画には記されていないが、2027(令和9)年3月末に完成を目指すとされている。

↑工事が進む新宿線の新井薬師駅〜沼袋駅間。東京都と中野区との共同事業として工事が進められる。完成後はこの区間は地下化される

 

◆東村山駅付近連続立体交差事業
新宿線と国分寺線、西武園線が交わる東村山駅。新宿線の中でも乗り換え利用者が多い駅となっている。この東村山駅周辺を連続高架化して5か所の踏切を廃止することを目指し、2015(平成27)年1月に工事が着手された。事業区間は4.5kmで、中でも線路内で都道を含む5本の道路が交差していた「東村山第1号踏切(通称・大踏切)」の存在が立体化を強く押し進められた原因とされる。今年度は、駅構内と一般部の高架橋構築工事と、新宿線の切替工事を行うとされる。予定では2024(令和6)年度に完成の見込みだ。

↑工事が進む東村山駅の東口。駅前名物の「志村けんの像」のちょうど後ろの駅構内で立体交差工事が進められている

 

新宿線では他に東京都により2021(令和3)年11月に、井荻駅〜西武柳沢駅間が高架方式で立体交差事業を進めることが都市計画決定された。さらに2016(平成28)年3月、野方駅〜井荻駅間に関して、東京都から新規に着工を準備する区間として社会資本総合整備計画に位置づけられている。池袋線に比べて、やや立体化事業の遅れが見られた新宿線。これらの工事の進捗により、近代化された新宿線の姿が将来、見られるだろう。

 

【京浜急行電鉄】いよいよ本格化する品川駅の立体化工事

京浜急行電鉄からは5月11日に2022年度「鉄道事業設備投資計画」が発表された。副題は「さらなる安全対策の強化、ユニバーサルで快適な輸送サービスの提供を目指して」とある。投資金額は総額231億円となる。

 

概要のトップでは「1.さらなる安全対策の強化」として(1)連続立体交差事業の推進(品川駅付近・大師線)、(2)踏切安全対策の強化がうたわれる。同社としては神奈川新町駅に隣接する踏切で2019(令和元)年9月に起きた列車脱線事故があっただけに、安全対策を急ぐことを最初に掲げている。

 

新車増備計画:ブルーリボン賞受賞の新1000形がさらに増備される

同計画では新車両の増備に関して触れられていないが、1000形1890番台の増備は暫時進むと思われる。1000形1890番台はフランス語の〝空〟を意味する「le Ciel(ル・シエル)」という愛称が付けられた。座席がロングシートとクロスシートの転換が可能なデュアルシートが採用され、2022(令和4)年3月26日から運行が開始された。

↑今年の春に登場した1000形1890番台。羽田空港第1・第2ターミナル駅〜逗子・葉山駅間を走ることが多くなっている

 

この1000形1890番台が5月26日、鉄道友の会が選定する今年度のブルーリボン賞に輝いたことが発表された。最高水準の機器類を積極採用、同社で初のトイレ装備車で、さらに通勤・通学のみならず観光・イベントなどチャレンジングな姿勢が評価されたとしている。

 

京浜急行では39年前にあたる2000形(すでに全車引退)以来の2回目にあたる授賞車両となる。投資計画書の中では1000形の増備により、界磁チョッパ制御車の1500形の置き換えが掲げられている。解説によると「車種による運転用エネルギーの違い」の比較では新型は1500形に比べて37%減が実現できるという。2021(令和3)年4月1日現在、1500形は計158両が残っているが、徐々に減っていくことになりそうだ。

 

設備投資計画:北品川開かずの踏切の廃止に向けて立体化が進む

京急の沿線では2区間で連続立体交差事業の推進されている。

 

◆品川駅付近(泉岳寺駅〜新馬場駅間)連続立体交差事業

↑品川駅周辺では複数の駅改良工事が進む。将来は一番西側にある京急の線路は高架から地上に下りる予定となっている

 

2020年度から始められた事業で、泉岳寺駅〜新馬場駅間で3か所の踏切道をなくすように工事が進められている。品川駅〜北品川駅間では高架化し、逆に品川駅では、現在の高架線を地上に下げてホームは2面4線化(現在は2面3線で運用)して利便性の高い駅にするとされる。

 

品川駅付近は多くの交通機関が複雑に交差している。地上部にはJR在来線と東海道新幹線が走り、線路に平行し、西口駅前を国道15号が通る。リニア中央新幹線の品川駅開設の工事も行われ、将来は東京メトロ南北線の線路も延びるとされる。そうした交通の要衝に合わせて踏切道が抜ける北品川駅付近は高架にして、品川駅に至るまで高架線からJRの路線と同じく地平部に降ろす工事が進められる。そして駅構内を抜ける東西自由通路をより使いやすくするなどのプランが立てられている。

 

2022年度も同工事は推進し、2029年度の完了を目指すとされる。進む立体交差事業で品川駅がどのように変わっていくのか興味深い。

↑品川駅〜北品川駅間にある品川第一踏切。京浜急行の電車が徐行する区間とあって立体交差化によりスピードアップが実現する

 

◆大師線連続立体交差事業
他にも大師線での立体交差事業が進められている。すでに東門前駅付近と小島新田駅付近の約980mの区間が地下に切り替えられ、4か所の踏切道が廃止された。残る地上部整備工事や、大師橋駅と小島新田駅の駅舎工事がさらに進められる。

 

首都圏大手6社の事業計画・投資計画を見てきたが、大半の私鉄で、連続立体化交差事業といった大掛かりな事業が進められている。次週は、首都圏大手の残り3社と東海地方・近畿地方・九州地方の私鉄各社の今年度の事業計画・投資計画の注目ポイントを見ていきたい。

ピュアEVでも伝統的なBMWらしさが楽しめる!

気になる新車を一気乗り! 今回はオフロードでの優れた走破性に加え、俊敏なスポーツ走行も可能としたBMWの電気自動車SUVである「iX3」を紹介します。

※こちらは「GetNavi」 2022年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

走りの性能は最新EVに相応しいレベルを確保!

EV

BMW

iX3

SPEC●全長×全幅×全高:4740×1890×1670mm●車両重量:2200kg●パワーユニット:交流電気モーター●最高出力:286PS/6000rpm●最大トルク:40.8kg-m/0〜4500rpm●WLTCモード最大航続距離:508km

 

ほぼ同時期に上陸したBMWの最新ピュアEVでも、iXと比較すれば伝統的なBMWらしさが色濃いのがiX3。そのベースはSUVのX3で、内外装には随所に独自デザインを採用するが、一見する限りEVであることは意識させない。電気モーターはリアに搭載。組み合わせるバッテリーの総電力量は80kWhで、満充電時の最大航続距離は508km。最新のEVらしく高い数値となっている。

 

その走りは、見た目のイメージ通りだ。EVならではの静かさや滑らかな加速を実感させる一方、アクセル操作の反応やスポーティな身のこなしはBMWの伝統に通じる味付け。普段の生活においてEVを楽しみたい、というニーズにはピッタリの1台だ。

 

[Point 1] 内装はX3に準じたスポーティな仕立て

外観と同じく、内装も基本的な作りはX3と変わらない。BMWの内燃機関各車に通じるスポーティなテイストが持ち味となっている。

 

[Point 2] 外観は随所が独自の造形に

外観はMスポーツ仕様ということでスポーティ。随所にブルーのアクセントが入り、EVであることを主張する。税込価格は862万円。

 

[Point 3] 荷室は通常時510Lと十分な広さを確保

エンジンモデルのX3比には若干劣るが、荷室容量は通常時でも510Lと十分な広さ。後席をたたんだ最大時は1560Lまで拡大する。

 

文/小野泰治 撮影/市 健治

 

 

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まさに横綱相撲! 新型ノア/ヴォクシーの使い勝手は究極の域に到達

気になる新車を一気乗り! 今回は今年1月にフルモデルチェンジを果たし、4代目に進化したトヨタの大人気ミニバンである「ノア/ヴォクシー」を紹介します。

※こちらは「GetNavi」 2022年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

走りの面でオススメなのは最新世代のハイブリッド仕様

SUV

トヨタ

ノア/ヴォクシー

SPEC【ヴォクシーS-Z(ハイブリッド2WD)】●全長×全幅×全高:4695×1730×1895mm●車両重量:1670kg●パワーユニット:1797cc直列4気筒DOHC+電気モーター●最高出力:98[95]PS/5200rpm●最大トルク:14.5[18.9]kg-m/3600rpm●WLTCモード燃費:23.0km/L

●[ ]内は電気モーターの数値

新型ノア/ヴォクシーは基本骨格を一新し、運転支援システムも最新モデルに相応しい充実ぶりを誇る。だが、実車に接してとりわけ印象的だったのは使い勝手に配慮した作り込みの徹底ぶりだ。パノラミックと表現したくなる前席の視界の良さや、電動スライドドアに装備できる機械式サイドステップ、そして開口位置を選べるバックドアなど、実用性に優れた細やかな配慮はもはや究極の域。ノアとヴォクシーでは前後の造形でキャラクターを差別化しているが、見た目の洗練度も先代より着実に進化している。

 

パワーユニットは、最新世代となるハイブリッドと2Lガソリンの2本立て。その動力性能は後者でも不足はないが、走らせて楽しいのは間違いなく前者だ。絶対的な力強さに加え、アクセル操作に対する自然な反応は先代より引き締まった足回りにもピッタリ。ハイブリッドは装備まで考慮すると事実上の値下げとなり、コスパの面でも絶対にオススメだ。

 

[Point 1] 先進装備と実用度はトップレベル

視界の良さが特徴のインパネ回りは運転支援システムや使い勝手もハイレベル。2列目シートは3人掛け仕様も設定された。電動スライドドアの助手席側には機械式サイドステップも装備できる。

 

[Point 2] ヴォクシーはノアよりもアグレッシブ

外観がノアよりアグレッシブになるヴォクシーは、基本的なグレード構成もS-ZとS-Gの2種に絞られる。価格はノアの同グレードよりも若干高めの設定だ。

 

[Point 3] 荷室の使い勝手も向上

バックドアの開口位置を選べる(電動と機械式の2タイプ)荷室は容量、形状ともに申し分ない。3列目シートの格納操作も先代より容易になったのはうれしい。

 

[ラインナップ](グレード:エンジン/駆動方式/ミッション/税込価格)

X:2L、1.8L+電気モーター/2WD、4WD/CVT、電気式無段変速/267万円(286万8000円)[305万円(327万円)]

G:2L、1.8L+電気モーター/2WD、4WD/CVT、電気式無段変速/297万円(316万8000円)[332万円(354万円)]

Z:2L、1.8L+電気モーター/2WD、4WD/CVT、電気式無段変速/324万円(343万8000円)[359万円(381万円)]

S-G:2L、1.8L+電気モーター/2WD、4WD/CVT、電気式無段変速/304万円(323万8000円)[339万円(361万円)]

S-Z:2L、1.8L+電気モーター/2WD、4WD/CVT、電気式無段変速/332万円(351万8000円)[367万円(389万円)]

●[ ]内はハイブリッド車、( )内は4WD(E-Four)の価格

 

文/小野泰治 撮影/郡 大二郎

 

 

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バブル期に爆発的人気を獲得したジープ・チェロキーの「グランド」はどう? デカいアメ車の魅力に迫る

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、フルモデルチェンジしたばかりのジープのフラッグシップモデルを、バブル期のチェロキーと比較する!?

※こちらは「GetNavi」 2022年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のGODカー】ジープ/グランドチェロキー

 

SPEC【L リミテッド】●全長×全幅×全高:5200×1980×1815mm●車両重量:2170kg●パワーユニット:3.6LV型6気筒エンジン●最高出力:286PS(210kW)/6400rpm●最大トルク:344Nm/4000rpm●WLTCモード燃費:非公表

788万円〜999万円(税込)

 

ラングラーにお株を奪われたが、デカさと美しさが共存する秀逸なデザイン

安ド「殿! ジープの大型SUV、グランドチェロキーが新型になったとのことで借りてきました!」

 

永福「うむ」

 

安ド「車名に『グランド』が付くだけに、さすがにデカいですね!」

 

永福「思えば『グランド』が付かないチェロキーは、バブル期、女子に大人気であった」

 

安ド「そ……そう言えばそうでしたね!」

 

永福「どんなクルマが好き? と聞かれたときに、女性の5割はチェロキー! と答えたものだ」

 

安ド「それはオーバーでは……」

 

永福「そのチェロキーに代わって、現在大人気となっているのが、超本格派オフローダーのジープ・ラングラーだ」

 

安ド「グランドチェロキーじゃないのですね!」

 

永福「世の中、なぜか本物志向が強まっておる。ジムニーやランクル同様、ラングラーが大人気で、多くの女子が『カッコ良いわ〜』と言っておる」

 

安ド「確かにラングラーはカッコ良いですが、このグランドチェロキーもカッコ良いと思います!」

 

永福「サイズはデカいが、デザインは非常にシンプルで美しい。どこか、かつてのチェロキー的だ」

 

安ド「バブル期に流行ったチェロキーは、もっと小さかったですよね?」

 

永福「2ドアモデルだと、全長はわずか4.2m、全幅1.72m。いまのSUVで言えばホンダのヴェゼルより小さかった」

 

安ド「グランドチェロキーは全長5.2m、全幅はほぼ2mです!」

 

永福「まさにアメリカンサイズだ」

 

安ド「でも、デカいだけあって、3列目シートがあるのがうれしいです!」

 

永福「安ドのパジェロと同じだな」

 

安ド「僕がパジェロを選んだのは、デカくて威張れる3列シート車だったからなんですが、このグランドチェロキーくらいデカいクルマを自由自在にコロがせたら、たぶんモテると思います!」

 

永福「腹が出ていてもか?」

 

安ド「腹が出ていないころにこのクルマに乗っていれば、モテた自信があります!」

 

永福「たしかに、細かいことにこだわらない、デカい男という雰囲気をヒシヒシと感じる」

 

安ド「雄大なわりに、細かいつくりもしっかりとしていますよね」

 

永福「うむ。実にしっかりしておる。自動ブレーキ系をはじめ、必要な装備はすべて付いているし、デカくて重いわりに加速も良い」

 

安ド「エンジンもすごくデカいのかと思ったら、排気量は3.6Lなんですね!」

 

永福「しかもノンターボでこのトルクだ。アメ車の技術をナメたらいかんな。ただ、新型グラチェロは何かが足りない」

 

安ド「何が足りませんか?」

 

永福「すべてが自然にデカいだけで、ラングラーのような特別感がないのだ。身長2mのヒラ社員という感じだろうか」

 

安ド「確かに惜しい感じですね!」

 

【GOD PARTS 1】3列目シート

ボディが大きいゆえにしっかり使えるサイズ

グランドチェロキーとしては初採用となった3列目シートは、ボディサイズの大きさもあってそれなりに大きく、広いスペースが割かれています。前方に折りたたむことで、ラゲッジスペースとして活用することも可能です。

 

【GOD PARTS 2】ステアリング

大きくてもしっかり正確なフィーリングがウリ

大きなボディに合う大きめのステアリングですが、運転してみるとしっかりしたフィーリングが感じられて、正確に反応してくれます。シフト変速をするパドルも付いていますが、手が小さな人だと指が届かないかもしれません。

 

【GOD PARTS 3】逆スラントノーズ

上部が突き出た形状はレジェンドへのオマージュ

1960年代の「ワゴニア」というモデルでは、逆スラントノーズ、つまり上部が長く突き出て、下部が手前に引いた形状が採用されていました。新型グラチェロにもそのデザインが継承され、趣のある顔つきに仕上がっています。

 

【GOD PARTS 4】ロータリーシフトセレクター

シフトレバーをなくした新たな操作部を採用

シフト選択はダイヤル式となり、ついにシフトレバーが姿を消しました。とはいえ、AT車なら運転中はほぼシフトチェンジしませんから、すぐに慣れることでしょう。周囲には走行モード切り替えスイッチなども付いてます。

 

【GOD PARTS 5】2列目シート

リクライニングできるくつろぎ仕様

取材した「L リミテッド」グレードの2列目は3人乗れるので、定員は全席で7人になっています(上位グレードの2列目はセパレート型で乗車定員は6人)。またリクライニングもできるので、身体の大きな人でもくつろげます。

 

【GOD PARTS 6】メーター

小さくするとなんだかかわいい

メーターはデジタル液晶画面を採用しており、アナログ感は皆無。表示は5種類に変化させることができて、スピード/回転計を小さくすることもできます。ボディの大きさを考えると、なんだかかわいく感じます。

 

【GOD PARTS 7】エンジン

重量級ボディを支えるパワー系

大きなボンネットの下に搭載される3.6LV6エンジンは、先代モデルからの改良型。パワフルで重量級のボディをいともたやすく加速させます。今回の取材車は下位グレードとなる「リミテッド」でしたが、エンジンに差異はありません。

 

【GOD PARTS 8】セブンスロットグリル

ジープの伝統が息づくデザイン

縦に長い7本のグリルは、ジープブランドの伝統です。軍用車時代はもう少し本数が多いモデルもあったようですが、戦後になってからは多くのモデルでこの象徴的グリルが採用されています。歴史の重みでクルマの魅力は増しますね。

 

【GOD PARTS 9】レギュラーガソリン仕様

レギュラー仕様がうれしいブランド

エコが叫ばれる昨今、さらにガソリン価格の高騰も続いていて、ますます低燃費車がもてはやされています。大型車はボディが重く燃費性能も良くないですが、ジープブランドは輸入車ながら多くのモデルがレギュラー指定になっています。

 

【これぞ感動の細部だ!】USBソケット

前から後ろまできちんと用意された充電口

1列目から3列目まで各シートごとに2つずつUSBポートが装備されています。しかもそれぞれUSB Type-Aだけでなく、USB Type-C用の差し込み口まであります。ドライブをしていて乗員が全員同時に充電をする光景は想像しにくいですが、充電に対する充実度は、さすがスマホ大国! さすがアメリカ! という印象です。

 

撮影/我妻慶一

 

 

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カスタムカーの祭典「東京オートサロン」で躍動! アウトドア人気を象徴するキャンピングカーの新型モデル6選

昨今のアウトドアやキャンプ人気もあり、キャンピングカーが大人気。「東京オートサロン 2022」でも数多くの新型モデルが展示されていた。これを駆って出かけたくなり、そして泊まりたくなる魅力を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【その1】軽キャンパーのド定番カーエブリィをリフトアップして迫力増!

ドキ商会

NORTH HUNTER “Survivor”

398万円(税込)~

蛍光色をベースとした黄色“ノース・イエロー”を採用。雪道の走行にも耐える、強度を高めた前後のFRPバンパーを採用するなど、東北地方のショップならではの着眼点が目を引く。ハードカーゴ製のキャリアとラダーを搭載し、ルーフ上も最大限に使える工夫も盛り込まれている。ヘッドライトとLEDフォグランプの輝きで精悍さもアップ。

 

↑スズキ・エブリィの広い車内を生かした居室空間。ベッドキット(16万5000円)を敷いてフロントシートを倒せば、大人でもゆったり就寝可能だ

 

↑軽自動車規格の車高2mを越えない範囲でリフトアップさせる、4WDサービスドパック車高調サスペンション。最大3インチまでアップ可能だ

 

【その2】ジムニーの顔をエブリィに装着したその名も“ジムリィ”

T-STYLE AUTO SALES

ジムリィ

133万4300円(税込)~

エブリィ ワゴン/バンのボディにジムニーのフェイス(もちろんスズキ純正パーツ!)を取り付けたうえ、ボンネットの形状も変更しているというこだわりの1台。展示車両はキャンパー仕様で、シートカバー同様のカラーバリエーションが揃ったアンティークベッドキットを搭載する。大人2人がゆったりと寝られる空間だ。

 

↑オプションで用意されているアンティークシートカバーを装着して、趣を感じられる車内空間に。カラーバリエーションは6種類から選ぶことができる

 

↑屋根上にはルーフテントを装着可能。内側サイズはW1300×D2000mmなので、大人2人がゆったり就寝できる。展示車両はボディと同色にペイントされていた

 

↑アンティークベッドキットのほかに、サイドキャビネットを取り付けた車内。引き出しに天面カバーを取り付ければ、テーブルとして使えるのがポイントだ

 

【その3】通気性が高いうえ耐久性にも優れオールシーズン対応

スーリー

Thule Tenpui Explorer Kukenam 3ルーフトップテント

39万6000円(税込)

最大積載荷重75kg以上のクルマに取り付けることができるテント。すべての季節に対応する、紫外線とカビへの耐久性に優れた高品質素材を使用した。周囲のメッシュパネルにより十分な換気を行えるうえ、レインフライを取り外してすべてのパネルを開くことで、さらに通気性を向上できる。カラーはヘイズグレーとオリーブグリーンの2色が揃う。

 

↑収容可能人数は3名だが、2名で余裕ある使い方をするのが大人のキャンパー流。快適な6.5cm厚の高密度マットレスが付属するので、快適に寝ることができる

 

【その4】クルマに連結するだけでマイスペースがあっという間に出現!

CROSS LX

カー+リビングポップアップテント

5万5000円(税込)

デイキャンプや車中泊の際、クルマの後部に取り付けるだけでマイスペースができあがるテント。通気性が高いものの虫の侵入を防げる3面ファスナー付メッシュスクリーンを備える。収納したときのサイズは直径900mm、厚さ100mmとコンパクトで、約8kgの重さなので手軽に運搬可能。設営もひとりで行えるので、ソロキャンパーにオススメのテントだ。

 

↑設営サイズは幅、奥行、高さともに2000mmなので広く使える。チェア1脚と小型のテーブル1台を置く程度なら余裕のサイズだ

 

↑クルマのリアゲートを利用しテントと連結。リアゲートに被せたあとフライシートを被せ、ルーフポールを設置してクルマに固定する

 

【その5】卓越した走破性を誇るデリカD:5を生かしたオシャレキャンパー

M Climb/Weed

デリカD:5 WARLOCK

446万5000円(税込)~

トヨタのハイラックスサーフや三菱・デリカD:5のカスタムを得意とするショップのキャンパー。オリジナルのカラーの一部を残し、インナー部分に塗装を施すことでリーズナブルな価格でカラーチェンジを実現する。「D:5」の文字を大きく象ったフロントグリルが印象的だ。大人2人、子ども2人で就寝可能なテントのSKYCAMPを搭載している。

 

↑大型のボートを積載したスタイル。標準で用意されるカラーは5色。写真のカラーはアーミーグリーンだが、好みの色でボディカラーチェンジをすることもできる

 

【その6】マルチに使えるベルランゴがスマートなキャンパーに変身!

ホワイトハウス キャンパー

ベルランゴ ソレイユ

367万7500円(税込)~

多彩な使い方ができるマルチバン、シトロエン・ベルランゴがベース。余裕ある室内空間を生かし、収納性と利便性を兼ね備えたうえ着脱可能なW1170×D1800mmのフラットベッドを設置。自由にレイアウトでき、5人乗車も可能になることで、街乗りも車中泊でも便利に使える。簡単に操作できるポップアップルーフテントの設置にも対応。

 

↑ベッドの幅は1170mmと広く使いやすい。プライバシー保護のため、すべての窓に車両専用の遮光シェードを装着できるので、着替えや車中泊の際も安心だ

 

↑ルーフをポップアップさせればロフト空間が登場。ベッドサイズはW1100×D1900mmなので、大人2人がゆったりと横になれるベッドスペースになる

 

 

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『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンがEV化して復活! あのガルウィングドアも受け継ぐ

米デロリアン・モーター・カンパニー(DeLorean Motor Company)は、次世代EV(電気自動車)「アルファ5」の写真を公開しました。

DeLorean Motor Company

 

このアルファ5はデロリアンの名前をEVとして復活させつつ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(以下「BTTF」)で有名な『DMC-12』をモチーフとしたもの。おなじみガルウイングドアを備えながら、最高時速250kmに約2.99秒で達するそうです。これは、BTTF版デロリアンがタイムスリップするのに必要な時速88マイル(約142km)までに4.35秒かかる計算です。

 

もともとのデロリアン社は1982年に倒産しており、今や存在していません。その設備や社名の権利を譲り受けた会社が同じ名前を名乗り、今なおDMC-12のオーナーに交換部品を供給し続けているしだいです(1台丸ごと新車を組み立てることも可能)。

 

つまり現在のデロリアン・モーター・カンパニーは元の会社と無関係ですが、今年2月に意味ありげなティザー動画を公開し(下記)、4月にはDMC-12に着想を得た新型EVを開発中であることを発表していたしだいです。

 

アルファ5は100kWhのバッテリーを搭載し、最高時速は250km、1回の充電でおよそ483kmの航続ができるとのこと。これらのスペックは「ベース」モデルだと示唆されていますが、他のモデルや価格については何一つ語られていません。

 

新生デロリアンはガルウィングドアや傾斜したデザインなど先代モデルから引き継ぎつつも、角ばっていたボディラインは滑らかな曲面が主体となったほか、座席も2つから4つへと増やされています。車体はフォルクスワーゲン傘下のデザインチーム、イタルデザインと共同開発されており、大胆にアレンジされながらもDMC-12の面影を残す未来バージョンとなっているようです。

 

デロリアン社は、8月に米国で開催される「ペブルビーチ・コンクールデレガンス」(毎年恒例の自動車事前イベント)でアルファ5の実車を公開する予定とのことです。タイムスリップを実演しそうにありませんが、颯爽と走る姿を見ることを楽しみにしたいところです。

 

Source:DeLorean Motor Company
via:The Verge

鉄道各社「事業計画」の新車両導入&設備投資に注目する【JR編】

〜〜春に発表の鉄道各社2022年度 事業計画〜〜

 

毎年3月から5月にかけて発表される鉄道各社の「事業計画」「設備投資計画」。鉄道会社はコロナ禍により乗客が減るかつてない状況に直面し、利益をどのようにあげていくか対応に追われている。今回はJR各社から発表された事業計画の中で、気になる新車両の導入計画および設備投資を中心に、注目ポイントをピックアップした。

 

【関連記事】
鉄道各社が発表した2021年度「新車両投入」計画を改めてまとめてみた

 

【JR北海道①】H100形、キハ261系の増備が進む

まずは、JR北海道が4月1日に発表した「令和4年度事業計画」を見ていこう。「輸送施設の安全性向上」の中で〝車両故障対策〟として、新車の導入計画に関して触れ、具体的には「H100形電気式気動車の新製によるキハ40形気動車の更新、261系特急気動車の新製投入」をあげている。

 

H100形はJR北海道が初めて導入したディーゼル・エレクトリック方式(電気式)の気動車で、基本設計はJR東日本のGV-E400系気動車と共通化された。2020(令和2)年3月に函館本線などの線区で運用開始以来、増備され運用範囲を広げつつある。

↑函館本線の長万部駅〜小樽駅間などで運用が開始されたH100形。愛称は「DECMO(デクモ)」

 

この新型の増備により入れ替わるのが国鉄形のキハ40形。キハ40形は国鉄時代に生まれた気動車だが、最終盤に造られた車両ですら1982(昭和57)年で、製造されてからすでに40年の歳月が経つ。部品の調達も難しくなりつつあり、JR北海道では故障への対応にも頭を痛めていた。2022(令和4)年4月1日の段階で北海道内にはキハ40形76両が在籍しているが、H100形(すでに各地に75両を配置)の一層の増備で、キハ40系の削減の波が強まりそうだ。

 

一方、事業計画に記された「261系」とは「キハ261系」のこと。キハ261系は特急形気動車で、1998(平成10)年から札幌駅〜稚内駅間を走る特急「スーパー宗谷」(現在は「宗谷」に特急名変更)に導入された。その後に、改良タイプが生み出され、徐々に運用範囲が広げられていった。

 

JR北海道では併用するようにキハ281系、キハ283系といった振子式の特急形気動車が使われてきたが、こちらは製造費用が割高で、走行中に火災が起きるなどのトラブルもあり、またメンテナンスに手間がかかるなどの問題を抱えていた。両形式を進化させたキハ285系も試作されたが、正式な導入を断念した経緯がある。対してキハ261系は新造費用も割安で、性能も安定しており、今やJR北海道にとって欠くことのできない特急形気動車になりつつある。

↑道内の主力となるキハ261系特急形気動車。写真の特急「北斗」も同車両のみとなりそうだ。789系(左)も重要機器取替工事が進む

 

2022(令和4)年3月11日には、キハ283系による特急「おおぞら」の運行が終了となり、「おおぞら」はすべてキハ261系に置き換えられた。キハ261系以外で運行される特急は、キハ281系で運行の特急「北斗」とキハ183系で運行の特急「オホーツク」「大雪」のみとなっている。「北斗」はすでにキハ261系での運行が大半を占めており、「北斗」に残るキハ281系での運用は今年度いっぱいで終了ということになりそうだ。

↑内浦湾沿いを走る特急「北斗」キハ281系。優秀な振子式車両だったが、2022年度中に姿を消すことになりそうだ

 

ちなみ事業計画では「789系特急電車や201系気動車等の重要機器取替工事を推進する」とある。既存車両の機器の更新も進められることになる。

 

【JR北海道②】北海道新幹線の延伸で始まる札幌駅の改良工事

「事業計画」の「(2)経営基盤の強化」の項目の中では「①収益の確保」を目指す鉄道事業として「観光列車で新たな観光需要の創出を図る」としている。

 

あげられた観光列車は「花たび そうや」号や「THE ROYAL EXPRESS」、「HOKKAIDO LOVE!ひとめぐり号」で、この3列車の運行を実施するほか、SL客車のリニューアルを実施するとある。北海道の自然や観光資源を活かすために、こうした観光列車を有効に生かしたい方針のようだ。

 

また「北海道新幹線の取り組み」に関しても事業計画で触れている。令和4年度には、新幹線延伸に向け札幌駅工事が本格化する。札幌駅では11番線ホームの新設工事、南北乗換こ線橋工事、東西連絡通路工事、新幹線高架橋増設工事、耐震補強工事が始まる。ほか、新幹線が延伸される沿線では函館本線の倶知安駅、長万部駅の支障移転工事も進められる予定だ。

↑札幌市の表玄関、札幌駅。北海道新幹線延伸のため、同駅の改良工事が今年度から始められる予定だ

 

事業計画では、北海道新幹線札幌延伸の効果が現れる令和13年度の経営自立を目指すとしている。あとはお金がかかる青函トンネルの修繕業務や、閑散路線の運営をいかにしていくかであろう。

 

閑散路線の中で、具体的には「留萌線(深川〜留萌間)、根室線(富良野〜新得間)の早期の鉄道事業廃止及びバス転換を目指す」としている。これ以外にも採算の取れない赤字路線が多い北海道。こうして年々不採算路線の廃線ということを進めていかざるをえない現状も、非常に気になるところである。

 

【JR東日本①】ワンマン運転が進む閑散路線

JR東日本からは4月27日に「設備投資計画」が発表された。同計画には「輸送サービスの変革」として車両の新造計画および、設備投資の具体例があげられている。

 

まず新車両としては、山形新幹線用のE8系を新造し、2024年春の営業開始を目指すとしている。現在、同線の車両はE3系の1000番台と2000番台が使われている。E3系1000番台は新庄駅へ延伸された1999(平成11)年に合わせて新造された。新幹線の車両の寿命は15〜25年とされ、この年数を目処に入れ替えが行われる。E8系の新造はこの寿命を念頭に置いてのものとなる。

 

また、具体的な形式名は記していないものの、「ワンマン運転の拡大やBRTの自動運転の実施に向けた対応」もあげられている。JR東日本管内でワンマン運転は、このところ急速に進みつつある。ワンマン運転に対応したE131系電車が開発されたことが大きい。まず、2021(令和3)年3月13日に房総地区に導入されたのがE131系の0番台だった。さらに2021(令和3)年11月18日には500番台・580番台が相模線に導入され、205系すべての置き換えが完了している。

 

さらに、今年の3月12日には、宇都宮周辺を走る東北本線の宇都宮駅(一部は小山駅)〜黒磯駅間と、日光線用に600番台・680番台が導入され、すでに両区間のほとんどの列車がE131系での運用となっている。

↑3月に宇都宮地区に導入されたE131系600番台・680番台。ワンマン運転に合わせた種々の機器を備えている

 

導入された線区は比較的、利用者が少なく編成の車両数が少ない閑散路線が多いが、他線区でも車掌が同乗しないワンマン化された列車が検討されていくことになるのだろう。

 

【JR東日本②】中央快速線のグリーン車導入は想定外の延期に

JR東日本では、2023年度末に中央快速線のグリーン車の連結を予定していた。長くなる編成のために各駅のホームの延長工事などがすでに進められている。今年度の事業計画では、このサービス開始が少なくとも1年程度遅れる見込みということが発表された。

 

その理由としてあげられたのが半導体不足の影響だ。自動車と同じように鉄道車両にも半導体が使われている。世界的な半導体不足が、こうした鉄道車両の製造にも影響し、新車両の導入や増備も遅れが出ているわけだ。

↑導入時期が延びた中央線快速電車のグリーン車両の増結。すでに快速線の各駅のホームの延伸工事も進められているが……が

 

【JR東日本③】時間短縮を目指して改良工事が進む新幹線

東日本の新幹線網の中で、たとえば東北新幹線の宇都宮駅〜盛岡駅間は最高時速320kmでの運転が行われている。一方、盛岡駅〜新青森駅間は整備新幹線として造られたこともあり、最高時速が260kmに抑えられている。これは国が設けたスピード規制で、設備もこれに合わせて造られている。

 

JR東日本の「設備投資計画」では、「東北新幹線(盛岡・新青森間)・上越新幹線(大宮・新潟間)のスピードアップに向けた工事を引き続き進め」としている。具体的に騒音対策工事などを進め、国が設けた整備新幹線のスピード規制を時代に合うように検討・変更を求める、ということになる。

 

さらに「大規模地震対策や新幹線降雨防災対策を進めていく」と記されている。今年の3月16日には東北新幹線の福島駅〜仙台駅間が「福島県沖地震」の影響で約1か月の不通を余儀なくされた。今後、こうした大規模な地震への対応が不可避であることが改めて確認された形となった。

↑新青森駅近くを走る東北新幹線E5系。盛岡駅〜新青森駅間は路線開設時から最高時速260kmで運転されている

 

【JR東海①】東海道新幹線ではN700Sの増備が進む

JR東海からは3月24日、「2022年度重点施策と関連設備投資について」と題した投資計画が発表された。JR各社の中で唯一、増備する車両の数まで明記した計画書となっている。

 

この計画の中で「輸送サービスの充実(1)」として車両に関して触れている。JR東海らしく、東海道新幹線をより充実させたいという思いが見てとれる。

 

具体的には「『のぞみ12本ダイヤ』を活用して、需要にあわせた弾力的な列車設定に取り組む」としている。のぞみ12本ダイヤとは、東京駅〜新大阪駅間の列車本数を1時間に最大12本にするプランのこと。主力車両をN700Aタイプにしたことによって、2020(令和2)年3月のダイヤ改正で可能になった。JR東海では、2022年度中に新たにN700Sを13編成投入する。さらに既存のN700Aタイプに、N700Sが持つ一部機能を追加する改造工事を進める。要はこれらの対応によって「のぞみ12本ダイヤ」を、より余裕をもって実施したいという思いがあるのだろう。

↑JR東海が開発したN700S。東海道新幹線を走る姿はすでに珍しいものではなくなりつつある。2023年度までに40編成が投入の予定

 

【JR東海②】非電化区間用の特急HC85系が7月にデビュー

2019(令和元)年12月に製造されたHC85系の試験走行車。HC85系はハイブリッド式の特急形気動車で、長期にわたって試験が進められてきたが、その成果を生かした量産車が新造され、7月初めから特急「ひだ」として走り始める。

 

事業計画によるとHC85系は2022年度に58両が投入される予定で、テストに使われた試験走行車も量産車仕様に改造されるとある。最終的に2023年度までに64両が投入される予定だ。

 

現在、既存のキハ85系により運転されているのは特急「ひだ」と特急「南紀」で、名古屋車両区に計84両(2022年4月1日現在)が配置されている。このキハ85系のほとんどがHC85系の導入により、入れ換えになりそうだ(臨時列車用の予備車を除く)。

↑名古屋車両区に停まるHC85系試験走行車。右は「ドクター東海」の愛称が付くキヤ95系で、軌道と路線の電気関係の検測を行う

 

ちなみに名古屋車両区では上記写真のようにHC85系とキヤ95系が並ぶ姿が見られた。今年度の計画の中にはキヤ95系の「検査車両の機能向上等による検査方法の見直し」も含まれている。キヤ95系ドクター東海は今後も、改良され、さらに効率よく検査に使われることになりそうである。

 

【JR東海③】315系が増備される一方で211系が削減対象に

3月5日に導入された新型315系通勤形電車。すでに中央本線の名古屋駅〜中津川駅間を往復している。この315系の追加投入計画が発表された。今年度中に56両が投入される。以降、2025年度まで352両が新造される。入れ替わるように3月のダイヤ改正までに既存の211系の基本番台1000・2000・3000番台が廃車となった。JR東海には4月1日現在、JRになって以降に造られた211系5000番台以降の230両が残っている。これらの入れ替えとともに、211系の2扉バージョン213系(28両)と311系(60両)も入れ替えということになりそうだ。

 

全車両の入れ換えが完了した後には、JR東海の通勤形電車は313系と315系の2形式のみになる。

↑3月に中央本線を走り始めた315系。8両編成での運行となる。313系以降、約20年ぶりの新形式の導入となった

 

【JR西日本】岡山地区の国鉄形電車の入れ替えが始まる

JR西日本からは、4月1日に「事業適応計画」、および2020(令和2)年秋に「JR西日本グループの中期経営計画2022」が発表されているが、具体的な車両導入計画が入っていない。そこで、ここでは最近に同社から発表された新車両導入の中で目立つものを取り上げておきたい。

 

5月10日にJR西日本から発表されたのが岡山・備後エリアに導入される新型車両227系近郊形電車の情報で、2023年度以降に2両・3両編成計101両が導入される。デザインコンセプトは「豊穏(ほうおん)の彩(いろどり)」とされた。

↑新快速電車として一世を風靡した117系が濃黄色に塗り替えられ岡山地区を走る。同車両も227系増備で引退となるのだろうか

 

岡山地区はJR西日本管内の中でも、国鉄形電車の宝庫で、現在岡山電車区には113系が52両、115系が157両、117系は24両、213系28両、105系14両が配置される。これらの国鉄形が227系導入後、すべてが入れ替えとはならないものの、広島地区と同じように徐々に新形式の車両と入れ替わっていくことになりそうだ。

 

【JR四国①】早くも好評!2代目・伊予灘ものがたりが登場

JR四国からは3月31日に「2022年度事業計画」が発表された。この計画の中で、新車両の導入計画の記述はなかったものの、「収益のリカバリー」をするために、新たな観光列車「伊予灘ものがたり」の運行開始を一例にあげている。

↑大洲城を背景に走る2代目「伊予灘ものがたり」。週末を中心に松山駅〜伊予大洲駅間と、松山駅〜八幡浜駅間を各1往復走る

 

今年の4月2日から走り始めた「伊予灘ものがたり」は、同列車の2代目にあたる。初代はJR四国初の本格的な観光列車として2014(平成26)年7月26日に走り始めた。初代はキハ47形からの改造車だったが、4月から走り始めた2代目は、特急形気動車のキハ185系3両を改造し、全席グリーン車特急とし、さらに松山側の3号車は定員8名が利用できるスイート「陽華(はるか)の章」とした。予約状況を見ると満席の列車も多く順調にスタートとしたように見受けられる。

 

JR四国では初代・伊予灘ものがたりの運行が成功したことにより、その後に多くの観光列車を運行して成果をあげている。JRグループの中でも経営状況が厳しいとされるJR四国やJR北海道は、こうした魅力ある観光列車を活発に運行させることも、生き残るために必要だと思われる。

 

JR四国からは設備投資計画の中で、具体的な形式名はあげられなかったものの、「特急電車のリニューアル」「ワンマン運転拡大のための車両改造」等をあげている。ワンマン運転拡大は、JR東日本でも課題としてあげられていた。ワンマン化のための車両改造も今後、各社で増えていくことになるのだろう。

 

【JR四国②】松山駅や高松駅などで改良工事が進められる

JR四国の計画で、ほかに注目されたのが主要駅の改造工事であろう。

 

まずは松山駅で、現在高架化工事がすでに始められている。駅に隣接していた松山貨物駅が場所を移動し、高架化された後には、駅の高架下に伊予鉄道の路面電車が乗り入れるという計画も立てられている。

 

高架化された駅の下に路面電車を走らせるプランはすでに、JR西日本の富山駅で実現しているが、これにより街がより活性化されたように思われる。JR四国では「松山駅周辺開発の検討深度化」という文章で表現しているが、高架化に加えて周辺開発を進めることは、街を活性化する取り組みとして有効のように思われる。

↑松山市の玄関口でもあるJR松山駅。付近ではすでに高架化に向けて工事が始まっている。事業完了は2024(令和6)年度の予定

 

さらにJR四国では現在の高松駅の駅舎に隣接して、高松駅ビル(仮称)の開発推進を事業計画の中であげている。

↑現在の高松駅駅舎。この右側に直結する形で新しい高松駅ビル(仮称)が建設される予定となっている

 

【JR九州】西九州新幹線開業に関わる車両の増備が進む

JR九州からは「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」が3月23日に発表された。今年度に限定したものではないが、9月23日に開業予定の西九州新幹線と、新たに在来線の武雄温泉駅〜長崎駅間を走り出す新D&S列車「ふたつ星4047」に関して取り上げている。また2023(令和5)年秋に完成予定の新長崎駅ビル開発に関しても触れられている。

↑大村線に導入されたYC1系。この導入により国鉄形キハ66・67系が引退した。長崎本線の電化廃止区間も同形式が使われる

 

具体的な車両導入計画は記されなかったものの、JR九州では、西九州新幹線の開業に合わせて着々と在来線用の車両の準備を進めている。

 

たとえば、新幹線に平行して走る在来線の長崎本線・肥前浜駅〜長崎駅間の電化は9月23日以降に廃止される予定だ。現在は817系などの交流電車で運行される同区間の普通列車だが、電車に代わり走るのがYC1系気動車となる。YC1系はすでに2020(令和2)年3月に大村線に導入されている。ディーゼル・エレクトリック方式と、蓄電池を併用して走るハイブリット方式の車両だが、長崎本線用にも増備が進められている。

 

西九州新幹線の開業にあわせ、長崎県内の路線網を走る列車や車両が、大きく変わっていきそうである。

 

【JR貨物①】EH500形式が日本海縦貫線走行用に改良される

最後は3月31日に発表されたJR貨物の「2022年度 事業計画」を紹介したい。鉄道貨物輸送といえば電気機関車、ディーゼル機関車が主役となるが、機関車に関して注目したい、いくつかの情報が同計画に盛り込まれている。

↑東北本線の貨物輸送の主役といえばEH500形式。その一部が日本海縦貫線も走れるように改造が加えられる

 

まずはEH500形式の改造から。現在、EH500形式は青森から以南の東日本各地と、北九州地域の貨物輸送をカバーしているが、東北〜首都圏間の走る路線は東北本線にほぼ限られていた。

 

EH500形式はいわば東日本では〝東北本線専用車〟となっていたのだが、日本海縦貫線も迂回して走ることができるように18両の改造を行った。現在、本州のEH500形式は仙台総合鉄道部に67両が配置されているが、このうち約3分の1弱にあたる車両が、迂回運転が可能なように手を加えられた。日本海縦貫線の主力車両といえばEF510形式のみだったが、合わせてEH500形式も走れるように変更されたのである。

 

なぜ迂回運転を可能にしたのだろう。これは自然災害に備えての物流ルートの確保という側面が強い。首都圏と、東北・北海道を結ぶ貨物輸送の幹線にあたる東北本線。同線がもし災害で不通になったら、東日本の物流が停まってしまう。そうならないように事前に対応しておこうというわけである。すでに改造を終えたEH500形式による日本海縦貫線と上越線を使っての試運転も始まっている。

 

【JR貨物②】DD200形式などの新型機関車の増備が進む

新型機関車の導入に関しては「省エネを推進する設備投資」として2形式を掲げている。まずは電気式ディーゼル機関車DD200形式の導入を図るとしている。このDD200形式は、国鉄形のDE10形式に代わるもので、すでに石巻線や、各地の貨物支線での運行が引き継がれた。

↑拝島駅〜横田基地間を走る通称〝米タン輸送〟もこの3月からはDD200形式の牽引に変更された

 

ほかに一形式の導入が事業計画で記されている。それがEF510形式301号機で「交流回生ブレーキ機能を装備した機関車」として九州へ導入された。301号機は九州用のEF510形式の先行試験車として、すでに北九州貨物ターミナル駅〜福岡貨物ターミナル駅間を、実際に貨車を牽引しての試験運転が続けられている。

 

【JR貨物③】国鉄時代生まれの機関車の引退が進む

導入が進むDD200形式、EF510形式の新造に加えて、事業計画には記していないもののEF210形式300番台の増備が進む。これらの導入にあわせて、古い国鉄形機関車の引退が進められている。

 

この春に鉄道ファンの間で大きな話題を呼んだのがEF66形式27号機の引退であろう。EF66形式の中で唯一となった国鉄時代から運行していた車両の引退は、国鉄形機関車の終焉が近づいていることをより印象づけた出来事となった。

↑首都圏でもその元気な姿を見せたEF66形式27号機。写真は武蔵野線でのこと。ダイヤ改正後も臨時便を牽引するなどしていた

 

EF66形式以外にも、EF64形式はその活躍の場が急速に減少している。主力機として活躍してきた中央西線の輸送も、3月ダイヤ改正後はEH200形式とEF510形式が入線するようになったため牽引する列車が減ってしまった。

 

3月以降にEF64形式の独壇場となっているのが伯備線だ。とはいえ、こちらもコロナ禍の影響による積み荷の減少で、通常に運行されるはずの貨物列車が運休となることもあり、沿線を訪れた鉄道ファンをやきもきさせている。

↑EF64が2両連結で走ることも(倉敷駅5月20日の撮影)。2両目はパンタグラフをあげておらず、無動力で走る姿が見られた

 

九州用のEF510形式が導入されたことにより、今後影響を受けるのが九州地区で活躍してきた国鉄形機関車であろう。鹿児島本線、長崎本線、日豊本線では、少なからず国鉄形機関車を使っての貨物輸送が行われている。

 

貨物列車を牽引するのはEF81形式と、ED76形式の2形式だ。特にED76形式の中には、貴重な基本番台の81号機、83号機といった車両も残っている。このうちED76形式81号機は1975(昭和50)年3月の落成とすでに50年近い年期を誇る。こうしたベテラン機関車もEF510系が新たに導入されることで、引退の道を歩むことになるのだろう。

↑福岡貨物ターミナル駅行き列車を牽引するEF81形式とED76形式。このように重連という形で走る姿もまだ見ることができる

 

【JR貨物④】東京と札幌でレールゲートの新設が進む

コロナ禍の中でも、1日たりとも休まず国内の物流を支えてきたJR貨物。最近は一層のモーダルシフト化が進み、鉄道貨物輸送にかかる比重が高まっている。今年度の事業計画でも触れられているように「貨物駅の結節点機能の強化」として種々の整備が進められている。

 

具体例としてはマルチテナント型の物流施設「レールゲートの全国展開」があげられている。すでに東京貨物ターミナル駅に隣接して2020(令和2)年2月に「東京レールゲートWEST」を建設、さらに東側に「東京レールゲートEAST」が、この7月に竣工予定で、その機能が一層強化される。

 

さらに「DPL札幌レールゲート」が2022年度上半期の完成予定で、ほか新仙台貨物ターミナル駅での建設計画も進められている。レールゲートほど大規模ではなくとも、新座貨物ターミナル駅(埼玉県)などで積替ステーションの拡充も多くの貨物駅で行われている。

↑大規模なマルチテナント型物流施設として生まれた「東京レールゲートWEST」。この右側に新たにEASTが設けられる

 

ここ数年は1つの物流事業者や荷主企業が、1往復する列車を専用で利用する「ブロックトレイン」が増えてきている。佐川急便、福山通運、西濃運輸、トヨタ自動車といった会社がJR貨物と協力して運行させているケースが多い。3月のダイヤ改正でもさらにブロックトレインが増便された。ドライバー不足の時代に「ブロックトレイン」のニーズはますます加速していきそうだ。

 

JR旅客各社が乗客減少に悩む昨今、JR貨物は堅実に経常利益をあげ続けている。こうした傾向が顕著に現れる時代も珍しい。時代の推移に合わせて、春に発表される事業計画を見ていると各社の考え方の相違が見えてくることもあり、なかなか興味深い。

 

マルチに使える「ベルランゴ」がスマートなキャンパーに変身!

昨今のアウトドアやキャンプ人気もあり、キャンピングカーが大人気。「東京オートサロン 2022」でも数多くの新型モデルが展示されていた。今回は、オリジナルキャンピングカーを販売するホワイトハウス キャンパーのポップアップルーフを装備したシトロエン「ベルランゴ」を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

ホワイトハウス キャンパー/ベルランゴ ソレイユ

367万7500円(税込)~

多彩な使い方ができるマルチバン、シトロエン・ベルランゴがベース。余裕ある室内空間を生かし、収納性と利便性を兼ね備えたうえ着脱可能なW1170×D1800mmのフラットベッドを設置。自由にレイアウトでき、5人乗車も可能になることで、街乗りも車中泊でも便利に使える。簡単に操作できるポップアップルーフテントの設置にも対応。

 

↑ベッドの幅は1170mmと広く使いやすい。プライバシー保護のため、すべての窓に車両専用の遮光シェードを装着できるので、着替えや車中泊の際も安心だ

 

↑ルーフをポップアップさせればロフト空間が登場。ベッドサイズはW1100×D1900mmなので、大人2人がゆったりと横になれるベッドスペースになる

 

 

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卓越した走破性を誇る「デリカD:5」を生かしたオシャレキャンパー

昨今のアウトドアやキャンプ人気もあり、キャンピングカーが大人気。「東京オートサロン 2022」でも数多くの新型モデルが展示されていた。今回は、トヨタ車を中心としたカスタム・ユーズド&新車コンプリートを提案してきたM Climb/Weed(エムクライム/ウィード)の「デリカD:5」を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

M Climb/Weed/デリカD:5 WARLOCK

446万5000円(税込)~

トヨタのハイラックスサーフや三菱・デリカD:5のカスタムを得意とするショップのキャンパー。オリジナルのカラーの一部を残し、インナー部分に塗装を施すことでリーズナブルな価格でカラーチェンジを実現する。「D:5」の文字を大きく象ったフロントグリルが印象的だ。大人2人、子ども2人で就寝可能なテントのSKYCAMPを搭載している。

 

↑大型のボートを積載したスタイル。標準で用意されるカラーは5色。写真のカラーはアーミーグリーンだが、好みの色でボディカラーチェンジをすることもできる

 

クルマに連結するだけでマイスペースがあっという間に出現!

昨今のアウトドアやキャンプ人気もあり、キャンピングカーが大人気。「東京オートサロン 2022」でも数多くの新型モデルが展示されていた。今回はサーフボックス、シエンタアウトドアスタイルなどを展開しているCROSS LXブランドの新製品「カー+リビング ポップアップテント」を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

CROSS LX/カー+リビングポップアップテント

5万5000円(税込)

デイキャンプや車中泊の際、クルマの後部に取り付けるだけでマイスペースができあがるテント。通気性が高いものの虫の侵入を防げる3面ファスナー付メッシュスクリーンを備える。収納したときのサイズは直径900mm、厚さ100mmとコンパクトで、約8kgの重さなので手軽に運搬可能。設営もひとりで行えるので、ソロキャンパーにオススメのテントだ。

 

↑設営サイズは幅、奥行、高さともに2000mmなので広く使える。チェア1脚と小型のテーブル1台を置く程度なら余裕のサイズだ

 

↑クルマのリアゲートを利用しテントと連結。リアゲートに被せたあとフライシートを被せ、ルーフポールを設置してクルマに固定する

 

 

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通気性が高いうえ耐久性にも優れオールシーズン対応のルーフトップテント

昨今のアウトドアやキャンプ人気もあり、キャンピングカーが大人気。「東京オートサロン 2022」でも数多くの新型モデルが展示されていた。今回はスーリーのルーフトップテント「スーリー テプイ エクスプローラー クケナム 3」を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

スーリー/Thule Tenpui Explorer Kukenam 3 ルーフトップテント

39万6000円(税込)

最大積載荷重75kg以上のクルマに取り付けることができるテント。すべての季節に対応する、紫外線とカビへの耐久性に優れた高品質素材を使用した。周囲のメッシュパネルにより十分な換気を行えるうえ、レインフライを取り外してすべてのパネルを開くことで、さらに通気性を向上できる。カラーはヘイズグレーとオリーブグリーンの2色が揃う。

 

↑収容可能人数は3名だが、2名で余裕ある使い方をするのが大人のキャンパー流。快適な6.5cm厚の高密度マットレスが付属するので、快適に寝ることができる

 

ジムニーの顔をエブリィに装着したその名も“ジムリィ”!

昨今のアウトドアやキャンプ人気もあり、キャンピングカーが大人気。「東京オートサロン 2022」でも数多くの新型モデルが展示されていた。今回は神奈川県・T-STYLE AUTO SALESのエブリィ ワゴン/バンベースの「ジムリィ」を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

T-STYLE AUTO SALES/ジムリィ

133万4300円(税込)~

エブリィ ワゴン/バンのボディにジムニーのフェイス(もちろんスズキ純正パーツ!)を取り付けたうえ、ボンネットの形状も変更しているというこだわりの1台。展示車両はキャンパー仕様で、シートカバー同様のカラーバリエーションが揃ったアンティークベッドキットを搭載する。大人2人がゆったりと寝られる空間だ。

 

↑オプションで用意されているアンティークシートカバーを装着して、趣を感じられる車内空間に。カラーバリエーションは6種類から選ぶことができる

 

↑屋根上にはルーフテントを装着可能。内側サイズはW1300×D2000mmなので、大人2人がゆったり就寝できる。展示車両はボディと同色にペイントされていた

 

↑アンティークベッドキットのほかに、サイドキャビネットを取り付けた車内。引き出しに天面カバーを取り付ければ、テーブルとして使えるのがポイントだ

 

 

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軽キャンパーのド定番カー「エブリィ」をリフトアップして迫力増!

昨今のアウトドアやキャンプ人気もあり、キャンピングカーが大人気。「東京オートサロン 2022」でも数多くの新型モデルが展示されていた。今回は青森県・ドキ商会のエブリィベース「NORTH HUNTER“Survivor”」を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

ドキ商会/NORTH HUNTER “Survivor”

398万円(税込)~

蛍光色をベースとした黄色“ノース・イエロー”を採用。雪道の走行にも耐える、強度を高めた前後のFRPバンパーを採用するなど、東北地方のショップならではの着眼点が目を引く。ハードカーゴ製のキャリアとラダーを搭載し、ルーフ上も最大限に使える工夫も盛り込まれている。ヘッドライトとLEDフォグランプの輝きで精悍さもアップ。

 

↑軽自動車規格の車高2mを越えない範囲でリフトアップさせる、4WDサービスドパック車高調サスペンション。最大3インチまでアップ可能だ

 

↑スズキ・エブリィの広い車内を生かした居室空間。ベッドキット(16万5000円)を敷いてフロントシートを倒せば、大人でもゆったり就寝可能だ

 

 

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京の四季が堪能できる「叡山電鉄・鞍馬線」を深掘りする

おもしろローカル線の旅85〜〜叡山電鉄・鞍馬線(京都府)〜〜

 

京都の洛北(らくほく)を走る叡山電鉄(えいざんでんてつ)には、叡山本線と鞍馬線(くらません)の2本の路線がある。前回の叡山本線に引き続き、今回は鞍馬線の旅を楽しんでみたい。

 

鞍馬川に沿って走る鞍馬線は、京都市内の路線ながら洛北の山中を走る。車窓風景は見事で特に「もみじのトンネル」が名物となっている。沿線に名高い寺社や史跡もあり、京の四季を堪能できる。

 

【関連記事】
古都の人気観光電車「叡山電鉄」を深掘りする【前編】

 

【叡電を深掘り①】本線のように賑わう「鞍馬線」だが

叡山電鉄・鞍馬線の概要をおさらいしておこう。

 

叡山電鉄には叡山本線と鞍馬線の2本があり、叡山本線は出町柳駅〜八瀬比叡山口駅5.6km間を走る。一方、鞍馬線は叡山本線の途中駅、宝ケ池駅と鞍馬駅間の8.8kmを結ぶ路線だ。鞍馬線の電車はほとんどが出町柳駅の発車で、宝ケ池駅まで叡山本線を走る。

 

鞍馬駅行き電車はすべて2両編成。対して叡山本線の八瀬比叡山口駅行きの電車が1両編成。鞍馬行き電車の方が乗車率が高くこちらが本線のように感じてしまうのだが、あくまで鞍馬線が支線である。

 

路線の歴史は叡山本線の方が古く1925(大正14)年9月27日に開業した。京都電燈という電力会社によって造られている。一方、鞍馬線は叡山本線から遅れること3年、1928(昭和3)年12月1日に山端駅(やまばなえき/現・宝ケ池駅)〜市原駅間が開業、1929(昭和4)年12月20日に鞍馬駅まで路線が延ばされている。

 

鞍馬線は叡山本線とは異なり、京都電燈と京阪電気鐵道の合弁会社として設けられた鞍馬電気鐵道により路線が設けられた。線路はつながっているのにもかかわらず、運営は会社が異なるという、やや複雑な生い立ちを持つ。

 

【叡電を深掘り②】いろいろな会社名が出てくる戦前の路線図

叡山本線と鞍馬線は、古くから観光路線として親しまれただけに、路線パンフレットが数多く作られ配布された。特に太平洋戦争前に作られたものが多く、筆者も複数のパンフレットを所有している。興味深い内容なので、やや寄り道になるが見ておこう。

↑戦前に発行された路線パンフレット3枚。下のパンフは「叡山鞍馬電車」とあり、右上は「叡山・嵐山電車」とある

 

まずは叡山本線と鞍馬線を紹介した「叡山鞍馬電車」のパンフレット。表紙には〝大原女(おはらめ)〟のイラストが描かれていて趣深い。叡山・嵐山電車の名前で印刷された「春爛漫」なるパンフレットは、ロープウェイの下に桜が描かれ、これもなかなか味がある。

 

とはいえ、パンフレットが発行した鉄道名を見ると「叡山鞍馬電車」のみならず、「叡山・嵐山電車」、「叡山・嵐山・電車」とさまざま。これは叡山本線を開業させた京都電燈が、現在の京福電気鉄道嵐山本線・北野線(通称:嵐電/らんでん)を吸収合併していたためで、後者は叡山鞍馬電車とともに〝嵐山電車〟も一緒にパンフとしてまとめたものだった。

 

さらに、京都では叡山鞍馬電車を「叡電」「叡山電車」という通称名で呼ぶ傾向もあった。ここまで「〜電車」という名が乱発気味に使われていると、果たして利用者が、迷わなかっただろうか心配してしまうほどだ。

 

【叡電を深掘り③】集中豪雨で1年以上不通となっていた

1929(昭和4)年12月20日に鞍馬駅まで全通した鞍馬線だったが、その後の1942(昭和17)年8月1日に京福電気鉄道鞍馬線に、1986(昭和61)年4月1日に叡山電鉄鞍馬線と組織名を変更する。

 

観光客に人気の鞍馬線だが、路線が鞍馬川の渓谷沿いの険しい場所を通ることもあり、水害の影響をたびたび受けてきた。古くは1935(昭和10)年6月29日に起きた鴨川水害による被害で、この時は7月末に復旧した。その後、長らく水害の影響はなかったものの、地球温暖化のせいなのか、近年はたびたび被害を受けている。

 

まずは2018(平成30)年9月4日に列島を襲った台風21号により、鞍馬線全線が運休、宝ケ池駅〜貴船口駅間は9月中に運転再開したものの、貴船口駅〜鞍馬駅間の復旧が手間取り、10月27日に全線復旧を果たしている。そして「令和2年7月豪雨」に襲われる。この豪雨の影響は深刻だった。

↑鞍馬川沿いを走る鞍馬線。令和2年7月豪雨の際は、貴船口駅の南側地点200m地点(写真の左手にあたる)で土砂崩れが起きた

 

鞍馬線は貴船口駅の前後が、最も地形が険しい。線路はこの地域、鞍馬川の西斜面に沿って右に左にカーブを切りつつ走る。2020(令和2)年7月7日から翌8日未明にかけて京都市北部を襲った局地的集中豪雨により、鞍馬線の二ノ瀬駅〜貴船口駅間の斜面が崩落、60mほどの区間が土砂に埋まった。

 

当時、上空から撮影した航空写真を見ると山側の樹木がすべてなぎ倒されて、線路を埋め尽くした様子が見て取れる。筆者は前年の12月に現地を訪れ、貴船口駅付近を走る電車の姿を撮りつつ、その険しさに驚いたものだったが、ちょうど撮影した7か月後、すぐ近くで大規模崩落が起きていた。この土砂崩れにより、鞍馬線は市原駅〜鞍馬駅間が長期間の不通を余儀なくされる。

 

復旧までに1年間以上の時間を要し、運転再開したのは2021(令和3)年9月18日のことだった。

↑貴船口駅そばの斜面の様子を災害前と災害後を比較した。写真で感じる以上の傾斜地だが、災害後には植林されてきれいな斜面に

 

貴船口駅周辺では土砂崩れがあった二ノ瀬駅側だけでなく、被害が出なかった鞍馬駅側も、斜面の整備がかなり行われていたことが、撮影した写真を見てよく分かった。

 

上記の写真は貴船口駅すぐ北側の写真で、路線が不通になる前と、再開後を比較した。2019(令和元)年の写真では、伐採された木々と木株が斜面に残され、崩れ落ちそうな状態に見えた。この急斜面が路線再開前にきれいに整備され、傾斜地はひな壇状になっていた。急斜面には等間隔に植林が行われ、この若木を守るように1本ずつカバーがかけられていた。この状況を見て山を守る工夫がされていることがよく分かった。大変な被害に遭ってしまった鞍馬線だが、災害に強い路線を目指していることが伺えた。

 

鞍馬は山深い地だ。公共インフラは鞍馬線と平行して走る府道38号線(鞍馬街道)のみに限られる。災害のあった区間の一部に二ノ瀬トンネルが掘られるなど強化されているものの、鞍馬でイベントが開催される日は渋滞しがちだ。鞍馬線の大切さが改めて認識された災害となった。

 

【叡電を深掘り④】改めて出町柳駅から鞍馬線の沿線をたどる

ここからは鞍馬線の旅を楽しんでいこう。鞍馬線の電車は始発を除き出町柳駅発となる。鞍馬駅行き電車は日中15分間隔で、18時以降はおよそ20分間隔となる。朝夕には出町柳駅〜市原駅間を走る電車もある。日中の方が本数の多い典型的な観光路線である。

↑元田中駅〜茶山駅間を走る900系きらら。叡山本線の出町柳駅〜宝ケ池駅間は街中の走行区間で、間断なく民家が建ち並ぶ

 

鞍馬行き電車が発車する出町柳駅には1〜3番線のホームがあり、この2〜3番線が鞍馬線の発着ホームとなっている。ホームの長さから2両編成の900系や、800系は3番線からの発着がメインとなる。2両編成の車両には側面に4つの乗降扉があるが、一番前の扉付近はホーム幅が狭いのでパイロンが置かれ注意を促している。

 

日中の鞍馬駅行き電車の発車時間は0分、15分、30分、45分発で、ダイヤも覚えやすく便利だ。

↑宝ケ池駅の構内踏切を通る自転車。右側2本が鞍馬線の線路で、駅の案内図では鞍馬駅行きの案内は赤字で表示されていた(左上)

 

叡山本線の区間である宝ケ池駅までは京都の街中を走る。途中、車庫のある修学院駅などに停車しつつ、5つ目の宝ケ池駅へ。ここまで所要9分と短い。途中に4つの駅があるものの、駅間はみな500mから長くても900mぐらいで、市内を走る路面電車の運行に近い印象だ。

 

鞍馬駅行き電車は、宝ケ池駅の手前にあるポイントで、叡山本線の線路から左手へ曲がり、鞍馬線へ入っていく。

 

【叡電を深掘り⑤】市原駅までは平坦な路線ルートが続く

鞍馬線は駅の近くに名所旧跡や寺社、そして大学が多い。その情報も含め路線を紹介していこう。

 

宝ケ池駅を発車して間もなく八幡前駅。三宅八幡宮(徒歩約3分)の最寄り駅だ。興味深いのは叡山本線にも三宅八幡駅という八幡宮から付けたと思われる名前の駅があること。八幡前駅の方が圧倒的に近いにもかかわらず叡山本線の駅名を三宅八幡駅(同駅からは徒歩約10分)にしたのは、この駅からの道が正式な参道(表参道)にあたるからだ。近くには朱塗りの大鳥居も立つ。

↑岩倉駅〜木野駅間を走る800形。この付近から山々が間近に見えるようになってくる

 

八幡前駅の次が岩倉駅だ。洛北にあった岩倉村にちなんだ駅名だが、実は歴史に名を残した偉人に関わる史跡の最寄り駅でもあった。その偉人とは岩倉具視(いわくらともみ)である。江戸末期、公武合体派から討幕派に立場を変え、明治政府では重要な役割を担った中心的な人物だが、この岩倉具視が当主だった岩倉家がこの地を所領にしていた。幕末の一時期は洛中から追放され「岩倉具視幽棲旧宅(ゆうせいきゅうたく)」(徒歩約13分)に3年間住んだとされる。

 

岩倉駅を過ぎると進行方向右手に洛北の山々が間近に見えるようになってくる。この山麓を回り込むように木野駅、そして京都精華大前(きょうとせいかだいまえ)と走る。京都精華大前駅は、駅名どおり目の前に大学がある駅だ。次の二軒茶屋駅(にけんちゃやえき)も京都産業大学の最寄り駅と、鞍馬線は京都市の郊外にある大学に通う学生たちの利用が目立つ。

 

二軒茶屋駅付近まで来ると、左右の山がより近づいて見えるようになり、鞍馬線が平野部から山間部に入りつつあることが良く分かる。このあたりから、勾配も徐々に厳しくなっていく。

 

【叡電を深掘り⑥】人気の市原駅〜二ノ瀬駅間のもみじのトンネル

二軒茶屋駅まで複線だった鞍馬線だが、この先は単線区間となる。駅前に町並みが連なるのは次の市原駅までとなる。市原駅までは京都郊外の〝生活路線〟と言って良いだろう。この先は、行楽路線の色合いを強めていく。

 

市原駅〜二ノ瀬駅間の約250m区間は「もみじのトンネル」として、もみじが美しい区間だ。新緑の季節と、紅葉の季節には電車も徐行して走る。春秋シーズンの夜間はライトアップ、車内照明が消され、ひときわ美しいもみじのトンネルが楽しめる。

 

ちなみに市原駅〜二ノ瀬駅間にある「もみじのトンネル」だが、叡山電鉄の案内チラシには「もみじのトンネルは電車の外からご覧いただくことはできません。車窓からお楽しみください」とある。もみじのトンネルを通る電車の写真や動画は、あくまで鉄道敷地内で、PR用に撮られたものなので注意したい。

↑鞍馬街道をまたぐ900形きらら。もみじのトンネル(右上)はこの橋梁と市原駅間にある。写真のきららは現在、黄緑塗装に変更されている

 

二軒茶屋駅付近から勾配が徐々に強まっていく鞍馬線。二軒茶屋駅と鞍馬駅間4.7kmの標高差は115mもあり、山岳路線であることがよく分かる。二ノ瀬駅を過ぎると、さらに勾配がきつくなっていく。貴船口駅へ走るまでに、なんと50パーミル(1000m走るうちに50m登る)という最大勾配区間となる。

 

勾配が厳しい区間を持つ全国の私鉄7社が加盟する「全国登山鉄道‰(パーミル)会」という親睦団体があり、叡山電鉄も加わっている。アプト鉄道の大井川鐵道井川線と、特別な登坂機能を持つ電車を利用する箱根登山鉄道をのぞけば、叡山電鉄・鞍馬線の50パーミルは最急勾配だ。50パーミルの勾配を持つ路線は「全国登山鉄道‰(パーミル)会」の中でも南海電気鉄道高野線と、神戸電鉄を含め3社と限られている。

 

鞍馬線は普通鉄道で最大級の勾配があるわけだ。そんな急勾配を、叡山電鉄の電車はぐいぐいと登って行き、貴船口駅へ到着する。

↑貴船口駅の手前にある50パーミルの最大勾配区間。右下に勾配標もある。きららは側面ガラスが大きく開き展望が楽しめる(左上)

 

【叡電を深掘り⑦】貴船神社の最寄り駅・貴船口駅は魅力満点

もみじのトンネルだけでなく、新緑、紅葉のもみじが美しいのが貴船口駅だ。この駅付近も春と秋のシーズン中はライトアップされ、紅葉狩りに訪れる人も多い。

 

貴船口駅は2020(令和2)年3月19日に新駅舎となり、より快適になった。名高い貴船神社の最寄り駅とはいえ,

神社までは距離にして約2kmある。そのため駅前からバスを利用して、神社の最寄りまで乗車し、そこから歩くという参拝客が多い。貴船川沿いには名物の「川床」があり、京都の夏の酷暑を少しでも和らげる避暑地として昔から人気が高い。

↑新駅舎となった貴船口駅。ホームはこの上にある。階下には待合室もあり、叡山電鉄の駅で唯一のエレベーターも設置される

 

貴船口駅のすぐそばには鞍馬川と貴船川が流れ、両河川が合流している。樹木が生い茂るエリアだけに、貴船神社まで行かずとも、駅周辺を散策するだけでも涼味が味わえる。ぜひとも途中下車したい駅である。

↑貴船口駅近く貴船神社の大鳥居。貴船神社へは駅前からバス利用(右上)で約4分+徒歩約5分で行くことができる

 

↑貴船口駅の下を流れる鞍馬川。このすぐ下流で貴船川と合流する。渓谷沿いの新緑・紅葉が美しい

 

【叡電を深掘り⑧】鞍馬駅前の大天狗が新しくなって鼻も立派に

貴船口駅の次が終点の鞍馬駅だ。貴船口駅からも50パーミルの急坂が続く。進行方向右手に府道38号線(鞍馬街道)を眺めつつ、電車は徐々に坂を登って行く。

 

車窓から見える鞍馬街道沿いに門前町が連なるようになれば終点の鞍馬駅も近い。出町柳駅から乗車して30分ほどで、京都市街とは異なる山景色が楽しめる。この手軽さが鞍馬線の人気の1つの要因でもあろう。

 

行き止まり式のホームを先に歩けば趣ある駅舎が出迎える。同駅舎は1929(昭和4)年に建てられた寺院風の木造駅舎で、第一回近畿の駅百選に選ばれた。

↑鞍馬駅の木造駅舎。京阪鴨東線の開業時に手を加えられたが趣満点だ。駅前には大天狗のオブジェ(後述)が設置されている

 

↑駅舎横に電車の先頭部分が保存されている。こちらは開業時に使われたデナ21形の先頭部。横には同車の動輪と信号が設置されている

 

鞍馬といえば、牛若丸(源義経)が幼少時に修業した地で、山中で天狗を相手に剣術の稽古をしたと伝えられる。そうしたことからも天狗のイメージが強い。

 

鞍馬駅の改札を出ると大天狗のオブジェが目にとまる。この大天狗、実は2代目だ。初代の大天狗は2002(平成14)年に鞍馬地区から駅前に移され名物となった。発泡スチロール製だったためか、長年の風雪で弱り、さらに雪の重みで2.3mの鼻が折れる被害にあってしまった。

 

そのため2代目の大天狗が造られた。2019(令和元)年に初代からバトンタッチされたこの2代目、FRP(繊維強化プラスチック)製で2m以上ある鼻も丈夫そうである。初代よりも鼻がそそり立ち、いかにも今ふうの顔つき、眼光鋭くイケメンである。

↑鞍馬駅前にある大天狗。左が初代の大天狗で2019(令和元)年に2代目大天狗にバトンタッチされた

 

【叡電を深掘り⑨】珍しい境内の中にある小さなケーブルカー

鞍馬は平安京の建都以来、約1200年にわたり、京都の北方の守護の地として尊ばれる。その中心となるのが鞍馬寺だ。鞍馬寺の入口、仁王門へは鞍馬駅から並ぶ土産店を眺めながら200mあまり、約3分と近い。

 

鞍馬寺は奈良時代に唐から仏教を伝えた鑑真の高弟である鑑禎(がんてい)が8世紀に開山した寺とされる。本尊は毘沙門天王と千手観音菩薩と護法魔王尊の三身が一体となった「尊天」が祀られる。

 

鉄道好きとして気になるのは境内にケーブルカーがあること。鉄道事業として正式に認められたケーブルカー「鞍馬山鋼索鉄道」で、山門駅と多宝塔駅間の0.2kmを結ぶ。規模の大きなケーブルカーとは異なり、一車両が上下する造りで、坂道が連なる境内の移動手段として役立てられている。

↑鞍馬駅に近い仁王門が鞍馬寺の入口となる。多宝塔駅までケーブルカー(左上)が通じる。車両の名は牛若號Ⅳ

 

筆者が鞍馬線を訪れたのは、4月末の平日の朝だった。鞍馬駅から出町柳駅へ戻る時間帯が、ちょうど学生の通学時間に重なった。乗車したのは900系きらら。観光列車に乗って発車時間を待つ。そんな時に、鞍馬に住む中学生の一団が駅横の歩道を懸命に走ってきた。彼らが乗るのを待って電車は発車した。途中駅から、多くの中高生たちが乗車してくる。

 

朝の時間帯に乗車したから分かったのだが、鞍馬線は観光路線というだけではなく、京都の郊外に住む人々の通勤や、中高生の通学の足でもあった。鞍馬の地元小学校は貴船口駅前にあるのだが、中高等学校に進学すると、鞍馬からやや離れた学校へ、電車を利用して通学するようになるのであろう。

 

カッコいい観光列車きららに乗車して通学する彼らを、少しうらやましく感じた。市原駅、二軒茶屋駅と乗車する中高生たちが増えていく。そして岩倉駅へ着くと、一斉に下車して行った。観光客が乗車する時間帯と異なる時間に乗ると、思わぬ発見があるものだ。これから社会へ巣立っていく世代と一緒になり、ちょっと爽やかな気持ちになったのだった。

 

世界で1台だけの相棒! キャンパー仕様“ジムリィ”のオーナーがカスタムカーの魅力を語る

エクステリアに凝る。インテリアに力を入れる……。こだわればこだわるほど世界でひとつのカスタムカーができあがっていく。愛車のカスタムへのこだわりとポイントを、ジムリィに乗るオーナーが語ってくれた。

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

Owner’s Profile

ジムリィオーナー

形部敏士(ぎょうぶ さとし)さん

ジムリィとハイエース好き。ハイエースのローダウンとは反対に、ジムリィはリフトアップに。イカつかわいいジムリィはソロキャンプの相棒です!

 

フェイスチェンジとリフトアップでカスタム感倍増!

カスタムカー

“ジムリィ”

「東京オートサロン 2022」でも展示されたジムリィにひと目惚れしてカスタムしたクルマはスズキ・エブリィがベース。インテリアはキャンパー仕様にしてルーフテントも取り付けた。総額は約500万円。

ココがこだわり!

ルーフテントは大人2人就寝OKで気軽に車中泊!

悪路走行時に役立つワークライトを装着

★ジムニーのマスクで商用車感ナシ!

★リフトアップで迫力マシマシ!

ホイールはボディと同色にペイント

★フロントガードもジムニー用を装着!

 

“こうしたい”という思いを十分に伝えることが大切

「エブリィはキャンパー仲間でも人気のモデルですが、商用車っぽいフロントマスクがどうしても受け入れられませんでした。でも展示会でジムリィを見て、コレだ! と思いましたね」

 

と語るのはオーナーの形部敏士さん。一番のこだわりは、スズキ・ジムニー用のフロントフェイスキットを取り付けたフロントマスク。ジムニー用の専用フロントガードも取り付け、ジムニーらしさを増したのが気に入っているという。

 

さらにリフトアップして車高を上げ、アウトドア色を強めるブロックタイヤを装着するなど、迫力あるカスタムカーに仕上がった。

 

「頻繁に出かけるわけではないですが、キャンピング仕様にするのもアリかなと思い、ベッドキットを取り付けました。収納力が高いので重宝しています」(形部さん)

 

カスタム時に大切なことは何か。

 

「私はジムリィが絶対だったので、T-STYLE AUTO SALESさんに相談したのですが、自分の思いを余すことなく伝えることです。このパーツより別のパーツのほうが合うというアドバイスもしてくれます」(形部さん)

 

最後に、カスタムの楽しさは。

 

「カスタムって、いわば自己満足。でもそれで良いと思います。自分が納得できるカスタムができれば、それが最高ですから」(形部さん)

 

 

【Point 1】ルーフにはテントを取り付けてキャンパー仕様にチェンジ!

↑ルーフにはグラヴィス製のルーフテントを装着。大人2人が寝られる広さだ。ボディと同色にしたくて、グレーにペイントしたというこだわりようだ

 

↑室内にはベッドキットを装着。エブリィは車内への張り出しが少ないのでスペースを有効活用できる。サイドキャビネットがさらに収納力を高める

 

↑ベッドキットは収納力も高い。引き出しにはキャンプで使うランタンなどの小道具を収納でき、天面カバーを取り付ければテーブルとして活用可能だ

 

【Point 2】ココだけ見るとまるでジムニー!

↑ジムニーのフェイスキットを装着し、専用のフロントガードも取り付けた。フォグランプのカバーがかわいさを増して、女性のウケも良いという

 

【Point 3】リアもジムリィオリジナル

↑リアバンパーも同様にジムリィリアバンパーを装着。ジムニーのテールバンパーを装着できるように製作した

 

【Point 4】コイルスプリングでリフトアップ

↑アウトクラスカーズ4インチアップキットでリフトアップ。リフトアップで迫力を増すとともに鮮やかさも演出

 

【Point 5】ブロックタイヤでゴツさ増し!

↑タイヤはマキシス製のブロックタイヤを装着してオフローダー調に。ホイールはゴールドのモノをボディと同色にペイントするほどこだわっている

 

 

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後方からの追突事故に備える! 自転車事故の映像を自動で保存……ガーミン「Varia RCT715」

ガーミンジャパンは、自転車走行中の後方を自動で録画・保存するカメラ付きリアビューレーダー「Varia RCT715(ヴァリア アールシーティー715)」を、6月2日に発売。5月26日より、予約受付を開始します。税込価格は4万4800円。

 

同社の後方レーダー機器「Varia」シリーズは、自転車事故の多くが後方からの追突事故であることから、ミリ波レーダーを内蔵することで、最大140m後方から接近する自動車などの移動物体を的確に捉えて、走行中のライダー自身に素早く知らせます。

 

同製品は、後方車の接近をライダーに知らせ、ライト点滅で運転手にも注意を促す機能に加え、新たにカメラによる映像録画機能を搭載。自転車走行中に接近する車両を検出すると、自動でカメラがオンとなり、事故を検出した場合には、事故前後の映像を自動で保存。万が一の事故時にもライダー自身の“見えない状況”を映像で確認でき、第三者への映像提供も可能です。

 

後方ライトは最大1.6km離れた地点から視認できる明るさで、遠くからもライダーの存在を認識させることができます。接近アラートは、別売りのサイクルコンピューター「Edge」シリーズなど同社のデバイスや、「Varia モバイルアプリ」をダウンロードし、Bluetoothでペアリングすれば、使用中のスマートフォンでも対応可能です。Varia モバイルアプリでは、保存された映像へのアクセスのほか、映像データの転送やデータオーバーレイなど、カメラ設定のカスタマイズが可能になります。

 

専用のシートポストマウントキットで、様々な自転車機種への装着に対応。本体サイズは106.5×42×31.9mm、重量147gと、小型・軽量の設計で、簡単に着脱可能です。

パイオニアの「NP1」がアップデートし、音声操作で音楽やニュースの再生を楽しめる!

今年2月、パイオニアから音声と通信による画期的な車載システム「NP1」が登場し、大きな注目を集めたのは記憶に新しいと思います。そのNP1のもう一つの特徴が通信によって随時アップデートし、機能を進化させていくことです。その待望の第1回目が5月18日に行われることになりました。その詳細をお伝えしましょう。

↑“会話するドライビングパートナー”「NP1」。音声コマンドを認識しているときはスピーカー部が白く光る。写真は車内側

 

アップデートによって機能を常に最先端へと進化

電動化に自動運転など、自動車を取り巻く環境は今、劇的なまでに変化を遂げようとしています。そうした中、カーナビやドライブレコーダー機能を音声で使いこなす画期的な車載システムとして、パイオニアからこの2月に登場したのが、“会話するドライビングパートナー”NP1です。

↑車外前方から見たNP1。カメラ部はドラレコとして使用。上下を反転させることで左/右側のいずれでも取り付けに対応できる

 

NP1では、従来のカーナビのようにディスプレイを備えず、様々な操作を音声によって行うことを基本としています。そのため、たとえばカーナビの目的地設定やルート案内、ドライブレコーダーの任意記録もすべて音声で行います。これにより、ドライバーは前方から視線をそらすことなく安全に操作できます。

↑NP1は少し大きめのドライブレコーダーといったサイズ。ミニバンやSUVならサイズはほとんど気にならない

 

そして、NP1はこれらの基本機能に加え、新たな機能の追加についてもアップデートできるという特徴も備えました。この機能こそNP1の先進性を表す大きなポイントとなっているのです。NP1本体には通信機能を備え、機能アップはすべてOTA(Over-The-Air)で行われます。つまり、常に最新の状態で車載機能を使えることが、NP1ならではの魅力となっているのです。

 

実はNP1が発表された時点で、アップデートは定期的に行われることが発表されていました。その第一弾として公表されていたのが『Amazon Alexa(以下:アレクサ)』への対応です。そして5月18日、第1回目となるアップデートが実施されることとなり、待望のアレクサへの対応を果たすこととなりました。

 

聴きたい音楽をアーティスト名や楽曲名から簡単検索

では、アレクサへの対応により、NP1はどんな進化を遂げるのでしょうか。よく使われるものとしては、音楽再生やニュース、天気予報などが挙げられます。音楽ならあらかじめBluetooth経由でカーオーディオと接続しておくことで、聴きたい曲がカーオーディオの迫力あるサウンドで楽しめるようになります。特にAmazon Primeの契約をしておけば約200万曲のコンテンツから聴きたい楽曲が音声で呼び出せるようになるのは大きな魅力です。

↑NP1を通じてAmazonが提供する音声アシスタント「アレクサ」の利用が可能となります

 

使い方はとても簡単です。たとえば聴きたいアーティストがあるとしましょう。その時はアレクサとのウェイクアップワードの後に、「(アーティスト名)の曲をかけて」「(アーティスト名)の曲を聴きたい」と発すれば、自動的に対象アーティストの楽曲が絞り込まれて再生されます。

 

他にも「80年代のJ-POPが聴きたい」「朝に合う曲をかけて」「おすすめのプレイリストをかけて」といったコマンドにも対応しています。これらは特に定型のコマンドがあるわけではなく、思いついたまま曲をリクエストすれば、ほとんど認識して対応してくれます。今までのように車内にCDなどを持ち込むことなく、好きなアーティストの楽曲をとことん楽しめるなんて、これを体験したらほとんどの人がNP1を手放せなくなることでしょう。

 

天気予報では「(対象地)の天気は?」「今週の天気は?」とコマンドを発するだけ。リンクしたスマホに保存してあるスケジュールも「明日の予定を教えて」と告げればすぐに応えてくれます。クルマを長時間運転していて「単調でつまらないなぁ」と思ったら、世間話として「今日は何の日?」とか、謎かけなどを話しかけて反応を見るのも面白いでしょう。他にもアマゾンならではの買い物にも対応しているのも見逃せません。

 

NP1を使いこなすなら「Amazon Prime」加入がおすすめ

ただ、これらのサービスをフルに楽しむには「Amazon Prime」の加入がオススメです。年額4900円、月額500円(いずれも税込)の費用がかかりますが、アマゾンで買い物したときの「お急ぎ便」が利用できるほか、Prime Video対象の映画・TV番組が見放題になり、音楽も200万曲が聴き放題となるメリットがあります。NP1ユーザーなら加入しておいて損はないはずです。

 

今回のアップデートはアレクサへの対応だけにとどまりません。ナビ機能としては、進行方向や車線に応じた検索が可能となり、高速道路入口などの検索もできるようになりました。ドライブレコーダーでは車内側カメラの画質が自然な色合いに改善されるそうです。また、NP1と連携して使うスマホアプリ「My NP1」のユーザーインターフェースも改善が図られるとのことです。

↑NP1の様々な機能を司るのがスマホアプリ「My NP1」。今回のアップデートでインターフェースの改善が測られている(写真は旧バージョン)

 

さらに6月上旬には、NP1独自で天気予報が可能となるほか、現在の時刻や場所が確認できるようになります。また、ナビ機能としては渋滞情報を問い合わせができるようになるだけでなく、トンネル内での位置情報更新が可能となって案内が継続できるようになるとのこと。このアップデートも大きな魅力となりそうですね。

↑My NP1の「ドライブコール」を使えば、相手が直接道案内してもらえたりもする(写真は旧バージョン)

 

次回の大型アップデートは夏を予定。この時の進化にも期待しましょう。

 

 

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一番売れている軽よりもお買い得!? フルオプションで138万円のスズキ「アルト」の魅力に迫る

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、軽自動車「アルト」の新型モデルを取り上げる。大人気のハイトワゴンとは一線を画すアルトの魅力とは?

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のGODカー】スズキ/アルト

SPEC【HYBRID X・2WD】●全長×全幅×全高:3395×1475×1525mm●車両重量:710kg●パワーユニット:657cc直列4気筒●最高出力:49PS(36kW)/6500rpm●最大トルク:58Nm/5000rpm●WLTCモード燃費:27.7km/L

94万3800円〜137万9400円(税込)

 

控え目の車両重量に申し分ないエンジンを備え軽やかな走り

安ド「殿! 今回は殿の希望で、新型アルトを借りてきました!」

 

永福「アルトは軽自動車の原点。軽くて走りっぷりが良いな」

 

安ド「本当に走りが軽やかでビックリしました!」

 

永福「先代モデルはもっと軽かったが、新型はマイルドハイブリッドが搭載されたので、出足の良さは先代モデルをしのいでいる」

 

安ド「価格も安いですね!」

 

永福「今回の試乗車は上級モデルのハイブリッドX。アルトとしては価格が高い部類だが、それでも126万円くらいなので、最近のクルマとしてはかなり安い」

 

安ド「軽でも総額200万円は当たり前になっていますから、126万円は安いです!」

 

永福「オプションを含めても138万円。その値段でこれだけ走行性能が高くて、装備もほとんど何でも付いている」

 

安ド「全方位モニターが付いていたのには感動しました。こういうクルマって、女性が乗ることが多いでしょうから、すごく便利だと思います!」

 

永福「軽は女性ユーザーが7割と言われるが、アルトの場合、男性の割合が高い気がするぞ」

 

安ド「えっ、なぜ?」

 

永福「営業車として使われることが多いからだ。個人ユーザーはもっと大きい軽を選んでいる」

 

安ド「……考えてみれば、一番売れてる軽は、ハイトワゴンのホンダ・N-BOXですもんね」

 

永福「N-BOXの車両重量は約1t。アルトは約700kg。300kgも軽くてエンジン性能はほぼ同じだから、アルトのほうが軽やかに走るのは当然だ。価格も断然安い。どう考えてもアルトのほうがお買い得だが、多くの人はN-BOXを買っている」

 

安ド「なぜでしょう?」

 

永福「少しでも広い家に住みたいのと同じく、人は少しでも広いクルマが欲しいのだ。軽の場合、床面積は同じだから、広いといっても天井が高いだけだが」

 

安ド「天井が高いと、確かに高級な感じはしますね! ホテルのロビーみたいに」

 

永福「合理的に考えればアルトだが、心情的に考えるとN-BOXになるのだな」

 

安ド「デザインはどうでしょう。キープコンセプトすぎて、クルマに詳しい人じゃないと、先代モデルと見分けがつかないのでは?」

 

永福「デザインは先代モデルのほうが圧倒的に優れていた。なにしろ先代モデルは、アウディでチーフデザイナーを務めた和田 智氏が関わっている」

 

安ド「でも、似てませんか?」

 

永福「ヘッドライトの形状は多少似ているが、それ以外はまるで違う。安ドよ、お前の目は節穴か!」

 

安ド「ヒェ〜、申し訳ありません!」

 

永福「しかし多くの人には、新型のほうが立派に見えるかもしれぬ。新型は天井が5cm高いからな」

 

安ド「やっぱり天井の高さなんですね!」

 

【GOD PARTS 1】フロアコンソールトレー

よく使うティッシュを手元に置いておきたい

運転席横の足元には大きめの小物入れが設置されています。スマホのような小さな物を置いておくと走行中のGで動いてしまいそうですが、ボックスティッシュならピッタリのサイズ。手を伸ばせばそこにティッシュ! って便利です。

 

【GOD PARTS 2】デュアルカメラ

2つのカメラで障害物をキャッチ!

予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」が全車標準搭載されています。前方の障害物を検知して、警告、およびブレーキ踏力をアシストするブレーキサポート機能は、2つのカメラを駆使して夜間の歩行者も検知できるそうです。

 

【GOD PARTS 3】ツートーンカラー

少しでもオシャレさを向上させたい

社用車として購入されることが多いため、白、黒、シルバー系のボディカラーが売れ筋になるでしょう。しかし、レッド、ブルー、ブラウン、ベージュの4色に関しては、ルーフがホワイトのツートーンカラーが選べて、“仕事のクルマ”感が一気に薄れます。

 

【GOD PARTS 4】ヘッドライト

同じような形だけど実は進化

先代モデルではもう少し角が尖っていましたが、外側に向かって広がる長方形という形状は変えずに、角が丸くなりました。なお、上位グレードはHIDランプ、その他はハロゲンランプを使用していて、内部構造まで異なります。

 

【GOD PARTS 5】軽量ボディ

軽さが生み出すキビキビした走り

軽量ボディの恩恵で、ドライビングがとにかく軽快。アクセルペダルの操作に応じて、キビキビ走ります。カーマニアの心情的には、この新型ベースでハイパフォーマンスモデルの「アルトワークス」を作っていただきたいものです。

 

【GOD PARTS 6】全方位モニター表示

4つのカメラが死界をなくす!

車両の前後左右に4つのカメラが搭載されており、クルマの周囲の様々な方向をディスプレイで確認することができます。車両前方、後方、左側のほか、真上から見たような映像や、写真のような3Dビューまで表示可能です。

 

【GOD PARTS 7】インパネ

1クラス上の上質感!

パッと見、軽自動車には見えないほど質感の高いデザインです。コンパクトカーと比べてもチープさは感じられません。ポケットやトレー、小物入れなど収納スペースが充実していて、使い勝手が良いのも特徴です。

 

【GOD PARTS 8】ヘッドアップディスプレイ

前方からせり出す透明パネル

エンジンをかけると、運転席前方のサンダーバードの格納庫のような部分が開き、速度や燃費等の情報を表示する透明な板、ヘッドアップディスプレイがせり上がってきます。標識認識機能もあり、制限速度もすぐわかります。

 

【GOD PARTS 9】USB電源ソケット

多過ぎて損をすることはなし!

撮影車には、ディスプレイ接続用のほか、インパネまわりに3つのUSB電源ソケットが装備されていました。乗車している全員が一斉にスマホの充電をするようなことはなかなかないと思いますが、多いに越したことはありません。

 

【これぞ感動の細部だ!】シートヒーター

寒い時期に重宝するあったか装備

シートの表面が温かくなるシートヒーター機能が運転席にも助手席にも付いていて、寒い時期にはありがたいです。最上位グレード(HYBRID X)は全車に、その他グレードも4WD車にはすべて標準搭載されています。スイッチを入れてから1分もしないうちに温かくなってくるので、かなり実用性が高いです。

 

撮影/我妻慶一

 

 

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ウーバー、米国で自動運転車を使ったフードデリバリーサービスを開始

Uber Eatsは16日(米現地時間)、米ロサンゼルスで自動運転車を使った食品デリバリーサービスを2つ始めたと報じられています。

Serve Robotics

 

1つは昨年12月に発表された、自動運転技術の企業Motional社の車両を使ったサービス。もう1つはUber傘下のPostmatesからスピンアウトした宅配会社Serve Robotics社との提携によるものです。

 

どちらのサービスも規模が限られており、クリエーション・オーガニック・カフェ(ロサンゼルス西部に展開するオーガニック・チェーン店)など、ほんの数店舗が対象とされています。Serve社はウエスト・ハリウッドで短距離の配達を、Motional社はサンタモニカで長距離の配達を担当するそうです。

 

Uberの広報担当者は米TechCrunchに「我々はこの2つの試験運用から、お客さまが実際に何を求めているか、店舗が本当は何を望んでおり、配達にとって何が理にかなっているかを学ぶことができるでしょうと語っています。

 

それぞれ2つのサービスは料金事情が違っているそうです。Serveの配達は有料化する一方で、Motionalのサービスは同社がカリフォルニア州での自動運転車の営業許可を取っていないため、無料とされるそうです。

 

またMotionalの場合は完全に自動運転というわけでもなく「お客様に便利でシームレスな体験を提供するため」、受け渡し場所に近づくと(同乗している)人間のオペレーターが操作する、と広報担当者は述べています。

 

そしてServeのロボット車はほとんど自律で走行するものの、道路を横断するときなど特定の場合には、やはり人間のオペレーターがリモコン操作すると説明されています。

 

さらに特定のテスト地域では、顧客が自動運転車による配達を選ぶことができ、人間による配達と同じく追跡できるとのことです。そして食品が届いたら、顧客はパスコードで車両のロックを解除し、クーラーや後部座席から取り出せると述べられています。

 

Uber Eatsはお店の近くに配達員がいないときは注文ができないこともありますが、自動運転車がテスト段階を超えて広く採用されれば、そうした事態も減っていくのかもしれません。その一方で、配達員の方々の仕事がなくならないかも心配されそうです。

 

Source:TechCrunch
via:Engadget

航空機内に置き忘れたiPhone、3日間も空の旅! 持ち主は「かなりのマイルを稼げた」と皮肉

航空機の中で紛失したiPhoneが思わぬ長旅をしてしまい、持ち主の元に戻るまで何度も国際線を飛ぶことになったと報じられています。

 

オーストラリア・カンタス航空のFrequent Flyerフォーラムのスレッドには、iPhoneが手元に離れて気の遠くなる旅をした顛末が投稿されています。

 

スレッドの始まりは、5月6日に「Rugby(ラグビー)」と名乗るユーザーが、シドニーのカンタス航空ラウンジの電話番号が分からないか? と尋ねたことでした。ラグビー氏の妻がシドニー(オーストラリア)からオークランド(ニュージーランド)の便に乗った後、そのiPhoneをラウンジに忘れたと思ったためです。

 

が、その後iPhoneはラウンジにはなく、機内に置き忘れていたことが分かりました。なぜ判明したかといえば、ラグビー氏が「探す」アプリで追跡できたからです。飛行機の登録コードも分かっており、どの座席だったかも把握していたため、回収するのはたやすいはずでした。が、カンタス航空は取り合ってくれず、飛行機がシドニーの地上にいたときでさえ何もしてくれなかったそうです。

 

結局iPhoneはシドニーとオークランドを往復し、さらにホノルル(ハワイ)から再びシドニーへ。そしてシドニーに戻ってオークランドへ再び、またシドニーに移動することに。その間、ラグビー氏は「探す」アプリでiPhoneの位置が分かりながらも(おそらくバッテリーが満タンだったのでしょう)、何もできませんでした。

 

最終的にはフォーラムのメンバーが何らかの手助けをしてくれて、飛行機からiPhoneを回収することに成功。たまたま飛行機にメンバーが乗っていたのか、スレッドを読んだ従業員が動いたのかは不明ですが、カンタス航空から電話を受けて、国際線の手荷物サービスに引き渡してもらえたそうです。

 

「これほど飛行距離が長かったのだから、このiPhoneは航空会社から(日本でいうマイレージプログラムで)“ゴールド”扱いになったんじゃないか」ラグビー氏はそう冗談めかして言っています。

 

しかし、空の旅ニュースサイトのOne Mile At a Timeは、スマートフォンが座席に挟まった場合は火災の危険性があり、航空会社は見つける努力をすべきだと指摘。そしてフライト間に清掃や安全チェックを行っているはずが、今回のiPhoneを発見しなかったことが、いかに多くのやるべきことを行っていないかを示している、との趣旨を述べています。

 

先日も航空会社になくされた荷物が、アップルの忘れ物トラッカーAirTagのおかげで取り戻せたとの報告もありました。ユーザーが追跡できるアップル製品は、航空会社のサボリを“見える化”しているのかもしれません。

 

Source:The Australian Frequent Flyer,One Mile at a Time
via:AppleInsider

メーカー直系カスタムカーは完成度が抜群! 個性的な4ブランドを紹介

クルマ好きにとって愛車を自分流に仕立てることはひとつのテーマだ。アフターパーツメーカーも数多くあるけれど、それならばいっそのことメーカー直系のカスタムカーはいかが? 個性的な4つのブランドをここに紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

クルマにピッタリ合った完成度の高さが魅力

その昔、クルマのオプションはアルミホイールやフォグランプが大半だったころ、メーカーが直接カスタマイズしたクルマはショーモデルや競技車両がほとんどだった。レースではワークス、市販はアフターパーツと線引きされていたのだ。それが最近ではメーカー直系のチューニングパーツやコンプリートカーが購入可能になった。メーカー直系ということはメーカークオリティが保たれているということ。アフターパーツながらも品質保証がつくモノもあり、新車購入時にオーダーすれば納車時には希望のスタイルになっている。

 

メーカー直系のカスタムカーは大きなアドバンテージがある。例えばベース車両の開発段階から積極的に関われるため様々なテストデータなどを入手でき、クルマに合ったパーツが開発可能という点だ。またそのパーツは単体でもディーラーで購入可能。ベース車を知り尽くしているからこそ、バツグンの完成度を誇るカスタムカーが手に入るのだ。

↑メーカー直系カスタムのメリットは納車時には“完成”していること。オリジナルのシルエットを崩さないのも魅力だ

 

【その1】RALLIART

ラリーアート from 三菱

ラリーアートは三菱自動車のワークスチーム。同社のモータースポーツ活動を支えるブランドで、ギャラン、ランエボでのWRC、パジェロでのパリダカなどラリーやレースで大活躍した。

 

そんなモータースポーツのイメージを受け継ぎながら、自分らしい走りスタイリングを求めるユーザーにワクワク感を届けるべく、純正アクセサリーの販売を展開していくという。またモータースポーツへの参戦も再度検討するというから期待大である。

 

[History] 活動休止を経て復活したラリーアートに注目!

1984年に設立。三菱のモータースポーツ活動のブランドであり、自動車メーカーチームとして競技への参加や競技用部品の開発、ドライバーの支援などを行ってきた。2010年に活動を休止したが2021年、純正アクセサリーとして幅広いモデルへの展開で復活が発表された。

 

【イチオシモデル】復活ラリーアートのカスタマイズカーに注目!

アウトランダー RALLIART Style

パーツ価格未定

「昨年発売したアウトランダーのPグレードに、今春発売予定のラリーアート純正アクセサリーを装着した『ラリーアートスタイル』です。かつてのラリー活動からインスパイアした同ブランドを印象付ける、マッドフラップやサイドデカールで走りにかける情熱を表現。ブラックで統一されたホイールやルーフスポイラーとボディの赤いアクセントカラーで、スポーティなスタイルを提案しています!」(ラリーアート)

 

ラリーアートのコンセプトモデルが続々!

写真上はエクリプス クロス・ラリーアートスタイル。同ブランドの方程式に沿ったカラーリングやマッドフラップを装備。写真下はビジョン・ラリーアート・コンセプト。オンロードのイメージを強く出し、新しいラリーアートの可能性を表現する。

 

【その2】MODELLISTA

モデリスタ from トヨタ/レクサス

トヨタのメーカー直系カスタマイズブランド。イタリア語で“デザイナー”を意味するモデリスタの最大の特徴はそのデザイン。コンセプトは「Resonating Emotion~響感の創造~」で、感性に訴求するデザインだ。デザインをクルマと“響鳴”させて、新たな価値へと昇華させる。

 

ベース車の造形やデザインと対話して造られる同ブランドのエアロパーツは独創的なデザインが多い。また実用性重視のパーツも発売している。

 

[History] ユーザーの「もっと」に応える

“あなたの「もっと」に応えたい”をモットーにユーザーの願いを叶えるブランドとして1997年にスタート。設立当初は特別仕様のクルマ製造がメインだったが、2008年頃よりトヨタやレクサスなどのアフターパーツによるカスタムカーの製造がメインになった。

 

【イチオシモデル】躍動的で生命力のあるデザインがウリ!

ノア/ヴォクシー

パーツ価格3300円(税込)~26万4000円(税込)

「ノア、ヴォクシーともフロントフェイスに注目してください。ノーマルからガラリと印象が変化するパーツをリリースしています。またリアのイルミルーフスポイラーもオススメのパーツ。LEDライトがリアビューを先進的な雰囲気にドレスアップしているのがポイントです!」(モデリスタ)

 

↑東京オートサロン 2022で初披露されたモデリスタのノアとヴォクシー。メッキの加飾パーツがアクセントだ

 

【その3】AUTECH

オーテック from 日産

オーテックジャパンは日産グループ内の特装車メーカー。あの「西部警察」の劇中車を作っていた会社であり、生粋の技術者集団といわれる。初代社長はスカイラインの父として知られる桜井眞一郎氏だ。

 

カスタムカーブランドの「AUTECH」は同社のクラフトマンシップを継承しつつ、スポーティでありながらも高級感漂うスタイリングが特徴。ブランドアイコニックカラーは創業地である茅ヶ崎の海と空をイメージしたブルーだ。

 

[History] いまやNISMOも手がける名門

日産グループ内の特装車メーカーとして1986年に設立。当初はトラックなどの商用車中心だったが、のちに乗用車もラインナップ。いまも人気の「ハイウェイスター」は同社製が発祥。近年ではスポーツドライビング向けのNISMOシリーズの開発も行っている。

 

【イチオシモデル】高級感漂うスタイリングと細部までこだわったインテリアが自慢

ノート AUTECH CROSSOVER

253万7700円(税込)~279万6200円(税込)

「先進コンパクトであるノートをベースに、オーテックブランドのプレミアムスポーティなコンセプトとSUVの機能やスタイルを融合。内外装ともに専用品を盛り込んだオーテック仕様の、走りまでにもこだわった、すべてに上質感のあるコンパクトクロスオーバーモデルです!」(オーテック)

 

↑同社専用シートやウッド調のフィニッシャーなど上質さに定評がある。車内はクラスを超えた雰囲気を持つ

 

【その4】Modulo X

モデューロ X from ホンダ

ホンダの4輪車純正アクセサリーを手がけるホンダアクセスが作り上げたコンプリートカーブランドがモデューロ X。メインのコンセプトは、ホンダ車を知り尽くしたエンジニアが匠の技で熟成させたカスタムカー。開発アドバイザーはあの“ドリキン”こと土屋圭市氏だ。特にエアロ開発では実効空力を重視し、低速度域でも効果が感じられるエアロパーツを搭載。サスやホイールも専用に仕立てたもので、あらゆる路面環境でも高い接地感が魅力だ。

 

[History] アルミホイールのブランドとしてスタート

モデューロは、ホンダアクセスのアルミホイールブランドとして1994年に誕生。1990年代後半にはエアロパーツやサスペンションなどラインナップを拡大した。2013年にはHonda純正のコンプリートカーブランド、モデューロ Xシリーズがデビューした。

 

【イチオシモデル】空力効果のある“エアロ”と専用の足まわりで意のままに走れる

FIT e:HEV Modulo X

286万6600円(税込)

「FIT e:HEV Modulo Xは土屋圭市さんと開発担当者による徹底した走り込みによって完成しました。ビギナーから腕に覚えのある方までドライビングが楽しめる1台です。また年内発売を目指して、ヴェゼル e:HEVのモデューロ Xも開発中です。お楽しみに!」(モデューロ X)

 

↑パワートレインに手を加えず、エアロパーツ、ホイール、サスペンションで走りの質を高めることが信条だ

 

 

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古都の人気観光電車「叡山電鉄」を深掘りする【前編】

おもしろローカル線の旅84〜〜叡山電鉄・叡山本線(京都府)〜〜

 

叡山電鉄(えいざんでんてつ)は京都市の北東部に、叡山本線と鞍馬線の2本の路線を持つ。シーズンともなれば比叡山と鞍馬へ向かう観光路線として賑わう。

 

観光路線ながら鉄道好きにとっては、気になるところがいっぱいの路線だ。今回は叡山電鉄・叡山本線の魅力を深掘りしてみたい。

 

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【叡電を深掘り①】鉄道会社の名前は「叡山電鉄」だが

最初に叡山電鉄の概要を見ておこう。

路線と距離 叡山電鉄・叡山本線/出町柳駅〜八瀬比叡山口駅5.6km
鞍馬線/宝ケ池駅〜鞍馬駅8.8km
開業 叡山本線:京都電燈により1925(大正14)年9月27日、出町柳駅〜八瀬駅(現・八瀬比叡山口駅)間が全通。
鞍馬線:鞍馬電気鉄道により1928(昭和3)年12月1日に山端駅(やまばなえき/現・宝ケ池駅)〜市原駅間が開業、1929(昭和4)年12月20日に鞍馬駅まで全通。
駅数 叡山本線8駅、鞍馬線10駅(ともに起終点駅を含む)

 

↑叡山本線の三宅八幡駅〜八瀬比叡山口駅間を走る700系。緑に包まれて走る叡電の電車が絵になる区間だ

 

両線とも線路幅は1435mmと標準軌の幅で、全線が直流600vで電化されている。

 

2本の路線の始まりは3年ほどの違いだが、先にできた路線が本線を名乗り、鉄道会社の名前も比叡山を元にした「叡山」を名乗っている。一方の鞍馬線は、途中の宝ケ池駅から分岐する支線の扱いだ。叡山本線が1両での運行が主体であるのに対して、鞍馬線は2両編成が主力。鞍馬線のほうが観光客も多く、こちらが本線のようにも感じるのだが、歴史的な経緯も含め、叡山本線が本線の扱いとなっている。

 

【叡電を深掘り②】叡山本線と鞍馬線の古い路線図を見ると

叡山本線と鞍馬線の歴史を見ると、紆余曲折あり興味深い。それぞれの路線が生まれて今日に至るまでを触れておきたい。

 

筆者の手元に戦前に作られた叡山電鉄の路線図が数枚ある。中でも特長が良くわかる2枚の鳥瞰図を見てみよう。うち1枚は画家で、鳥瞰図造りを得意とした吉田初三郎が作った叡山電鉄の路線図。この路線図はなかなか見応えがあり、引き込まれるような魅力がある。

↑吉田初三郎が制作した叡山本線が開業したころの路線図。立体的な鳥瞰図で、遠くに富士山のほか、朝鮮や樺太の文字も記される

 

同路線図を発注したのが「京都電燈株式会社」で、会社名の下には「叡山電鐵部発行」とある。京都電燈とは日本で4番目の電燈会社として創設された。琵琶湖の水を京都市内へ導く琵琶湖疎水(びわこそすい)を電気づくりに役立てた。今も琵琶湖疎水は国の史跡に指定され、日本三大疎水の1つとして数えられる。

 

京都電燈は、豊富な水量を電力づくりに役立て京都市の近代化に大きく貢献。京都市に日本初の路面電車を走らせることにも同社の電気が使われた。そうした会社が叡山本線の路線造りに関わったわけである。

 

叡山本線は京都電燈によって造られたが、途中駅から分岐する鞍馬線の路線は京都電燈自ら造ることはせずに、京都電燈と京阪電気鐵道の合弁会社として設けられた鞍馬電気鐵道により路線が設けられた。別会社であったものの、列車は叡山本線の出町柳駅まで乗り入れた。また京都市民も、別会社という認識は薄く、今と同じように「叡電(えいでん)」「叡山電車」の名前で親しんだ。

↑叡山電気鉄道(路線図には「叡山鞍馬電車」とあり)が鞍馬線開業後に制作した路線図

 

鞍馬線が開業した後の路線図を見ると、「叡山鞍馬電車」と表紙にある。裏面にある問合せ先も、京都電燈叡山電鐵課と鞍馬電気鐵道の社名が併記され、住所も電話番号も、まったく同じだった。要は別組織にしていたものの、ほぼ同じ会社として路線を運営したようだ。

 

【叡電を深掘り③】〝孤立路線〟としての歴史が長かった

京都市の発達に貢献した京都電燈だったが、大正期から昭和初期にかけては各地に電力会社が乱立された時期で、戦時色が強まるにつれて、国策によりこれらの電力会社は寡占化されていく。京都電燈も例外でなく、関西配電(後の関西電力)と北陸配電(後の北陸電力)、日本発送電に事業譲渡が行われ1942(昭和17)年に解散となった。戦時中に京都電燈は消滅したのである。

 

鉄道部門のうち叡山本線は1942(昭和17)年に京福電気鉄道へ譲渡となった。形は譲渡だが、京福電気鉄道は京都電燈の鉄軌道部門を分離して設立された会社で、京福と「京」と「福」が社名に入るように、京都府下の鉄道会社と、福井県下の三国芦原線(現・えちぜん鉄道)などの路線も同社に合流している。

 

叡山本線と鞍馬線は、戦中・戦後しばらく京福電気鉄道の路線として運営されていたが、1986(昭和61)年4月1日に再び叡山電鉄として分離譲渡され、さらに京阪電気鉄道グループの傘下となり、今に至る。

↑京阪電気鉄道の戦前の路線図。当時、京阪本線は三条駅止まりで、出町柳駅までは路線が通じていなかった。この状態が長く続く

 

今でこそ観光路線として人気の叡山本線、鞍馬線だが、他の鉄道路線と接続しない、いわば〝孤立路線〟の期間が続いた。かつて京都市電が市内を巡った時代、出町柳駅の最寄りに今出川線の叡山電鉄前(後の「加茂大橋」)という停留所もあった。しかし、市電も1976(昭和51)年3月31日いっぱいで廃線となってしまう。長らく比叡山や鞍馬へ向かう時は、叡山電鉄利用よりも、バスが便利という状態が続いたのである。叡山電鉄は苦境に陥る。そんな状況を大きく変えたのが、京阪電気鉄道の鴨東線(おうとうせん)の開業だった。

 

大阪と京都を結ぶ京阪電気鉄道の京阪本線は長らく三条駅が終点で、現在の京津線(けいしんせん)と線路がつながっていた。この京津線との連絡線を廃止、鴨川沿いの地上部を走っていた京阪本線自体を、七条駅から北側を地下化。さらに三条駅から北に向けて路線を延長し、1989(平成元)年10月5日に出町柳駅まで2.3kmの鴨東線として開業させたのだった。

 

実はこの鴨東線は、先の京都電燈が1924(大正13)年に地方鉄道敷設免許を取得していた。鴨東線への叡山電鉄の電車乗り入れも計画されたが、京阪本線との車両と、規格が異なるために、同案は流れたが、叡電を造った会社の創立時の夢が形は変わったものの、半世紀以上の歳月をかけて、実ったことなる。

 

この鴨東線開業により叡山電鉄の乗客は2倍に増加し、見事に復活。さらに利用者増を見込んで新車両を導入するなど、叡電を大きく変えた契機となった。

 

【叡電を深掘り④】叡電の電車はなぜ短いのだろう?

ここからは叡電を走る車両を紹介しよう。

 

叡電の車両は3タイプある。まずは700系が8両配備される。細かく見ると700系にはデオ710形と、デオ720形、デオ730形の3タイプがあり、外観はほぼ同じだが、装備品の流用元により、形式が異なっている。全タイプ1両のみの運行で、鴨東線の開業に備え、1987(昭和62)年から1988(昭和63)年にかけて導入された。車体の長さが15.2mと、やや短く、前後に2つの乗降扉を持つのが特長となっている。

↑修学院駅を発車したデオ720形(左)と車庫内に停まるデオ730形(右)。塗装は各車両で異なるが形はほぼ同じだ

 

↑バリアフリー対応したデオ720形722号車。リニューアル工事が少しずつ進められ、同車の色は神社仏閣をイメージした朱色に

 

700系は車体長が15m級と短いが、これは叡山電鉄の伝統でもある。叡山電鉄は京福電気鉄道から分離譲渡されたが、今も京福電気鉄道として残る嵐山本線(通称「嵐電」)も併用軌道路線が一部に残ることもあり、15m級の車両が主体となっている。叡山電鉄は、京都市電からの乗り入れを戦後(昭和20年代)に行った時期があり、その歴史がこうした車両の短さとして残っている。また、18m級の長い車体を採用しようにも、ホームの長さもこの車体の長さに合わせていることもあり、簡単に変更することが難しいようだ。

 

ちなみに700系は叡山本線の運行と、鞍馬線では、主に平日の朝夕、出町柳駅〜市原駅間の列車の一部に利用されている。なお、700系の732号車は観光用の「ひえい」に改造されている(詳細後述)。

 

700系が叡山本線の主力車両なのに対して、鞍馬線の主力車両が800系だ。こちらは車体長15m級の2両編成車両で、京阪鴨東線の開業で増えた乗客に対応するために1990(平成2)年から2両×5編成、計10両が導入された。

↑800系のデオ800形801-851編成。800系は帯色がそれぞれ異なっているのが特長だ。最近、正面下に排障器が付けられた

 

↑デオ810形815-816号車は特別塗装車で「ギャラリートレイン・こもれび」として四季の森をバックにした動物が描かれる

 

800系は搭載機器が異なるデオ800形とデオ810形の2タイプがある。帯色は編成すべて異なり、たとえば山並みをイメージした緑、鞍馬の桜をイメージしたピンクなど、沿線のイメージしたカラーの帯が巻かれている。

 

【叡電を深掘り⑤】「きらら」「ひえい」と楽しい観光列車が走る

観光用の車両も走っている。2タイプが導入されているが、この車両もユニークだ。

 

まずは鞍馬線用に1997(平成9)年から翌年にかけて2両×2編成が導入されたのが900系展望列車「きらら」だ。「紅葉を観るために乗りに来ていただく車両」というのがコンセプトで、座席はクロスシートとともに、窓側を向いた座席を備えるなど、特別な造り。さらに、中央部のガラス窓は上まで広く開けられるなど、凝っている。現在は、紅葉にちなんだメイプルオレンジ塗装車と、新緑期に楽しめる「青もみじきらら」が用意されている。

↑展望列車「きらら」メイプルオレンジ塗装車。側面のガラス窓が広いことが良く分かる。1998年度の鉄道友の会「ローレル賞」を受賞した

 

きららとともに人気となっている観光用車両が700系デオ732号車を改造した観光列車「ひえい」で、正面にゴールド塗装の楕円が付くのが特長だ。この楕円は、比叡山、鞍馬山の持つ神秘的イメージを表現したものだとされる。内外装ともに深緑色で、側面の窓も楕円形、窓の下に比叡山の山霧をイメージした金色の細いストライプが入る。

 

凝った造りが好評で、2018年度のグッドデザイン賞、さらに2019年の鉄道友の会「ローレル賞」を受賞した。

 

観光列車「ひえい」は出町柳駅〜八瀬比叡山口駅間を主に運行される。展望列車「きらら」と共に運行時刻がホームページで紹介されている。車両検査日などを除き、この時刻に合わせて走っているので参考にしてみてはいかがだろう。

↑八瀬比叡山口駅〜三宅八幡駅間を走る観光列車「ひえい」。正面の楕円の形に合わせて、運転席は中央に設けられている

 

【叡電を深掘り⑥】2両編成はぎりぎり!始発駅・出町柳のホーム

さて、叡山本線の沿線を旅することにしよう。始発駅は出町柳駅。接続する京阪鴨東線の地下駅から7番出口をあがっていくと、すぐ目の前に叡山電鉄の駅舎がある。雨にも濡れずに乗り換えができて便利だ。

 

叡山電鉄の出町柳駅は、1両もしくは2両の電車にあわせるかのようにコンパクトだ。全車が折り返すいわゆる「櫛形ホーム」で、入口側の左から叡山本線の八瀬比叡山口方面行き1番線ホーム、降車ホームをはさみ、鞍馬線の2・3番線ホームが平行して設けられる。右側3番線に停車した2両編成の車両は、ホームぎりぎりに納まる形となる。先頭1両目の前の扉はホームが狭く危険なために、この先は危険と、三角コーンが置かれ注意を促していた。1・2番線の間にある降車ホームも幅がかなり狭い。このあたり京都の街中にある駅のため、拡幅工事が容易に行えない様子が窺える。

↑始発駅・出町柳駅。3番線ホームまであり、2両編成が停車したホームの先端部は非常に狭い(左下)。駅ではグッズ類も販売

 

ちなみに、叡山電鉄の利用は交通系ICカードでの支払いが可能で、乗降時は駅の読取機にタッチ、もしくは運転士後ろのICカード読取機にタッチして下車する。1日乗車券「えぇきっぷ」も大人1200円で通年用意。出町柳駅、もしくは鞍馬駅(時間限定)などで購入できる。

 

列車の本数は多く、日中は出町柳駅発、鞍馬駅行きと八瀬比叡山口駅行きがほぼ15分おきで発車している。また平日の朝7〜8時、夕方17〜18時には、鞍馬線の市原駅行きも出ている。

 

【叡電を深掘り⑦】修学院駅に来たら車庫を見よう

さて、出町柳駅から、この日は八瀬比叡山口駅行きに乗車した。700系1両編成の車両のロングシートに座る。朝早かったせいか、空いていた。

 

出町柳駅を出発し、京都の町並みを眺めながら走る。東大路通り(市道181号)の踏切を越えれば、最初の駅、元田中駅に停車する。この駅、上り下りホームが市道を挟むように対岸にある。続いて茶山駅、一乗寺駅と京都の街中の駅が続く。

 

一乗寺駅の次の駅が修学院駅だ。駅の東に位置する修学院離宮の名前にちなむ。ここで目を向けておきたいのが、進行方向、右手にある車庫だろう。ここには珍しい車両も停められている。

↑修学院駅の東側に隣接して設けられる修学院車庫。この日、検修庫には900系の「青もみじきらら」が停められていた

 

新旧車両に混じって、奥に停められていることが多いのが、荷台を持つ車両だ。こちらはデト1000形と呼ばれる事業用車で、荷台にレールやバラストを積んで走る。保線専用の車両で、無蓋電動貨車(むがいでんどうかしゃ)と呼ばれている。この電車は叡山電鉄に現在残る車両のうち唯一の京福電気鉄道時代に生まれた車両だ。車庫を囲む塀の外から見えるが、運がよければ他車両に隠されることなく車両全体を望むこともできる。

↑デト1000形無蓋電動貨車。荷台にクレーンが付く。この日はZ形パンタグラフを持ち上げた姿を見ることができた

 

さて修学院車庫で珍しい電車を見たあとは、再び、下り電車に乗り込む。

 

【叡電を深掘り⑧】鞍馬線が分岐する宝ケ池駅の不思議

次の駅は宝ケ池駅だ。叡山本線と、鞍馬線との分岐駅で、なかなかユニークな形の駅である。

 

修学院駅方面からまっすぐ北へ進む線路は1・2番線の叡山本線のホームだ。西側に位置する4番線が鞍馬方面行き。中ほどのホーム、2番線の向かい側3番線は鞍馬方面から出町柳駅方面へ向かうホームだ。

 

ホームの南側に駅の地上通路があり、この通路で乗り換えや、乗降ができる。この通路は宝ケ池構内踏切ともなっているが、踏切の東側と西側には、駅の入口が特に設けられているわけではない。こうした構造もあり、構内踏切は歩行者用通路も兼ねているようで、地元の人たちが乗る自転車や歩行者が間断なく通り過ぎる。駅構内の踏切のはずなのに、この駅では不思議な光景がごく日常となっている。

↑鞍馬方面から出町柳方面へ向かう電車は、叡山本線の下り線路を平面交差し、上り線路に合流する

 

↑宝ケ池構内踏切を兼ねる各ホームを結ぶ通路。中央は2・3番線ホーム。写真のように自転車が多く通りぬけている

 

【叡電を深掘り⑨】終点、レトロな八瀬比叡山口駅の秘密

宝ケ池駅の2番線を発車した八瀬比叡山口駅行きの電車。この宝ケ池駅付近から郊外の趣も強まってくる。

 

次の三宅八幡駅から先で、進行方向左手から高野川が近づいてきたら終点も近い。駅を過ぎると、叡山本線で最大の傾斜33.3パーミル(1000m走る間に33.3m登る)、25パーミル、18パーミルと終点、八瀬比叡山口駅との1駅の間に厳しい勾配が続く。

↑鉄骨平屋造り、切妻造の金属板葺きと凝った八瀬比叡山口駅。停まるのはデオ730形731号車、深緑塗装が目立つ

 

そして叡山本線の終点、八瀬比叡山口駅へ到着する。大正末期に造られた駅の立派さには行くたびに驚かされる。トレイン・シェッドと呼ばれる大型の屋根の覆われた造りで支える鉄骨の柱はリベットで接合した造り。ヨーロッパのターミナル駅をイメージさせる駅は、ドイツ人技師の設計と伝えられる。

 

当時、同線を造った京都電燈の財力を感じさせる終着駅だ。賓客を迎えるべく凝った造りにしたのだろうか、そうした歴史の記述が駅に掲示されていないのが残念に感じた。

↑現在の八瀬比叡山口駅には、右から記した開業当時の「八瀬驛」という駅名看板が付く。右上は2015(平成27)年に訪れた時のもの

 

手元に2015(平成27)年3月に撮影した同駅の写真があった。当時の駅舎の駅名看板は「八瀬比叡山口駅」だったが、現在は開業当時の「八瀬驛」に掛け替えられ、よりレトロ感が強まっていた。

 

【叡電を深掘り⑩】叡山ケーブルは現在、別会社の路線に

叡山本線を開業させた京都電燈は、八瀬比叡山口駅から比叡山へ登る観光客のために叡山ケーブルと叡山ロープウェイを開業させた。叡山本線の開業が1925(大正14)年9月27日、叡山ケーブルが同じ年の12月20日のことだった。さらにケーブルの山頂駅(ケーブル比叡駅)の先に、叡山ロープウェイも1928(昭和3)年10月21日に開業させている。いずれも京都電燈が手がけた鋼索線と索道線(ロープウェイ線)だった。

 

現在、叡山ケーブルの路線名は、京福電気鉄道鋼索線と呼ばれる。ロープウェイの運行も京福電気鉄道が行っている。叡山電鉄も、かつては京福電気鉄道の路線だったが、後に京福電気鉄道とたもとを分かっている。つまり電車とケーブルカー、ロープウェイは別会社によって運行されているわけだ。

↑ケーブル八瀬駅を発車する叡山ケーブル。2021年3月に車体デザインをリニューアル、外観が変更されている(写真は旧塗装)

 

ちなみに別会社となってはいるものの、叡山電鉄の出町柳駅〜八瀬比叡山口駅間と、叡山ケーブル、叡山ロープウェイ。さらに比叡山内のシャトルバス、また比叡山延暦寺の諸堂巡拝券がセットになった「比叡山延暦寺巡拝 叡山電車きっぷ」が大人3200円で用意されている。比叡山へ向かうときには便利だ。

 

八瀬比叡山口駅から叡山ケーブルの山麓駅・ケーブル八瀬駅までは徒歩4〜5分ほど。高野川の流れや草花を楽しみながらの道のりで、のんびり比叡山麓の自然を楽しみながら散策できる。ケーブル八瀬駅の近くには、八瀬もみじの小径(やせもみじのこみち/入場無料)もある。八瀬比叡山口駅に着き、そのまま帰ってしまうのはもったいない。ぜひとも叡山ケーブルのケーブル八瀬駅も目指したいものである。

空力効果のある“エアロ”と専用の足まわりで意のままに走れる「モデューロ X」

クルマ好きにとって愛車を自分流に仕立てることはひとつのテーマだ。アフターパーツメーカーも数多くあるけれど、それならばいっそのことメーカー直系のカスタムカーはいかが? 本稿ではホンダの「モデューロX」を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

Modulo X

モデューロ X from ホンダ

ホンダの4輪車純正アクセサリーを手がけるホンダアクセスが作り上げたコンプリートカーブランドがモデューロ X。メインのコンセプトは、ホンダ車を知り尽くしたエンジニアが匠の技で熟成させたカスタムカー。開発アドバイザーはあの“ドリキン”こと土屋圭市氏だ。特にエアロ開発では実効空力を重視し、低速度域でも効果が感じられるエアロパーツを搭載。サスやホイールも専用に仕立てたもので、あらゆる路面環境でも高い接地感が魅力だ。

[History] アルミホイールのブランドとしてスタート

モデューロは、ホンダアクセスのアルミホイールブランドとして1994年に誕生。1990年代後半にはエアロパーツやサスペンションなどラインナップを拡大した。2013年にはHonda純正のコンプリートカーブランド、モデューロ Xシリーズがデビューした。

 

【イチオシモデル】

FIT e:HEV Modulo X

286万6600円(税込)

「FIT e:HEV Modulo Xは土屋圭市さんと開発担当者による徹底した走り込みによって完成しました。ビギナーから腕に覚えのある方までドライビングが楽しめる1台です。また年内発売を目指して、『ヴェゼル e:HEV』のモデューロ Xも開発中です。お楽しみに!」(モデューロ X)

 

↑パワートレインに手を加えず、エアロパーツ、ホイール、サスペンションで走りの質を高めることが信条だ

 

危険な「あおり運転」を検知できる! カロッツェリア「VREC-DZ800DC」など、ドラレコ新モデル2種を発売

パイオニアは、2カメラタイプドライブレコーダーの新モデル「VREC-DZ800DC」「VREC-DH301D」を発売します。

 

VREC-DZ800DCは、前後の高画素数カメラ(各約200万画素)に、STARVIS技術搭載ソニー製CMOSセンサーを採用。夜間でも高感度・高画質に記録できる「ナイトサイト」に対応し、昼夜を問わず鮮明な映像を記録できます。6月発売予定で、実売価格は税込3万4000円前後。

↑VREC-DZ800DC

 

後方からのあおり運転を検知するとドライバーへ通知する「後方車両接近検知機能」を搭載し、未然にトラブルの回避が可能。新開発の画像認識技術による昼夜別々のアルゴリズムを用いて、高い認識率で検知・録画を行います。前方車両の急ブレーキや強引な割り込みなどで自車が急ブレーキをかけた場合に自動で記録する「急制動検知機能」も搭載。映像はイベントフォルダに記録され、上書きの心配もありません。

↑後方車両接近検知機能

 

↑急制動検知機能

 

駐車中の衝撃を検知すると、周囲の状況を記録。エンジン停止後最大40分間稼働する通常の「駐車監視機能」で検知前20秒間と検知後20秒間を記録し、その後は「駐車監視機能(セキュリティモード)」をオンにすると、24時間365日、常に車を監視できます。記録時間は検知後1分間、3分間、5分間から選択可能。次回乗車時に本体の画面表示と警告音でお知らせします。動作中にLEDインジケーターを点灯する設定も可能です。

↑駐車監視機能(セキュリティモード)

 

VREC-DH301Dは、前後の高画素数カメラ(フロントカメラ:約370万画素、リアカメラ:約200万画素)に、STARVIS技術搭載ソニー製CMOSセンサーを採用し、昼夜を問わず鮮明な映像を記録可能。7月発売予定で、実売価格は税込2万8000円前後。

↑VREC-DH301D

 

録画映像や操作画面が見やすい、3.0インチの大画面液晶モニターを搭載。操作ボタンを側面・上部に配置し、コンパクトでスッキリしたデザインが特徴。分かりやすさや使いやすさにこだわった操作ガイド表示や、SDメモリーカードの状態を検知し異常がある場合に知らせる警告機能など、様々な安心・サポート機能も搭載しています。

↑操作ガイド

将来の「アップルカー」は充電プラグを自動で位置合わせ?アップルの特許取得が明らかに

現在EV(電気自動車)のほとんどは、ドライバー本人が手動で充電ケーブルを差し込む必要があります。しかしアップルが、開発中と噂される自動運転EV「アップルカー」向けと思しき「自動で充電プラグの位置合わせをしてくれる」特許を取得したことが明らかとなりました。

 

米特許商標庁が承認した「パッシブアライメント機構を備えた充電ステーション」(改訂版)では、ドライバーが駐車してすぐに充電を始められるような工学的システムを提案しています。

 

この特許の中心となるのは、車両本体のソケットに差し込むめる充電プラグを備えた充電ステーションです。このプラグはスライド式のロッドに取り付けられており、垂直および水平方向に移動できるものです。

Apple/USPTO

 

EV側のソケットの高さはメーカーや車種が同じでも、積載重量やタイヤの空気圧などで変わる可能性もあり、それに合わせてプラグ側が動くというわけです。

 

そして運転中のEV側では、充電ステーションに近づくと充電ソケットのカバーを上に開くしくみが備わることになります。ドライバーや自動運転車は、充電ステーションとうまく接続できるよう、車両をできるだけ近づけなければなりません。

 

この特許では、その努力を最小限に抑えるしくみも提案されています。すなわち充電プラグが繋げられる範囲まで近づけば、その後はほぼ自動的に調整できるとのことです。スライ式ドロッドにより充電プラグが動かせることで、車両を近づけすぎてもプラグを押し戻すことができ、車体にぶつかるダメージを最小に抑えられるというものです。

 

またアップルカー側のフラップ(パタパタ開閉するもの)が開いて充電プラグをソケット内に収まるようにしたり、壊れやすい充電プラグを保護するため上部に強い衝撃を吸収するプレートを配置したりと、故障対策にもかなりの注意が払われています。

Apple/USPTO

 

さらに適切に接続しやすくするため、ソケットの周りが漏斗のようになってプラグを充電コネクタに誘導したりするしくみもあり。また結合が外れないよう磁石を使うことも提案されており、iPhoneをワイヤレス充電するとき位置合わせに磁石を使うMagSafeに近い発想といえます。

 

アップルは毎週のように数多くの特許を出願しており、実際に製品化されるものは一部に過ぎません。今回の特許も「アップル社内で研究されている」以上の事実を裏付けておらず、仮にアップルカーが発売されたとしても採用される保証はどこにもないでしょう。

 

とはいえ、アップルカーの充電関連らしき特許は、これまでにも何回か出願されています。今回の特許出願も2020年に取得された特許の改良版であり、それだけアップルが真剣に検討している可能性も窺えます。先日も「声で指示すれば、行き先や駐車場所まで自動的に決めてくれる」特許出願が見つかっていましたが、夢のアップルカーが実現する日を楽しみにしたいところです。

 

Source:USPTO

via:AppleInsider

テスラ車にCarPlayを(ラズパイを使って)力尽くで導入するソフトウェアが公開される

米テスラ製の電気自動車ではアップルのCarPlayが利用できず、車のオーナーらが強く要望しても叶えられる気配がありません。そのため、誰もがテスラ車で(Raspberry Piを経由して)CarPlayを導入できるソフトウェアを公開した人物が現れました。

 

ポーランドの開発者Michal Gapinski※氏は今年初め、自らのTesla Model 3にCarPlayを導入できた(車本体のタッチパネルを使って操作)ことを報告していました。

 

 

さらに約半年かけて、他の人も使えるソフトウェア「Tesla Android」のアルファ版をGithubに初公開。

 

 

この回避策は、LTEモデムとWi-Fi機能を持つRasberry Piを使い、Androidベースのカスタムファームウェアを実行させ、さらにマイクロHDMI-HDMIケーブルとイーサネットケーブルを使ってテスラ車に繋いでいます。つまりRasberry Pi側から出力したCarPlayのインターフェースを車載ブラウザに表示させ、マップやApple Musicなどのアップル製アプリを使えるようにしたわけです。システムは走行中でも動作し、テスラのステアリングホイールにあるメディアボタンで操作もできるそうです。

 

Gapinski氏は、最新アルファ版の主な狙いはユーザビリティ(使いやすさ)にあると語っています。「このプロジェクトが拡大し、テスラコミュニティで人気を勝ちえるためには、レスポンスのよいAndroid体験を提供する必要があります」とのこと。そうでなければユーザーは使ってくれないため、と説明しています。

 

現時点では機材の用意もインストールも簡単とは言えませんが、いずれ「ほんの数分で導入できるものに簡素化し、コストと参入障壁の両方を減らす」ことを目指すと述べられています。

 

2020年にはテスラがApple Musicのサポートを検討している手がかりも見つかっていましたが、結局は実現していません。テスラCEOのイーロン・マスク氏も、CarPlayを搭載して欲しいとの要望をスルーしているようでもあり、テスラ車のオーナーは自力で望みを叶えるしかなさそうです。

 

Source:Michal Gapinski(Twitter)
via:MacRumors

 

※Michallはストローク付き、Gapinskiのnはアキュートアクセント付きが正式な表記です

「オーテック」は高級感漂うスタイリングと細部までこだわったインテリアが自慢

クルマ好きにとって愛車を自分流に仕立てることはひとつのテーマだ。アフターパーツメーカーも数多くあるけれど、それならばいっそのことメーカー直系のカスタムカーはいかが? 本稿では日産の「オーテック」を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

AUTECH

オーテック from 日産

オーテックジャパンは日産グループ内の特装車メーカー。あの「西部警察」の劇中車を作っていた会社であり、生粋の技術者集団といわれる。初代社長はスカイラインの父として知られる桜井眞一郎氏だ。

 

カスタムカーブランドの「AUTECH」は同社のクラフトマンシップを継承しつつ、スポーティでありながらも高級感漂うスタイリングが特徴。ブランドアイコニックカラーは創業地である茅ヶ崎の海と空をイメージしたブルーだ。

[History] いまやNISMOも手がける名門

日産グループ内の特装車メーカーとして1986年に設立。当初はトラックなどの商用車中心だったが、のちに乗用車もラインナップ。いまも人気の「ハイウェイスター」は同社製が発祥。近年ではスポーツドライビング向けのNISMOシリーズの開発も行っている。

 

【イチオシモデル】

ノート AUTECH CROSSOVER

253万7700円~279万6200円(税込)

「先進コンパクトであるノートをベースに、オーテックブランドのプレミアムスポーティなコンセプトとSUVの機能やスタイルを融合。内外装ともに専用品を盛り込んだオーテック仕様の、走りまでにもこだわった、すべてに上質感のあるコンパクトクロスオーバーモデルです!」(オーテック)

 

↑同社専用シートやウッド調のフィニッシャーなど上質さに定評がある。車内はクラスを超えた雰囲気を持つ

 

GW前に開通! 新東名「伊勢原大山IC〜新秦野IC間」を通り初めした注目のクルマとは?

2022年のゴールデンウィークも終了。クルマで遠方へ出かけた人も多いのでは? 先立つ4月16日には、新東名高速道路 伊勢原大山IC~新秦野IC間が開通しました。

 

当日は開通式も執り行われ、厳重な感染対策の下、400人もの関係者が参列。さらに、高速道路やこの区間に関わる“働くクルマ”約60台が集結する、大規模な祝典となりました。今回は、そんな晴れの日を盛り上げた“ヒーロー”にスポットを当てるほか、同区間に導入された最新技術も紹介していきます。

 

「新東名」と「東名」って何が違う?

その前に、新東名高速道路「伊勢原IC〜秦野IC間」の開通によって何が変わるのか、これから首都圏と中部圏はどのようにつながっていくのかを解説します。

首都圏と中部圏を移動する際、「上で行くか? 下で行くか?」と東名 or 新東名で悩んだ経験もあるはず。まずは、東名と新東名の違いから紹介しましょう。

 

東名高速道路は、東京IC(インターチェンジ)〜小牧ICまでの347キロメートルを結んでいます。1969年に全線が開通し、そこから50年以上も“現役”。最近だと、テレビCMなどで「東名リニューアル工事を実施しています」と耳にすることも多いはず。

 

一方の新東名高速道路は、海老名南JCT(ジャンクション)〜豊田東JCTの約253キロメートルを結んでいます。2012年に御殿場JCT〜浜松いなさJCTまでが開通し、今回新たに 伊勢原IC〜新秦野IC間が開通したことによって、全体の9割となる228キロメートルが走行可能になりました。とはいえ、まだ全線開通していないため、途中の区間を使ったことがあるという人がほとんどでしょう。

 

「東名があるのに、どうして新東名を作ったの?」と思うかもしれませんが、2つの路線があることで、目的地へのよりスムーズな走行が可能になりました。また日本の首都圏をつなぐ主要な物流ルートのため、安全かつスムーズに走行が求められます。実際、新東名が開通以降、渋滞が約7割減少したとのデータも! より安心・安全、快適でスムーズな走行ができるように新東名が作られたんですね。

 

そのため東名と新東名、2つの高速道路の全線開通は、スムーズな物流が可能になるだけでなく、防災や緊急医療、地域経済の活性化まで、様々な業界から多くの期待が寄せられています。今回で全体の9割となる部分が開通したということで、多くのメディアも注目していました。

 

残すは、新秦野IC〜新御殿場JCT

式典の様子はYouTubeでも生中継され、Withコロナ時代を感じさせる、ハイブリッド形式での開通式となりました。

 

黒岩祐治神奈川県知事やNEXCO中日本 代表取締役社長の宮池克人氏などのお歴々が祝辞を述べる一方、来賓の方々から、未開通の新秦野IC〜新御殿場JCTについても言及されることがありました。トンネル工事中、一部に脆弱な地質が見つかったことから、現在工事が難航しているとのこと。無事全線が開通できるよう、工事に従事する作業員の安全、そして地域住民や環境にも配慮しながら進めていただきたいですね。

↑来賓の挨拶が終わると、地元の秦野曽屋高校、伊勢原高校、伊志田高校のブラスバンドの生演奏とともに「鋏入れとくす玉開披」が実施

 

高速道路に関わる働くクルマと、地域と関連の深い“クルマ”が通り初め! 注目は?

ここからは、式典の目玉と言ってもいいでしょう! 通り初めパレードが行われました。橋の上には、地元のファミリーや大きなカメラを持った“ギャラリー”が。全60台もの働くクルマが走行するということで、一般からの注目度も高かったようです。

↑跨道橋もできたて! 地域住民がつめかけ、パレードを見守った

 

まず注目を集めたのは、黄色い車体でおなじみの、高速道路で働くクルマ。といえば、パトロールや路面清掃を行う車両をすぐにイメージできるでしょう。今回は、NEXCO 中日本ハイウェイ・メンテナンス東名が開発した新型路面清掃車が登場。

↑2021年10月から圏央道に試行導入されている「NEXCO 中日本ハイウェイ・メンテナンス東名 新型路面清掃車」。本格稼働が期待される

 

↑前方の吸引装置からゴミを吸い上げ、車両後方のタンクに集積する。高速道路上に散乱する小石やペットボトルなどの回収に活躍

 

これまで高速道路に落下したゴミがあるとその都度、作業員が車両から降りて拾っていたのですが、この新車両では、前方にある強力なバキュームによって回収できるように! 作業の省力化と作業員の安全性の向上が期待されます。働くクルマも進化し続けているんですね。

 

日本の一般道路を初走行!

そしてもうひとつ、注目の“クルマ”が参戦しました。先導車に続き、パレードの先頭を務めたのは、見覚えのある流線形のボディ! GetNavi webでは何度か取材してお馴染みの、東海大学のソーラーカー「東海チャレンジャー号」です。

↑開通区間の近くにキャンパスがある東海大学から、ソーラーカーチームの最新マシンが参戦

 

太陽のエネルギーのみで最高時速90kmで爆走、オーストラリア大陸の約3000kmを縦断する世界最高峰のレース「BRIDGESTONE World Solar Challenge(BWSC)」で総合優勝2回、準優勝2回の好成績を収めてきた名門チーム。

 

【関連記事】大学生が世界最高峰の大会に挑む! 東海大学ソーラーカーチームの強さの秘密

 

↑ボディの先端に「祝 開通」のステッカーが貼られた特別仕様で参加

 

「今回開通した区間は東海大学の地元。近隣の多くの方々に走行する姿をお見せすることができ、嬉しかったです。パレードでは、一般の車と一緒に走行するため、1か月以上前から現地の下見や車両整備、当日のメンバーの動きなどを念入りにNEXCO中日本様と打ち合わせしてきました。それでも当日は、走り始める瞬間からゴールするまで常に緊張しましたね」

 

とは、今年度から学生代表を任されている東海大学工学研究科 修士1年の宇都一郎さん。実際に走行した感覚は「オーストラリアの広大な大地を走行している感覚に似ていた」とのこと。タイヤが細く、風の影響も大きく受けるソーラーカーでも静かに走行できたのは、新東名ならではかもしれませんね。

 

日本では高速道路を含む一般道路での走行が許可されていないため、貴重なシーンとなりました。

↑東海大学ソーラーカーチームは世界でも一目置かれる存在

 

東海大学ソーラーカーチームは、国内大会のほか、前出のBWSC2023年大会での総合優勝を目指し、日々鍛錬を重ねています。

 

【関連記事】敵は風と気温とカンガルー!? ソーラーカーとソーラーカーレースの驚くべき7つの真実

 

 

トンネル内にプロジェクションマッピング!? 走りやすさにこだわった新東名の新技術

さて、我々もパレードを追いかけて通り染めさせてもらいました。するとそこかしこで目にしたのが、走行時の安全性や快適性などを高める、最新技術の数々です。

 

トンネルの中をしばらく走行していると現れたのは、プロジェクションマッピング技術を活用した案内表示。

↑文字は投影しているため、必要に応じて文面の変更が可能だ

 

↑投影するプロジェクションマッピングの機器

 

一見、塗装によるものにも見えるのですが、非常電話脇にある機械から映し出されています。長いトンネル内での漫然運転防止や非常時の設備として活用されるとのこと。

 

他にも、山沿いで霧が発生しやすい区間には、1メートル程度の低い位置に照明が設置。これは視界の確保だけでなく、生息するホタルなど周辺の自然環境にも配慮したもの。ドライバーだけでなく動物や昆虫、植物にもやさしい道路になっているんですね。

↑照明が下部に設置されている

 

↑排水性に長けた最新の舗装を採用

 

実際に走行してみて、新東名の緩やかなカーブや緩やかな勾配を体感することができました。また、普段何気なく走っている道路も、細かい部分に注目してみると、最新技術によって安全が確保されていることがわかります。

 

全線開通に向け工事が進む新東名高速道路。仕事でプライベートで、これから走る機会がある人は、安全運転で快適なドライブを!

 

撮影/湯浅立志 取材・文/つるたちかこ、GetNavi web編集部

「モデリスタ」は躍動的で生命力のあるデザインがウリ!

クルマ好きにとって愛車を自分流に仕立てることはひとつのテーマだ。アフターパーツメーカーも数多くあるけれど、それならばいっそのことメーカー直系のカスタムカーはいかが? 本稿ではトヨタ/レクサス車のカスタマイズブランド「モデリスタ」を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

MODELLISTA

モデリスタ from トヨタ/レクサス

トヨタのメーカー直系カスタマイズブランド。イタリア語で“デザイナー”を意味するモデリスタの最大の特徴はそのデザイン。コンセプトは「Resonating Emotion~響感の創造~」で、感性に訴求するデザインだ。デザインをクルマと“響鳴”させて、新たな価値へと昇華させる。

 

ベース車の造形やデザインと対話して造られる同ブランドのエアロパーツは独創的なデザインが多い。また実用性重視のパーツも発売している。

[History] ユーザーの「もっと」に応える

“あなたの「もっと」に応えたい”をモットーにユーザーの願いを叶えるブランドとして1997年にスタート。設立当初は特別仕様のクルマ製造がメインだったが、2008年頃よりトヨタやレクサスなどのアフターパーツによるカスタムカーの製造がメインになった。

 

【イチオシモデル】躍動的で生命力のあるデザインがウリ!

ノア/ヴォクシー

パーツ価格3300円~26万4000円(税込)

「ノア、ヴォクシーともフロントフェイスに注目してください。ノーマルからガラリと印象が変化するパーツをリリースしています。またリアのイルミルーフスポイラーもオススメのパーツ。LEDライトがリアビューを先進的な雰囲気にドレスアップしているのがポイントです!」(モデリスタ)

 

↑東京オートサロン 2022で初披露されたモデリスタのノアとヴォクシー。メッキの加飾パーツがアクセントだ

 

復活ラリーアートのカスタマイズカーに注目!

クルマ好きにとって愛車を自分流に仕立てることはひとつのテーマだ。アフターパーツメーカーも数多くあるけれど、それならばいっそのことメーカー直系のカスタムカーはいかが? 本稿では三菱自動車の「ラリーアート」を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

クルマにピッタリ合った完成度の高さが魅力

その昔、クルマのオプションはアルミホイールやフォグランプが大半だったころ、メーカーが直接カスタマイズしたクルマはショーモデルや競技車両がほとんどだった。レースではワークス、市販はアフターパーツと線引きされていたのだ。それが最近ではメーカー直系のチューニングパーツやコンプリートカーが購入可能になった。メーカー直系ということはメーカークオリティが保たれているということ。アフターパーツながらも品質保証がつくモノもあり、新車購入時にオーダーすれば納車時には希望のスタイルになっている。

 

メーカー直系のカスタムカーは大きなアドバンテージがある。例えばベース車両の開発段階から積極的に関われるため様々なテストデータなどを入手でき、クルマに合ったパーツが開発可能という点だ。またそのパーツは単体でもディーラーで購入可能。ベース車を知り尽くしているからこそ、バツグンの完成度を誇るカスタムカーが手に入るのだ。

↑メーカー直系カスタムのメリットは納車時には“完成”していること。オリジナルのシルエットを崩さないのも魅力だ

 

RALLIART

ラリーアート from 三菱

ラリーアートは三菱自動車のワークスチーム。同社のモータースポーツ活動を支えるブランドで、ギャラン、ランエボでのWRC、パジェロでのパリダカなどラリーやレースで大活躍した。

 

そんなモータースポーツのイメージを受け継ぎながら、自分らしい走りスタイリングを求めるユーザーにワクワク感を届けるべく、純正アクセサリーの販売を展開していくという。またモータースポーツへの参戦も再度検討するというから期待大である。

 

[History] 活動休止を経て復活したラリーアートに注目!

1984年に設立。三菱のモータースポーツ活動のブランドであり、自動車メーカーチームとして競技への参加や競技用部品の開発、ドライバーの支援などを行ってきた。2010年に活動を休止したが2021年、純正アクセサリーとして幅広いモデルへの展開で復活が発表された。

 

【イチオシモデル】

アウトランダー RALLIART Style

パーツ価格未定

「昨年発売したアウトランダーのPグレードに、今春発売予定のラリーアート純正アクセサリーを装着した『ラリーアートスタイル』です。かつてのラリー活動からインスパイアした同ブランドを印象付ける、マッドフラップやサイドデカールで走りにかける情熱を表現。ブラックで統一されたホイールやルーフスポイラーとボディの赤いアクセントカラーで、スポーティなスタイルを提案しています!」(ラリーアート)

 

ラリーアートのコンセプトモデルが続々!

写真上はエクリプス クロス・ラリーアートスタイル。同ブランドの方程式に沿ったカラーリングやマッドフラップを装備。写真下はビジョン・ラリーアート・コンセプト。オンロードのイメージを強く出し、新しいラリーアートの可能性を表現する。

 

 

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アップルが元フォードのベテラン幹部を採用したウワサ。「アップルカー」の開発が加速?

アップルが、米フォード・モーターで長年にわたり安全対策や車両設計を率いていたベテラン幹部を採用したと報じられています。同社が開発中と噂される自動運転EV(電気自動車)、通称「アップルカー」のプロジェクトが大きく加速するのかもしれません。

 

米Bloombergは情報筋の話として、アップルがデジ・ウィカシェビッチ(Desi Ujkashevic)氏を自動車プロジェクトで採用したと伝えています。

 

ウィカシェビッチ氏はフォードに30年以上も勤務し、多くの車種において内装および外装、シャーシや電機部品のエンジニアリングを統括したことがあり、新たなEV開発にも関わっていたそうです。最近では自動車安全エンジニアリングのグローバルディレクターを務めていたとのこと。

 

1991年にウィカシェビッチ氏がフォードに入社してから出世街道を歩んできたことは、フォードの公式サイトにも詳しく説明されています。Bloombergによると、具体的にはフォード・エスケープやエクスプローラー、フィエスタやフォーカスの開発にも関わったそうです。

 

こうした経歴から、ウィカシェビッチ氏は「アップルカー」開発に役立つ豊富な専門知識を持っており、安全システムの開発に貢献する可能性がうかがえます。以前Bloombergは、アップルが「アップルカー」をテスラやWaymoの車より安全にしようと考えており、運転システムの不調にそなえてバックアップシステム搭載を検討していると伝えていました

 

アップルが自動運転EV開発計画「Project Titan」を社内で進めていることは公然の秘密であり、ここ数年、フォードをはじめとする自動車会社から何度も人材を採用してきました。ただしプロジェクトのリーダーが交代することも度々で、最近も有名アナリストMing-Chi Kuo氏は開発チームが「一時的に」解散したと述べていたことがあります。

 

そんななかでアップルは2025年までの発売を目指しながらも、実際には2028年までずれ込む可能性も指摘されています。むやみに開発を急ぐよりも、より安全なアップルカーを実現するためにも「徐行運転」が望ましいかもしれません。

Source:Bloomberg
via:MacRumors

ドイツの代表的な自動車メーカーからBMW「グランクーペ」、メルセデス・ベンツ「Cクラス」の新車をレポート!

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」は、ドイツの代表的メーカーであるBMWとメルセデス・ベンツそれぞれの新作をピックアップする。4シリーズ・グランクーペの2代目は、スタイリッシュな外観と実用性を兼ね備えた1台。新型Cクラスは全方位的に進化した総合力の高さが魅力だ。

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【その1】新生グランクーペは万能なモデルに進化!

4ドアクーペ

BMW

4シリーズ・グランクーペ

SPEC【M440i xDrive】●全長×全幅×全高:4783×1852×1442mm●車両重量:1900kg●総排気量:2997cc●エンジン形式:直列6気筒DOHC+ターボ●最高出力:374PS/5500〜6500rpm●最大トルク:51.0kg-m/1900〜5000rpm●WLTCモード燃費:10.8km/L

 

実用性とデザイン性、走りの3拍子が揃う万能モデル!

4シリーズのなかでは、実用性の高さも魅力のグランクーペが新型へとチェンジした。クーペを名乗るだけに、外観は変わらずスタイリッシュ。2ドア版と同じくBMW伝統のキドニーグリルが縦長のデザインになった効果もあって、フロントマスクは先代よりも押しが強まったのが印象的だ。

 

一方、4ドアということで後席の使い勝手などは3シリーズあたりと変わらない。荷室も十分な広さが確保されるので、ワゴン的な用途にも適するという先代の美点もしっかり受け継がれている。

 

現状、日本仕様のエンジンは2L4気筒と3L6気筒のガソリンターボという2種類。今回は後者に試乗したが、動力性能はさすがに強力だった。駆動が4WDとなるだけに安定性も高く、路面環境を問わず積極的に走らせられる。先代より格段に骨格の剛性感が向上したことも魅力のひとつ。新型は実用性とスタイリング、さらにスポーツ性も上々という万能な1台に仕上げられていた。

 

[Point 1]クーペでも実用性はセダン級

インパネ回りのデザインや装備は2ドアの4シリーズと基本的に同じ。運転支援系の機能は、もちろんトップレベル。クーペながら、後席の広さなどはセダンと同等の水準となる。

 

[Point 2]先代よりも存在感の強い造形に

繊細な風情だった先代と比較すると、新型の外観は骨太で存在感の強さを強調する仕立てに変化。一方ドアハンドルなどはフリップ式に変更して、スマートさも演出している。

 

[Point 3]使い勝手はワゴンと同等

荷室容量は、後席を使用する通常時でも470Lを確保。後席を完全に畳めば1290Lにまで拡大でき、ワゴン的な用途にも十分使える。

 

[Point 4]現状はガソリン仕様のみ

すでにEV版であるi4の先行予約も始まっているが、現状はガソリン仕様の2種のみ。3Lターボは直列6気筒らしい質感の高さも魅力だ。

 

[ラインナップ](グレード:エンジン/駆動方式/ミッション/価格)

420i:2.0L+ターボ/2WD/8速AT/632万円(税込)

420i Mスポーツ:2.0L+ターボ/2WD/8速AT/673万円(税込)

M440i xDrive:3.0L+ターボ/4WD/8速AT/1005万円(税込)

 

 

【その2】スポーティでありながら貫禄も旗艦級!

セダン

メルセデス・ベンツ

Cクラス

SPEC【C200アバンギャルド】●全長×全幅×全高:4755×1820×1435mm●車両重量:1660kg●総排気量:1494cc●エンジン形式:直列4気筒DOHC+ターボ●最高出力:204PS/5800〜6100rpm●最大トルク:30.6kg-m/1800〜4000rpm●WLTCモード燃費:14.5km/L

 

新しいパワートレインは痛快な吹き上がりが魅力的!

旗艦のSクラスと見まがうような外観ながら、ボンネットのパワードームなどの細部でスポーティさも独自に演出するのが新型Cクラス。大きな画面を2つ並べたインパネは、とりわけ若い世代に強い訴求力を持つに違いない。充実した先進装備はもちろん、ホイールベースの拡大やパッケージングの改善が効いて、車内空間の余裕は先代より向上している。

 

走りもなかなか鮮烈だ。クイックレシオのステアリングや最大で2.5度の後輪操舵機構を備えたAMGラインは、タイトターンでの回頭性が驚くほど高く、引き締まった足まわりと相まってスポーティな性格を強調している。

 

動力性能もより強力になった。エンジンとモーターの出力が共に向上したC200の新しいパワートレインは、俊敏なレスポンスと痛快な吹き上がりを両立していて走る楽しさも十分。スムーズなエンジン再始動もマイルドハイブリッドならではの利点だ。

 

先代と同じく豊かな低速トルクと経済性を兼ね備えたディーゼルが選べるほか、新型ではクロスオーバーモデルのオールテレインが初めて選べるようになったこともトピックだ。先代と比べて価格がだいぶ高くなったように感じられるが、中身はそれ以上に充実していることは間違いない。

 

[Point 1]先進装備の充実ぶりはSクラス級

11.9インチのセンターディスプレイなど、Sクラスを彷彿させる室内。生体認証システムやARナビゲーションなどの先進装備も充実していた。先代より室内空間も拡大した。

 

[Point 2]後輪操舵などの採用で俊敏な操縦性を実現

クイックなステアリングレシオや後輪操舵の採用などで、走りはスポーティなキャラクターに仕上げられている。その一方、外観は旗艦のSクラスに通じる存在感を獲得。

 

[Point 3]ミドル級セダンらしい広さ

先代から拡大されていた荷室容量は455Lと、数値的にもミドル級のセダンとして十分な広さが確保。ただし、ボディ形状の関係から開口部の大きさは若干ながら控えめだ。

 

[Point 4]ガソリン仕様は着実に進化

現状のガソリン仕様は、先代と同じく1.5L4気筒+電気モーターのマイルドハイブリッドだが中身はアップデート。エンジンはこのほかに2Lクリーンディーゼルも用意されている。

 

[ラインナップ](グレード:エンジン/駆動方式/ミッション/価格)

C200アバンギャルド:1.5L+ターボ/2WD/9速AT/651万円(税込)

C200 4MATICアバンギャルド:1.5L+ターボ/4WD/9速AT/ 681万円(税込)

C220dアバンギャルド:2.0Lディーゼル+ターボ/2WD/9速AT/ 679万円(税込)

 

文/小野泰治、岡本幸一郎 撮影/郡 大二郎

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

スポーティでありながら貫禄も旗艦級のメルセデス・ベンツ新型Cクラス!

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」は、メルセデス・ベンツの新作をピックアップする。新型Cクラスは全方位的に進化した総合力の高さが魅力だ。

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

新しいパワートレインは痛快な吹き上がりが魅力的!

セダン

メルセデス・ベンツ

Cクラス

SPEC【C200アバンギャルド】●全長×全幅×全高:4755×1820×1435mm●車両重量:1660kg●総排気量:1494cc●エンジン形式:直列4気筒DOHC+ターボ●最高出力:204PS/5800〜6100rpm●最大トルク:30.6kg-m/1800〜4000rpm●WLTCモード燃費:14.5km/L

 

旗艦のSクラスと見まがうような外観ながら、ボンネットのパワードームなどの細部でスポーティさも独自に演出するのが新型Cクラス。大きな画面を2つ並べたインパネは、とりわけ若い世代に強い訴求力を持つに違いない。充実した先進装備はもちろん、ホイールベースの拡大やパッケージングの改善が効いて、車内空間の余裕は先代より向上している。

 

走りもなかなか鮮烈だ。クイックレシオのステアリングや最大で2.5度の後輪操舵機構を備えたAMGラインは、タイトターンでの回頭性が驚くほど高く、引き締まった足まわりと相まってスポーティな性格を強調している。

 

動力性能もより強力になった。エンジンとモーターの出力が共に向上したC200の新しいパワートレインは、俊敏なレスポンスと痛快な吹き上がりを両立していて走る楽しさも十分。スムーズなエンジン再始動もマイルドハイブリッドならではの利点だ。

 

先代と同じく豊かな低速トルクと経済性を兼ね備えたディーゼルが選べるほか、新型ではクロスオーバーモデルのオールテレインが初めて選べるようになったこともトピックだ。先代と比べて価格がだいぶ高くなったように感じられるが、中身はそれ以上に充実していることは間違いない。

 

【Point 1】先進装備の充実ぶりはSクラス級

11.9インチのセンターディスプレイなど、Sクラスを彷彿させる室内。生体認証システムやARナビゲーションなどの先進装備も充実していた。先代より室内空間も拡大した。

 

【Point 2】後輪操舵などの採用で俊敏な操縦性を実現

クイックなステアリングレシオや後輪操舵の採用などで、走りはスポーティなキャラクターに仕上げられている。その一方、外観は旗艦のSクラスに通じる存在感を獲得。

 

【Point 3】ミドル級セダンらしい広さ

先代から拡大されていた荷室容量は455Lと、数値的にもミドル級のセダンとして十分な広さが確保。ただし、ボディ形状の関係から開口部の大きさは若干ながら控えめだ。

 

【Point 4】ガソリン仕様は着実に進化

現状のガソリン仕様は、先代と同じく1.5L4気筒+電気モーターのマイルドハイブリッドだが中身はアップデート。エンジンはこのほかに2Lクリーンディーゼルも用意されている。

 

[ラインナップ](グレード:エンジン/駆動方式/ミッション/価格)

C200アバンギャルド:1.5L+ターボ/2WD/9速AT/651万円(税込)

C200 4MATICアバンギャルド:1.5L+ターボ/4WD/9速AT/ 681万円(税込)

C220dアバンギャルド:2.0Lディーゼル+ターボ/2WD/9速AT/ 679万円(税込)

 

文/岡本幸一郎 撮影/郡 大二郎

 

 

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“新車両”導入で活気づく「北条鉄道」で未知との遭遇

おもしろローカル線の旅83〜〜北条鉄道北条線(兵庫県)〜〜

 

兵庫県の播磨地方(はりまちほう)を走る北条鉄道北条線。乗車時間20分ほどの短い路線である。この短いローカル線が、いま全国の鉄道ファンの注目を浴びている。わざわざ遠くから乗りに訪れる人も増えてきた。

 

その理由は〝新車両〟を導入したから。この新車両だけでなく、初めて下りる駅や町、風景もなかなか新鮮で楽しめた。そんな北条鉄道で〝未知との遭遇〟を楽しんでみたい。

 

【関連記事】
懐かしの気動車に乗りたい!旅したい!「小湊鐵道」「いすみ鉄道」

 

【未知との遭遇①】昭和初期まで〝播丹鐵道〟北条支線だった

JR加古川線の粟生駅(あおえき)〜北条町駅間13.6kmを走る北条鉄道北条線(以下「北条鉄道」と略)。まずは北条鉄道の路線史から見ていくことにしよう。筆者の手元に北条鉄道の古い路線図がある。昭和10年前後に印刷された「播丹(ばんたん)鐵道沿線案内」だ。この案内によると、いまJRの路線になっている加古川線をはじめ北条鉄道、2008(平成20)年に廃止された三木鉄道などの路線がみな、播丹鐵道という会社の路線だったことがわかった。

↑昭和10年前後に発行の播丹鐵道の路線図の一部。図の上部に北条鉄道(当時は北条支線)の路線を確認することができる

 

北条鉄道の開業は1915(大正4)年3月3日のこと。播州鉄道という会社により粟生駅〜北条町駅間が開業した。その8年後の1923(大正12)年12月21日には播丹鐵道に譲渡された。掲載の路線図はその当時のものだ。

 

“ばんたん”と読ませる鉄道会社がこの会社以外にもあった。現在の播但線(ばんたんせん)を開業させた播但鐵道で、この会社は1903(明治36)年に山陽鉄道という会社に路線を譲渡している。山陽鉄道は現在の山陽本線を所有していた会社で、1906(明治39)年に国有化、播但線も同時に国有化された。

 

同じ読みで混同しやすいが、もう一度整理しておくと、播但線を開業させたのは播但鐵道という会社。加古川線、北条支線を運営したのが播丹鐵道という会社だった。太平洋戦争中に慌ただしく国有化された全国の私鉄は非常に多かったが、播丹鐵道も1943(昭和18)年6月1日に国有化された。

 

【未知との遭遇②】網引駅近くで戦時下に起きた悲惨なできごと

戦時下に国有化された播丹鐵道。北条支線は以来、国鉄北条線となる。その2年後に大惨事が起きた。

 

現在の法華口駅(ほっけぐちえき)近くに鶉野飛行場(うずらのひこうじょう)という軍用飛行場があった。この飛行場は戦時下に海軍航空隊の訓練基地として使われていたが、当初は川西航空機(現・新明和工業の前身)姫路製作所の専用飛行場だった。戦時下に同工場で組み立てられていたのが戦闘機・紫電改(しでんかい)だった。

↑網引駅(あびきえき)付近を走る北条鉄道キハ40形。駅から300mほど、ちょうど写真付近で、戦時下に大事故が起きた

 

1945(昭和20)年3月31日、網引駅の西側300mほどの地点で、その事故は起こった。試験飛行中の紫電改が鶉野飛行場へ高度を下げ着陸態勢をとり、エンジンの出力を絞ったところ、突然にエンジンがとまってしまうトラブルが起きた。操縦していたのは20歳と若い飛行士だった。網引駅近くの線路は堤の上のやや高い場所を走っている。その線路に高度を落とした紫電改の尾輪が引っかかってしまい、そのせいでレールをねじ曲げてしまったのである。

 

運悪く現場へさしかかっていた上り列車の蒸気機関車と客車が転覆。満員の乗客を乗せていたからたまらない。死者12名、重軽傷者104名という大惨事となった。事故が起きた当初は戦時中だったこともあり、軍事機密として秘匿された。事故の詳細が明らかにされたのは戦後のことだった。

↑法華口駅に立つ「鶉野飛行場跡地」の案内。田園が広がる先に元飛行場の遺構が残り当時の様子を偲ぶことができる

 

網引駅近くの事故地点には小さな慰霊碑が立てられ、亡くなった方の霊を悼むように黄色い菜の花が堤を彩っていた。最寄りの網引駅には事故の概要を伝える案内板も立てられている。戦時下とはいえ、このような惨事が起きながら、国民に何も伝えられなかったとは、改めて戦争の不条理を感じてしまう。

 

戦後は長らく国鉄北条線だったが、接続する加古川線がJR西日本に引き継がれる前の1985(昭和60)年4月1日に、第三セクターの北条鉄道へ路線の運営が引き継がれた。北条鉄道になって以降は、様々な企業努力が実り、第三セクター路線としては珍しく朝夕の列車本数を増やすなど、輸送実績も順調に推移し、三セク鉄道の〝優等生〟となっている。

 

【未知との遭遇③】路線のほとんどが加西市内を走る

ここで路線の概要を見ておこう。

路線と距離 北条鉄道北条線/粟生駅〜北条町駅13.8km
全線単線非電化
開業 播州鉄道により1915(大正4)年3月3日に粟生駅〜北条町駅間が全通
(開業当初の区間距離は13.68km)
駅数 8駅(起終点駅を含む)

 

北条鉄道の起点は粟生駅で、この駅でJR加古川線と、神戸電鉄粟生線と接続している。路線は小野市と加西市(かさいし)を走っているが、小野市内の駅は粟生駅のみで、他の7駅はみな加西市内の駅となる。

 

つまり、北条鉄道は加西市内線と言ってもよいわけだ。そうした背景もあり、北条鉄道の主な出資者は加西市と兵庫県で、北条鉄道の代表取締役社長は加西市長が兼ねている。

 

【未知との遭遇④】形式名の頭に付くフラワの意味は?

次に走る車両を見てみよう。北条鉄道を走る主力車両は2000(平成12)年に運転開始したフラワ2000形気動車で、現在3両が走る。長さ18mの両運転台式の気動車で、3両はピンク、紫、緑と車体の色がそれぞれ異なる。

↑主力車両のフラワ2000形は3両あり、ピンク、紫、緑と3色の車体色をしている

 

形式名だが、なぜ「フラワ2000」と名付けられているのだろう。加西市には兵庫県立フラワーセンターがあり、「フラワ」はこのセンターの名前にちなんで付けられた。また2000は、2000年に導入されたことによる。ちなみに兵庫県立フラワーセンターへは、北条町駅からバス利用で、12〜20分ほどの距離にある。

 

なお、運用される車両は北条鉄道のホームページに運行計画表が掲示されており、そちらで運用状況が確認できる。この運行計画表を見るとフラワ2000-1から3は、およそ1週間単位のローテーションで、順次登場して走っている。

 

【未知との遭遇⑤】“新車両”キハ40形が沿線を彩る存在に

↑2021(令和3)年3月12日までJR五能線などを走っていたキハ40形535。秋田当時と同じ白と青の五能線カラーで走る

 

2022(令和4)年3月13日、長年、フラワ2000のみだった北条鉄道に新たに加わったのがキハ40形である。キハ40系は国鉄時代に開発された普通列車用の気動車で、キハ40形はバリエーション豊富な同系列の中の、両運転台付き車両を指す。北条鉄道ではJR東日本の南秋田センターに配置されていたキハ40形535車を有償で譲り受けた。

 

それまで北条鉄道は3両態勢で列車を運行してきたが、朝夕の増便もあり、車両運用に余力がなくなっていた。ちょうどJR東日本がキハ40系車両の引退を計画していたこともあり、そのうちの1両を譲り受けたのだった。

 

改造費や輸送費用は加西市が助成、加えてクラウドファンディングによる寄付を募った。ちなみに車内には寄付をした方々の名前が掲示されている。見ると筆者が見知った方の名前も散見された。

↑正面には5枚の銘板が付く。「新潟鉄工所・昭和64年」「北条鉄道・2022年2月」とあった。側面にはサボも付く(右下)

 

キハ40系は、JR西日本エリアで珍しい車両ではなく、今も多くが在籍している。とはいえ、車体更新がだいぶ進み、側面の窓の形などが、オリジナルなキハ40系の姿と異なるものが多い。さらに北条鉄道が導入したキハ40系は、遠く離れた北東北を走っていた白と青の〝五能線色〟ということが珍しく感じるのか、鉄道ファンのみならず、旅好きの人々に注目を浴びるようになり、走行日に訪れる人が多い。

 

キハ40形は毎日走るわけではない。1日中走る日が限られている。こうした日には乗車するため、また撮影のために沿線を詰めかける人が目立つ。筆者が乗車した列車も、運行を始めてすでに1か月たっていたにもかかわらず、座席は満席で立って乗車する人も多かった。まさに〝新車両景気〟のように感じられた。なお、キハ40形は週末に必ず運行されるわけではないのでご注意を。運行予定をしっかりチェックしてから訪ねることをお勧めしたい。

↑1日フリー切符も通常のもの(右上)とは異なるストラップ付きを期間限定で用意。鉄印(左)もキハ40形のイラスト入りを販売

 

【未知との遭遇⑥】粟生は乗り換えに便利だが不便な駅だった

さあ、北条鉄道の旅に出てみよう。起点は粟生駅。前述したようにJR加古川線と神戸電鉄粟生線と接続している。ホームは1・2番線が加古川線、神戸電鉄粟生線が4番線で、3番線が北条鉄道の発着ホームとなる。この駅の番線のふり方は変則的で、北条鉄道3番線の向かい側が加古川線の下り1番線ホームで、跨線橋を渡った側の加古川線上りホームが2番線となっている。

 

北条鉄道は土・休日の場合、ほぼ1時間おきに発着する。また平日は6時・7時台と、18時台が30分おきに増便される。

↑北条鉄道のホームは手前3番線。向かい側が加古川線の下り1番線ホームとなる。1番線に停まる電車は国鉄形通勤電車の103系だ

 

JR加古川線、神戸電鉄粟生線との乗り継ぎは非常に便利だ。接続する側の両線とも日中、ほぼ1時間おきに列車が走っていて、北条鉄道への乗り継ぎ、また北条鉄道からの乗り継ぎがしやすいように、列車ダイヤも調整されている。特に加古川線の上り下り列車との乗り継ぎは非常に良く、ほとんど待つことなしに乗車できる。

 

ただ、もし乗り継ぎに間に合わなかったら、どの列車も1時間待ちになってしまうので注意が必要だ。

↑瀟洒な造りの粟生駅の正面(左上)。跨線橋の下に加古川線のホームがある。奥に見えるのが神戸電鉄粟生線の車両

 

乗り継ぎに便利な粟生駅だが、駅から外に出ると驚かされる。駅舎は洋風で瀟洒な造りで、駅前にロータリーが整備され、民家が駅前通り沿いに建ち並ぶのだが、商店がない。駅横に「小野市立あお陶遊館アルテ」という陶芸教室などが開かれる公共施設があるほかは理髪店があるのみで、3本の路線が集まるターミナル駅らしくない印象だった。

 

粟生駅がある小野市の繁華街は、加古川線の小野町駅、もしくは神戸電鉄粟生線の小野駅周辺にある。一方の加古川線の粟生駅周辺は下車する人が少ない駅のせいか、商店の営業には向かなかったようだ。同駅で下りる場合には、ランチ時であれば、お弁当などを持参して動くことをお勧めしたい。

↑粟生駅を発車した列車はJRの線路と分かれ、大きく左カーブ、水田地帯の中、次の網引駅を目指す

 

【未知との遭遇⑦】北条鉄道の駅がみなきれいな理由は?

粟生駅11時9分発の北条町駅行きに乗車する。この日はキハ40形が1日走る運行日で、さらに日曜日で混みあっていた。ちなみに、粟生駅ホームには交通系ICカードのリーダーがあり、JRから北条鉄道への乗り換え時には、タッチして北条鉄道を利用する。北条鉄道線内ではICカードの利用は不可で、乗車時に整理券を受け取り、下車の際は現金での支払いとなる。

 

1日フリーきっぷ(840円)も用意され、車内および、終点の北条町駅で購入することができる。粟生駅〜北条町駅間の片道運賃が420円なので、往復+1駅どこかで下車すれば、お得になる計算だ。

 

短い路線だが、途中駅に下りてみて気がつくことがある。どの駅もきれいに掃除され、整備されているのである。ローカル線というと、なかなか掃除の行き届いていない路線もあるが、なぜなのだろう?

↑北条鉄道の駅には登録有形文化財に指定された古い駅も多い。駅舎内もきれいに掃除、また手入れをされた駅が多い(写真は長駅)

 

北条鉄道の各駅は終点の北条町駅を除きすべて無人駅だが、ボランティアの駅長が多くの駅に存在する。ステーションマスター制度という仕組みで、2年の任期で駅長となり、駅の清掃とともに、趣味や特技を生かしたイベントや、教室などを駅舎で開くことができる。

 

例えば網引駅では毎月2回、ボランティア駅長が切り絵教室を開いている。法華口駅のボランティア駅長は絵手紙教室、播磨下里駅では寺の住職がボランティア駅長を務める。播磨下里駅の駅舎には下里庵の名が付けられ月に2回、開放されている(現在はコロナ禍で活動休止中)。

 

こうした試みは、駅の清掃だけでなく、地域のコミュニティづくりにも役立っているようだ。とはいえあくまでボランティア活動なだけに、最近はなり手が少ないようである。

 

【未知との遭遇⑧】法華口駅で珍しいシステムが導入される

100年以上前に播州鉄道北条支線として開業した北条鉄道。古い駅舎もいくつか残る。その1つが粟生駅から3つ目の法華口駅(ほっけぐちえき)だ。この駅、木造駅舎が建つ古いホームの先に新しいホームが2面あり、現在は、新しいホームが使われている。

↑開業当時に造られたホームの先に新しいホームが設けられ、上り下り列車の交換が可能な造りとなっている。春先は桜もきれいだ

 

この法華口駅には上り下り列車の交換施設が設けられている。北条鉄道の路線唯一の交換施設だ。2020(令和2)年6月に新設された交換施設で、全国初の保安システム「票券指令閉そく式」が採用された。名称を見るとなかなか難しいシステムのように感じるが、行うことはシンプルだ。

 

まず、進行してきた列車は法華口駅の右側の線路に入る。ホームに停車し、乗客の乗降が済んだら、運転士は運転席の左側に設けられたカードリーダーに、持参するICカードをタッチする。タッチすると、先の信号が赤から緑に変わり、列車が進行できる仕組みだ。

 

現在、列車の交換システムの多くに「自動閉そく式」が使われている。このシステムの導入で自動的に列車交換が行われているが、「自動閉そく式」に比べて「票券指令閉そく式」は設置コストが割安なことが導入の決め手となった。列車本数が少ない路線には最適なシステムかもしれない。

↑列車の左側にカードリーダー(右上)が設けられ、そこにICカードをタッチすると、先の信号が青に変わり、前進が可能になる

 

【未知との遭遇⑨】8年前の播磨下里駅の駅舎写真と比べてみる

法華口駅をはじめ複数の駅に停車し、列車は進行していく。

 

駅周辺には民家が建ち並び、駅を離れると左右に水田風景が広がる。列車からあまり見えないのだが、沿線には1つの特長がある。北条鉄道が走る播磨地方には、ため池が非常に多いのだ。本原稿でも掲載している地図のように、いたるところに大小のため池がある。

 

この地方は降雨量が少ない。そのため、古くからため池が多く設けられた。江戸時代前期に築造のものもあるとされる。播磨地方に限った数字ではないのだが、兵庫県全体には、全国でトップの2万2107個もある。ちなみに、ため池が多いと予想される香川県のため池の数が1万2269の3位で、圧倒的に兵庫県のため池が多いということに気がついた。

↑播磨下里駅に入線するキハ40形。駅舎に掲げられる駅名標はレトロそのものだった

 

法華口駅の次が播磨下里駅で、この駅にも開業当時の駅舎が残る。法華口駅とともに駅舎が有形登録文化財に指定されている。駅舎には手書きの駅名標が付けられている。この駅名標、戦争前の表記方法だった右から左へ横書きした文字が、下に透けて見えていておもしろい。

↑播磨下里駅の2014(平成26)年と現在の姿。このように改装され、きれいになった駅が目立つ

 

手元に2014(平成26)年9月に撮影した同駅の写真があった。現在と比べて見ると、駅舎内の中扉が作り直されるなど、かなり手直しされている様子がわかる。記録によると2016(平成28)年3月に駅舎を改築とある。同鉄道の駅はきれいに掃除されているばかりでなく、駅舎、トイレなど改築・改装されたところも多い。

 

北条鉄道に初めて乗車して、これらの駅に下りる人も多いはず。駅舎はもちろん、入ったトイレが汚い、または使えなかったとなると、旅行者は困るし、残念に感じてしまう。このあたりの対応はローカル線といえども、旅人に来てもらうためには大切な要素だと思われた。

 

【未知との遭遇⑩】「長」と書いて何と読む?

播磨下里駅の次の駅は長駅だ。「長」と書いて何と読むのだろう。

 

答えは「おさ」。駅は加西市西長町にあり、その長が駅名になったようだ。同地の長という地名は同地を支配した豪族の長氏に由来する。また地域を支配し、統率する首長を意味したオサに由来するという説が同地に残されている。掲載の写真のように、春先には旧ホームの上に植えられた桜が美しい。

↑長駅を発車するフラワ2000-1。後ろが長駅の駅舎で路線開業時の建物が残る。桜は旧ホームに連なるように植えられている

 

↑年季が入った長駅の駅舎に驚かされた。駅舎内には、手荷物・小荷物取扱所という古い看板も掲げられていた(右下)

 

訪れた日には開いていなかったが、駅舎の裏手入口には結婚相談所「駅ナカ婚活相談所」の看板があった。ボランティア駅長が主催するイベントのようで、各駅でなかなか多彩な催しが行われていることがわかる。

 

長駅を発車して間もなく右カーブした車内から西池というため池が見えてくる。播磨地方にはため池が非常に多いと前述したが、線路のそばに見えるため池はこの西池のみに限られる。

↑播磨横田駅を発車して3分ほど。終点の北条町駅に近づくキハ40形。周囲には民家も増え始め賑わいが感じられた

 

【未知との遭遇⑪】終点の北条町駅の賑わいぶりが意外すぎる

播磨横田駅を過ぎて3分ほど。終点の北条町駅に到着した。これまでの駅周辺に比べると、かなりの賑わいぶりだ。

 

起点の粟生駅が、複数の路線との接続駅であるものの、駅周辺に何もないところであったし、途中の6駅も、駅近くには民家があるが、商店はほぼない。比べて北条町駅前には交通量の多い県道23号線が走る、駅からこの道をまたぐ跨線橋も設けられていて、ショッピングモール「アスティアかさい」に通じている。駅に隣接して寿司チェーン店、大型ショッピングモール、大型電器店がある。

 

要は加西市の中心部はこの北条町駅周辺だったのである。北条鉄道の旅を楽しむ際には、この北条町駅で一休み。次の列車を待つ1時間の間に、ランチなどを済ませたほうが賢明だ。

↑北条町駅のホームに入線するキハ40形。ホームの裏手には検修施設も設けられている

 

始発駅と終点の駅で、これほどまで賑わいが違う路線も珍しいだろう。北条鉄道のように行き止まり路線を盲腸線と呼ぶことがある。盲腸線は、大概が始発駅は地方の都市で、先に行くほど、郊外となり、賑わいが薄れるところが多い。北条鉄道の場合は、まったく逆で終点のほうが賑わっていた。

 

鉄道や車両だけでなく、この対比が新鮮だった。キハ40形という新たな車両が導入されたことで、より活気づく北条鉄道。同鉄道ならではの特異なロケーションが、魅力付けとなり、訪れる人が多いように感じた。

 

今後、どのように路線が変貌していくか、興味が尽きない。

↑北条町駅のホームに停車するキハ40形。側線にはフラワ2000-1が停車していた
↑駅向かいに建つショッピングモールから北条町駅を望む。県道を越える自由通路が設けられていて行き来も便利だ

 

BMW4シリーズ新生グランクーペは万能なモデルに進化!

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」は、ドイツの代表的メーカーであるBMWの新作をピックアップする。4シリーズ・グランクーペの2代目は、スタイリッシュな外観と実用性を兼ね備えた1台だ。

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

実用性とデザイン性、走りの3拍子が揃う万能モデル!

4ドアクーペ

BMW

4シリーズ・グランクーペ

SPEC【M440i xDrive】●全長×全幅×全高:4783×1852×1442mm●車両重量:1900kg●総排気量:2997cc●エンジン形式:直列6気筒DOHC+ターボ●最高出力:374PS/5500〜6500rpm●最大トルク:51.0kg-m/1900〜5000rpm●WLTCモード燃費:10.8km/L

 

4シリーズのなかでは、実用性の高さも魅力のグランクーペが新型へとチェンジした。クーペを名乗るだけに、外観は変わらずスタイリッシュ。2ドア版と同じくBMW伝統のキドニーグリルが縦長のデザインになった効果もあって、フロントマスクは先代よりも押しが強まったのが印象的だ。

 

一方、4ドアということで後席の使い勝手などは3シリーズあたりと変わらない。荷室も十分な広さが確保されるので、ワゴン的な用途にも適するという先代の美点もしっかり受け継がれている。

 

現状、日本仕様のエンジンは2L4気筒と3L6気筒のガソリンターボという2種類。今回は後者に試乗したが、動力性能はさすがに強力だった。駆動が4WDとなるだけに安定性も高く、路面環境を問わず積極的に走らせられる。先代より格段に骨格の剛性感が向上したことも魅力のひとつ。新型は実用性とスタイリング、さらにスポーツ性も上々という万能な1台に仕上げられていた。

 

【Point 1】クーペでも実用性はセダン級

インパネ回りのデザインや装備は2ドアの4シリーズと基本的に同じ。運転支援系の機能は、もちろんトップレベル。クーペながら、後席の広さなどはセダンと同等の水準となる。

 

【Point 2】先代よりも存在感の強い造形に

繊細な風情だった先代と比較すると、新型の外観は骨太で存在感の強さを強調する仕立てに変化。一方ドアハンドルなどはフリップ式に変更して、スマートさも演出している。

 

【Point 3】使い勝手はワゴンと同等

荷室容量は、後席を使用する通常時でも470Lを確保。後席を完全に畳めば1290Lにまで拡大でき、ワゴン的な用途にも十分使える。

 

【Point 4】現状はガソリン仕様のみ

すでにEV版であるi4の先行予約も始まっているが、現状はガソリン仕様の2種のみ。3Lターボは直列6気筒らしい質感の高さも魅力だ。

 

[ラインナップ](グレード:エンジン/駆動方式/ミッション/価格)

420i:2.0L+ターボ/2WD/8速AT/632万円(税込)

420i Mスポーツ:2.0L+ターボ/2WD/8速AT/673万円(税込)

M440i xDrive:3.0L+ターボ/4WD/8速AT/1005万円(税込)

 

文/小野泰治 撮影/郡 大二郎

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

ハワイアン航空、スターリンクの衛星インターネットを無償提供へ

米ハワイアン航空は衛星ブロードバンドインターネットを提携するスターリンクと提携し、無料の機内インターネットを提供すると発表しました。これは、大手航空会社として初めての試みとなります。

↑Markus Mainka / shutterstock.comより

 

スターリンクとは地球低軌道に小型衛星を数多く打ち上げ、衛星ネットワーク(コンステレーション)によって衛星ブロードバンドを提供する計画です。すでに一部地域にてサービスがスタートしており、通信速度の速さや遅延(レイテンシー)の小ささが特徴となっています。

 

今回発表された計画では、ハワイアン航空はすべての太平洋横断便にて、スターリンクによる機内インターネットを提供します。これにはエアバスのA321neo、A330、ボーイングの787-9が含まれており、乗客は動画視聴やオンラインゲームなどに十分な速度の高速インターネットを無料で利用できます。

 

ハワイアン航空では、2023年から一部の機材にて、スターリンクによる機内インターネットを提供する予定です。また米デルタ航空もスターリンクのテストを実施しており、今後はさまざまな航空会社にて、スターリンクによる高速な機内インターネットが利用できるようになることが期待されます。

 

Source: Hawaiian Airlines

マスク氏のトンネル会社、超高速交通プロジェクトに挑戦

実業家のイーロン・マスク氏はツイッターにて、所有するトンネル採掘会社ことボーリング・カンパニーが、超高速交通システム「ハイパーループ」の建設を試みる予定だと明かしています。

↑Volodimir Zozulinskyi / Shutterstock.comより

 

ボーリング・カンパニーとは都市交通の混雑を解消する目的で2016年に設立された会社で、独自にトンネルを設置し自動車や高速鉄道を運行することを想定しています。すでにラスベガスでは、採掘プロジェクトを進めています。

 

一方でハイパーループとは、低圧チューブの中を時速700マイル(約1100km/h)の超高速で乗り物(ポッド)が移動するアイディアです。こちらもマスク氏が2013年にコンセプトを発表したものの、実際のチューブやポッドの開発は参加する会社に委ねられています。

 

 

マスク氏のツイートによると、ボーリング・カンパニーは今後数年のうちに、ハイパーループの建設を試みるとのこと。その目的はアメリカに限らず世界の渋滞が激しい都市にて、混雑を解消することだとされています。さらにマスク氏は、地下トンネルは地表の気象状況に左右されず、ハイパーループのコンセプトにも適していると解説しているのです。

 

ボーリング・カンパニーは先日にシリーズCにて6億7500万ドル(約870億円)の資金調達を行っています。突拍子もないもののように思えるボーリング・カンパニーとハイパーループですが、その2つを組み合わせることにより、思わぬ化学反応が起きるのかもしれません。

 

Source: Elon Musk / Twitter

海景色を満喫!「日本海ひすいライン」郷愁さそう鉄旅【後編】

おもしろローカル線の旅82〜〜えちごトキめき鉄道・日本海ひすいライン(新潟県)その2〜〜

 

旧北陸本線の新潟県内、市振駅(いちぶりえき)〜直江津駅間を結ぶ日本海ひすいライン。路線名の通り、日本海の海景色が満喫できる。前編で紹介したように乗って楽しい車両が多く走る同路線。海沿いの駅だけでしに、トンネル内の珍しい駅があるなど変化に富んだ鉄旅を楽しんだ。

 

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乗り甲斐あり!「日本海ひすいライン」郷愁さそう鉄旅を堪能する【前編】

 

【郷愁さそう鉄旅⑦】直江津駅を出発!すぐに日本海と出会う

さっそく日本海ひすいラインの旅を楽しむことにしよう。本来は、起点から話を進めるべきなのだろうが、日本海ひすいラインの起点は無人駅の市振駅となる。無人駅から旅を始めるのもやや寂しいので、ターミナル駅の直江津駅から話を進めたい。

↑直江津駅の北口駅舎。佐渡汽船のフェリーが出港する港が近いことから港町の駅のイメージ。構内ではSLも見ることができる(左上)

 

日本海ひすいラインの列車が発着する直江津駅では、えちごトキめき鉄道の妙高はねうまライン、JR東日本の信越本線、そして十日町、越後湯沢方面へ向かう北越急行ほくほく線の各列車と接続している。

 

日本海ひすいラインの列車は1番線、もしくは2番線からの発着が多い。JR東日本の信越本線と、妙高はねうまラインは2番線から6番線までを共用している。ほくほく線は5・6番線を使う。呉越同舟といった趣のホーム利用は、やはり、北越急行を除く路線がすべて元JRの路線だったこともあるのだろう。

 

直江津駅構内にはD51が姿を現す。こちらは直江津駅に隣接する鉄道テーマパーク「D51レールパーク」で運行する観光用列車で、転車台がある同パークと直江津駅構内の間を往復する。使われるのはD51形蒸気機関車827号機で、乗客を乗せた車掌車(緩急車)2両を牽引して走る。

 

ちなみに、列車は朝を除きほぼ1時間おきの運行で、週末に運行される413系・455系「国鉄形観光急行」が補完する形で走ることもあり、さほど不便には感じない路線である。

↑日本海ひすいラインは旧北陸本線の新潟県内の市振駅〜直江津駅間を引き継いだ路線で、起点は市振駅、終点は直江津駅となる

 

さて、筆者がこの日に乗車した日本海ひすいラインの列車は、泊駅行きのET122形の通常タイプで、1人用座席に座りつつの旅が始まった。

 

直江津駅を発車すると、しばらく平行して走っていた妙高はねうまラインの線路が左手にカーブして離れていく。直江津の町を眺めつつ、しばらくすると湯殿トンネルへ入る。このトンネルを抜けると、すぐ右手に日本海が見えるようになる。そして右から国道8号が近づき、沿うように走る。

↑泊駅行きのET122形普通列車。直江津駅を発車後、谷浜駅から日本海と国道8号(左)に沿って走る旅となる

 

谷浜駅、次の有間川駅(ありまがわえき)と、海岸線をなぞるようにして走っていく。国道沿いには海産物を扱う商店、海岸には漁港もあり小さな船が停泊する風景を望むことができる。この2駅は、鉄道ファンにも人気があり、特に有間川駅は背景に海景色が望めるポイントがあって、同駅で下車する人も目立つ。

↑有間川駅のホームに到着した泊駅行き普通列車。クラシックな駅舎の前に、日本海が広がる風光明媚な駅だ

 

【郷愁さそう鉄旅⑧】注目を集める長大トンネルの中の筒石駅

有間川駅を発車すると、海景色とはしばらくお別れに。すぐに名立(なだち)トンネルへ入る。この先、トンネルが続く。

 

北陸本線が開業した当時は、海沿いに線路が敷かれたが、単線ルートで輸送力の増強が難しかった。さらに大規模な地滑りに悩まされた。また1963(昭和38)年3月には、列車転覆事故が起きてしまう。そこで、有間川駅〜浦本駅間はトンネル主体の路線を新たに設け、1969(昭和44)年9月29日に旧線から新線への切り替えが行われた。

 

そうして造られた名立トンネルを抜け名立駅へ。この駅は名立川という河川の上にホームが設けられている。トンネルとトンネルの間の、ごく狭い平野部に設けられているために、こうした構造になっている。名立駅を発車して、すぐに頸城(くびき)トンネルに入る。日本海ひすいラインで最も長いトンネルで、長さ1万1353mという長大なもの。JRを除く在来線最長のトンネルでもある。この頸城トンネルの途中に筒石駅がある。

↑筒石駅の構内。左は市振駅方面のホームで、右は直江津方面のホーム。駅の外に出るのには延々と続く階段を登る(右上)

 

筒石駅は頸城トンネルを建設する当時、廃止案もあったが、地元からの希望が強く、現在のようなトンネルの途中にホームが作られたとされる。

 

駅舎は海沿いの筒石集落から約1km登った山の上、海抜60mのところにある。ちなみに頸城トンネルが通るのは海抜20mの地点で、トンネルを掘る時に造られた斜坑が、今はホームへ降りる階段として活かされている。直江津方面の下りホームまでは290段、糸魚川方面の上りホームまでは280段の階段がある。もちろんエスカレーターやエレベーターはない。

 

JR当時は乗降する人も少ない駅だった。ところが、日本海ひすいラインとなってからは、この珍しい駅に乗り降りする人の姿を、よく見かけるようになっている。スピードを出して通り抜ける列車は少なめになったが、列車が通過する時に、ホーム上を強烈な風が通り抜けるので、駅通路からホームへ出入りする所には危険防止のために扉が設けられている。

↑糸魚川の平野部を走る下り貨物列車と日本海を望む。2021(令和3)年3月13日にはえちご押上ひすい海岸駅も設けられた

 

筒石駅がある頸城トンネルを抜けると能生駅(のうえき)へ。このあたりになるとようやく視界が開け始める。次の浦本駅から先は糸魚川市の平野部が少しずつ広がっていく。そして梶屋敷駅と新駅・えちご押上ひすい海岸駅の間には、前述した直流電化区間から、交流電化区間に変わるデッドセクションがある。といっても普通列車は気動車であるし、また電車や電気機関車が牽く貨物列車も、デッドセクションにかかわらず、スムーズに通り抜けていく。いまは交直流の変更も、それほど手間がかかる切り替えではないのだ。間もなく、北陸新幹線の接続駅、糸魚川駅へ到着する。

 

【郷愁さそう鉄旅⑨】途中下車し甲斐がある糸魚川駅

北陸新幹線とJR大糸線に接続する糸魚川駅はぜひとも下車したい駅だ。新幹線が開業した時に南側にアルプス口、1階には「糸魚川ジオステーションジオパル」が設けられた。複合型交流施設として、観光案内所などがあるほか、大糸線を走ったキハ52気動車が保存されている。

↑糸魚川駅のアルプス口。「糸魚川ジオステーション ジオパル」の前面は気動車の車庫として利用されたレンガ車庫の一部が使われている

 

↑地元の木材で作られたトワイライトエクスプレスの展望車を模した再現車両を展示。大きなジオラマも複数用意されている(左)

 

「糸魚川ジオステーション ジオパル」内には、糸魚川をかつて走った寝台特急「トワイライトエクスプレス」の展望客車や食堂車を再現した木製の車両も展示されている。ちなみにこの再現車両は、東京・六本木で2019(令和元)年に開かれた「天空ノ鉄道物語」という催しのために造られたもので、糸魚川の杉材で造られた縁から、催しが終了後に同施設へ運ばれた。

 

鉄道模型を走らせることができる大きなジオラマが複数あるほか、旧北陸本線を走った列車の行先表示板や、駅名のホーロー表示など、鉄道好きならば思わず見入ってしまうグッズが多く展示されている。

 

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【郷愁さそう鉄旅⑩】青海駅、親不知駅と気になる駅が続く

糸魚川駅で一休みしたら、終点を目指そう。糸魚川駅を出ると大きな川を渡るが、こちらは一級河川の姫川だ。姫川は一級河川の水質ランキングでトップに輝いた清流で、車窓から澄んだ流れを見ることができる。

 

そして青梅駅(おうみえき)へ。この駅、鉄道好きならば気になる駅である。進行方向左手に、古い操車場跡が残り、線路が敷かれたままになっている。かつて貨車が多く出入りしていた様子が見て取れる。また、山で隠れ全景は見えないものの、青海川をさかのぼった山あいに大きな工場がある。デンカ株式会社の青海工場だ。推定埋蔵量50億トンとされる黒姫山の石灰石を利用している工場が今も稼働している。

 

かつては青海駅から同工場へ引き込み線が敷かれ、貨車を使ってのセメント関連材料などの輸送を行っていた。輸送はトラック輸送が主体となり、すでに工場への引き込み線は廃止されているが、工場内には今も専用鉄道線が残り、材料の運搬などに利用されている。

↑青海駅に近づく「国鉄形観光急行」。写真右手に操車場の跡地が広がる。駅横には線路が敷かれたままで残される(右上)

 

青海駅の巨大な操車場の横には鉄道コンテナ用の基地がある。こちらは今も現役の青海オフレールステーションで、新潟県西部の鉄道コンテナの輸送に欠かせない重要拠点となっている。操車場跡地は、その一部が今も大切な役割を担っていたのである。

↑青海駅の西側まで海景色が楽しめる。ちょうどこの下がトンネルの入口で、この先、親不知駅までトンネル区間が続く

 

青海駅を発車すると、新潟県西部で最も険しい海岸線が連なる区間へ入る。名高い親不知(おやしらず)・子不知の海岸である。親不知子不知はかつての幹線道、北陸道の断崖絶壁が続く難所で、地名は源平の合戦に敗れ、越後に落ち延びた平頼盛(たいらよりもり)の後を追った妻・池ノ尼の愛児が波にさらわれた故事にちなむ(諸説あり)。

 

前編で紹介した戦前の絵葉書のように、古くは景勝地だったが、今は海岸側に北陸自動車道が造られ、かつての趣はない。列車に乗っていても、親不知駅付近では、海景色があまり良く見えないのが残念である。

↑国道8号から親不知海岸を遠望する。北陸自動車道の海上高架橋が海上部へ張り出している様子が分かる。右下は親不知駅ホーム

 

【郷愁さそう鉄旅⑪】市振駅が富山との〝境界駅〟なのだが

親不知駅を発車すると、間もなく4本のトンネルが続く。第2外波、第1外波、風波、親不知とトンネルが続く区間だが、この区間も1965(昭和40)年までは旧線だった区間で、トンネルを通すことで、複線化し、スムーズな列車運行が可能になった区間だ。

 

4536mの親不知トンネルを抜ければ間もなく市振駅へ到着する。この駅が日本海ひすいラインと、あいの風とやま鉄道線の境界駅となるのだが、普通列車は同駅で引き返さずに、2つ先の泊駅での折り返しとなる。

↑日本海ひすいラインの〝起点〟でもある市振。駅の案内標は日本海をイメージしたデザインだ。普通列車は2つ先の泊駅まで走る(右上)

 

市振駅まで来ると、南側の山々の険しさも薄れ、視野が開けてくる。一応、日本海ひすいラインの〝起点〟にあたる駅だが、無人駅である。駅構内に赤レンガの古い倉庫があるが、かつてランプ小屋と呼ばれた明治から大正初期に建てられた倉庫で、電気照明がない当時にカンテラ用の灯油を保管していたものだった。各地の古い駅に今も20前後が残されているとされる。

 

市振駅で写真を撮っていると、一緒に列車に乗ってきた御仁が一言「何もない駅ですね」と話しかけてきたが……。確かに駅付近は殺風景なことは確かである。市振の集落は駅の東側にあり、市振関所跡や市振港がある。また駅前を通る国道8号を西へ行くと、道の駅や県境がある。

↑市振駅は無人駅で寂しさが感じられた。構内には赤レンガの倉庫が。ランプ小屋(左下)と呼ばれる倉庫で灯油を保管する施設だった

 

さて「何もない」と言われた市振駅だが、気になる場所がある。それは国道8号を西に1.3kmほど歩いた先に流れる境川だ。国道8号とあいの風とやま鉄道線が平行して境川を越えている。

 

境川はその名前のとおり新潟県と富山県の県境の川だ。川を渡れば富山県、また川を渡れば北陸地方へ入るというように、旅情が高まる地点だ。列車の写真を撮るのもうってつけだ。春には桜の花も美しい。帰りには駅までの途中にある「道の駅越後市振の関」に立ち寄りたい。店内には、新潟・富山両県のお土産を扱う店や、この地域の郷土料理たら汁や定食が味わえる食堂もある。

 

ここで新潟と富山の魅力を味わいつつ市振駅へのんびり戻れば、日本海ひすいラインの鉄旅がさらに充実したものになるだろう。

 

斬新な顔立ちで、いざ勝負! レクサス初のBEV「RZ」が初公開

トヨタ自動車はレクサスブランドとして初となるバッテリーEV(BEV)車両の「RZ」を世界初公開しました。

↑レクサス初のBEVが登場(画像提供/トヨタ自動車)

 

トヨタ自動車における高級車ブランドのレクサスでは、2005年に投入されたハイブリッドカー「RX400h」以来、電動化が推進されてきたものの、BEVの発表は今回が初めて。トヨタでは2030年までにすべてのカテゴリーでBEVのフルラインナップを提供し、2035年にはグローバルでBEV100%を目指すとしています。

 

RZでは車体デザインとして、これまでレクサスの象徴だったフロントの「スピンドルグリル」を廃止し、「スピンドルボディ」を採用。トヨタによれば、これは「内燃機関の冷却などの必要がないBEVの機能的な進化や更なる空力性能向上を目指した」ものとのこと。

↑未来的な運転席(画像提供/トヨタ自動車)

 

またRZは、進化したステアリング制御とステアバイワイヤをLEXUSで初めて採用。約±150°のステアリング操舵角により、交差点やUターン、車庫入れ、ワインディングなどでもステアリングを持ち替える必要がありません。

 

一方、駆動システムには四輪駆動の「DIRECT4」と、高出力モーター「eAxle」を導入。加えて、レクサス初となるBEV専用プラットフォーム(e-TNGA)を搭載しています。モーター出力はフロントが150kWで、リアが80kW。バッテリー容量は71.4kWhで、航続距離は約450kmとなっています。

 

スマートフォンに専用アプリをインストールすれば、それをスマートデジタルキーとして利用し、ドアのロックやアンロック、エンジンスタートができます。またOTAアップデートにより、車両には常に最新のソフトウェアが導入されます。

↑欧米の高級BEVといざ勝負!(画像提供/トヨタ自動車)

 

RZは2022年の冬以降に発売予定で、価格は未発表。EVで先行する他社の高級ブランドに、レクサスがどこまで対抗できるのかに注目です。

 

太陽光×カーシェアはじまる!広島に登場した「世界初」のソーラーカーポートの正体

脱炭素化が急務な昨今、再生可能エネルギーが注目を集めています。その代表格のひとつが太陽光発電。太陽光発電といえば、家屋や工場などの屋根にパネルを設置するイメージが強いかもしれません。しかし今回紹介するのは、駐車場の屋根で発電を行い、電気自動車を充電するソーラーカーポートです。

 

日本ではまだそれほど馴染みのないソーラーカーですが、これを普及させるための実証実験が広島県で始まっています。世界初の取り組みも行われているという、その現地を取材しました。

 

太陽のエネルギーだけで車を走らせる「完全自立型」ソーラーカーポート

↑広島県に新たに登場した「完全自立型ソーラーカーポート」。広島県立広島産業会館の駐車場に設置されています。車種は、左からMAZDA MX-30 EV MODEL、日産リーフです。日産リーフから運用を始め、調整が済み次第MAZDA MX-30も加わる予定

 

今回紹介する新型ソーラーカーポートのポイントは2つあります。それが「完全自立型」「EVシェアリングサービスとの連携」です。この2つを兼ね備えるソーラーカーポートは、世界でも初となります。

 

●「完全自立型」ソーラーカーポートとは

従来のソーラーカーポートでは、太陽光だけで十分な発電量が得られない場合などのために、通常電源との接続がされていました。つまり、そこに駐車されている自動車の電源は、100%太陽光由来のものではない可能性がある、ということです。しかし、完全自立型ソーラーカーポートは通常電源に接続しておらず、電力供給の観点で文字通り「自立」しています。まだ設置されたばかりで、実証実験段階ではありますが、再生可能エネルギー普及の確実な一歩となる試みといえます。

 

●EVシェアリングサービスとの連携

すでに、普及しているカーシェアリングサービス。これと同様に電気自動車をシェアするのが、EVシェアリングサービスです。今回登場した完全自立型ソーラーカーポートは中国電力が提供するEVシェアリングサービス「eeV」と連携し、広島県の公用車として活用するほか、地域住民への貸し出しも行います。

 

↑ソーラーカーポート正面の表示板には、現在の発電量などがリアルタイムに表示されます

 

完全自立型かつ、EVシェアリングサービスと連携したソーラーカーポート設置が実現した裏には、3つの企業の連携と、広島県の熱意がありました。その企業とは、中国電力、パナソニック、AZAPA。広島県を含む4者の役割は、おおまかに下記の通りとなっています。

 

  • 広島県:実施場所の提供、EVシェアリングの法人利用、EV普及のための政策面での支援
  • 中国電力:今回の試みの中核。実証実験の企画・運用、EVシェアリングサービス「eeV」の提供
  • パナソニック:ソーラーカーポートの開発・提供
  • AZAPA:通常電源から自立した状態での蓄電・制御システム、可搬型蓄電池システムの開発、自動車以外のモビリティをソーラーカーポートに対応させるための検討
↑ソーラーカーポートのオープン式典には、広島県の湯崎知事、中国電力の清水社長が参加。テープカットも行われました。両者の力の入れようが感じられます

 

↑AZAPAが開発した、ソーラーカーポート併設の可搬式バッテリー。これのおかげで、自動車以外のモビリティにもソーラー電源を活用できます

 

EVシェアリングで、地域住民もソーラーカーのレンタルが可能に!

今回設置されたソーラーカーポートには3台ぶんの駐車スペースがありますが、運用されるソーラーカーは日産・リーフ1台。今後、2台目として、MAZDA MX-30 EV MODELもそこに加わる予定です。平日には広島県が自治体の公用車として利用するほか、民間企業・中電工も法人利用をすることになっています。

 

しかし、法人としての利用が行われるのは平日のみ。つまり、休日の利用枠が空くことになります。そこで今回の実証実験では、休日の利用枠を地域の住民向けに開放することになりました。一般開放は5月以降とのことですが、EVシェアリングアプリ「eeV」から予約が可能になる予定です。

 

住民向け利用枠の価格は、15分220円と一般的なカーシェアリングと同程度に設定されています。利用枠が設けられるのは土日祝日のみではありますが、枠が空いている限り、長時間のレンタルが可能です。ただし、設置されている車はハイブリッド車ではないため、バッテリーが切れた場合の給油はできません。今回の実証実験で使用される日産・リーフは、バッテリー容量40kWhのフル充電で約400kmの走行ができますが、長距離を走る場合は注意が必要です。

↑駐車スペースの後部下には、15分220円の表示があります

 

また、今回のソーラーカーポートには、8機の可搬式バッテリーも装備されています。1機ごとの充電容量はソーラーカーと比べると小さいですが、こちらは電動自転車や電動キックボードなどの小型モビリティへの利用を主に想定したものです。

↑可搬式バッテリーで動く電動自転車。ただし、今回の実証実験場には設置されません

 

5年間の実証実験中にも、ソーラーカーポートを増設する見込みアリ

今回のプロジェクトは、脱炭素化に熱心な中国電力が同様の試みを進める広島県に声をかけ、そこから6か月で形になったといいます。実証実験の期間は5年間ですが、パナソニックの担当者によれば、その間にも試行錯誤を続けながら、ソーラーカーポートの増設などの普及活動を続けていく見込みだそうです。

 

地球温暖化防止だけでなく、化石燃料の価格高騰への対応策という意味でも普及が待たれる太陽光エネルギー。その活用の一形態として、一般住民でも利用しやすいEVシェアリングサービスがさらに普及することに期待しましょう。

 

【現地アクセス情報】

広島県立広島産業会館

広島県広島市南区比治山本町12-18

【ゲットナビ的】永久不滅のマスターピース!! フィアット「 500(チンクエチェント)」にクローズアップ

本稿では「コレ押さえときゃ間違いない!!」的ブランドと、そのアイコニックなモデルをフィーチャー。生まれては姿を消していく商品が多いなかで、世代を超えて愛され、文化的価値さえ備えた一流のクルマ、フィアット・「500」にクローズアップしました。

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

フィアット 500(チンクエチェント)

DATA

初代モデル発売 1936年
累計販売台数 約630万台(推定)
現行ラインナップ数 5モデル(うち2モデルはアバルト)

 

柔らかなシルエットとキビキビした走りで80年以上も愛されるイタリアの名車

フィアット

500 チンクエチェント

221万円(税込)〜

大ヒットした2代目500のデビューから半世紀後の、2007年に登場した現行モデル。デザインは往年のモデルをオマージュしたもの。16年にマイナーチェンジして現在に至る。221万円〜という身近な価格設定も人気の理由だ。

SPEC【500 1.2 CULT】●全長×全幅×全高:3570×1625×1515mm●車両重量:990kg●パワーユニット:1240cc直列4気筒SOHC●最高出力:69PS/5500rpm●最大トルク:10.4kg-m/3300rpm●WLTCモード燃費:18.0km/L

 

進歩とは無関係なクルマ だからこそ不老不死なのだ

現行の3代目フィアット500は、登場からすでに15年も経つが、まったく年を取らない。なぜなら、もともと不老不死の仙人みたいに、浮世離れしたクルマだからだ。

 

初代、そして2代目のフィアット500は、イタリアのモータリゼーションを支えた最小限の大衆車だったが、現行モデルは、ある意味最大限の趣味グルマ。後席や荷室の狭さを見ればわかるように、最初から実用性をかなり無視したレトロ感あふれるモデルで、一種の愛玩物と言える。テクノロジーの進歩とも無関係。逆に2気筒エンジン+ターボなどという、現代では考えられない古臭〜い(失礼!)メカニズムも採用して、それが逆に濃い味わいになっている。

 

フィアット500は、欧米ではすでに新型のEVモデルが発売されているが、現行のガソリンモデルはこのままガソリン車が製造禁止となるまで生産され、終了後も長くアイコンとして愛されるだろう。まさにタイムレスな名車だ。

↑2016年のマイナーチェンジでライト周りやバンパー形状が変更された。変わったことが気づきにくいボディシルエットはさすがだ

 

↑コンパクトカーとはいえそこは現代のクルマ。通常サイズで185ℓの容量を持つラゲッジルームは後席を倒すことで550Lになる

 

↑丸いライトは2代目500のイメージを色濃く受け継いだパーツ。トップモデルはバイキセノンヘッドライトを装備する

 

↑シンプルなインパネデザイン。パネル色はボディと同じ色で統一される。スマホ接続対応の7インチモニターは標準装備だ

 

↑500に用意されたエンジンは1.2Lの4気筒と0.9Lの2気筒ツインエアエンジン+ターボ(写真)の2種。特に後者は現行モデルの主力ユニットになり、カタログ燃費19.2km/Lを誇る

 

 

80年を超える歴史のなかで大きなモデルチェンジは2回だけ!

500の歴史は1936年から始まり、現在に至るまで大きなモデルチェンジはたったの2回。長きに渡って愛されているタイムレスギアだ。

 

【初代】トポリーノの愛称で親しまれた超小型車

航空機部門が設計を担当し、当時世界最小の量産車として1936年にデビュー。13PSのエンジンは85km/hの最高速を誇った。トポリーノ(ハツカネズミ)の愛称はあまりにも有名だ。

 

【2代目】2代目にチェンジしてお馴染みのスタイルに

500の前に新型を意味する「ヌォーヴァ(NUOVA)」を枕詞のようにつけた2代目。4人乗車できるようにRR方式を採用。1957〜77年の間に367万8000台が生産された。

 

 

カブリオレから超スポーツモデルまで好みのチンクエチェントが選べる

人気のフィアット500はその派生モデルも往年のヌォーヴァのデザインがモチーフ。爽快なドライブを楽しめるカブリオレからスポーティなモデルまで選択の幅は広い。

 

走行時の開放感はピカイチ!

500C

285万円(税込)〜

王道のカブリオレモデル。昔の500と違いエンジン音を逃がすためのキャンバストップではないので安心だ。Cピラーを残しているので走行中でも開閉が可能。リアガラスを残したりフルオープンにしたりと好みで選べる。

 

ブランド初のクロスオーバーSUV

500X

320万円(税込)〜

2014年に発表されたフィアット初のコンパクトクロスオーバーSUV。19年にマイナーチェンジされた。同じFCAグループ(現ステランティス)のジープ・レネゲードと兄弟車になり、500XはFFのみの展開になった。

 

外見は似ているが走りは別モノの超スポーツモデル

アバルト 595

320万円(税込)〜

500ベースのホットモデルがアバルトだ。アバルトは創始者の名前で、サソリのロゴは創始者の星座に由来する。トップエンドモデルには最高出力180PSを発揮する1.4ℓターボを搭載。愛らしいシルエットと熱い走りのギャップに、ファンは心をときめかせるのだ。

 

 

チンクエチェントは映画のなかでも活躍!

個性的なスタイリングは映画でも大活躍。ただの小道具ではなく、作品の世界を演出する“役者”として、実写でもアニメでも存在感たっぷりだ。

 

ローマの休日

(C) 1953, 2020 Paramount Pictures.

アン王女(オードリー・ヘプバーン)のお忍び旅を、グレゴリー・ペック扮する新聞記者と結託してスクープ撮影しようとするカメラマンのクルマとして登場。

 

ローマの休日

デジタル・リマスター版ブルーレイ・コレクターズ・エディション<初回生産限定>

5280円(税込)

 

ルパン三世 カリオストロの城

原作:モンキー・パンチ (C) TMS

ストーリー序盤の見せ場でもあるクラリスを助けるためのカーチェイスシーンをはじめ、全編に登場。ルパンが乗る黄色い500がもはや役者として登場する名作だ。

 

ルパン三世

カリオストロの城(4K ULTRA HD)

8580円(税込)

 

ニュー・シネマ・パラダイス

(C) 1989 CristaldiFilm

ボロボロのトポリーノでシチリアの山道をドライブしていたら故障してしまうシーンが有名。青年時代のトトと恋人エレナとの青春の日々を傍らから演出する。

 

ニュー・シネマ・パラダイス

好評配信中

 

 

チンクエチェントをもっと楽しめる博物館がある!

愛知県名古屋市にはチンクエチェント博物館がある。そのテーマはチンクエチェント(以下500)のなかでも2代目、ヌォーヴァ500を文化的な遺産として保護、保存すること。また500を所有する喜びも感じられるよう、博物館プロデュースの車両販売も行っている。近年では500をEVにした500evを発売したことでも話題になった。

↑初代モデルや貴重なコレクターズモデルが展示される。必見は籐編みシートの500。これは濡れた水着で座れるようにしたものだ

 

↑博物館がプロデュースする500の完成度はもはや新車並。しかも日本での走行環境に配慮してメカニカルな部分までこだわっている

 

チンクエチェント博物館

住所:愛知県名古屋市瑞穂区高辻町14-10
TEL:052-871-6464
営業時間:10:00〜18:00(月曜休)

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

V12エンジン音を再現! セグウェイが電動キックボード用スピーカーを発表

電動モビリティを開発するセグウェイブランドは、電動キックボードに装着してV12エンジンなどのさまざまな乗り物の音を再現するスピーカー「Ninebot Engine Speaker」を発表しました。

↑セグウェイのYouTubeから

 

日本でもヘルメットなしでの乗車の実証実験が開始されている、電動キックボード。モーターのアシストにより気軽に市街地を移動できるのが特徴の一方で、エンジン音が発生しない仕組みから、歩行者との衝突の危険性なども指摘されています。

 

Ninebot Engine Speakerは、電動キックボードのハンドル下にベルトで装着します。そしてボタン操作により、「単気筒」「2気筒」「V8」「V12」「電動モーター」といった5種類のエンジン/モーター音を再生することが可能です。

 

さらに、スピーカーからのエンジン・モーター音はハンドルのアクセル動作や発進、アイドリングといった状態にあわせて変わります。これにより、本当に単気筒や2気筒のバイク、あるいはV8やV12エンジンを搭載した自動車を運転するような、迫力のある走行音が楽しめます。

 

Ninebot Engine Speakerは2200mAhのバッテリーを搭載し、最大23時間の利用が可能。本体の充電はUSB Type-C経由でおこないます。またIP55の防塵・防水性能も備えているので、屋外での使用の際も安心です。

 

Ninebot Engine Speakerはセグウェイやナインボットの電動キックボード、GoKart、電動バイク、電動モビリティに装着可能。歩行者の安全性だけでなく、利用者に電動キックボードへと乗車する楽しみを高めるという意味でも、今後が注目されるアイテムです。

 

Image: セグウェイ

Source: The Verge

ためになったね〜、ためになったよ〜! フィアット「500」の蘊蓄を語ります!!

「500」はイタリアの自動車メーカー、フィアットが生産しているクルマ。本稿では、フィアットの人気車種500の蘊蓄を紹介していこう。

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【その1】80年を超える歴史のなかで大きなモデルチェンジは2回だけ!

500の歴史は1936年から始まり、現在に至るまで大きなモデルチェンジはたったの2回。長きに渡って愛されているタイムレスギアだ。

 

【初代】トポリーノの愛称で親しまれた超小型車

航空機部門が設計を担当し、当時世界最小の量産車として1936年にデビュー。13PSのエンジンは85km/hの最高速を誇った。トポリーノ(ハツカネズミ)の愛称はあまりにも有名だ。

 

【2代目】2代目にチェンジしてお馴染みのスタイルに

500の前に新型を意味する「ヌォーヴァ(NUOVA)」を枕詞のようにつけた2代目。4人乗車できるようにRR方式を採用。1957〜77年の間に367万8000台が生産された。

 

 

【その2】カブリオレから超スポーツモデルまで好みのチンクエチェントが選べる

人気のフィアット500はその派生モデルも往年のヌォーヴァのデザインがモチーフ。爽快なドライブを楽しめるカブリオレからスポーティなモデルまで選択の幅は広い。

 

走行時の開放感はピカイチ!

500C

285万円(税込)〜

王道のカブリオレモデル。昔の500と違いエンジン音を逃がすためのキャンバストップではないので安心だ。Cピラーを残しているので走行中でも開閉が可能。リアガラスを残したりフルオープンにしたりと好みで選べる。

 

ブランド初のクロスオーバーSUV

500X

320万円(税込)〜

2014年に発表されたフィアット初のコンパクトクロスオーバーSUV。19年にマイナーチェンジされた。同じFCAグループ(現ステランティス)のジープ・レネゲードと兄弟車になり、500XはFFのみの展開になった。

 

外見は似ているが走りは別モノの超スポーツモデル

アバルト 595

320万円(税込)〜

500ベースのホットモデルがアバルトだ。アバルトは創始者の名前で、サソリのロゴは創始者の星座に由来する。トップエンドモデルには最高出力180PSを発揮する1.4Lターボを搭載。愛らしいシルエットと熱い走りのギャップに、ファンは心をときめかせるのだ。

 

 

【その3】チンクエチェントは映画のなかでも活躍!

個性的なスタイリングは映画でも大活躍。ただの小道具ではなく、作品の世界を演出する“役者”として、実写でもアニメでも存在感たっぷりだ。

 

ローマの休日

(C) 1953, 2020 Paramount Pictures.

アン王女(オードリー・ヘプバーン)のお忍び旅を、グレゴリー・ペック扮する新聞記者と結託してスクープ撮影しようとするカメラマンのクルマとして登場。

 

ローマの休日

デジタル・リマスター版ブルーレイ・コレクターズ・エディション<初回生産限定>

5280円(税込)

 

ルパン三世 カリオストロの城

原作:モンキー・パンチ (C) TMS

ストーリー序盤の見せ場でもあるクラリスを助けるためのカーチェイスシーンをはじめ、全編に登場。ルパンが乗る黄色い500がもはや役者として登場する名作だ。

 

ルパン三世

カリオストロの城(4K ULTRA HD)

8580円(税込)

 

ニュー・シネマ・パラダイス

(C) 1989 CristaldiFilm

ボロボロのトポリーノでシチリアの山道をドライブしていたら故障してしまうシーンが有名。青年時代のトトと恋人エレナとの青春の日々を傍らから演出する。

 

ニュー・シネマ・パラダイス

好評配信中

 

 

【その4】チンクエチェントをもっと楽しめる博物館がある!

愛知県名古屋市には「チンクエチェント博物館」がある。そのテーマはチンクエチェント(以下500)のなかでも2代目、ヌォーヴァ500を文化的な遺産として保護、保存すること。また500を所有する喜びも感じられるよう、博物館プロデュースの車両販売も行っている。近年では500をEVにした500evを発売したことでも話題になった。

↑初代モデルや貴重なコレクターズモデルが展示される。必見は籐編みシートの500。これは濡れた水着で座れるようにしたものだ

 

↑博物館がプロデュースする500の完成度はもはや新車並。しかも日本での走行環境に配慮してメカニカルな部分までこだわっている

 

チンクエチェント博物館

住所:愛知県名古屋市瑞穂区高辻町14-10
TEL:052-871-6464
営業時間:10:00〜18:00(月曜休)

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

キャンピングカーからスポーツカーまで……本誌お馴染みの“プロ”が欲しいモノ4選

本誌でお馴染みの評論家やインフルエンサーたちに“いま欲しいモノ”をオールジャンルでリサーチ。今回は、アウトドア初心者でも扱いやすいストーブや、家族に最適なキャンピングカー、クルマ好きが一目置いているスポーツカーもイッキに紹介。新生活のお買い物計画に役立てていただきたい!!

※こちらは「GetNavi」2022年3月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

その1 手軽に火を起こせるペレットストーブが初心者にオススメ!

アウトドアライター佐久間亮介さんの買い物リスト

ライター、モデル、キャンプコーディネーター。全国250か所以上のキャンプ場を巡り、初心者向けの情報を発信する。

 

【ペレット燃料ストーブ】

UNIFLAME

UFペレットストーブ

4万9900円

ペレット燃料を投入し、炉内に置いた着火材に火を点けるだけの手軽なストーブ。薪ストーブのように組み直す必要もなく、扉を閉めると安定的に燃焼する。使用後は少量の残留灰を捨てるだけの簡単清掃で、後片付けもラク。

 

↑本体にねじ式の脚と煙突を取り付けるだけの簡単な組み立て式。脚と煙突8節はすべて炉内に収納でき、コンパクトにして持ち運べる

 

↑複数の給気口から新鮮な空気を取り込むことで、高い燃焼効率を実現。本体の燃焼炉には蓄熱性の良い鉄を採用し、高い暖房性能を叶えた

 

全国のキャンプ場に足を運びキャンプコーディネーターとして活動しながら、その知識を生かし初心者に向けた情報発信を行う佐久間亮介さんに、初心者でも使いやすいというペレットストーブの魅力を語ってもらった。

「本製品は燃料のペレットを入れて、着火剤に火をつければ10分ほど待つだけで火が起こせます。薪ストーブに比べて圧倒的な手軽さ。ペレットは薪よりも軽くて持ち運びやすい点も大きなメリットです。薪を上手に使って火を点ける薪ストーブももちろん良いですが、初心者は簡単に暖を取れるペレットストーブも選択肢に。燃焼効率が良く、灰の処理も簡便です」

初心者以外のキャンパーでは?

「面倒くさがりな人や、薪ストーブは難しいけれどアウトドアでストーブを使ってみたい人にオススメ。アウトドア用に小型化を図りながらも、価格を抑えている点には企業努力が感じられます」

 

【私はこう使う】天面を調理に活用して火を眺めながら晩酌

最大約350度に達する天面では、鍋やフライパンをのせて調理可能。ケトルをのせてお湯を沸かし、サイドから火を覗きながら、ウイスキーのお湯割りを楽しみたいです。

 

その2 コレも欲しい!

【オールインワン足湯】

DOD

ロケットサブマリン フットバス!!

2万4200円

ロケットストーブに足湯を組み合わせたその発想に脱帽。外気温3度の環境下でも、約30分で水から40度のお湯を沸かせるので、秋・冬の寒い時期のキャンプをさらに楽しめるアイテムです。

 

↑ロケットストーブから伸びる煙突の先には五徳を取り付け可能。足湯に浸かりながら、酒やソフトドリンクを温めて楽しめる

 

その3 子ども連れでも安心して新しいアウトドア体験を!

キャンプライター澄田直子さんの買い物リスト

キャンプ歴15年のベテランキャンプライター。夫と3歳の子どもとの3人家族で、近年は車中泊が定番スタイル。

 

【キャンピングカー】

AtoZ

AMITY

437万8000円~

コンパクトながら広々とした居住空間で、最大6人就寝できるキャンピングカー。ベッドが常設のため、就寝時に煩わしいセッティングが不要だ。車体カラーやインテリアの素材が異なる3つのタイプを用意(写真はFioreシリーズ)。

SPEC●全長×全幅×全高:4690×1950×2770mm●パワーユニット:1798cc直列4気筒●最高出力:102PS(75kW)/5300rpm●最大トルク:15.0kg-m(147Nm)/4000rpm

 

 

最近は家族での車中泊スタイルがマイブームというキャンプライター・澄田直子さんは、バンシェアサービスで出会ったキャンピングカーに心を奪われたという。

「車高や全長がほどほどのサイズで、日本の道路や駐車場での取り回しがラク。キャンピングカーにしては手ごろな価格も魅力です。広々とした車内にはテーブルとイスを備え電源も使えるので、キャンプ場でも高速道路の駐車場でも、好きな場所でテレワークができます。子どもが産まれてから冬のテント泊は難しいなと感じていましたが、たとえ屋外が氷点下でも快適に就寝できるキャンピングカーがあれば、子ども連れでも冬のアウトドアが可能。小さな子どもがいてキャンピングカーライフに興味があるなら絶対オススメです!」

 

↑エントランスドア上部に配備した、室内電源の集中スイッチは使い勝手良好。室内照明にはすべて、省電力のLEDを採用している

 

【私はこう使う】ホテル施設を利用しつつ車中泊の非日常を楽しむ

バンクベッドに登るだけでも子どもにとってはワクワク。子どもと一緒にたくさん旅をしたいです。最近は車中泊歓迎のホテルも多く、施設内のレストランや浴場を利用する新しい楽しみ方も◎。

 

その4 クルマ好きが最後に辿り着く日本の国宝級スポーツカー!

モータージャーナリスト清水草一さんの買い物リスト

フェラーリから軽自動車まで所有経験のある自動車ライター。道路交通ジャーナリストとしても活動している。

 

【スポーツカー】

マツダ

ロードスター 特別仕様車 990S

289万3000円

軽快な走りを楽しめる、ロードスターの特別仕様車。車名の通り、車体重量990kgまで軽量化を実現した。ダンパー、スプリング、電動パワーステアリング、PCM(エンジン制御ユニット)に専用のセッティングを施したプレミアムな1台。

SPEC【990S】●全長×全幅×全高:3915×1735×1235mm●パワーユニット:1496cc直列4気筒●最高出力:132PS(97kw)/7000rpm●最大トルク:15.5kg-m(152Nm)/4500rpm

 

あらゆるクルマを知り尽くす清水草一さんでも、ロードスターは特別な存在だと語る。

「低い速度でも走りを楽しめる、パワーを追わない軽量スポーツカーは、いまや世界でロードスターだけになっています。本当に貴重な、日本が誇る“国宝”スポーツカーと言えます。常に注目してきたロードスターの特別仕様車がこの990S。車体重量990kgという軽さを保ったまま、ブレンボ製ブレーキキャリパーや高級アルミホイールを装備し、プレミアム性を高めたところが素敵です。色々なクルマに乗った末に辿り着く、終着駅のような一台。クルマ好きの中高年にとっては、最後の“青い鳥”になるのではないでしょうか」

 

↑インパネにはブルーのエアコンルーバーベゼルを採用。幌やブレンボ製ブレーキキャリパーなどにもブルーを用い、軽やかな印象だ

 

【私はこう使う】頬に風を感じながら空いた首都高を流す

ソフトトップを後方にスライドさせて簡単にオープンにできる仕様。空いた首都高をオープンで流したいです。日曜日の午前中、あるいは夜も良いですね。頬に風を感じながら思いきり走りたい!

柔らかなシルエットとキビキビした走りで80年以上も愛されるイタリアの名車フィアット「500」

本稿では「コレ押さえときゃ間違いない!!」的ブランドと、そのアイコニックなモデルをフィーチャー。生まれては姿を消していく商品が多いなかで、世代を超えて愛され、文化的価値さえ備えた一流のクルマ、フィアット「500」にクローズアップしました。

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

進歩とは無関係なクルマ だからこそ不老不死なのだ

フィアット

500(チンクエチェント)

DATA

初代モデル発売 1936年
累計販売台数 約630万台(推定)
現行ラインナップ数 5モデル(うち2モデルはアバルト)

フィアット

500 チンクエチェント

221万円(税込)〜

大ヒットした2代目500のデビューから半世紀後の、2007年に登場した現行モデル。デザインは往年のモデルをオマージュしたもの。16年にマイナーチェンジして現在に至る。221万円〜という身近な価格設定も人気の理由だ。

SPEC【500 1.2 CULT】●全長×全幅×全高:3570×1625×1515mm●車両重量:990kg●パワーユニット:1240cc直列4気筒SOHC●最高出力:69PS/5500rpm●最大トルク:10.4kg-m/3300rpm●WLTCモード燃費:18.0km/L

 

現行の3代目フィアット「500」は、登場からすでに15年も経つが、まったく年を取らない。なぜなら、もともと不老不死の仙人みたいに、浮世離れしたクルマだからだ。

 

初代、そして2代目のフィアット500は、イタリアのモータリゼーションを支えた最小限の大衆車だったが、現行モデルは、ある意味最大限の趣味グルマ。後席や荷室の狭さを見ればわかるように、最初から実用性をかなり無視したレトロ感あふれるモデルで、一種の愛玩物と言える。テクノロジーの進歩とも無関係。逆に2気筒エンジン+ターボなどという、現代では考えられない古臭〜い(失礼!)メカニズムも採用して、それが逆に濃い味わいになっている。

 

フィアット500は、欧米ではすでに新型のEVモデルが発売されているが、現行のガソリンモデルはこのままガソリン車が製造禁止となるまで生産され、終了後も長くアイコンとして愛されるだろう。まさにタイムレスな名車だ。

 

↑2016年のマイナーチェンジでライト周りやバンパー形状が変更された。変わったことが気づきにくいボディシルエットはさすがだ

 

↑コンパクトカーとはいえそこは現代のクルマ。通常サイズで185Lの容量を持つラゲッジルームは後席を倒すことで550Lになる

 

↑丸いライトは2代目500のイメージを色濃く受け継いだパーツ。トップモデルはバイキセノンヘッドライトを装備する

 

↑シンプルなインパネデザイン。パネル色はボディと同じ色で統一される。スマホ接続対応の7インチモニターは標準装備だ

 

↑500に用意されたエンジンは1.2Lの4気筒と0.9Lの2気筒ツインエアエンジン+ターボ(写真)の2種。特に後者は現行モデルの主力ユニットになり、カタログ燃費19.2km/Lを誇る

 

 

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乗り甲斐あり!「日本海ひすいライン」郷愁さそう鉄旅を堪能する【前編】

おもしろローカル線の旅81〜〜えちごトキめき鉄道・日本海ひすいライン(新潟県)その1〜〜

 

新幹線網の広がりにより旅が便利になった一方で、平行する在来線がJRの路線網から切り離され、多くが第三セクター鉄道となり大きく様相を変えている。えちごトキめき鉄道の日本海ひすいラインもそんな路線の1つである。

 

この路線、北陸本線という幹線からローカル線になったものの、注目の「国鉄形観光急行」を走らせていることもあり、休日には多くの観光客で賑わう。

 

【関連記事】
鉄道&旅好きにお勧め!車両充実度満点の「えちごトキめき鉄道」

 

【郷愁さそう鉄旅①】北陸本線として長い歴史を持つ路線

かつて滋賀県の米原駅と新潟県の直江津駅を結んだ北陸本線。日本海沿いを縦断する幹線ルートとして造られた。

 

北陸本線の歴史は古く、湖東地方から徐々に延ばされていく。北陸の敦賀駅までは1882(明治15)年3月10日、福井駅までは1896(明治29)年7月15日、石川県の金沢駅までは1898(明治31)年4月1日、1899(明治32)年3月20日に富山駅まで延ばされている。そこから直江津駅までの全通はかなりの時間がかかり、1913(大正13)年4月1日のこととなった。

↑日本海ひすいラインの有間川駅へ到着する直江津行きET122形気動車K7編成。同車両は「NIHONKAI STREAM」の愛称を持つ

 

北陸本線はかなりの難路をたどる。現在、巡ってみても、いくつかのポイントでその難路ぶりを見聞きできる。湖東側から見ると、まずは琵琶湖湖畔から福井県の敦賀駅に至るまではかなりの標高差がある。そのために、敦賀から琵琶湖沿岸へ向かう上り路線は、勾配を緩めるためにループ線が設けられている。

 

敦賀駅〜南今庄駅間には、現在、狭軌幅の路線で一番長い北陸トンネルが通っている。この区間は1962(昭和37)年のトンネル開通までは、曲がりくねった旧線区間だった。

 

石川県、富山県の県境には倶利伽羅峠という険しい峠がある。富山県から新潟県に至る区間はさらに険しさを増す。まず、新潟県の最西端部分にある親不知(おやしらず)付近。そして糸魚川と直江津の間も海岸部は険しい。そうした新潟県の西部にある難路は、線路の付け替え、また長大なトンネルを掘って複線化することにより、現在のようなスムーズな列車の運行が可能になった。

↑親不知付近を紹介した戦前絵葉書。左に名勝「投げ岩」が見える。現在、景勝地らしい面影は無く海上を北陸自動車道の高架橋が通る

 

ルートが険しいということは、景色が変化に富み、美しいということにほかならない。日本海ひすいラインは、そうした旧北陸本線のなかでも格別に美しい海岸線区間を通っている。

 

【郷愁さそう鉄旅②】長大トンネル+美しい海景色が連なる

ここで日本海ひすいラインの概要を見ておこう。

路線と距離 えちごトキめき鉄道・日本海ひすいライン/市振駅(いちぶりえき)〜直江津駅59.3km
全線複線・交直流電化
開業 日本海ひすいラインの区間では、1911(明治44)年7月1日に直江津駅〜名立駅間が開業、以降、泊駅〜青海駅間、名立駅〜糸魚川駅間が延伸開業。1913(大正2)年4月1日に青海駅〜糸魚川駅間が開業し、全通。
駅数 13駅(起終点駅を含む)

 

北陸本線は2015(平成27)年3月14日の北陸新幹線の金沢駅延伸に合わせて、JR西日本の路線から経営分離、金沢駅〜倶利伽羅駅(くりからえき)間は「IRいしかわ鉄道」、倶利伽羅駅〜市振駅間が「あいの風とやま鉄道」、とそれぞれ第三セクター路線に変わっている。

 

新潟県内の市振駅〜直江津駅間が、「えちごトキめき鉄道」に引き継がれた。路線名の日本海ひすいラインは、株主アンケートをもとに取締役会に提案された名称で、糸魚川付近が特産のヒスイと、路線が沿って走る日本海のイメージにちなみ名付けられた

 

【郷愁さそう鉄旅③】2010年代まで長距離列車の宝庫だった

2015(平成27)年の北陸新幹線延伸で誕生した日本海ひすいラインだが、旧北陸本線時代といっても、今から7年前とそれほど古くないので、よく覚えている方も多いと思う。

 

日本海沿いの幹線ルートだっただけに、長距離列車も多く走り抜けた。まずは少し前に走った長距離列車が彩った華やかな時代を振り返ってみよう。

↑2010年代前半に走っていた4列車。寝台列車や在来線特急などが走る華やかな区間でもあった

 

旧北陸本線だったころの市振駅〜直江津駅間は、近畿と新潟・東北地方を直接結ぶ経路でもあり、首都圏と北陸を結ぶメインルートでもあった。

 

例えば、大阪駅と青森駅を結んだ寝台特急「日本海」。電気機関車が牽引するブルートレイン寝台列車であり、個室のない昔ながらのプルマン式と呼ばれる2段寝台を連ねた客車列車だった。大阪駅と新潟駅を結んだ寝台急行「きたぐに」は、寝台電車583系の最後の定期運用の列車で、大量輸送時代に生まれた電車で3段ベッドも用意されていた。

 

日中に走る特急「はくたか」は、越後湯沢駅と北陸地方を結んだ特急列車で、首都圏の利用者が多かった。また特急「北越」は新潟と北陸地方を結んだ特急列車で、交直両用特急形電車485系の晩年の姿が楽しめた。

↑有間川駅付近を走る「トワイライトエクスプレス」。牽引はEF81形(左上)。深緑色の機関車と客車が日本海沿いで絵になった

 

旧北陸本線を走った最も華やかな列車といえば、寝台特急「トワイライトエクスプレス」ではないだろうか。大阪駅と札幌駅を1昼夜かけて走った長距離列車で、現在の日本海ひすいラインの沿線で、下り列車は夕暮れが、上り列車は朝の海景色が楽しめた。市振駅〜直江津駅間は同列車が走る路線の中で、最も魅力ある区間であるといえよう。

 

【関連記事】
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5年前に惜しまれつつ消えた豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス」の記録【後編】

 

【郷愁さそう鉄旅④】今走る車両もなかなか味わいがある

ここからは現在の車両たちを紹介しよう。バリエーションは、以前に比べて減ったものの、今も乗りたくなる車両が揃っている。

↑日本海ひすいラインの普通列車に使われるET122形気動車。前面や側面には日本海の波をイメージしたデザインが入る

 

同線を走る普通列車用の車両はET122形気動車である。電車ではなく、気動車が使われている。電化区間なのにどうして気動車が使われるのだろう。

 

日本海ひすいラインは、電化されているのだが、交流と直流との2つの方式で電化されている。交直流の電化方式は、えちご押上ひすい海岸駅と梶屋敷駅間のデッドセクション区間で切り替わる。通して走る場合には、電車ならば交直流への対応が必要となる。交直両用の電車を新造するとなると高価になる。そこで第三セクター鉄道のえちごトキめき鉄道に変わる時に、ET122形気動車を取り入れたのだった。

 

日本海ひすいラインでは、朝夕にはこのET122形気動車を2両連結で使用、日中は1両単行で運行されることが多い。現在ET122形気動車は8両が導入されている。そのうちK7とK8編成はイベント列車「NIHONKAI STREAM」と、「3CITIES FLOWERS」で、座席は対面式ボックスシートになっている。

 

ET122形のK6編成までは横一列に1人+2人用の転換クロスシートがならぶ構造で、入口付近にはロングシートがあり車内の趣がやや異なる。

↑ET122形気動車のK8編成「3CITIES FLOWERS」。車体には花のラッピング塗装が施されている

 

ET122形気動車はもう1タイプ1000番台が導入されている。2両編成の観光列車で、「えちごトキめきリゾート雪月花」という愛称が付けられている。車体は銀朱色と呼ばれる鮮やかな色で塗られ目立つ。

 

おもに週末を中心に日本海ひすいラインの直江津駅〜糸魚川駅間と、妙高はねうまラインの直江津駅〜妙高高原駅間を往復している。大きなガラス窓からは日本海や、妙高高原の美しい車窓風景を楽しみながら食事が楽しめる。

↑ET122形1000番台「えちごトキめきリゾート雪月花」は車体が一回り大きく、ガラス窓は可能なかぎり大きく造られている

 

えちごトキめき鉄道の車両以外にも、日本海ひすいラインには、あいの風とやま鉄道の521系車両が乗り入れ、市振駅〜糸魚川駅間1往復が走っている。

 

【郷愁さそう鉄旅⑤】「国鉄形観光急行」が同線最大の売りに

日本海ひすいラインを走る車両の中で、一番注目される存在なのが有料の「国鉄形観光急行」として走る455系、413系3両編成だろう。

 

国鉄時代に北陸本線用に導入された交直流近郊形電車が413系。また交直流急行形電車として導入されたのが455系である。えちごトキめき鉄道が導入した両形式は、元はJR西日本の車両だったが、七尾線に新車両を導入するにあたって、引退となった。

 

その車両を改めてメンテナンスした上で、色も国鉄急行色と呼ばれる2色で塗られた。413系2両に、市振駅側に急行列車用の455系(クハ455)1両を連結し、前後で異なる形となっている。

↑455系・413系を組み合わせた「国鉄形観光急行」。455系の正面にヘッドマークを付けて運行する。「急行」という表示が郷愁をさそう

 

運行は土日祝日で日本海ひすいラインの路線内では、直江津駅〜市振駅間を1往復、直江津駅〜糸魚川駅間を1往復するダイヤで運行される。今年の5月2週目からは一部金曜日も、日本海ひすいラインのみでの運行が行われる予定だ。

↑直江津駅へ戻るときには413系を先頭に走る。こちらは正面上の案内表示部分が埋め込まれた姿となっている

 

角張ったスタイルが特長の国鉄形電車のスタイルで、今、改めて見ると独特の風貌が郷愁をさそい、人気となっていることがよく理解できる。日本海ひすいラインにも近い、新潟地区の国鉄形近郊電車115系の運用がこの春にほぼ終了した。JR東日本に残った最後の115系だった。こちらが引退した影響もあり、同じ新潟県内のえちごトキめき鉄道の455系、413系が、ますます注目を浴びることになりそうだ。

 

【郷愁さそう鉄旅⑥】赤・青・銀がま……貨物列車も見逃せない

ここからは貨物列車に目を転じたい。同線を走る旅客列車は短い区間を走る普通列車がメインとなったが、通過する貨物列車は長距離を走る列車が多い。札幌貨物ターミナル駅〜福岡貨物ターミナル駅を結ぶ日本で最も長い距離を走る貨物列車も、日本海ひすいラインを通る。貨物列車の運用では今も、旧北陸本線、信越本線、羽越本線という路線は統括して「日本海縦貫線」と呼ばれる。

 

このあたりは旧北陸本線当時のままなのだ。とはいっても、変わったことがある。それは牽引する電気機関車である。

↑旧北陸本線時代には、国鉄形電気機関車EF81が同線の主力だった。すでに全車が撤退、一部が九州地区へ移っている

 

日本海縦貫線は直流電化区間と、交流50Hzと交流60Hzという電源の区間がある。この3電源に対応した日本海縦貫線用の電気機関車として開発されたのがEF81形式交直流電気機関車だった。それまでの交直流電気機関車にくらべて優れた車両で、貨物用のみならず、旅客用にも使われたことは知られているとおりだ。

 

長年、日本海縦貫線で活躍したEF81だったが老朽化もあり、また後継のEF510形式交直流電気機関車が増備されたこともあり、EF81は長年配置されていた富山機関区から、九州の門司機関区へ転出が完了している。

 

代わって日本海縦貫線のエースとなっているのがEF510形式交直流電気機関車だ。現在、EF510には3タイプが使われている。JR貨物が導入した赤い車体が基本番台で、エコパワーRED THUNDER(レッドサンダー)という愛称が付けられている。

↑日本海縦貫線を走る3タイプのEF510形式交直流電気機関車。右上から基本番台、500番台の銀色塗装車、左は青色塗装車

 

そのほかに日本海縦貫線のEF510には銀色と、青色塗装の機関車が走る。どちらもJR東日本が導入した500番台で、銀色塗装が寝台特急「カシオペア」用で2両、青色が寝台特急「北斗星」用として13両が造られた。2009(平成21)年から新造され、寝台列車と、常磐線などの貨物列車牽引の受託業務に使われたが、その後に寝台列車は消滅、また貨物の受託業務も終了したことにより、全車両がJR貨物に引き継がれ、富山機関区へ移り、日本海縦貫線の貨物列車の牽引にあたっている。

 

500番台は、わずかな期間だったが寝台列車の牽引という栄光を持つ車両であり、今は牽引する車両が貨車に変わっているものの、郷愁をさそう姿を日本海沿いで見かけることができる。機関車はSL時代からの名残で〝かま〟と呼ばれるが、日本海ひすいラインでは赤がま・青がま・銀がまと3色のEF510が牽引する貨物列車が走り、なかなか賑やかになっている。

 

*日本海ひすいラインの「郷愁さそう鉄旅」は次週の後編に続きます。

トヨタの新BEV「bZ4X」が2022年5月に発売!

トヨタ自動車は、新型BEV(電気自動車)の「bZ4X」を5月12日に発売すると発表しました。

↑トヨタ初の量産型BEVがまもなく発売される(画像提供/トヨタ自動車)

 

世界的なEVへの移行がすすむ中、EVラインナップの少なさが指摘されていたトヨタ。同社は現時点で純電気自動車(BEV)として法人向けの「C+pod(シー・ポッド)」をリース販売していますが、そんな同社にとってbZ4Xは初となる量産型のBEVです。

専用のプラットフォームはSUBARUと共同開発し、本格SUVとしての走破性を追求。ボディは省エネ性能を向上させる形状により、Cd値が0.28という空力性能を実現しています。

 

車体では薄型大容量電池パックを床下・平置きに配置することで低重心化を実現。モーター、トランスアクスル、インバーターを一体化した「eAxle」や、充電機能と電力分配機能を集約したElectricity Supply Unit(ESU)を採用しています。

 

安全機能としては、車両、歩行者、自転車運転者に自動二輪(昼)の衝突回避を行う「プリクラッシュセーフティ」を搭載。加えて、状況に応じてステアリング・ブレーキ操作をサポートし、歩行者や自転車、駐車車両に近づきすぎないようにする「プロアクティブドライビングアシスト」も搭載します。

 

電費性能は128Wh/kmで、599kmの航続距離(FWDモデル)を実現。さらに「10年後に90%」というトップレベルの電池容量維持率を達成しています。急速充電にも対応しており、90kW充電器では40分で80%までの充電が可能。普通充電(200V、6kW・30A)では約12時間でフル充電が完了します。

 

bZ4XはFWDモデルが600万円(税込)で、4WDモデルが650万円。個人向けにはサブスクリプションサービス「KINTO」の専用プランで販売されます。

 

ベスビーとルコックスポルティフとのコラボモデル、「PSA1 le coq sportif Limited Edition」が台数限定発売!

次世代プレミアムe-Bike「BESV(ベスビー)」を取り扱うBESV JAPANは、ブランド誕生140年目となるルコックスポルティフとのコラボモデル、「PSA1 le coq sportif Limited Edition」を台数限定で5月14発売(予定)します。

 

300台限定のリミテッドエディション!

PSA1は、ベスビーを代表する20インチのコンパクトe-Bike。余計なものを取り払ったからこそできた、すっきりと美しいフォルム。アルミフレームを採用したエントリーモデルでありながら、高性能バッテリーでフル充電90kmの航続が可能です。前後についたサスペンションがより快適な走行を実現し、外装7段変速にディスクブレーキを搭載した、街乗りからスポーツライドまで、デザインと走行性能に優れたハイパフォーマンスのベストセラーモデルです。

↑「PSA1 le coq sportif Limited Edition」22万4400円(税込)。300台限定

 

購入特典として、ルコックスポルティフとベスビーのダブルロゴの「オリジナルトライストラップチェストバッグ」が付きます。3本のベルトで、胸元でしっかりとホールドできるので、サイクリングでの使用のほか、バックパックとの併用時にも便利。

↑「オリジナルトライストラップチェストバッグ」

 

 

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リンカーン初のEVをチラ見せ、4月20日に正式発表

米リンカーンブランドは、ブランド初となるEV(電気自動車)のコンセプト動画をティーザー(チラ見せ)しました。

↑リンカーンのツイートから

 

既存の自動車メーカーが次々とEVへの進出を果たす中、フォード傘下の高級車ブランドとなるリンカーンもEV車両の投入を2021年6月に発表。また2030年には、全ラインナップをEV化する予定です。

 

 

今回のティーザー動画では、そのブランドロゴや車体のシルエットが確認できます。また車両前方だけでなく、サイドにもリンカーンのロゴが配置されているのも特徴です。そして車両タイプは、SUVとなる可能性が指摘されています。

 

リンカーンの親会社となるフォードは、すでにEVとなる「F-150」や「Mustang Mach-E」を投入し、市場で高い評価を得ています。また、今後もEVラインナップを拡大する予定です。

 

リンカーンは4月20日に、今回のEVを正式発表する予定です。アメリカンな高級車ブランドがどのようにEVへの移行をはたすのかに、注目が集まります。

 

Image: Lincoln / Twitter

Source: Lincoln / Twitter

【ゲットナビ的】永久不滅のマスターピース! トヨタ「カローラ」

本稿では「コレ押さえときゃ間違いない!!」的ブランドと、そのアイコニックなモデルをフィーチャー。生まれては姿を消していく商品が多いなかで、世代を超えて愛され、文化的価値さえ備えた一流のクルマ、トヨタ・「カローラ」にクローズアップしました。

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

トヨタ カローラ

DATA

初代モデル発売 1966年
累計販売台数 約5100万台
現行ラインナップ数 6モデル

 

世界累計5000万台超を販売! ニッポンが誇る偉大なファミリーカー

トヨタ

カローラ クロス

199万9000円〜319万9000円

カローラシリーズ初のSUVで、RAV4とヤリス クロスの中間に位置するモデル。プラットフォームやパワートレインはカローラと同じものを採用した。エントリーモデルは200万円を下回る価格設定に設定され、幅広いユーザーに人気。

SPEC【ハイブリッドZ(2WD)】●全長×全幅×全高:4490×1825×1620mm●車両重量:1410kg●パワーユニット:1797cc直列4気筒DOHC+電気モーター●最高出力:98[72]PS/5200rpm●最大トルク:14.5[16.6]kg-m/3600rpm●WLTCモード燃費:26.2km/L
●[ ]内は電気モーターの数値

 

常に“ライバルの少し上”へ 今後はSUVが主役になる?

生誕から55年余りで5000万台超が国内外で親しまれてきたカローラは、日本でもかつて“国民車”と呼ばれ、33年連続で国内の年間販売ランキング首位の座を維持した、定番の中の定番に違いない。

 

当初掲げた“80点主義+α”の思想を受け継ぎ、ただ欠点が少ないだけでなく、プラス100ccの余裕や充実した装備などに象徴されるように、ライバルに対して常に少し上を行っていたのも特徴だ。

 

よく普通のクルマの代名詞としてカローラの車名が用いられるのは、それだけソツがなく信頼性が高いことの裏返しでもある。

 

現行モデルにはついにカローラの名の付くSUVまで加わった。従来のカローラシリーズと共通こそあれど一線を画したモデルだが、実はこのクルマこそ将来のカローラの中心になる存在とトヨタでは位置づけている。定番であり続けるためには、むしろ変えていくことが大事と考えているのだ。

↑荷室の開口部は身長が低いユーザーにも対応できる高さに配慮。後席を倒すと寝転がれるスペースに。荷室の容量は487ℓだ

 

↑背の高いSUVのボディスタイルの恩恵で、頭上スペースに余裕のある後席。リクライニングが可能で足元も広く、快適な空間だ

 

↑星を眺めたり採光に使えたりする大開口部のパノラマルーフはオプション設定。電動サンシェード付きで暑さ対策も万全だ!

 

↑FFモデルのリアはトーションビーム式サスペンションを採用。大容量のゴムブッシュを使い構造や取り付け角度に配慮したという

 

↑フロントのエンブレムは車名の頭文字「C」をモチーフにしたもの。「C」の上部にはカローラの語源となっている花冠のモチーフをあしらっている

 

時代に呼応した名車がズラリ! 歴代カローララインナップ

カローラは2021年に世界累計販売台数が累計5000万台を超える大ベストセラーモデル。時代のニーズに応えた歴代の各モデルを紹介していこう。

 

【1966】初代

マイカー元年をもたらした金字塔的な初代

まだ珍しかったフロアシフトやセパレートメーターを採用。排気量を1.1Lにアップさせるなどファミリーカーの存在需要を掘り起こし大ヒットした。

 

【1970】2代目

高速巡航を視野に大きく快適になったモデル

高速巡航性能や快適性能の向上を目的にエンジンやボディが大きくなった2代目。スポーツモデルのレビン/トレノも派生車種として登場した。

 

【1974】3代目

海外への輸出を本格化し車名別生産台数世界一を達成

当初は先代が並行販売される異色のモデルチェンジだった。排ガス規制をクリアし、国内だけでなく海外でも大ヒット。幅広い世代に人気だった。

 

【1979】4代目

ボディのバリエーションはカローラ史上最多となった

全長はカローラ初の4mに。ボディバリエーションも豊富で、セダン、ハードトップ、クーペ、リフトバック、バンなど全部で7種類も用意された。

 

【1983】5代目

カローラ初のFFに変更して居住性が格段にアップした

セダンモデルはそれまでのFRから室内区間に利のあるFFに変更。1.6Lモデルにはクラス初となる電子制御式4ATを採用した。

 

【1987】6代目

コンパクトカーのクラスを超えた世界のハイクオリティ車となる

5ドアリフトバックが廃止され、2BOXのFXがデビュー。同車初の4WDも登場。開発テーマに沿う、クラスを超えた装備と品質が支持されたモデルだ。

 

【1991】7代目

高級化路線をたどった頂点に相応しいモデル

開発時期がバブル経済だったこともあり、金メッキ処理の配線電気式のメーターを採用。高級車並みの先進技術が惜しみなく投入された。

 

【1995】8代目

軽量化を実現してコンパクトセダンの原点回帰へ

主要コンポーネントの多くは7代目から継承したが、50kgの軽量化を実現。軽量化の恩恵もありクラストップの低燃費車に。安全性能も向上した。

 

【2000】9代目

ミレニアムに登場した9代目は室内の快適性が大きく向上

プラットフォームをはじめ、エンジンなど主要コンポーネンツを一新。上位モデルのプレミオと同じ全幅になるなど室内の快適性も大きく向上した。

 

【2006】10代目

アクシオのサブネームが付いた日本専用設計に変更したモデル

先代までは世界共通のプラットフォームを採用していたが、日本専用設計に変更して5ナンバー枠を維持。バックモニターを全車に標準装着した。

 

【2012】11代目

カローラシリーズ初となるハイブリッド車が設定された

同車の原点でもある「大人4人が安心、安全、快適に長距離移動できるコンパクトカー」をテーマに開発された。ハイブリッド車の登場もトピックだ。

 

【2018】12代目(現行)

カローラ史上初となる3ナンバーサイズに進化

世界共通のTNGAプラットフォームで3ナンバー化。しかし最小回転半径は先代と同様で日本の道路事情に配慮するなど、使い勝手は良いままだ。

 

数字で驚く! カローラトリビア

V33

ニーズへのきめ細かい対応や、世界一と誉れ高い信頼性などそのクオリティが評価され、1969年から2001年までの33年間、連続国内登録車販売台数1位を記録した。また世界累計販売台数も1位だ。

 

150か国以上

日本仕様のイメージのあるカローラだが、実は世界で販売されるワールドワイドな1台で、トヨタの重要な世界戦略車だ。最初の展開は1966年のオーストラリア。デビュー当初から海外で販売されていた。

 

約34秒に1台

シリーズ累計販売台数は2021年になんと5000万台を達成した。1966年の初代発売から21年7月までの累計秒数をもとに計算すると、カローラは約34秒に1台も販売されてきたことになるのだ!

 

チーフエンジニアに聞く カローラってこんなクルマ

トヨタ自動車株式会社
TC製品企画ZE チーフエンジニア
上田泰史さん

1991年トヨタ自動車入社。駆動関係の実験部署に配属。その後製品企画を経て、2011年より欧州開発拠点TMEに赴任した。15年、日本に帰任しカローラの開発を担当。

 

累計5000万台以上販売した“世界のカローラ”について、チーフエンジニアが語る

 

Q カローラに携わる前の印象は?

A 私の叔父2人が、それぞれカローラ(6代目)、カローラFX(初代)を乗っていて、とても身近な憧れの存在でした。カローラの主査を任命されたときは、大変そうだなぁと思うと同時にワクワクしたのを憶えています。

 

Q カローラらしさを貫いている点は?

A ひとつは良品廉価。より良いクルマを手に入りやすい価格で、より多くのお客様に提供することです。2つ目が、時代ごとのお客様の期待の半歩先にある価値を加えること。3つ目の価値が、時代に応じて変わっていくことです。

 

Q 現行モデルの狙いはどこにある?

A 若い方にも乗っていただけるようなクルマを目指して開発しました。ワクワクするクルマ、見てカッコ良い、乗って楽しいクルマを目指し、カローラをステップアップさせています。走りが楽しいカローラにご注目ください!

 

Q どんなところにカローラらしさを感じてもらいたい?

A より多くの方にクルマに乗る楽しさを感じていただきたいです。1クラス上の性能を、できるだけお求めやすい価格で提供できればと考えています。お客様がカローラと生活を共にすることで、暮らしが豊かになれば幸いです。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

頬に風を感じながら走りたい! “特別な存在”の「スポーツカー」

本誌でお馴染みの評論家やインフルエンサーたちに“いま欲しいモノ”をオールジャンルでリサーチ。今回は、モータージャーナリスト清水草一さんの買い物リストから、スポーツカーを紹介!

※こちらは「GetNavi」2022年3月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

クルマ好きが最後に辿り着く日本の国宝級スポーツカー!

モータージャーナリスト清水草一さんの買い物リスト

フェラーリから軽自動車まで所有経験のある自動車ライター。道路交通ジャーナリストとしても活動している。

 

【スポーツカー】

マツダ

ロードスター 特別仕様車 990S

289万3000円

軽快な走りを楽しめる、ロードスターの特別仕様車。車名の通り、車体重量990kgまで軽量化を実現した。ダンパー、スプリング、電動パワーステアリング、PCM(エンジン制御ユニット)に専用のセッティングを施したプレミアムな1台。

SPEC【990S】●全長×全幅×全高:3915×1735×1235mm●パワーユニット:1496cc直列4気筒●最高出力:132PS(97kw)/7000rpm●最大トルク:15.5kg-m(152Nm)/4500rpm

 

あらゆるクルマを知り尽くす清水草一さんでも、ロードスターは特別な存在だと語る。

「低い速度でも走りを楽しめる、パワーを追わない軽量スポーツカーは、いまや世界でロードスターだけになっています。本当に貴重な、日本が誇る“国宝”スポーツカーと言えます。常に注目してきたロードスターの特別仕様車がこの990S。車体重量990kgという軽さを保ったまま、ブレンボ製ブレーキキャリパーや高級アルミホイールを装備し、プレミアム性を高めたところが素敵です。色々なクルマに乗った末に辿り着く、終着駅のような一台。クルマ好きの中高年にとっては、最後の“青い鳥”になるのではないでしょうか」

 

↑インパネにはブルーのエアコンルーバーベゼルを採用。幌やブレンボ製ブレーキキャリパーなどにもブルーを用い、軽やかな印象だ

 

【私はこう使う】頬に風を感じながら空いた首都高を流す

ソフトトップを後方にスライドさせて簡単にオープンにできる仕様。空いた首都高をオープンで流したいです。日曜日の午前中、あるいは夜も良いですね。頬に風を感じながら思いきり走りたい!

時代に呼応した名車がズラリ! 歴代「カローラ」ラインナップ

「カローラ」は2021年に世界累計販売台数が累計5000万台を超える大ベストセラーモデル。時代のニーズに応えた歴代の各モデルを紹介していこう。

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【1966】初代

マイカー元年をもたらした金字塔的な初代

まだ珍しかったフロアシフトやセパレートメーターを採用。排気量を1.1Lにアップさせるなどファミリーカーの存在需要を掘り起こし大ヒットした。

 

【1970】2代目

高速巡航を視野に大きく快適になったモデル

高速巡航性能や快適性能の向上を目的にエンジンやボディが大きくなった2代目。スポーツモデルのカローラレビン/スプリンタートレノも派生車種として登場した。

 

【1974】3代目

海外への輸出を本格化し車名別生産台数世界一を達成

当初は先代が並行販売される異色のモデルチェンジだった。排ガス規制をクリアし、国内だけでなく海外でも大ヒット。幅広い世代に人気だった。

 

【1979】4代目

ボディのバリエーションはカローラ史上最多となった

全長はカローラ初の4mに。ボディバリエーションも豊富で、セダン、ハードトップ、クーペ、リフトバック、バンなど全部で7種類も用意された。

 

【1983】5代目

カローラ初のFFに変更して居住性が格段にアップした

セダンモデルはそれまでのFRから室内区間に利のあるFFに変更。1.6Lモデルにはクラス初となる電子制御式4ATを採用した。

 

【1987】6代目

コンパクトカーのクラスを超えた世界のハイクオリティ車となる

5ドアリフトバックが廃止され、2BOXのFXがデビュー。同車初の4WDも登場。開発テーマに沿う、クラスを超えた装備と品質が支持されたモデルだ。

 

【1991】7代目

高級化路線をたどった頂点に相応しいモデル

開発時期がバブル経済だったこともあり、金メッキ処理の配線電気式のメーターを採用。高級車並みの先進技術が惜しみなく投入された。

 

【1995】8代目

軽量化を実現してコンパクトセダンの原点回帰へ

主要コンポーネントの多くは7代目から継承したが、50kgの軽量化を実現。軽量化の恩恵もありクラストップの低燃費車に。安全性能も向上した。

 

【2000】9代目

ミレニアムに登場した9代目は室内の快適性が大きく向上

プラットフォームをはじめ、エンジンなど主要コンポーネンツを一新。上位モデルのプレミオと同じ全幅になるなど室内の快適性も大きく向上した。

 

【2006】10代目

アクシオのサブネームが付いた日本専用設計に変更したモデル

先代までは世界共通のプラットフォームを採用していたが、日本専用設計に変更して5ナンバー枠を維持。バックモニターを全車に標準装着した。

 

【2012】11代目

カローラシリーズ初となるハイブリッド車が設定された

同車の原点でもある「大人4人が安心、安全、快適に長距離移動できるコンパクトカー」をテーマに開発された。ハイブリッド車の登場もトピックだ。

 

【2018】12代目(現行)

カローラ史上初となる3ナンバーサイズに進化

世界共通のTNGAプラットフォームで3ナンバー化。しかし最小回転半径は先代と同様で日本の道路事情に配慮するなど、使い勝手は良いままだ。

 

数字で驚く! カローラトリビア

V33

ニーズへのきめ細かい対応や、世界一と誉れ高い信頼性などそのクオリティが評価され、1969年から2001年までの33年間、連続国内登録車販売台数1位を記録した。また世界累計販売台数も1位だ。

 

150か国以上

日本仕様のイメージのあるカローラだが、実は世界で販売されるワールドワイドな1台で、トヨタの重要な世界戦略車だ。最初の展開は1966年のオーストラリア。デビュー当初から海外で販売されていた。

 

約34秒に1台

シリーズ累計販売台数は2021年になんと5000万台を達成した。1966年の初代発売から21年7月までの累計秒数をもとに計算すると、カローラは約34秒に1台も販売されてきたことになるのだ!

 

チーフエンジニアに聞く。カローラってこんなクルマ

トヨタ自動車株式会社
TC製品企画ZE チーフエンジニア
上田泰史さん

1991年トヨタ自動車入社。駆動関係の実験部署に配属。その後製品企画を経て、2011年より欧州開発拠点TMEに赴任した。15年、日本に帰任しカローラの開発を担当。

 

累計5000万台以上販売した“世界のカローラ”について、チーフエンジニアが語る

 

Q カローラに携わる前の印象は?

A 私の叔父2人が、それぞれカローラ(6代目)、カローラFX(初代)を乗っていて、とても身近な憧れの存在でした。カローラの主査を任命されたときは、大変そうだなぁと思うと同時にワクワクしたのを憶えています。

 

Q カローラらしさを貫いている点は?

A ひとつは良品廉価。より良いクルマを手に入りやすい価格で、より多くのお客様に提供することです。2つ目が、時代ごとのお客様の期待の半歩先にある価値を加えること。3つ目の価値が、時代に応じて変わっていくことです。

 

Q 現行モデルの狙いはどこにある?

A 若い方にも乗っていただけるようなクルマを目指して開発しました。ワクワクするクルマ、見てカッコ良い、乗って楽しいクルマを目指し、カローラをステップアップさせています。走りが楽しいカローラにご注目ください!

 

Q どんなところにカローラらしさを感じてもらいたい?

A より多くの方にクルマに乗る楽しさを感じていただきたいです。1クラス上の性能を、できるだけお求めやすい価格で提供できればと考えています。お客様がカローラと生活を共にすることで、暮らしが豊かになれば幸いです。

 

 

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世界累計5000万台超を販売! ニッポンが誇る偉大なファミリーカー「カローラ」

本稿では「コレ押さえときゃ間違いない!!」的ブランドと、そのアイコニックなモデルをフィーチャー。生まれては姿を消していく商品が多いなかで、世代を超えて愛され、文化的価値さえ備えた一流のクルマ、トヨタ・「カローラ」にクローズアップしました。

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

常に“ライバルの少し上”へ 今後はSUVが主役になる?

トヨタ カローラ

DATA

初代モデル発売 1966年
累計販売台数 約5100万台
現行ラインナップ数 6モデル

トヨタ

カローラ クロス

199万9000円〜319万9000円(税込)

カローラシリーズ初のSUVで、「RAV4」と「ヤリス クロス」の中間に位置するモデル。プラットフォームやパワートレインはカローラと同じものを採用した。エントリーモデルは200万円を下回る価格に設定され、幅広いユーザーに人気。

SPEC【ハイブリッドZ(2WD)】●全長×全幅×全高:4490×1825×1620mm●車両重量:1410kg●パワーユニット:1797cc直列4気筒DOHC+電気モーター●最高出力:98[72]PS/5200rpm●最大トルク:14.5[16.6]kg-m/3600rpm●WLTCモード燃費:26.2km/L
●[ ]内は電気モーターの数値

 

生誕から55年余りで5000万台超が国内外で親しまれてきたカローラは、日本でもかつて“国民車”と呼ばれ、33年連続で国内の年間販売ランキング首位の座を維持した、定番の中の定番に違いない。

 

当初掲げた“80点主義+α”の思想を受け継ぎ、ただ欠点が少ないだけでなく、プラス100ccの余裕や充実した装備などに象徴されるように、ライバルに対して常に少し上を行っていたのも特徴だ。

 

よく普通のクルマの代名詞としてカローラの車名が用いられるのは、それだけソツがなく信頼性が高いことの裏返しでもある。

 

現行モデルにはついにカローラの名の付くSUVまで加わった。従来のカローラシリーズと共通こそあれど一線を画したモデルだが、実はこのクルマこそ将来のカローラの中心になる存在とトヨタでは位置づけている。定番であり続けるためには、むしろ変えていくことが大事と考えているのだ。

 

↑荷室の開口部は身長が低いユーザーにも対応できる高さに配慮。後席を倒すと寝転がれるスペースに。荷室の容量は487Lだ

 

↑背の高いSUVのボディスタイルの恩恵で、頭上スペースに余裕のある後席。リクライニングが可能で足元も広く、快適な空間だ

 

↑星を眺めたり採光に使えたりする大開口部のパノラマルーフはオプション設定。電動サンシェード付きで暑さ対策も万全だ!

 

↑FFモデルのリアはトーションビーム式サスペンションを採用。大容量のゴムブッシュを使い構造や取り付け角度に配慮したという

 

↑フロントのエンブレムは車名の頭文字「C」をモチーフにしたもの。「C」の上部にはカローラの語源となっている花冠のモチーフをあしらっている

 

 

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バラエティ満載!? 来春開業予定の「相鉄・東急新横浜線」を走る車両たち

 〜〜3都県で進む7社局14路線の新鉄道ネットワーク〜〜

 

「相鉄新横浜線・東急新横浜線」の開業が2023(令和5)年3月の予定と発表された。1年前にあたる3月31日に、同路線を走る予定の車両が東急電鉄の元住吉運転区(神奈川県川崎市)に勢ぞろいし、報道陣に向けて「鉄道7社局の車両撮影会」が開かれた。

 

日ごろ入ることができない車両基地に、7編成の車両がきれいに並んだ。その並べ方といい、車両の選択といい、なかなか興味深い催しだった。これらの車両が走ることになったら、さぞや新線は賑やかな路線になるだろう。

 

【関連記事】
祝開業!都心乗り入れを果たした「相模鉄道」−−盛り上がる沿線模様を超濃厚レポート

 

「相鉄・東急新横浜線」の開業で新横浜駅が便利に

2023(令和5)年3月に開業予定の路線は相鉄新横浜線・東急新横浜線(以下「相鉄・東急新横浜線」と略)で、新たに「相鉄新横浜線」の羽沢横浜国大駅〜新横浜駅間の約4.2kmと、「東急新横浜線」の新横浜駅〜日吉駅の約5.8kmが開業する。中間に位置する新横浜駅が、相模鉄道(以下「相鉄」と略)と東急電鉄の境界駅となる。

↑路線は相鉄本線の西谷駅から東急電鉄の日吉駅へ至る路線となる。すでに相鉄・JR直通線は開業、列車の運行が続けられる

 

新線開業まで20年以上にわたる長い道のりだった。「相鉄・東急新横浜線」の路線計画の元となる「神奈川東部方面線」の計画が立てられたのが、2000(平成12)年のことだった。国土交通省の工事施行認可を受けたのが2009(平成21)年で、工事は鉄道・運輸機構が担当、まず相鉄・JR直通線の起工式が2010(平成22)年3月25日に行われた。同線は工事に9年の歳月がかかり、2019(令和元)年11月30日に開業している。さらに工事はその後も続けられ、1年後に開通する「相鉄・東急新横浜線」となる。

 

新横浜線のルート&工事進行状況は

「相鉄新横浜線」西谷駅〜羽沢横浜国大駅間の約2.1kmは、相鉄・JR直通線の一部として開業し、すでにJR埼京線との相互乗り入れが行われている。現在、工事が進められているのは羽沢横浜国大駅〜日吉駅の約10km区間だ。

↑羽沢横浜国大駅(左上)の北側でJR連絡線(左と右)と新横浜駅方面(中央2本)が分岐する。なお同写真は工事時のもの

 

工事の進捗状況だが、開業の1年前ということでかなり進んでいる。羽沢横浜国大駅付近のJR連絡線との分岐ポイント付近は、ほぼ工事が終了。その先の地下駅として新設される新横浜駅、新綱島駅、そして東急東横線の日吉駅まで羽沢トンネル、新横浜トンネル、綱島トンネルの工事が進められている。

 

開業後の運行頻度は羽沢横浜国大駅〜新横浜駅間が朝のラッシュ時が10本/時、その他の時間帯が4本/時、新横浜駅〜日吉駅間が朝のラッシュ時14本/時、その他の時間帯が6本/時となる。これは現時点の予定で、変わる可能性があるとのことだが、この本数差を見ると、相互乗り入れ運転以外に、東急側から走る電車の一部は新横浜駅での折り返し運転されることが分かる。

 

直通乗り入れにより、二俣川駅〜目黒駅間は約38分、海老名駅〜目黒駅間は約54分となり、相鉄沿線と都心との所要時間が短縮される。

 

この新線によって便利になるのが東海道新幹線の停車駅・新横浜駅。JR横浜線と横浜市営地下鉄ブルーラインに加えて新線が接続することになり、利用者もかなり増えそうだ。さらに、新線により東京都、神奈川県、埼玉県まで3都県14路線を結ぶ広域な〝新鉄道ネットワーク〟が完成することになる。

 

【関連記事】
意外に多い!? 東京&神奈川の「鉄道新線計画」に迫る

 

会場となった「元住吉検車区」は構造がなかなか興味深い

新鉄道ネットワークの開業1年前の催しとして、東急電鉄の元住吉検車区で3月31日に開かれたのが「鉄道7社局の車両撮影会」。7社局というのは、相模鉄道、東急電鉄、東京メトロ(東京地下鉄)、東京都交通局、埼玉高速鉄道、東武鉄道、西武鉄道をさす。東京都交通局が加わっているために「社局」とされたわけだ。

 

会場となった東急電鉄の元住吉検車区は、東急田園都市線の長津田検車区と並ぶ東急電鉄の代表的な車両基地。誕生は1926(大正15)年2月と長い歴史を持つ。東急東横線の元住吉駅のすぐそばにあるのだが、電車からは良く見えず、気付かない方が多いと思う。なかなか興味深い構造なので、その造りを簡単に紹介しておこう。最寄りの元住吉駅は高架上に設けられている。一方、元住吉検車区は東急東横線の下の地上部にある。そのため車窓からは見下ろさないと確認できない。

 

元住吉駅で下車すると、目の前に「元住吉第1号踏切」という踏切があるが、こちらは元住吉検車区に出入りする車両のみが通る踏切だ。そのため不定期に電車が通りすぎる。車両基地へ入出庫する電車のためだけに設けられたというのも珍しい。踏切からは車両基地内に電車が多く並んでいる様子が遠望できる。

↑元住吉検車区へ入る電車用に設けられ元住吉第1号踏切。踏切が駅前通りを横切るため、通過車両があると踏切待ちの人が目立つように

 

ちなみに、元住吉検車区に入出庫する車両は、1つ手前、渋谷側の武蔵小杉駅からの入出庫がメインだが、横浜側の日吉駅からも検車区へ入る専用線が設けられている。ここに配置される車両は東急電鉄の車両がメインとなる。

 

「鉄道7社局の車両撮影会」は、日ごろめったに見ることができない車両が集まる催しとあって、平日の日中にもかかわらず情報を聞きつけた熱心なファンが検車区の外に集まっていた。

↑元住吉検車区に配置されるのは東急の車両がメイン。珍しい車両の並びを撮ろうと当日は熱心なファンの姿も多く見受けられた(左下)

 

「そうにゃん」「のるるん」も登場、新線ムードを盛り上げた

筆者は1時間ほど前に会場を訪れたが、該当する車両らしきものはちらほら見られたものの勢ぞろいにはほど遠い様子だった。ところが、徐々に車両が集まり始め、小一時間ほどで、きれいに調整され〝整列〟したのだった。このあたり手順の良さに驚かされた。

 

最初は新線開業の〝主役〟となる2社、相鉄・東急の現業長(下写真参照・左から・東急車両保全課 元住吉検車区 区長、東急運転部 奥沢乗務区 区長、相鉄運輸課 電車区 区長、相鉄車両センター 検車区 区長)と相鉄キャラクター「そうにゃん」と東急線キャラクターの「のるるん」が並んだ撮影がまず行われた。

↑7社局の車両が並ぶ前でのフォトセッション。左に東急「のるるん」、右に相鉄「そうにゃん」と2社の現業長が集合した

 

2社のキャラクターは初めて身近で見たが、「のるるん」の頭に付いているパンタグラフが伸び縮みするとは知らなかった。

 

右から西武、東武、中央に相鉄と東急、そして地下鉄車両

↑元住吉検車区に集められた7社局の車両。右から西武、東武、相鉄、東急、東京メトロ、東京都交通局、埼玉高速鉄道の順に並ぶ

 

さて、ここからは7社局のどのような車両が集合したのか、その選択や並びについて、深堀りして見ていきたい。

 

右から西武鉄道、東武鉄道という関東の大手私鉄を代表する2社が並ぶ。次に新線開業の〝主役〟でもある相鉄と東急の2車両が中央に置かれている。東急の隣は大手私鉄の一社でもある東京メトロ、東京都交通局と地下鉄車両が続き、一番左に埼玉高速鉄道という順だった。

 

7社局の関係者が見ても、鉄道ファンが見ても納得できるような並びだった。ちなみに、7車両のうち西武鉄道は新線区間への乗り入れはしない。あくまで東急東横線を走る車両としてこの日は加わった形だった。

 

8両編成の東急3020系は撮影日翌日がデビューとなった

ここからは各社の代表として並べられた車両に関して見ていこう。各社の車両選びにも、こだわりが感じられた。

 

まずはこの日の〝主役〟となる東急と相鉄の車両から。まず東急電鉄は3020系。2019(令和元)年11月に導入した目黒線用の車両だ。8両編成として製造したが、導入時は目黒線が6両編成への対応のみだったため、中間車2両は予備車扱いとなり車両基地に留め置きされている。

 

この春から8両に戻す作業が少しずつ進む。元住吉検車区へやってきたのは、初めて8両化された3023編成で、正面に「8」のマークが付けられていた。そして翌日の4月1日から目黒線、東京メトロ南北線、埼玉高速鉄道を走っている。この編成が同路線区間で、最初に走った8両編成車両となった。そんなこだわり車両が、この日の撮影会の主役となっていた。

 

ちなみに、今後、目黒線、南北線、埼玉高速鉄道、都営三田線では順次6両編成から8両編成に変更が進められることになる。

↑4月1日から走り始めた東急3020系3023編成、右は相鉄20000系車両。こちらは10両編成車両だ。それぞれ「新横浜」と行先を表示

 

↑導入時は6両編成で走った東急3020系。すでに一部編成は中間に2両を連結し、8両として走り始めている

 

一方の相鉄は20000系が持ち込まれていた。20000系は新線開業用に2018(平成30)年2月に導入された10両編成の車両だ。まだ相鉄と東急の間には直接結ばれた線路がないため、撮影会にあたって、JR相模線の厚木駅からJR横浜線の長津田駅までは、JR貨物の甲種輸送によって運ばれた上で、元住吉検車区まで走ってきた車両だ。東急線内にしばらく留め置かれて、新線開業に備え乗務員訓練という形で試運転が行われるのであろう。

 

相鉄には目黒線乗り入れ用に21000系という8両編成の車両も2021(令和3)年6月に導入された。この21000系が4編成導入の予定とされている。21000系はすでに入線試験という形で、目黒線ほか、地下鉄路線にも乗り入れ試験を行っている。

 

↑新線開業後は東急目黒線への乗り入れが行われる21000系。すでに相鉄路線内のほか、地下鉄線内などでの入線試験が実施されている

 

試運転が続く都営三田線の新車6500形

次に地下鉄車両を見ていこう。この日に集まったのは東京メトロが9000系。東京都交通局からは6500形、そして埼玉高速鉄道からは2000系が集合した。この中で注目は都営三田線の新車6500形だろう。

 

都営6500形は前面が黒、淡いブルーの縁が付くなかなか個性的な正面。「人にやさしい車両」というユニバーサルデザインの考え方を取り入れた、全車両にフリースペースが設けられる。2022年度中に13編成×8両の計104両を導入の予定だ。走り始めるのは5月14日と発表されているものの、すでに目黒線内まで試運転電車が入線し、撮影会場となった元住吉検車区で折り返す姿を見ることができる。

↑左から埼玉高速鉄道2000系、都営三田線6500形、東京メトロ9000系が並んだ。都営6500形は5月14日から運用開始の予定

 

↑東京都交通局、都営三田線の新車6500形。なかなか個性的な正面デザインだ。すでに東急目黒線で試運転を始めている

 

東京メトロ9000系も鉄道ファンにとっては気になる車両だ。最初の車両は1991(平成3)年の南北線の開業に合わせて1990(平成2)年に登場した。後に5次車まで増備され、現在は23編成138両が走る。撮影会に集合したのは初期に造られた1次車だったが、最近は側面の帯が直線と波形(リニューアル車の目印)のものが走り、バラエティに富む。

 

さらに,

2009(平成21)年に増備された5次車はそれまでの9000系と設計思想も異なり、正面の形もかなり異なっている。この5次車は2編成のみで、9000系の中ではマイナーな存在だが、それだけに気になる車両と言って良いだろう。撮影会ではそうした珍しい車両を撮影できなかったのがちょっと残念だった。

 

この9000系も2022年度中には8両編成化が進められ、さらに新しい6次車も導入される。

↑東京メトロ9000系の5次車。2編成のみの珍しい車両で、既存の9000系とは正面の形がかなり異なっている

 

東武は新線にも乗り入れ、西武は現状乗り入れせず

撮影会の時には右側に並んでいたのが東武鉄道と西武鉄道の車両。この日は東武が50070型、西武が40000系の姿が見られた。西武は前述したように新線乗り入れはないものの、東急東横線を走る列車の中では、唯一の有料座席列車として目立つ存在でもある。将来は、乗り入れが検討されるかも知れない。

↑東武鉄道50070型と西武鉄道40000系が並ぶ。東武と西武の車両が並ぶというのも東急東横線ならではの光景だ

 

それぞれ車両の特長に触れておこう。東武鉄道50070型は、正面のオレンジと黒の2色カラーが目印。50000系の一系列が50070型で、東武東上線だけでなく、東京メトロ有楽町線・副都心線、東急東横線などへの直通運転用に開発された。ちなみに東武東上線専用の車両が50000型、東武伊勢崎線・日光線用で、東京メトロ半蔵門線、東急田園都市線へ直通運転を行うのが50050型となる。また、有料座席指定制列車「TJライナー」用の50090型も東武東上線を走っている。形はほぼ同じだが、こうした系列分けが細かく行われている車両でもある。

↑西武40000系は右端に並んだこともあり後部まで見通せた。40000系は現在、東横線内を有料座席指定制列車「S-TRAIN」として走る

 

東京メトロ副都心線を経て、東急東横線内へ乗り入れる西武鉄道の車両。東横線内には40000系と6000系が入線している。撮影会で並んだのは西武40000系で、2017(平成29)年に登場した車両だ。この車両最大の特長といえば、ロングシートとクロスシートと座席の転換ができること。デュアルシートと呼ばれる構造を生かして、西武鉄道線内だけでなく、現在は、副都心線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線まで直通運転を行う有料座席指定制列車「S-TRAIN」として活用されている。

 

7社局の代表的な車両が集まった今回の車両撮影会は壮観だった。これら以外に新線を走ることになる車両はまだ多くある。そうした車両が相鉄・東急新横浜線を走ることになるのだ。さらに相鉄線内ではJR東日本の車両とも出会うことになる。今回の撮影会以上に、多士済々の車両たちが新線を走ることになりそうだ。今から新線開業が楽しみである。

Spotifyの車載デバイス「Car Thing」、通話や他メディアのコントロールが可能に

↑SpotifyのWebサイトから

 

米Spotifyは車載デバイス「Car Thing」にて、通話や他メディアのコントロールなどの新機能をリリースしました。

 

Car Thingは2022年2月に米国にてリリースされたデバイスで、本体にはディスプレイとコントローラーを搭載。スマートフォンと車載スピーカーをBluetooth(あるいは有線)により接続することで、楽曲をコントロールできます。スマートフォンの小さな画面を覗き込まなくても、ノブでかんたんに操作ができるのがメリットといえるでしょう。さらに、音声アシスタント機能「Hey Spotify」も利用可能です。

 

そして今週のアップデートにより、Car Thingでは電話に応答することができるようになります。これには着信の確認、応答、切断といった操作が含まれます。

 

他メディアのコントロール機能としては、Car Thingでほかのメディアを再生し、コントロールすることができるようになります。また音声操作のほか、画面のタップにより、Spotifyへの画面に簡単に戻れます。

 

楽曲やPodcastのキューへの追加も可能になります。さらに、音声で音楽をリクエストしたり、パーソナライズされたプレイリストを入手したりすることもできます。

 

これらの機能は、iOSのユーザーには自動アップデートにて提供されます。車内で簡単に楽曲やほかのメディアが操作できるCar Thing、日本への導入も早めに実施されることを待ちたいものです。

 

Source/Image: Spotify

コンパクトサイズでも存在感は十分! ダイハツ「ロッキー」はハイブリッドも魅力的だった

1LクラスのコンパクトなSUVとして、兄弟車のトヨタ「ライズ」とともに人気を博しているダイハツ「ロッキー」。そんなモデルにハイブリッドモデルと、1.2Lのエンジンを搭載したモデルが新たに加わりました。特にハイブリッドモデルは、自社製の「e-SMART HYBRID」と呼ばれるユニットを搭載した意欲作です。

 

【今回紹介するクルマ】

ダイハツ/ロッキー

※試乗車:Premium G/Premium G HEV

価格:166万7000円〜236万7900円(税込)

 

コンパクトでも小さく感じない外観と室内

5ナンバーサイズのコンパクトなSUVである「ロッキー」。コンパクトSUVとしてはトヨタの「ヤリス クロス」と比較されることも多いですが、ヤリス クロスは3ナンバーサイズであることを考えると、ロッキーは並ぶもののない存在です。外観デザインは、SUVらしい車高を確保し、デザインもフェンダーの張り出しを強調したラインなど存在感のあるもので、見た目で小ささは感じません。

↑大きめのライトを中心にデザインされたフロントフェイスは迫力があるもの

 

↑ハイブリッドモデルはグリルのデザインも変更され、エンブレムはブルーとされる

 

↑兄弟車のトヨタ「ライズ」(右)も基本設計は同一ながらフェイスデザインは異なる

 

車内に入っても、意外なほど狭さは感じません。運転席からの視界が広く確保されていることが、車室内を広く感じるのに一役買っているようです。リアシートに移っても、前席との隙間が確保され、足元もヘッドスペースも狭さを感じさせないものです。ファミリーカーとして購入しても、後席から不満が出ることはないでしょう。

↑SUVとしてはコンパクトなサイズですが、視界が広い分狭さは感じない

 

↑リアシートは足元・ヘッドスペースともに十分確保されている

 

ラゲッジスペースは後席を使用した状態で369L(2WD/ガソリンエンジン車)と十分な容量を確保。アンダーラゲッジが深く、キャンプなどの荷物も詰め込むことができます。2段階可変式のデッキボードも設置でき、荷物を上下に分けて収納することも可能です。

↑深さのあるラゲッジスペース。コンパクト車を得意とするダイハツのノウハウが感じられる

 

↑ハイブリッド車と4WD車はアンダーラゲッジのスペースがやや狭くなる

 

↑デッキボードを設置し、6:4分割式のリアシートを倒すとフラットなスペースを作れる

 

ダイハツが自社開発したハイブリッドユニット

従来のパワーユニットは996ccの3気筒ターボのみでしたが、新たに1196cc3気筒NAエンジンと、ハイブリッドが追加に。特に注目されるのがダイハツが自社開発したハイブリッドユニットで、エンジンを発電機として用い、駆動はモーターで行うシリーズ式とされています。トヨタからの提供ではなく、自社で新たにハイブリッドシステムを開発したのは、将来的に軽自動車への搭載も視野に入れているためでしょう。搭載される「e-SMART HYBRID」では1196ccのエンジンを搭載していますが、発電機として使用するシリーズ式なら軽自動車にも転用しやすそうです。

↑「e-SMART HYBRID」のパワーユニット。新型の1.2Lエンジンを発電機として搭載する

 

↑ハイブリッド用のバッテリーは後席のシート下に搭載する

 

↑こちらは新型の1196cc3気筒NAエンジン。最高出力は87PS/6000rpm

 

駆動はモーターで行うため、出だしから機敏な加速が味わえます。バッテリー電力のみでの走行距離は限られていて、アクセルを少し踏み込むとすぐにエンジンがかかりますが、システムでの燃費はWLTCモードで28km/Lなので、1.2Lエンジンの20.7km/L、1Lエンジンの17.4km/Lと比べるとかなり伸びています。

↑メーターの表示は3種類から選べ、ハイブリッドシステムの運転状態がわかる

 

モーターの最高出力は106PS、最大トルクは170Nmとシリーズの中では最もパワフル。一般道から高速道路まで走行しましたが、コンパクトな車体をしっかり加速させ、追い越し加速でも余裕のあるものでした。アクセルに対するレスポンスの良さは、モーターならではのもので俊敏な加速が味わえます。アクセルを戻すと、回生ブレーキが効く設定で、停止までは行かないものの、ある程度はワンペダルでの走行も可能。加減速の多い街中では便利なシステムです。

↑信号待ちからの加速はモーター駆動の真骨頂。交通の流れをリードできます

 

1.2Lエンジンも試乗しましたが、こちらも低速トルクに余裕があり、NAエンジンらしい吹き上がりも感じられて一般道から高速道路まで不満は感じません。ハンドリングはSUVらしいストロークの長さが感じられ、それでいて車体はコンパクトなので狭い街中での取り回しも良好。SUVに乗りたいけれども、普段は細い道を走る機会も多いという人には、またとない選択肢でしょう。

↑SUVらしい視点の高さでキビキビ走れる取り回しの良さが魅力

 

コンパクトカーを得意とするダイハツらしい完成度の高さで、独自のシェアを築いている「ロッキー」。ハイブリッドが選択肢に加わったことで、さらに魅力を増しています。ハイブリッドモデルになると、価格的に「ヤリス クロス」も視野に入ってくるところですが、5ナンバーサイズに収まるボディは大きなアドバンテージ。夫婦でクルマを共用し、SUVがほしいけれど普段は奥さんが運転する機会が多いというような人には、ありがたい選択肢となるでしょう。

 

SPEC【Premium G/Premium G HEV】●全長×全幅×全高:3995×1695×1620mm●車両重量:980kg(1070kg)●パワーユニット:水冷1.2L直3気筒12バルブDOHC横置●最高出力:64kW[87PS]/6000rpm(60kW[82PS]/5600rpm【モーター78kW[106PS]/4372〜6329rpm】)●最大トルク:113N・m[11.5kgf・m]/4500rpm(105N・m[10.7kgf・m]/3200〜5200rpm【モーター170N・m[17.3kgf・m]/0〜4372rpm】)●WLTCモード燃費:20.7km/L(28.0km/L)

※()内はPremium G HEVの数値

 

撮影/松川 忍

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

 

グーグルが社員向けに「Unagi」の電動キックボードを導入

 

米グーグルは自社の従業員向けに、Unagi社の電動キックボードを無償で提供すると発表しました。

 

電動キックボードとは移動を電動モーターによってアシストする乗り物で、日本でも複数都市にて実証実験が開始されています。移動速度はそこまで高速ではありませんが、国や地域によってはヘルメットを被らなくても利用できる気軽さが特徴です。今回の導入は社員によるオフィス、あるいはバス停への通勤が想定されています。

 

Unagiの電動キックボード「Model One」はデュアルモーターを搭載したモデルで、最高時速20マイル(時速約32キロ)かつ航続距離15.5マイル(約25キロ)を実現。通常は990ドル(約12万円)で販売されており、月額49ドル(約6000円)でのレンタルも可能です。

 

グーグルは新型コロナウイルスによるパンデミックの影響により、これまでリモートワークを実施してきました。一方でオフィスでの勤務が再開されることに、拒否感をしめす社員もいます。今回のUnagiの電動キックボードの導入は、そんな社員の出社を後押しするものとなります。

 

グーグルはカリフォルニアのマウンテンビュー本社のほか、シアトル、カークランド、アーバイン、サニーベール、プラヤビスタ、オースティン、ニューヨークにてUnagiの電動スクーターを導入します。便利な電動キックボードが社員の出社を後押しすることができるのかどうかが、注目されます。

 

image: Unagi

Source: The Verge

1年間の走行距離は6万キロ以上! バイクはもはや体の一部なGARUのハードボイルド・バイクライフ

冒険家・滝行家であり、モデルとしても活躍しているGARU。年間走行距離6万キロ以上、「バイクは体の一部」という彼女のハードボイルド・バイクライフについて聞いてみた。

 

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:背戸馬)

GARU:冒険家であり滝行家。陸/空/海、どんなステージでも活躍する挑戦者。本業のモデル業に加え、船舶1級/潜水士/大型自動二輪/パラグライダー選手など複数資格を持つ、これまでの旅は世界を2周、常に何かを求めて国内外を旅を続けている。現在マットモーターサイクルズで日本中をツーリング中

 

【GARUのMASTIFF250の画像はコチラ】

 

バイクはもはや体の一部

――先ほどの撮影でバイクを見たらけっこう汚れてましたけど、どこかに走りに行かれたんですか?

 

GARU「那須から帰ってきました、今日」

 

――栃木県の那須ですか。今日?

 

GARU「はい。那須高原の別荘をお借りして、お泊り会みたいな」

 

――乗ってきていただいたMUTT MOTORCYCLES(マットモーターサイクルズ)のMASTIFF250は、いかにもタフそうなスタイルですから、冒険家のGARUちゃんに似合いますし、汚れがあるのもサマになってますが

 

GARU「ほんとですか? 実は数日前にきれいにしたんですよ。整備もしてもらって全部きれいにしたんだけど、ちょっと雪で汚れちゃって(笑)」

 

――雪? 那須高原の方はまだ雪があるんですね

 

GARU「すごかったですね。道の真ん中には積もってないですけど路肩にはけっこうあって、溶けて道に出てきてました。行ったのがロッジみたいなところだったので、雪が残る砂利道を通って……」

 

――そういうとこ、普通はスタッドレスタイヤを履いた車で行くんですよ(笑)

 

GARU「途中、ずっと『この先スタッドレス装着車以外通行止め』みたいな案内が出てました」

 

――雪があるところにも果敢にもバイクで行っちゃうと

 

GARU「そうですね。いちおう冒険家って名乗ってるので、どこでも行きます(笑)。『バイク愛がない』っていうとすごく語弊があるんですけど、私はバイクを道具としか思ってないんです。でも、道具っていうとまた語弊があるんですよね……。なんか、もう体の一部というか、一心同体!みたいな。なので、『私が頑張れるなら、お前も頑張れるだろ』というスタイルです(笑)」

 

――GARUちゃんのそういうスタイルについてきてくれるバイクじゃなきゃだめですね

 

GARU「そうですね、あの子(MASTIFF250)はついてきてくれます」

 

――そんなにハードに使って、MASTIFF250にトラブルって?

 

GARU「ないですね。あるとすればチェーンが切れちゃったことくらい」

 

――チェーンが切れちゃう? なかなかないですよ

 

GARU「そうですか?『もう無理だよ』ってバイクが言うと切れちゃうのかな」

 

――オートバイのほうから限界を知らせるシグナルが出るわけですね。MUTT MOTORCYCLES(以下、MUTT)は2019年に日本に上陸したイギリスのカスタムビルダー製のオートバイです。デザイン性が高いのは見ての通りですが、しっかり走れるんですね

 

GARU「そうです。耐久性も高いです」

 

――じゃあ、バイクで気を使うことって?

 

GARU「交通ルールを守るのと、定期的なメンテナンス以外は何も気を使わないです」

 

1年間の走行距離は6万キロ以上

――年間走行距離ってどれくらいなんですか

 

GARU「1年で6万~7万キロくらい乗りますね。去年の夏も6日間で6800キロ走りました」

 

――一体どこを走るとそんなにいくんですか

 

GARU「北海道の友達からツーリングに呼ばれて、『OK行くね!』って感じで北海道に行って、その次に九州の友達から、『阿蘇においでよ』って言われてまた『OK!』ってそのまま九州まで行って。そこでバーっと遊んで、また北海道から呼ばれて……みたいな。私、日本ってぜんぶ近所だと思ってて」

 

――うーむ(絶句)

 

GARU「半径1000キロ圏内はぜんぶ近所だと思ってますから」

 

なお、インタビューに同席してもらったマネージャー氏によると、GARUちゃんの乗るMUTTのバイクは1.5万キロから2万キロで車両を交換しているそうだが、現在のMASTIFF250で8台目。控えめにカウントしても12万キロ以上は走っているそうだ。いわく「フカシだと思うでしょ? 本当です」。

 

――そのスケール感はすごい

 

GARU「でも、走ろうと思って走ってるというよりは、行きたい場所に行ってたらそれだけ走っちゃったという感じなんです」

 

――なんでも、1回乗ると給油以外では止まらないとか

 

GARU「目的地が決まっていれば、基本、そこまでは休憩しないですね。もちろん何も用事がなければ、途中で休憩したりとか、ライダーに話しかけたりとかはします。私、目的地を決めたら、夜走るんですよ。夜11時か12時に出発して、早朝に着くように走ります。昼間はいろんな誘惑があるから……私、誘惑にすぐ負けるので」

 

――なるほど、夜は誘惑が少ないから

 

GARU「はい。サービスエリアも閉まっているところが多いし、走っている人も少ないし、話す人もいない。だから、けっこう距離を走るときはオムツはいて、給油以外では足をつかず走っちゃいます」

 

――へえ(2回目の絶句)

 

GARU「1回降りたら“終わり”なんです、絶対。どんどん寒くなっちゃうし、やれコーヒーとか、もうちょっともうちょっと……と、休憩がどんどん伸びちゃう。だからいつも時間ギリギリに出ます」

 

――バイクって移動が楽しいじゃないですか。どこかに寄ったり美味しいもの食べたり。GARUちゃんの場合は、あくまで目的まで行くための手段なんですね

 

GARU「そうです。私の足だし、ほんとに体の一部だと思ってます」

 

GARU流「バイクの選び方」

――GARUちゃんくらい移動距離が長いと、大型バイクに乗るって選択もあると思うんですが

 

GARU「リッターバイクは撮影では乗りますけど、日本で買おうとは思わない」

 

――それはなぜです?

 

GARU「バイクがかわいそう。スピードを出せないし、渋滞をトコトコ2、3速で走って……バイクがかわいそうだなって」

 

――本来の性能を使い切れないままなのはかわいそうだと

 

GARU「そう。逆に性能を使っちゃうと捕まるし、危険。かといって、私は性能を試すためだけにサーキットに行きたいとは思わない。だから撮影とか、たまにレンタルで楽しむくらいがちょうどいいかなって」

 

――考え方が合理的なんですね。でも、性能は使い切れないとしても、大きいバイクは高速移動が楽じゃないですか

 

GARU「楽ですね。でも、やっぱり私のベースは東京なので、機動性を重要視してるんです。リッターだと、もし人がいきなり飛び出してきたり、なにかあったときに止まれる自信がないし、どこかにぶつけて傷つける自信がある(笑)。250くらいなら最悪そういう事になっても、なんとかできそうな……自信はないですけど、まだリッターに比べたら事故は少ないかなと思います」

 

――リスクも考えて車種選択をしているんですね

 

GARU「あと私、“ゼロ100”なんですよ。アクセル全開かオフかしかないので、MUTTのバイクがちょうどいい。これが100%出したところでスピードも100キロちょっとしか出ないので、安心安全です。それにキャリアをつければ荷物もガッツリ乗りますし。タンデムもできるし、250なので車検はもちろんないですから」

 

――今は女性も大型免許をとってリッターバイクにのる方も多いですが、誰よりアクティブなGARUちゃんが「250がぴったり」と言うのって意外です

 

GARU「大型バイクの免許を取るのはいいんですよ、でも乗るのはね。基本は飾ってて長距離に年に2、3回だけ乗るとかだったらぜんぜんいいんですけど、日常生活で使うとかなら違うのかなって」

 

バイクとの出会い

――質問を変えまして、バイクとの出会いを教えていただけますか

 

GARU「16で免許を取って、最初に乗ったのは家にあった適当なスクーターとかですね」

 

――ご家族もバイクに?

 

GARU「お父さんも乗ってましたし、おばあちゃんも乗ってました」

 

――おばあちゃんもバイクに乗ってたって、それちょっとおしゃれですね。じゃあ生活圏内にオートバイがある生活だったと

 

GARU「富士スピードウェイが近かったんですよ。いろんなチームのピットがあったり、同級生の親御さんもレース関係者だったり、そういう環境で育ったのでバイクは普通って感じでした」

 

――免許とったり、乗ったりというのも自然な行為だったと

 

GARU「ですね。通っていた高校は、16歳になると学校に教習所の車がお迎えにきて、みんな当たり前のように取るみたいな」

 

――珍しいですね。免許を取ることについてご両親の反応はどうでした?

 

GARU「親は海の仕事もしていたので、『16になったら特殊小型船舶操縦士とバイクは取りなさい』と」

 

――『取りなさい』なんですね(笑)

 

GARU「あと、うちの地域ではいつ富士山が噴火してもおかしくないって言われてて、万が一のときは自転車じゃ逃げられないから、バイクででもなんでも逃げなさいみたいな」

 

――バイクは自衛手段でもあると

 

GARU「自衛手段にもなるし、あとは交通ルールを学んだりとか社会勉強にもなるから」

 

――オートバイ乗りたくても乗れなかった世代からすると羨ましい話です。そういう経験が、GARUちゃんのオートバイを足として使うっていう原点になったりしてるんですかね

 

GARU「他の子の話を聞いていると、『何々っていうバイクに乗りたくて免許をとった』っていうのが原点だけど、私は自転車と同じで、バイクは乗り物のひとつみたいな感じ。なので、何か決まった車種に乗りたいとか、バイクで何をしたいとかがあんまりなかったですね」

 

バイク便で稼ぎまくった日々

――歴代のバイクは?っていう質問も用意して来たんですけど、実家にあったのを乗ってたとか、乗りたかったバイクも特になかったと

 

GARU「そう。アメリカ留学したときはホストファミリーのショベル乗ったりとか、友達のバイクにいろいろ乗ってきたけど、何を歴代のバイクっていうのか……よく訊かれるんですけど、わからないんです(笑)」

 

――GARUちゃんとバイクの馴れ初めはちょっと変わってますしね

 

GARU「歴代のバイクとして覚えてるのは、ちょっと前にニンジャ250に乗ってました。ちょっと古いやつ。そのころバイク便の仕事をしてました」

 

――どうしてバイク便をやってたんですか

 

GARU「ずっと海外にいて日本に帰ってきたときに『バイクに乗りたいな』って思ったけど、東京ってただ停めておくだけでもコストがかかるじゃないですか。あと、仕事をしたら乗らないんだろうなって思ったんです。だから、バイク系の楽しい仕事をしようかなって思ったときに、バイク便の話を聞いたんですね。私が入ってた会社はメンテナンスも全部してくれるし、会社にバイクを置かせたりもしてくれる。めっちゃいいじゃんって、それくらいのノリです(笑)」

 

――趣味と実益を兼ねていたわけですか

 

GARU「GW前とかは、多いときで1日10万とか稼いでたんですよ」

 

――1日10万?

 

GARU「はい。長距離便っていうのがあって、栃木とか群馬とかに行って帰ってきただけで3万4万とか。どうしてもGW前に急ぎの荷物を届けたいけど宅配便は混んでて間に合わないって場合があるんですよ。速いし快適だし、都内走るのも長距離走るのも250のニンジャがちょうどよかったんです」

 

――バイク便は何年間くらいやったんですか

 

GARU「海外と行ったり来たりだったんですけど、所属はいちおう5年くらいしてました。稼いでまた海外に行ったりする、そのスタイルがすごい良くて」

 

――それはいいですね。長距離を走るのはバイク便時代から板についてるんですね

 

GARU「はい。長野にも行ってましたけど往復で500キロくらいなのでぜんぜんって感じでした。今も夏になると週3くらいで大阪に日帰りで行くので。プライベートで」

 

――うーむ(3度目の絶句)

 

MUTTとの出会い

――GARUちゃんはMUTT MOTORCYCLESのアンバサダーをされていますが、どういうきっかけで就かれたんですか

 

GARU「MUTTが日本に来るときに、雑誌の撮影で声をかけてもらったんです」

 

――そこからMUTTカフェ巡り旅がスタートするわけですね

 

GARU「そうです。MUTTカフェって北海道から九州まで30か所くらいあるんです。MUTTを買う人って、バイクよりファッションが好きだったり、周りにバイク乗りの友達が多くなかったり、走りに行くにもどこに行けばいいの?って人たちが多いんです。MUTTを購入したときやオイル交換したときにMUTTカフェのコーヒーチケットがもらえるんで、MUTTに乗ってコーヒーを飲みにカフェに行って、そこで交流したり、情報収集ができる。つながりを増やすためのカフェなんです」

 

――なるほど。全国30か所全部に行かれたとのことですけど、どれくらいでやり遂げたんですか

 

GARU「1か月くらいかな。そんなにかかってないですね。ただ、行ったあとが長いんですよ。1か所に何週間も泊まったりとか、半年くらいいたところもあったかな」

 

――どういうことです?

 

GARU「カフェに行っていろんな話してて、『今日どこのホテル泊まるの』『いや、テントなんですけどちょっと庭貸してもらえないですか』って。そこから庭先を借りてテント張ったりしてるうちに、『部屋の中に泊まりなよ』とか『うち来なよ』みたいな感じで仲良くなって、もう居座るみたいな(笑)」

 

――GARUちゃんならそういうことをやりそうなイメージはありますよ。もともと世界を旅されたときもそんな感じで?

 

GARU「そんな感じですね。風呂敷一個でふらふらしてたっていう。もともとの私の旅スタイルです。私、人生において2つ大事にしていることがあるんです。1つ目が環境をかえること。もう1つは人に会うこと。この2つをすごく重視しています」

 

――旅そのものの魅力とも重なりますね

 

GARU「同じところに留まってしまうと、考え方が凝り固まってしまったりする。人に会えば、いろんな情報がいっぱいある。ネット社会って調べればなんでも情報が出るけど、それはあくまで自分の興味のあることしか調べないじゃないですか。でも人に会ったら、自分が全然興味なかったけど、なんか面白そうなつながりができて、そこからどんどん広がるので、それが楽しいんです」

 

波照間島ツーリングの辛い思い出

――ハードな旅をされていますけど、ツーリングでの辛いエピソードなんかは?

 

GARU「日本でですか?」

 

――じゃあ日本にしましょうか

 

GARU「辛いこと……なんだろう、波照間島の話がいいかな」

 

――ぜひ教えてください

 

GARU「バイク乗りって、日本最北端の北海道の宗谷岬から最南端の鹿児島県の佐多岬まで行きたいって夢があるじゃないですか。でも、そこは本当の最南端じゃないんですよ。日本最南端は沖縄本島から500キロ先の波照間島にあるんです。日本最南端の石碑があるんですけど、私はそこにどうしても自分のバイクを持って行きたかった。でも、沖縄本島から波照間島の間はフェリーがない区間があるので、波照間島では自転車とかバイクをレンタルするしかないんです」

 

――フェリーがないのに、どうやって自分のバイクを?

 

GARU「漁船のおじさんに直談判して乗せてもらいました。固定するベルトもなかったので、ずっと海が荒れ狂う中、バイクを自分で押さえながら。MUTTは重量120キロくらいだから2人いれば持ち上げられるんですよ。で、島の中に入って1日くらいふらふらして、『明日漁が終わってから迎えに来るね』って言われてたのに海が荒れちゃって。そのまま1か月」

 

――1か月? 波照間島に?

 

GARU「はい。荒れちゃって船が出せなくて。島にある商店にも物資が入らないので、食べ物がどんどんなくなってきて、2週間くらいで完全に尽きたんです。そのあとはそのへんにいるカニを食べたり、野生のバナナ食べたり、島のおばあちゃんと仲良くなってサーターアンダギーを食べさせてもらったりとかして、町全部を巻き込んでそういう生活をしました。初めて『帰りたい』って弱音吐きましたね(笑)」

 

――だって島から出られないんですよね

 

GARU「帰りたいっていうのは、飽きたからなんですよ。旅先で生活を確立するまでが好きで、確立しちゃったら飽きちゃうんです。ここにいけばおばあちゃんがサーターアンダギーをくれる、ここにいけば野生のバナナが採れる、ここにいけばカニが食べられる……それがわかっちゃったら安定した生活になるじゃないですか。安定する生活までの過程を楽しむのが好きなので。だから飽きちゃってもう帰りたいと(笑)」

 

――じゃあ1か月、波が穏やかになるのを待っていた

 

GARU「ですね。実は自分だけ飛行機で帰ろうと思えば帰れたんです。東京から『バイクおいて帰ってくれば』ともそそのかされたんですけど、私にはバイクだけおいて帰る気はなかった。自分の体の一部なので」

 

MUTTで世界一周のプラン

――そういえば、バイクでも世界1周するなんて話も聞きました

 

GARU「そうなんですよ、本当は去年から実行したかったんですけど、新型コロナで立ち往生してる感じです。もう国土交通省にも問い合わせて、行ける国とルートをある程度確立してます。韓国から中国に渡り、南下してベトナムやカンボジアなど東南アジアを回って、という感じですね。MUTTで行こうとしているんですけど、ディーラーも東南アジアにもあるのでそこにも寄りながら」

 

――それは大冒険だ

 

GARU「イギリスにも1度寄って、イギリスでMUTTを交換して、違うバイクでもう半分回ろうかなと」

 

――日本からイギリスまでバイクで行くだけでもすごいですが、そこで「半分」ですか(笑)

 

GARU「世界1周をやるんだったら記事を書きながらとか映像を撮ったりとか、どこかに爪痕を残しながらやりたいんです」

 

――爪痕ですか。具体的には?

 

GARU「はい、その地域を変えながら回りたいって思ってます。これまで世界を2周してますけど、はがゆい気持ちになることが多かったんです。たとえば“水道がない地域に井戸を掘ろう”って番組があっても、掘った井戸はその後権力者が奪って金儲けをしている。そういうのを何度も見てきて、何もできなかったんですね。

私は、じゃあ井戸を作るにしても動画でその様子を映しながらクラウドファンディングをその場で始めて、ちゃんと人件費を払って管理できるようにして、ずっと継続的なサービスを作ったりすることをやりたいんです。私の発信力だったらメディアで流せば人も集まると思うし、その状況をリアルタイムで見せながらっていうのは面白いし、社会貢献にもなるじゃないですか。ただ世界を回るだけじゃなくて、視聴者を巻き込みながら、言いすぎかもしれないけど国を変えながら回れたらいいなって思います」

 

――壮大な計画ですね

 

GARU「普通に回ったら、赤道距離でもたかだか2万キロしかないので半年もあればいけますけど、やっぱりいろんな国にいって、みなさんと仲良くなりたいので。これを願望で終わらせたくないんですよ」

 

バイクを「自分の足」と言い切る冒険家・GARU。カスタムしたり磨いたりする寵愛のしかたとはまた違った、バイクへのこだわりや愛情をひしひしと感じることができた。3度目の世界1周はバイクで巡り、各国から刺激的なレポートをしてくれることは有言実行のGARUちゃんなら間違いないだろう。

癒やされる車窓風景!? 焼き物の里行き「信楽高原鐵道」のおもしろ旅

おもしろローカル線の旅80〜〜信楽高原鐵道(滋賀県)〜〜

 

滋賀県の甲賀市(こうかし)を走る信楽高原鐵道(しがらきこうげんてつどう)。乗ればとても癒やされる、そんなローカル線である。

 

筆者は滋賀県を訪れるたびに乗りに行ってしまう。たぬきの焼き物たちに癒やされ、車窓に癒やされ……そんな信楽高原鐵道の旅を紹介していこう。

 

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歴史好きは絶対行くべし!「近江鉄道本線」7つのお宝発見の旅【前編】

 

【癒やしの信楽①】信楽とはどのようなところなのか?

信楽はご存知のように焼き物の里である。信楽焼の窯は日本六古窯のひとつにあげられる。歴史は古く、焼き物づくりが始まったのが鎌倉時代のこと。15世紀ごろから日常品を中心に焼き物づくりが活発になったとされる。

↑信楽高原鐵道の信楽駅ではたぬきの焼き物がお出迎え。信楽高原鐵道の旅はフリー乗車券(940円)の利用がお得だ

 

信楽は四方を山に囲まれた山里だ。周辺では良質の陶土が多く産出されたことで、焼き物造りが盛んになった。さらに京都に近く、古くから交通の要衝として賑わい、そこで造られる食器や生活雑器が広く流通するようになった。

 

2019(令和元)年9月〜2020(令和2)年3月に信楽を舞台にしたNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「スカーレット」が放映されたこともあり、さらにその名が全国に知られるようになった。今も信楽の里には多数の窯元が点在し、年間を通じて多くの人が訪れている。

↑信楽といえばたぬきの焼き物が名物。窯元を訪ねても、たぬきの焼き物がずらり。新しいタイプのたぬきも人気だ(右下)

 

【癒やしの信楽②】甲賀市のみを走る路線なのだが……

ここで信楽高原鐵道の概略に触れておきたい。

路線と距離 信楽高原鐵道信楽線/貴生川駅(きぶかわえき)〜信楽駅14.7km、全線単線非電化
開業 1933(昭和8)年5月8日、国鉄信楽線として開業、1987(昭和62)年7月13日に信楽高原鐵道となる
駅数 6駅(起終点駅を含む)

信楽高原鐵道信楽線の歴史は国鉄信楽線として始まる。1933(昭和8)年5月8日に全線が開業し、国鉄が財政難に陥った1980年代に輸送密度が低い特定地方交通線に指定。滋賀県と甲賀市(当時の水口町/みなくちちょう、信楽町)などが出資する第三セクター経営の鉄道会社、信楽高原鐵道として1987(昭和62)に再スタートした。

 

走るのは甲賀市のみだ。信楽という土地の名前が良く知られているものの、現在、信楽という町はない。2004(平成16)年まではあったものの、今は甲賀市信楽町となっている。甲賀市は甲賀町、水口町、信楽町など5つの町が合併した市で、面積は非常に広い。南東端は三重県と接し、南西端は京都府と接している。広いせいもあり、起点となる貴生川駅付近と、信楽駅付近は、風景や文化もだいぶ異なる印象がある。

 

歴史を見ても、甲賀市の東側は戦国期、豪族が乱立する忍者の里であり、江戸時代は水口藩の城下町だった。一方、西の信楽は焼き物の里として異なる歴史を歩んできた。広いとはいえ、なぜ同じ地域に異なる文化が育まれたのだろう。

↑JR草津線と信楽高原鐵道の接続駅、貴生川駅。同駅は元水口町の駅で、同じ甲賀市ながら平野がひらけ、町の東と西で風景が異なる

 

地域の文化が異なる理由は、信楽高原鐵道が走る路線を見れば、おおよそ推測ができる。甲賀市の東西を隔てる〝高原〟エリアの存在が大きい。このあたりは路線の興味深い一面なので、後ほど紹介したい。

 

【癒やしの信楽③】車両紹介!おもしろ忍者車両も走る

次に走る車両を見ておこう。車両は3形式の気動車が走る。形式名の頭にはすべて「SKR」が付く。「Shigaraki Kohgen Railway」の頭文字を合わせ「SKR」としている。

 

3形式のうち、2001(平成13)年と翌年にかけて導入されたのがSKR310形で、311号車と312号車の2両が走る。2017(平成29)年に、甲賀市の東エリアが忍者の里と呼ばれた歴史にちなみ、ラッピング列車「SHINOBI-TRAIN」となった。車体は311号車が深緑色、312号車が紫色のベースカラーで、それぞれ忍者のイラストが大きく描かれている。車内にもつり革に忍者の人形が潜むなど、なかなか楽しい列車だ。

↑「SHINOBI-TRAIN」という名が付くSKR310形311号車。車体は忍者のイラスト入り、つり革(左上)には忍者付きだ

 

SKR310形に比べて新しい車両がSKR400形とSKR500形で、SKR400形は2015(平成27)年に、SKR500形は2017(平成29)年にそれぞれ導入された。どちらも車両の長さが18mで、SKR310形にくらべて一回り大きく感じる。車体カラーはSKR400形が茶褐色、SKR500形が緑色。座席はSKR400形がロングシートに対して、SKR500形が転換式クロスシートとなっている。

↑前がSKR500形、後ろがSKR400形の組み合わせ。この2両で走る列車が多い

 

【癒やしの信楽④】「高原」という名前が付いているものの

信楽高原鐵道の社名には「高原」という言葉が入る。ロマンを感じる素敵な名前だと思う。

 

起点の貴生川駅と紫香楽宮跡駅(しがらきぐうしえき)の間では、木々が生い茂る山の中、民家もないところを走ることもあり、これぞ高原というような場所を走っている。春は桜に新緑、秋は紅葉など四季折々の美しい車窓風景が楽しめる区間である。

 

「高原」という言葉の定義はあいまいだが、国語辞典(「スーパー大辞林」)には「海抜高度が高い平原。起伏が小さい高地」とある。高原とする標高の目安は600m以上のものとする解説もある。さて、信楽高原鐵道の路線はどうだろうか。

 

路線とほぼ平行して走る国道307号の標高を国土地理院の地図で確認すると、同エリアの国道のピークは標高338mとある。この国道は路線の真横を通るだけに、信楽高原鐵道は、この300m級の〝高地〟を走っていると言って良いだろう。

↑貴生川駅から路線のピークへ向けて走る。最初の一駅区間は山中に入ると、民家は皆無となり、実際に高原らしい風景が楽しめる

 

信楽高原鐵道が走る路線が高原の定義に当てはまるかどうかは異論もあるだろうが、第三セクター化する時に、なかなか上手い名前を付けたものだと思う。

 

【癒やしの信楽⑤】貴生川駅から一つ目の駅まで9.6kmも走る

ここから信楽高原鐵道の旅を始めよう。起点は貴生川駅で、この駅でJR草津線と近江鉄道本線に接続する。信楽高原鐵道の乗り場は、JR草津線の3番線ホームの反対側にあり、ホームの番数は付いていない。草津線と信楽高原鐵道のホームの間に交通系ICカードが利用できる簡易改札機が設置され、貴生川駅で乗り降りしたことをICカードに記憶させることができる。

 

信楽高原鐵道内では交通系ICカードの利用はできない。そのため貴生川駅からの乗車は駅に据え付けられた乗車駅証明書発行機で証明書を発行、また無人駅から乗車する時には車内入口の整理券を受け取り、乗車しなければいけない。下車する時には、有人の信楽駅をのぞき、列車の一番前で現金精算することが必要になる。

↑貴生川駅の最も西側にある信楽高原鐵道のホーム。向かい側はJR草津線の草津方面行きの列車が発着する

 

貴生川駅からの列車は6時台から22時台まで、ほぼ1時間おきに運行される。日中は、10時台から15時台までは各時間とも24分発、信楽駅発の場合には10時台から14時台まで54分発と一定で、利用者にとって分かりやすい時刻設定となっている。

 

筆者は10時24分発の信楽駅行き転換クロスシート座席のSKR500形に乗車した。定刻通り出発した列車は、独特のディーゼルエンジン音を奏でつつ、JR草津線に沿って走る。駅の先にある虫生野(むしょうの)踏切を通り、草津線と分かれ右カーブを描いて走る。

↑貴生川駅を発車したSKR400形。しばらくJR草津線と平行して走る

 

立ち並ぶ民家を眼下に眺めつつ、堤を走り杣川(そまがわ)を渡る。その先で、急な坂を登り始める。線路脇に立つ勾配標を見ると33パーミル(1000m走る間に33m登る)とあった。この急坂を登るために気動車はエンジン音をさらに高めた。次の駅の紫香楽宮跡駅まではだいぶ離れていて9.6kmの区間を、15分かけて走る。

 

1つめの紫香楽宮跡駅から先は駅と駅の間の距離が600m〜2.3kmと短めにもかかわらず、なぜ最初の駅間のみ9.6kmと長いのだろう。じつは、この貴生川駅〜紫香楽宮跡駅間に信楽高原鐵道の特長が詰まっているといっても過言ではないのだ。

↑貴生川駅を発車し、次の紫香楽宮跡駅を目指す列車。坂の角度が、途中から急に強まっているのが分かる

 

信楽線が造られた昭和初期、国鉄では幹線とローカル線で、その造りを大きく変えて路線造りを行っていた。信楽線の貴生川駅〜紫香楽宮跡駅の途中区間は標高差170mもある。幹線ならばトンネルを掘って、なるべく高低差に影響されない路線造りを行ったであろう。

 

ところが、信楽線はローカル線ということもあり、工事費を節約するためにトンネルは掘らずにカーブを多用、急勾配を組み込みつつ路線造りを行った。スピードを重視するのではなく、ゆっくりでも良いから開業させたい思いが伝わってくる。今も開業当時の最小曲線半径200m、最大勾配33パーミルという、ローカル線らしい路線となっている。

 

勾配は厳しく、小さな半径の左カーブ、右カーブが続く。実際に乗ってみると、高原鉄道の名に相応しい線形となっていることが分かる。

 

貴生川駅〜紫香楽宮跡駅間は庚申山(こうしんさん)と呼ばれる山が広がるエリアで、地元のハイキングコースとして知られる。国道307号が平行して走るものの、民家はまったくない。線路近くには甲賀市や湖東の遠望が楽しめる庚申山展望台がある。東海自然歩道も近くに通り、ハイカーに人気のエリアでもある。

 

列車は急勾配を登りつつ、左後ろを振り返ると、貴生川(水口町)の町並みがはるか眼下に見えた。エンジン音が静かになり、惰性で走り始めた時に、やや開けた峠のピークにさしかかった。そこには砂利が引き詰められ、古い線路や枕木が置かれていた。小野谷(おのたに)信号場の跡地だ。

↑貴生川駅〜紫香楽宮跡駅間のほぼピーク部分にある小野谷信号場の跡。第三セクター化された後に設けられた信号場だった

 

小野谷信号場は1991(平成3)年に設けられた信号場で、当時、ちょうど信楽で世界的な陶器イベントが開催されたこともあり、列車増便を図るために設けられた。ところが、増便したことが予想外の結果をもたらす。信楽高原鐵道の紹介にあたっては、避けて通れない歴史ということもあり触れておきたい。

 

この信号場が造られたものの、信号機器の設定ミスなどが重なり、事故が起きた。1991(平成3)年5月14日の「信楽高原鐵道列車衝突事故」である。JR西日本から乗り入れた臨時快速列車と信楽高原鐵道の普通列車が、この信号場からやや紫香楽宮跡駅側で正面衝突事故を起こしてしまったのである。死者42名を出す大惨事となった。

↑線路端にある「信楽高原鐵道列車衝突事故」の慰霊碑の横を走る信楽駅行き列車

 

事故後に信楽高原鐵道は約7か月にわたり運休、後に事故現場近くの線路横に慰霊碑が立てられた。碑には「犠牲者の御霊のご冥福をお祈りするとともに、これを教訓とし二度とこのような大事故を繰り返すことのないよう、鉄道の安全を念願し建立されたものである」という言葉が添えられている。

 

事故の後、小野谷信号場は使われることなく廃止、ポイント切り替えなどの設備も取り外された。JR西日本からの乗り入れ列車も、途中での上り下り列車の交換もなく、1列車のみが路線を往復する形での運行が続けられている。

 

【癒やしの信楽⑥】紫香楽宮跡と信楽の関係は?

信楽高原鐵道の進行右手に国道307号が見えてきたら、最初の駅、紫香楽宮跡駅に到着する。紫香楽宮跡と、信楽は同じ「しがらき」と読むが、何か関連があるのだろうか。

 

紫香楽宮跡駅から徒歩7分ほどの所に「紫香楽宮跡」がある。この紫香楽宮は8世紀初頭に国を治めた45代聖武天皇が造営した宮だとされる。造成を始めたものの、情勢不安となり宮は放棄された。紫香楽宮は、信楽宮とも記したとされ、信楽焼という焼き物名や地名になったとされる。

↑朝もやの中、紫香楽宮跡駅を発車するSKR500形。紫香楽宮跡は駅の北西部にあり徒歩7分と近い

 

紫香楽宮跡駅付近からは東西を山に囲まれた狭い平野部に、大戸川、国道307号、信楽高原鐵道がほぼ並んで通る区間に入る。山里ながら田畑、そして駅の近辺には民家も建ち並ぶ。紫香楽宮跡駅から次の雲井駅(くもいえき)までは、わずかに600m、約2分で到着する。さらに勅旨駅(ちょくしえき)へ。

 

勅旨とは天皇の命令書のことで、この地には勅旨賜田(ちょくししでん)があった。勅旨賜田とは天皇の命令で整備して、個人に与えた水田だとされる。紫香楽宮跡や、勅旨など、当時この地域と中央政権とのつながりが深かったことが良く分かる。

 

【癒やしの信楽⑦】ホームから釣り橋が見える玉桂寺前駅

大戸川を渡り左右から山々が迫って来たところに玉桂寺前駅(ぎょくけいじまええき)がある。ホーム1つの小さな駅だが、この駅はなかなかロケーションが面白い。駅名通り玉桂寺という寺が近くにあり、駅との間に大戸川が流れるために、橋が架かる。

 

人のみが渡ることができる釣り橋で、「保良の宮橋(ほらのみやばし)」という名前を持つ。

↑玉桂寺前駅の信楽駅側に架かる保良の宮橋。その橋の先に玉桂寺(左手)が見えている

 

保良の宮橋は1990(平成2)年にかけられた釣り橋で、地元では鉄道の線路、大戸川、道をまたぐ珍しい橋とPRしている。玉桂寺は、奈良時代に淳仁天皇(じゅんにんてんのう/47代)が離宮として建てた保良宮の跡地という説も残る。そのために保良の宮橋と名付けられたそうだ。ちなみにこの釣り橋付近は鉄道ファンにも人気があるポイントで、橋のたもとで列車を撮影する人を見かけることもある。

↑保良の宮橋の上から見たところ。歩行者専用で、橋の幅は意外に狭くスリリング。橋付近から列車の写真も撮影可能だ(右上)

 

↑保良の宮橋の先には、朝ドラの撮影地に使われた遊歩道が延びる。人気シーンを撮影した場所にはカメラスタンド(左下)もあった

 

【癒やしの信楽⑧】なぜ信楽はたぬきの焼き物が多いのか?

玉桂寺前駅を発車して間もなく終着駅、信楽駅に到着した。信楽高原鐵道は途中の駅は4つのみで、全線の所要時間が25分あまりと短いものの、たっぷり乗ったようにも感じられる。やはり最初の貴生川駅〜紫香楽宮跡駅間に途中駅がなく、長く感じるせいなのだろうか。

↑信楽駅はホームが2面あるものの駅舎側のホームのみが使われる。路線の先(右上)は行き止まりだが先に延ばすプランもある

 

終着駅で線路が途切れているものの、この先に延ばすプランが過去にあり、また今も生きている。信楽線は元々、京都府木津川市(きづがわし)の加茂駅(関西本線)まで延ばす計画で造られた。今は、近江鉄道本線から信楽高原鐵道を経て、片町線(学研都市線)まで延ばす「びわこ京阪奈線(仮称)」という構想がある。延伸は難しいかもしれないが、プランとしてはなかなか興味深い。

 

さて、そんな信楽駅で旅行客を迎えるのが大小のたぬきの焼き物たちだ。なぜ信楽にはたぬきの焼き物が多いのだろう。

↑信楽駅の駅前には高さ5.3mの大だぬき(右)がお出迎え、この大だぬき、公衆電話付きで電話ボックスも兼ねている

 

たぬきの焼き物が名物になったのは、意外に最近のこと。信楽焼のたぬきは、笑顔、目、とっくりなど8つの部分が〝八相縁起〟と呼ばれ縁起が良いとされてきた。さらに1951(昭和26)年に昭和天皇が信楽を行幸された時に、歓迎の様子とたぬきの焼き物が盛んに報道されたことから、信楽焼=たぬきの焼き物というイメージが定着したそうだ。ユーモラスなたぬきの焼き物が、信楽の知名度とイメージアップにつながったとは、なかなかおもしろい。

 

【癒やしの信楽⑨】ぜひお勧めしたい信楽窯元めぐり

せっかく列車で信楽を訪れたのならば、やはり町歩きも楽しみたいもの。信楽駅ではレンタサイクルも用意しているので、自転車利用で、窯元めぐりをしてみてはいかがだろう。駅の西側、大戸川と国道307号を渡ったエリアに窯元が点在している。

↑信楽焼はたぬきだけでなく、日常使いの食器や茶器、火鉢、かめ、傘立てなど種類も豊富で楽しめる(『宗陶苑』で)

 

信楽の窯は大小さまざま。一般に公開されている大きな窯元もあれば、個人営業でふだんは公開していない窯元もある。信楽焼の紹介パンフレットなどで、大規模な登り窯を利用した窯元の紹介が出ているが、現在、登り窯を利用しているのは「宗陶苑」(甲賀市信楽町長野)のみ。以前ほど大量に焼き上げる窯が少なくなっているため、登り窯までは必要とされないためだそう。ほかに残る登り窯は観光スポットとなり、カフェなどに利用されている。

 

登り窯を訪れた時に見ておきたいのは、窯の内部に残る〝石はぜ〟と呼ばれる美しく光る壁面。長年使われた窯には陶土内に含まれる石粒がはじけて生まれる〝石はぜ〟が付き、独特な〝景色〟を生み出す。これは登り窯の壁だけでなく、焼き物の表面にも表れ、信楽焼の魅力とされている。

↑傾斜地に段々状に焼成室を持つ登り窯。写真は観光施設として公開される『Ogama』の登り窯。カフェも併設されている

 

街中にはさまざまな焼き物のオブジェも設置されているので、信楽らしい焼き物を見ながらの町歩きが楽しい。

 

【癒やしの信楽⑩】貴生川駅で接続の草津線の電車も気になる

信楽高原鐵道を訪れたら、チェックしておきたいことが他にもある。それは貴生川駅を通るJR草津線の電車と、近江鉄道本線の電車だ。

 

草津線には今も、国鉄形の近郊形電車113系や117系(朝夕のみ)が走っている。この春のダイヤ改正で変更されるか心配されたが、今のところ、これらの電車の走行が確認されている。

 

とはいうものの、JR西日本では急速に国鉄形電車の運用範囲を狭めており、草津線の113系も、数年後には消滅の可能性も出てきたようだ。鉄道ファンとしては信楽高原鐵道へ訪れた時には、草津線の113系もしっかり目に焼き付けておきたい。

↑貴生川駅近くを走る113系電車。今やJR西日本のみに残る国鉄形近郊電車で、草津線、湖西線のほか、岡山地区などを走る

 

草津線だけでなく、貴生川駅を発着する近江鉄道本線も気になる路線だ。こちらは旧西武鉄道の電車が走っている。ここでも古い車両の廃車が徐々に進んでいる。3月末には西武鉄道で401系、近江鉄道では820形とされた車両が引退になった。

 

貴生川駅の東側に、近江鉄道のホームがある。訪れた際には、何形が停車しているかチェックしておきたい。時間に余裕があれば、この路線で米原駅へ向かっても良いだろう。

↑貴生川駅に停車する近江鉄道300形。同線では新車にあたるが、元は西武鉄道の3000系で、すでに西武鉄道では全車が引退している

これが世界のスタンダード! ホンダ新型「シビック」の完成度を調べてみた

1972年の初代モデル発売から、今年で50周年を迎え、累計販売台数は2700万台を超えるホンダの「シビック」。世代によって、この車名を聞いてイメージする姿はそれぞれでしょう。40代半ばの筆者が真っ先に思い起こすのは、コンパクトなハッチバックのシルエット。免許を取って間もない若者でも乗りやすく、それでいて走りも良いクルマというイメージでした。

 

そんな時代からすると、サイズも大きくなり車格も上がった現行の「シビック」。約7年間の日本で販売されない期間(「タイプR」のみ限定で販売)を経て、先代モデルで日本市場に復帰し、今回乗ったモデルは11代目に当ります。世界的に見るとホンダ車の中で2番目に売れているという現行「シビック」の完成度を探りました。

 

【今回紹介するクルマ】

ホンダ/シビック

※試乗車:EX

価格:319万円/353万9800円(税込)

 

上質さと落ち着きを感じさせる外観・内装デザイン

現行「シビック」で国内販売されるのは、5ドアハッチバックのボディタイプ。グレードは「EX」と「LX」の2種類が用意されますが、今回乗ったのは上位の「EX」グレードです。低く抑えられたボンネットから、リアに向けて水平基調で伸びるラインはシャープで、キャビンの形状はクーペライクなもの。20世紀に販売されていた「シビック」のハッチバックと比べると、大人向けのデザインになったと感じます。

↑よけいな威圧感はないものの、確かな存在感を漂わせるヘッドライトデザイン

 

↑テールエンドに向かってなだらなに収束するクーペのようなラインが特徴

 

フロントウィンドウは見るからに広く、視界が良さそう。車内に移動しても、開放感のある視界が実感できます。「EX」グレードは内装にレッドステッチや合成皮革が多用され、上質な仕上がり。落ち着ける空間が演出されています。

↑広いフロントウィンドウには「Honda SENSING」用のカメラも装備

 

↑水平基調で高さを抑えたインパネのラインで開放感のある広大な視界を確保

 

↑ハニカムデザインのエアコンの吹出口など、細かい部分にも配慮が感じられます

 

シートに身を沈めると、適度なホールド感と、それでいてどこにも窮屈さを感じさせない座り心地が味わえます。昨今流行りのSUVに比べると明確に低い着座位置に、ワクワクしてしまうのは世代のせいでしょうか。レザー製で適度な太さのステアリングホイールも、握り心地が良く、ドライビングへの期待感を盛り上げます。

↑上質な座り心地で、タイトな印象はないのにしっかりと体をホールドしてくれるシート

 

爽快さを存分に味わえるドライブフィール

搭載されるエンジンは1.5Lの直噴VTECターボ。最高出力は182PS/6000rpmで最大トルクは240Nmを1700〜4500rpmという低回転から広い領域で発揮します。組み合わせられるのは6速MTとCVTの2種類で、この時代に初期受注の約4割がMTという比率の高さに驚かされます。

↑現在、ホンダの主力パワートレインといってもいい1.5L直噴VTECターボエンジンを搭載

 

まずドライブしたのは6速MTのほう。先代モデルもMTの出来が良く「乗るならMTがいい」と強く感じたものですが(販売台数の約3割がMTだったとの事)、その印象はさらに強まりました。手首の動きだけでシフトが決まり、コクっとゲートに収まるフィーリングも良くなっているので、低速でも適度なクルマを操っている感が味わえます。また、エンジンも高回転になるほどレスポンスが高まるので、シフトを駆使して気持ちの良い回転数を維持するのが本当に爽快です。

↑金属製のノブに革を巻きつけたデザインとなり、フィーリングもさらに向上した6速MT

 

↑MTでも機能するACCなど、「Honda SENSING」の出来の良さも好印象

 

CVTに乗り換えても、爽快なフィーリングは変わらず。CVTにありがちなエンジンとタイヤの間にクッションがあるような感覚ではなく、ダイレクトに駆動力が伝わっているような印象です。特にアクセルを大きく開けた加速時や、ブレーキング時には段階的な変速を行う、ステップアップ/ダウンシフト制御が搭載されているので、エンジンの気持ちよさを存分に味わうことができました。

↑CVTでは「ノーマル」「スポーツ」「ECON」の3つのモードが切り替え可能

 

足回りは硬さは感じないものの、全体的にしっかりしていて、絶大な接地感が伝わってきます。低速で市街地を走っていても、ゴツゴツした印象は一切ないものの、確実に路面を捉えている感覚。高速道路では直進安定性が高く、「Honda SENSING」と相まって、長距離ドライブの疲労は確実に少ないでしょう。ワインディングでもしなやかに動く感覚は変わりませんが、荷重の増える分、路面にタイヤを押し付ける感覚が強まり、速度に合わせてスポーツしている感覚も高まってきます。ステアリングを切ると、低いノーズがスッとインに向いてくれて意のままに操れる感覚はまさに爽快。現行「シビック」の開発コンセプトである“爽快”をまさに体現する走りです。

↑硬さは感じないものの、確実に路面を捉え、意のままに動く爽快な走りが味わえます

 

高いユーティリティ性も確保

スポーツカー並みに楽しい走りが味わえる「シビック」ですが、居住性やユーティリティ性も高次元で両立しています。クーペのようなシルエットではありますが、実際にリアシートに座ってみると、ヘッドスペースに窮屈さは全く感じません。足元の空間も広く、家族をリアシートに乗せても不満が出る心配は皆無でしょう。

↑身長175cmの筆者が座っても、窮屈さを感じないリアシート

 

ラゲッジスペースは合計452Lと大容量。かつ開口部も広いので荷物の出し入れはしやすく、使い勝手はかなり良さそう。シートは6:4分割式で倒すとフラットに近いスペースを作り出すことができます。同クラスのSUVと比べても遜色のない容量と使い勝手で、気を使う部分といえば車高が低い分、重い荷物の積み下ろしで腰をかがめる必要があるくらいでしょう。ちなみに、シートを倒した状態で寝転んでみましたが、大人1人が体を伸ばして寝られる広さはありますが、途中に高低差があるので、流行りの車中泊にはちょっと向かないかもしれません。

↑荷室の床が下げられ、大容量を実現しているラゲッジスペース

 

↑6:4分割式のリアシートを倒すことで、さらに広大なスペースを確保できます

 

↑横引きタイプのカーゴエリアカバーに加えて、テールゲートにも荷物を見えなくするカバーが取り付けられます

 

街中では乗り心地が良く、高速道路では疲労の少ない安定感があり、ワインディングでは爽快な走りが味わえる。それでいて、ラゲッジスペースも広くて使い勝手も良いので、この価格帯ではライバルとなるであろうSUV勢に対しても劣るところがありません。使い勝手の良さと走りの楽しさを高次元で両立しているのは、歴代「シビック」の共通点ですが、現行モデルはさらに上質さが加わっている印象です。

 

違いのわかる大人向けのクルマと言いたいところですが、海外では若い世代に売れているとのこと。これが現在の世界のスタンダードだということでしょう。確かに、ここまで走らせる楽しさを味わえ、使い勝手と上質さも併せ持つクルマはなかなか思い浮かびません。国内での販売計画台数は月1000台と控えめですが、現行モデルのシビックはもっと売れてしかるべきと感じた試乗体験でした。

↑米国では「2022北米カー・オブ・ザ・イヤー」も受賞しています

 

SPEC【EX】●全長×全幅×全高:4550×1800×1415mm●車両重量:1360kg【6速MT1330kg】●パワーユニット:1.5L直4 DOHC 16バルブ●最高出力:134kW[182PS]/6000rpm●最大トルク:240N・m[24.5kgf・m]/1700〜4500rpm●WLTCモード燃費:16.3km/L

 

撮影/松川 忍

 

 

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360°+リアでトレンド全部入り。ケンウッドの最新ドラレコ「DRV-C770R」は死角なしって奴です。

今や、ドライバーにとって必須のアイテムになりつつあるドライブレコーダー。あおり運転や、高齢ドライバーの運転ミスなどによる交通トラブルの報道を目にする機会は多く、こうしたトラブルに対応するためドライブレコーダー装着の需要は高い水準を維持しています。電子情報技術産業協会の統計によると、業務用を含むドライブレコーダーの出荷台数は2016年度は約145万台だったものが、2020年度は約460万台まで拡大。特に前方・後方の映像を同時に録画できる2カメラモデルの伸長が著しく、今や主流となっています。こうしたニーズを受け、登場したのがケンウッドの「DRV-C770R」。

↑360°撮影対応 2カメラドライブレコーダー「DRV-C770R」。市場推定価格4万700円前後(税込)

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

 

 

前後2カメラに独立した7段階の明るさ調整機能を搭載

本製品は2カメラタイプのモデルですが、フロント用のカメラが360°撮影対応になっており、前方・左右・車室内を撮影、後方の撮影には専用のリアカメラを備えているのが特徴です。近年は安全意識の高まりもあって前方・後方はもちろん、斜め前方や側方なども録画するニーズが増加中。加えて、常時録画するドライブレコーダーの特性を活かし、ドライブ中の何気ない一瞬を映像として残す需要も高まりつつあります。以下はフロント360°カメラの映像。

↑フロントカメラは水平360°対応で、周囲全方位の録画に対応。垂直視野角は240°で、交差点の信号なども捉えやすい画角となっています

 

↑前方撮影

 

↑左側撮影

 

↑右側撮影

 

↑車室内撮影

 

360°カメラで車室内も撮影可能としながら、専用リアカメラで後方もしっかりと記録できる「DRV-C770R」は、こうした最新のニーズに対応したモデルといえるでしょう。以下はリアカメラの映像になります。

↑リアカメラには対角163°の広視野角レンズを採用しており、後方の映像をしっかり記録

 

↑後方撮影

 

昨今はドライブレコーダーに対する画質の要求も高まっていますが、「DRV-C770R」は前後カメラとも高感度CMOSセンサー「STARVIS(スタービス)」を採用。レンズもフロントカメラがF2.0、リアカメラはF1.8の明るいレンズを搭載しています。充実の光学系デバイスの採用に加え、同社が長年培った映像技術によるチューニングもあって、昼間だけでなく夜間やトンネル内での暗いシーンも鮮明に録画することができます。以下はフロントカメラ夜間撮影比較。

↑前後カメラとも高感度のCMOSセンサー「STARVIS」と明るいレンズの採用で暗いシーンも鮮明に記録

 

↑従来モデル(STARVIS無し)※画像はイメージです

 

前後カメラには明暗差の強いシーンでも白とびや黒つぶれを低減するHDR機能を搭載。逆光や夜間走行時の街灯、トンネルの出入り口など明暗差が激しい環境でも明瞭な映像を記録できます。また、前後カメラとも7段階の明るさ調整に対応。リアカメラを独立して調整することも可能なので、リアウィンドウがスモークガラスとなっている車種でも安心です。以下はリアカメラ夜間撮影比較/リアガラス(透過率13%相当)。

↑スモークガラス+夜間のシーンでも明瞭な映像を記録できます

 

↑従来モデル(明るさ調整非搭載)

 

車両状況に合わせて4つの録画機能を搭載。エンジンのON/OFFに合わせて起動する「常時録画」、衝撃や急な速度変化をGセンサーが感知して作動する「イベント記録」、手動でボタンを押してイベント記録専用のフォルダにデータ記録する「緊急イチ押し録画/手動録画」、そして「駐車録画」です。

 

「駐車録画」は別売の車載電源ケーブル「CA-DR100」が必要ですが、最長24時間の録画ができる「常時監視モード」と、衝撃検知で録画を開始する「衝撃検知録画モード」に対応。「常時監視モード」には車両のバッテリーが設定した電圧を下回ると自動で動作を停止し、バッテリーを保護する機能も搭載しています。

↑駐車中も最長24時間、360°の記録が可能で、衝撃検知時の映像はイベント記録フォルダに残されます

 

記録媒体には「3D NAND型32GB microSDカード」が付属。これは、1カメラタイプに比べ、2倍の記録容量と、高い上書き頻度となる2カメラタイプのドライブレコーダーに求められる繰り返し書き込み耐久性能などを強化したものです。最大容量128GBまでのmicroSDカードに対応し、定期的なカードフォーマットが不要な「SDカードメンテナンスフリー」や「SDカード寿命告知機能」にも対応しているので、安心して連続使用が可能。テレビ放送への電波干渉を抑える 「地デジ干渉対策」や、昨今増えているLED式信号機の無点灯記録を防ぐ「LED信号機対応」など近年のドライブレコーダーに求められる機能はきちんと抑えています。

↑「Gセンサー」に加え、速度・緯度・経度などの自車位置情報を測る「GPS」も搭載

 

ユーザーニーズの高まりとともに、着実に進化を遂げている昨今のドライブレコーダー。ドライブの安心・安全に関わるものだけに、できるだけ信頼性が高く、高機能なものを選びたいところです。ケンウッドの「DRV-C770R」は、ドライブレコーダーに求められる画質や機能などはすべて抑えながら、360°+後方の撮影に対応。現状ではトップレベルの高機能なモデルであり、カー用品では定評のあるケンウッドブランドの製品だけに、安心して選ぶことができます。

 

 

満を持してヒョンデがZEVで日本市場へ参入! 欧州チームが開発したその仕上がりは想像以上

韓国の現代(ヒョンデ)自動車が12年ぶりに日本市場へ再参入を果たしました。そのメイン車種としてラインナップしたのがBEV(バッテリー電気自動車)「IONIQ(アイオニック) 5」です。今回はその日本仕様を個人間シェアリング「Anyca(エニカ)」で借り、2日間にわたって試乗してみました。

 

試乗は個人間シェアリング「Anyca」を利用

ヒョンデが日本市場に再参入するにあたってラインナップしたのは、このアイオニック5以外にFCV(燃料電池車)「NEXO(ネッソ)」を加えた2車種です。いずれもZEV(ゼロエミッションヴィークル)を意識した投入となりました。そんな中でアイオニック5は、デザインから足回りに至るまで同社の欧州チームが開発したという、いわば生粋の欧州生まれ。韓国車といえども、その仕上がりには大いに期待が持てます。

↑2月8日、ヒョンデはいずれもZEVとなるBEVの「アイオニック5」(左)とFCEVの「ネッソ」の2車種を発表。12年ぶりに日本市場への再参入を果たした

 

ただ、ヒョンデは日本市場での販売にあたり、いずれも自社ウェブサイト/アプリからのオンライン販売のみとしています。リアルな体験拠点としては、神奈川県・横浜市内に「Hyundai カスタマーエクスペリエンスセンター」を2022年夏に開業する予定ですが、多くの輸入車のようにディーラー網は展開しません。これは購入希望者にとっては残念な点です。購入すれば500万円前後の出費となるだけに、誰もが実車を見たいでしょうし、もちろん試乗だってしたいでしょう。

 

そんな声に応えるべくヒョンデが採った策が個人間シェアリングのエニカと提携することでした。つまり、ここで有料での体験試乗できるプランを用意したのです。これなら一般的な短時間の試乗だけでなく、ロングドライブに出掛けることもでき、普段の使い方に近い形で実力をチェックすることも可能です。今回はこのエニカのプランを利用しての試乗となりました。

 

日本において韓国車は総じて関心が低いですが、グローバルに視点を移すと想像以上に評価が高いことも知っておかねばなりません。特に「KIA」を傘下に持つ現代自動車グループは世界5位の生産台数を誇り、アメリカでは「ホンダ」を上回る勢いです。そんなヒョンデが思うように実績を伸ばせないでいるのがアジア地区。中でも日本は12年前に乗用車市場から撤退した苦い経験があります。そこで今後の伸びしろがあって、日本車が手薄なZEVに絞り込むことで再進出を図ったのです。

 

個性的なデザインは注目度抜群! インテリアの質感も高い

アイオニック5のグレードは4タイプが用意され、もっとも廉価なベースグレードが58kWhであるものの、それ以外の3タイプはすべて72.6kWhと大容量バッテリーが搭載されています。その中で今回の試乗車は下から2番目の大容量バッテリーを搭載する「Voyage(ボイヤージ)」を選びました。

↑「アイオニック5」、価格は479万円〜589万円(税込)。ボイヤージは全長4635×全幅1890×全高1645mm、車両重量1950kg

 

ボイヤージは上級グレードに比べるとサンルーフや車内アンビエントライトが搭載されておらず、シートも本革仕様でなく、助手席シートにパワー機構が搭載されていないなどの違いがあります。しかし、ボイヤージでも装備はかなりの充実ぶりで、装備表を見なかったらボイヤージでも充分満足できるレベルにありました。

 

アイオニック5を前にして、まず外観の個性的なスタイルに惹かれました。逆Z型のプレスラインを持ったサイドビューは一度見たら忘れられない独創性を伝えてきますし、「パラメトリックピクセル」と呼ばれる前後のLEDランプのデザインもデジタルピクセルにアナログな感性を加えたユニークなもの。特にリアエンドは方眼をあしらったデザインで、後続車からの注目度も相当に高いはずです。

↑細かなモザイク模様のレンズをあしらったリアビューが印象的だ。ボディカラーは6色設定。19インチアルミホイール & 235/55 R19タイヤ[ミシュラン]を履く

 

インテリアも質の高さで評価が高い欧州勢と遜色ないレベルにあります。運転席に座れば明るく開放感があって、ダッシュボードは水平基調のシンプルなデザイン。そこに大型で見やすい12.3インチのナビゲーション+12.3インチのフル液晶デジタルメーターが並んで収まります。物理スイッチは必要最低限に抑える一方で、素材からして高品質で触れた感触がとても居心地がいいのもポイントです。

↑写真は「ラウンジ」グレードとなってしまったが、試乗したボイヤージでも質感は充分に高かった

 

↑物理キーを極力廃しつつ、よく使うボリュームなどは回転式にするなど使い勝手も重視した

 

↑前席中央付近のルーフに備えられたスイッチ類。SOSコールにも対応した

 

キャビンは広々としており、どの席に座っても足をゆったり伸ばせます。バッテリーをフロア下に置いた関係でフロアは若干高めですが、ドライビングポジションに窮屈さは感じられません。これはアイオニック5に採用したE-GMP効果によるものだそうです。

↑最大出力1600wのACコンセントを備え、停車時はリアスペースを拡大して、こうした寛ぎ方も可能になる

 

シートはたっぷりとしたサイズで、前席のシートにはオットマンが装備されていました。充電時の待ち時間をくつろいで過ごせるよう配慮した「リラクゼーションコンフォートシート」で、充電で待ち時間が欠かせないBEVらしい装備とも言えます。さらにセンターコンソールは前後に140mmスライドできる機構が備えられ、それを後方にスライドさせれば平らなフロアのおかげで、左右どちらのドアからも容易に乗降できるようになります。

 

強烈な加速に驚き! 荒れた路面での突き上げが少し大きめ

ここからは走り出しての感想です。起動スイッチを押し、ステアリングコラムから右に出ているシフトダイヤルを回して“D”に入れると、スムーズに加速していきます。アクセルに対する反応もリニアで、踏み込んだだけ素直に速度が上がっていく感じです。一方で、アクセルを少し強めに踏み込むとBEVらしい強烈な加速が味わえました。この加速感はガソリン車では得られない感覚です。回生ブレーキを使ったワンペダルも自然でした。

↑シフトレバーはステアリングの右側にレバーとして備わる。しっかりとしたクリック感がわかりやすい

 

一方で乗り心地はやや路面の突き上げを感じやすい印象です。一般道の路面の荒れ具合が、そのまま伝わってくる感じでした。ただ、高速道路に入るとその印象はほぼなくなり、むしろ安定感が増して快適に走ることができました。全車速追従システムも完成度が高く、車線の中央部を維持してくれるので長距離での疲労度はかなり低減されるでしょう。

 

カーナビはゼンリン製地図データを使って日本仕様にローカライズし、さらにドライブレコーダー機能も装備されています。ウインカーも日本市場に合わせた右側仕様となっており、このあたりからもアイオニック5へのヒョンデの本気度が伝わってきました。ただ、カーナビの交通情報は通信によるオンデマンドVICSとなっているようで、試乗車は通信契約が行われていなかったため、それを反映することはできませんでした。

↑ゼンリン製地図データを使ったナビゲーション。きめ細かな案内が行われており、交通情報は通信によるオンデマンドVICSとなる

 

↑アイオニック5にはドライブレコーダーを標準装備。エニカではOFFの状態で貸し出される

 

↑左ハンドルの韓国からの輸入車にも関わらず、日本市場向けに合わせてウインカーレバーは右側に備えられた

 

↑左右にウインカーを出すと同時に、メーター内にはその方向の状況をウインドウで表示する

 

ちなみにCHAdeMO(チャデモ)での急速充電(90kW)では80%充電まで32分で可能だということです。航続距離は満充電で618km(WLTCモード※ボイヤージの場合)と表記されており、実用でも500km程度は走れそうな感じです。また、充電はCHAdeMOによる急速充電と普通充電に対応し、最大1600Wを出力できるAC電源やV2H(Vehicle to Home)を使った給電も可能となっています。

↑最高出力160kW(217PS)/最大トルク350N/mを発揮する電動モーターを搭載(※ボイヤージの場合)

 

↑非常時給電システム付きコンセントを付属。最大1.6kWの給電が可能となる

 

まとめ

2日間試乗した印象として、クルマとしての出来はかなりハイレベルであったことは確かです。アイオニック5の直接のライバルは、トヨタの「bZ4X」やスバルの「ソルテラ」、日産の「ARIYA」などが想定されるでしょう。販売体制を踏まえればテスラの「モデル3」の方がより近い存在かもしれません。メンテナンスが協力工場で行うという部分がどこまで納得できるかによりますが、クルマとしてだけ考えれば間違いなく選びたくなるクルマの一つと言えます。まずは、エニカで会員になり、ぜひ試乗して体験してみることをオススメします!

 

 

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郷愁さそう鉄道風景!? 桜も見事な「樽見鉄道」11の面白ポイント

おもしろローカル線の旅79〜〜樽見鉄道(岐阜県)〜〜

 

ローカル線の旅をしていると、初めて乗った列車なのに、この風景、前にどこかで出会ったなということがよくある。岐阜県内を走る樽見鉄道(たるみてつどう)は、大垣駅から北へ向かい樽見駅へ至る非電化の路線である。片道約1時間の列車に乗車すると、新鮮な発見とともに、不思議な懐かしさを感じることができた。

 

【関連記事】
三重県と岐阜県を結ぶ唯一の鉄道路線「養老鉄道」10の謎

 

【郷愁さそう鉄道①】妙に懐かしい昭和そのままの駅の光景

無骨なコンクリートの給水塔が立ち、その向こうに鉄骨で組まれた跨線橋がある。跨線橋は足下が透けて見え、渡るのがちょっと怖い年代物の造りだ。跨線橋の下には複数の線路が敷かれている。昔は貨車が多く出入りしていて、賑やかだったことだろう。しかし、今は事業用の車両一両が停車するのみ。線路わきの歩道を通る人もおらずひっそりとしていた。

↑樽見鉄道の本巣駅の北側にはSL用に作られた給水塔が立ち、その先には年代物の跨線橋が設けられていた

 

樽見鉄道の途中駅、本巣駅の北側には、昭和期に多くの駅で見ることができた光景が、そのままの姿で残っていた。今回は、こうした情景が各所に残る樽見鉄道の旅を楽しんでみよう。

 

【郷愁さそう鉄道②】紆余曲折を経てでき上がったローカル線

ここで樽見鉄道の概略を見ておきたい。

路線と距離 樽見鉄道樽見線/大垣駅〜樽見駅34.5km、全線単線非電化
開業 1956(昭和31)年3月20日、国鉄樽見線として、大垣駅〜美濃本巣駅(現・本巣駅)間が開業、1989(平成元)年3月25日に樽見駅まで延伸開業。
駅数 19駅(起終点駅を含む)

 

樽見線の開業は1956(昭和31)年3月20日とそう古くない。開業は太平洋戦争後のことだが、実は戦前から建設が始められていた。岐阜県の大垣から福井県の大野を経て、石川県の金沢を目指した路線だった。戦後に工事が再開され、まずは美濃本巣駅(現・本巣駅)、さらに1958(昭和33)年4月29日に美濃神海駅(みのこうみえき/現・神海駅)まで延伸された。

 

1970(昭和45)年に延伸工事が再開されたものの、特別天然記念物の根尾谷断層(詳細後述)があったことから、工事の停止が求められ、ルート変更した上で工事が再開された。さらに、国鉄再建法の公布により、樽見線は第1次特定地方交通線に選ばれ、廃止対象となり、同時期に延伸工事が凍結された。しかし、トンネルや橋は7割以上ができあがっていたこともあり、第三セクター方式の樽見鉄道が設けられ1984(昭和59)年に転換、ストップしていた延伸工事も再開され、1989(平成元)年3月25日まで、樽見駅まで開業している。こうしてみると、路線の歴史には紆余曲折があり、今の路線になるまでかなりの年数がかかったことが分かる。

 

【郷愁さそう鉄道③】気動車の頭に付く「ハイモ」の意味は?

走る車両を見ておこう。現在、車両は2形式4タイプあり、すべてに「ハイモ」という形式名が頭に付く。「ハイモ」の意味は「ハイスピードモーターカー」を略したものとされる。

↑車両はハイモ295、ハイモ330(左下)の2形式。ハイモ295は310から610まで3タイプが走る。610形は現在、赤白塗装に変更されている

 

ハイモ295は310、510、610の3タイプがあり、1999(平成11)年に310から順次装備された。なお610は、廃止された三木鉄道(兵庫県)で使われていた車両を購入したもので、機器が一部変更して使われている。

 

2010(平成22)年からはハイモ330が導入された。ハイモ330はNDCと呼ばれる新潟鐵工所(現在は新潟トランシスが鉄道車両などの事業を引き継ぐ)製造の軽快気動車で、他の第三セクター鉄道も多く導入しているものと同タイプだ。現在、ハイモ330は701〜703の3両が樽見鉄道を走っている。1両は沿線にあるショッピングモールの広告入りラッピング車として走っていて、よく目立つ。

↑2018(平成30)年11月末まで走っていたハイモ230-313形。レールバスタイプのハイモ230最後の車両として樽見線を走った

 

【郷愁さそう鉄道④】旅の始まりは大垣駅6番線ホームから

樽見鉄道の旅は大垣駅から始まる。この大垣駅で東海道本線と養老鉄道と接続する。樽見鉄道の列車は東海道本線の岐阜・名古屋方面行きの5番線の向かい側の7番線と、ホームの東端に設けられた6番線のホームから発車する。朝などの時間帯を除き、ほとんどの列車が6番線からの発車となる。

 

樽見鉄道の切符はJR大垣駅の券売機で購入が可能だ。さらに、6番線ホームの入口にきっぷ売り場があり、8時〜16時まで係員が勤務、切符の販売を行う。東海道本線から直接乗り換えする場合にはこちらで切符を購入する。また1日フリー乗車券(1600円)もこちらに用意され、購入が可能だ(係員がいる時間のみ。他は本巣駅のみ取り扱い)。なお交通系ICカードは使うことができない。大垣駅から終点の樽見駅までは片道930円なので、往復する場合には1日フリー乗車券のほうが得だ。

↑大垣駅6番線に停車する樽見鉄道のハイモ330。6番線にきっぷ売り場があり、朝8時以降1日フリー乗車券(右上)が購入できる

 

列車は朝夕30分〜1時間に1本の割合、日中は1時間〜1時間半に1本と少なめになる。ただし、朝夕は途中、本巣駅止まりも多いので注意が必要になる。

 

筆者が訪れた日、6番線に停車していたのはハイモ330だった。樽見鉄道色の水色ベースに、赤白のラインがアクセントとして入る。休日の朝だったこともあり乗車する人は少なめ。時間どおりにディーゼルエンジン音を奏でつつ発車した。

 

大垣駅から次の東大垣駅の手前まで約2.5km、東海道本線の路線の北側を並走する。過去に樽見鉄道が国鉄路線だった名残が感じられるところだ。

 

【郷愁さそう鉄道⑤】揖斐川に架かる橋へ向けてひたすら登る!?

次の駅の東大垣駅を発車すると、車両はさらにエンジン音を響かせ急な坂を登り始めた。その坂は最大25パーミル(1000m走る間に25m登る)というからかなりのものだ。この登り、実は揖斐川(いびがわ)橋梁を渡るためのものである。国土地理院の標高が計測できる地図で確認すると、東大垣駅が標高7〜8m、川の堤防の高さが16.8〜17.3mある。つまり、堤防まで10m近く登るわけだ。

↑東大垣駅(左)から揖斐川橋梁への急坂を登る樽見鉄道ハイモ330。後ろに大垣市街が見えている

 

この揖斐川堤防の高さには理由がある。堤防下の民家よりも、揖斐川の流れの方が標高が上なのだ。江戸時代から人々の暮らしを守るために治水事業が進められ、長年の工事により堤防を高めて水害に強い町造りをしてきたそうである。

↑揖斐川橋梁を渡る樽見鉄道の列車。橋の長さ321.7m。手前のトラス部分の1つは川崎造船所製、その先のトラス部分は米国製を利用

 

興味深いのは樽見鉄道の揖斐川橋梁が、非常に古い歴史を持つ構造物を使って造られているところだ。戦前に橋造りは進められたのだが、鉄資源を必要としていたことから、当時架橋に使われた部品は一度、取り外された。

 

後にこの揖斐川のトラス部分には、御殿場線の橋梁に使われていた構造物が使われた。御殿場線は古くは東海道本線の本線だったこともあり全線が複線だったが、丹那トンネル開通後には支線となり複線区間の多くが単線となった。そのため不用な橋の構造物を揖斐川の橋梁に転用した。また、橋梁部品は製造された歴史も古く、1900(明治33)年、アメリカのAアンドP・ロバーツ製、一部が1916(大正5)年の川崎造船所製という代物だった。

↑東海道本線の揖斐川橋梁と平行して架かる旧揖斐川橋梁。この橋へ至る堤の下には、ねじりまんぽ(左上)といった構造物も残る

 

揖斐川橋梁付近には、さらに興味深い構造物があった。樽見鉄道の橋の200m下流に東海道本線の橋梁と、旧揖斐川橋梁が平行して架かっている。この旧橋梁は現在、鉄道橋ではなく、歩道橋となり地元の高校生たちの通学路としても使われている。こちらは1887(明治20)年に使用開始された橋で、国の重要文化財に指定されている。

 

さらに、この橋へ至る東海道本線の堤には、いくつかのレンガ造りの古いトンネルが下をくぐる。そのうち1つ甲大門西橋梁は「ねじりまんぽ」と呼ばれる珍しい構造を残している。斜めに通る歩道用のトンネルのために、内部のレンガ組みを斜めに巻いた構造で、重さに耐えられるように造られた。橋だけでなく、そうした年代物の構造物も多数残されていたのだった。

 

【郷愁さそう鉄道⑥】車窓から見える果樹はいったい?

ちょっと寄り道してしまったが、先を急ごう。揖斐川橋梁を渡った樽見鉄道は、しばらくの間、平野部を走る。

 

横屋駅、十九条駅、美江寺駅(みえじえき)と瑞穂市内の駅が続く。北方真桑駅(きたがたまくわえき)から先、本巣市へ入る。この先、一部が揖斐川町内の駅があるが、大半が本巣市内の駅となる。樽見鉄道の19の駅のうち何と12の駅が本巣市内にあり、本巣市内線といった趣が強い。

↑十九条駅近くを走る「モレラ岐阜」ラッピングのハイモ330。線路の左右に名物「富有柿」の果樹畑が連なる

 

瑞穂市から本巣市にかけては、駅の周辺は民家が集まり、駅間には畑が広がる。畑には果樹が多く植えられている。筆者が訪れた時は春先だったために、葉が落ち、果実は実っていなかったのだが、さてこの果樹は何なのだろう?

 

調べると「富有柿(ふゆうがき)」だった。高糖度の「富有柿」は、樽見鉄道が走る瑞穂市が発祥の地とのこと。冬には北西にある伊吹山からの季節風「伊吹おろし」が吹き下ろし、夏は全国で最高気温を記録するほど暑いこの地は柿栽培の好適地なのだという。寒さが残る季節は剪定の時期で、確かに手入れをする人の姿が沿線で見られた。10月にはオレンジ色の柿の実が見事に実る。そうした風景もぜひ見てみたいと思った。

 

さて、柿の木畑を見ながら本巣市へ入った樽見鉄道の列車はモレラ岐阜駅に到着する。ここで乗降する人たちが目立った。おしゃれな駅名は、駅の東側に広がる大型商業施設の名前から付けられている。働く人たちと、ショッピングに向かう人たちが多く利用する駅で、樽見鉄道の2割の乗降客がこの駅を利用する人たちだという。ホーム1面の小さな駅ながら、同路線の営業への貢献度が高い駅だということがうかがえた。

 

【郷愁さそう鉄道⑦】本巣駅付近から見える工場は……?

モレラ岐阜駅の先、糸貫駅(いとぬきえき)に停まり、本巣駅へ到着した。この駅には、車庫、本社もあり樽見鉄道にとって中心駅だ。鉄印もこちらで扱われている。

 

上り下り列車が行き違う1・2番ホームがあり、車庫へ入るために留置線が設けられている。前述したように古い給水塔が残され、鉄骨むき出しの跨線橋が北側に架かる。留置線は何本もあって過分なようにも感じる。何に使われていたものなのだろうか?

 

実は本巣駅の北西側に住友大阪セメント岐阜工場がある。このセメント工場では、長い間、樽見鉄道を使ってセメント輸送を行っていた。かつては本巣駅から、同工場に延びる専用線があり、多くの貨車が出入りしていた。第三セクターとなった時にも同社が樽見鉄道の経営に関わるなど、大きな役割をしている。だが、2006(平成18)年3月28日でセメント輸送は終了し、専用線も廃止されている。本巣駅に残る留置線はそのセメント輸送の名残だったわけだ。貨物輸送が行われていたころは、さぞや賑わいを見せていただろう。

↑本巣駅に到着するハイモ330。左奥に見える工場が住友大阪セメント岐阜工場。本巣駅からこの工場まで専用線が延びていた

 

↑本巣駅には車庫もありハイネ295が2両停車していた。右上が本巣駅の入口。樽見鉄道色の自動販売機も設置されていた

 

 

【郷愁さそう鉄道⑧】谷汲口駅に残る古い客車は何だろう?

本巣駅のひとつ先、織部駅から木知原駅(こちぼらえき)へ向かう途中、左手から大きな川が近づいてくる。この川は根尾川(ねおがわ)で、下流で揖斐川に合流する一級河川だ。樽見鉄道はこの先、根尾川とほぼ平行して走るため〝縁の深い〟川でもある。

 

さて木知原駅の先で根尾川を渡る。この橋が第一根尾川橋梁だ。この橋梁の一部は明治期に造られた東海道本線の旧木曽川橋梁を再利用したものだとされる。先の揖斐川橋梁といい、他線の古い部品を一部流用した鉄橋が多い。

↑谷汲口駅(左上)のホーム横に保存されるオハフ33形客車。こげ茶色に塗られているが、近年は車両の傷みが感じられ残念だ

 

橋を渡って着いたのが谷汲口駅(たにぐみぐちえき)。訪れた時には盆梅展という幟が駅ホームに立てられていたが、4月になると桜に包まれる駅として良く知られている。その桜の木に包まれるように駅横に古い客車が保存されている。この客車は果たして……?

 

こちらはオハフ33形で、樽見鉄道発足時に国鉄から購入した3両のうちの1両だった。導入当時は水色に赤白ラインの樽見鉄道色に塗られ、客車列車として利用された。戦後の1947(昭和22)年に製造された旧型客車だが、利用後に1両のみ、同駅があった旧谷汲村に寄付され、この地で展示保存されることになった。こげ茶色に赤ラインが入る昔の三等客車の色に塗られたが、木々が覆いかぶさるように茂り、また錆が目立ち、保存状態が決して良いとは言えないのが気になった。

 

【郷愁さそう鉄道⑨】列車は根尾川を何回渡るのだろう?

谷汲口駅から次の神海駅(こうみえき)、さらに高科駅、鍋原駅(なべらえき)と、駅と駅の間で根尾川を渡る。鍋原駅まで3つの根尾川橋梁を渡る。

↑木知原駅から樽見駅にかけて根尾川を多く渡る。渓流は根尾川渓谷としてもハイカーたちの人気スポットにもなっている

 

根尾川を渡るとともに、民家と畑は徐々に減っていく。路線の途中までは国道157号と線路がほぼ平行に走っていたが、高科駅から先は離れた場所を国道が通るようになる。鍋原駅の先ですぐにトンネルに入り、険しさがいっそう強まった。山間部を走り抜け、また根尾川橋梁を渡る。

 

次の日当駅(ひなたえき)までは、なんと第五から第八根尾川橋梁まで4本の鉄橋を渡る。樽見鉄道が根尾川を渡る回数は何と計10回。第一から第十まで根尾川橋梁が連なるのだ。樽見線の工事は日本鉄道建設公団が行ったものだが、山中によくこうした鉄橋とトンネル続きの路線を通したものだと感心させられる。

 

【郷愁さそう鉄道⑩】気になる〝開運駅〟の表示がある駅は?

日当駅、高尾駅と山あいの駅が続く。その先にあるのが水鳥駅(みどりえき)。この水鳥駅が近づいてくると、やや民家も多くなってくる。

 

この駅の別名は開運駅とも呼ばれ、ホームには「水鳥」の駅名標に並ぶように「開運駅」の別名表示がある。さて、なぜ開運駅となったのだろう。駅から徒歩15分のところに根尾川にかかる赤い橋がある。歩いて渡ると運が開けることから開運橋と名付けられている。駅名はこの橋の名前にちなんで付けられたのだろう。

 

同駅の近くには「根尾谷断層」という大きな断層があり、筆者としてはこちらの方が興味深く感じた。

↑水鳥駅の駅名標の横に「開運駅」という別名の駅名標が立つ(右下)。ここには駅最寄りの観光名所の解説が記されていた

 

根尾谷断層は1891(明治24)年10月28日に起こった濃尾地震で発生した断層で、駅がある水鳥(みどり)地区が震央だったそうだ。総延長は約80kmに渡り、地表部にも大規模な断層が生じた。地震で発生した断層に関して、それまで歴史上の記録がなかったため、現在確認できる最古の地震断層として価値が高い。そのため国の特別天然記念物にも指定されている。

 

水鳥駅付近にも断層があるそうなのだが、地震が起きてすでに100年以上たち、風雨にさらされているために、断層の地形は車窓から見た限りは確認できなかった。こうした断層と歴史は「地震断層観察館・体験館」(駅から徒歩5分)に詳しく解説され、当時の大規模な断層の姿を見ることができる。

 

【郷愁さそう鉄道⑪】路線内最大の観光資源が樽見の〝淡墨桜〟

根尾谷断層がある水鳥駅を発車、樽見鉄道の第十根尾川橋梁を渡ると、左手に見えてくるのが旧根尾村の中心にあたる樽見だ。大垣駅から約1時間10分、終点の樽見駅へ到着した。盲腸線の終点駅ということで、ひなびた駅かと思ったが、意外にもホーム下には町も見えていて賑やかだった。

 

旧根尾村は2004(平成16)年に本巣市となったが、それまでは福井県と隣接する山村だった。岐阜県の中では冷涼な気候で冬は雪も積もる。筆者が訪れたのは春先だったものの、駅前には除雪した雪が山盛りされていた。現在の主産業は農業だが、かつては林業で栄えた村でもある。

↑終点の樽見駅へ到着したハイモ330。ホーム1面の駅だが、先に留置線が伸びる(右上)。かつて路線を北陸まで延ばす計画もあった

 

ホームから町並みが見えるものの、駅がある側は国道157号が通るがやや寂しめ。人気の温泉施設「うすずみ温泉 四季彩館」が休館だったこともあり、終点まで乗車した人は数人という状況だった。だが、一年で賑わう季節がある。それは桜の花が咲く季節だ。

↑樽見駅の駅前にはふれあいプラザが立ち、内部には待合所(左上)もある。地元の人たちによってきれいに手入れされていた

 

山里らしくやや開花が遅くなるものの、桜が見事なところでもある。なかでも名高い桜の古木がある。

 

根尾谷淡墨桜(うすずみざくら)という一本桜は、樹齢1500年以上のエドヒガンと呼ばれる種で、日本五大桜、三大巨桜にも数えられる天然記念物だ。淡い色の桜の花に特長があり、巨木すべてが花で覆われる姿が見事だ。駅からは根尾川を渡って、徒歩20分ほど。根尾谷・淡墨公園内にある。公園内には本巣市さくら資料館もある。

 

樽見鉄道では桜の季節に合わせて臨時の「桜ダイヤ」を組み増便する。今年は3月26日〜4月10日までの予定だ。通常の単行運転が2両に増結され賑わいを見せる。

 

観光関係の本づくりなどの仕事が多い筆者だが、残念ながら観光シーズン前に動くことが多い。そのため最盛期の観光地を訪れることは稀だ。最盛期の淡墨桜と、根尾谷断層見物はいつかゆっくりとシーズン中に見に来たいな、と思いつつ樽見駅をあとにしたのだった。

↑樽見駅のホームから見た樽見の町並み。名勝根尾谷淡墨桜(左下)は駅から徒歩20分

 

トヨタ、スズキの持ち味を生かした仕上がり! 日本が誇る定番車の最新作を試乗レポート

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」は伝統の日本ブランドが放つ最新作をピックアップ。トヨタの「カローラ クロス」は、シリーズ初のSUV。新型「アルト」は、累計で500万台以上を販売しているロングセラーの9代目。いずれも、定番モデルらしい持ち味が実感できる出来栄えだ。

※こちらは「GetNavi」 2022年3月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【その1】「世界のカローラ」に相応しい扱いやすさが魅力!

SUV

トヨタ

カローラ クロス

SPEC【ハイブリッドZ(2WD)】●全長×全幅×全高:4490×1825×1620mm●車両重量:1410kg●パワーユニット:1797cc直列4気筒DOHC+電気モーター●最高出力:98[72]PS/5200rpm●最大トルク:14.5[16.6]kg-m/3600rpm●WLTCモード燃費:26.2km/L

●[ ]内は電気モーターの数値

 

すべてに不足がない作りだがカローラらしくリーズナブル

多くのSUVをラインナップしているトヨタに、新たに「カローラ」の名が付くSUVが加わった。サイズ的には、「ヤリス クロス」と「RAV4」の間。その仕上がりをひと言で表すと、カローラらしくすべてにおいて不足がない。他のシリーズとの共通性を感じさせる内外装は、多くの人に受け入れられるデザイン。後席や荷室も十分な広さで、ゴルフバッグは4個積載可能。また、装備面では本革を組み合わせた上質なシートや、大開口パノラマルーフのオプションも選べる。

 

「C-HR」と同じTNGA-Cプラットフォームをベースとしつつ、2WDのリアサスはマルチリンクに代わって新たにトーションビーム式を採用したのが特徴。引き締まった乗り味ながら快適性も十分で、動きが素直で乗りやすい。1.8Lハイブリッド、特にE-Fourは上質感が、一方のガソリンモデルは軽快な走りが魅力的だ。これだけ充実した性能ながら価格はカローラらしくリーズナブル。爆売れしているのも納得だ。

 

[Point 1] 車室内はSUVらしい広さを確保

背の高いスクエアなボディ形状とあって、室内はSUVに相応しい広さを確保。フロントにはスポーティな形状のハイバック形状のシートを採用し、カジュアルな雰囲気も演出する。

 

[Point 2] 荷室容量もトップクラス

2WD車の荷室容量は、5名乗車時でも439〜487Lとクラストップレベル。4WDモデルでも407Lを確保する。高機能収納ボックスも備わり、ユーティリティにも優れる。

 

[Point 3] 新開発の足回りで走りもしなやか

2WD車には新開発のリアサスペンションを採用。しなやかで快適なライド感を実現している。最小回転半径を5.2mに抑えたことで、街なかでの使い勝手も上々だ。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/ミッション/税込価格)

G“X”:1.8L/2WD/CVT/199万9000円

G:1.8L/2WD/CVT/224万円

S:1.8L/2WD/CVT/240万円

Z:1.8L/2WD/CVT/264万円

ハイブリッドG:1.8L+電気モーター/2WD、4WD/電気式無段変速/259万円、279万9000円(※)

ハイブリッドS:1.8L+電気モーター/2WD、4WD/電気式無段変速/275万円、295万9000円(※)

ハイブリッドZ:1.8L+電気モーター/2WD、4WD/電気式無段変速/299万円、319万9000円(※)

※:4WD(E-Four)の価格

 

 

【その2】「素」の魅力が味わえるスズキ伝統のベーシック

軽ハッチバック

スズキ

アルト

SPEC【ハイブリッドX(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1525mm●車両重量:710kg●パワーユニット:657cc直列3気筒DOHC●最高出力:49PS/6500rpm●最大トルク:5.9kg-m/5000rpm●WLTCモード燃費:27.7km/L

 

ハッチバックモデルらしい素直な操縦性も魅力的

「アルト」は、初代が1979年に登場したスズキ伝統のモデル。9代目となる新型モデルでも、軽自動車における基本の“き”とも言うべき堅実な作りは健在だ。ボディは、先代よりスクエアな形状となり室内空間が拡大。同時に内外装の質感が目に見えて向上したこともポイントとなっている。

 

搭載するエンジンは、自然吸気のみ。組み合わせるトランスミッションもCVTの1択だが、アルトでは初めてマイルドハイブリッド仕様を設定。燃費は、軽自動車トップとなる27.7km/Lをマークする。また、最新モデルらしく運転支援系の装備も充実。独自のデュアルカメラブレーキサポートなどは、全車で標準装備となる。

 

今回は2WD仕様に試乗したが、走りは日常を共にするベーシックカーとして満足できる出来栄えだ。現在、軽自動車で主流となっているトールワゴン系より軽量ということもあって常用域の力強さも申し分ない。また、先代より全高が高くなったとはいえ、ハッチバックと呼べる水準に収まるので操縦性も実に素直。日常域はもちろん、望めば積極的に操る場面にも対応できる。前述の質感向上に加え、この新型アルトではボディカラーの選択肢も豊富なだけに、気の利いた普段使いの相棒としても狙い目の1台と言える。

 

[Point 1] 2トーンを含めてボディカラーも多彩

ボディカラーは、新色となる写真のブルーをはじめとする8色。そのうち4色で、2トーンとなるホワイトのルーフも選べる。外観は先代より親しみやすさが強調された。

 

[Point 2] 燃費性能は軽自動車随一

搭載するパワーユニットは自然吸気のみだが、アルトでは初となるマイルドハイブリッド仕様を設定。軽自動車ではトップクラスとなるWLTCモード燃費を実現している。

 

[Point 3] 親しみやすさは室内でもアピール

立体的造形のインパネ回りは、収納スペースも豊富。シートにはデニムをイメージさせる生地を採用。背面のカラーを変えて、カジュアルで親しみやすいイメージも演出できる。

 

[Point 4] 使い勝手も着実に進化

荷室は、開口部の地上高を下げて積載性が向上。先代と比較すると、わずかながら荷室長も拡大されている。リアの背もたれは分割可倒式ではないが、後席を畳めば容量は大幅に拡大できる。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/ミッション/税込価格)

A:0.66L/2WD、4WD/CVT/94万3800円、107万5800円(※)

L:0.66L/2WD、4WD/CVT/99万8800円、112万9700円(※)

ハイブリッドS:0.66L/2WD、4WD/CVT/109万7800円、122万8700円(※)

ハイブリッドX:0.66L/2WD、4WD/CVT/125万9500円、137万9400円(※)

※:4WDの価格

 

文/岡本幸一郎、小野泰治 撮影/郡 大二郎、宮越孝政

 

 

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今さら聞きにくい!?「鉄道車両」系列や数字10の謎

〜〜系or形の使い分け&なぜ末尾が奇数数字なのか、など〜〜

 

日本国内には多くの鉄道車両が走っている。これらの車両は、115、201、225……といった異なる数字が付けられ、分類され、判別することができる。便利な方法だが、これらは一定の法則により、付けられていることをご存知だろうか。

 

今回は、電車の番号付け、「系」や「形」などの「系列」の呼び方などに注目してみた。今さら聞きにくい〝系列や数字10の謎〟を見ていきたい。

 

【鉄道車両10の謎①】「系」「形」「型」どれが正しいの?

数字+系・形などのことを「系列」と言う。複数造られた同種類の車両をまとめた総称で、英語で言えばシリーズに近い。この「系列」数字の後ろにつく「系」「形」「型」の使われ方を見ていこう。

 

↑国鉄の車両を継承したJRグループでは数字のあとに「系」が付く場合が大半だ。写真はJR西日本の201系

 

JRグループは、大半の車両の「系列」には後ろに「系」を付けて呼ぶ。よって、数字+「系」で呼んでおけば間違いない。例外として、気動車や電気機関車、ディーゼル機関車、事業用車などは「形」を付けることがある。

 

「形(がた)」を付ける会社は、「京成電鉄」「京浜急行電鉄」「小田急電鉄」といったところ。「系」と「型」が交じるのは「東武鉄道」。「系」と「形」が交じるのが「京阪電気鉄道(大津線の一部のみ「形」を使用)と独自の表記をする会社もある。

↑東武鉄道の60000系。東武の通勤形電車は多くが「型」を後ろに付けるが、60000系は珍しく「系」が付けられている

 

特異なのは西日本鉄道で、「形」を付けるが、あえて「けい」と読ませている。ちなみに小田急電鉄は「形」と「けい」と読ませる時期があったものの、現在は「がた」に統一している。

↑西日本鉄道の3000形。漢字は「形」ながら「けい」と読む。漢字自体に「けい」という読み方もあるわけで間違いではない

 

「系列」の呼び方は、数字の後ろが「系」「形」「型」のいずれでなければいけないという決まりはない。各会社それぞれのルールがあり、社内でその呼び方が一般的だったから、そのまま引き継いだという場合が多い。

 

【鉄道車両10の謎②】JR貨物では数字の後ろに「形式」付け?

前述したように、JRの旅客会社では機関車に「形」を付けている。一方で、JR貨物のみ「形式」を後ろにつける。読み方は「けいしき」で、EF64形式直流電気機関車、EF81形式交直流電気機関車といった具合に使う。

 

JR移行後の新しい機関車の場合には、ニックネームが後ろに付くので、「JR貨物 EF210形式 直流電気機関車 ECO-POWER桃太郎」といった、はなはだ長い正式名称となる。筆者は児童書を制作している時には、名称を「EF210 電気機関車 ECO-POWER桃太郎」とやや省略して表記することがあったが、それでも間違いではないというのが、JR貨物の見解だった。

↑JR貨物の機関車には「形式」が付けられている。写真のEF65ならば、正式には「JR貨物 EF65形式 直流電気機関車」となる

 

ちなみにJR貨物で唯一の動力分散方式の貨物電車は、M250系と「系」を付けて呼んでいる。

 

【鉄道車両10の謎③】なぜJR電車の数字末尾は奇数なのか?

JRグループの電車の系列に付く数字のほとんどは、末尾が奇数だ。この決まりは、言われてみて改めて気づく方も多いのではないだろうか。例えば103系、115系、201系、211系、311系とざっとあげただけでも、大半の電車の末尾が奇数となっている。例外については後述するが、なぜ末尾が奇数なのだろう? これには国鉄時代からの伝統がある。

↑国鉄が生み出した最初の新性能電車101系。写真は秩父鉄道を走っていた当時のもの。この101系から末尾の奇数がルール化された

 

国鉄にも古くは末尾が偶数の電車が走っていた。72系などがそれにあたる。太平洋戦争後間もなくのころだ。72系という形式は、正式なものではない。便宜的に分類された電車の総称だった。当時、国鉄はまだ混乱期で、寄せ集め的な編成も多かった。混乱からようやく立ち上がり、そして生まれたのが、101系という電車だった。

 

それまでの電車が〝旧型電車〟というのに対して、101系は〝新性能電車〟として区分けされた最初の電車だった。この電車の登場に合わせて、1959(昭和34)年6月1日に「車両称号規程改正」を施行された。101系は、当初90系という名称だったが、新たな「系列」呼称の101系が付けられた。この車両から称号規程改正されることになり、後に登場する電車には、みな末尾が奇数の数字が割り当てられるようになった。JR移行後にも「系列」名の数字末尾が奇数となる決まりが引き継がれ(一部の会社をのぞく)、JR他社の車両と、重複しないようにするという暗黙の了解事項がある。JRグループ内で混乱を招かないよう、それぞれ配慮しているというわけである。

 

ひとつ注意したいのは、「系列」名と編成の個々の車両の「形式」名とは異なることだ。例えば103系ならば、クモハ102形とクモハ103形、モハ102形とモハ103形の組み合わせといったように、末尾が異なる数字で組まれている。全車が103という統一数字ではない。このうち103が最大の数字で、その最大の数字が103系という「系列」名として使われる。

 

【鉄道車両10の謎④】10や100の位の違いに意味があるの?

「系列」名の末尾に奇数数字が付けられているように、10の位、100の位にも意味がある。

↑JR西日本の225系。200は直流電車、20は近郊形、225系は直流近郊形電車を意味する

 

まず100の位は電気方式の違いを示している。「100」「200」「300」は直流方式の電車、「400」「500」「600」は交直両用電車を指す。

↑JR九州の415系。「400」の数字は交直両用電車を指す。JR九州では唯一の交直両用電車で関門トンネルの運行に欠かせない

 

「700」「800」は交流電車を指し、その多くは現在JR北海道とJR九州が所有している。JR北海道が700の数字を多く利用し、721系、731系、733系、735系などの数字の電車が揃う。一方、JR九州が「800」を主に利用、811系、813系、815系、817系、821系が揃う。JR北海道とJR九州で上手く使い分けているのが現状だ。

↑JR北海道の主力車両733系。「700」は交流電車の証。JR北海道では特急形電車まで700の数字を持つ電車がほとんどだ

 

↑JR九州の817系。JR九州の交流電車は多くが「800」。特急形電車も一部に800の数字が付けられるようになっている

 

次に10の位を見てみよう。まず「0」は通勤形電車で、103系、201系などがその代表格となる。「10」「20」は近郊形電車で115系、415系、そしてJR四国の121系(現在は7200系に更新済み)があげられるだろう。後に1つの車両で、通勤形電車、近郊形電車を兼ねた「一般形電車」が多く開発されるようになったため、明確化されていた国鉄時代にくらべ、今はややあやふやな定義となっている。

 

「40」は事業用・非旅客電車。「50」〜「80」は急行形電車もしくは特急形電車で、急行形電車は消滅したものの、特急形電車には今も、このルールが踏襲されている。全国では「50」もしくは「80」が使われる例が多い。

↑JR東日本の255系。特急の証「50」が形式名に付く。頭に「E」が付かないJR東日本最後の特急形電車でもある

 

なお「90」は事業用・検査用電車に付けられる。この90付きの電車は現在JR東日本の車両で頭に「E」を付けたE491系、E493系などが目につくぐらいだ。

 

【鉄道車両10の謎⑤】「900」を唯一つけた試作車は?

さて100の位で「900」に関して触れなかった。「900」は試作車を示す数字であり、今は「E」が頭に付くJR東日本の試験車両がわずかにあるのみだが、唯一かなりの車両数が造られた試験車両がある。901系という電車だ。この901系はJR東日本の記念碑的な電車で、1992(平成4)年3月に10両編成×3本が〝試作車〟として造られた。

↑京浜東北線用として誕生したJR東日本の901系(写真は保存車両)。「900」を使った唯一の「系列呼称」の車両だ

 

後に209系と改番され、京浜東北線を走ることになる。JR東日本で「新性能電車」をより新しくした「新系列電車(車両)」と呼ばれ、その後の同社の車両造りに大きく影響を与えた車両でもある。

 

現在、209系は更新され、首都圏や房総地区を走るが、そろそろ一部車両の引退が見られるようになってきた。一部の編成は伊豆急行に引き取られて更新した上で使われることになった。〝重量半分・価格半分・寿命半分〟と割り切って生まれた電車だったにもかかわらず、意外に重宝がられ、長持ちしている。試作車が30両も造られたこと自体が異例だったが、それだけ手をかけた意味があったわけだ。

 

【鉄道車両10の謎⑥】JR東日本の車両につく「E」はいつから?

JR東日本の系列名にはご存知のように「E」が頭に付く。この「E」はもちろん東を意味する「East」の頭文字だ。JR東日本の車両であることが明確なように「E」付けが始められたものだった。初の「E」付き車両は1993(平成5)年に登場したE351系からだった。

 

しかし、その後のJR東日本の電車の系列名の数字は、JR他社とほぼバッティングしないものが付けられている。例外は東北地域を走るE721系と同じ721系の電車がJR北海道を走っていることぐらいだろうか。

↑初の「E」付き車両E351系。特急「あずさ」として活躍したが2018(平成30)年4月7日に最終運転(写真)を迎えた

 

【鉄道車両10の謎⑦】JR四国の車両の四桁数字をよく見ると

JRグループでは唯一、独自の系列名を付けているのがJR四国だ。国鉄形はすでに気動車以外にあまり走っておらず、新造された車両がJR四国の主力車両となっている。ユニークなのは、気動車も「キハ」等を頭に付けないことだ。

↑予讃線の通勤電車。先頭は7000系、後ろ2両は7200系だ。7200系は元国鉄形121系で、車体更新後はこの系列名となった

 

新造車両はすべて四桁数字で、1000形、1200形、1500形は一般形気動車(普通列車用)。この気動車類には後ろに「形」が付く。2000系、2600系、2700系は特急形気動車となる。電車は5000以上の数字で、近郊形電車は5000系、6000系、7000系、7200系。特急形電車は8000系、8600系というように特急や電車はみな「系」を後ろに付けて呼ぶ。

 

他のJRグループが意図的に奇数数字を使うことが多いのに対して、偶数数字を多く含むところが興味深い。

 

【鉄道車両10の謎⑧】新幹線は0系から800系で終わる?

ここからは新幹線電車の系列名を見ていこう。新幹線の系列名は元祖となる0系を除き、3桁数字が付けられることが一般的だった(JR東日本の現状は後述)。100系・300系は東海道・山陽新幹線を走った電車ですでに引退。200系は東北・上越新幹線用、400系は山形新幹線用に造られた。

↑山陽新幹線を走る100系。かつては食堂車付きの2階建て車両を中間部に連結し、人気の車両でもあった

 

500系は初めて時速300kmで走った〝栄光〟の車両で、今も山陽新幹線を走る。600系は欠番(詳細後述)で、700系は2020(令和2)年に引退している。800系は現在の九州新幹線の主力車両だ。

↑3桁数字の最後となる九州新幹線の800系。今後、新しい車両が誕生した場合にどのような数字が付けられるか興味深い

 

今のところ新幹線の3桁数字は800系までだ。現在の東海道・山陽新幹線の主力となっているN700系、N700A、N700Sなど、700の数字に〝new〟〝next〟を意味する「N」を付ける、また末尾に「A」「S」を付けて、さらに新しい車両であることを示している。

 

900という数字は試作車や事業用車両の形式名として付けられることが多い。ちなみにドクターイエローの形式名は「新幹線923形電車」である。すでに電気軌道総合試験車に900の数字が付けられていることもあり、今後も新幹線車両の900系は出現しないだろう。

 

今後、新しい新幹線電車が西日本に登場する時には、何系とつけられるのか、気になるところだ。

 

【鉄道車両10の謎⑨】新幹線600系は欠番だが実は?

新幹線の3桁数字で600系を欠番としたが、この形式名になる予定だった電車がある。初のオール2階建て新幹線として走ったE1系だ。

 

JR東日本では前述したように1993(平成5)年に新造したE351系から系列名の頭に「E」を付けるようになった。1994(平成6)年に登場したE1系もルール(車両番号付番方法)の変更に合わせたのだ。

↑オール2階建てで壮観だったE1系。開発・設計の段階では600系として開発されていた

 

新幹線の3桁数字は、いずれ足りなくなることがわかっていたこともあり、この「E」付けは、その後のJR東日本の新幹線の増備を見ると賢明だったかも知れない。新しいところでは、北海道新幹線への乗り入れ用の電車はJR東日本の車両が「E5系」、JR北海道の車両が「H5系」を名乗る。

 

北陸新幹線用の電車はJR東日本が「E7系」、JR西日本の電車は「W7系」を名乗り走っている。今後はJR北海道やJR西日本独自の車両は、この「H」付けや、「W」付けのルールが一般化するのかもしれない。

↑北陸新幹線のJR西日本の車両は「W7系」と名付けられた。「W」は当初〝ダブル〟とされたが今は〝ダブリュ〟とも読まれる

 

【鉄道車両10の謎⑩】新幹線E7系には3桁の形式名がある?

JR東日本の新幹線は、E1系以降、すべてがE○系となった。E1系は引退したものの、E2系からE7系までもれなく付けられ、すでにE8系は山形新幹線用の新車両になることが発表されている。

 

JR東日本の新幹線車両は、みな頭にEが付き、その後ろに一桁数字が付いて、これが系列名となる。一方でE7系ならば、車体に「E715-30」「E725-103」「E726-103」などの数字が書かれている。この数字のE715やE725は「形式」名で、後ろの数字は「車号」と呼ぶ数字だ。

 

ほかE714形は12号車となるグランクラスの制御車で運転台がある。E715形は11号車のグリーン中間電動車、E725形とE726形はそれぞれ普通中間電動車、E723形は1号車の普通制御車(運転台付き)となる。

 

このように形式名と車号を付けて、社内で管理運用しやすいようにしているのだ。

 

車両の系列名や形式名の数字には、いろいろな意味に含まれていて、なかなか奥が深いことがよく分かった。

↑E7系の11号車に付くE715形の形式名。E715-30はその30号車という意味。このような数字がかならず車体に記されている

「素」の魅力が味わえるスズキ伝統のベーシック、新型アルトに試乗!

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」は伝統の日本ブランドが放つ最新作をピックアップ。新型アルトは、累計で500万台以上を販売しているロングセラーの9代目。定番モデルらしい持ち味が実感できる出来栄えだ。

※こちらは「GetNavi」 2022年3月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

ハッチバックモデルらしい素直な操縦性も魅力的

軽ハッチバック

スズキ

アルト

SPEC【ハイブリッドX(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1525mm●車両重量:710kg●パワーユニット:657cc直列3気筒DOHC●最高出力:49PS/6500rpm●最大トルク:5.9kg-m/5000rpm●WLTCモード燃費:27.7km/L

 

「アルト」は、初代が1979年に登場したスズキ伝統のモデル。9代目となる新型モデルでも、軽自動車における基本の“き”とも言うべき堅実な作りは健在だ。ボディは、先代よりスクエアな形状となり室内空間が拡大。同時に内外装の質感が目に見えて向上したこともポイントとなっている。

 

搭載するエンジンは、自然吸気のみ。組み合わせるトランスミッションもCVTの1択だが、アルトでは初めてマイルドハイブリッド仕様を設定。燃費は、軽自動車トップとなる27.7km/Lをマークする。また、最新モデルらしく運転支援系の装備も充実。独自のデュアルカメラブレーキサポートなどは、全車で標準装備となる。

 

今回は2WD仕様に試乗したが、走りは日常を共にするベーシックカーとして満足できる出来栄えだ。現在、軽自動車で主流となっているトールワゴン系より軽量ということもあって常用域の力強さも申し分ない。また、先代より全高が高くなったとはいえ、ハッチバックと呼べる水準に収まるので操縦性も実に素直。日常域はもちろん、望めば積極的に操る場面にも対応できる。前述の質感向上に加え、この新型アルトではボディカラーの選択肢も豊富なだけに、気の利いた普段使いの相棒としても狙い目の1台と言える。

 

[Point 1] 2トーンを含めてボディカラーも多彩

ボディカラーは、新色となる写真のブルーをはじめとする8色。そのうち4色で、2トーンとなるホワイトのルーフも選べる。外観は先代より親しみやすさが強調された。

 

[Point 2] 燃費性能は軽自動車随一

搭載するパワーユニットは自然吸気のみだが、アルトでは初となるマイルドハイブリッド仕様を設定。軽自動車ではトップクラスとなるWLTCモード燃費を実現している。

 

[Point 3] 親しみやすさは室内でもアピール

立体的造形のインパネ回りは、収納スペースも豊富。シートにはデニムをイメージさせる生地を採用。背面のカラーを変えて、カジュアルで親しみやすいイメージも演出できる。

 

[Point 4] 使い勝手も着実に進化

荷室は、開口部の地上高を下げて積載性が向上。先代と比較すると、わずかながら荷室長も拡大されている。リアの背もたれは分割可倒式ではないが、後席を畳めば容量は大幅に拡大できる。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/ミッション/税込価格)

A:0.66L/2WD、4WD/CVT/94万3800円、107万5800円(※)

L:0.66L/2WD、4WD/CVT/99万8800円、112万9700円(※)

ハイブリッドS:0.66L/2WD、4WD/CVT/109万7800円、122万8700円(※)

ハイブリッドX:0.66L/2WD、4WD/CVT/125万9500円、137万9400円(※)

※:4WDの価格

 

文/小野泰治 撮影/宮越孝政

 

 

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カローラ クロスは「世界のカローラ」に相応しい扱いやすさが魅力!

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」は伝統の日本ブランドが放つ最新作をピックアップ。トヨタのカローラ クロスは、シリーズ初のSUV。定番モデルらしい持ち味が実感できる出来栄えだ。

※こちらは「GetNavi」 2022年3月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

すべてに不足がない作りだがカローラらしくリーズナブル

SUV

トヨタ

カローラ クロス

SPEC【ハイブリッドZ(2WD)】●全長×全幅×全高:4490×1825×1620mm●車両重量:1410kg●パワーユニット:1797cc直列4気筒DOHC+電気モーター●最高出力:98[72]PS/5200rpm●最大トルク:14.5[16.6]kg-m/3600rpm●WLTCモード燃費:26.2km/L

●[ ]内は電気モーターの数値

 

多くのSUVをラインナップしているトヨタに、新たにカローラの名が付くSUVが加わった。サイズ的には、「ヤリス クロス」と「RAV4」の間。その仕上がりをひと言で表すと、カローラらしくすべてにおいて不足がない。他のシリーズとの共通性を感じさせる内外装は、多くの人に受け入れられるデザイン。後席や荷室も十分な広さで、ゴルフバッグは4個積載可能。また、装備面では本革を組み合わせた上質なシートや、大開口パノラマルーフのオプションも選べる。

 

「C-HR」と同じTNGA-Cプラットフォームをベースとしつつ、2WDのリアサスはマルチリンクに代わって新たにトーションビーム式を採用したのが特徴。引き締まった乗り味ながら快適性も十分で、動きが素直で乗りやすい。1.8Lハイブリッド、特にE-Fourは上質感が、一方のガソリンモデルは軽快な走りが魅力的だ。これだけ充実した性能ながら価格はカローラらしくリーズナブル。爆売れしているのも納得だ。

 

[Point 1] 車室内はSUVらしい広さを確保

背の高いスクエアなボディ形状とあって、室内はSUVに相応しい広さを確保。フロントにはスポーティな形状のハイバック形状のシートを採用し、カジュアルな雰囲気も演出する。

 

[Point 2] 荷室容量もトップクラス

2WD車の荷室容量は、5名乗車時でも439〜487Lとクラストップレベル。4WDモデルでも407Lを確保する。高機能収納ボックスも備わり、ユーティリティにも優れる。

 

[Point 3] 新開発の足回りで走りもしなやか

2WD車には新開発のリアサスペンションを採用。しなやかで快適なライド感を実現している。最小回転半径を5.2mに抑えたことで、街なかでの使い勝手も上々だ。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/ミッション/税込価格)

G“X”:1.8L/2WD/CVT/199万9000円

G:1.8L/2WD/CVT/224万円

S:1.8L/2WD/CVT/240万円

Z:1.8L/2WD/CVT/264万円

ハイブリッドG:1.8L+電気モーター/2WD、4WD/電気式無段変速/259万円、279万9000円(※)

ハイブリッドS:1.8L+電気モーター/2WD、4WD/電気式無段変速/275万円、295万9000円(※)

ハイブリッドZ:1.8L+電気モーター/2WD、4WD/電気式無段変速/299万円、319万9000円(※)

※:4WD(E-Four)の価格

 

文/岡本幸一郎 撮影/郡 大二郎

 

 

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街が変わる&より便利に!? 大阪の「鉄道新線計画」に迫る

 〜〜全国で進む新線計画その3 大阪編〜〜

 

これまで2回にわたり東京と神奈川、そして全国で進む新線計画を紹介した。今回は残る大阪地区の新線計画を見ていこう。大阪地区の新線計画は複数あり、工事が進み開業予定も明らかにされている路線が目立つ。

 

一部の新線の建設現場を2月末、実際に歩き工事の進み具合などチェックした。ほか、どのような計画が進行しているのか、追ってみたい。

 

【関連記事】
進む全国の「鉄道新線計画」−−新幹線をはじめ初のLRT新線計画も
意外に多い!? 東京&神奈川の「鉄道新線計画」に迫る

 

【大阪の新線計画①】複数の新線計画の工事計画が進められる

まずは大阪市および大阪府内で、工事そして計画が進む鉄道新線の概要を見ていこう。進む新線計画は5つある。

〈1〉「東海道線支線」地下化工事
・新線区間:北区豊崎6丁目〜福島区福島7丁目・約2.4km
・開業予定:2023(令和5)年3月予定

〈2〉「なにわ筋線」新線計画
・新線区間:JR難波駅〜西本町駅(仮称)〜大阪駅(新駅)間、南海新今宮駅〜西本町駅(仮称)〜大阪駅(新駅)間・約7.2km
・開業予定:2031(令和13)年春の予定

〈3〉「北大阪急行南北線」延伸工事
・新線区間:千里中央駅〜箕面萱野駅(みのおかやのえき)間・約2.5km
・開業予定:2023(令和5)年度

〈4〉「大阪メトロ中央線」延伸工事
・新線区間:コスモスクエア駅〜夢洲駅(仮称)間・約3.2km
・開業予定:2024(令和6)年度

〈5〉「大阪モノレール」延伸計画
・新線区間:門真市駅〜瓜生堂駅(仮称)間・約8.9km
・開業予定:2029(令和11)年を予定

 

【大阪の新線計画②】来春には開業予定の東海道支線の地下化

まずは工事がかなり進んでいる「東海道支線」の地下化工事に関して見ていきたい。

↑大阪駅(中央)の北側に大きな貨物駅・梅田駅があった。2011(平成23)年5月21日撮影のものでこの2年後に閉鎖された

 

大阪駅の北側には梅田駅という貨物専用駅があった。上記は貨物駅があった当時の上空からの写真だ。旧梅田駅の歴史は古い。元は1874(明治7)年12月に大阪駅の貨物取り扱い施設として生まれ、138年にわたり貨物の取り扱いが行われた老舗駅でもあった。2013(平成25)年4月1日に、その機能を吹田貨物ターミナル駅と百済貨物ターミナル駅に移している。

 

大阪駅すぐの一等地ということもあり、駅の廃止とともに跡地の再開発が始まった。今回の東海道支線の地下化工事もその一環である。北区豊崎6丁目〜福島区福島7丁目の約2.4km区間の工事が進み、旧梅田貨物駅の地下には「うめきた(大阪)地下駅(詳細後述)」が生まれる。完成は来春の予定だ。この新駅の誕生により、列車の運行も大きく変わりそうだ。まずは現状から見ていきたい。

 

【大阪の新線計画③】現在の線路配置と列車の動きを見ると

旧梅田駅は廃止されたものの、駅の西側を走っていた東海道支線(通称・梅田貨物線)は残された。同路線は今も特急列車や貨物列車の運行に欠かせない路線となっている。

 

梅田貨物線は、吹田貨物ターミナル駅と、梅田信号場(旧梅田駅)、福島駅を経て西九条駅(福島駅とともに大阪環状線)を結ぶ路線だ。路線距離は12.6kmあり、東海道本線と、大阪環状線を結ぶ大事なルートでもある。

↑梅田貨物線を走る安治川口駅行き貨物列車。写真は大阪駅西側にある西梅田一番踏切で新駅開業後は廃止となりそうだ

 

↑大阪駅(左側ビル)の西側を走る梅田貨物線の単線区間。同区間付近では写真のように地下化に向けて工事が進められている

 

吹田貨物ターミナル駅が路線の起点だが、実際には新大阪駅までは東海道本線と並走し、淀川にかかる上淀川橋梁を渡り、すぐに西へカーブして旧梅田駅方面へ向かう。そして、旧梅田駅の西側にある梅田信号場へ。信号場の先は単線となり西梅田一番踏切を通って、大阪環状線の路線に沿うように走る。福島駅の駅前にある浄正橋踏切を通って、高架上を走る大阪環状線へ上って行く。西九条駅までは大阪環状線に沿って単線の路線が続く。

 

この梅田貨物線を走る特急列車は、関西空港へ向かう特急「はるか」と、和歌山の紀伊半島へ向かう特急「くろしお」だ。

↑福島駅横にある浄正橋踏切を通る特急「くろしお」。ちょうどパンダ模様の車両が走ってきた。同区間は単線が続く

 

さらに、大阪環状線の西九条駅から分岐する桜島線(JRゆめ咲線)に安治川口駅という貨物駅併用の駅があり、この駅まで貨物列車も入線している。ちなみに、同駅と東京貨物ターミナル駅との間を走る「スーパーレールカーゴ」という宅配便専用の列車も毎日走っている。つまり梅田貨物線は、特急列車と貨物列車が走る重要な路線ということになる。

 

【大阪の新線計画④】大阪駅の新地下ホームの建設も進む

大阪駅近くの新線工事区間では、来春の開業を目指して工事がかなり進行していた。下はちょうど「うめきた(大阪)地下駅」の新駅ができる付近の工事の模様だ。

↑進む大阪駅近くの新駅の工事の様子。左奥に見えるのは梅田スカイビル。駅の西側地区では「うめきた2期地区開発事業」も進む

 

現在の大阪駅のちょうど北西側に地下の新駅ができる。すでにJR西日本から新駅の名前を「大阪駅」とすることが発表された。本原稿では既存の大阪駅との違いを明確にするために、ここからは大阪駅(新駅)と表記したい。

 

それに合わせて既存の大阪駅からの連絡通路等の建設も進む。大阪駅の西側には新改札口ができる予定で、また新しい駅と既存の大阪駅を結ぶための「改札内連絡通路」が設けられる。

 

JR西日本から発表されたイメージパースによると、地下1階にホーム2面、線路が4線の大阪駅(新駅)が生まれる予定だ。そして現在の梅田貨物線の路線も移され新駅を走ることになる。

 

この新駅誕生の効果は大きい。特急「はるか」と特急「くろしお」は、現在梅田貨物線がバイパスとして通っていることもあり、大阪駅には停車しないで走る。この特急が大阪駅(新駅)を停車するようになるのだ。大阪〜関西空港間を走る特急列車が停車することになり、大阪駅(新駅)は名実ともに大阪の玄関口となるわけだ。

↑大阪駅の西側では、新駅との改札内連絡通路や、新改札口を設けるための工事が進められている

 

しかし、大阪駅(新駅)の開設後もネックとなる要素が1つ残っている。新駅の先、西九条駅まで結ぶ梅田貨物線は単線のままなのだ。つまり、走る本数が限られ一部列車に遅れが生じると、多くの列車の運行に支障を来してしまう。

 

路線構造のために、スムーズな列車運行ができないことを鉄道ではボトルネックと呼ぶが、そうしたボトルネック解消のために、次の新線計画が立てられている。

 

【大阪の新線計画⑤】将来は「なにわ筋線」と結ばれる予定

大阪の北と南を直線的に結ぶ新線として計画されるのが「なにわ筋線」と呼ばれる新線計画だ。新線はJR難波駅〜西本町駅(仮称)〜大阪駅(新駅)間と、南海新今宮駅〜西本町駅(仮称)〜大阪駅(新駅)間。約7.2kmの予定で、開業は2031(令和13)年春とされている。

 

同線は大阪府、大阪市、JR西日本、南海電気鉄道(以降「南海」と略)、阪急電鉄の5社が共同事業として進める新線計画で、第三セクターの事業として進められている。

 

自治体が絡むものの、JR西日本と複数の民鉄事業者が一緒に路線造りを行うのは近畿地方では、珍しいことといって良いだろう。国鉄時代には私鉄との競走が激しく、お互いつばぜり合いを演じてきた仲でもある。路線が近くを走っていても駅すら設けないのが、ごく当たり前でもあったのだが、時代が変わったことを強くうかがわせる。

↑なにわ筋線の南側はJR難波駅から始まる。関西本線の始発駅だが難波地区では西の端にあり不便な印象が強い

 

なにわ筋線は大阪駅(新駅)から、中之島駅、西本町駅(いずれも仮称)と路線が敷かれ、西本町駅の先で分岐、一本はJR難波駅へ、もう一本は南海新難波駅(仮称)を経て、新今宮駅付近で南海本線と合流する。

 

大阪駅(新駅)〜西本町駅間はJR・南海共同営業区間で、西本町駅の南に設けられる分岐ポイントからそれぞれJR西日本と南海の営業区間となる。

 

JR難波駅は現在、関西本線の列車の折り返し駅となっている。「なにわ筋線」が完成した後、特急「はるか」「くろしお」はこの駅と新線を利用して、大阪駅(新駅)へ向かうことになる。このルートが完成すれば、現在、西九条駅〜梅田信号場(地下化が完成後は大阪駅)間に残る単線区間は走らずに済む。所要時間の短縮とともに、列車本数の増便も可能になり、その効果は大きい。

↑南海本線の新今宮駅北側の様子。計画では同付近から地下への路線が造られ、なにわ筋線へ入り、大阪駅(新駅)へ向かう

 

計画では南海の路線は新今宮駅付近から地下へ潜り、JR難波駅から北へ伸びる路線と合流し、大阪駅(新駅)へ向かう。南海の線路幅はJR西日本の在来線と同じ1067mmで乗り入れには支障ない。すでに関西空港線ではJR西日本と南海が一部区間を共用しており、運行や技術的な問題もなさそうだ。

 

なにわ筋線が開業した後には、関西空港線のように、JR西日本と南海の特急が大阪駅(新駅)で顔を合わせることになるのかも知れない。

↑南海の人気特急「ラピート」。なにわ筋線が開業した後には、同特急も大阪駅(新駅)乗り入れとなるのだろうか

 

なにわ筋線の計画で興味深いのは阪急電鉄が絡んでいることである。「阪急十三方面に分岐する路線(なにわ筋連絡線)について、国と連携しながら整備に向けた調査・検討を進めます」としている。

 

開業目標を2031(令和13)年春としているが、同目標には阪急電鉄の乗り入れ計画は明示されていない。阪急電鉄では1435mmという標準軌幅の電車が走る。既存の在来線の線路幅と異なり阪急の電車は新線を走ることができないにもかかわらず、なにわ筋線の計画に名を連ねているということは、阪急電鉄が、線路幅が違うものの、少しでも沿線住民の便利さを考えて、なんとか線路を延ばせないか考えてのことなのだろう。既存の鉄道会社が、将来にむけて強い危機感を感じている現れなのかも知れない。

 

【大阪の新線計画⑥】御堂筋線が乗り入れる「北大阪急行」が延伸

大阪を南北に走る大阪メトロ御堂筋線。1933(昭和8)年5月20日に梅田駅〜心斎橋駅間の3.1kmが開業した日本で2番目に古い地下鉄路線である。後に南は中百舌鳥駅(なかもずえき)、北は江坂駅まで延長されている。

 

江坂駅から先も路線があり、こちらは北大阪急行電鉄という大阪メトロとは異なる企業が運営している。北大阪急行電鉄は大阪府と阪急電鉄などが出資する第三セクター方式の鉄道会社だ。1970(昭和45)年に開かれた日本万国博覧会のために、北大阪急行・南北線の江坂駅〜千里中央駅間5.9kmが設けられた。ちなみに同線と万国博中央口間をつなぐ東西線という路線が造られたが、万博閉幕後に廃止されている。

↑国道423号(新御堂筋)の中央部を走る北大阪急行南北線。写真の車両は北大阪急行9000形

 

南北線の現在の終点駅は千里中央駅で豊中市にある。北隣には箕面市(みのおし)がある。この箕面市西宿までの区間、2.5kmの延伸工事が進む。路線は国道423号(新御堂筋)沿いに設けられる。新線区間には箕面船場阪大前駅と箕面萱野駅(みのおかやのえき)が設けられる。箕面市には阪急電鉄箕面線の箕面駅があったが、新線ができる付近は住宅地が多かったものの鉄道空白地帯で、路線の延伸が長年望まれてきた。

↑地下にある千里中央駅を発車、地上部を走る御堂筋線30000系。北大阪急行の延伸で、今後は北の箕面市まで走ることに

 

新線の終点駅となる箕面萱野駅には、複合型ショッピングセンター「みのおキューズモール」がすでにあり、同店舗と駅が直結される。通勤・通学だけでなく、ショッピングにも便利な路線となりそうだ。

↑北大阪急行南北線の現在の終点駅、千里中央駅。ホームのすぐ上は「せんちゅうパル」という専門店街になっていて便利だ

 

【大阪の新線計画⑦】万博開催に合わせ伸びる大阪メトロ中央線

2025(令和7)年の4月13日〜10月13日開催予定の日本国際博覧会。前回に開催された万博が1970(昭和45)年のことだったから、55年ぶりに大阪で開催される万博となる。

 

開催の予定地は大阪市の夢洲(ゆめしま)。大阪港、最西端にある人工島で、島内には現在、巨大なコンテナターミナルがある。一方で多くが空き地のままとなっており、その空き地が万博会場となる。

 

現在、夢洲へ渡るためには夢舞大橋と、夢咲トンネルを利用しなければならない。夢咲トンネルは万博会場となる夢洲と、南側の咲洲(さきしま)の間の海底部分にある自動車専用のトンネルで、同トンネル内の中間部を活かして、鉄道新線を通す。

↑コスモスクエア駅まで走る大阪メトロ中央線の24系。夢洲駅への延伸時には400系などの新型車両も導入の予定だ

 

咲洲のコスモスクエア駅までは大阪メトロの中央線が走っている。このコスモスクエア駅と夢洲に設けられる夢洲駅(仮称)間に新線が設けられる。ちなみに、終点のコスモスクエア駅と、1つ手前の大阪港駅の間は大阪港トランスポートシステムという事業者が路線の所有者で、夢洲延伸後も同社の所有になるという。

↑咲洲にあるコスモスクエア駅。通常、大阪メトロの中央線の駅と紹介されるが実際は大阪トランスポートシステムの所有駅だ

 

コスモスクエア駅からは前述の夢咲トンネルを利用、夢洲駅までは北港テクノポート線と名付けられ、2024(令和6)年度には完成予定だ。

 

北港テクノポート線は将来、新桜島駅(仮称)まで伸ばす計画もあったが、こちらの計画は明確になっていない。統合型リゾート施設(IR)の構想がコロナ禍もあり進んでいないことが影響しているようだ。

↑コスモスクエア駅が起点の南港ポートタウン線の電車。同路線の一部区間も大阪港トランスポートシステムが所有している

 

↑コスモスクエア駅から大阪湾を望む。右に見えるのが夢洲でコンテナターミナル(右上)がある。右の海底下を夢咲トンネルが抜ける

 

【大阪の新線計画⑧】大阪モノレールの路線の延伸計画もある

大阪市の周辺をぐるりとめぐる大阪モノレールの路線。大阪モノレール線と、彩都線(さいとせん)の名前で親しまれる国際文化公園都市モノレール線の2本の路線がある。

↑大阪モノレールは跨座式モノレールで、1990(平成2)年に南茨木駅〜千里中央駅間が開業した。写真は新型3000系

 

本線にあたる大阪モノレール線は大阪空港駅(豊中市)と門真市駅(かどましえき/門真市)間21.2kmを結び、かつては世界最長のモノレール路線でもギネス世界記録としても認められていた(現在は世界2位)。

 

そんな大阪モノレール線の延伸計画がある。現在の終点駅である門真市駅から南へ8.9km、瓜生堂駅(うりゅうどうえき/仮称)まで延長するプランだ。

↑終点の門真市駅(右上)の先の様子。左右の軌道桁(モノレールのレール部分)の間に折り返し用の軌道桁がある

 

新設される駅は4つ。門真市駅側から見ると、最初の駅が門真南駅(仮称)で、ここで大阪メトロの長堀鶴見緑地線と接続する。次の鴻池新田駅(仮称)ではJR西日本片町線(学園都市線)と、荒本駅(仮称)では近鉄けいはんな線(大阪メトロ中央線)と、終点の瓜生堂駅では、近鉄奈良線の新駅が設けられ、大阪モノレールとの接続駅が生まれる予定だ。

 

この延伸により、現在の営業区間と合わせると既存の鉄道10路線と接続されると言う。東京でもそうだが、都市の中央と郊外を結ぶ路線は充実している。一方で、郊外の町同士を結ぶ環状線路線は脆弱な印象が強い。大阪モノレールの延伸はそうした郊外の町々を結ぶ路線として役立ちそうだ。

 

すでに瓜生堂駅に新設される車両基地の整備が始められている。開業の目標は2029(令和11)年を予定している。

↑門真市の駅の先は軌道桁が約200mで途切れている。8.9kmの延伸計画の一部施設整備がすでに始められている

 

男前なフロントデザインに熱視線! 納車まで2年待ちの新型「ランドクルーザー」をチェック

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、2年以上の納車待ちになっていると言われる“砂漠のロールスロイス”、新型ランドクルーザーを取り上げる!

※こちらは「GetNavi」 2022年3月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のGODカー】トヨタ/ランドクルーザー

SPEC【ZX 7人乗り】●全長×全幅×全高:4985×1980×1925mm●車両重量:2500kg●パワーユニット:3.5LV型6気筒+ツインターボ●最高出力:415PS(305kW)/5200rpm●最大トルク:650Nm/2000〜3600rpm●WLTCモード燃費:7.9km/L

510万〜800万円(税込)

 

デカいボディと“オラオラ顔”が人目を引くカッコ良さ

安ド「殿! 新型ランクルはやっぱりスゴいですね!」

 

永福「うむ」

 

安ド「まず、デカさがハンパないです! なにしろ全長約5m、全幅約2mですから!」

 

永福「たしかにデカいな」

 

安ド「パジェロのロングに乗ってる僕も、デカさにビビリました!」

 

永福「カウンタックを持っている私もビビッたぞ。しかしサイズは、先代ランクルとほとんど変わっていないのだ」

 

安ド「そ、そーなんですか!? ランクルって前からこんなにデカかったですか!?」

 

永福「そうらしい。正確な数値は覚えていないが」

 

安ド「あと、顔のオラオラ感がスゴいです!」

 

永福「男前のオラオラ顔だな。頬髭のような周囲のグリルがカッコ良いぞ」

 

安ド「自宅の近所でリフトアップしたランドクルーザー プラドに乗るタトゥー入りのニーチャンに、『超カッコ良いっすね!』と話しかけられました!」

 

永福「いまは新型ランクルに乗っていればヒーローだな」

 

安ド「なにしろ納車まで2年待ちとも、4年待ちとも言われてますからね!」

 

永福「街を走っていても注目度が凄まじい。カウンタックより振り返る人が多かったくらいだ」

 

安ド「ホントですか?」

 

永福「メルセデス・ベンツ Gクラスのドライバーからも強烈な視線が突き刺さった。新型ランクルにはGクラスもたじたじなのだ」

 

安ド「日本人として誇らしい気持ちになれますね!」

 

永福「付け加えると、アルファードのオーナーからも凄まじい勢いで注目されている」

 

安ド「そうなんですか!」

 

永福「これまでオラオラ顔の帝王は同社のアルファードだったが、新型ランクルの登場で、王座が入れ替わったのだ」

 

安ド「そうだったんですか!」

 

永福「アルファードのオーナーの多くが、ランクルに買い替えたがっているらしい」

 

安ド「考えてみればランクルには、7人乗りがありますからね!」

 

永福「実はミニバンの代わりも務まるのだ」

 

安ド「ただ、燃費はイマイチですね。3.5LV6ツインターボで415馬力。カタログ燃費は7.9km/Lですけど、実燃費は5km/Lちょいでした!」

 

永福「先代型は4.6LのV8で、4km/Lくらいしか走らなかったから、かなりの改善だがな」

 

安ド「あと怖かったのは、周囲から『盗まれるから注意しろ』って言われたことです。借りている間じゅう、ハラハラドキドキでした」

 

永福「私も、一度もクルマから離れなかったくらいだ」

 

安ド「新型は指紋認証システムが導入されましたけど、果たして盗難防止に役立ちますかね?」

 

永福「ドロボウさんに聞いてみないとわからんな」

 

【GOD PARTS 1】指紋認証スタートスイッチ

窃盗団もお手上げ? の新世代盗難防止機能

先代のころから「盗難車ナンバーワンモデル」という不名誉な称号を獲得していたランクルが導入した新兵器です。3人までの指紋を登録できて、それ以外のユーザーがスタートスイッチをタッチしてもエンジンが始動しません。

 

【GOD PARTS 2】盗難防止グッズ

アナログアイテムで視覚的にもクルマを守る

撮影車には「ハンドルロック」と「タイヤロック」が搭載されていました。メーカーが用意してくれる広報車を長年借りてきましたが、初の経験です。物理的な盗難防止グッズというのは、窃盗団に心理的な抑止力をかけられて効果的です。

 

【GOD PARTS 3】10速AT

ゴツい見た目でスムーズな変速を実現

ATは段数が多いほど変速時のつながりが滑らかになりますが、10段というのはなかなかレアです。まあATなのでシフトチェンジは機械が行ってくれますが、MTだったら大変なところでした。脇には副変速機の操作レバーなどもあります。

 

【GOD PARTS 4】後席用コントロールパネル

ボタンも数多く高級車らしい

車幅がかなり広いクルマなので、フロントシート間にあるセンターコンソールボックスも大型です。両開き構造のため後席からでも使いやすく、デザイン的にも重厚な雰囲気ですが、背面にはボタンがたくさんあって高級車らしいです。

 

【GOD PARTS 5】ドライブモードダイヤル

アナログ感覚の操作でモードセレクト

ドライブモードは「AUTO(自動調整)」「DIRT(未舗装路)」「SAND(砂地)」「MUD(泥濘路)」「DEEP SNOW(深雪路)」「ROCK(岩場)」があり、路面に合わせて6つのモードからセレクトできます。ダイヤルや上下のボタンで設定しますが、ダイヤルというのはアナログ感があって良い感じです。

 

【GOD PARTS 6】アンダーフロアビュー

激烈な悪路では足下を確認して走る

ディスプレイに車体下の画像「アンダーフロアビュー」を表示できます。これが何のために必要かといえば、悪路を走る際に路面の凸凹や前輪の位置などを確認するためです。相当な荒地でも安全に配慮しながら走行できるのです。

 

【GOD PARTS 7】エンジン

排気量を小さくして環境性能を向上

SUVにピッタリの個性を持つディーゼルエンジンと、ガソリンエンジン(写真)が設定されています。後者は先代型より排気量が減って3.5LV6になりました。アクセルを踏み込むと多少ウルサイですが、そのぶん環境性能は良いと思います。

 

【GOD PARTS 8】スペアタイヤ

シティ派を気取りつつも車体下にしっかり搭載

オフローダーながら、スペアタイヤをボディ背面ではなく車体後部のボディ下に搭載しています。ジムニーやパジェロなどとは違い、そこは都会的なスタイルを崩さないようです。ただ、車高が高いので取り外しはラクそうです。

 

【GOD PARTS 9】3列シート

ミニバンから乗り換えても安心

車内への乗り込み方など、ミニバンと比べると利用しにくい部分はありますが、3列シートの存在を頼りにミニバンから乗り替えるユーザーもいるようです。電動収納式で荷室側からボタン操作で完全収納できます。

 

【これぞ感動の細部だ!】フロントデザイン

何本もの水平ラインで重厚さをアピール

オフロード走行が得意なクルマですが、高級車ということもあって、重厚に何段も組まれた大型グリルが採用されています。人を寄せ付けないオラオラさがありながら、シャープで品格のようなものも感じられます。かなり凸凹していそうですが、実際に触れてみると意外と平坦でした。

 

撮影/我妻慶一

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

探偵ナイトスクープを通じて亡き父親が関わった愛車を入手!お笑いコンビ「レインボー」池田のちょっと泣けるクルマ選び

人生初となるクルマ選びは、大きな決断となることに間違いはありません。そんな重大な決断をテレビ番組に委ねたのが今回、お話を聞いたお笑いコンビ「レインボー」の池田直人さん。「芸人さんだから、ネタのためだからでしょ!」と早合点することなかれ。番組に依頼した裏側には、亡き父親の知られざる思い出を探るという理由もあったのだ。

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:手束 毅)

 

●レインボー 池田直人/1993年大阪府生まれ。NSC東京18期生。日本テレビ系列「ぐるぐるナインティナイン」おもしろ荘で優勝するなど、お笑い芸人として活躍。単独ネタライブなどを定期的に開催している

 

酔った勢いで『探偵!ナイトスクープ』へ応募

——まず聞きたいのが、なぜ番組に依頼されたかということです。池田さんは関西圏で絶大な人気を誇り、視聴者からの依頼を探偵局員が調査し解決する『探偵!ナイトスクープ』(ABCテレビ)へ「他界した父は、単身赴任中、クルマの部品を作っていたそうです。初めて購入するクルマは、父の作った部品が使われたクルマがいいので、探すのを手伝って欲しい」と依頼されていましたよね?

 

池田 まず、大前提として僕も亡くなった父さんもあの番組が大好きだったんです。僕は配信サイトで過去、放映された番組を全部見返すくらい好きで、視聴者からの依頼を一緒に調査してくれる素敵な番組やなあと。応募する直接の理由は、自動車免許を昨年3月に取ったんですよ。

僕のまわりは自動車免許を持っていてもクルマを所有していないペーパードライバーばかり。せっかく免許を取ったのにクルマを買わないと僕もペーパドライバーになってしまうと購入に向けて探しはじめていたんです。

どんなクルマを買えばいいかと探すうち、ふと「亡くなった父さんがクルマの製造に関わる仕事をしていたなあ」みたいなことを思い出したのですが、それはちょうど番組を観ていたときのことでした。

あの番組って最後に「視聴者からの募集で成り立っています」ってエンドロールが流れるじゃないですか。なら、番組で父さんが関わったクルマを探してもらおうと思いついたんです。

ただ、自分が芸人なので躊躇もしました。でも、ちょっと酒が入っていたので「よし、応募しちゃえ」と依頼文を作ってすぐに送ったんですよ。

まあ、採用されなくていいや、くらいに思っていたんですけど、別の収録でテレビ局に入っていた時に楽屋をコンコンとノックされ「『探偵!ナイトスクープ』のもんです」みたいな感じでスタッフさんがいらっしゃいました。

 

——依頼されるときお名前も芸名を名乗ったのですか?

 

池田 はい、レインボーの池田ですと名乗り応募しました。なので「本当に依頼文を送られましたか? もしかしたらあなたの名前を使って応募した人がいるかもしれないですよ」とスタッフさんから問い合わせされましたが、いや、俺が送りましたと。僕のマネージャーや相方も知らなかったので、いつの間に送ったんやと驚かれました。

 

——芸人の方が番組に依頼されたと聞くと、出演がすでに決まっていたと思ってしまいますがそうではなかったのですね。

 

池田 そうではなかったです。でも最初、僕は芸人ですという態度をとるつもりだったんですけど、実際に後で番組を観たら芸人感なさすぎて……。テレビ画面の中に映っていたのは普通の好青年でした(笑)。

 

——お笑いの世界に入って一番のサプライズだったのではないかと思いますが、採用された時どうでしたか。

 

池田 「え? やった! 僕でいいっんすか」みたいな感じでした。採用されなくて当たり前ぐらいに思っていたので、めっちゃうれしかったです。

 

——番組では、お父様がお亡くなりになった時、池田さんのお母様がパニックとなり遺品となるものを全て処分されたとお話されていました。実際、番組のスタッフが来た時、お父様がどこで働いていたなど、どれくらい理解していましたか。

 

池田 実は父さんの仕事内容はあまり知らなかったんです。転勤とか仕事を転職したとか、九州にある工場へ技術を教えに行っていたくらいは聞いていたのですが……。

 

——番組のスタッフがお父様の会社を突き止め、実際に工場へ訪問されていましたね。作業されていた工場へ行った時はどういう心境でした?

 

池田 もしかしたら父さんは僕に適当なことを言っただけで嘘かもしれないと不安を抱える中、大勢のスタッフさんを連れて行くのが申し訳なさすぎて……。もし、職種が違っていたり、職場が見つからなかったらどうしよう、というプレッシャーの方が強かったですね。

もう10年前くらいの記憶だったので、間違っていたどうしようかな、みたいなのが収録中はずっと付き纏っていました。

 

父が関わったクルマはレクサスCT200hだった!

——お父様がクルマの金型、詳しくいうと「レクサスCT200h」のフロントガラスのフレームに関わる金型を作っていることがわかりました。生前、お父様は仕事の話をすることはなかったのでしょうか。

 

池田 全然しなかったですね。本当に家庭に仕事のことを持ち帰るような父親じゃなかったので。唯一聞いたのが「クルマを作ってんで」くらいの話。クルマの金型や何かっていうことは言っていたのですけど、ちっちゃいながらに覚えているのが「俺が関わったクルマが世の中を走ってる」。それだけの言葉を握りしめながら収録に挑んでいました。

 

——お父様が仕事で関わっていたクルマを買えば、お父様が触っていた部品が必ず使われている、と番組でお話されていましたがある意味“形見“とのいえる車種がわかりました。番組のスタッフが車両を販売している中古車屋さんまで見つけましたが、対象となるクルマがレクサスCT200hと聞いても、あまりピンときていないようでしたね。

 

池田 レクサスCT200hとざっくり聞いても、「ああ、レクサスといえば高級車だな」と、それだけはわかりました。実際に車両を見せてもらったときも、値段を最初に教えてくれなかったので「えっ、レクサスを買うのは無理やで……」、とずっと心の中で思っていました。

高級車がどれくらいの価格相場なのかもわかっていなかったんですよ。中古車だから相場は300万円くらいじゃないかだとか、もしかしたら500万円って言われるかもしれないなと。だから放送を見た方ならわかると思いますが「150万円です」といわれたときにすごく安堵しているんですよ、僕(笑)。この値段ならなんか頑張れそうだなと。そのときはそんな感情でしたね。

探してもらったクルマが高すぎたらどうしようと。でも、これだけみんなで中古車屋さんに来ているから買わないわけにはいかないな、って感じでした。

 

——たしかに、レクサスといえば高級車のイメージですもんね。

 

池田 あの番組のスタッフさんが凄いのは、その場でいろいろと調べてくれるんですよ。「ここの中古車センターにはクルマがありそうだからここに行きましょう」みたいな感じで、父親が働いていた工場がある福岡県の飯塚から久留米までクルマで1時間ぐらいかけて行ったんです。

「レクサスCT200hを見つけましたよ! しかも10年前に走っていたもので親父さんが金型を作っていた時期の車両なので、もう(依頼され希望していたクルマ)そのまんまっすよ!」って。

 

——実際にクルマを見たときの印象はどうでした?

 

池田 やった、見つかったと。しかも父さんが働いていた時期に作られたものだと聞いた上でお店に行ったら、ボディカラーが真っ赤。「え、赤!」というのが第一印象でした(笑)。よりによって赤っすか、みたいな。もっと目立たないシンプルなカラーでよかったのに、というのが第一印象です。

 

——ボディカラーは別として外観やサイズなどいかがでしたか。

 

池田 レクサスと聞いた時、運転免許を取って間もなく、しかも運転に慣れていないのでボディが大きかったら嫌だなというのがあったんですが、いざ車両を見たら何か本当にかわいらしいいい感じで、乗りやすそうだなという印象でした。

実際、乗ってみても運転しやすくて小回りが利くしハイブリッド車で静かやしと、何かいいとこだらけだなって感じがして、めちゃくちゃ気に入りました。

 

実はクルマへのこだわりは……

——人生初となるクルマを手に入れたわけですが、池田さん的に手に入れたかったクルマへのこだわりはなかったのでしょうか?

 

池田 実は、薄々お気づきかもしれないですけどクルマに興味があまりなくて……(苦笑)。将来子どもができたらミニバンに乗りたいなとかのイメージはあったんですけどね。

今は中古車やし、父さんの形見とも言えるこのクルマで運転やクルマに慣れていこうかなと思っています。正直、番組でレクサスというブランドを出されてもピンとこなかったぐらい全然クルマに疎いので……。

 

——なるほど、池田さんくらいの年代だとクルマ好きと話すとオタクだと認識されるとも聞きますもんね。子どものころ、亡くなったお父様とドライブに行かれることはありませんでした?

 

池田 めっちゃあります。父さんはクルマだけでなく、ずっとバイクに乗っていたので、後ろに乗っけてくれたりとか。2人とも温泉大好きだったので、夜8時ぐらいに父さんが仕事から帰ってきて「今から温泉に行くけど一緒に行くか?」と2人でクルマに乗って出かけたり。そういう感じで、父さんとドライブはよくしていた記憶があります。

 

——話を番組の取材時に戻しますが、実際にお父様が働いていた工場に足を踏み入れた時、どう感じましたか。

 

池田 工場で製造現場も見せてもらったのですけど、鉄を敷いて上からプレス機で“バコン”と金型を作るみたいな感じの工場でした。迫力に圧倒されましたね。その際、社員の方が言っていたのですけど、僕が金型を作るところに立たせてもらったら「マジで親父さんみたいですね……」とみんな目がうるうるしてきたんですよ……。

今でもそんなに慕われているほどしっかり働いていたんやなと。いまスマホの待ち受け画像はその金型工場で撮った写真なんですけど、ここで親父は働いていたんやなと、僕も仕事を頑張りたいという熱量は入りました。

↑お父さんが働いていた工場の写真を今でも待ち受け画面にしている

 

——番組をきっかけにクルマをその場で購入することになりました。番組の収録が昨年の6月、実際に手元に届いたのが8月でしたよね。

 

池田 購入時はもちろん、その後も駐車場が見つかってなくて購入後の手続きが進まなかったんですよ。それでマンションの下の駐車場が空くかもと、抽選待ちみたいな感じで待っていたのですが、見事8月の頭に当たって。じゃあ車庫登録もできるし早く車両を持ってきてくださいとお願いしました。マンションの駐車場が契約できたのはラッキーでしたね。

 

——納車されたとき、初めてのドライブをレインボーのYouTubeチャンネル(レインボーサブチャンネル)で収録・公開していましたよね。

 

池田 初めて運転した時はめっちゃ怖かったです。いきなり海に行こうみたいな感じになったので、無事に辿り着けるんかな、と。本当に何を触っていいのかわからず、クルマ特有のこれなんのボタンやみたいな。かなり戸惑いましたね。

 

——確かガソリンスタンドで給油をした後、目的地の海辺にある駐車場に停めた時、ボンネットが開いていたような……。

 

池田 僕は気がつかなかったのですが、そうらしかったです。ボンネットだけでなく、給油口のカバーがずっと開いてもいました。いらんところをいっぱい触っちゃいましたね。

 

——納車されてから約半年経ちましたが、もう運転には慣れましたか?

 

池田 はい、慣れました。ガソリンスタンドも、ちっちゃいころから両親の運転に同行していたのでやり方を覚えていたのか、いまはセルフでの給油も全然大丈夫です。ただ、年明けにガソリンスタンドを出るとき縁石にクルマのリアドアとフェンダーを擦ってしまいました……。そのことをSNSに上げたらけっこう反響があって、お笑いライブでもいじられぱなしでした(苦笑)。

 

——けっこうクルマの運転はされているのですか?

 

池田 そうでもなくて週1、2回くらいです。自宅からライブを行う埼玉県の大宮や千葉県の幕張にある劇場までの移動が主な目的です。初めて首都高乗った時は怖かったですが、運転自体もう慣れました。むしろ、首都高よりも細い道のほうが不安を感じます。以前、友達の家に向かうとき細い道に入っちゃって、大変な思いをしたんですよ。東京の住宅地は、ほんとうに道が細いし一方通行が多いので大変です……。また、渋滞に1回はまりましたけど、なんか嬉しかったです。ああ、これが渋滞だな、初渋滞だと(笑)。

 

——クルマを擦った以外でトラブルはとくになかったですか?

 

池田 気がつかないうちに、ヘッドライトをハイビームにしていたらしく、前のクルマを煽っていると勘違いされたことがありました。前に停車していたクルマが、信号が赤から青に変わっても全然進まなくて、警告音を鳴らしたら運転手が降りてきて「ねえ、ライトが眩しいの、わかってる?」って。最初、意味が全然わからなくて戸惑っていたら、「ああ初心者か、じゃあいいや」みたいな感じで戻っていったんですけど、それはめっちゃ怖かったです。

 

マジでドライブデートがしたい!

↑この部分のパーツの一部をお父さんが作っていた

 

——クルマを所有したことで、いままでとは世界が変わった!なんて感じることはありますか。

 

池田 移動手段が公共交通機関やタクシーだけでなく、新たに1つ増えたことで行動範囲が広がりましたね。深夜に友達に会いに行けたり、サウナが好きなんですけど入った後は電車に乗りたくないんじゃないですか。それもクルマがあることで解決できるのがうれしかったりと、生活がすごく優雅にはなりました(笑)。

ただ、クルマの維持費は高いです……。月極の駐車料金や自動車の保険はめっちゃ高いっすね。こんなにかかってしまうんだと驚きました……。

 

——確かに維持費は高いですよね……。そういう意味ではクルマを持ったことはプラスマイナスでいうとどうでしょう?

 

池田 将来子どもができたときとかにミニバンを買ったとして、そこで初めて運転をするのは怖いし、彼女できたとき、いきなりレンタカーを借りてドキドキしながら運転するのは恥ずかしいので、このクルマを購入したことは将来への投資やと思ってるんですよ。なのでプラスではあると思っています。

 

——さっきから家族ができたらミニバンと、繰り返されてますね(笑)

 

池田 確かに、めっちゃ言ってますね(笑)。自分の両親はほんと仲が良くて、その影響で家族を持ちたいという願望は強いかもしれません。

小さいころ、月に何度かおばあちゃんの家に1人で行かされることがあったのです。当時は僕のお出かけできるための訓練だと聞かされていましたが、いま思えばきっと両親二人で旅行などに行っていたのかもしれないですね。微笑ましいです(笑)。

 

——先ほど、ライブ会場までクルマで向かうと話されていましたが移動中にネタを考えるなどされることはあるのですか。

 

池田 まだ運転に集中しないといけないという意識が高いので、そこまでの余裕はないですね。ただ、運転すると性格が変わるとよく聞くんですけど僕は変わらなくて、なんなら人を乗せた時はトークスキル上がるぐらいの感じなんですよ。

普段だと何かこういう話をしようかなとか、次はこうした方がいいかなと頭の中で組み立てながら話していたりとか、あの話をしたいなとかよぎる瞬間があるのですが、集中して運転してると思ったことをポンポンポンと言えたりとか。

同乗しているみんなも運転手にちょっと優しくなる気がしてくれて、なんか逆に話しやすいなとかは感じています。

 

——クルマに芸人さんなどを同乗させることは多い?

 

池田 あんま喋ったことがない後輩とかを、劇場から新宿まででよければみたいな感じで乗せると、電車では話せない会話を車内でできるんですよ。乗せたコから僕があまり知らない芸人についての話を聞くと、それは面白いな、そいつと今度しゃべりたいな、みたいに劇場からの帰りが楽しくなりました。

 

——ドライブデートもやるようになったとか?

 

池田 ほんと、このクルマにまだ女の子を乗せていないんですよ……。マジでドライブデートしたいですね。

ただ、僕がクルマを購入してやりたかったのが幕張の劇場までみんなを乗せたりとか、羽田空港とかもみんなで一緒に移動できると楽やな、とかだったんですよ。そういう意味ではやりたいことをやれているし、クルマが一種のコミュニケーションツールになっているなという感じがしました。

今後、クルマでやってみたいことは、北海道とかに行くとき、みんなとクルマをフェリーに乗せて目的地を周り、帰りはまたクルマに乗って帰るみたいなことですね。楽しそうだなと。

 

——デートではないですが、池田さんといえばお母様を大切にされていることでも有名です。このクルマにお母様を乗せてドライブされたことはないのですか?

 

池田 大阪の実家に帰った時、駅までクルマでお母さんが迎えに来てくれた時、実家のクルマを運転したことはあります。ただ、このクルマではまだないですね。

自分のクルマを大阪まで運転して帰るのが辛そうだし、また大阪からの帰りはもっと辛そうだし。なによりまだお母さんが僕の運転を怖がるんですよ……。このクルマでお母さんとのドライブはまだタイミング的に早いかと。

 

——最後に、番組を通して購入したクルマですが今後、どのように付き合おうと思っていますか? 簡単には手放せないですよね?

 

池田 いやでも、10年前のクルマだし、車検が2年に1回ですよね。今後、車検のタイミングで買い換えるかもしれません。

 

——え? まだ走行距離はたしか2万kmそこそこですよね。まだ当分乗れますよ。

 

池田 そうなんですか! じゃあ見積もりが高くて躊躇している擦ったボディを綺麗にしようかな。でも、家族ができたらミニバンに即、買い替えます(笑)。

 

 

 

日本初の地下鉄を生み出した「早川徳次」−−その紆余曲折の生涯を追う【後編】

〜〜鉄道痛快列伝その4 東京地下鉄道創始者・早川徳次〜〜

 

鉄道史の中で、もしこの人が出現しなかったら、日本の鉄道はここまで発展しなかったろうという〝キーマン〟がいる。早川徳次(はやかわのりつぐ)もそのひとりであろう。

 

今も「地下鉄の父」と慕われる早川徳次。地下鉄の将来を100年以上も前に予見し、先頭に立って日本初の地下鉄を造り上げた。現在の地下鉄路線網の充実ぶりを見れば、その功績は計り知れない。後編は、ライバルとも言える五島慶太との関係や晩年について追る。

 

*絵葉書は筆者所蔵、写真は筆者撮影および東京メトロ、地下鉄博物館提供

 

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【早川徳次の生涯⑦】先進的な技術が数多く採り入れられた

日本初となった浅草〜上野駅間の地下鉄路線。当時としては斬新な技術やサービスが多く取り入れられている。それは根っからの鉄道マンらしい徳次の創意工夫が感じられる。振り返っておこう。

 

導入した車両は1000形で1927(昭和2)年に日本車輌製造で10両、1929(昭和4)年に汽車製造で11両の計21両が製造された。地下鉄車両として今では常識となっているが、車両すべて鋼鉄製の不燃車両だった。当時は台車や床下機器を除けば木造というのが当たり前だった時代で、その先進性に驚かされる。車両の色は黄色。地下でも良く見え、また明るく感じさせる色の採用で、さらに安全への配慮もあったのであろう。

 

さらに、日本の車両としては初めて間接照明を採用している。照明のまぶしさを乗客に感じさせない工夫だった。

↑地下鉄博物館で保存される1000形のトップナンバー1001号車。鉄道用電気車両として初めて国の重要文化財に指定された

 

1000形は側面に3つの扉が設けられている。この扉は当時としては珍しかった自動扉だった。当時は手動扉が当たり前の時代だった。自動は珍しかったこともあり、扉が自動で開閉するその動きに戸惑う乗客も多かったようだ。ほかにも内装は鋼板に木目焼き付け印刷を施していた。要は木目調の内装だったわけだ。今でも十分に通用する内装で、その凝り方に驚かされる。

 

つり革にはリコ式吊り手と呼ぶ、バネで上へ跳ね上がる方式が採用された。利用するときには乗客が、上部から引いて使うものだ。筆者も子ども時代にこのつり革を見た覚えがあるが、バネが戻る際に乗客にあたって負傷、眼鏡を壊したり、バネ部分に指が挟まれたりと、トラブルが起きたことから、1960年代中盤には消滅している。

↑自動扉が採用された1000形。車掌がドアスイッチを操作して開け閉めする当時としては斬新な車両だった

 

運行設備や駅の設備にも最新の技術が取り入れられていた。例えば開業時から使われていたのが「打子式自動列車停止装置」と呼ばれる装置である。列車の追突事故を防ぐために取り入れた装置で、列車が赤信号を見落として進行すると、自動的に非常ブレーキがかかって列車を停止させる装置だ。今で言う「ATS」の導入である。当時は、こうした安全装置を取り入れていた路線は稀だった。すぐれた装置で、銀座線では開業後から1993(平成5)年まで実際に使われていたそうだ。徳次はこうした、列車の安全にも非常に気を使ったことが分かる。

↑地下鉄博物館で保存される「打子式自動列車停止装置」。同装置は開業時から平成期まで実際に使われていた

 

利用者への対応も凝っていた。例えば、日本初の自動改札機(回転式改札口)が料金授受に使われていた。機械に10銭硬貨を投入すると、目の前の十字型の木製バーのロックが外れ、1人のみ入場できるという仕組みだった。切符の発行、そして授受という作業は大変である。そこでこうした機械を導入したのであろう。かつて現場で切符切りの体験がある徳次だけに、何とか省力化できないかと考えたのであった。

 

現在、この自動改札機のレプリカが、地下鉄博物館と上野駅の改札口横に展示されていて見ることができる。

↑開業当時の絵葉書。説明には「日本最初の自動改札口に十銭白銅を自動電話の様に入れて棒を押せば場内にはいれます」とある

 

【早川徳次の生涯⑧】ネーミングライツや直営ストアを生かす

徳次は、現在の鉄道各社で取り入れている工夫もすでに採用していた。例えば駅の名前に企業名を入れること。いわゆるネーミングライツだ。1932(昭和7)年に開業させた区間で「三越前駅」という駅名を付けている。三越百貨店の駅前だということがすぐに分かる駅名である。

 

このネーミングライツは三越側からの申し出だったのだが、企業の駅名をつける代わりに、駅の設営費用を全額負担してもらった。当時としては非常に珍しい駅の造り方でもあった。

 

地下鉄だけの収益にとどまらず、多角的な経営にも乗り出している。例えば1929(昭和4)年、浅草に直営の地下鉄食堂を備えた雷門ビルを設けた。翌年には、上野駅構内の2階地下道に日本最初の地下商店街「上野地下鉄ストア」を開いた。地下鉄ストアは、その後に日本橋や新橋などにも設けている。

 

利用者にとっては、行き帰りにぶらりと立ちよって気軽に買い物ができるわけで、なかなか目の付け所が鋭かったことをうかがわせる話だ。

↑地下鉄博物館に展示される地下鉄ストアのポスター。中に「ちん餅即売」の文字があるが、お金を出して餅をつくことを、ちん餅と呼んだ

 

【早川徳次の生涯⑨】新橋駅まで延伸が完了。そして次へ

1927(昭和2)年に上野駅〜浅草駅間ではじまった日本初の地下鉄路線は、徐々に路線区間を延ばしていく。まずは1930(昭和5)年1月1日に上野駅〜万世橋駅(仮駅)1.7km区間が開業した。1933(昭和6)年の11月21日に万世橋駅(仮駅)〜神田駅間の0.5kmが開業し、仮駅だった万世橋駅が廃止されている。

 

地下鉄延伸という事象のみを追っていくと、浅草駅〜上野駅間開業後の徳次の人生は順風満帆だったように思う。ところが、人生それほど甘くない。特に人の一生には時代背景や、経済の動きという〝重し〟に大きく影響されることがある。

 

日本初の地下鉄が誕生したころは、ちょうど世界経済の転換期でもあった。1929(昭和4)年から翌年にかけて世界は恐慌に包まれ、日本では昭和恐慌と呼ばれる時期に入る。

 

1930(昭和5)年11月に神田駅まで路線を延伸させたものの、東京地下鉄道は資金繰りに苦しんでいた。暮れまで資金繰りで東奔西走していた徳次だが、どうにもならなかった。最後の手段として郷里の地方銀行の東京支店長宅に駆け込んで融資をお願いしたとされる。大晦日に無事に融資が受けることができて、寸でのところで倒産を免れるといった経験もしている。

↑銀座駅に停車する浅草駅行き1000形電車。絵葉書には「交通日本の誇り地下鉄道の美観」とある

 

その後に「地下鉄融資団」が結成されたこともあり、路線の工事は無事に進められることになった。

 

1932(昭和7)年、4月29日には神田駅〜三越前駅間の0.7km、12月24日に三越前駅〜京橋駅間1.3kmが開業。さらに1934(昭和9)年の3月3日には京橋駅〜銀座駅間0.7kmが、6月21日は銀座駅〜新橋駅間0.9kmを開業させている。徳次53歳のことだった。ロンドンではじめて地下鉄に出会ってからすでに20年の月日が流れていた。

 

現在、銀座線は浅草駅〜渋谷駅間を走っているが、徳次は将来的に新橋駅と品川駅間に路線を造ろうとしていた。その夢が叶ったならば、銀座線は浅草駅〜品川駅間を走っていたかもしれない。また、そのまま地下鉄の路線造りが順調に進んだならば、それこそ「地下鉄王」となったかもしれない。しかし、徳次の前に立ちふさがった男がいた。

 

【早川徳次の生涯⑩】新橋駅で五島慶太と競り合いが始まった

東急グループの創始者とされる五島慶太(ごとうけいた)である。五島の人生は徳次の人生をなぞるような道をたどっている。元々は教師を目指し、教壇にも立ったのだが、性に合わなかったようで、辞めてしまう。そして鉄道院へ。徳次が地下鉄免許を申請したころのことで、このあたりですでに接点があったようである。

 

後に鉄道院も退職、当時、渋沢栄一が進めていた田園調布を宅地化するために予定された鉄道路線計画に、阪急電鉄創始者の小林一三に請われて参加するようになる。実業の道が水にあったのだろう。その後は辣腕を発揮して、池上電気鉄道、目黒蒲田電鉄、玉川電車などの会社をまとめあげ東京横浜電鉄、のちの東京急行電鉄(現・東急電鉄)を造り上げていく。

 

この五島慶太が地下鉄の将来性を予感したのか、「東京高速鉄道」という地下鉄の会社の経営に乗り出したのである。1934(昭和9)年9月5日に会社設立、1939(昭和14)年1月15日に渋谷駅〜新橋駅間を開業させた。

↑東京高速鉄道が開業時に新造した100形電車。地下鉄博物館には129号車の一部が保存されている

 

「東京高速鉄道」は五島慶太が仕切った会社らしく、車両などは実用一点張りで造られている。最初の車両は100形だったが、電装品はグループ会社の東京横浜電鉄と共用、室内灯も白熱灯、車体は鋼製ながら、床は木ばりだった。対して、電動機は東京地下鉄道の1000形にくらべて多く搭載。そのため走行性能に優れていた。このあたり五島の実利を重んじる性格が見て取れる。

↑開業時の東京高速鉄道の路線図裏には新橋駅と渋谷駅の様子や運賃が記されている(筆者所有の印刷物を再構成したもの)

 

五島は新橋駅で相互乗り入れをすることを徳次に持ちかけたが、徳次には先発組としての意地があったのだろう。頑として聞かなかった。

 

そのために「東京高速鉄道」の新橋駅は、開業時に「東京地下鉄道」の新橋駅と一枚の壁を隔てた場所に設けられた。乗客は乗り換えるためには地上に出て、再び地下へ入るといった不便なことになっていた。

↑東京高速鉄道の元新橋駅ホームは、現在未公開となっている。「新橋」の駅名は右から記すなど時代を感じさせる 写真:東京メトロ提供

 

徳次と五島は似ているようで、性格は真逆だったようだ。乗り入れに関して何度も対面したが、互いに妥協することはなかった。新橋駅の壁を取りのぞき、線路をつなげれば互いの線路をすぐに走れるように造られた電車だったのだが、話し合いがまとまることはなかった。

 

【早川徳次の生涯⑪】追われるように会社を去った徳次だったが

徳次は京浜急行電鉄(当時は京浜電鉄と湘南電鉄)へ将来、新橋駅〜品川駅間の地下鉄路線造りを一緒にやらないかと持ちかけ、五島の乗り入れを阻止しようとする。

 

対する五島は東京地下鉄道の株の買い占めに走った。敵対する鉄道会社の株を買い占めるのは、五島の常套手段だったが、そんな五島についたあだ名は〝強盗慶太〟。力で敵対されては徳次もたまらない。

 

ついに、徳次も話し合いに応じて1939(昭和14)年9月16日には東京地下鉄道と東京高速鉄道との直通運転が開始されたのだった。東京高速鉄道の開業後8か月間使われた新橋駅ホームは、その後使われなくなっている。現在も残っているものの〝幻のホーム〟となり、旧線路は留置線として、またホームは未公開(見学会が行われることもあり)となっている。

 

直通運転が行われるようになったものの、2社はいろいろな面でいがみ合い不都合なことが生じていた。そこで、当時の鉄道院監督局鉄道課長だった佐藤栄作(後の首相)が仲裁に乗り出した。1940(昭和15)年6月に両社に仲裁案が提示され、社長に就任していた早川徳次は東京地下鉄道を去ることになった。59歳のことだった。

 

実は、この仲裁案には裏があった。五島も東京高速鉄道の役員を辞めたのだが、それは一時的なもので、また戻れると解釈できるような文言が含まれていた。一方で、徳次が辞めるにあたって、そうした文言は含まれていなかった。後世から見ると仲裁策にはめられたといって良い。では五島が得したかといえば、そうとも言えなかった。

↑彫刻家・朝倉文夫作による早川徳次胸像。銀座線銀座駅と丸ノ内線銀座駅を結ぶコンコース内に設置される 写真:東京メトロ提供

 

1941(昭和16)7月4日には帝都高速度交通営団(営団地下鉄)が設立されて、東京地下鉄道と東京高速鉄道の運営は、営団に継承されてしまうのである。営団地下鉄は国と東京都が出資した団体だった。徳次、五島ともに国と東京市の策にしてやられたわけである。両者痛み分けといった結果になった。

 

地下鉄をわが手で造った早川徳次は社を追われる形になったが、社員からは非常に慕われた経営者だったようだ。追われた翌年の1941(昭和16)年5月には新橋駅に重役、株主、社員有志の寄付を集めて造られた胸像が立てられている。寄付金は胸像造りには足りなかったが、〝東洋のロダン〟と呼ばれた彫刻家、朝倉文夫もその思いを感じて制作したとされている。1977(昭和52)年には地下鉄開通50周年を記念して銀座駅のコンコースに移されている。

↑東京の地下鉄に追随するように1933(昭和8)年5月20日に梅田駅〜心斎橋駅間を大阪メトロ(旧大阪市営地下鉄)御堂筋線が走った

 

早川徳次によって始まった日本の地下鉄の歴史。東京には現在、東京メトロの路線195km、東京都交通局の路線が109km、のべ304kmの地下鉄路線が延びている。また全国の主要都市に地下鉄路線網がはりめぐらされている。

 

地下鉄の父と称される早川徳次がこの繁栄ぶりを知ったとしたら、どう思ったであろうか。

 

最後に徳次の晩年に触れておこう。59歳で東京地下鉄道の社長の座を去った徳次は、この年に緑綬褒章を受章している。そのわずか2年後の1942(昭和17)年11月29日、61歳の若さで逝去している。故郷に若者たちを育てるために「青年道場」の建設を目指していたさなかだった。

 

初の地下鉄開業という大事業を成し遂げた男の最後としては、あまりに悲しく、寂しい終わり方だったように感じる。

 

【information】

↑地下鉄博物館で開かれている「早川徳次 生誕140周年記念展」。3月13日までなので見学はお早めに

 

地下鉄博物館(東京メトロ東西線・葛西駅下車)では3月13日(日曜日)まで「早川徳次 生誕140周年記念展」と題し、〝地下鉄の父の軌跡〟を様々な資料とともに紹介している。興味をお持ちの方は訪ねてみてはいかがだろう。金曜日限定だが14時30分〜「『東京地下鉄道工事乃状況』で振り返る日本初の地下鉄建設」の特別映画上映会も開かれている。

 

*文中の敬称略
*参考文献:「地下鉄誕生 早川徳次と五島慶太の攻防」/中村建治(交通新聞社)、「地中の星」/門井慶喜(新潮社)

日本初の地下鉄を生み出した「早川徳次」−−その紆余曲折の生涯を追う【前編】

〜〜鉄道痛快列伝その4 東京地下鉄道創始者・早川徳次〜〜

 

鉄道史の中で、もしこの人が出現しなかったら、日本の鉄道はここまで発展しなかったろうという〝キーマン〟がいる。早川徳次(はやかわのりつぐ)もそのひとりであろう。

 

今も「地下鉄の父」と慕われる早川徳次。地下鉄の将来を100年以上も前に予見し、先頭に立って日本初の地下鉄を造り上げた。現在の地下鉄路線網の充実ぶりを見れば、その功績は計り知れない。今回はその早川徳次の半生を追ってみる。

 

*絵葉書は筆者所蔵、写真は筆者撮影および東京メトロ、地下鉄博物館提供

 

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【早川徳次の生涯①】多くの実業家を排出した山梨県に生まれる

早川徳次は1881(明治14)年10月15日、山梨県東八代郡御代咲村(みよさきむら/現・笛吹市一宮町)で7人兄姉の末っ子として生まれた。父の早川常富(つねとみ)は、地元・御代咲村の村長を務めたいわば村の名士だった。

 

山梨県は、明治期に多くの偉人を輩出した。後に「鉄道王」と呼ばれた根津嘉一郎、旧西武鉄道の前身・川越鉄道や大師電気鉄道、江ノ島電鉄といった経営に関わった雨宮敬次郎などが山梨県出身で、当時は甲府財閥とも言われていた。徳次もこうした縁を活かし、その力を徐々に発揮していくことになる。

 

ちなみに、徳次が誕生した翌年には、その後に大きな関わりを持つことになる東急グループの創始者、五島慶太が長野県青木村(旧殿戸村)に誕生している。

 

早川徳次の学歴を見ておこう。

1900(明治33)年 19歳。旧制山梨県立甲府中学校(現・県立甲府第一高校)を卒業。旧制第六高等学校(現・岡山大学)に入学
1901(明治34)年 20歳ごろ。旧制第六高等学校を病気のため中退
1904(明治37)年 23歳:早稲田大学高等予科に入学
1905(明治38)年 24歳:早稲田大学法科本科に入学
1908(明治41)年 27歳:早稲田大学を卒業

 

経歴を見ると病気によって、せっかく入学した大学を中退せざるをえず、さらに3年にわたって療養をしている。そのため大学を卒業して社会に巣立った年齢は、他の若者たちよりもやや遅かった。若く多感な時期に挫折を経験し、徳次には焦りもあったことだろう。

 

早大の法科を卒業したこともあり当初は政治家を目指した。そして、東京市長にもなる後藤新平に送付した論文が認められ、後藤の書生となる。当時、後藤新平は南満州鉄道の総裁を務めており、27歳の徳次も南満州鉄道に勤めることになった。これが最初の鉄道事業とのつながりになる。

 

入社したものの、後藤が数か月後に南満州鉄道の総裁を辞職し逓信大臣(鉄道院総裁を兼務)に就任。師を追うように徳次も鉄道院に移った。鉄道院に移ったものの、徳次は役人の仕事には満足できず、鉄道業の実情をより知りたいと、自ら現場勤務を希望して鉄道院中部鉄道管理部に入る。

 

当時、東京の玄関口でもあった新橋駅で、切符切りや荷物掛けといった仕事をこなした。大学を卒業した人間が、こうした現場の仕事にはほとんどつかなかった時代であり、周りから変わり者に見られたようだ。しかし、鉄道を知るためには現場の仕事を体験することが一番で、後々にそれが活きてくると考えたわけである。実際にこうした現場での経験が、その後の徳次に大きく役立つことになる。

 

そんな徳次だが、1年ほどで鉄道院の安定した生活を捨てて実業の世界に飛び込み、彼の一生を大きく左右するひとりの実業家と出会うことになる。

 

【早川徳次の生涯②】その後の人生を変えた根津嘉一郎との出会い

彼の名は根津嘉一郎(初代)。徳次が出会った当時、根津はすでに東武鉄道の社長であり、投資家としても辣腕をふるい、また企業再生も手がけていた。

 

根津は同郷である徳次の経歴を知るにつれ、なかなか面白い若者と見込んだのであろう。徳次に一つの仕事を託す。それが佐野鉄道(現・東武鉄道佐野線)の経営再建だった。1911(明治44)年、徳次30歳の時である。

 

若い経営者として、佐野鉄道に乗り込んだ徳次は、現場に通い、どこに問題があるのかを見いだし、さまざまな改革を行っていく。半年あまりで佐野鉄道の配当を4分から1割以上に増配するなど優良会社とした。翌年に佐野鉄道は東武鉄道と合併し、東武佐野線となっている。

↑徳次が初めて経営手腕を発揮したのが佐野鉄道(現・東武鉄道佐野線/写真)の再生だった。佐野線は館林駅〜葛生駅(くずうえき)間を走る

 

佐野鉄道を再建した翌年、31歳の徳次は根津により高野登山鉄道に送り込まれて支配人となる。

 

高野登山鉄道とは、現在の南海電気鉄道高野線の前身となる会社である。再建のために送り込まれたわけだが、なかなか難しい会社だったようだ。徳次は1912(明治45)年から1914(大正3)年まで務め、紀見トンネルを開通させるなど力を発揮したが、徳次が在籍している前後にも、高野鉄道→高野登山鉄道→大阪高野鉄道と、社名変更や譲渡を繰り返していた。

 

高野登山鉄道に支配人としておもむいた年に、望月軻母子(かもこ)と結婚。叔父となる望月小太郎は徳次と同じ山梨県の出身で、当時、衆議院議員を務めていた。根津嘉一郎に引き合わせたのも望月小太郎の手によるものだ。

 

さて、徳次が高野登山鉄道で行った再建策は上手くいったのだが、ここで骨を埋める気持ちはなかったようだ。根津の慰留も聞かずに2年ほどで退職してしまった。若いころの徳次は、どうも思い立ったが吉日、ただちに行動に移す性格だったようだ。

 

【早川徳次の生涯③】鉄道と港湾関係の調査に出向いたロンドンで

高野登山鉄道の再建のために赴いた大阪で、思うところがあって支配人の座を投げ出してしまった徳次。投げ出したはいいが、暇になってしまった。暇をもてあまして足を向けたのが、大型船を入港させるために大坂市の予算の20数倍という経費を使って、1897(明治30)年に整備した大阪築港だった。ところが、近くの神戸港へ入港する船は多かったが、大阪の築港は閑散とした状態が続いていた。その様子を見た徳次は現状を打開する策として「港と鉄道と組み合わせること」を思いつく。

↑大正期の築港の様子。大型船は着岸せずに閑散としている。絵葉書には「夏はよぅおまっせ。涼しいこっだっせ」と茶化す言葉も

 

矢も盾もたまらず、徳次はすぐにヨーロッパの実情を見てこようと思いたった。とはいえ、当時の洋行には大変な費用がかかる。もちろん、そうした金など手元にはない。そこで早大の恩師である大隈重信にかけあった。大隈は首相(第二次大隈内閣)となったばかりで多忙な時期だったが、叔父の望月小太郎が大隈の秘書をちょうど務めていたことも幸いした。

 

叔父の縁があるとはいえ、首相に会おうという徳次も相当なものだ。また会った大隈も、徳次の人物を見込んでのことなのだろう。お金の催促にも応じてくれたのである。しかも鉄道院の嘱託の身分まで用意して。

 

当時の人々は、前途有望と見込んだ若者には、惜しみなく援助を行ったようである。徳次33歳、妻を日本に置いての洋行である。あくまで「鉄道と港湾関係の調査をするため」であったのだが、そこでその後を決める一つの出会いがあった。

↑ロンドンの地下鉄の愛称は〝The Tube〟。トンネルの形状がまさにチューブのような形をしていることからこの名で呼ばれる

 

出向いたロンドンで、地下鉄に出会ったのである。ロンドンの地下鉄は世界最古の歴史を持つ。最初の地下鉄路線は1863年1月開業というから、日本が幕末のころすでにロンドンに地下鉄が走っていたのである。徳次が訪れた1914(大正3)年には、市内にすでに10本の地下鉄路線が設けられていた。

 

初めて地下鉄を見て、乗った徳次は心の底から驚いたことだろう。〝これはすごい、そして敵わない……〟と。そして、いつしか日本にも地下鉄を通すのだ、という自らの夢と目標がしっかり心の中に芽生えたのである。

 

一度、日本へ戻った徳次だったが、ロンドンだけでなく他国の地下鉄も見たいと思うようになった。1915(大正4)年から翌年にかけて、イギリス、フランス、スイス、カナダ、アメリカを巡り帰国した徳次は35歳となっていた。

 

【早川徳次の生涯④】当時の東京市内の鉄道の状況といえば

↑昭和中期まで路面電車が東京市内をくまなく走り大切な足となっていた。絵葉書は日本橋・三越呉服店。後に地下に三越前駅が生まれる

 

徳次が洋行していたころの日本の東京の交通事情を見ておこう。山手線など一部の官制路線があったものの、市内の交通は路面電車が頼りだった。

 

当時の路面電車の様子を写した絵葉書がある。朝8時のラッシュの様子だ。車外にしがみつく人、入口には押し合いへし合いする人の様子が見て取れる。絵葉書の題名は「東京名物満員電車」とある。

↑大正末期ごろの絵葉書。下には「午前八時頃の撮影 乗車に雑踏を極め居る光景」と記される

 

押しあう男性たちの後ろには、ぼう然とその様子を見守る中学生らしき少年と、冷めた目でカメラを見る女性の姿が見える。このような光景が、朝夕には日常に行われていたのだった。大の大人ですら乗車するのに大変で、女性や子どもたちにはとても危険で、乗るのにも苦労する路面電車だったのだ。

 

日本に戻り、こうした実情を見た徳次は、市電の数倍の輸送力を持つ地下鉄の路線がかならず必要になると確信した。

 

帰国してすぐに、徳次は地下鉄建設に向けて調査を始めた。調査項目は3つ。まずは路線をどこに敷けばより効果的かということだった。当時、東京市電では統計など取っていなかった。そこで徳次自らが街に立ち続け、利用者を数えた。今で言う「交通量調査」である。ただし今のようにコンパクトなカウンター(数取器)はない。そこでポケットに多くの豆を入れて、1人ごとに豆を別のポケットに移すという方法で人数を数えた。家に帰ると、妻が集計を手伝ったそうだ。

 

さらに「地質調査」。なかなかそうした調査結果が見つからなかったが、橋を架ける時に造る地質図が東京市の橋梁課にあると聞き、すぐに入手した。

 

次に地下鉄工事中に悩まされる「湧水量調査」がないかを調べた。当時は未舗装の道路に水を蒔くために、市内に撒き水井戸という井戸が掘られていたが、水の確保のために地中深く掘られた井戸が多いことに着目。地下鉄工事を阻害するほどの湧水量はないと判断した。

 

【早川徳次の生涯⑤】渋沢栄一ほか多くの財界人に話を持ちかける

こうした調査を終えれば、あとは金策、人材の確保、そして財界の重鎮にいかに手助けしてもらうかだが、これが予想以上にてこずった。

 

1917(大正6)年の初頭には、経済界の重鎮、渋沢栄一に会いに行き、地下鉄建設の支援を要請している。2度ほど会って支援は取り付けたものの、渋沢は高齢を理由に代表就任を断っている。その代わりに、援助と世話役を引き受け、その後の地下鉄誕生に向けて大きな力となる人々を紹介している。

 

地下鉄建設の免許出願のためには東京市会(現・東京都議会)の賛同が必要だった。そのために徳次は各議員のもとを自ら訪れ、根気強く説得して回った。この年に東京市会の賛同を得ることができた。徳次のこうした動きに合わせるかのように、東京の将来には地下鉄が必要という声が少しずつ出るようになっていた。また、地下鉄路線が儲かりそうだからとりあえず免許申請に動こうという企業もちらほら現れてきていた。

 

そんな動きを察した徳次は「東京軽便地下鉄道」を設立。高輪南町〜公園広小路(浅草)間と、車坂町〜南千住町間の地下鉄敷設免許を申請した。徳次36歳の時のことだった。

 

しかし、申請したものの、すぐに認可は下りなかった。日本ではまったく未知の地下鉄づくりだ。東京は埋め立て地が多いから、地下鉄造りには不向きという専門家も少なからずいた。

 

↑徳次が手がけた初の地下鉄路線の浅草駅出口(4番出口)が残る。通称「赤門」とよばれ近代化産業遺産にも認定されている

 

さらに、地上を走る鉄道に比べて、地下を掘って造る地下鉄は、莫大な資金が必要になる。財閥などの後ろ盾がない徳次に対して、果たして大丈夫かと疑問視する声が強かった。地下鉄を認可する鉄道院からも財政面での不安が指摘され、もっと財界の有力者を加えることを求められた。役所から見たら当然のことだったのかも知れない。未知数の地下鉄建設なのである。予算はそれこそ計り知れない。

 

そこで徳次は、根津嘉一郎の紹介をうけて、山本悌二郎(台湾精糖/現・三井精糖社長)、大川平三郎(「日本の製紙王」と呼ばれた)、野村龍太郎(鉄道院副総裁で、東京地下鉄道の第2代社長となる)らに発起人に加わってもらった。

 

1919(大正8)年11月17日、ついに徳次は免許を取得。38歳の時だった。しかし、取得したものの、すぐに工事着手とはいかなかった。

 

根津らの勧めにより、徳次のあとから地下鉄路線の出願を行った「東京鉄道」と合併、「東京地下鉄道」を1920(大正9)年8月29日に設立している。「東京鉄道」は三井財閥の資本力を背景として生まれた会社だった。この時、徳次は東京地下鉄道の常務取締役に就いている。社名は変わったものの、相変わらずの資金不足に苦しめられた。資金調達の目処がたちつつあった1923(大正12)年9月1日には関東大震災が起こる。

 

それまで徳次は新橋駅〜上野駅間の工事を進めようと考えていたのだが、より短い区間だが収益が見込める上野駅〜浅草駅間を先に開業させるという方針変更を行った。

 

関東大震災にも苦しめられ、工事の着手もままならない非常に苦しい中で一つの朗報が舞い込む。大倉土木(現・大成建設)が、工事費は竣工後の手形払いで、さらに利率も低くて良いという条件で工事を請け負ってくれたのだ。これが一つの転機となった。

 

そして、ようやく1925(大正14)年9月27日に上野〜浅草間の工事に着手したのだった。徳次44歳、ロンドンで地下鉄に出会ってすでに10年以上の時がたっていた——。

 

【information】

↑地下鉄博物館で開かれている「早川徳次 生誕140周年記念展」。3月13日までなので見学はお早めに

 

地下鉄博物館(東京メトロ東西線・葛西駅下車)では3月13日(日曜日)まで「早川徳次 生誕140周年記念展」と題し、〝地下鉄の父の軌跡〟を様々な資料とともに紹介している。興味をお持ちの方は訪ねてみてはいかがだろう。金曜日限定だが14時30分〜「『東京地下鉄道工事乃状況』で振り返る日本初の地下鉄建設」の特別映画上映会も開かれている。

 

*文中の敬称略
*参考文献:「地下鉄誕生 早川徳次と五島慶太の攻防」/中村建治(交通新聞社)、「地中の星」/門井慶喜(新潮社)

GS1000は『先輩』って感覚。go!go!vanillasジェットセイヤが語る音楽とバイクの関係性

牧 達弥(vo/g)、柳沢 進太郎(g)、長谷川プリティ敬祐(ba)、ジェットセイヤ(dr)の4人からなる新世代ロックンロール・バンド「go!go!vanillas」。今回はドラムのジェットセイヤさんに愛車GS1000や、バイクと音楽の関係性などについて熱く語ってもらった。

(撮影・構成・丸山剛史/執筆:背戸馬)

 

【ジェットセイヤさんのGS1000の画像はこちら】

GS1000との出会い

――この企画では初となるスズキ車、しかも、ヨシムラが1978年の第1回鈴鹿8時間耐久レースで優勝したことで知られるスズキGS1000です。先ほどエンジンをかけてもらいましたが、音がいいですね

 

ジェットセイヤ(以下、セ)「かなり良い音してます。自分はグレッチのドラムを使ってるんですけど、その太さとちょっと似てますね。低重心な感じとか」

 

――「音」とはミュージシャンらしいポイントです。では、セイヤさんとこのGSとの出会いから伺いましょうか

 

「『マッドマックス』が大好きだし、カワサキの空冷Zが欲しいと思って専門店に見に行ったんですね。KZ1000を試乗したんですけど、ちょっとイメージと違うなと思ったんですよ」

 

――その違和感って何だったんでしょう

 

「実は、その前にGSにまたがっていたからかもしれませんね。GSのあのゴツさ、どっしり感がZにはなかった。自分でも何故だかわからないんですけど、GSは“出会っちゃった感”があった」

 

――”出会っちゃった感”ですか、なるほど

 

「昔からの知り合いでもある『君はバイクに乗るだろう』の編集長・坂下(浩康)さんと一緒にバイク探しの旅に出て、川口市のバットモーターサイクルさんでGS1000に出会ったんですけど、見たときにまず『ダース・ベイダーみたいだな』と思ったんですよね。で、タンクに大きく“GS”って描いてあって『なんだこのバイク!?』って衝撃を受けました。タンクも大きくて、Zよりも太い」

 

――購入したのは?

 

「4年くらい前です。結局、Z系もいろいろ比較検討したあと、バットさんじゃなくて絶品輪業さんにあったGSを買ったんですけど、バットの川島さんが『せっかくなら状態いいのを買ってほしい、うちじゃなくてもいいから』と言って頂いて。そんなバイク屋さんほかにないですよね」

 

――自分のお店で買わせたいと普通は思いますよ

 

「そうですよね。絶品輪業さんにあったGSは程度がすごく良かったんで、川島さんにはほんとに感謝してます。購入後すぐGSと報告に行きました」

 

GSは「カスタムしない」と決めた

――1978年ごろのモデルでしょうか、外装やエンジンもとてもきれいです。カスタムやこだわりについて教えてください

 

「納車時から、ハンドルが幅の広いタイプにしてあったのとエンジンガードがついていた以外はノーマルです。マフラーを変えようかと考えたこともあるんですけど、この2本出しがかっこいいからやめましたね」

 

――今後のカスタム予定は?

 

「しないと思います。このままの状態が一番かっこいいと思うのでキープしていきたいですね。もしカスタムしたくなったら、カスタムしている方のバイクを見て楽しみます」

 

――ちょっと意外です。セイヤさんといえば、革ジャンとかヘルメット、楽器にもペイントしたりと、何でも自分色に染めちゃうイメージです

 

「そうなんですけど、GSはイジっちゃいけない気がしてるんですよ。関係性でいうと、『先輩』って感覚なんですよね。自立しているオートバイって感じがするんで、手を入れるのは違うなと」

 

――あえてノーマル状態をキープしているセイヤさんのGSですが、お気に入りのポイントは?

 

「さっき話したとおり、まずこの上から見たときのタンクの太さですね。それとテールランプの角張った感じ。丸みと角張ったデザインのバランスがいいなと思います。タンクからテールへのライン、大きめなウインカーも、スターキャストホイールも、全部気に入ってますね」

――スタイリング以外の部分ではどうでしょう

 

「走っているときの安定感ですね。GSに乗り出してすぐのころ、ふと思い立ってどこまで行けるか走りに出たんですけど、朝出発して、あっという間に名古屋まで着きました。そのとき、GSにして良かったなって思いましたね。大きいんですけど、意外と軽やかで乗りやすいんです」

 

――これまで故障やトラブルなどは?

 

「一度だけですね。家から出発して数分後、高速乗る前にクラッチ板が割れて、クラッチスカスカになって、どうしようもなくなって、路肩に停めました。すぐお世話になってるFUNTECHさんに電話して修理してもらいました。それ以外のトラブルはないですね。もともとがいい車体だったということもあるんでしょうけど、かなり調子いいです」

 

――トラブル少ないですね、素晴らしい

 

「先輩たちから、『旧車を買うときは妥協しちゃいかんよ』『金額がちょっと高くても状態いいのを買ったほうがいい』と聞いてましたから」

 

――妥協しなかったから、いい1台に出会えたのかもしれませんね

 

「あと、基本的な整備はぜんぶFUNTECHの(北川)譲二さんにおまかせしてるんですけど、自分のバイクの調子を知ってくれているいいメカニックさんがいるって点でも安心です」

 

バイクに乗ったきっかけ

――続いてバイク歴について教えて下さい。まず、バイクに乗ろうと思ったきっかけは?

 

「親父がバイクやクルマが好きで、その仲間もみんなバイクとか音楽が好きだったのでその影響はありますね。ロックンロールを聴き始めるとバイクってリンクしていくじゃないですか。それが自分のバイクのルーツですね。16歳になったらバイクの免許取ろうと思ってましたし、小学校の卒業文集に『グレッチのドラムを叩いて、革ジャン革パンで、バンドで全国回って、バイクはZ400FXが欲しい』って書いてるんですよ(笑)」

 

――いいものが分かる小学生だったんですね(笑)。

 

「そのあたりの夢が全部叶ったんですよね、10年後ぐらいに。ずっとその生き方してたので」

 

――どうしてZ400FXだったんですか

 

「師匠でもあるし、一番好きなドラマー・中村達也さんが当時Z500FXに乗っていて、バイク雑誌の表紙に写真が出てたんです。それを見て『バイク買うならFXでしょ』と。その後、実際にFXにまたがったんですが、思ってたより車体が細くてイメージと違いましたね」

 

――小学生でBLANKEY JET CITYとか中村達也さん、FXが好きって相当早熟ですよ

 

「そうですね。実際にライブハウスも観に行ってたので、かっこよさも身に染みて感じてました。中学の時は近所の人に譲ってもらったスーパーカー自転車を改造して乗ったり、小学生の時は親父の現場で拾ったパイプを自転車に針金で取り付けてマフラーに見立てたりとかしてました(笑)」

 

――シブいエピソードには事欠きませんね(笑)。で、高校卒業後に上京されたんですよね

 

「仕事しながら千葉に住んでました。バイクの免許は、高校が厳しかったので卒業したあと、上京する1週間くらい前に取りに行ったんですけど卒検で落ちちゃって、上京後に幕張の運転免許試験場で一発試験で取りました。免許取ったあと、千葉に父親のバイクを送ってもらったんですけど、それが浅井健一さんが乗ってるXS250“サリンジャー”のレプリカ(親父制作)で。ちなみにエンジンも400に積み替えてあります」

 

――浅井さん、BJCのファンに“サリンジャー”は有名ですね。バイクを送ってくれるなんて、いいお父さんだなぁ

 

「でも、せっかくバイクを手に入れたのに、そのころは仕事が忙しすぎて休みもほぼなかったからあまり乗れませんでしたね。一緒にバンドやっていたゼファー乗りの友だちと週末に木更津あたりを走ったりとか、そんな感じでした」

 

――千葉は走りやすいのに残念でしたね

 

「むしろ今、千葉には走りに行きたいです。結局サリンジャーレプリカは18歳から、go!go!vanillasをやりはじめる22歳ごろまで乗って、地元に送り返しました。やっぱり父が作って乗っていたお下がりだったし、大事なバイクすぎて“自分のバイクではないな”って感覚がありましたね」

 

もう1台の愛車・スズキK90について

――サリンジャーレプリカを送り返したあとはどうなったんでしょう

 

「その後、バンドが忙しくなって都内に引っ越して来て、今も乗っているスズキK90をネットオークションで買いました。見つけたときは、『安いし、かっこいいし、これしかない!』って感じでした。落札価格は5万円だったかな。出品していたのはK90を数台持っている方で、一番調子いいのを譲ってくれました」

 

――K90マニアのお墨付き(笑)

 

「その時は、自分のバイクを手に入れたことがうれしかったですね。それが7年くらい前ですけど、K90は今でも毎日乗ってますね。小回りがきくし、荷台があるから機材も積める。あとかっこいいんですよ、レトロで。特に前から見たアングルが好きです」

 

――GS1000とK90とを乗りわけてるわけですね

 

「GSは用事で乗っていってその辺にちょっと停めておくってわけにはいかないですからね。スタジオ入るのに乗ってっちゃったら、いたずらや盗難が気になっちゃって集中できないですね。普段も倉庫に入れて保管してます」

――先程お邪魔してきましたが、いいガレージでしたね

 

「バイクと、楽器を入れてます。バイクは大事にしたいんで、倉庫に入れておかないと不安なんですよ。雨に濡らしたくないし、盗まれたくない」

 

――徹底してるんですね。倉庫でメンテナンスやカスタムなどもするんですか?

 

「そうですね。K90を一度バラしてフレームを塗ったことがあります。あとは、レコーディングしてます」

 

――まさにガレージロック!

 

「音が漏れちゃうんで大変です(笑)」

 

――壁に飾ってあるのは?

 

「僕がスネアのヘッドに描いた絵です。オーダーを受けてヘルメットにも描いています」

――セイヤさんは個展も開かれてますもんね。そういえばガレージにはもう1台、白いベスパも停まってましたが

 

「Vespa100ビンテージですね。K90と併用して普段乗りとして使ってます。スピードも出ないし、ブレーキもあまり効かないので遊びでって感じで」

 

――ベスパとはどういった出会いが?

 

「もとはレコーディングエンジニアさんが持ってたやつで、スタジオの軒先でずっと雨ざらしになっていたんです。新しいバイクを購入されたようだったので、その流れで自分が引き取りました。全塗装しようかなと思ったんですけど、ヤレた感じがいいのでそのままにしてます。GS1000やK90は“先輩”という感じですが、ベスパは“友だち”という感じですね」

 

ツーリングについて

――セイヤさんはどういった時にバイクに乗るんですか?

 

「K90やベスパは普段の足として乗りますし、GSはツーリングとか、遠出する時によく乗ります」

 

――ツーリングはどのあたりに?

 

「逗子に行くことが多いですね。坂下さんと一緒に」

 

――逗子にお目当てがあるんですか?

 

「“魚平商店”とか“808cafe10R”さんに行くのが定番です」

 

――魚平商店は、バイカー弁当で有名ですよね

 

「ですね。808cafe10Rさんには、自分が絵を描いたヘルメットも販売してもらってます。スパイスカレーがオススメです。いつか北海道とか行ってみたいですね。あとは四国もいいなと思うし、地元の九州も最高だし」

 

――バイクに乗っているときに、音楽的にインスパイアされたりするんですか?

 

「GS乗ってるときにできた曲って結構ありますね。思いつくんですよね、なんでかなぁ……テンション上がるからじゃないかな。単純に、バイク乗って走るだけでテンション上がってます。高速とかだと特に、『今これ、ハンドルから手を離したら死ぬな』っていう、デッドラインとともに走る“死ぬか生きるかの瀬戸際”感が、自分のなかに何か生み出すんでしょうね。GSは特にそういう感覚があります」

 

――バイクとセイヤさんの音楽性に共通点はあったりするんですかね

 

「自分の音楽性とマッチする部分はあるんじゃないかと思いますね。加速する感じとか。エンジン音がビートに聞こえてきます。グレッチのドラムとGSに感じた共通点として“太さ”がありましたけど、ホンダのバイクはPEARLのドラムのベーシックさに近いなとか、ヤマハはやっぱりヤマハのドラムの安定感を感じるし…とか。こういうこと話すやついないですよね(笑)」

 

――ドラマーらしい観点がすごくいいですよ

 

「『GS A GO!GO!』って曲を作ったんですよ。逗子にツーリングするそのまんまの歌詞なんですけど、それにエンジン音入れてふかしてます」

 

――ギターウルフの『環七フィーバー』的な

 

「そうですね。次はベスパの曲も作ろうと思ってます」

 

今後について

――GSとK90、ベスパで乗りわけも安定してる感じですが、今後欲しいバイクはありますか?

 

「いま250くらいのバイクが欲しいですね。カワサキのZ-LTDが好きなんですよ、アメリカンぽいモデル。あとZ200とかもいい。いずれにしてもバイクは増えそう。GSやK90を手放すことはないです」

 

――GSとK90へのほれ込み具合をうかがっていると、ジェットセイヤさんはスズキ党だと確信するところです。実際のところはどうですか?

 

「K90に乗ってたときも特にスズキのバイクって意識はなくて、GSを買ってからですね、スズキのバイクが持ってる“スズキらしさ”に気づいたのは。自然に魅了されてますね」

 

――具体的にどういうところが?

 

「スズキのバイクはスタイリングにどっしり感があると思うんですよ。小さいオートバイでも大きく見える。自分は『湘南爆走族』も好きなんですけど、登場するバイクで目が行くのはGS400、GT380とか、自然にスズキ車に目が行ってます。サンパチのテールランプとかね、好きなんですよ」

 

――俳優の舘ひろしさんが『西部警察』で乗っていた刀も昔からお好きだとか?

 

「そうなんですよ。考えてみたら刀もスズキですね。何かもともと惹かれるものがあったのかな。親父がZ750RS(Z2)とCB750Fに乗ってるんで、カワサキとホンダは身近にあったんですけど、GSを買うときは、そこにスズキ車が加わるという新鮮さは自分の中にあったんでしょうね。それに、ZやCBほど乗っている人も多くないので、そこもいいなと思ってます」

 

――イラストではハーレーも描かれていますけど、ハーレーは?

 

「欲しいですけど、抑えてます(笑)。乗ってみたいし、カスタムしてみたい形もあるんですけど、置き場の問題もありますから。でも、やっぱりGSに乗っている自分が一番しっくりきますね、日本男児なんで」

 

――GSはほんとに愛着を持ってるんですね

 

「ここまで深くなると思わなかったですね。最初は、こんなでかいの乗り回せるかな、でか過ぎんかなって気持ちもあったんですけど、それは自分の中で挑戦でもあった。出会いは直感でしかなかったですけど、GSにしてよかったって思います。自分、これって決めたら愛着がわくタイプなんです」

 

 

「ミュージシャンになる」という想いを一途に追いかけ実現した、かつてのロッケンロー少年。その一本気な性格はバイクとの付き合い方にも現れているようだ。若きGS乗りジェットセイヤ、かっこいいぜまったく。

 

【profile】

go!go!vanillas

牧 達弥(vo/g)、柳沢 進太郎(g)、長谷川プリティ敬祐(ba)、ジェットセイヤ(dr)の4人からなる新世代ロックンロール・バンド。さまざまなジャンルを呑み込んだオリジナリティ豊かな楽曲で聴く人を魅了し、ライヴでは強烈なグルーヴを生み出す。音楽ルーツへのリスペクトにとどまらず、常に変化・革新をし続けている。

2022年3月16日より全国11公演の「青いの。ツアー 2022」を開催。同月30日にはニューシングル「青いの。」のリリースを予定している。

【公式HPはこちら

 

<青いの。ツアー 2022>

3月16日(水) Zepp Haneda w:Saucy Dog

3月17日(木) Zepp Haneda

3月24日(木) Zepp Nagoya w:SHES

3月25日(金) Zepp Nagoya

4月9日(土) なんば Hatch

4月10日(日) なんば Hatch w:フレデリック

4月16日(土) BLUE LIVE 広島

4月17日(日) 高松 festhalle

4月22日(金) 仙台 GIGS

4月24日(日) Zepp Sapporo

5月5日(木・祝)  大分 iichikoグランシアタ

【日産氷上試乗会レポート】雪道でラクに速く走れる「ノート e-POWER 4WD」の実力とは?

長野県・女神胡で日産自動車(以下、日産)が主催するメディア向け氷上試乗会「NISSAN Intelligent Winter Drive」が開催されました。真冬のど真ん中、1月に最新の「ノート e-POWER」や「GT-R」など日産の最新技術が詰まったクルマたちに一気乗りできるこのイベント、ツルツルと滑る氷上&雪上で日産車たちがどう制御して立ち向かうか、体感して参りました。

↑前輪駆動の「ノート オーラ NISMO」。e-POWERによる減速効果は雪道で絶大な効果を発揮した

 

氷上&雪上の環境下で駆動方式やシステムの違いを体感

このイベントの目的は、次世代パワートレーンの普及を目指す日産が、駆動方式やシステムの違いによって、氷上や雪上という運転が難しい環境下でクルマの挙動や運転のしやすさがどう変化するのかを体験することにあります。雪道で“滑る”こと自体、公道走行では危険をはらむわけで、そうしたクルマの挙動を存分に体感する機会はそう簡単に得られるものではありません。今回、限定エリアコースを設定することでその体験ができる、極めてユニークで貴重な走行会として準備されたのです。

↑氷上試乗会NISSAN Intelligent Winter Driveで使用された試乗車たち

 

用意されたコースは外周路をメインとして、スラロームや円形コースがあり、それぞれに特徴のある体験が行えるようプログラムされていました。

氷上試乗会「NISSAN Intelligent Winter Drive」会場全景

 

この試乗会で一番の注目は、ノートとノートオーラに設定されたe-POWER 4WDの体験走行です。ノートもノートオーラも1.2Lエンジンで発電してモーターで車輪を駆動するシリーズ型ハイブリッド方式を採用します。そのメリットは電気モーターを駆動することで、ガソリン車よりもはるかに緻密なトルク制御が行えることにあります。その制御は1万分の1秒単位で行われ、状況に応じて最適なトルクを配分できるようになり、滑らかな走りに貢献するというわけです。

↑後輪重視の制御が的確な挙動を生み出していた「ノート オーテック クロスオーバーFOUR」

 

ノート/ノートオーラは共に前輪駆動(FF)を基本としながら、e-POWER 4WDでは後輪も電気モーターで走行していることが見逃せません。先代ノートのe-POWERでも4WDはラインナップされていましたが、新型ではこの後輪用電気モーターのパワーを大きく増強した電動パワートレーンが搭載されたのです。

 

その後輪用モーターのスペックを先代と比較すると明らかな違いがあります。先代は最高出力4.8PS、最大トルク15Nmにとどまり、それはあくまで雪道などでの発進を補助するためのシステムでしかありませんでした。それが新型では最高出力68PS、最大トルク100Nmと大幅に増強され、このパワーが速度域を選ばず、前後輪の挙動に対して緻密なコントロールを可能にしたのです。

↑後輪の電気モーターにより雪上でもパワフルな走りを発揮する「ノート e-POWER 4WD」。写真は「ノート オーテック クロスオーバーFOUR」

 

想像以上に扱いやすくスムーズに走れた「e-POWER 4WD」

ノートオーラで走ってみると、この制御がうまく働いているせいもあり、クルマの挙動に唐突感がなくとてもコントロールがしやすい。ステアリングを切って雪上で滑り出しても慌てることなく冷静に対処でき、コーナリングごとにチャレンジする方法を変えてみる余裕も生まれたほどでした。また、アクセルを強めに踏み込んでもシステムが路面状態を把握しながら瞬時に細かく制御してくれるので、十分なパワーを感じながらスムーズな発進ができたのです。

 

ノート/ノートオーラの雪上走行ではe-POWERによる回生ブレーキ(e-Pedal)も大きな効果を発揮してくれました。ブレーキをかけるのとは違い、タイヤが雪上でロックすることなくスムーズに、しかも確実に減速できたのです。雪道では減速が思うようにできず、慌ててブレーキを踏んで制御不能となることがあります。このe-Pedalを使うことでそうした状況に陥ることはほとんどなくなるのです。まさにe-POWERの制御が、特に今回のような雪上で大きな安心感を生み出してくれたと言っていいでしょう。

↑外周路で「ノート」e-POWER 4WDの巧みな挙動を体験中の筆者

 

ノート/ノート オーラのe-POWERは、FFモデルでも高い走破性、安定性を実現していました。アクセルをオフにした時のe-Pedalで得られる確実な減速は、ここでも大きな安心感を生んでくれており、これはおそらく先代の4WDよりも確実に停止できるのではないでしょうか。

 

ただ、発進では4WDとの差を実感させます。4WDモデルでは後ろから押し出すようにスムーズに、しかも力強く発進してくれましたが、FFモデルでは少し強めに踏み込んだだけで前輪が空転して前へ進むことができなかったのです。その意味でも4WDモデルは雪上で圧倒的にスムーズかつラクに、しかも速く走ることができました。その安定感には大きな差を実感した次第です。

横滑り防止装置をオフにして円形の氷上路をグルグルと回る「ノート e-POWER 4WD」

 

安定した挙動で安心感のある走りを見せた「GT-R」

続いて日産が誇るスーパースポーツカー「GT-R」に試乗してみました。このクルマ、お値段はベースグレードでも1000万円を超える知る人ぞ知るクルマですが、今回の試乗で用意されていたのは、世界最大級のカーボンセラミックブレーキを搭載した特別仕様車「GT-R プレミアムエディション Tスペック」です。こちらのお値段は1590万4900円(税込)! まさにスーパースポーツカーを氷上で体験試乗することができたのです。

 

凄まじいパワーを発揮するだけに、最初は恐る恐るアクセルを踏み込んだわけですが、実際に走り出せば想像以上にコントロールがしやすいのにビックリ! 4WDであることもあって、クルマの状況が把握しやすく、アクセルを踏み込んでも後輪でしっかりと前へ進みます。一方で、テールが滑る状態になると駆動力が前輪にも配分されて車両を安定へと向かわせてもいました。

↑凄まじいパワーを発揮する「GT-R」だったが、予想に反してコントロールがしやすかった

 

ただ、後輪駆動である「スカイライン GT」ではコントロールはかなり難しかった印象です。エンジンがハイパワーであるターボ仕様ということもあって、アクセル操作をかなり伸長に行わないとステアリング操作をしても追いつかず、アッという間に向きが変わってしまいました。駆動方式の違いが明らかに違う挙動を示すことを身を以て体感できたわけです。

↑後輪駆動らしい挙動により雪道でのコントールは難しかった「スカイライン GT」

 

この日は日産が展開する幅広い駆動方式を、雪上&氷上で体験したわけですが、改めて「e-4ORCE」と同じ思想で開発されたe-POWER 4WDの実力の高さを思い知らされました。e-4ORCEは間もなく本格的に市場投入される日産「アリア」にも搭載されます。アリアはどんな走りを見せてくれるのでしょうか。その登場がますます楽しみになってきました。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

進む全国の「鉄道新線計画」−−新幹線をはじめ初のLRT新線計画も

〜〜全国で進む新線計画その2 全国編〜〜

秋に開業する新幹線路線や、来春に路線が延伸する新線、さらに全国で初になる新LRT(ライトレールトランジット)路線など話題豊富な新線が全国で生まれようとしている。

 

これらの計画は、前回の東京・神奈川の新線に比べると、かなり工事が進んでいるところが多い。どのような計画なのかチェックしていこう。

 

【関連記事】
意外に多い!? 東京&神奈川の「鉄道新線計画」に迫る

 

【はじめに】まず全国の新線計画7ルートの概要を見る

全国で進む7ルートの新線計画の概要を見ていこう。なお、大阪市内で複数の路線工事が進んでいるが、こちらは次の機会に紹介したい。

〈1〉西九州新幹線
・新線区間:武雄温泉駅〜長崎駅・約66.0km
・開業予定:2022(令和4)年9月23日開業で調整中

〈2〉北陸新幹線延伸
・新線区間:金沢駅〜敦賀駅・約125km(新線は白山車両基地〜敦賀間・約113km)
・開業予定:2024(令和6)年春

〈3〉北海道新幹線延伸
・予定区間:新函館北斗駅〜札幌駅・約212km
・開業予定:2030(令和12)年度末

〈4〉リニア中央新幹線
・予定区間:品川駅〜名古屋駅・約285.6km(名古屋駅〜新大阪駅・約152.4km)
・開業予定:2027(令和9)年(品川駅〜名古屋駅間)

〈5〉芳賀(はが)・宇都宮LRT
・予定区間:宇都宮駅東口〜芳賀・高根沢工業団地・約14.6km
・開業予定:2023(令和5)年春

〈6〉アストラムライン延伸
・予定区間:広域公園前駅〜西広島駅・約7.1km
・開業予定:2031(令和13)年ごろ

〈7〉福岡市地下鉄七隈線(ななくません)延伸
・予定区間:天神南駅〜博多駅・約1.6km
・開業予定:2023(令和5)年春

 

全国で進む新線計画のうち、新幹線の新線や延伸計画が多いことが分かる。国が2010年代に進めた「国土強靭化基本計画」から「経済財政運営と改革の基本方針2019」に至る、いわゆる〝骨太の方針〟に基づいた整備新幹線およびリニア中央新幹線の工事が進められている。

 

一方で、環境問題や、新線開業後に現状の交通インフラをどのように維持していくのかなど、国や鉄道会社と、自治体との考え方の相違も生まれてきている。新線の計画や工事の進み具合とともに生まれてきた問題等にも触れていこう。

 

【西九州新幹線】開業日は9月23日に決定

最も間近に迫った新線計画が「西九州新幹線」である。西九州新幹線は国が計画した整備新幹線のうち、九州新幹線(西九州ルート)の一部で、2008(平成20)年に着工、鉄道建設・運輸施設整備支援機構によって武雄温泉駅〜諌早駅(いさはやえき)間の工事が進められてきた。

 

14年の歳月を経てこの秋に武雄温泉駅〜長崎駅間の約66.0kmが開業となる。運転開始日は9月23日(金曜日)で調整中だ。

 

路線は佐世保線と接続する武雄温泉駅から南下、嬉野温泉駅(うれしのおんせんえき)を通り、新大村駅で大村線と接続、諌早駅で長崎本線、大村線、島原鉄道の各線と接続、長崎駅へと路線が至る。

↑大村線の路線と平行して設けられた西九州新幹線の高架橋。大村線とは新大村駅と諌早駅で接続が予定されている

 

これまで鉄道路線がなかった嬉野温泉には初の鉄道が通ることになる。「日本三大美肌の湯」で知られる嬉野温泉へは行きやすくなるわけだ。

 

一方で、既存の新幹線網とは離れた区間での暫定開業となる。九州新幹線の新鳥栖駅と武雄温泉駅の間に新たな路線を造るのか、既存ルートを生かすのか、新たな問題も生じている。新幹線ができた後、平行して走る長崎本線は、普通列車のみが走ることになり、一部区間(肥前浜駅〜諌早駅間)は電化廃止され、電車に代わり気動車が走る予定となっている。

↑西九州新幹線の途中駅となる諌早駅の構内。2018(平成30)年に橋上駅舎と東口、西口を結ぶ自由通路などが整備されてきれいに

 

さらに、フル規格として造られた西九州新幹線だが、新鳥栖駅〜武雄温泉駅は、在来線のままとなる。博多駅〜武雄温泉駅間はリレー列車が走ることになるのだろうが、フル規格の新幹線化への目処はたっていない。

 

もともと同区間には、在来線と新幹線の両路線の走行可能なフリーゲージトレイン(軌間可変電車)が開発されて走る予定だった。試験用の電車が開発され、さまざまな試験が行われた。ところが、技術的な問題が生じ、最高時速300kmといった高速化される新幹線車両と共存できないことが明確となり、開発および利用をほぼ断念する、という結果になった。

 

長崎本線が走る佐賀県としては、将来にわたり在来線を保持させたい。一方で、国は断念したフリーゲージトレインに代わり、この未決の区間もフル規格化を推し進めたい気持ちが強い。新幹線の路線整備ではその費用負担の一部を地方自治体に求めていることもあり、折り合う可能性は低いように思われる。西九州新幹線は開業した後も、当分の間は武雄温泉駅での乗り継ぎが必要になりそうだ。

 

【北陸新幹線】敦賀駅までの延伸は2024(令和6)年春の予定

現在、金沢駅まで走る北陸新幹線。2015(平成27)年春の金沢延伸によって首都圏と富山、金沢両県への距離が縮まり、両県の旅行者が増えるなど、新幹線効果が改めて確認された。北陸三県で新幹線が走らないのは、福井県のみとなっていたが、2年後には県西部の敦賀市まで路線が延びる予定だ。

↑北陸新幹線の金沢延伸に合わせて登場したJR西日本のW7系。ますます同車両の活躍範囲が増えてきそうだ

 

すでに用地取得率は99%、土木工事着手率は100%の進捗状況で2024年の春の開業は確実なようだ。金沢駅〜敦賀駅間は約125km(新線区間は白山車両基地〜敦賀間の約113km)。現在、東京駅から金沢駅まで所要時間は約2時間半で、プラス30分で福井県の西、敦賀駅まで行き着けることになりそうだ。

 

新路線はほぼ北陸本線と平行して設けられている。高架路線もほぼ敦賀駅付近まででき上がっている。平行する在来線の北陸本線は、石川県のIRいしかわ鉄道、富山県のあいの風とやま鉄道と同じように第三セクター路線となる。敦賀駅以北では在来線を特急列車が走らなくなるため、関西・中京方面から福井市、金沢市、富山市へ行く場合には敦賀駅での乗り換えが必要になる。

↑敦賀駅付近での北陸新幹線の高架線工事の様子。写真は2021(令和3)年9月の撮影。すでにほぼでき上がった状態だった

 

ちなみに、終点となる敦賀駅付近では高架橋が地上23mと高い位置を通る。在来線との乗り換えを容易にするため、在来線ホームが高架橋下に専用ホームが設けられる予定となっている。敦賀駅までの延伸が完了する北陸新幹線だが、その先の新線はどうなるのだろうか。もともと北陸3県は関西圏との結びつきが強いのだが……。

↑敦賀駅の駅舎には2024年春の開業予定の掲示も。現在の駅の後方で大型クレーンを使っての駅改良工事が進む

 

北陸新幹線は敦賀駅まで延びるものの、関西方面への延伸はまだ未確定な部分が多い。当初、北陸本線、湖西線を使ってのフリーゲージトレインの走行案もあったが、西九州新幹線の例と同じく断念された。その後、どのルートで通すかが検討されてきたが、敦賀駅〜小浜駅〜京都駅を通る小浜京都ルート案が決定している。

 

また、京都駅で東海道新幹線と接続して列車を走らせることが難しいために、南側の京都〜松井山手〜新大阪を通すルートも決定している。

 

とはいえ、同ルートに新たに路線を建設するとなると工事費は2兆円を超えるとされ、予算の確保もままならない状況だ。さらに着工しても工事期間が最低15年ほどかかるとされ、北陸新幹線の全通は2046(令和28)年春ごろになるというから、気の長い話になりそうだ。

 

【北海道新幹線】札幌駅まで延伸工事も始まっているものの

北海道新幹線はもともと1973(昭和48)年の整備計画に基づき整備が始められた。北海道新幹線は2016(平成28)年春に、新青森駅〜新函館北斗駅間の約148.8kmが開業している。

 

新函館北斗駅から先の工事も2012(平成24)年に認可され、札幌市まで約212km区間も鉄道建設・運輸施設整備支援機構の手により延伸工事が進められている。すでに用地取得率は69%、土木工事着手率は81%まで進んだ。

↑新函館北斗駅に到着するJR北海道のH5系。この先の札幌駅まで開業するころにはさらに新型車両が出現するのだろうか

 

路線は新函館北斗駅から北へ向かい、内浦湾沿いの新八雲駅(仮称)から長万部駅(おしゃまんべえき)へ。その先は、内陸部を走る函館本線(山線区間)に沿うように倶知安駅、新小樽駅(仮称)を経由して札幌駅へ向かう。開業は2030(令和12)年度末としている。

 

新函館北斗駅〜札幌駅間の距離は約212kmとあり、新幹線に乗車すれば約1時間弱の距離となりそうだ。現在、札幌駅〜函館駅間は特急「北斗」で3時間30分以上かかっている。道内移動の足としては非常に有効となりそうだ。

 

一方で、首都圏と北海道の行き来は大半の旅行者が飛行機の利用となる。北海道新幹線が新函館北斗駅へ延びた今も、道南や函館へのアクセスは飛行機の利用が主流となっている。函館〜札幌間といった道内の移動は格段に便利となるものの、飛行機に対抗できるかと言えば、なかなか難しいようにも思われる。

↑新函館北斗駅が現在の北海道新幹線の北端駅となる。函館駅との間には「はこだてライナー」が運行されている

 

さらに難しいのが平行する在来線に維持の問題だ。この2月には函館本線の長万部駅〜余市駅間120.3kmのバス転換が決定した。JR北海道から経営分離されるローカル線を地元自治体だけでは維持できないというわけである。ちなみに、新幹線開業後に廃止された在来線は信越本線の横川駅〜軽井沢駅間のみで、ここは補助機関車が必要な急勾配区間だったという特殊な事例であり、単純に比較はできない。早々に在来線の維持を諦めることになるほど、北海道のローカル線の現実は厳しいわけだ。

 

平行して走る在来線の中で残るのは貨物列車の輸送に欠くことのできない函館本線の函館(五稜郭駅)〜長万部駅間と、室蘭本線の長万部駅〜東室蘭駅のみとなりそうだ。残る路線にしても、本州のように経営を第三セクター化するのか、どこが運営主体となるのか、赤字をどのように補填していくかなど問題が山積している。利益が見込めず、加えて距離が長く、また冬は雪深い地域の在来線区間だけに、今後も難しいかじ取りを迫られそうだ。

↑長万部駅発の函館本線普通列車。右は室蘭本線の線路。新幹線開業後、函館本線はこの先、余市駅まで廃止されバス転換が決まった

 

【リニア新幹線】2027年開業予定だったものの

世界初のリニア高速鉄道となる予定のリニア中央新幹線。東京の品川駅と名古屋駅間の工事が始まり、同区間の開業は2027(令和9)年の予定とされた。

 

車両もL0系が開発され、連日のように山梨県内の実験線での試運転が続けられている。技術的には明日にでも営業運転が可能にまでに煮詰められたリニアではあるのだが、周知されているように静岡県内での工事の遅れにより、2027(令和9)年の開業は困難となりつつある。

 

路線は品川駅から神奈川県の橋本駅(相模原市)、山梨県甲府市、長野県飯田市、岐阜県中津川市(中央本線・美乃坂本駅)に駅が設けられ、名古屋駅へ向かう。途中駅ができる4県は恩恵を受ける。

↑山梨実験線ではリニア中央新幹線L0系のテスト走行が連日のように進められている

 

一方で、一部を路線が横切る静岡県では、山中ということで駅も造られず、またトンネルの掘削により、大井川の水資源が損なわれるなどの問題が起こることが予想されている。さらに、既存の東海道新幹線の列車運行はどうなるのか不明確なことも多い。JR東海と静岡県との間で話し合いの場が持たれ、いろいろな妥協策が提示されたものの、いずれの策も折り合いがついていない。

 

リニア中央新幹線は、JR東海の独自の事業として進められてきた。これほどまでの大規模事業を一つの鉄道会社が行うこと自体、画期的なことでもあったのだが、2年にわたるコロナ禍で乗客が大幅に減少し、JR東海も民営化後、初の赤字に転じるなど、非常に厳しい局面を迎えつつある。静岡県を通らないなどの工事予定区間を変更するとなると、さらに10年の時が必要とされている。落とし所が非常に難しくなってきている。

↑品川駅の次の駅として工事が進められる橋本駅周辺の様子。この先、山岳部をトンネルで抜けて山梨県の甲府盆地に次の駅ができる

 

新幹線の延伸計画、リニア中央新幹線の計画では、それぞれにさまざまな問題が絡み工事が一筋縄ではいかない要素が潜んでいる。

 

国土の大規模な開発について国民全員がもろ手をあげて賛成とはいかない時代になりつつある。今後、どのように策を講じ、少しでも多くの支持をとりつけ、問題を解決していくか、大きな課題がつきつけられているように思われる。

↑現在の山梨の実験線(写真)は、リニア中央新幹線が開業後、そのまま実際の路線として使われることになる。

 

【芳賀・宇都宮LRT】順調に進む車両導入&新線づくり

ここからは新幹線を除く全国で進む新線計画や延伸計画を見ていこう。まずは栃木県の県庁所在地、宇都宮市と芳賀町(はがまち)で進むLRT路線から。

 

【関連記事】
2022年開業に向けて準備が進む「芳賀・宇都宮LRT」−−新路線に沿って歩いてみた

↑宇都宮駅東口で進むLRTの路線整備。右側に路線がカーブして駅へ入ってくる構造も見て取れる 2022(令和4)年2月20日撮影(以下同)

 

LRTとはライトレールトランジットの略称で、国土交通省が導入支援を行っている取り組みだ。日本語に訳せば「軽量軌道交通」といったところだろうか。

 

路面電車をより近代化したシステムで、車両は低床タイプが使われる。停留場などは完全バリアフリー化、高齢者、障がいを持つ人たちにもやさしい造りとなっている。これまでLRTのシステムを導入した路線といえば、現在の富山地方鉄道富山港線、以前の富山ライトレールぐらいのものだった。こちらは路線の大半は以前のJR富山港線の路線を利用、駅周辺に併用軌道を設ける形でLRT路線化された。

 

芳賀・宇都宮LRTは完全な新路線として造られるもので、画期的な取り組みと言えるだろう。

↑同計画の最大の建造物となる鬼怒川橋梁。線路の敷設はまだだったが、橋自体はすでにできあがっている

 

路線は宇都宮駅東口と芳賀・高根沢工業団地間の約14.6kmとなる。宇都宮の市街は宇都宮駅西口と、東武宇都宮駅間に店舗などが連なる。この繁華街側とは逆の東側、そして工業団地がある芳賀町の間の公共交通機関として計画された。なお、宇都宮駅の西側、東武宇都宮駅までの区間にも将来はLRT路線を延ばしていきたいと調査が続けられている。

 

2017(平成29)年に工事施行認可を国に申請、翌年に起工式を行っている。当初2022(令和4)年に開業を目指していたが、1年遅れの2023(令和5)年3月の開業予定となり工事が進む。

↑国道4号に隣接して設けられた車両基地内には、すでに多くの車両が搬入され、出番を待っている

 

起工してから5年で完成することになる芳賀・宇都宮LRT。他の鉄道の新線が10年ぐらいの歳月がかかるのに比べるとLRTの路線づくりの工期はほぼ半分と短い。これがLRTの長所なのだろう。筆者も2回にわたり同路線を巡ってみたが、開業1年前にもかかわらず、車両基地などを見物に訪れる人がちらほら見られた。新LRT計画が果たして都市部の交通問題の根本的な解決につながるかどうか、今後、かなり注目を集めそうだ。

 

【アストラムライン】西広島駅への延伸でより便利に

広島高速交通「アストラムライン」は、広島市内を走る案内軌条式旅客輸送システム(AGT)の路線で、広島市中心部と北西部の住宅地を結ぶ。現在の路線は本通駅(ほんどおりえき)と広域公園前駅の間18.4km。

 

路線図を見ると広島市の中央部から北へ向かい、大きく左カーブして回り込むように市内の安佐南区まで走っている。起点の本通駅から終点の広域公園前駅までは約38分かかる。終点までバスを利用すれば広島駅から30分弱と、せっかくアストラムラインが走っているのにもかかわらず、やや不便なようにも感じられていた。

↑広島市内の中央部と北西部を結ぶアストラムライン。現在、山陽本線の新白島駅と可部線の大町駅でJR路線と接続している

 

現在、終点の広域公園前駅と、山陽本線の西広島駅を結ぶ路線の計画が進められている。延長区間は広域公園前駅〜西広島駅間、約7.1kmで、開業予定は2031(令和13)年ごろを見込んでいる。

 

延長予定の西広島駅は山陽本線だけでなく、市の中央部へ路線が延びる広島電鉄の広電西広島停留場が目の前にある。路線が開業後には、広島の市内中央部と北西部のアクセスが画期的に改善されることになる。

↑路線が延びる予定の西広島はJR山陽本線の西広島駅(右上)と広電西広島の停留場があり市内中央部へのアクセスも良い

 

【福岡市地下鉄七隈線】博多駅延伸で福岡市は大きく変わる!?

2020(令和2)年の国勢調査で、全国20ある政令指定都市の中で5年前に比べて人口が最大の増加率を示したのが福岡市。他の政令指定都市にくらべて著しい伸び率を示している。福岡市内の足として役立てられているのが、福岡市地下鉄の路線網。空港線、箱崎線に加えて、2005(平成17)年には天神南駅〜橋本駅間に七隈線(ななくません)が設けられ、活かされてきた。

 

とはいえ、福岡市の玄関口である博多駅に結びついておらず、また天神南駅が、空港線の天神駅とやや離れていて、やや不便だった。

 

そこで計画されたのが七隈線の延伸計画だ。天神南駅と博多駅を結ぶ路線計画で、2014(平成26)年に着工された。ところが2014年、2016(平成28)年と延伸工事の現場で2回の道路陥没事故が発生してしまった。

↑七隈線の橋本駅近くにある橋本車両基地に並ぶ3000系。同線は鉄輪式リニアモーターカーを利用している

 

そうしたトラブルにより、やや工期が延びたものの2023(令和5)年の春に開業予定だ。博多駅への延伸で、福岡市の南西部の西区へのアクセスがかなり改善されることになりそうだ。

↑博多駅へ七隈線の延伸が適うことで福岡市の南西部へのアクセスがかなり改善される

 

全国の新線計画を見てみると、前回に紹介した東京や神奈川の新線計画に比べてより具体的に工事が進み、開業が間近に迫った路線が多い。

 

大阪市内でも複数の新線が予定されている。これについては次の機会に詳細をお伝えしたい。また岡山電気軌道の岡山駅前広場への延伸や、伊予鉄道松山市内線の延伸計画などもあるが、今回は割愛させていただいた。

国産車らしい独自性が魅力のスバル「BRZ」、トヨタ「アクア」の新車をレポート!

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのは、国産らしい独自性が際立つ2モデル。SUBARU「BRZ」は、いまや世界的にも希少な後輪駆動クーペ。トヨタ「アクア」は、自慢のハイブリッドシステムに一層の磨きがかかっている。両車とも、まさにいまが旬のニューモデルだ。

※こちらは「GetNavi」 2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【No.1】自然吸気エンジンが生む操舵性の高さが秀逸!

クーペ

SUBARU

BRZ

SPEC【S(6MT)】●全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm●車両重量:1270kg●パワーユニット:2387cc水平対向4気筒DOHC●最高出力:235PS/7000rpm●最大トルク:25.5kg-m/3700rpm●WLTCモード燃費:11.9km/L

 

新しい2.4Lエンジンは積極的に操りたくなる!

新型BRZは、先代とほぼ変わらないサイズのボディに後輪駆動(FR)レイアウトを継承。また、エンジンは自然吸気の水平対向4気筒を搭載する世界的にも希少なコンパクトクーペだ。先代と大きく違うのは、そのエンジンが2Lから2.4Lに排気量を拡大されたことだが、走らせればそれがよくわかるほど余裕を感じられる。

 

パワー、トルクともにアップしたことで扱いやすさが増しているのはもちろん、何よりもうれしいのは、積極的に回す喜びが見出せること。アクセル操作に対する自然な反応も、自然吸気エンジンならではだ。ターボなどの過給機付きが当然の現在では、このエンジンだけでも味わう価値は十分にある。

 

それを受け止めるシャーシ回りも、先代より格段に洗練度が増した。スポーティでいながら、決して乗り心地が荒くない点はオトナのクルマ好きも納得の出来映え。FR駆動、という点まで含めればまさにクルマへの感度が高い幅広い層にオススメできる。

 

[Point 1]先代のイメージを踏襲しつつ質感はアップ!

全体の佇まいは先代のイメージを継承しつつ、外観はクーペとしての質感が向上。グレードはRとSの2タイプで、ボディカラーは写真のレッドを含めて合計7色を揃える。

 

[Point 2]いまや貴重な自然吸気の2.4L

先代の2Lに代わり、新型では排気量を2.4Lに拡大した自然吸気の水平対向4気筒を採用。ターボが主流の現代にあっては、もはや貴重な存在だ。

 

[Point 3]クーペとしては実用的な広さが確保

トランク容量は237Lと、2人分程度の荷物なら十分に収容できる広さ。後席を畳めば長尺物やスポーツ走行用のタイヤなども積むことができる。

 

[Point 4]室内はスポーティなブラック基調

室内はスポーツクーペらしい、適度なタイト感を演出。後席は完全な非常用だが、前席の広さは必要にして十分。液晶ディスプレイのメーターは、走行モードに応じて表示が変わる。

 

[ラインナップ]

R:2.4L/2WD/6速MTまたは6速AT/308万円(税込)【324万5000円(税込)】

S:2.4L/2WD/6速MTまたは6速AT/326万7000円(税込)【343万2000円(税込)】

●【 】内は6速ATの価格

 

 

【No.2】新型はハイブリッド専用モデルらしさを実感!

ハッチバック

トヨタ

アクア

SPEC【Z(2WD)】●全長×全幅×全高:4050×1695×1485mm●車両重量:1130kg●パワーユニット:1490cc直列3気筒DOHC+電気モーター●最高出力:91[80]PS/5500rpm●最大トルク:12.2[14.4]kg-m/3800〜4800rpm●WLTCモード燃費:33.6km/L

●[ ]内は電気モーターの数値

 

ダウンサイザーを意識した充実装備と高い質感も嬉しい

プリウスの弟分だった初代の登場から約10年。トヨタ内でも多くの車種にハイブリッドが用意され、なかでもヤリスとの差別化を明確にする必要に迫られたアクアは、この新型でよりダウンサイザーに配慮したクルマになった。

 

ホイールベースと全高を拡大し、後席の居住空間をより広く確保すると同時に、ややチープだった内外装も質感が大幅に向上。その結果、新型は車格が上がった印象を受けるほど。乗り心地も快適性重視に味付けされているが専用のスウィングバルブダンパーを備えた「Z」だけは、欧州車のようなキビキビとした走りが楽しめる。装備面では、トヨタのコンパクトカー初の10.5インチ大型ディスプレイオーディオやヘッドアップディスプレイ、電子制御インパネシフトの設定も新しい。最新の予防安全パッケージはもちろん、ボタン操作で全自動駐車する「アドバンストパーク」も秀逸だ。

 

エンジンとモーターはヤリス系と共通だが、大きな電流を瞬時に出せるバイポーラ型ニッケル水素バッテリーの採用が効いて、瞬発力は段違い。加速の鈍さに閉口した初代とは別物になった。さらに、降雪地ユーザー待望の4WDがようやく設定されたのも朗報だ。

 

時代の要望を積極的に取り入れたアクアが、人気なのも頷ける。

 

[Point 1]ホイールベースは先代より50mm延長

ボディサイズは先代と変わらないが、ホイールベースは50mm拡大。外観は上質感を高めるとともに、一層伸びやかな佇まいになった。基本骨格にもトヨタ最新のTNGAを採用。

 

[Point 2]ハイブリッドはさらに高効率に!

ハイブリッドシステムには、最高レベルの熱効率を誇る1.5Lエンジンやバイポーラ型ニッケル水素電池を搭載。2WDのWLTCモード燃費は33.6〜35.8km/Lと高いレベルを実現する。

 

[Point 3]荷室は必要にして十分な容量

荷室容量は205〜691L。コンパクトなハッチバックとしては、必要にして十分な容量が確保されている。2WDのフロアは、高さも変えられる仕様となり、使い勝手の良さも上々だ。

 

[Point 4]サイズはそのままに室内を拡大

ホイールベースを50mm拡大したことで、特に後席は居住空間が拡大。グレードによっては、シート表皮のデザイン性が高くなった。

 

[Point 5]室内もクラスレスといえる質感に

コンパクトカーに相応しい使い勝手を確保しつつ、室内はクラスを超える上質感も追求されている。トヨタのハイブリッド車を象徴するシフトセレクターも新意匠に変更された。

 

[ラインナップ]

B:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/198万円(税込)【217万8000円(税込)】

X:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/209万円(税込)【228万8000円(税込)】

G:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/223万円(税込)【242万8000円(税込)】

Z:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/240万円(税込)【259万8000円(税込)】

●【 】内は4WD(E-Four)の価格

 

文/小野泰治、岡本幸一郎 撮影/市 健治、小林俊樹

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

新型「アクア」は車格が上がった印象で、ハイブリッド専用モデルらしさを実感!

今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのは、トヨタ「アクア」。自慢のハイブリッドシステムに一層の磨きがかかっている、まさにいまが旬のニューモデルだ。

※こちらは「GetNavi」 2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

ダウンサイザーを意識した充実装備と高い質感も嬉しい

ハッチバック

トヨタ

アクア

SPEC【Z(2WD)】●全長×全幅×全高:4050×1695×1485mm●車両重量:1130kg●パワーユニット:1490cc直列3気筒DOHC+電気モーター●最高出力:91[80]PS/5500rpm●最大トルク:12.2[14.4]kg-m/3800〜4800rpm●WLTCモード燃費:33.6km/L

●[ ]内は電気モーターの数値

 

プリウスの弟分だった初代の登場から約10年。トヨタ内でも多くの車種にハイブリッドが用意され、なかでもヤリスとの差別化を明確にする必要に迫られたアクアは、この新型でよりダウンサイザーに配慮したクルマになった。

 

ホイールベースと全高を拡大し、後席の居住空間をより広く確保すると同時に、ややチープだった内外装も質感が大幅に向上。その結果、新型は車格が上がった印象を受けるほど。乗り心地も快適性重視に味付けされているが専用のスウィングバルブダンパーを備えた「Z」だけは、欧州車のようなキビキビとした走りが楽しめる。装備面では、トヨタのコンパクトカー初の10.5インチ大型ディスプレイオーディオやヘッドアップディスプレイ、電子制御インパネシフトの設定も新しい。最新の予防安全パッケージはもちろん、ボタン操作で全自動駐車する「アドバンストパーク」も秀逸だ。

 

エンジンとモーターはヤリス系と共通だが、大きな電流を瞬時に出せるバイポーラ型ニッケル水素バッテリーの採用が効いて、瞬発力は段違い。加速の鈍さに閉口した初代とは別物になった。さらに、降雪地ユーザー待望の4WDがようやく設定されたのも朗報だ。

 

時代の要望を積極的に取り入れたアクアが、人気なのも頷ける。

 

[Point 1]ホイールベースは先代より50mm延長

ボディサイズは先代と変わらないが、ホイールベースは50mm拡大。外観は上質感を高めるとともに、一層伸びやかな佇まいになった。基本骨格にもトヨタ最新のTNGAを採用。

 

[Point 2]ハイブリッドはさらに高効率に!

ハイブリッドシステムには、最高レベルの熱効率を誇る1.5Lエンジンやバイポーラ型ニッケル水素電池を搭載。2WDのWLTCモード燃費は33.6〜35.8km/Lと高いレベルを実現する。

 

[Point 3]荷室は必要にして十分な容量

荷室容量は205〜691L。コンパクトなハッチバックとしては、必要にして十分な容量が確保されている。2WDのフロアは、高さも変えられる仕様となり、使い勝手の良さも上々だ。

 

[Point 4]サイズはそのままに室内を拡大

ホイールベースを50mm拡大したことで、特に後席は居住空間が拡大。グレードによっては、シート表皮のデザイン性が高くなった。

 

[Point 5]室内もクラスレスといえる質感に

コンパクトカーに相応しい使い勝手を確保しつつ、室内はクラスを超える上質感も追求されている。トヨタのハイブリッド車を象徴するシフトセレクターも新意匠に変更された。

 

[ラインナップ]

B:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/198万円(税込)【217万8000円(税込)】

X:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/209万円(税込)【228万8000円(税込)】

G:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/223万円税込(税込)【242万8000円(税込)】

Z:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/240万円税込(税込)【259万8000円(税込)】

●【 】内は4WD(E-Four)の価格

 

文/岡本幸一郎 撮影/小林俊樹

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

意外に多い!? 東京&神奈川の「鉄道新線計画」に迫る

〜〜全国で進む新線計画その1 東京都・神奈川県編〜〜

 

この1月に首都圏の鉄道事業者から2つの新線計画について発表があった。1つは「相鉄新横浜線・東急新横浜線開業」であり、もう1つは東京メトロ2路線の延伸に関して鉄道事業許可の申請だった。

 

今回は、全国で進む新線計画のうち、東京都と神奈川県内の新線計画を追った。中でも来年春に開業する相鉄新横浜線・東急新横浜線と、注目度が高い羽田空港アクセス線の2路線を中心に紹介しよう。

 

【関連記事】
祝開業!都心乗り入れを果たした「相模鉄道」−−盛り上がる沿線模様を超濃厚レポート

 

【はじめに】都内&神奈川県で進みつつある7ルートの新線

東京都と神奈川県で進む新線計画の概要をまず見ていこう。具体化しつつあるのは次の7ルートだ。

〈1〉相鉄新横浜線・東急新横浜線(以下「相鉄・東急新横浜線」と略)
・新線区間:「相鉄新横浜線」羽沢横浜国大駅〜新横浜駅・約4.2km、「東急新横浜線」新横浜駅〜日吉駅・約5.8km
・開業予定:2023(令和5)年3月予定

〈2〉羽田空港アクセス線(仮称)
・新線区間:田町駅〜羽田空港新駅(東京貨物ターミナル駅付近〜羽田空港新駅、建設予定区間約5km)
・開業予定:2029(令和11)年度ごろ

〈3〉横浜市営地下鉄ブルーライン延伸計画
・予定区間:あざみ野駅〜新百合ケ丘駅約6.5km
・開業予定:2030(令和12)年ごろ

〈4〉東京メトロ有楽町線延伸計画
・予定区間:豊洲駅〜住吉駅約4.8km
・開業予定:2030年代半ば(目標)

〈5〉東京メトロ南北線延伸計画
・予定区間:品川駅〜白金高輪駅約2.5km
・開業予定:2030年代半ば(目標)

〈6〉多摩都市モノレール延伸計画・箱根ヶ崎ルート
・予定区間:上北台駅〜箱根ケ崎駅約6.7km
・開業予定:2032(令和14)年ごろ

〈7〉多摩都市モノレール延伸計画・町田方面延伸ルート
・予定区間:多摩センター駅〜町田駅約16km
・開業予定:未定

 

相鉄・東急新横浜線を除き、開業予定が2030(令和12)年以降と〝気の長い〟計画である。しかし、新路線の開業は非常に時間がかかるものでもある。

 

例えば相鉄・東急新横浜線、相鉄・JR直通線となる「神奈川東部方面線」の計画が立てられたのが、2000(平成12)年の初頭、国土交通省の工事施行認可を受けたのが2009(平成21)年で、まず相鉄・JR直通線の起工式が2010(平成22)年3月25日に行われた。同線は工事に9年の歳月がかかり、2019(令和元)年11月30日に開業している。計画が立てられてから20年あまり、起工してから10年弱と、新線の開業には非常に長い期間を必要とすることが良く分かる。

 

さらに、相鉄・東急新横浜線の工事はその後も続けられ、こちらの開業は1年後に迫っている。まずは相鉄・東急新横浜線の計画と現状を見ていこう。

 

【相鉄・東急新横浜線①】新横浜駅へのアクセスがスムーズに

相鉄・東急新横浜線は、相模鉄道の西谷駅(にしやえき)と東急電鉄東横線の日吉駅間を結ぶ。この路線のうち、西谷駅〜新横浜駅間・約6.3kmが「相鉄新横浜線」で、その先の新横浜駅〜日吉駅間・約5.8kmが「東急新横浜線」となる。

 

西谷駅〜羽沢横浜国大駅間・約2.1kmは、相鉄・JR直通線の一部としてすでに開業し、JR埼京線へ乗り入れる列車が運行されている。2023(令和5)年3月に開業する区間は、羽沢横浜国大駅〜日吉駅間・約10kmとなる。

↑2023(令和5)年3月に開通予定の相鉄・東急新横浜線の路線図。羽沢横浜国大駅〜日吉駅間の途中に新綱島駅が設けられる

 

この新路線の開業で、より便利になるのが東海道新幹線・新横浜駅の利用だろう。現在は新横浜駅ではJR横浜線と、横浜市営地下鉄ブルーラインの2線のみ連絡で、決して便利とは言えなかった。

 

新線開業後は相模鉄道、東急東横線・目黒線との相互乗り入れが行われ、東海道新幹線の利用が非常に便利になる。沿線に住む人たちだけでなく、これまで品川駅、東京駅を使ってきた利用者の中にも、新横浜駅の利用を考える人も多くなりそうだ。

 

【相鉄・東急新横浜線②】各駅近辺の工事の進み具合を見る

ここからは沿線模様と工事の進捗具合を写真でチェックしていこう。

↑開業してすでに2年2か月たった羽沢横浜国大駅。現在、日中は30分に1本と不便だが、新線開業後は列車も増え便利になりそうだ

 

一足先の2019(令和元)年11月30日に開業した相鉄・JR直通線。唯一の中間駅として羽沢横浜国大駅が設けられた。羽沢横浜国大駅は東海道貨物線の貨物駅・横浜羽沢駅に隣接する。すぐ横にある貨物駅には旅客列車が停車しない。駅ができるまでは非常に辺鄙な場所だった。

 

路線開業日以来、同駅におよそ2年2か月ぶりに訪れてみた。駅の近くには大型ドラッグストアもでき、大規模なマンションも建設中で、乗り降りする利用者の姿もちらほら見かけるようになってきていた。

 

この駅の北側で相鉄・東急新横浜線の線路と、相鉄・JR直通線の線路が分岐する。

↑羽沢横浜国大駅の北側にある分岐ポイント。右上は相鉄・JR直通線開業前の同ポイントの様子で中央2線が相鉄・東急新横浜線となる

 

羽沢横浜国大駅周辺での工事は、平行する道路の整備を除いてほぼ完了していた。相鉄・JR直通線と一緒に工事を進めたため、進捗具合も早かったのであろう。開業に向け準備万端のように見えた。

 

次に新横浜駅を訪れる。新線は新横浜駅の西側、県道13号線(環状2号道路)の地下部分に設けられる。同駅部分では、道路の中央部に大型重機が置かれるなど、今も工事が続けられていた。とはいえ2年ほど前に訪れた時に比べると、重機が減り、開口部が閉ざされるなど、工事が進んでいるように見受けられた。

↑新横浜駅の西側、環状2号道路の中央部で続く新線の工事。1年後の開業に向けて順調に工事が進んでいるように見えた

 

次に新線唯一の途中駅・新綱島駅へ向かう。新線の開業後にはスムーズに巡ることができるルートも、今はかなり遠回りしなければならない。

 

新綱島駅の最寄り駅、東急東横線の綱島駅に降りたが、付近に新駅らしき入口等がない。駅の職員に聞いてみると、綱島駅の東口を出て、さらにその先にあるという。

↑綱島駅(左上)から100mほど、綱島街道沿いで行われている工事。次の日吉駅まで線路は綱島街道の下を走り抜ける。

 

新駅の新綱島駅は東口から100mほど、約1分の距離に生まれる予定だ。綱島街道沿いに「綱島トンネル」と「新綱島駅」の建設工事が進められていた。新線はこの綱島街道の下を通り抜ける。

 

設営工事用の大きな建物が設けられていて大型車両の出入りが頻繁に行われていた。入口に掲げられた工事期間を見ると今年の5月25日までとなっていた。3か月後にはほぼ、この区間の主要な工事は終わりそうだ。

 

次に日吉駅へ向かう。この駅で新線と東急東横線が合流するわけだ。駅周辺を見て回ると……。

↑日吉駅近くの工事の進捗状況。線路はすでに敷き終え、架線工事はこれからだった。同区間ではこの上を東急東横線が走っている

 

↑日吉駅(右上)の南側に東急目黒線の折り返し線がある。左右に東横線が走り、中側2線が新線に結びつくことになりそうだ

 

東急東横線の高架線の下に地下へ潜る新線が新設されていた。駅周辺ではすでに路盤工事は終了しているようだ。途中、壁が途切れたところから内部を見ると、線路はすでに敷かれていた。これから上部に架線を張るための準備を行う工事の様子を確認することができた。

 

【相鉄・東急新横浜線③】乗り入れ用の車両の準備も着々と

1月末にはすでに列車本数など詳細が発表されている。

 

列車本数は次の通り。東急新横浜線・日吉駅〜新横浜駅間は朝のラッシュ時が毎時14本、その他の時間帯が毎時6本。一方の相鉄新横浜線・羽沢横浜国大駅〜新横浜駅間は朝のラッシュ時が毎時10本、その他の時間帯が毎時4本となる。ということは、東急新横浜線の列車の中には、新横浜駅折り返しの電車もあるということになる。

 

両線が結びつくことで、相模鉄道の二俣川駅と目黒駅間の所要時間が約38分となる。ちなみに現状、相鉄・JR直通線を利用すると約49分、横浜駅経由で60分近くかかってしまう。かなり時間短縮ができるわけだ。

 

入線する車両編成は10両および8両(一部6両)とされた。東急東横線とともに、東武鉄道、東京メトロ副都心線の10両および8両の列車も乗り入れることになりそうだ(西武鉄道の車両は乗り入れなし)。また今年の4月上旬に8両編成の列車が走り始める東急目黒線、東京メトロ南北線、都営三田線、埼玉高速鉄道の列車も新線へ乗り入れることになるだろう。

 

すでに各社、新線用の車両の用意が少しずつ始められている。

 

相模鉄道には新線乗り入れ用の20000系が2018(平成30)年に登場し、走っているが、同形式を8両化した東急目黒線乗り入れ用の21000系という新編成も導入され、走り始めている。

↑相模鉄道21000系は20000系の8両編成仕様。東急目黒線や、東京メトロ南北線、都営三田線への乗り入れ用の車両となる

 

↑都営三田線の新型6500形はこの春からの8両編成運転を見据えた車両。すでに東急目黒線内での試運転も始められている

 

さらに、都営地下鉄三田線にも6500形という8両編成の新型車両の試運転も始まっている。こちらは5月から運転も始められ、新線にも乗り入れることになりそうだ。ほかの鉄道会社も6両の8両編成化の準備を始めている。こうした各社の動きは、1年後の新線開業を見据えたもので、乗り入れのための準備がすでに始められていたわけだ。

 

新路線開業後、相模鉄道へは他私鉄の車両の乗り入れも行われるのだろう。自社とJR埼京線の車両だけでなく、他の私鉄車両も混じるようになり、相鉄線内はますます賑やかになりそうである。

 

【羽田空港アクセス線①】羽田空港のアクセスがさらに便利に!

ここからは東京都心と羽田空港を結ぶ「羽田空港アクセス線」の現状を見ていこう。計画自体は2000(平成12)年からあった。東京臨海高速鉄道りんかい線の東京テレポート駅〜羽田空港間を結び、大崎方面からのアクセスも可能とするプランだった。ところが、JR東日本が東京モノレールを子会社化したことから流れが変わり、新線計画は立ち消えになっていた。

 

その後、2020年に開催予定だった東京オリンピックに間に合わせる等の話がもちあがったものの、羽田空港内や、接続線の建設の難しさが予想されたことから、その話も立ち消えとなっていた。

 

紆余曲折があった羽田空港アクセス線の計画だったが、2021(令和3)年1月20日に、JR東日本が東京貨物ターミナル駅〜羽田空港新駅間第一種鉄道事業許可を取得したことから、より現実化。本年度中に着工され、2029年度ごろには運行が始まる予定だとされている。

 

新線が通じた後には東京駅から羽田空港までの所要時間は約18分で、浜松町駅で乗り換える現状と比べると10分前後の時間短縮となる。

 

この路線がたびたび新路線計画として持ち上がってきた理由には、休線となっている大汐線(おおしおせん)の施設がかなり流用できるからにほかならない。大汐線の現在をたどりつつ、将来開業する羽田空港アクセス線の姿を想像してみた。

↑田町駅のすぐ近く、札の辻橋から望む大汐線(左)と東海道新幹線の回送線。この先、臨海部を高架線と橋梁で通り抜ける(右上)

 

大汐線はかつて貨物駅だった汐留駅(しおどめえき)から浜松町駅、そして現在の東京貨物ターミナル駅まで至る路線の通称である。汐留駅はすでに再開発され線路も用地も消滅しているものの、田町駅付近からは延々と線路が敷かれたまま残っている。

 

新線はまず田町駅付近で、東海道本線の上下線の間に単線トンネルを掘って、線路を大汐線へ結ぶ予定だとされている。大汐線は田町駅付近から東海道新幹線の大井車両基地まで延びる回送線と平行して線路が延びている。現状、草木が生い茂る区間があるものの、素人目には整備すれば新線にすぐに転用できそうに見えるところが多い。

 

【羽田空港アクセス線②】東京貨物ターミナル駅の東側を走る予定

大汐線は、田町駅付近から高架橋や橋梁で品川区港南地区、京浜運河を越えて、品川南ふ頭の横を通りすぎる。首都高速道路湾岸線を越えた付近から、東京貨物ターミナル駅へ入っていく。

↑首都高速道路湾岸線の上にかかる旧大汐線の橋梁。一番左が東海道新幹線の回送線、その右に東京臨海高速鉄道の引き込み線がある

 

上の写真は都道316号線の北部陸橋からの眺めで、東京貨物ターミナル駅の北端付近にあたる。未整備区間がこのあたりまで続いている。敷地はふんだんにあり転用もかなり融通が効くように思われる。

↑北部陸橋から東京貨物ターミナル駅方面を見る。ちょうどJR貨物の入れ替え作業が行われていた。左はJR東日本の技術訓練センター

 

羽田空港アクセス線の線路の場所を想像してみる。東京貨物ターミナル駅の東側、今は東京臨海高速鉄道りんかい線の東臨運輸区(とうりんうんゆく/八潮車両基地とも呼ばれる)へ向かう線路が設けられているが、東京貨物ターミナル駅構内の線路と、りんかい線の線路のちょうど間に新線が通ると推定できる。

 

羽田空港アクセス線は東京駅方面だけでなく、りんかい線とのアクセスも可能にするプランもあるとされる。こうした線路の造りを見ると、りんかい線との接続も容易に感じられる。新線が開業した後には、りんかい線の新木場駅方面からの乗り入れも可能になるかもしれない。

↑東京高速臨海鉄道の東臨運輸区。左に将来の羽田空港アクセス線になると思われる線路もある。東京貨物ターミナル駅はこの左手にある

 

↑東京貨物ターミナル駅から羽田トンネルをくぐり川崎貨物駅へ向かう貨物列車。この付近で分岐、羽田空港へ新線が延びる予定

 

東京貨物ターミナル駅の南端で、羽田空港アクセス線は東に分岐し、トンネルで空港内へ入っていく。写真で見るように、草むしているものの臨海部の線路は多くの箇所で残されている。

 

ここが2022年度からどのように整備され、新線として仕立てられていくのか。筆者は何度もこの地域に通っているが、どのような姿に変貌し、将来どのように電車が走るのか楽しみでならない。

 

次からは他の新線計画の概略に触れていきたい。

 

【横浜市営地下鉄の延伸】川崎市内まで延びる横浜市の地下鉄

横浜市営地下鉄ブルーラインは湘南台駅(神奈川県藤沢市)と、あざみ野駅(横浜市青葉区)間の40.4kmを結ぶ。湘南台駅では小田急江ノ島線、相模鉄道いずみの線と接続、あざみ野駅では東急電鉄田園都市線とそれぞれ接続する。

↑横浜市営地下鉄ブルーラインの3000形。同線の車両は現在みな3000形で、導入時期で形式名が異なる。写真は3000Vと名付けられている

 

このブルーラインの路線を、あざみ野駅から小田急線新百合ケ丘駅まで延ばす計画が具体化しつつある。すでに2019(平成31)年1月23日に事業化が判断され、延伸先の川崎市と事業推進するための覚書が交換された。翌年には概略ルート、駅予定位置についても合意されている。延伸区間には4つの駅が新設予定で、横浜市に隣接する川崎市内初の地下鉄駅が設けられる。

 

終点となる新百合ケ丘駅は小田急電鉄の小田原線と多摩線の接続駅で、同線が完成すれば、多摩方面からの新横浜駅や横浜市内へのアクセスが画期的に改善されることになりそうだ。

↑小田急電鉄の新百合ケ丘駅の南口付近に横浜市営地下鉄の駅が生まれる予定。同線が開業すれば横浜へのアクセスが劇的に改善される

 

【有楽町線の延伸】新線の開業で臨海地域をより便利に

和光市駅(埼玉県和光市)と新木場駅(東京都江東区)間28.3kmを結ぶ東京メトロ有楽町線。同線の豊洲駅から東陽町駅を経て住吉駅を結ぶ4.8kmの鉄道事業許可の申請が2022(令和4)年1月28日、国土交通大臣宛に行われた。申請とは新路線の鉄道経営を行うために必要な手続きで、具体的な事業着手に向けた一歩となる。

 

その後、鉄道事業法第5条によって、国土交通大臣が審査の上、許可が出されて鉄道敷設免許が取得され、以降、建設工事へ進んでいく。

↑2021(令和3)年2月から走り始めた有楽町線17000系。有楽町線、副都心線や東急東横線にも乗り入れる。新線の主力ともなりそうだ

 

有楽町線が延伸されると、東陽町駅で東西線と、住吉駅で半蔵門線、都営新宿線と接続される。

 

豊洲駅は2020(令和2)年度の平均乗降人員は14万612人で、東京メトロ管内では新橋駅に次ぐ7位の乗降数がある。周辺の臨海地域は特定都市再生緊急整備地域にも位置づけられ、多くの再開発が進められている。現在、公共交通機関は有楽町線、ゆりかもめ、および都バスの利用が可能だが、増える利用者に対して、混むイメージが強まりつつあった。そうした豊洲駅から東陽町駅方面へ路線ができれば、より利便性が高まり、また混雑しやすい東西線のバイパス路線として活かされることにもなる。

↑有楽町線の豊洲駅。駅近くには高層ビルなどが多い。ゆりかもめの乗換駅でもあり、新しいアクセス路線の必要性が取りざたされていた

 

【南北線の延伸】リニア駅の開業に合わせて品川駅まで延伸を

有楽町線の延伸とともに鉄道事業許可の申請が行われたのが、東京メトロ南北線の品川駅〜白金高輪駅(しろかねたかなわえき)間2.5kmだった。

 

南北線は現在、目黒駅〜赤羽岩淵駅間の21.3kmを結ぶ。目黒駅から先は東急電鉄目黒線と、赤羽岩淵駅から先は埼玉高速鉄道との相互乗り入れを行う。また途中、白金高輪駅で都営三田線と接続、こちらの路線とも相互乗り入れを行っている。2023(令和5)年3月からは前述したように相模鉄道との連絡線「相鉄・東急新横浜線」が生まれる予定で、さらに利便性が高まる。

↑東京メトロ南北線の9000系5次車。南北線内だけでなく、東急目黒線、埼玉高速鉄道の路線にも乗り入れている

 

南北線と都営三田線の電車は、白金高輪駅で折り返し運転される列車も多いが、新線が延びたならば品川駅まで延伸されることになるのだろう。

 

品川駅は、東海道新幹線、東海道本線、山手線、京浜急行線など、さまざまな列車への乗り換えが可能な駅で、さらにリニア新幹線の起点ともなる予定だ。駅周辺は再開発も盛んで、ますます利用者が増えそうだ。そんな品川駅の将来を見すえた路線延伸計画と言えるだろう。

↑年々大きく変わりつつある品川駅周辺。南北線が乗り入れればより便利になりそうだ

 

【多摩都市モノレール】南へ!北へ!延びるモノレール路線

東京の西郊外は都心と郊外を結ぶ鉄道路線がほとんど。一方、南北に走る鉄道路線がなく、移動は路線バスに頼りで朝夕には一部の道路に車が集中して渋滞を起こりやすい。そんな鉄道空白地帯を少しでも埋めるために設けられたのが多摩都市モノレールだった。

 

多摩都市モノレールは上北台駅(かみきただい/東大和市)と多摩センター駅(多摩市)間16.0kmを結ぶ。路線が生まれたのは北側が先で、上北台駅〜立川北駅が開業したのは1998(平成10)年11月27日のことだった。2年後に多摩センター駅まで延伸している。当初は利用者が低迷し、経営不振に陥った。

 

開業10年後の2008(平成20)年4月に「多摩都市モノレール経営安定化計画」が策定。その後、同社の経営が徐々に安定していき、2001(平成13)年度、7万9815人だった1日平均乗客が、2017(平成29)年度には14万2498人にもなっている。

↑開業してすでに20年以上たつ多摩都市モノレール。鉄道空白地帯と呼ばれた地域の公共交通機関として役立てられている

 

多摩都市モノレールの開業前に発表された構想路線は計約93kmにもおよぶ。そうした構想の中でより現実化しているのが、上北台駅とJR八高線の箱根ヶ崎駅(西多摩郡瑞穂町)を結ぶ約6.7kmの区間だ。路線は上北台駅から、新青梅街道の上を走る計画が立てられた。同区間が通る新青梅街道は拡幅計画が進んでいて、その道路中央部をモノレールが走る予定となっている。

 

沿線には、東京都多摩地域の市部で唯一鉄道が走っていない武蔵村山市がある。また青梅街道、日光脇往還の宿場町として賑わいを見せた箱根ヶ崎も、立川と直接結ばれることになる。これらの街では一日でも早くモノレールが開業することが願われている。

↑JR八高線の箱根ヶ崎駅。かつては青梅街道と日光脇往還が交わる宿場町として栄えた

 

多摩都市モノレールの延伸区間として、より具体化し始めているもう一つの区間が、多摩センター駅と町田駅を結ぶ路線だ。この地域は多摩丘陵を越えるエリアで、モノレール路線向きの区間でもある。路線が走るのは町田市の北部地域となる。この地域は路線バス以外の公共交通機関がなく、鉄道空白地帯そのものだった。今年の1月28日に町田市の北部を己形にうねるように走る路線距離16kmのルート案が選定されている。

 

多摩センター駅から予定されるルート沿いには、町田市立陸上競技場、野津田高等学校、日本大学第三高等学校、小山田桜台団地、桜美林学園といった学校や公共施設、大きな団地も多い。これまで路線バスに頼らざるをえなかった地区で、周辺道路は朝夕、渋滞が常態化している。待望の路線の開通が見えてきたこともあって、地元では期待する声が日に日に高まっている。

 

とはいえ開業予定は未定とされている。開業までは今後10年程度の歳月が必要という声も聞こえてくる。

↑多摩都市モノレールが乗り入れる予定の町田駅。路線は駅の東側で小田急線を乗り越えて南側から町田駅に近づく計画に

 

今回は東京都、神奈川県で計画されている鉄道新線計画をまとめた。しかし、この新線計画の前に立ちふさがる障害も出てきている。それは新型コロナウイルス感染症の影響だ。この流行が起こり始め、すでに2年の月日が過ぎようとしている。自治体の財政ひっ迫が注視されているが、乗客の減少が著しくなった鉄道各社の経営も圧迫されるばかりだ。また鉄道運行にも関わる自治体の財政もひっ迫している。まずは感染症が終息しないと、という思いが鉄道会社にも自治体にも強いだろう。

 

日常が戻り、人々の暮らしが取り戻されて、それから新線計画となるのであろう。新線計画は夢があり、より人の動きを活発化させる効果もある。いち早く日常が戻ることを祈りたい。

 

スバル新型「BRZ」は、自然吸気エンジンが生む操舵性の高さが秀逸!

今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのは、国産らしい独自性が際立つクーペ。SUBARU「BRZ」は、いまや世界的にも希少な後輪駆動クーペで、まさにいまが旬のニューモデルだ。

※こちらは「GetNavi」 2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

新しい2.4Lエンジンは積極的に操りたくなる!

クーペ

SUBARU

BRZ

SPEC【S(6MT)】●全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm●車両重量:1270kg●パワーユニット:2387cc水平対向4気筒DOHC●最高出力:235PS/7000rpm●最大トルク:25.5kg-m/3700rpm●WLTCモード燃費:11.9km/L

 

新型BRZは、先代とほぼ変わらないサイズのボディに後輪駆動(FR)レイアウトを継承。また、エンジンは自然吸気の水平対向4気筒を搭載する世界的にも希少なコンパクトクーペだ。先代と大きく違うのは、そのエンジンが2Lから2.4Lに排気量を拡大されたことだが、走らせればそれがよくわかるほど余裕を感じられる。

 

パワー、トルクともにアップしたことで扱いやすさが増しているのはもちろん、何よりもうれしいのは、積極的に回す喜びが見出せること。アクセル操作に対する自然な反応も、自然吸気エンジンならではだ。ターボなどの過給機付きが当然の現在では、このエンジンだけでも味わう価値は十分にある。

 

それを受け止めるシャーシ回りも、先代より格段に洗練度が増した。スポーティでいながら、決して乗り心地が荒くない点はオトナのクルマ好きも納得の出来映え。FR駆動、という点まで含めればまさにクルマへの感度が高い幅広い層にオススメできる。

 

[Point 1]先代のイメージを踏襲しつつ質感はアップ!

全体の佇まいは先代のイメージを継承しつつ、外観はクーペとしての質感が向上。グレードはRとSの2タイプで、ボディカラーは写真のレッドを含めて合計7色を揃える。

 

[Point 2]いまや貴重な自然吸気の2.4L

先代の2Lに代わり、新型では排気量を2.4Lに拡大した自然吸気の水平対向4気筒を採用。ターボが主流の現代にあっては、もはや貴重な存在だ。

 

[Point 3]クーペとしては実用的な広さが確保

トランク容量は237Lと、2人分程度の荷物なら十分に収容できる広さ。後席を畳めば長尺物やスポーツ走行用のタイヤなども積むことができる。

 

[Point 4]室内はスポーティなブラック基調

室内はスポーツクーペらしい、適度なタイト感を演出。後席は完全な非常用だが、前席の広さは必要にして十分。液晶ディスプレイのメーターは、走行モードに応じて表示が変わる。

 

[ラインナップ]

R:2.4L/2WD/6速MTまたは6速AT/308万円(税込)【324万5000円(税込)】

S:2.4L/2WD/6速MTまたは6速AT/326万7000円(税込)【343万2000円(税込)】

●【 】内は6速ATの価格

 

文/小野泰治 撮影/市 健治

 

 

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パイオニアが新たに放つ“会話するドライブパートナー”「NP1」って何だ? 

カーナビゲーションもドライブレコーダーもすべてが音声で使える! そんな画期的なシステムがパイオニアから登場しました。それが“会話するドライブパートナー”「NP1」です。なにやらパイオニアが1990年に発売した日本初のカーナビゲーション「AVIC-1」を彷彿させるような名称ですね。3月発売予定のNP1とはいったいどんなシステムなのでしょうか?

↑音声によるインターフェースですべての機能を完結するパイオニア「NP1」。音声コマンドを認識すると右側のスピーカー部が横一に光る。サイズ:W118×H36×D93mm(本体のみ)、重量:300g(付属品含まず)

 

音声インターフェースでナビ機能など操作のすべてを完結

これまでのカーナビゲーションといえば、ディスプレイがあって、そこに地図を表示して音声と共にルートガイドするのが基本スタイル。しかし、それらの操作は高機能化が進むほど複雑化し、実はそれがドライバーにとって大きなストレスとなっていました。そのストレスを音声によって解決しようと誕生したのが、今回のNP1なのです。

本体は小さめの弁当箱サイズ。これをフロントウインドウの上部に取り付け、電源はシガーソケットから取るだけ。それ以外に接続するものは何もありません。本体には前後2つのカメラを備え、これがドライブレコーダーとしての役割を果たします。音声でやり取りするためのマイクやスピーカーも内蔵したことで、音声認識によるインターフェースを実現しているのです。

↑フロントガラス越しから見たNP1、右のカメラで進行方向の映像を撮影。左奥には操作スイッチがあり、そこで音声モニターのボリュームを調整する

 

ポイントはこれらの機能すべてに通信を使っていることにあります。入力された音声を、サーバーにある高性能な音声認識エンジンが即座に理解し、あいまいなコマンドにも最適な対応をします。さらにサーバーにある最新のデータをリアルタイムに取得したり、NP1で撮影したデータをアップロードも可能。専用アプリ「My NP1」を活用しながら、常にサーバーとつながることでその能力をどんどん拡張できるのがNP1最大の魅力です。

↑NP1とクラウド経由でつながるための専用アプリが「My NP1」。クラウドにアップされた映像を見たり、スマホによるナビ機能も備える

 

あいまいなコマンドもクラウド側の音声エンジンが即座に理解

ではカーナビ機能を例にNP1のメリットを紹介しましょう。まずはカーナビで定番の目的地設定から。ここでは行きたい場所を音声でNP1に伝えるだけです。「NP1、○○へ行きたい」と発すると、NP1からは「直線距離で○km先に○○が見つかりました。ここへ行きますか?」と返してきます。ここで「はい」と答えれば目的地までのルートが探索されて案内がスタートします。基本操作はこれだけです。今までのカーナビのようにメニューを開いて、ジャンルやエリアでの絞り込みをする必要はありません。

↑NP1を車内に取り付けたイメージ。一見してドライブレコーダーのようにも見えるが、奥行きがあってそれよりサイズはずっと大きい

 

目的地探しでは、複雑なコマンドにも音声で対応できます。「○○が食べたい」「○系ラーメン店を探して」と音声で発すると、その内容を理解して候補を即座にリストアップしてくれるのです。また、“Retty”を使った評判の良いお店を探せるのもこの機能のポイントです。さらに目的地設定後に追加すれば、自動的に立ち寄り地点として登録されるのも便利ですね。

↑目的地を設定した後で、さらに目的地を追加すると経由地として自動設定される

 

案内中も音声によるインターフェースが大活躍します。分岐点に近づくと、走行すべき車線を交差点ごとに3つ手前から案内するので、初めての道でも余裕を持って対応できます。案内中に分岐点を知りたかったら「次どこ曲がるの?」と聞くだけで曲がるポイントまでの距離と方向を案内してくれ、もし聞き逃しても聞き返せば何度でも答えてくれます。これまでのカーナビのように、メニュー画面からコマンドを入力するといった煩わしい操作なしに使えるのです。

↑ルート案内中は分岐点までの距離や進むべき方向などを音声で行う。ここでは「160m先、白山上交差点を直進です」「1.1km先、信号を右方向です」となる

 

↑分岐点に近づくと、My NP1上では徐々に地図を拡大していく。音声では「この信号を右です」と案内する

 

案内中のルートは最新の交通情報を基に、一番早く目的地に到着する「スーパールート探索」にも対応し、目的地付近の駐車場も空き状況をリアルタイムに考慮して音声で案内してくれます。この機能で何より嬉しいのは、走行中でも簡単に目的地が設定できること。音声を使っていることで、今までのように設定のため、わざわざクルマを停止する必要がないんです。これは実際に使ってみるとその便利さをすぐに実感できると思います。

 

突然のアクシデントにもクラウド保存で録り逃しなし!

そして、その機能はカーナビだけにとどまりません。ドライブレコーダー機能では走行中の映像を前後2つのカメラで、前方はフロントガラス越しに、後方は車内越しに撮影してくれます。

↑車内側から真正面で見たNP1。左部分は車内から後方を撮影するカメラで、夜間でも鮮明に映し出せる(モノクロになる)よう赤外線機能も備える

 

アクシデントに遭遇して衝撃を検知すると、その映像は自動的に指定のスマホやクラウドにアップロード。慌てふためいているときでも確実にその映像を残しておけるのです。もちろん、一般的なドラレコと同じように気に入ったシーンを動画や静止画で残すこともできます。その時は音声で「動画を撮って」「写真撮って」と告げるだけ。後からいつでもスマホ側から見られるようになるのです。

 

ドラレコ機能に通信が伴ったことで便利! と感じるのが駐車監視です。今まではクルマに戻ってからアクシデントに気付いていましたが、NP1では衝撃を検知すると指定したスマホに映像と共に通知されます。これならトラブルへの解決も迅速に対応できるというわけです。もちろん、スマホから遠隔操作でいつでも動画や写真を撮ることもできるのは言うまでもありません。

↑NP1が衝撃を受けて撮影したイベント映像や、任意に撮影した映像はサーバーにアップロードして保存。保存後はいつでもスマホからアクセスできる

 

ドライブがもっと楽しくなるプラスαの機能も備えています。初めての場所へ行ったとき、周辺に名所スポットがあることにはなかなか気付きにくいですよね。NP1はそんな時も「ドライブトピック」という機能で適宜案内してくれます。その収録件数は全国で約7600か所。時間や位置、地図を組み合わせて、その時々に最適な情報を案内してくれるので、出掛け先で気付くこともきっと多くなるでしょう。筆者的にはわかり切った自宅付近の道は、あえて案内しない配慮付きというのが気に入りました。

 

また、友人宅を訪ねる時などに役立ちそうなのが専用アプリMy NP1上で使う「ドライブコール」です。あらかじめ互いの連絡先を登録しておくことで、アプリ上から連絡すると相手に着信。相手のスマホには自車の位置やNP1で撮影した映像が映し出され、それを使いながら道案内をしてくれるのです。映像はリアルタイムの動画で送られるので、「もっと先、そこを右……」といった案内を聞きながら目的地にたどり着くことができるんですね。今までありそうでなかった機能、NP1ならこれが実現できてしまうんです。

↑「ドライブコール」を使うと、コンタクトした相手のスマホには車両の位置を示す地図とNP1で撮影している動画映像がリアルタイムで表示される

 

最初のアップデートでAmazonアレクサにも対応

これらを実現する通信機能ですが、最初の1年間は無料。2年目からは有料となりますが、これだけの機能が使えるなら延長しても損はしないはず。というか、NP1は通信機能が使えなければ、ほぼ“単なる箱”となってしまいます。まだ延長時の通信料は決まっていませんが、パイオニアによれば「負担感を感じない設定にしたい」とも話していました。NP1を存分に楽しむためにも延長は必須ですね。

 

NP1では「In Car Connect」にも標準で対応していることも見逃せません。車内にNTTドコモのLTE回線のWi-Fi環境をもたらし、接続したスマホやゲーム機などは車内で使い放題となるのですから。NP1なら新たに機材を購入せずともこのサービスに対応できます。これもNP1の大きなメリットと言えるしょう。

 

そのほか、NP1は4月にはリリースされるアップデートにより、Amazon アレクサへの対応を果たす予定です。この対応によって、NP1はニュースや天気予報、音楽再生などにも対応できるようになります。特に音楽はBluetooth経由でカーオーディオに接続すれば、迫力あるサウンドが楽しめるのです。もちろん、アレクサを使った自宅の照明やエアコンのON/OFFも可能。これもぜひ試してみたいですね。

 

パイオニアによればNP1のアップデートは今後も随時予定していくとのこと。つまり、時期を追うごとにNP1は魅力的な機能を備えていくことになるんですね。その意味でもNP1はまさにドライブに役立つ“魔法の小箱”そのもの。ドライブがますます楽しくなることは間違いなし。NP1が発売される3月が今から待ち遠しいですね。気になる価格は、バリュープラン(通信+サービス利用料3年分付)9万3500円(税込)、ベーシックプラン(通信+サービス利用料1年分付)6万5780円(税込)です。

 

 

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今や希少!国鉄形機関車がひく「石巻線」貨物列車&美景を旅する

おもしろローカル線の旅79 〜〜JR石巻線(宮城県)〜〜

 

日本国有鉄道がJRとなり今年で35年。国鉄時代に生まれた車両も続々と引退に追い込まれている。少し前までは見向きもされなかった国鉄形車両が、いつしか減っていき注目される存在になっている。今回紹介する石巻線を走るDE10形式ディーゼル機関車(以下「DE10」と略)もそんな一形式だろう。

 

貴重になったDE10が走る石巻線。貨物列車ばかりでなく列車に乗って旅をしてもなかなか楽しい路線である。

 

*本原稿は2021年までの取材記録をまとめたものです。新型コロナ感染症の流行時にはなるべく外出をお控えください。

 

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コロナ渦のさなか1日も休まず走り続けた「鉄道貨物輸送」−−とても気になる11の秘密

 

【石巻線を巡る①】110年前に軽便鉄道として開業した石巻線

まずは石巻線の概略を見ておこう。

路線と距離 JR東日本・石巻線/小牛田駅(こごたえき)〜女川駅(おながわえき)44.9km、全線単線非電化
開業 1912(大正元)年10月28日、仙北軽便鉄道により小牛田駅〜石巻駅間27.9kmが開業。
駅数 14駅(起終点駅を含む)

 

石巻線は、まず仙北軽便鉄道として開業。当時の線路幅は762mmだった。仙北軽便鉄道だった期間は短く、1919(大正8)年4月1日に国有化、翌年には1067mmの線路幅の変更されている。現在、石巻まで仙台からJR仙石線(せんせきせん)が走っているが、こちらが石巻駅まで開通したのは1928(昭和3)年のことで、宮城電気鉄道という私鉄の路線だった。宮城電気鉄道も1944(昭和19)年に国有化されている。石巻線がいち早く国有化されたのは、太平洋に面した石巻港を重要視した国の政策もあったのだろう。

 

石巻線の終点、女川駅まで路線が延びたのは1939(昭和14)年10月7日だった。この区間にも前身となる鉄道が走っていた。1926(昭和元)年に石巻湊〜女川13.9km間を金華山軌道という軌道鉄道が走り始めている。こちらは石巻線が延伸されて約半年後の1940(昭和15)年5月3日に、廃線となっている。

 

石巻線の歴史で避けて通れないのは2011(平成23)年3月11日に起きた東日本大震災の影響だろう。

 

震災後には全線が不通となり、約2か月後の5月19日に小牛田から石巻まで復旧している。仙石線の全線再開が2015(平成27)年5月末になったことを考えると、この復旧は石巻にとって大きかったに違いない。

 

さらに、2年後の2013(平成25)年3月16日に女川駅の一つ手前の浦宿駅(うらしゅくえき)まで復旧している。一方、女川駅付近の被害は甚大で、最後の区間の再開がなかなか適わず、仙石線の再開と同じ年、2015(平成27)3月21日に女川駅までの運転再開を果たしている。

 

【石巻線を巡る②】旅客用の主力車両はキハ110系

石巻線を走る車両を見ておこう。

 

主力はJR東日本のキハ110系である。キハ110系のなかでも100番台と200番台が石巻線の全区間を走る。いずれも小牛田運輸区に配置される。キハ110系100番台は普通列車用に設計された型番で、小牛田運輸区以外には郡山、新津、小海線と東日本の各地に配置されている。一方、200番台はマイナーチェンジ車。小牛田運輸区に配置された200番台は、陸羽東線・西線用で、山形新幹線が新庄駅まで延伸されたことに合わせて、増備された。

 

石巻線にも同200番台が走っているが、陸羽東線・西線の愛称が、〝奥の細道湯けむりライン〟また〝奥の細道最上川ライン〟と名付けられることから正面に「奥の細道」というロゴが入る。

↑石巻線を走るキハ110系200番台。この番台は陸羽東線・西線用の車両だが石巻線を走ることも多い。正面に奥の細道のロゴが入る

 

旅客用として入線するのがHB-E210系気動車だ。同車両は仙石東北ライン用の車両として造られ、2015(平成27)年5月30日、仙石線の路線再開に合わせて運転が始められた。運転開始にあたっては、仙石線と東北本線の間に接続線が設けられた。仙石線は直流で、東北本線は交流で電化されている。両線を通して走るために、ディーゼルハイブリッドシステムを活用したHB-E210系が開発されたのだ。

 

この車両が2016(平成28)年8月6日から石巻線の女川駅まで乗り入れている。とはいっても朝一番の女川駅6時発と、女川着22時19分着の最終列車のみの1往復と少ない。

↑仙石東北ライン用のHB-E210系気動車。石巻線では早朝と深夜運転の往復1本のみ同車両が使われる。写真は仙石線内

 

そのほかに、石巻線を走るわけではないが、石巻駅では仙石線を走る国鉄形通勤電車の205系を見ることができる。JRになってから改造された205系3100番台だ。

 

電動車モハは全車両が元山手線を走っていたもの。制御車のクハも元山手線や元埼京線の中間車サハ205形に、運転台を付け、また耐寒仕様に変更された車両だ。

 

205系は当時の国鉄が首都圏用に開発した車両で、山手線に1985(昭和60)年に最初に導入されている。その血を引き継ぐわけで、正面のデザインが変わったものの、年季が入った車両といっていい。

 

昨今、JR東日本では205系の引退を急いでいる。相模線、宇都宮線と新しい車両に置き換わりつつある。この春以降、残るのは鶴見線、南武支線などと、この仙石線ということになりそうだ。すでにE131系への置き換え情報も出てきており、仙石線の205系も数年中には置き換えが始まりそうだ。

↑仙石線の終点駅でもある石巻駅。仙石線は今や貴重な205系が走る路線でもある。水色塗装車のほかにラッピング車両も走る

 

【石巻線を巡る③】石巻線の貨物列車を牽くのはDD200とDE10

石巻線の貨物列車の牽引機について、ここで触れておこう。列車の牽引に使われるのが仙台総合鉄道部に配置されるDE10と、愛知機関区に配置されるDD200形式ディーゼル機関車(以下「DD200」と略)だ。

↑仙台総合鉄道部に配置のDE10-3001号機、2021(令和3)年11月13日の撮影の写真だが、2月初頭現在、走っておらず動向が気になる

まずは、DE10の生い立ちに触れておこう。生まれは1966(昭和41)年で、貨物駅での入れ替え、列車の牽引用にと万能型機関車として、1978(昭和53)年まで708両の車両が生み出された。国鉄からJRとなった後は、JR貨物ばかりでなく、JRの旅客各社に引き継がれ、今も旅客列車の牽引や事業用列車などに役立てられている。

 

とはいっても新しい車両でさえすでに40年以上の経歴を持つ古参となりつつあり、JR貨物、JR旅客会社それぞれ、後継車両への引き継ぎが行われつつある。

 

JR貨物のDE10が貨物列車を牽く路線は数年前までは複数あった。しかし、今は岡山機関区のDE10が山陽本線から水島臨海鉄道に乗り入れる貨物列車を牽引、また東京の拝島駅構内での米軍用の石油タンク車の牽引、また私鉄などの新車を牽く〝甲種輸送〟などに使われるぐらいに減ってしまっている(臨時利用や貨物駅の貨車入れ替え、臨海鉄道などに残るDE10を除く)。

 

石巻線の輸送には2月初頭の時点で2往復、DE10が使われているが、この列車も3月のダイヤ改正後にはどうなるか分からない状況になっている。

 

↑DD200が牽引する貨物列車。石巻線でDE10とともに列車の牽引にあたる

 

DD200は2017(平成29)年に導入された新型の電気式ディーゼル機関車で、貨物駅の貨車の入れ替え作業以外に、ローカル線での列車牽引も可能な仕様となっている。これまで各地のローカル線、貨物支線で行われてきたDE10による列車牽引も徐々に新しいDD200に引き継がれるようになっている。

 

【石巻線を巡る④】起点の小牛田駅で見ておきたいこと

ここから石巻線の旅を楽しむことにしよう。石巻線の起点は小牛田駅だ。同駅では東北本線と、陸羽東線に接続している。石巻線の乗り場は4番線ホームとなる。対面する3番線は東北本線の上りホームだ。

 

4番ホームの東側には側線があり、南には小牛田運輸区がある。ホームと東西自由通路からは、広い運輸区に停車する気動車や貨物列車が見渡せる。ここにはJR東日本が導入した事業用のレール輸送車、キヤE195系の姿を見ることも多くなっている。同車両はJR東海が開発したレール輸送車キヤ97系のカスタマイズ版で、2017(平成29)年の導入時には、こちらの小牛田運輸区に最初に配置された。そうした車両群を小牛田駅では確認しておきたい。

↑東西自由通路から見た小牛田運輸区、下にキハ110系2000番台が停まる。右下は小牛田駅の西口駅前

 

小牛田駅から走る石巻線の列車は1日に18本、そのうち4本が前谷地駅(まえやちえき)から気仙沼線の柳津駅まで走る列車、2本が途中の石巻駅行き、2本が前谷地行きとなる。終点の女川駅まで走るのは1日に11本で、1〜2時間に1本という間隔で運行されている。

 

所要時間は小牛田駅から石巻駅までは33分〜40分ぐらい、女川駅までは1時間15分〜30分といったところだ。

 

小牛田駅から12時42分発の石巻駅行き2両編成へ乗り込む。乗客は5割のシートが埋まる程度で空いていた。出発して間もなく、東北本線の線路から離れ、右にカーブして非電化区間へ入っていく。

 

小牛田駅の周辺に建ち並ぶ民家もすぐに途絶え、左右に水田が広がる風景が続く。このあたりは仙北平野で、銘柄米ササニシキ以外にも最近は、「金のいぶき」といった新しい米が開発され、栽培されている。

↑東北本線の線路から離れ右カーブする石巻線。駅の側線や運輸区から延びる線路とこの付近で合流。電化設備もここまで

 

【石巻線を巡る⑤】前谷地駅で気仙沼線とBRTに接続する

小牛田駅の次の上涌谷駅(かみわくやえき)付近からは国道108号が平行して走るようになる。国道108号は石巻と秋田県の由利本荘市を結ぶ2級国道で、石巻線に付かず離れず走っている。2つめの涌谷駅は石巻線のなかでも、石巻に次いで駅付近に民家が建ち並らび賑わいが感じられる駅だ。とはいっても無人駅なのではあるが。

 

小牛田駅から石巻駅までは高低の差があまりなく、ひたすら平野部を走る。車窓から見る風景は単調だ。涌谷駅周辺の賑わいが絶えると、再び水田風景が広がる。次は前谷地駅だ。この駅は東日本大震災後に大きく変わった駅の一つといって良いだろう。

↑石巻側から前谷地駅構内を見る。気仙沼線の乗換駅だったホームも今は閑散としている

 

↑前谷地駅前(左上)にあるBRT気仙沼線の乗り場。1日5本の気仙沼駅行きが発車する。気仙沼駅までは2時間20分ほどかかる

 

震災前は気仙沼線が気仙沼駅まで走っていて、石巻線との乗換駅でもあった。列車本数こそ少なかったものの、気仙沼駅発、涌谷駅、小牛田駅経由の仙台駅行きの快速列車が1日に2本が走っていた。いま、快速列車は走らず、みな普通列車のみだ。

 

しかも、気仙沼線の鉄道区間として残るのは前谷地駅〜柳津駅間のみで、走る列車は1日に9本だ。その先は気仙沼駅までBRT(バス・ラピッド・トランジット)化されている。一方で、前谷地駅前にはBRTの発着所が設けられ、ここから気仙沼行きのバスが5往復している。列車本数が少ない分、バスが補っているわけだ。

↑気仙沼線と石巻線の分岐ポイント。左が気仙沼線の線路。石巻線の線路をちょうど小牛田行きの列車が走ってきた

 

【石巻線を巡る⑥】石巻駅で仙石線と合流。さて駅前には

前谷地駅の先で気仙沼線と別れた石巻線は、再び広々した田園風景の中を走る。次は佳景山駅(かけやまえき)だ。この駅の先で左から少しずつ大きな堤が近づいてくるのが見える。

 

堤の規模から見て北上川の堤防なのかな、と思ったのだが、調べると旧北上川のものだと分かった。旧北上川と北上川の違いは後ほど触れたい。

 

鹿又駅(かのまたえき)、曽波神駅(そばのかみえき)と読みの難しい駅が続く。旧北上川の堤がさらに近づいてみえるようになり、高速道路の高架橋をくぐる。地図などでは「三陸自動車道」と記される自動車専用道だ。正式には「三陸縦貫自動車道」とされ、仙台市と岩手県宮古市を結ぶ。区間ごとに道路名が異なり分かりにくい道路だが、国道45号として運用され、大半の区間が無料の高速道路だ。同道路が全通したことから、宮城県から岩手県まで三陸海岸沿いの地域の復興工事がより円滑に進むようになっている。一方で平行する気仙沼線、大船渡線は鉄道路線としての復旧は断念され、BRT化された。

 

前谷地駅からはすでに石巻市内へ入っている。とはいえ、石巻の市街地は車窓から見えない。曽波神駅を過ぎるとようやく、民家が増えてくる。右から仙石線の高架が近づいて、合流すると間もなく石巻駅へ到着する。

↑石巻線の石巻駅。駅前には石ノ森章太郎氏の漫画作品のキャラクターを模したモニュメントが飾られている

 

↑石巻駅の3番線に停車する石巻線の列車。向かいには貨物列車が機関車の機回しのために入線していた

 

石巻駅で降りると気がつくことがある。石巻線の貨物列車が入っていることと、駅舎の正面などに漫画家の石ノ森章太郎氏が生んだキャラクターのモニュメントが飾られていることだ。石ノ森章太郎氏は宮城県の登米市(とめし)出身。石巻市内には石ノ森萬画館という記念館(漫画ミュージアム)があることから、こうしたモニュメントが飾られているのだ。

 

ちなみに、東日本大震災の際に石巻線の沿線では曽波神駅から石巻駅、さらに東側の陸前稲井駅が沿って流れていた旧北上川へ津波が遡上し、さらに渡波駅(わたのはえき)が海辺だったこともあり、浸水被害にあっている。

 

【石巻線を巡る⑦】車窓から眺める万石浦の景色が素晴らしい

石巻駅を出発すると間もなく石巻湾に流れ込む旧北上川を渡る。非常に大きな河川で、こちらが北上川の本流と勘違いしてしまうほどだ。

 

現在、北上川は気仙沼線の柳津駅と一つ手前の御岳堂駅(みたけどうえき)の間に架かる北上川橋梁付近で、本流と旧北上川が分岐。本流は石巻市の北東にある追波湾(おっぱわん)へ流れ込んでいる。

↑石巻市街側から望む旧北上川。川幅の広さに圧倒される。本流は追波湾に流れる側なのだが

 

旧北上川橋梁を渡り、堤防を降りると間もなく陸前稲井駅だ。このあたりはまだ内陸の趣だ。大和田トンネルを越えると、石巻湾に面した渡波地区となる。線路は海に向かって降りて行くとともに、大きくカーブして渡波駅へ到着する。渡波駅からは再び丘陵部に近づいていき万石浦駅(まんごくうら駅)、沢田駅と走る。この沢田駅から次の浦宿駅(うらしゅくえき)までの、万石浦沿いを走る区間が石巻線で最も車窓景色が素晴らしい。

↑万石浦に沿って走る石巻線の列車。穏やかな内海で、車窓からの眺めが楽しめる

 

万石浦は、砂嘴(さし)の伸長などによって、入り江が湖となった海跡湖(かいせきこ)とされる。万石浦の場合は渡波付近の砂嘴が伸びていき湖が生まれた。とはいえ、今も石巻湾とは水路がつながっている。豊かな自然が残り、アマモ、アサクサノリ、ウミニナといった絶滅危惧種が生息する地でもある。海苔やカキの養殖も盛んだ。

↑万石浦の北東端にある浦宿駅に停車する石巻線の列車。浦宿駅はホーム一つの小さな駅だ

 

【石巻線を巡る⑧】震災で大打撃を受けた女川だったが……

前述したように浦宿駅までは東日本大震災後、2年で営業再開された。ところが、次の女川駅までの路線復旧は4年後の2015(平成27)年3月21日となる。不通だった期間には、浦宿駅前にバス停が設けられ、女川駅まで代行バスが運行されていた。

 

浦宿駅を発車した列車は国道398号沿いを走り、徐々に堤を上がっていく。女川トンネルを通り抜けたら右カーブ、間もなく終点の女川駅へ到着する。

↑現在の1面1線の女川駅のホーム。以前のホームから200mほど内陸に移動され設けられた

 

この女川駅は、以前の場所から変更されている。震災前には今よりも200mほど海側にあった。駅前には多くの建物があり、賑わいを見せていた女川地区を最大14.8mの大津波が襲う。ちょうど女川駅に停車していた気動車は遠く山の上の墓地まで流された。

 

そんな女川駅もきれいに造り直されている。昔の駅があったエリアは「シーパルピア女川」というショッピングモールに模様替えされ、ショップや飲食店が建ち並ぶ。その向こうには穏やかな女川港が見通せる。

↑女川駅の駅舎には日帰り温泉の「女川温泉ゆぽっぽ」が設けられ、駅前に足湯もある(左)。足湯が利用できない時もあり要注意

 

新しい駅舎には町営の「女川温泉ゆぽっぽ」が館内にある(2月現在一部の施設のみ営業中)。実は旧駅舎に隣接して同じ名前の施設があった。この施設の駅側には朱色の国鉄形気動車キハ40系518号車が停められていて車内は休憩所として利用することができた。このキハ40系も数100m流され、横転し、無残な姿になってしまった。そうした被害の状況をあらためて見聞きし、大震災の怖さを改めて痛感させられた。

↑女川駅の駅舎から望むシーパルピア女川。このちょうど中ほどに旧女川駅があった。その先に女川港が見える

 

↑シーパルピア女川の「地元市場ハマテラス」には干物を販売する店も。天日干しする磯の香りに思わず引きつけられる

 

きれいに造り直された女川の街をぶらり散歩、磯の香りを楽しみしつつ、女川駅に戻り、上り列車に乗り込んだ。さて次は石巻駅へ戻り、貨物列車の動きに注目してみよう。

 

【石巻線を巡る⑨】貨物列車は仙石線経由で石巻港まで走る

石巻線では主に紙製品を積んだコンテナ貨車を連ねた貨物列車が走っている。列車本数は6往復で、荷物が多いときには1往復の臨時便が増便される。

 

石巻線の貨物輸送がどのように行われているか、DE10の動きをメインに見ておこう。

 

DE10が牽引する列車は次のとおり。

 

◇下り1655列車:小牛田11時12分発 → 石巻11時50分着・12時50分発 → 石巻港13時1分着

◇上り654列車:石巻港13時57分発 → 石巻14時9分着・14時41分発 → 小牛田15時39分着

◇下り655列車:小牛田16時51分発 → 石巻17時38分着・17時57分発 → 石巻港18時8分着

◇上り1656列車:石巻港18時44分発 → 石巻18時57分着・19時29分発 → 小牛田20時8分着

 

この4本がDE10の牽引列車だ。655列車と1656列車は夕方発および夜間の列車なので、この季節に、追うことができる列車は1655列車と654列車のみと言って良いだろう。

↑石巻駅で発車を待つDD200牽引の貨物列車。同駅構内で機関車の機回しが行われる

 

石巻駅で下り・上り列車とも、発着にだいぶ時間をかけているのは、これは石巻駅構内で進行方向を変えるためで、機関車を機回しするために必要とする時間だ。小牛田駅から走ってきた下り列車は、石巻駅へ着いたら機回しして進行方向を変更する。次に仙石線を一駅区間のみ走り、陸前山下駅から貨物支線を走り石巻港(貨物駅)へ向かう。

↑陸前山下駅から分岐する貨物支線を走るDE10牽引列車。この支線沿線では東日本大震災時の津波の高さを示す表示が多く見られる

 

石巻港には日本製紙石巻工場が隣接する。積むのはほとんどが同工場で生産される紙製品だ。この地域も東日本大震災による津波の被害を受け、貨物列車の運転再開も1年半後の2012(平成24)年10月のこととなった。

 

貨物支線の沿線を訪れると、各所に「津波浸水深」という津波がこの高さまで来たことを示す表示が多く掲示されていた。住宅地のいたるところにこの表示があり、こんなところにまで津波が届いたのかと驚かされた。

 

【石巻線を巡る⑩】より貴重!映える国鉄色のDE10

石巻線の貨物列車は日曜日に運休となる。そのせいなのか土曜日に沿線を訪れる鉄道ファンの姿が目に付く。とはいっても、首都圏のように人気の列車が走ると多くの鉄道ファンが集まるようなことはなく、静かなものだ。

 

石巻線で鉄道ファンが目立つのは国鉄当時の塗装を残した「原色」塗装のDE10が走る時だ。DE10にはJR更新色と呼ばれる塗装と、古くからの「原色」塗装のままの車両がある。やはり国鉄色の方が人気が高いようだ。

↑JR貨物更新色と呼ばれる塗装のDE10-1120号機。同機は残念ながら昨年に引退となっている

 

石巻線を走るDE10の最新動向を見ると次のDE10が使われている。1539号機、1591号機、1729号機、3507号機、3510号機の5両だ。このうち1591号機、3507号機、3510号機が原色機だ。

 

筆者が訪れた時に出会ったのが3510号機だった。佳景山駅〜前谷地駅間の水田が広がるところで貨物列車の通過を待ち受けた。そして撮影したのが下の写真。国鉄形、しかも国鉄原色ということで、撮影後の充実感に久々に満たされた。国鉄形はやはり〝映える〟と思う。さらに原色機ならではのカッコ良さが感じられる。そんな余韻を胸に前谷地駅から帰りの列車に乗車したのだった。

↑石巻線を走る国鉄原色DE10は貴重になっている。コンテナ貨車を牽く姿は見映えが良いと感じた

 

 

先鋭化するEVシフト! メルセデス・ベンツ「EQA」は“ガソリン車至上主義”のカーマニアの目にどう映る?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、EV(電気自動車)導入に積極的なメルセデス・ベンツの小型EV、EQAを取り上げる。カーマニアの目にはどう映る?

※こちらは「GetNavi」 2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のGODカー】メルセデス・ベンツ/EQA

SPEC【250】●全長×全幅×全高:4463×1849×1624mm●車両重量:1990kg●パワーユニット:電気モーター●最高出力:190PS(140kW)/3600〜10300rpm●最大トルク:37.7kg-m(375Nm)/1020rpm●一充電走行距離:422km

640万円(税込)

 

メルセデス・ベンツが目指す未来形EVが見えてきた

安ド「殿! 殿はEVが嫌いでしたよね?」

 

永福「嫌いというわけではないが、ガソリン車のほうが1億倍好きだ」

 

安ド「物は言いようですね! そんな殿がなぜ今回、メルセデスのEVである『EQA』をリクエストしたんですか」

 

永福「メルセデスは2030年までに、すべての新車をEVにする準備を進めていると宣言した。つまりEV化の本丸だ」

 

安ド「たしかに!」

 

永福「つまり、私にとっては敵の本丸。そこに殴り込んでみようと思っただけだ」

 

安ド「で、どうでした?」

 

永福「……あまり何も感じなかったな」

 

安ド「エッ、それはナゼ!?」

 

永福「EQAは、乗り味がかなり自然だ。アクセルを深く踏み込めば、EVらしく出足はものすごく速いが、普通に踏んでいれば普通に走る」

 

安ド「それはまぁそうですが……」

 

永福「ベースはコンパクトSUVの『GLA』そのものだから、エンジン車と大きくは変わらない」

 

安ド「でも、かなり未来っぽく見えませんか?」

 

永福「グリルの穴をなくして、前後のルックスをより滑らかにしてあるから、ちょうど良い未来感は出ているな」

 

安ド「この高級でヌルッとした雰囲気が、これまでのクルマとは何かが違うと思わせてくれるんじゃないでしょうか!」

 

永福「それはある。しかし、それだけとも言える」

 

安ド「インテリアも、紫色のアンビエントライトがとても似合う雰囲気でした。ここ10年くらい、メルセデスが目指してたのはコレだったのか! と納得しました」

 

永福「言われてみれば、メルセデスのアンビエントライトは、ガソリン車だとラブホっぽく感じるが(笑)、EVだとEVっぽいな」

 

安ド「横長ディスプレイも、ちょうどいい塩梅のサイズになっていて、使いやすかったです。ただ、リアシートはけっこう狭いですね。このクラスですから仕方ないかもしれませんが」

 

永福「後席床下にEVのバッテリーがあって、床が少し高くなっているのも、そう感じる原因だろう。それより私は、このヌルッとした形のせいか、実際よりずっと幅広く感じ、取り回しに気を使ってしまった。これでもメルセデスの最小EVなのだが」

 

安ド「確かに最小ですね!」

 

永福「もうひとつ気になったのは、電費の悪さだ。400km程度あるはずの航続距離が、都内の渋滞走行時では、実測で200kmちょっとしか走れない数値だった。よく見ると、走行には58%しか使っておらず、残りはエアコンやオーディオなどに使われていた」

 

安ド「エッ!? そんなにですか」

 

永福「ひょっとして紫色のアンビエントライトが、電気を大量に食っているのかもしれぬ」

 

安ド「それはないと思います!」

 

【GOD PARTS 1】エンブレム(車名)

タイプは「EQ」、クラスは「A」!

EQAは、EQCに続くメルセデスとして2モデル目のピュアEVとして誕生しました。車名の「EQ〜」というのがEVシリーズを表し、「A」や「C」は車両のクラス、車格を表しています。EQAのベース車は、同社エントリーSUVのGLA。「A」の系譜なんですね。

 

【GOD PARTS 2】リアコンビランプ

曲線で左右を結ぶクールな形状

リアまわりのデザインでひと際目を惹くのが、このリアコンビネーションランプ。左右のランプが繋がっていて、なんだかバカボンに出てくるおまわりさん(本官さん)の目みたいですが、周囲はスッキリしていて、クールな印象です。

 

【GOD PARTS 3】ホイールデザイン

未来的でありながらミステリアス

これまでの同社のホイールといえば、もっとスポーティだったりラグジュアリーだったりと力強いイメージでした。しかしEQAでは、直線が放射線状に並んだ、幾何学模様のようなミステリアスなデザインが採用されています。

 

【GOD PARTS 4】ラゲッジルーム

ワケあって床下収納はなし!

流麗なデザインになっているため開口部はそれほど広くない印象ですが、内部はしっかり340L収納可能な空間が広がっています。ただしフロア下にリチウムイオン電池を搭載しているため、ラゲッジ床下収納はありません。

 

【GOD PARTS 5】給電口

普通充電と急速充電はバラバラに配置

従来のEVだと、フタを開けた中に普通充電と急速充電の給電口が並んでいたり、ボディの左右に分けられていることが多かったのですが、EQAでは右側のフェンダーとバンパーにバラバラに配置されています。あまり美しくありません。

 

【GOD PARTS 6】モーター

高級感を演出する、EVらしからぬアクセルの重み

モーターは従来車のエンジン同様、フロント前方に搭載され、前輪を駆動します。アクセルを踏み込めばその瞬間からスムーズに加速しますが、EQAはアクセルが重くて、重量感があります。高級感と言えるかもしれません。

 

【GOD PARTS 7】ダッシュボード

物置きとして使えない凹みはデザインのため

GLAと基本的には同じデザインで、助手席前には微妙な曲線を描くパネルが設置されています。ここは凹んでいますが、物を置いても安定しません。アンビエントライト(間接照明)に連動してうっすらと光ります。

 

【GOD PARTS 8】パドルシフト

回生ブレーキの制動力をコントロール

「シフト」と言いつつも、これはシフトチェンジ用のパドルではなく、回生ブレーキの強度を調整するコントローラーです。5段階の調整が可能で、最大の「D−−」にすると、アクセルを離すだけでかなり強烈な制動力がかかります。

 

【GOD PARTS 9】フロントブラックパネル

顔の中央を黒くしたグリルのオマージュ!?

全体的に「コレが未来のラグジュアリーのあり方だ!」と思わせる、先鋭的な雰囲気でまとめられています。ガソリン車にあったフロントグリル(正面の空気取り入れ口)は、ピアノブラックのパネルに代えられ、オマージュされています。

 

【これぞ感動の細部だ!】リアバンパー下

ガソリン車のようなえぐれは遊び心?

ボディ後方下部、リアバンパーの両端には、えぐれたようなデザインが見られます。ここは本来、ガソリン車であればマフラーの排気管が見えるあたり。排気ガスを排出しないのでマフラーはありませんが、このような痕跡を残すところにメルセデスの遊び心が見られて楽しいです。

 

撮影/我妻慶一

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

三セク鉄道の優等生「甘木鉄道」の気になる10の逸話

おもしろローカル線の旅78〜〜甘木鉄道(福岡県・佐賀県)〜〜

 

地元で〝甘鉄〟と呼ばれ親しまれる福岡県の筑後地域を走る甘木鉄道は、旧国鉄の路線を引き継いで生まれた。第三セクター方式で運営する路線の多くが運営に苦しむなか、経営状態も良好で〝三セク鉄道の優等生〟と呼ばれることもある。実際、どのように列車を走らせているのか、現地を訪れ、列車に乗車して確かめてみた。

 

*本原稿は2021年までの取材記録をまとめたものです。新型コロナ感染症の流行時にはなるべく外出をお控えください。

 

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九州最南端を走る「指宿枕崎線」−−究極のローカル線珍道中の巻

 

【気になる甘鉄①】朝倉軌道という妙な鉄道が走っていた

東日本では「あまぎ」といえば、伊豆の天城峠を思い浮かべる方が多いのではないだろうか。九州では旧甘木市(現在は隣接の町と合併して朝倉市に)であり、甘木鉄道であろう。まずは概略を見ておこう。

 

路線と距離 甘木鉄道甘木線/基山駅〜甘木駅13.7km、全線単線非電化
開業 1939(昭和14)年4月28日、国有鉄道甘木線、基山駅〜甘木駅間が開業。
駅数 11駅(起終点駅を含む)

 

↑甘木鉄道の路線と周辺のマップ。路線図は甘木鉄道の駅などに掲載されているもの。乗り換えなど非常に分かりやすくできている

 

筑後地域には甘木鉄道が走り出す前まで、複数の軌道路線があった。朝倉軌道、中央軌道、両筑軌道(りょうちくきどう)といった軌道線である。「軌道」を名乗るように、道路上を走る路面電車の路線だ。3社の中でも朝倉軌道の名前は、今も好事家の間で語り継がれている。朝倉軌道は現在のJR二日市駅から甘木(場所は現在の駅より北にあった・上記のマップ・甘木バスセンターの位置)を経て杷木(はき)の間32.2kmを走った軌道線で、かなり妙な鉄道会社だった。

 

鉄道の路線は、国の認可を受けて敷設、変更、また車両を導入する。ところが、この朝倉軌道は国への届け出がいい加減で、車両なども平気で書類と違うものを造り、走らせてしまうこともしばしば。転車台も無許可で導入してしまった。当然、行政指導を受けるわけだが、それも無視といったことを続けていた。だが、1908(明治41)年の路線を開設以来、30年余にわたり事故の記録が残っていないところを見ると、安全管理面はしっかりしていたようだ。

 

甘木線が開業する直前の1939(昭和14)年4月24日に運輸営業停止と補償を申請して、8月21日には運行休止、1941(昭和16)年7月16日には補償金を得ている。国をさんざん悩ませておいて、最後はちゃっかりと補償金を受け取って会社を解散させてしまうという、なかなかの〝猛者〟だった。

 

筑後地域を走った3つの軌道会社は甘木線の開業後すべてが廃止された。ちなみに朝倉市内には〝筑前の小京都〟と呼ばれる旧城下町・秋月があり、戦前は両筑軌道が秋月まで走っていたが、今はバス路線に変わっている。

 

【気になる甘鉄②】甘鉄と愛される鉄道の本来の歴史を見る

余談が長くなったが、甘木鉄道の歴史を見ておこう。

 

甘木鉄道のルーツ、国鉄甘木線は太平洋戦争前に路線が開設されている。この時期は、国が戦備増強に追われていた時期で、同線の開業もそうした側面を持つ。

 

現在の太刀洗駅(たちあらいえき)の近くにあった陸軍の大刀洗飛行場への輸送力を増強するためという側面があった。路線の建設は1935(昭和10)年に決定され、わずか4年後には路線が敷かれた。路線は太刀洗止まりでなく、筑後地域の中心でもある甘木まで造られた。

 

国鉄時代の1981(昭和56)年に第1次特定地方交通線に指定され、廃止が承認。1984(昭和59)年には路線内の貨物輸送が消滅、先細り傾向が強まった。そして、1986(昭和61)年4月1日に第三セクター経営の甘木鉄道に転換された。

↑甘木駅前の交差点に「甘鉄駅前」の文字が(左上)。表示を見ても甘鉄の名が浸透していることが分かる。朝倉市内ではバス運行も盛んだ

 

甘木鉄道への出資は、路線が通る朝倉市、筑前町、基山町といった自治体と、沿線に工場があるキリンビールなどが行っている。通常、三セク鉄道に多い県の出資は福岡県(経営安定基金の拠出のみ)も佐賀県も行っていない。このあたり非常に珍しいケースである。

 

【気になる甘鉄③】8両すべての車体カラーが異なる

甘鉄を走る車両を見ておこう。車両はAR300形7両とAR400形1両の計8両。みな2000年代に入って富士重工業(途中から新潟トランシス社に移管)で新造された。片側2扉、全長は18.5mというややコンパクトな気動車だ。AR400形は同形車で、イベント用として造られたが、現在は他車と連結し、AR300形と同様に運用されている。

↑AR300形AR305は国鉄の急行形気動車と同じクリームと赤の2色で塗られている

 

楽しいのが、全車塗装が異なること。国鉄当時の一般形気動車の塗装や、急行形気動車の塗装、さらに沿線の高校の生徒さんがデザインした車両など、変化に富む。いろいろあって、見ているだけでも楽しい。

 

なお、同鉄道の車庫は終点の甘木駅にあり、日中は、この車庫内に停車している車両も多いので、一気に見たいという時には甘木駅を訪れることをお勧めしたい。筆者が訪れた時には甘木鉄道の〝標準色〟とされるAR301が検修施設に入り整備されていた。

↑甘木鉄道を走る車両をまとめてみた。下の列車のようにAR300形とAR400形が連結して走ることも珍しくない

 

↑右列が国鉄当時のカラーで塗られた車両。上のAR303が一般形気動車の塗装、下が急行形気動車の車体カラー

 

↑甘木駅の検修施設に入庫していたAR301。こちらが甘木鉄道の標準色で、他の車両も当初はこの車体色に塗られていた

 

【気になる甘鉄④】起点となる基山駅のとても簡素な入口

ここからは起点の基山駅から甘木鉄道の旅を楽しんでみよう。

 

列車の本数は多い。平日は42往復で、みな全線を通して走る。土曜・休日はやや減便され下り34往復となる。通勤通学客に対応すべく平日は増便し、朝夕は最短15分間隔、日中も30分間隔で列車が走る。地方の三セク鉄道としては非常に便利な路線と言ってよいだろう。

 

起点はJR鹿児島本線の基山駅で、同駅は佐賀県の基山町にある。同駅のJRの改札を出て、階上にある自由通路を国道3号方面へ向かったところに甘木鉄道の乗り場があるはずなのだが……。

 

JRの改札口側から見ると、それらしき入口がすぐには分からなかった。近づいてみて、上に小さな案内と、その右にこじんまりとした降り口の階段があることに気がついた。意外に目立たない入口だったのである。

 

JR基山駅のホームは1〜3番線、国鉄当時は4番線が甘木線のホームだったそうで、今もJR駅に平行してホームがある。だが、最初に見当たらないと錯覚したように簡素である。何番線という表示もない。同鉄道の駅員も不在の無人駅だ。

 

同鉄道を巡って良く分かったのだが、この鉄道会社は徹底的に無駄をそぎ落としている。反面、利用者に直接関わってくるサービスには力を入れていることが分かった。基山駅もそんな一面を持つ駅で、とにかく簡素だった。

↑基山駅の西口駅舎。東側には国道3号が通る。西と東を結ぶ自由通路に甘木鉄道のホームへ降りる階段がある

 

↑基山駅の自由通路から見た甘木鉄道のホーム。ホームは2両分の長さで、日中は気動車1両が基山駅〜甘木駅間を往復している

 

訪れた時にホームに停車していたのは国鉄急行形塗装のAR305だった。国鉄色とは〝これは幸先が良いかな〟と思い乗り込む。同駅を朝6時33分に発車する〝2番列車〟だった。始発駅では、座席の5割程度という乗車率だった。

 

しばらく鹿児島本線と平行して鳥栖駅方面へ走る。上り坂をあがって国道3号を高架橋で越えた。

 

【気になる甘鉄⑤】小郡市の玄関駅・小郡駅も西鉄の駅と比べると

基山駅から発車した列車はしばらく工場や倉庫が建ち並ぶ一帯を走る。次は立野駅。ここは九州自動車道のちょうど真下にある駅で、甘木鉄道が生まれた翌年に駅が設けられた。高速道路の高架橋が屋根代わりという、なかなかユニークな造りの駅だ。

 

三セク転換とともに、複数の新駅が設けられ、利用者の増加につながっている。こうしたことがなぜ国鉄時代にできなかったのか、不思議に感じるところでもある。この駅までが佐賀県内の駅で、次の駅からは福岡県内に入る。

 

立野駅を発車して間もなく、列車は大原信号場で停止した。全線単線の甘木鉄道では、こうした信号場や駅で上り下り列車の交換を行う。大原信号場は基山駅側にある最初の列車交換のための施設だ。停車した後に、すぐに基山駅行きの列車が通り、下り列車もそれに合わせて信号場を発車、次の停車駅へ向かった。

 

大原信号場は2003(平成15)年4月に開設されたもの。15分ヘッドという密度の濃い運転を可能にするために設けられた。信号場開設のために地元・小郡市(おごおりし)から土地が提供されたという。地元も甘木鉄道をより便利にするため、こうした協力を惜しまなかったわけである。

 

さて、次の駅は小郡駅。その名の通り地元の小郡市の玄関口にあたる駅だ。

↑小郡駅は高架にある。ホームは一本、駅入口と階段があるのみの簡素な駅だ

 

↑西鉄天神大牟田線の線路上を走る甘木鉄道のAR303。西鉄小郡駅の方が規模は大きい(右下)

 

この小郡駅は西鉄天神大牟田線の西鉄小郡駅に近く、乗り換えに利用する人が多い。帰りに立ち寄ってみたが、2駅間の距離は約200mで徒歩3分ほどと近い。こちらは幹線の駅ということで立派だ。西鉄小郡駅の規模に比べると小郡駅は簡素そのものだった。

 

【気になる甘鉄⑥】平行して走る高速バスとの乗り換えも便利

小郡駅では多くの学生たちが乗車してきた。ちょうど朝、通学するのに使う列車だったのである。この駅の特長は、ホームの目の前に高速道路の高架橋が平行して延びていること。大分自動車道の高架橋だ。次の大板井駅(おおいたいえき)まではわずかに700mの距離しかない。

 

実はこの大板井駅のすぐ目の前には高速バスの大板井バスストップがある。大板井駅は甘木鉄道に転換した翌年の開業だ。バス停方面の階段も設けられる。

↑大分自動車道を平行して走る甘木鉄道。この写真の先に大板井駅がある

 

駅と高速バス停が近いことを同鉄道ではしっかりPRしている。路線図には、高速バスのバス停が近いことを表示し、さらに列車の中でも「高速バス乗り換えの方は次でお降りください」とアナウンスしている。

 

駅などの施設は簡素だが、利用者を考えた対応を細かくしている。こうした配慮があれば、同線に初めて乗る人でも、まごつく心配がないだろう。

↑小郡駅から今隈駅(写真)まで甘木鉄道の路線は大分自動車道とほぼ平行して走っている

 

【気になる甘鉄⑦】太刀洗駅の駅名のいわれは?

松崎駅、今隈駅(いまぐまえき)と徐々に乗客が増えてくる。車窓には畑が見えるようになってきた。

 

西太刀洗駅(にしたちあらいえき)、山隈駅(やまぐまえき)と進行方向の左側には広々した畑が広がる。そして太刀洗駅(たちあらいえき)に到着した。入口は小さいが、無人駅ながら駅舎も残る。

 

駅舎の前、その頭上には元航空自衛隊の練習機T-33が飾られている。また駅舎内は「太刀洗レトロステーション」という民間の展示施設(有料)になっていた。

↑太刀洗駅(右上)の駅前から南側を望む。国道500号を挟んだ先には「大刀洗平和記念館」がある

 

太刀洗駅の南側、駅前を通る国道500号の先には筑前町立の「大刀洗平和記念館」がある。戦前にこの地にあった大刀洗飛行場の概要や、終戦間際に行われた特攻隊の出撃、さらに特攻攻撃に用いられた陸軍九七式戦闘機などが展示されている。

 

同施設の南側にはキリンビールの福岡工場がある。こちらの工場は大刀洗飛行場の跡地に造られたそうだ。ちなみに、同工場は見学が可能で、ビールのテイスティング体験なども楽しめる。

 

なお地元の町名は大刀洗町となっている。明治期、官報に村名が誤記載され、それ以来、「太刀洗」と「大刀洗」の2通りの地名が混在しているのだという。

 

さて、太刀洗という文字を見るに〝いかにも〟という駅名なのだが、どのようないわれがあるのだろうか。

↑太刀洗駅を発車するAR304。後ろには脊振山地(せふりさんち)が見えた

 

大刀洗の地名は、文字が示すように刀を洗ったという伝説を元にしていた。歴史をひも解くと、14世紀にこの地で南北朝時代、九州史上最大の合戦と言われる「筑後川合戦」があった。南朝、北朝が地元の豪族たちを巻き込んで行われた戦いで、総勢10万人というからなかなかの規模の戦いだったようだ。その戦いで南朝方の武将、菊池武光が川で刀に付いた血のりを洗ったことから大刀洗になったのだという。

 

大刀洗の言われよりも、この地で10万人という軍勢がぶつかった戦いがあったことに興味を覚えた。

 

【気になる甘鉄⑧】甘鉄の路線に近づいてくる線路は?

太刀洗駅まで来ると、もう終点が近い。各駅で多くの中高生が乗車してきたのだが、その様子にちょっと驚いた。乗車する中高生たちは、非常に静かだった。コロナ禍ということもあったのだろうか。みな進行方向を向き、車両の通路に列を作って整然と立っていた。学校の指導方針が浸透しているのかも知れない。

 

太刀洗駅の次の駅、高田駅を過ぎると、県道を立体交差するために設けられた堤を上る。上りきると、右から線路が一本見えてきた。大きくカーブして甘木鉄道の線路に近づいてくる。一度近づいた線路なのだが、交差や平行することもなく再び遠ざかっていく。

 

この線路は西鉄甘木線で、西鉄天神大牟田線の宮の陣駅と甘木駅間の17.9kmを走る。

↑高田駅〜甘木駅間を走る列車。手前の線路が西鉄甘木線の線路。このように近づいた線路だが、また離れて終点の甘木駅へ向かう

 

線路はこの先で小石原川を渡り、鉄橋を通りそれぞれの終点駅、甘木駅へ向かう。

↑前述の甘木鉄道と西鉄甘木線が最も近づく箇所のすぐ東側にかかる小石原川橋梁。この橋梁を渡れば終点の甘木駅までもうすぐだ

 

【気になる甘鉄⑨】風格ある造りの終点・甘木駅に到着した

起点の基山駅から27分ほどで終点の甘木駅に着いた。朝の列車だったこともあり、中高生が多く乗車していたが、降りる時にも騒ぐことなく静かに降りて行く。そのほとんどが、駅舎を通らずにホームの先へ向かい、車庫の横を通りすぎて、学校へ向かう。日々、歩き慣れた道といった趣だ。

 

よそから来た人間にとって、鉄道の敷地との境界がはっきりしない場所を通ることに違和感を感じたが、地元の人たちにとって、これが当たり前のルートのようだった。

↑甘木鉄道の甘木駅。駅舎内に同鉄道の本社がある。鉄印もこちらで扱われる。甘鉄で唯一の有人駅だ

 

甘木駅の駅舎は甘木鉄道の路線内ではもっとも立派だ。実は11駅ある甘木鉄道の駅で唯一の有人駅なのである。徹底して合理化されているわけだ。

 

この甘木鉄道には「甘木鉄道を育てる会」という応援グループもある。本部は甘木鉄道にあるものの、選任の職員はおらず一般会員(ボランティアスタッフ)により運営されている。「のりたい甘鉄」というホームページを設け、沿線さまざまなガイドを行っている。さらにイベント、七夕列車などの運行支援、清掃活動などの多技の活動をしている。

 

こうした活動を見ると地元では〝私たちの甘鉄〟といった思いを強く感じる。乗って支えるという意識が地元の人たちに強いように思った。

↑こちらは西鉄甘木線の甘木駅。甘木駅は西鉄の駅の方が簡素だ。右下は西鉄甘木線で運行される西鉄7000形

 

甘木駅に降りたあと、西鉄の甘木駅を訪ねてみた。甘木鉄道と西鉄の甘木駅は約200m離れている。歩けば3分の距離だが、どちらも「甘木駅」だ。小郡駅のように、甘木鉄道が小郡駅、西鉄が西鉄小郡駅と変えているようなことは、こちらではない。

 

ちなみに、西鉄の甘木駅は1921(大正10)年12月8日に三井電気鉄道という会社の駅として誕生した。1942(昭和17)年に西日本鉄道(西鉄)に合併、同社の駅となっている。

 

国鉄甘木線の開業よりも前なので、駅名も変えなかったのかも知れない。国鉄の甘木線開業当時には甘木駅は「あまき」と読んだそうだ。西鉄の駅との違いを強調したかったのだろうか。とはいえ、「あまき」は地元からも受け入れられなかった様子で、5か月後に「あまぎ」に改称されている。このあたりの経緯も興味深い。

 

甘木駅から西鉄福岡駅(天神)へ両鉄道を使った場合の差を見てみよう。甘木鉄道を利用した場合には52分(列車乗車のみの時間)、対して西鉄甘木線を利用した場合は1時間11分(前記と同じ)かかる。乗り継ぎがよければ、西鉄甘木線でも所要時間はあまり変わらないが、駅近辺の人の動きを見ると、甘木鉄道への乗客の方がより多いように見えた。

↑甘木駅構内にある車庫。右に検修庫とともに給油施設などが設けられている

 

【気になる甘鉄⑩】甘木駅前に「日本発祥の地」の碑があった

甘木鉄道甘木駅の駅前に立派な碑が立っていた。碑には「日本発祥の地 卑弥呼の里 あまぎ」とある。日本発祥の地というのは本当なのだろうか?

 

卑弥呼は倭国の女王とされている。倭国とは2世紀ごろ、古代中国で呼ばれた日本の国の名前だ。碑の横に案内があって次のような解説があった。

 

要約すると、高天原は邪馬台国で、甘木朝倉地方にあり、その女王、卑弥呼は天照大神(あまてらすおおみかみ)とされるとある。邪馬台国がどこにあったかは諸説ある。解説には大和朝廷の前身は九州にあった邪馬台国で、それが東遷したとあった。

↑甘木駅前に立つ「卑弥呼の里」の碑。右に立つ案内に、甘木朝倉地方こそ邪馬台国であったことが解説されている

 

邪馬台国がどこにあったのかは、九州説、畿内説あり、どちらも絶対とする証拠は出てきていない。日本の歴史のミステリーとなっている。甘木駅前でこのような碑に出会うとは想定外だった。想定しないこととの出会いも旅の楽しさだと改めて感じたのだった。

気になる新車を一気乗り! 電動化の波に乗るポルシェ、三菱のプレミアムモデルをレポート

今回は、ポルシェのタイカン・クロスツーリスモと三菱・新型アウトランダーPHEVをピックアップ。前者はピュアEV、後者はプラグイン・ハイブリッドで、どちらも加速するクルマの電動化を象徴するプレミアムなモデルだ。両車とも独自性は高い。

※こちらは「GetNavi」 2022年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【その1】高速域でも静粛なのはさすがポルシェ!

EV

ポルシェ

タイカン・クロスツーリスモ

SPEC【タイカン4 クロスツーリスモ】●全長×全幅×全高:4974×1967×1409mm●車両重量:2245kg●パワーユニット:電気モーター×2●最高出力:380[476]PS●最大トルク:51.0kg-m●一充電走行距離:360km

●[ ]内はオーバーブースト時

 

ポルシェでありながらSUV的な快適性も実感!

クロスツーリスモは、セダンのタイカンに続くポルシェのピュアEVの第二弾。タイカンをワゴン化したボディにはSUV風の装備がプラスされ、唯一無二の個性的な外観が最大の特徴となる。日本仕様のパワーユニットは、グレードを問わず電気モーターを前後に搭載。駆動方式が4WDのみとなるほか、バッテリーも93.4kWhの総電力量を持つ仕様に統一される点が、セダンのタイカンとは異なるポイントだ。

 

今回はスペック的に最も控えめなタイカン4に試乗したが、動力性能はそれでもスポーティと呼べる水準。静粛にして滑らかなEVらしさはもちろん、それが高速域でも衰えない点はポルシェらしい。一方、足回りはセダンのタイカンとは異なり、スポーツ性が若干ながらマイルドな味付けになっている。これはダート路面なども守備範囲となる使用環境を想定した結果だが、それだけにSUV資質も上々。贅沢な日常の足としても、自信を持ってオススメできる。

 

[Point 1]  ワゴンボディでもスタイリッシュ!

ワゴン化と言っても外観はスタイリッシュ路線。近年の欧州勢で流行しているシューティングブレーク仕立てとなる。そこにSUV的な装備を追加したことで独自性は十分だ。

 

[Point 2] SUVらしい用途にもしっかり対応

荷室容量はタイカン4の場合でフロント側が84L。リア側は446〜1212Lで、セダンモデルを大幅に上回る。

 

[Point 3] 後席は頭上回りの空間が拡大

前席回りの作りは、基本的にセダンのタイカンと同じ。助手席側にもタッチパネル式のディスプレイが追加できる。後席はワゴン化することで頭上スペースが拡大された。

 

[ラインナップ]

タイカン4:電気モーター×2/4WD/1341万円(税込)
タイカン4S:電気モーター×2/4WD/1534万円(税込)
タイカン・ターボ:電気モーター×2/4WD/2056万円(税込)

 

【その2】これぞ電気駆動モデル最強のオールラウンダー!

SUV

三菱

アウトランダーPHEV

SPEC【P】●全長×全幅×全高:4710×1860×1745mm●車両重量:2110kg●パワーユニット:2359cc直列気筒DOHC+ツインモーター●最高出力:133[116/136]PS/5000rpm●最大トルク:19.9[26.0/19.9]kg-m/4300rpm●WLTCモード燃費:16.2km/L●EV走行換算距離:83km

●[ ]内は電気モーター(前/後)の数値

 

自慢の車両制御技術で走りも十分楽しめる!

SUVのプラグイン・ハイブリッド車としては、世界的ヒット作となったアウトランダーPHEV。2021年12月に正式発売となった2代目では、その万能選手ぶりに一層の磨きがかかっている。

 

まず、2.4Lガソリンエンジン+前後電気モーターという駆動システムの基本構成こそ先代と変わらないが、電気モーターは前後とも大幅に出力が向上。エンジンも高効率化されたほか、駆動用バッテリーは総電力量が13.8kWhから20kWhへと大容量化。EV走行時の最大航続距離は60km台だった先代を大幅に凌ぐ最大87kmを実現し、走行性能も底上げされた。また、電力の供給能力も最大では一般家庭の約12日ぶんに相当するという(先代は約10日ぶん)。

 

しかし、実際に試乗して何よりも新鮮だったのは電動化や4WD技術に長けた三菱の最新作らしい走りだ。実に7つもの選択肢を用意する走行モード切り替えは、走りのキャラクターを鮮やかに変化させてドライバーを楽しませる。今回は舗装路のみでの試乗だったが、例えばターマックモード選択時の身のこなしなどはSUVとは思えないほどスポーティ。その一方、通常時は走行性能も快適で質感も上々。このクラスのSUVとして、いかに魅力的な存在であるかは言うまでもないだろう。

 

[Point 1] 室内は上質感もアピール

シンプルなデザインだが、細部に至る作り込みで先代より質感が格段に向上。もちろん、最新モデルらしく運転支援システムなども充実している。走行モード切り替えはダイヤルを採用しワンタッチだ。

 

[Point 2] モード切り替えの恩恵を実感できる走り

今回はサーキットでの試乗のみだったが、舗装路用のモード切り替えだけでも走りのキャラクターは鮮やかに変化。SUVとは思えない楽しさを実感できた。

 

[Point 3] グレードによって7人乗りも用意

先代のPHEVモデルは5人乗りのみだったが、新型では3列シートの7人乗りも選択可能に。もちろん3列目は小柄な人向けだが、SUVとしては見逃せないメリットとなりそうだ。

 

[Point 4] 使い勝手も期待通り

荷室は、このクラスのSUVとしては十分に実用的。容量は3列目使用時こそ258〜284Lだが、3列目収納時では634〜646L、後席をすべて畳めば1373〜1390Lまで拡大する。

 

[Point 5] 三菱車の旗艦に相応しい仕立てに

駆動システムだけでなく骨格や足回りも着実に進化。外観も格段に存在感が高められた新型は、三菱のフラッグシップモデルという役割も担う。

 

[ラインナップ]

M:2.4L+前後電気モーター/4WD/462万1100円(税込)
G:2.4L+前後電気モーター/4WD/490万4900円(税込)(※)
P:2.4L+前後電気モーター/4WD/532万700円(税込)
※:7人乗りの価格は499万6200円(税込)

 

文/小野泰治 撮影/篠原晃一、小林俊樹

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

三菱・新型「アウトランダーPHEV」は、電気駆動モデル最強のオールラウンダー!

今回は、三菱・新型アウトランダーPHEVをピックアップ。プラグイン・ハイブリッドで、加速するクルマの電動化を象徴するプレミアムなモデルだ。独自性は高い。

※こちらは「GetNavi」 2022年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

自慢の車両制御技術で走りも十分楽しめる!

SUV

三菱

アウトランダーPHEV

SPEC【P】●全長×全幅×全高:4710×1860×1745mm●車両重量:2110kg●パワーユニット:2359cc直列気筒DOHC+ツインモーター●最高出力:133[116/136]PS/5000rpm●最大トルク:19.9[26.0/19.9]kg-m/4300rpm●WLTCモード燃費:16.2km/L●EV走行換算距離:83km

●[ ]内は電気モーター(前/後)の数値

SUVのプラグイン・ハイブリッド車としては、世界的ヒット作となった「アウトランダーPHEV」。2021年12月に正式発売となった2代目では、その万能選手ぶりに一層の磨きがかかっている。

 

まず、2.4Lガソリンエンジン+前後電気モーターという駆動システムの基本構成こそ先代と変わらないが、電気モーターは前後とも大幅に出力が向上。エンジンも高効率化されたほか、駆動用バッテリーは総電力量が13.8kWhから20kWhへと大容量化。EV走行時の最大航続距離は60km台だった先代を大幅に凌ぐ最大87kmを実現し、走行性能も底上げされた。また、電力の供給能力も最大では一般家庭の約12日ぶんに相当するという(先代は約10日ぶん)。

 

しかし、実際に試乗して何よりも新鮮だったのは電動化や4WD技術に長けた三菱の最新作らしい走りだ。実に7つもの選択肢を用意する走行モード切り替えは、走りのキャラクターを鮮やかに変化させてドライバーを楽しませる。今回は舗装路のみでの試乗だったが、例えばターマックモード選択時の身のこなしなどはSUVとは思えないほどスポーティ。その一方、通常時は走行性能も快適で質感も上々。このクラスのSUVとして、いかに魅力的な存在であるかは言うまでもないだろう。

 

[Point 1] 室内は上質感もアピール

シンプルなデザインだが、細部に至る作り込みで先代より質感が格段に向上。もちろん、最新モデルらしく運転支援システムなども充実している。走行モード切り替えはダイヤルを採用しワンタッチだ。

 

[Point 2] モード切り替えの恩恵を実感できる走り

今回はサーキットでの試乗のみだったが、舗装路用のモード切り替えだけでも走りのキャラクターは鮮やかに変化。SUVとは思えない楽しさを実感できた。

 

[Point 3] グレードによって7人乗りも用意

先代のPHEVモデルは5人乗りのみだったが、新型では3列シートの7人乗りも選択可能に。もちろん3列目は小柄な人向けだが、SUVとしては見逃せないメリットとなりそうだ。

 

[Point 4] 使い勝手も期待通り

荷室は、このクラスのSUVとしては十分に実用的。容量は3列目使用時こそ258〜284Lだが、3列目収納時では634〜646L、後席をすべて畳めば1373〜1390Lまで拡大する。

 

[Point 5] 三菱車の旗艦に相応しい仕立てに

駆動システムだけでなく骨格や足回りも着実に進化。外観も格段に存在感が高められた新型は、三菱のフラッグシップモデルという役割も担う。

 

[ラインナップ]

M:2.4L+前後電気モーター/4WD/462万1100円(税込)
G:2.4L+前後電気モーター/4WD/490万4900円(税込)(※)
P:2.4L+前後電気モーター/4WD/532万700円(税込)
※:7人乗りの価格は499万6200円(税込)

 

文/小野泰治 撮影/小林俊樹

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

どんな違いがある? 超パワフル極太タイヤの個性派e-Bike3モデルを比較してみました

街中で見かけると、一瞬「バイク!?」と思ってしまう迫力がある極太のタイヤを装着したe-Bike。このところ、ラインナップが増え、一気に勢力を拡大しています。これだけ太いタイヤを履いていても、重さを感じずに走ることができるのはe-Bikeならではの魅力。街中での目立ち度も抜群のカテゴリーから、3モデルをピックアップして、どんな違いがあるのか比較してみました。

 

【今回比較した3モデルはコチラ】

その1

アパレルブランドが手掛けた個性派e-Bike

ROCKA FLAME(ロカフレーム)

HAYATE

26万4000円(税込)

アパレルブランドからスタートしたロカフレームがリリースするe-Bike。BMX風のフレームに極太タイヤという組み合わせで、独特のルックスに仕上がっています。フロントはサスペンションも装備し、バイクのようなシルエット。写真の車両に装着されているフロントライトはオプションです。サイズは全長1695×全幅590mm、重量31.8kg。

 

その2

デンマークから上陸したインパクト抜群の1台

MATE. BIKE

MATE X

33万円〜(税込)

自転車都市として知られるデンマークの首都コペンハーゲンで生まれたe-BikeブランドがMATE. BIKE。「MATE X」は極太タイヤに折り畳み可能なフレームを組み合わせ、見た目のインパクトは抜群ですが、自転車のヘビーユーザーである開発者が感じたニーズを解決するために作られた都市型のe-Bikeです。シーズンカラーもあわせて全11色も揃えている豊富なボディカラーも魅力です。サイズは全長1800×全幅650mm(通常時)、重量28.5kg(バッテリー含む)。

 

その3

イタリア生まれのモペッドの名を冠したモデル

FANTIC(ファンティック)

ISSIMO(イッシモ)

39万6000円(税込)

イタリアのバイクブランドであるFANTICがリリースする「ISSIMO」は、同ブランドが過去に販売していたモペッド(ペダル付きのスクーター)から名称を取ったもの。跨ぎやすいステップスルータイプのフレームにバイクのようなタイヤ、そしてマウンテンバイクを思わせるような幅広のハンドルという組み合わせがユニークです。さまざまなデザインやカラーのサイドカバー(オプション)も追加可能で、ユーザー好みのカスタムも楽しめます。重量は33.5kg。

 

【比較ポイントA】ドライブユニット

e-Bikeの心臓部となるのがモーターを内蔵したドライブユニット。アシストの駆動力やフィーリングを決定づける重要なパーツですが、今回比較試乗した3モデルはいずれもBAFANG(バーファン)製を採用しています。そしてISSIMOだけが、e-MTBなどに採用される「M500」という上級グレードのセンタータイプのユニットを装備。残りの2モデルはリアホイールの車軸(ハブ)と一体となったハブモータータイプを装備しています。

 

【その1】ROCKA FLAME「HAYATE」

↑HAYATEはハブモータータイプですが、キャストホイールと一体となったタイプを採用。ホイールもBAFANG製です

 

【その2】MATE. BIKE「MATE X」

↑スポークタイプのホイールにハブモーターを採用するMATE X。シルエットへの影響が少なく、デザイン自由度が高いのが特徴

 

【その3】FANTIC「ISSIMO」

↑80Nmという高トルクを発揮する「M500」を採用するISSIMO。車体中央のペダル軸部分に搭載するセンタータイプのユニットです

 

【比較ポイントB】バッテリー

バッテリーもe-Bikeの性能やデザインに影響する重要なポイント。HAYATEは、ペダル部分にバッテリーを搭載するという世界初の設計を採用しています。MATE Xは太いフレームの内部にバッテリーを内蔵。ISSIMOは外付けタイプのバッテリーですが、フレームと一体でデザインされていて、3モデルとも車体デザインへの影響を極力少なくするための配慮が感じられます。

 

【その1】ROCKA FLAME「HAYATE」

↑ペダル部分にSAMSUNG製バッテリーを搭載するHAYATE。容量は36V/9.6Ah(345.6Wh相当)で、走行モードに応じて200〜70kmのアシスト走行が可能です

 

【その2】MATE. BIKE「MATE X」

↑MATE Xはフレームにバッテリーを内蔵。容量は48V/14.5Ah (696Wh)と48V/17.5Ah(840Wh)から選べ、それぞれ80kmと120kmのアシスト走行を実現します

 

【その3】FANTIC「ISSIMO」

↑フレームと一体デザインされたISSIMOのバッテリー。容量は630Whで、アシスト走行可能な距離は70〜120kmとされています

 

 

【比較ポイントC】フレーム形状

今回比較する3モデルで大きく異なるのがフレーム形状です。HAYATEは前述したようにBMX的なシルエット。MATE Xはバッテリーの収まる四角く太いフレームですが、折り畳み可能という点がユニークです。ISSIMOは乗り降りがしやすいステップスルー型のフレーム形状ですが、トラス(ハシゴ)状のデザインで剛性を確保している点が個性となっています。

 

【その1】ROCKA FLAME「HAYATE」

↑溶接跡の美しいアルミ製のフレームを採用するHAYATE。自転車らしい三角を組み合わせたシルエットです

 

【その2】MATE. BIKE「MATE X」

↑MATE Xはブランドロゴの映える極太フレームが特徴。折り畳めば全高780×全長1030×全幅590×mmのサイズまでコンパクトにできます

 

【その3】FANTIC「ISSIMO」

↑湾曲したステップスルー型のフレームは剛性が落ちやすいのですが、ISSIMOはトラス構造とすることで剛性を確保

 

 

【比較ポイントD】ハンドル周り

ハンドル形状やそれに伴うライディングポジションも3車3様で個性的。HAYATEはハンドルもBMX的な形状ですが、やや後ろめに座るのでライディングポジションはクルーザー的です。MATE Xは高さ調整可能なハンドルなので、体格や好みに応じてライディングポジションを変更可能。ISSIMOはかなり幅の広いハンドルが付いていて、跨るとマウンテンバイクのような姿勢かと思えば、大きめなサドルが後方に付いていているので、どれにも似ていない独特のライディングポジションになります。

 

【その1】ROCKA FLAME「HAYATE」

↑シルエットはBMX的なHAYATEのハンドルですが、手前にベンドしていてゆったり乗れる姿勢になります

 

【その2】MATE. BIKE「MATE X」

↑MATE Xのハンドルは一文字形状。高さ調整が可能なので、高くすることで上体を起こして乗ることもできます

 

【その3】FANTIC「ISSIMO」

↑ほかの2モデルに比べて圧倒的に幅が広いISSMOのハンドル。形状は上に向かって湾曲していてリラックスして握れます

 

 

【比較ポイントE】変速ギア/ブレーキ

変速ギアは3車ともリアのみですが、HAYATEは外装の7速、MATE Xは外装の8速、そしてISSIMOは内装式の8速ギアを採用しています。内装式は重量が重くなるのですが、停止中でも変速操作ができるのがメリットです。3モデルともブレーキは全てディスクブレーキですが、HAYATEは機械式、ISSIMOは油圧式。MATE Xだけは、機械式と油圧式が用意されていて選べるようになっています。

 

【その1】ROCKA FLAME「HAYATE」

↑HAYATEの変速ギアは、シマノ製Tektroグレードの7速

 

【その2】MATE. BIKE「MATE X」

↑シマノ製ALTUSグレードの8速ギアを装備するMATE X

 

【その3】FANTIC「ISSIMO」

↑唯一の内装ギアを採用するISSIMO。段数は5速です

 

【比較ポイントF】走行フィーリング

乗ってみたフィーリングもそれぞれ個性的ですが、共通するのは極太のタイヤから想像されるペダルの重さは全く感じないこと。重量もあるのに重さを感じずに走れるのはアシストの恩恵です。

 

【その1】ROCKA FLAME「HAYATE」

一番、自転車らしい走行フィーリングだったのはHAYATE。ペダルに踏んでいる感覚が伝わってくるので、3モデルの中ではアシストが弱めと言えるかもしれませんが、クルーザーのようなポジションで流している限りは脚に疲れを感じることはありませんでした。

↑重量は31.8kgの「HAYATE」。唯一キャストタイプのホイールが装備されていて、タイヤが転がっている感覚がダイレクトに伝わってきます

 

【その2】MATE. BIKE「MATE X」

今回試乗した3モデルの中で唯一ブロックタイプのタイヤを履いているMATE Xですが、そのことによるネガティブな要素はほとんど感じませんでした。重量が3モデルの中で一番軽いというのもありますが、最も軽快な乗り味に感じたほど。アシストでスイスイ進んで行く感覚が気持ちいいです。

↑MATE Xの重量は28.5kg(バッテリー含む)と3モデルの中では一番軽量。ペダルの踏み心地も軽く、前後サスペンションの効果で凸凹道も気にせず走れました

 

【その3】FANTIC「ISSIMO」

一番、アシストが強く感じたのはM500ユニットを装備したISSIMO。3モデルの中で重量は一番重いのですが、それを感じない走行性です。ペダルにつながるクランクが短いのもあって、ペダルを踏み込むというより、クルクル回していればアシストの力で進んで行ける感覚。ポジションも相まってe-Bikeでしか味わえない乗り味です。

↑33.5kgと一番車重があるISSIMOですが、アシストは最も強力でバイクに近い乗り心地。幅広のハンドルとサドルによる乗車姿勢もユニークです

 

 

【今回のまとめ】

今回試乗した3モデルは走行していて、どれも重さが気になるようなことはありませんでした。どのモデルもスタイルの個性が強いので、見た目の好みで選択しても大丈夫でしょう。

 

ただ、乗り味も含めて選ぶのであれば、やはり価格の高いISSIMOがアシストの強さやブレーキなどのフィーリングも含めて一番走行性能が良好でした。次に良かったモデルが、数値以上に軽く感じたMATE X。街中を走っていて、一番注目を集めたのもこのモデルでした。HAYATEはスタイル的にも乗り味としても、最も自転車らしいもの。

 

3モデルともバイクと自転車の中間に位置するようなe-Bikeならではの乗り心地を持っているので、新しい物好きな人には見逃せないカテゴリとなっています。

 

撮影/松川 忍

 

 

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高速域でも静粛なのはさすが! ポルシェのEV「タイカン・クロスツーリスモ」に試乗

今回は、ポルシェのタイカン・クロスツーリスモをピックアップ。ピュアEVで、加速するクルマの電動化を象徴するプレミアムなモデルだ。独自性は高い。

※こちらは「GetNavi」 2022年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

ポルシェでありながらSUV的な快適性も実感!

EV

ポルシェ

タイカン・クロスツーリスモ

SPEC【タイカン4 クロスツーリスモ】●全長×全幅×全高:4974×1967×1409mm●車両重量:2245kg●パワーユニット:電気モーター×2●最高出力:380[476]PS●最大トルク:51.0kg-m●一充電走行距離:360km

●[ ]内はオーバーブースト時

クロスツーリスモは、セダンのタイカンに続くポルシェのピュアEVの第二弾。タイカンをワゴン化したボディにはSUV風の装備がプラスされ、唯一無二の個性的な外観が最大の特徴となる。日本仕様のパワーユニットは、グレードを問わず電気モーターを前後に搭載。駆動方式が4WDのみとなるほか、バッテリーも93.4kWhの総電力量を持つ仕様に統一される点が、セダンのタイカンとは異なるポイントだ。

 

今回はスペック的に最も控えめなタイカン4に試乗したが、動力性能はそれでもスポーティと呼べる水準。静粛にして滑らかなEVらしさはもちろん、それが高速域でも衰えない点はポルシェらしい。一方、足回りはセダンのタイカンとは異なり、スポーツ性が若干ながらマイルドな味付けになっている。これはダート路面なども守備範囲となる使用環境を想定した結果だが、それだけにSUV資質も上々。贅沢な日常の足としても、自信を持ってオススメできる。

 

[Point 1]  ワゴンボディでもスタイリッシュ!

ワゴン化と言っても外観はスタイリッシュ路線。近年の欧州勢で流行しているシューティングブレーク仕立てとなる。そこにSUV的な装備を追加したことで独自性は十分だ。

 

[Point 2] SUVらしい用途にもしっかり対応

荷室容量はタイカン4の場合でフロント側が84L。リア側は446〜1212Lで、セダンモデルを大幅に上回る。

 

[Point 3] 後席は頭上回りの空間が拡大

前席回りの作りは、基本的にセダンのタイカンと同じ。助手席側にもタッチパネル式のディスプレイが追加できる。後席はワゴン化することで頭上スペースが拡大された。

 

[ラインナップ]

タイカン4:電気モーター×2/4WD/1341万円(税込)
タイカン4S:電気モーター×2/4WD/1534万円(税込)
タイカン・ターボ:電気モーター×2/4WD/2056万円(税込)

 

文/小野泰治 撮影/篠原晃一

 

 

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いよいよ運転開始!世界初DMV路線「阿佐海岸鉄道」を探訪した【後編】

おもしろローカル線の旅77〜〜阿佐海岸鉄道(徳島県・高知県)〜〜

 

2021(令和3)年12月25日、待望のDMV(デュアル・モード・ビークル)が、阿佐海岸鉄道を走り始めた。世界初の鉄道運行システムがどのようになされているのか。さらにどんな乗り心地なのかを、見て、乗って、さらに南の室戸市まで週末に1本のみ走る〝特別列車〟も追ってみた。

 

【関連記事】
いよいよ運転開始!世界初のDMV導入へ!「阿佐海岸鉄道」を探訪した【前編】

 

【初DMVの旅⑥】走る〝列車〟は1日に15往復

まず、DMVのダイヤを見ておこう。運行されるのは「阿波海南文化村」と「道の駅宍喰温泉(みちのえきししくいおんせん)」の区間で、このうち阿波海南駅〜甲浦駅(かんのうらえき)間が鉄道モードで走る区間となる。そのほか土日祝日のみ、通常の走行区間から、室戸市の「海の駅とろむ」まで行く便が1本まである。

↑鉄道モードで走るDMV車両。開業した2021(令和3)年のクリスマスの週末は好天に恵まれ多くの来訪者で賑わった

 

1日の運行本数は15往復で、朝6時台から夕方18時台まで。日中は、およそ1時間に1〜2本が走る。鉄道路線区間では下り上り〝列車〟の行違い交換ができないため、日中は列車間隔が空いてしまう時間帯が多少あるものの、およそ均等なダイヤに造られている。さらに終〝列車〟は「道の駅宍喰温泉」19時5分着と、夜には運行しないという〝割り切った〟ダイヤが組まれた。

 

DMV導入前のダイヤは、下りが1日19本、上りが1日に18本と、現在よりも多かった。とはいうものの一部区間のみの運行という列車もあり、全列車が全区間を走ったわけではなかった。夜は20時台まで運行されていたが、朝夕の列車の間隔はほぼ現在と同じと見ていいだろう。

 

ちなみに、DMV導入後の阿波海南駅でのJR牟岐線の列車との接続だが、日中の一部に乗り継ぎしにくい列車があるものの、朝夕はスムーズに乗り継ぎできる設定になっている。

↑阿波海南鉄道のDMV車両が走る区間のマップ。土日祝日のみ室戸市内(左上)まで走る

 

【初DMVの旅⑦】DMVのモードチェンジにみな興味津々

DMVの一番の特長といば、バスから鉄道車両へ、また鉄道車両からバスへ変更されることだ。この変更を阿佐海岸鉄道では「モードチェンジ」と呼んでいる。実際にモードチェンジはどのように行われているのか見ることにした。

 

モードチェンジの模様を見るために訪れたのは阿波海南駅。JR牟岐線との接続駅である。駅舎の横には、発着する〝列車〟の停留所が設けられ、サーフボードの形をしたバス停の表示が立つ。鉄道の駅というよりもバス停という趣が強い。

↑阿波海南駅の停留所。こちらは甲浦駅方面への乗り場で、このあとモードインターチェンジへ入る

 

筆者が訪れた日は運行開始2日目の日曜日ということもあり、どのような乗り物なのか見物に訪れた人も多かった。〝列車〟はほぼ満席に近い状態で動いていた。1台に乗車できる乗客は21人と少なめなこともあり、運行開始当初はほぼ予約で埋まった〝列車〟も多かった。

 

阿波海南駅の停留所の奥にバスから鉄道車両へ変更する「モードインターチェンジ」がある。DMV車両は始発停留所の「阿波海南文化村」からここまでタイヤで走行し、阿波海南駅で鉄の車輪を出して鉄道車両へと変わる。

↑阿波海南駅の「モードインターチェンジ」。ここで線路が終了するという「車止標識」が付く。右にはJR牟岐線の車止めが見える

 

バスモードから鉄道モードへ変更する「モードインターチェンジ」。先が細くなった形の走行路になっており、バスとして走ってきたDMV車両が、ややずれて進入したとしても、車両はほぼ線路の上に導かれる構造となっている。

 

阿波海南駅の「モードインターチェンジ」の横には「撮影スポット」という立て札のある〝見物スペース〟があり、モードチェンジの様子を見ることができる。

↑日曜日の午前中から多くの人が阿波海南駅を訪れていた。どのようにDMVが動くのか、みな興味津々で見守っていた

 

【初DMVの旅⑧】鉄道モードへ変更する様子を見る

阿波海南駅の停留所で乗客を乗せたDMV車両がモードインターチェンジへ進み、停止位置の標識が立つところで停車する。そしてモードチェンジを行う。

 

ややエンジン音が高まり、下から鉄の前輪がせりあがるように出てくる。この前輪が下の線路に付くと、さらに突っ張るように動き、それにつれて車体の前方が徐々に持ち上がっていく。

↑DMVがモードインターチェンジに入り、徐々に鉄の前輪が出てくる様子。車体がだいぶ持ち上がったことが分かる

 

前輪を出して車体が持ちあがるまで約15秒。この時に後輪も同時に出てくる。少しすると運転士が右のドアを開けて出てきた。何をするのか注目していると、後ろに回って後輪がしっかり線路に載っているかをチェック、また前にまわって前輪がレールの上に間違いなく載っているかをチェックしていた。

 

モードチェンジが済んだらすぐに走り始めるのではなく、指さし確認をしていたのだ。これは現地に行かなければ、気がつかないことだった。

↑モードチェンジ終了後、鉄の車輪がしっかり線路に載っているかどうか、外に運転士が出て〝指さし確認〟をしていた

 

↑DMVの後輪がレール上に載った様子。駆動用の後輪タイヤよりも鉄の車輪が後ろにある

 

このチェックが済むと準備完了だ。モードチェンジ自体は15秒ながら、さまざまな確認作業や、マイクロバスがベースのDMVのため運転士のシートベルトを着脱するなどの行程がある。計測してみるとモードインターチェンジに進入してから約2分15秒でDMVは走り始めた。

 

走り出すと鉄道車両のように車輪がレールの上を走る音、さらに〝たん、たん〟と線路のつなぎ目をわたるシンプルな音が聞かれた。

【初DMVの旅⑨】バスモードへの変更はあっという間

鉄道モードからバスモードに変更される時はどのような様子なのだろうか。

↑阿波海南駅のモードインターチェンジで、鉄道モードからバスモードへの切り替えの様子。あっというまに車輪が収納された

 

こちらはいたってシンプルだ。駅が近づくと、いったん停車。そして「モードインターチェンジ」にゆっくりと近づき、入り口にある停車位置で車両を停止して、鉄輪を収めていく。この収める時間が約10秒、停止位置に止まって、モードチェンジ、さらに走り始めるまで約50秒で済んだ。

 

バスモードに変更した後は、タイヤでの走行となるため、レールに載ったかどうか、確認する作業は必要ないこともあり、運転士が外に出ることはない。このあと車両は停留所へ移動する。

 

バスモードから鉄道モードへ変更する時間よりも、鉄道モードからバスモードへ変更する時間の方が圧倒的に短くシンプルであることが良く分かった。

↑甲浦駅のモードインターチェンジで、鉄道モードからバスモードへ切り替える。見学できるように元ホーム(右)への階段が開放されている

 

【初DMVの旅⑩】乗った人たちの声と地元の盛り上がり

期待を背負って導入された日本最初のDMVだが、乗車した人の感想や地元の盛り上がりはどうだったのだろう。まずは乗車した人の声から。長野県から鉄道を乗り継いで来たという男性。

 

「何度も乗ったからちょっと飽きたかな」となんとも贅沢な答え。聞くと前日のDMVが走り始めた日の午後に訪れ、すでに3回乗車したそう。「でも、新しい乗り物に乗車できたから満足です」とのことだった。

もう1人、徳島市からやってきたという女性にも話を聞いてみた。家族は車で移動し、当人のみDMVに乗車したのだという。「初めて乗ってみましたが、なかなか面白い乗り物ですよね」と楽しそうに話す。乗車した後は、先回りした家族にピックアップしてもらう予定だとか。ご主人や息子さんよりも先に乗ったのだという。〝鉄道愛〟を感じる女性だった。

 

東京からお遍路サイクリングで四国を回っているという30代の男性もいた。DMVが走り始めたというので、どのような乗り物なのか甲浦駅へ立ち寄ったのだという。モードチェンジをする様子をカメラに収め、満足した様子。「旅のいい思い出になりました」と笑顔で立ち去った。

↑DMVが出発する阿波海南文化村の停留所(左上)には横断幕やのぼりが多数つけられていた

 

受け入れる側の沿線はどのような状況だったのだろう。バスとして走る区間にある3か所の停留所には写真のような横断幕やのぼりが多く立てられて、「世界初のDMV」ということが盛んにPRされていた。

 

徳島県海陽町の「阿波海南文化村」や「道の駅宍喰温泉」、また高知県東洋町の「海の駅東洋」といった停留所には、おそろいのキャップと、ウインドブレーカーを着た地元の女性たちが乗客を出迎えていた。話を聞いてみると婦人会の方々とのこと。

 

「自分たちが出迎えても、あまり役立たないかもしれませんが、少しでも盛り上げることができたなら」ということだった。注目されることが少ないエリアだけに、世界初の自慢の乗り物が導入されて誇らしいという気持ちとともに、少しでもPRに協力したいという気持ちが地元に生まれているのだろう。こうした面でDMV導入は〝正解〟だったと言えそうだ。

 

訪れた日は走り始めたばかりの週末ということもあり、ほぼ満席で走っていた。「発車オーライネット」という予約システムも稼働していおり、ネットで事前予約した人が大半を占めていた。天気に恵まれたこともあり、乗客以外にも多くの人が訪れ、DMVの運行を見守る人も目立った。

↑終点となる「道の駅宍喰温泉」に到着した乗客を地元の人たちが出迎えていた

 

【初DMVの旅⑪】DMVに実際に乗ってみて感じたこと

当日すぐに乗ろうと思ってもなかなか乗車できなかったDMVだったが、なんとか乗車できないか停留所にいた係の人や運転士に聞いてみた。すると、道の駅宍喰温泉発の〝列車〟で運良く1席が空いているという。

 

ということで乗車したのは緑の2号車・DMV932、ニックネームは「すだちの風」。指定された席は通路側、マイクロバスということもあり、やや席は狭い印象だ。天井部分には沿線の小学校の子どもたちが描いた絵が多く飾られている。

 

乗車したDMV車両は「道の駅宍喰温泉」を12時3分に出発。まずは国道55号を走る。左に見えるのは太平洋。青くまぶしい海だった。約5分で次の「海の駅東洋町」に到着した。ここでも地元の女性たちが、出迎え、見送りをしていた。同停留所を12時9分に発車する。

 

次の停留所は甲浦駅だ。ここからは鉄道路線を走る。停留所から専用スロープを上っていく。このスロープは鉄道車両ではとても登れないような急坂で、このあたりがDMVの強みだろう。鉄道施設用として造るスロープよりも、よりコンパクトに造ることができそうだ。

 

DMVはモードインターチェンジで停まり、バスモードから鉄道モードに変更される。さてどのような動きをするのだろう。変わるのを待っていると車内にアナウンスが流れた。

 

「鉄道モードにモードチェンジを行います」。続いて英語の解説が流れる。「モードチェンジ!」の声とともに、ソレソレ、セイヤ、セイヤの掛け声とお囃子が車内に流れる。お囃子で盛り上がったところで突然に「フィニッシュ!」のアナウンスが。最初の「モードチェンジ!」の声からここまで25秒だった。

 

ちなみに、モードチェンジの時に流れた徳島名物の阿波踊りふうのお囃子は、地元・徳島海陽町の高校の郷土芸能部が演奏した太鼓ばやしが使われている。なかなか軽妙で楽しい。

 

モードチェンジの様子を外から見た時には、車体の前方がかなり持ち上がった印象だったが、乗ってみると、傾きはさほど感じられなかった。その後、運転士が外に出て鉄の前後輪が線路の上に載っているかどうか、指さし確認をした後に走り出した。

↑宍喰駅のDMV用ホーム。高さが低く、また車両とホームの間を埋めるように踏み台が出され乗り降りしやすい構造となっている

 

出発はスムーズで、徐々にスピードを上げていく。線路のつなぎ目では2軸の鉄輪独特な〝たんたん〟という音がする。乗り心地は、道路上よりも良い。道路の上では、道路上の凹凸などを拾ってしまうこともあり、悪路にさしかかるとバス特有のややバウンドする印象があったが、鉄路上ではそうした揺れを感じさせない。

 

間もなくトンネルへ入った。暗いトンネル内では運転士の後ろにある映像モニターが良く見え、地元の観光案内などが流されていた。

 

甲浦駅を12時14分発、次の宍喰駅までは7分ほどだ。途中、ストップボタンが押される。DMVは路線バスのように次で降りたい人はストップボタンを押す仕組みになっている。とはいっても停留所や駅が少ないのですべて停車するのだが。

 

「間もなく宍喰、宍喰」のアナウンスが流れると、進行左側に旧車庫があり2020(令和2)年11月30日で運行終了したASA-301が停められているのが見える。

 

穴喰駅のホームはDMVの床の高さに合わせて、低いホームが従来のホームに続くように設けられていた。DMVの乗降口部分から踏み台が出てきて、乗り降りしやすい構造になっている。

↑有人駅の宍喰駅はDMV用のホームが設けられたものの、駅舎の変更はない。近くに旧車庫や本社事務所もある

 

↑宍喰駅では多くの記念品を販売していた。鉄印も同駅で扱われる。記念乗車券と鉄印を購入したらDMV導入を祝う粗品をいただいた

【初DMVの旅⑫】土日祝日一便の室戸へ行くバスを追ってみた

今回、筆者は宍喰駅までしか乗車できなかったが、もう少し乗りたいなと思った。そこで、土日祝日のみ運行される1本のみ、高知県東洋町の「海の駅東洋町」から国道55号を南へ走り室戸市へ向かう特別な〝列車〟を車を使って追いかけてみた。

 

「海の駅東洋町」の先は太平洋の海岸線に沿って走る。距離はかなりあり、次の「むろと廃校水族館」までは約28km、約37分。「海の駅東洋町」を11時27分に発車した〝列車〟は「むろと廃校水族館」に12時4分に到着する。

↑「海の駅東洋町」から室戸へ向かう国道55号沿いから見た海景色。こうした素晴らしい海岸の眺めが室戸市まで続く

 

「むろと廃校水族館」は廃校になった小学校を利用した水族館で、多くの海水魚が飼育されている。この次の停留所が「室戸世界ジオパークセンター」で、12時10分着。室戸はユネスコの世界ジオパークネットワークへの加盟が認定されていて、この「室戸世界ジオパークセンター」では、室戸という土地のなりたちや、室戸の産業や文化を詳しく紹介している。

↑「室戸世界ジオパークセンター」には大きな停留所があり、同区間を走る路線バスなども多く発着している

 

ここまでは室戸市の太平洋側の停留所で、この先の「室戸岬」からは土佐湾側を走ることになる。次の「室戸岬」へは約6.4km、9分ほどの距離があり、12時19分に到着する。停留所から室戸の突端にある室戸岬灯台へ徒歩4分ほどの距離だ。ちなみに、同停留所からは土佐くろしお鉄道の安芸駅(あきえき)や奈半利駅(なはりえき)方面への路線バスが1時間1〜2本間隔で走っていて便利だ。

 

DMVの終点はこの「室戸岬」ではなく、次の「海の駅とろむ」(「むろと」でなく「とろむ」なので注意)で、12時24分に到着する。「海の駅東洋町」から約1時間かかった。

↑国道55号から港へ入ったところにある「海の駅とろむ」。高速バスターミナルがあり(左下)、走行開始した週末はイベントも催された

 

「海の駅とろむ」は室戸岬漁港に面した施設で、高速バスターミナルがある(2021(令和3)年3月末に、営業していたレストランや直売所が営業休止している)が、ちょうど開業に合わせて、海の駅内には臨時のブースが多く出され、開業イベントで盛り上がっていた。

 

【初DMVの旅⑬】DMV登場でわく阿佐海岸鉄道へ行く手段は

DMVが走り出した阿佐海岸鉄道だが、乗りに行くとしたらどのような交通手段があるのだろう。

 

高知県の東端、また徳島県の南端にある同エリア。高知駅からは甲浦駅まで車で約2時間半、距離は室戸経由で112kmある。徳島駅から阿波海南駅までは約1時間40分で約75km。高速道路は一部区間しか開業していないため、国道55号をひたすら走らなければならない。運転していると遠さを感じる道のりだ。

 

公共交通機関があまり便利ではないこともあり、レンタカーを利用する方が多くなるかと思う。ちなみに、土佐くろしお鉄道ごめん・はなり線の安芸駅には駅レンタカーが用意されていて、この駅からならば室戸経由で約75km、1時間30分ほどで甲浦駅へ着くことができる。

 

この地域に行くアクセスとして、鉄道の利用より便利なのが大阪からの高速バス(徳島交通が運行)だ。大阪の南海なんばから阿佐海岸鉄道の各駅を通る高速バスが1日に4便出ている。このバスを利用すれば大阪・南海なんばからは海部駅まで約5時間、高速舞子バス停からは約3時間半で着くことができる。

 

阿佐海岸鉄道が走るエリアでは徳島バスの路線バスも走っている。沿線で写真を撮りたい時などの移動に便利だ。牟岐〜甲浦駅前間で13往復が運行され、通勤・通学の利用者が多い朝夕の本数が多い。地元の病院や学校を経由していて、暮らしに密着したバス路線でもある。

↑甲浦駅前から発車する牟岐駅行きの路線バス。病院や学校を経由して走ることもあり利用する地元の人も多い

 

高知県側からも高知東部交通の路線バスが甲浦岸壁(海の駅東洋町を経由)〜室戸営業所間を1日7往復走っている。なお、DMVが週に1回、往復する終着の停留所の「海の駅とろむ」は、前述した大阪・南海なんば発の高速バスが4本中、1本のみが向かい、折り返す停留所となる。この海の駅からバス等はほかに発着していない。

 

「海の駅とろむ」は前述の通り営業休止状態になので、DMVを高知県の室戸市側から利用する時には、一つ手前の「室戸岬」停留所で地元を走る高知東部交通のバスに乗り換えたほうが良さそうである。

 

DMVの整備に関しては「観光活用による沿線地域活性化」「地域公共交通の拡充」「災害時の交通インフラ」という意味合いが大きい。公共交通が脆弱な地域だからこそ補完する意味合いが大きいように感じた。

 

走り始めたばかりのDMV車両。最初は物珍しさから訪れる人も多いことだろう。長い間走り続けているうちに、課題も出てくるだろうが、長い目で見守るべき乗り物のように感じた。

 

いまや貴重なスポーツクーペの新型が発売! SUBARU「BRZ」は走ってみたらスゴかった

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、2021年夏にフルモデルチェンジして新型が発売されたFRスポーツクーペ、新型BRZの魅力を解剖する!

※こちらは「GetNavi」 2022年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のGODカー】SUBARU/BRZ

SPEC【S 6MT】●全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm●車両重量:1270kg●パワーユニット:2.4L水平対向エンジン●最高出力:235PS(173kW)/7000rpm●最大トルク:25.5kg-m(250Nm)/3700rpm●WLTCモード燃費:11.9km/L

308万(税込)〜343万2000円(税込)

 

抜群の乗り味を誇る最高のスポーツクーペ

安ド「殿! 新型『BRZ』は、いかがですか」

 

永福「せっかくのスポーツクーペなのに、なんと凡庸なデザインかと失望したが……」

 

安ド「失望したんですか!」

 

永福「失望したが、乗ってみたら最高にすばらしかった」

 

安ド「すばらしかったんですね!」

 

永福「とにかく走りがすばらしい。足まわりもエンジンも最高だ」

 

安ド「スポーツクーペなのに、街乗りでも全然乗り心地が悪くなくて、びっくりしました!」

 

永福「それでいて、コーナーを攻めればウルトラ安定しているし、限界も高い。文句のつけようがないぞ」

 

安ド「2.4Lになった水平対向エンジンも、トルクが太くなっていて良いですね!」

 

永福「すまさじく良いエンジンだ。スバルの水平対向エンジンのなかでも、最高傑作ではないか」

 

安ド「そこまで良いですか!」

 

永福「そこまで良い」

 

安ド「今回試乗したのは6速MTモデルでしたが、MTも扱いやすかったです。MTに慣れてない人でも、エンストしにくいのではないでしょうか!」

 

永福「全体的に、ウルトラ扱いやすいのにウルトラ仕上がりが良く、ディープなカーマニアでもウルトラ満足できる、最高のスポーツクーペだ」

 

安ド「スポーツクーペの新型って、すごく貴重になってますしね!」

 

永福「安ドはこれまでスポーツクーペに何台乗ってきた?」

 

安ド「最初の愛車は『フェアレディZ』の2+2でした。あと、『クーペフィアット』にも乗りました。その他、2シーターのオープンに2台乗りました!」

 

永福「なかなか乗っておるな。わしは……。『フェラーリ』13台と『カウンタック』2台、すべて2シーターのクーペやオープンだが、実は最初の愛車は、日産『ガゼール』という2+2のクーペだった」

 

安ド「『シルビア』の兄弟車ですね!」

 

永福「当時の若者はみんなスポーツクーペに乗りたがったから、速くもないカッコだけのスポーツクーペがたくさんあったのだ」

 

安ド「なるほど! いまのSUVみたいなものですね!」

 

永福「実は今回、BRZの後席にも乗ってみた」

 

安ド「えっ! ものすごく狭くなかったですか?」

 

永福「いや、前席を少し前に出せば、思ったより広かったぞ。あれなら男4人でもなんとかなる」

 

安ド「ホントですか!?」

 

永福「若いころは、狭いガゼールに男4〜5人乗り込んで、色々な場所に行ったものだ。今回BRZの後席に座ってみて、そんな青春時代が蘇った」

 

安ド「僕はフェアレディZの後席に、友人を乗せたことはなかったです!」

 

永福「そうなのか」

 

安ド「でも、車内でカー〇ックスしたことがあります!」

 

永福「それこそ真の青春だな」

 

【GOD PARTS 1】エアコンインターフェイス

質感を向上させたアナログ感が良い感じ

ダイヤルが3つ並び、その下に各種スイッチが横並びになるという配置は、先代型とあまり変わりませんが、比べて見ると明らかに質感が向上しています。デジタル全盛の時代にあえてアナログ式のスイッチ類で好印象です。

 

【GOD PARTS 2】アクティブサウンドコントロール

作られたサウンドでスポーティさを演出

アクセルを踏み込むと、スポーティなエンジンサウンドが正面から聞こえてきます。しかしこれ、実はエンジンの回転数に合わせてデジタルサウンドを再生しているそうです。確かに、よく聞くと若干時差を感じたりもします。

 

【GOD PARTS 3】パーキングブレーキ

昔ながらの手引き式でドリフトだって可能

近年は電動パーキングブレーキが主流になっていて、スバルも他車では採用しています。しかし、新型BRZでは古典的な手で引き上げるタイプの、いわゆる“サイドブレーキ”が採用されています。初心者がドリフトするためでしょうか。

 

【GOD PARTS 4】トランク

しっかり使える容量でクーペと侮るなかれ

2+2座席のため、主な物を置く場所は後席になりがちですが、237Lの容量を誇るトランクもしっかり用意されています。後席背もたれを前に倒せば長尺物も積載することができるので、実用性は決して低くありません。

 

【GOD PARTS 5】6速MT

少数派となったMT好きを変わらず応援

いまや国産新車のAT比率は99%超えと言われているなか、しっかり6速MTモデルが設定されていました。世界の名だたるスーパーカーでさえ2ペダルのみになっていく時代ですが、カーマニアにとってはありがたいことです。

 

【GOD PARTS 6】フロントシート

スポーツカーらしいホールド性で上質感も高い

シート形状はホールド性が高く、スポーティな走りにピッタリですが、クッションも厚みがあって座り心地も良好です。さらに、スエード地と本革を組み合わせたコンビネーション表皮が採用されていて、質感が高いです。

 

【GOD PARTS 7】エンジン

ノンターボの良さをよくわかっている!

2.0L直噴ターボだった先代型から、新型では排気量がアップされ、2.4Lのノンターボエンジンが搭載されています。水平対向式は変わりませんが、以前より低回転域から力強いトルクを感じられるようになりました。高回転域も伸びが良いです。

 

【GOD PARTS 8】リアシート

非常用や物置き場としてあるだけマシと考える

2+2シートのため一応後席は装備していますが、なかなか厄介です。フロントシートを前に出さないと足が入りませんし、大柄な人だと頭を真っ直ぐ上へ伸ばせません。とはいえ、乗れないことはないので、あるだけマシだと思いましょう。

 

【GOD PARTS 9】タイヤ

プレミアムタイヤで走りの質感を向上

タイヤは走りの質にも乗り心地にも影響する大変重要なパーツです。今回のBRZには、なんと名門ミシュランの「パイロットスポーツ4」という超優良ブランドが装着されていました。高価ですが、これだけで走りの質感が2段階ほど上がります。

 

【これぞ感動の細部だ!】TRACKモード

クルマの介入を抑制して運転者の腕を見せつける

センターコンソール上にあるボタンを長押しすることで、車両安定制御システム「VSC」の制御介入タイミングを遅らせる「TRACKモード」に変更できます。これはつまり、スポーティに走らせたときの、クルマによる自動制御の範囲を減らすことで、運転がよりドライバーの腕頼みになってくるということです。運転に自信のあるドライバーのためのボタンですね。

 

撮影/我妻慶一

 

 

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2021年度人気No.1レースクイーンは誰? 「MediBang 日本レースクイーン大賞2021」

新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、2年振りの開催となった「日本レースクイーン大賞」。2021年にサーキットを彩ったレースクイーンの中から、ファンの人気投票によって大賞およびグランプリが決定。SUPER GT、SUPER FORMULA、スーパー耐久など、2021年も400人を超えるレースクイーンたちが様々なカテゴリで活躍。1月15日に、幕張メッセで開催された「東京オートサロン2022」のイベントステージで、授賞式が行われました。

【関連記事】
艶やかなコンパニオンも返ってきた!【東京オートサロン2022】

 

「MediBang日本レースクイーン大賞2021」の大賞受賞者は、相沢菜々子さん、今井みどりさん、太田麻美さん、川瀬もえさん、安田七奈さんの5名。そしてその中から、2021 Pacific Fairiesの川瀬もえさんが見事「グランプリ」に輝きました。

↑写真左から、相沢菜々子さん、今井みどりさん、川瀬もえさん、太田麻美さん、安田七奈さん

 

↑川瀬もえさんは、新人部門のグランプリも受賞。新人部門と日本レースクイーン大賞のグランプリ同時受賞は史上初の快挙。グランプリ受賞後のスピーチでは、「今まで誰も成し遂げたことがない新しい伝説を作るつもりで挑んだ」と川瀬もえさん

 

授賞式では10月にすでに発表になっている、人気No.1のレースクイーンコスチュームを決定する「コスチューム部門」の受賞ユニットの表彰も行われた。

↑「コスチューム部門」グランプリを受賞した2021リアライズガールズの林紗久羅さん、織田真実那さん、久保田杏奈さん、前田真実果さん(写真左から)

 

また、ファイナリスト20名の中から選ばれる特別賞も発表。「クリッカー賞」には藤井マリーさんが。「週刊プレイボーイ賞」には美月千佳さんが選ばれました。

↑「クリッカー賞」藤井マリーさん

 

↑「週刊プレイボーイ」美月千佳さん

 

惜しくも大賞受賞は逃したものの「実行委員会特別賞」には、葵井えりかさん、織田真実那さん、永原芽衣さんが選ばれた。また、タイトルスポンサーであるMediBangから贈られる「MediBang賞」を愛川菜月さん、太田麻美さん、水瀬琴音さん、宮瀬七海さんが獲得。「テレビ東京賞」には相沢菜々子さんが。「東京中日スポーツ賞」には、安田七奈さんがそれぞれ選ばれた。

↑「実行委員会特別賞」葵井えりかさん、織田真実那さん、永原芽衣さん(左から)

 

撮影/編集部

 

【フォトギャラリー(GetNavi webにてご覧になれます)】

ブリザック「VRX3」を試乗! ドライ路面・積雪路での実力を比べた

昨年9月、世界No.1のタイヤメーカーであるブリヂストンから、乗用車用の最新スタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX3(ブリザック ヴイアールエックススリー)」が発売しました。4年ぶりにモデルチェンジされたこのタイヤは、“新次元のプレミアムブリザック”と位置付けられているだけに、その能力の高さは大いに気になるところです。今回は北海道での試乗を通してその実力を体験して参りました。

 

北海道と東北北部の主要五都市で2台に1台が装着

そもそもブリザックといえば1988年に登場以来、33年にわたって進化を重ねてきた歴史あるスタッドレスタイヤです。その評価は特に積雪地で高く、ブリヂストンの調査によれば、北海道と東北北部の主要五都市での一般車装着率はほぼ2台に1台に近い46.2%。札幌市のタクシー装着率に至っては69.5%にものぼる高い装着率! このデータからはブリザックがいかに多くの人から信頼性を獲得しているかが推察できると思います。

↑北海道や北東北5都市では20年連続装着率No.1 という実績につながり、ほぼ2台に1台がブリザックを装着するまでになった

 

BLIZZAK VRX3はその最新モデルとして、そうした実績を踏まえてさらなる「氷上性能の大幅向上、ライフ性能、効き持ちの向上を実現した新次元のプレミアムブリザック」として誕生しました。ブリヂストンによれば、氷上制動性能を先代「VRX 2」比で20%向上させながら、耐摩耗性などライフ性能も17%も向上させているとのこと。開発陣としては、そのほかにもメインの氷上性能だけでなく、ドライ路面や雪混じりの路面など、非積雪地域での性能向上にも努めたそうで、その性能もぜひ体験して欲しいとも話していました。

↑さらなる「氷上性能の大幅向上、ライフ性能、効き持ちの向上を実現した」(ブリヂストン)ブリザック「VRX3」

 

↑「新次元のプレミアムブリザック」として、氷上性能の向上をメインとするがライフ性能の向上、さらに静粛性や応答性の高さもポイント

 

中でもライフ性能についてはユーザーがもっとも求めることです。しかし、スタッドレスタイヤの構造上、氷上や積雪路でもグリップ力を高めれば摩耗はしやすくなり、早いタイミングでの交換が必要になります。そこでVRX3ではこの相反するテーマにあえて挑戦。積雪路や氷上での水はけ能力を高めつつ、タイヤブロックのサイズを均一にして接地圧を路面に行き渡らせるなどして偏摩耗性を向上させたのです。

↑氷上性能を向上させた大きな理由は“水を吸い上げる力”。VRX3では水路の断面を従来の「丸」→「楕円」とすることで吸い上げる容積を増やした

 

↑最新のシミュレーション技術を駆使して実現した「予測技術」も投入し、さまざまな条件での高い対応力を生み出すことにつながった

 

ドライのオンロードで乗り心地の良さや高い静粛性を実感

さて、今回の試乗、“冬の北海道”ということでスノードライブを予想していました。ところが、訪問した12月中旬は道路上に積雪がゼロ! というあいにくのコンディション。雪上試験はテストコースに人工降雪機で雪を降らせてやっとコースを作り上げたという状態でした。つまり、期せずして開発陣が話していた、積雪路とドライ路面での実力を同時に北海道の地で体験することになったのです。

↑試乗会場は新千歳空港にほど近いカート場。積雪がない中、人工降雪機で雪を降らせてコース作りが行われていた

 

オンロードでの試乗はフォルクスワーゲン「ポロ」とアウディ「A4アバント」の2台。ポロはFFで185/65R15サイズを、A4アバントは4WDで245/40R18サイズを装着していました。

 

ポロは元々、路面からの反応がキツメに出る傾向にありましたが、それがVRX3を履くことでそれをいなしてくれているようにも感じました。それでいてステアリングの応答性が良いものだから、スタッドレスタイヤではありがちなグニャッとした曖昧さはなく、ドイツ車らしいキレの良いフィーリングとして体感できたのです。

↑唯一のFFモデルだったフォルクスワーゲン・ポロでの乗り心地はかなり硬めだったが、それでもシャープな応答性が気持ち良かった

 

A4アバントでは、走り出すとしっかりとしたフィールがすぐに感じ取ることができました。スタート時にはA4アバントが発生する太いトルクを確実に路面へ反映させて、コーナリングでも腰くだけするような印象はありません。気持ち良いハンドリングを体験させてくれたのです。中でも驚いたのが乗り心地の良さと静粛性です。荒れた路面でもその振動を和らげてくれている印象で、さらに静粛性の高さはスタッドレスタイヤとは思えないハイレベルなものでした。これならバッテリーEVで使った場合でもそのメリットを十分感じ取れるはずです。

↑VRX3のブロックは剛性が極めて高く、少し車重のあるアウディ・A4アバントでもコーナリングや強めのブレーキングでも腰砕け感がほとんど感じない

 

わだちのあるシャーベット状の積雪路でも安心して走れる心強さ

続いては、人工雪で作られたテストコースでの試乗です。雪質としてはほぼ“雪解け”状態の、わだちも多い条件の良いものではありませんでした。むしろこの状態は、日本の非積雪地で大雪が降った翌日あたりに生まれるシャーベット状の路面にも似ています。そういった意味では除雪がされない都会での走行をリアルに再現されたコンディションともいえます。

 

試乗は軽自動車から上級サルーンまですべて4WDという多彩な車種での体験となりました。ここで実感したのは車種を問わず、トラクションがしっかり効いていたことです。車重の軽い軽自動車である日産「デイズ」でこそ、わだちで跳ねるような印象がありましたが、そんな状態でも路面のグリップはしっかりキープ。4WDということもあって、ステアリングを勢いよく切った場合でもコントロールは極めてしやすく、安心して走行することができたのです。

↑軽量な日産・デイズではやや乗り心地が硬めで跳ねる感じがしたが、路面をしっかりとグリップして急ハンドルでもコントロールがしやすかった

 

また、メルセデス・ベンツ「Eクラス」ではFR系4WDとして別のフィーリングを味わうことができました。このクルマでは基本的に後輪の駆動力をメインとした上で、ステアリングを切ったときは前輪でグリップしながら操舵していく感じになりますが、この状況にもVRX3はしっかりと対応してくれます。重めの車重が功を奏している面もあるかとは思いますが、感覚としてはグリップ力に余裕を生み出したと言った感じでしょう。この余裕がいざという時の助けにつながるのです。

↑FR系4WDのベンツ・Eクラスは重量級だが、ステアリングを切ったときでも前輪がしっかりと食いついている感じ。余裕のあるグリップ力を実感した

 

今回、スケート場での氷上試乗と合わせ、異なった3パターンでの体験ができたわけですが、それを通して理解できたのは。VRX3があらゆるシーンで高い能力を発揮するスタッドレスタイヤであるということです。氷上でも前モデル「VRX2」からの進化を感じさせましたが、ドライ路面での乗り心地の良さや静粛性を、シャーベット状の積雪路ではコントロールしやすさはまさにプレミアム感を実感できるものでした。こうした着実な進化があるからこそ、VRXシリーズが多くのユーザーから支持される理由なのだと再認識した次第です。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

艶やかなコンパニオンも返ってきた!【東京オートサロン2022】

1月14~16日の3日間に渡って幕張メッセにて開催された「TOKYO AUTO SALON 2022」。コロナ禍とういこともあり、昨年はオンライン開催のみ。今年も徹底した感染防止対策の中で行われ、来場者数は12万6869人にとどまったが、クルマ好きには待ちに待った世界最大のカスタムカーイベントがリアル開催されるとあって、多くの来場者でにぎわいをみせた。また、今年は公式サイト(www.tokyoautosalon.jp)を通じて情報発信を拡充し、リアルとオンラインのハイブリッドの楽しめる内容へと変化していた。そして本イベントを盛り上げてくれる華やかなコスチュームに身を包んだコンパニオンたちも返ってきた! そんな華やかで艶やかなコンパニオンの一部を紹介しよう!

 

※撮影はソーシャルディスタンスを保って行いました。マスク着用の有無は各ブースの方針に従っています。

※本記事は下記のギャラリーの方が閲覧しやすいです。
【ギャラリー】

 

<Air force Brocken water>

Air force Brocken water_荏崎ろあさん

 

<ALPINE STYLE>

ALPINE STYLE_兎咲香さん

 

<ALPINE>

ALPINE_若井琴都さん

 

ALPINE_植山ゆきさん

 

<Auto Labo>

Auto Labo_Favorite Factoryまおさん

 

Auto Labo_安西まりなさん

 

<AZZURE>

AZZURE_YUKINAさん

 

<AZZURRE>

AZZURRE_青奈さん

 

<BANZAI SPORT JAPAN>

BANZAI SPORT JAPAN_ペピさん

 

BANZAI SPORT JAPAN_七星じゅりあさん

 

<BUSOU>

BUSOU_橘香恋さん

 

BUSOU_久保田杏奈さん

 

BUSOU_今井みどりさん

 

BUSOU_早川みゆきさん

 

BUSOU_中村比菜さん

 

BUSOU_遊馬りえさん

 

<EARTH>

EARTH_吉川ゆのさん

 

EARTH_朝比奈果歩さん

 

<elf>

elf_松原由美さん

 

<EXIZZLE-LINE>

EXIZZLE-LINE_桐嶋しずくさん

 

EXIZZLE-LINE_早川里香さん

 

<FINAL KONNEXION>

FINAL KONNEXION_葵井えりかさん

 

<GORDON>

GORDON_アンジュさん

 

GORDON_藤嶋もなみさん

 

 

<HM RACERS>

HM RACERS_瀬川ゆずさん

 

HM RACERS_天間晴香さん

 

<KAMIKAZE COLLECTION>

KAMIKAZE COLLECTION_Aiさん

 

KAMIKAZE COLLECTION_SUMIKAさん

 

<LEGANCE>

LEGANCE_亜桜みくりさん

 

<LEXON AIRBUSTER>

LEXON AIRBUSTER_鎌田ありささん

 

LEXON AIRBUSTER_恵麻さん

 

LEXON AIRBUSTER_谷美奈さん

 

<OPE222>

OPE222_水嶋ななさん

 

<SHIBATIRE>

SHIBATIRE_小湊美月さん

 

SHIBATIRE_藤代みささん

 

<sparco>

sparco_渡辺弓華さん

 

sparco_藤井マリーさん

 

<SPHERELIGHT>

SPHERELIGHT_宇都宮茜さん

 

SPHERELIGHT_立花あいさん

 

SPHERELIGHT_綺咲あみさん

 

<T by Two>

T by Two_亀澤杏奈さん

 

<TOM’S>

TOM’S_近藤みやびさん

 

TOM’S_木村理恵さん

 

<TOYO TIRES>

TOYO TIRES_ゆりあさん

 

TOYO TIRES_安西茉莉さん

 

TOYO TIRES_山本もえぎさん

 

TOYO TIRES_新津のんさん

 

<TRAIL MOTAR APEX RACING>

TRAIL MOTAR APEX RACING_萩原真都香さん

 

TRAIL MOTOR APEX RACING_青山桂さん

 

TRAIL MOTOR APEX RACING_長谷沙也加さん

 

<VeilSide>

VeilSide_いち佳さん

 

VeilSide_花井ゆうかさん

 

VeilSide_新唯さん

<オウルテック>

オウルテック_生田ちむさん

 

オウルテック_藤本真由さん

 

<オーリンズ>

オーリンズ_香月わかなさん

 

オーリンズ_朝倉咲彩さん

 

オーリンズ_天倉葵さん

 

<ガレージベリー>

ガレージベリー_今村知可さん

 

<クリンビュー>

クリンビュー_村上楓さん

 

<コーヨーラド>

コーヨーラド_ななさん

 

<サブロク>

サブロク_森美咲さん

 

サブロク_浅美蓮さん

 

<ダンロップ>

ダンロップ_永原芽衣さん

 

ダンロップ_西井綾音さん

 

ダンロップ_百田ゆりさん

 

ダンロップ_門野まゆさん

 

<フォルクスワーゲン>

フォルクスワーゲン_古城優奈さん

 

フォルクスワーゲン_那津あやこさん

 

<ブリヂストン>

ブリヂストン_遠藤絵莉菜さん

 

<リバティウォーク>

リバティウォーク_仲谷理緒さん

 

リバティウォーク_藤森まりなさん

 

リバティウォーク_福沢みほさん

 

リバティウォーク_檜垣希実さん

 

<ルノー・ジャポン>

ルノー・ジャポン_浜嶋りなさん

 

<阿部商会>

阿部商会_こんのななさん

 

阿部商会_雪音まりなさん

 

<横浜ゴム>

横浜ゴム_瀬口えりなさん

 

横浜ゴム_田中実奈さん

 

<埼玉自動車大学校>

埼玉自動車大学校_荒井つかささん

 

埼玉自動車大学校_相沢菜月さん

 

埼玉自動車大学校_美桜さん

 

<三菱自動車>

三菱自動車_山下沙織さん

 

<車工房>

車工房_Juliaさん

 

車工房_奥田千尋さん

 

車工房_七瀬ななさん

 

<尾林ファクトリー>

尾林ファクトリー_勝田成美さん

 

尾林ファクトリー_梨砂子さん

 

<豊田自動織機>

豊田自動織機_北村みなみさん

 

撮影/編集部

いよいよ運転開始!レールと道路を走る世界初のDMV路線「阿佐海岸鉄道」を探訪した【前編】

おもしろローカル線の旅76〜〜阿佐海岸鉄道(徳島県・高知県)〜〜

 

徳島県と高知県をつなぐ阿佐海岸鉄道に2021(令和3)年12月25日、待望のDMV(デュアル・モード・ビークル)が走り始めた。世界初のレール上と道路を走ることができる〝鉄道車両〟の導入である。実際にどのように線路や道路を走っているのか、走り始めたばかりの阿佐海岸鉄道を訪ねた。

 

【関連記事】
世界初の線路を走るバス・DMV導入へ!「阿佐海岸鉄道」の新車両と取り巻く現状に迫った

 

【初DMVの旅①】これまでの阿佐海岸鉄道の歴史をチェック

まずは、阿佐海岸鉄道の歴史を見ておこう。

 

阿佐海岸鉄道は、日本鉄道建設公団が建設を始めていた阿佐線がルーツとなる。阿佐線は高知県の後免駅(ごめんえき/土讃線と接続)から室戸を通り、徳島県の牟岐駅(むぎえき)へ至る路線として計画された。予定線となったのは古く1922(大正11)年のこと。

 

長らく手付かずのままだったが、太平洋戦争後の1957(昭和32)年に調査線となり、その後に工事が始まり、1973(昭和48)年10月1日に徳島県側の牟岐駅〜海部駅(かいふえき)間が国鉄の牟岐線として開業した。1974(昭和49)年4月には海部駅〜野根(現在の高知県東洋町野根・野根中学校付近)の間の阿佐東線(あさとうせん)の工事が着手。1980(昭和55)年2月には海部駅〜宍喰駅(ししくいえき)のレール敷設が完了した。

 

ところが、当時、国鉄の経営状況はかなりひっ迫していた。レール敷設は完了したものの、その年の暮れ12月27日には日本国有鉄道経営再建促進特別措置法が公布され、阿佐東線の工事は凍結されてしまった。

 

工事が進められていた阿佐東線の受け皿となったのが阿佐海岸鉄道である。徳島県・高知県および地元自治体などが出資し、1988(昭和63)年9月9日に第三セクター方式の会社が設立された。

↑阿佐海岸鉄道のASA-100形「しおかぜ」。開業当初に導入された車両で、2020(令和2)年11月30日に運用終了となった

 

当初予定されていた野根までの線路の敷設は適わなかったものの、1992(平成4)年3月26日に海部駅〜甲浦駅(かんのうらえき)間8.5kmの営業を開始した。DMV導入前は、朝のみJR牟岐駅までの乗り入れも行われていた。

 

ちなみに、阿佐線の高知県側の路線は、土佐くろしお鉄道が受け皿となり、後免駅〜奈半利駅(なはりえき)間42.7kmのごめん・なはり線(阿佐線)として2002(平成14)年7月1日に開業している。

↑ASA-300形「たかちほ」。元は九州の高千穂鉄道の車両だったが、同鉄道が災害により廃線となり、阿佐海岸鉄道に譲渡された

 

DMV導入前の阿佐海岸鉄道の所有車両はASA-100形とASA-300形の2両。ちなみにASA-200形という車両もあったのだが、衝突・脱線事故により2008(平成20)年に廃車となっている。また事故後、車両が足りなくなった時にはJR四国から車両を借り入れていた。

 

DMV導入のために、2020(令和2)年10月31日でJR牟岐線の阿波海南駅と海部駅1.5km区間の列車運行が終了し、翌11月1日に同区間は阿佐海岸鉄道の路線に編入された。11月30日には阿佐海岸鉄道のASA-100形とASA-300形が運行を終了。

 

阿佐海岸鉄道の旧車両はその後、解体されることなく、今もASA-100形が海部駅構内に、ASA-300形は宍喰駅近くの旧車庫に停められている。

↑2020(令和2)年秋までJR牟岐線の終点駅だった海部駅。阿佐海岸鉄道はこの駅が起点駅でJR線の乗換駅として利用された

 

↑阿佐海岸鉄道開業後、長らく終点駅だった甲浦。写真はDMV導入前で、ホームは階段を上った高架橋上にあった

 

【初DMVの旅②】2019年秋に導入車両が公開

阿佐海岸鉄道が走る阿佐東地域は、近年過疎化が進み、路線開業時に年17万6893人の乗車数があったのに対して、2019(令和元)年には乗車数は5万2983人まで落ち込んでいた。さらに鉄道路線に沿って路線バスも走っている。難しい経営環境である。廃線という道筋もあった。

 

ただ、路線がある徳島・高知両県にとって、いざという時のために交通インフラを維持しておきたい思惑があった。阿佐海岸鉄道の路線の大半が高架区間を走っている。平行する道路は国道55号しかなく、しかも、海岸に近いところを走っている。将来起こることが懸念されている「南海トラフ地震」で、四国沿岸は震度6クラスの揺れ、そして10m前後の津波が予測されている。そうしたいざという時のために、路線を存続させる道が探られた。

 

とはいえ、鉄道車両を維持するためにはかなりの経費がかかる。新たな車両導入となると億単位だ。経費を削減した上で、鉄道を存続できないか。定員100名といった規模の気動車は必要としない。小さくて手ごろな価格の車両がないだろうか? そんな時に浮かび上がってきたのがDMV導入案だった。

 

DMVはかつてJR北海道が導入を計画し、第1次〜第3次試作車を製造。JR北海道の路線だけでなく、静岡県の岳南鉄道(現・岳南電車)や、天竜浜名湖鉄道などでの走行テストが続けられていた。JR北海道では2015(平成27)年に導入を予定していたものの、当時、JR北海道管内で事故が多発するなどの諸問題が続いていたこともあり、導入を断念した経緯がある。

 

阿佐海岸鉄道は、このDMVを初めて実用化しようと考えたのだった。2017(平成29)年2月3日、「阿佐東線DMV導入協議会」が徳島市で開かれ、DMV導入計画が承認された。

↑徳島県の阿佐海南文化村で公開された時のDMV車両。赤青緑の3台が並んだ

 

長年、研究が続けられてきた技術だけに、車両が造られるのは意外に早かった。承認された2年後の2019(令和元)年10月5日には車両の報道公開までに至っている。3台が並ぶ写真は、その時の模様である。

↑前輪を出したDMV車両。前輪タイヤが浮いた状態まで車体が持ちあがる様子が分かる

 

車両はトヨタ自動車のマイクロバス「コースター」がベースとされている。コースターの市販車の価格はおよそ660万円台〜1030万円。日野エンジニアリングアネックスがシャーシを改造強化、さらに車体を東京特殊車体が改造し、NICHIJOが軌陸装置を担当した。

 

こうした車両製作費を「阿佐東線DMV導入協議会」は3両で約3.6億円〜3.9億円と見込んでいた。ちなみに、JR北海道で最近導入した新型電気式気動車のH100形は1両2億8000万円とされている。DMV車両は初もので、少量用意したことで高くついたものの、3両造ってこの金額だから、かなり割安となった。さらに、鉄道車両はメンテナンス代がかなりかかる。DMVのメンテナンスはマイクロバス+αで済むわけで、小さな鉄道会社にとってメリットも大きい。

 

車両を導入した2019(令和3)年から、DMVの導入に合わせた駅の改良工事なども進められた。「阿佐東線DMV導入協議会」では駅舎の改築に約2.8億円、信号設備等の整備に約3.6億円の概算事業費を見込んでいる。

 

一方、初のDMV導入の話題性により、新規利用者は年1万4000人増、経済波及効果は年2億1400万円と予想している。このあたり、どのような成果が出るかは非常に興味深い。

↑阿佐海岸鉄道の終点・甲浦駅では改良工事が進められた。訪れた2019(令和元)年10月には、アプローチ道路工事が行われていた

 

国内で初めて営業用として運行されるDMVだけに、国土交通省のチェックなどもだいぶ時間がかけられた。2021(令和3)年7月のオリンピック・パラリンピック開催に合わせていたが、テストの結果、前輪可動部「車輪アーム」の強度不足などがみつかり(その後に補強対策がとられた)、12月からの運行開始となった

 

なお、DMV車両と鉄道車両が混在して走ることは許されていない。阿佐海岸鉄道の線路はDMV車両専用としてのみ使われる。

 

【初DMVの旅③】DMVとはどのような車両なのだろう?

導入されたDMVはどのような車両なのかを見ておこう。形式名は「DMV93形気動車」とされた。

 

3両が導入され、1号車が青色のDMV-931で愛称は「未来への波乗り」。車体には宍喰駅の「伊勢えび駅長」がサーフィンしている様子が描かれる。阿佐東地域でサーフィンが盛んなことにちなむ。

↑阿佐海岸鉄道の車両DMV93形の1号車。愛称は「未来の波乗り」とされた。鮮やかなブルーの車体に楽しいイラストが描かれる

 

2号車は緑色のDMV-932で愛称は「すだちの風」。徳島県阿波の名産すだちを表現。県鳥のしらさぎが空高く舞い上がる様子が車体に描かれる。

 

3号車は赤いDMV-933で愛称は「阿佐海岸維新」。高知県出身幕末の英雄・坂本龍馬と南国土佐の輝く太陽が車体に描かれている。

 

それぞれ乗客用座席数は18名で、立席3名、乗務員1名の定員22名となっている。動力はディーゼルエンジンで、最高運転速度は70m/hだ。

↑ベースがマイクロバスということもあり座席数は18名。運転席の後ろに運賃箱、乗降口に整理券の発行機を設置(左上)

 

次の写真が線路上を走るDMV車両を横から撮影したところだ。これを見ると前後に鉄の車輪が車体から出され、線路上を走ることが分かる。鉄輪はガイド用で、レールから外れないための装備で、かつ駆動するゴムタイヤへの圧力を調整する役割も備えている。

 

駆動輪となるのが、後輪のタイヤ。DMV車両の後輪タイヤは2本あるダブルタイヤになっている。この内側のタイヤがレールに密着し、タイヤの駆動により、車両は前へ進む。このあたりは、保線用に使われる軌陸車用の中型トラックの構造と同じだ。

↑DMV-931が線路上を走る様子。これを見ると前輪タイヤがかなり上がっていることがよく分かる

 

線路沿いでDMV車両が走る音を聞いてみた。多くの鉄道車両はレールのつなぎ目を走ると、1両が2軸+2軸の計4軸のため、〝だだーん、だだーん〟という音がする。DMV車両は、鉄輪が2軸で、車重が軽めのためか、〝たんたん、たんたん〟と軽やかな音が聞こえた。初めて聞く音なだけに不思議、かつ新鮮に感じた。

 

【初DMVの旅④】DMVが走る路線をたどった

阿佐海岸鉄道のDMV車両は、どのようなルートで運行されているのか、全線をたどってみよう。

◆阿波海南文化村

北は徳島県海陽町の「阿波海南文化村」から出発する。「阿波海南文化村」は地元で発掘された大里古墳の復元などを展示、また「海陽町立博物館」も併設されている。海陽町の文化交流施設といって良いだろう。この文化村前にしゃれた待合スペースが設けられた。ここではバスモードとして走る区間なので、やや大きめのバス停という趣だ。

 

バスモードで走る区間の〝停留所〟それぞれには、サーフボードの形をした〝バス停の表示〟が立ち、そこに時刻などが掲示されている。

 

DMV車両はこのバス停を発車、約1.0km先にある、阿波海南駅へ向かう。

↑阿波海南文化村のDMV発着場所。屋根付きの待合スペースが設けられ、ドリンクの自動販売機も用意された

 

◆阿波海南駅

〝バス〟は約4分で阿波海南駅に到着。国道55号を走った車両は、阿波海南駅前で右折して駅構内に進入し、駅舎横に作られたアプローチ道路を登って〝駅〟に到着する。元はこの駅の一つ先の海部駅がJR牟岐線との接続駅だったのだが、DMV導入後は阿波海南駅が接続駅とされた。その理由としては、アプローチ道路が造りやすかったことがあげられるだろう。隣の海部駅は高架駅で、アプローチ道路を造るとなると大規模な工事が必要となる。反面、阿波海南駅は地上駅で、国道沿いにあり、DMV車両が線路に入りやすい構造だった。

 

元は阿波海南駅〜海部駅間はJR四国の線路だったのだが、DMV導入のために同区間が阿波海南鉄道に編入されたのは、こうした駅の構造による。

↑国道55号側から見た阿波海南駅。右がJR牟岐線のホーム入口で、左が駅舎。この奥にDMVの乗り場が設けられた

 

↑阿波海南駅止まりとなったJR牟岐線の列車。徳島駅から阿波海南駅まで2時間〜2時間30分ほどかかる

 

阿波海南駅の駅横に設けられたアプローチ道路を登ったDMV車両は、駅舎に隣接する下り列車の乗り場に到着する。造りはバス停そのもの。サーフボードの形をしたバス停の表示が立つ。ここで乗客が乗降し、そのあと、「モードインターチェンジ」に進入する。「モードインターチェンジ」の様子は次回の【後編】で詳しく紹介したい。

↑DMV車両の乗り場はJR牟岐線の阿波海南駅ホームの横に設けられた。ホームからはスロープを降りれば乗り場で、非常に便利だ

 

この阿波海南駅のモードインターチェンジ区間の横には、広々した撮影スポットも設けられている。また駅の隣接地には駐車場スペースも新たに設けられた。観光客を強く意識して施設が設けられているのだろう。

 

ちなみにJR牟岐線の線路と、阿波海南鉄道の線路は同じ軌間幅1067mmだが、線路はつながっておらず、同駅ホームの先に牟岐線の車止めが設けられている。

↑阿波海南駅のモードインターチェンジ(右)横には撮影スポットも設けられた。訪れた日には観光客も多く立ち寄って見物していた

 

◆阿佐海岸鉄道 阿佐東線

DMV車両は阿佐海南駅でモードチェンジしてバスから鉄道区間へ入る。阿佐海岸鉄道の路線は、DMVが走る前は海部駅〜甲浦駅を結ぶ8.5km区間だったが、阿波海南駅〜海部駅間が、阿佐海岸鉄道の路線に組み込まれたため、現在は10kmとなっている。

 

阿波海南駅から次の海部駅までは1.4km、海部川をわたればほどなく海部駅に到着する。海部駅〜宍喰駅間が6.1kmと同路線では一番、駅と駅が離れた区間だ。この間は地形が険しくトンネルが15本もある。トンネル間は海が望める区間だ。

 

なお、既存の海部駅と宍喰駅のホームは改造され、DMV車両に合うように低床用のホームが設けられた。

↑海部駅〜宍喰駅間を走るDMV車両。鉄道区間は他の車に邪魔されることもないので、スムーズに走る

 

宍喰駅から鉄道区間の終点、甲浦までは2.5km。この駅の間で車両は徳島県から高知県へ入る。鉄道区間10kmをモードチェンジの〝作業〟も含め21分で走る。

 

鉄道区間に〝列車〟が入るときは、下りのみ、上りのみの運行という走り方をしている。ちなみに線路上に複数の〝列車〟が走る場合には、下り、上りともに前の〝列車〟の12分後に、次の〝後続列車〟が走るという運行方法をとっている。よって途中駅で列車交換は行われない。

 

運賃は5kmまで210円だったものが、200円とやや割安となった。〜7.0kmは250円が300円に、〜9km区間280円が400円と、距離が長くなるほど割高になる。鉄道区間10kmを乗ると500円となる。金額は車内で精算しやすいように100円単位とした。なお〝列車〟の走行区間、阿波文化村〜道の駅宍喰温泉を乗車すると800円かかる。

↑DMV車両を後ろから見る。レール上を走る姿はマイクロバスそのもの。線路上を走る姿がなかなか興味深い

 

◆甲浦駅

鉄道区間の終点となる甲浦駅。筆者はこれまで3度ほど駅を訪ねたことがあるが、この駅の造りも大きく変更された。阿佐海岸鉄道の4駅中、最も形が変わった駅と言ってよいだろう。

 

この駅には鉄道モードからバスモードに変更するモードインターチェンジが設けられている。元駅は高架橋にあったので、地上の道へ降りるアプローチ道路が設けられた。

↑元駅ホームの横をDMV車両が走る。こののちモードチェンジが行われアプローチ道路(左上)を降りる

 

↑アプローチ道路の下に造られた甲浦停留所。一般車が間違って入らないようにゲートが設けられている

 

甲浦駅の駅舎はリニューアルされてきれいになり、駅舎内に売店も設けられた。駅近くに店がないところだけに非常に便利だ。

 

今回のDMV導入と合わせて、駅にはシェアサイクルも用意されるようになった。スマホを利用してのレンタルが可能で、沿線に複数のベースが設けられているので〝列車〟+サイクリングという楽しみ方もできそうだ。

↑停留所の横にある甲浦駅の駅舎。舎内には売店も設けられた。DMV車両が上り下りするアプローチ道路が上を通る

 

【初DMVの旅⑤】DMVの強みを生かしてその先まで走る

甲浦駅を終点とせずDMV車両の利点を生かして、先のポイントまで走るようになった。全〝列車〟が地元の観光拠点まで走る。どのようなポイントまで走るのか見ておこう。

 

◆海の駅東洋町

甲浦駅から約1.2km、走行時間3分ほどで次の「海の駅東洋町」へ到着する。この駅は甲浦駅と同じ高知県東洋町に位置する。東洋町は高知県の最東端にある町で、太平洋に面している。「海の駅東洋町」も施設名どおり海に面していて、停留所から海が望める。

 

海の駅では東洋町で水揚げされた鮮魚や加工された干物、農産物も販売されている。高知県の東の玄関口でもあり、県内の土産物も販売されている。地元のぽんかんを使った「ぽんかんソフト」が名物だ。

↑太平洋を望む「海の駅東洋町」の停留所。サーフボード型のバス停表示が2本立つ。海の駅(左上)にはレストランも設けられる

 

この停留所が終点ではない。ほとんどの〝列車〟は終点となる「道の駅宍喰温泉」へ向かう。また土・日・祝日には1日に1往復のみだが、「海の駅東洋町」から室戸市へ向かう〝列車〟もある。この室戸市へ向かう〝列車〟に関しては【後編】で詳しく触れたい。

 

◆道の駅宍喰温泉

今回のDMV導入では「道の駅宍喰温泉」が南側の終点とされた。海の駅東洋町から約3.5km、5分で到着する。

 

この路線ルートの興味深いところなのだが、甲浦駅、「海の駅東洋町」は、高知県の東洋町にある。ところが終点となる「道の駅宍喰温泉」は徳島県海陽町で、〝列車〟の起点の「阿南海南文化村」も徳島県海陽町だ。〝列車〟は一度、高知県東洋町へ入り、また海陽町に戻るルートとなっているのだ。

↑「道の駅宍喰温泉」へ到着したDMV車両。道の駅内には「ホテルリビエラししくい」(左後ろ)や温泉施設も設けられる

 

「道の駅宍喰温泉」は国道55号沿線で拠点となっている規模の大きな道の駅施設だ。道の駅には観光案内所、売店、海陽町の産品直売所のほか、ホテル、日帰り温泉施設が設けられている。同エリアの人気観光施設となっている。

↑「道の駅宍喰温泉」から国道55号へ入るDMV車両。道の駅は太平洋に面していて美しい海景色が楽しめる

 

次週の【後編】ではモードインターチェンジでの車両の動きや、乗車した時の模様、さらに土・日・祝日のみ運行される室戸市側の受け入れの模様などをお届けしたい。

どう違う? どれを買うべき? 自転車通勤向きe-Bikeの3モデルを比較してみた

新しいライフスタイルにおける日常の移動手段として、世界的に人気が高まっているe-Bike(スポーツタイプの電動アシスト自転車)。いわゆるママチャリタイプの電動アシスト自転車と比べて軽量なだけでなく、専用のドライブユニット(モーター)を搭載しており、バッテリーも大容量で長距離サイクリングにも対応できるのが特徴です。アシストがあるので坂道も楽に登れますし、距離のある通勤にも適しています。そんなe-Bikeの中から、通勤から週末のサイクリングまで対応する3モデルに試乗し、それぞれの特徴を比較してみました。

 

【今回比較した3モデルはコチラ】

その1

初めてe-Bikeにチャレンジする人におすすめ!

ベネリ

MANTUS(マンタス) 27 TRK

15万6000円(税込)

2021年11月初旬から発売がスタートした、イタリアブランド・ベネリの電動アシスト自転車「MANTUS 27 TRK」。サイズは全長1800×全幅580mm。27インチタイヤ、ディスクブレーキ、フロントサスペンションをはじめ、快適な乗り心地を実現する車体構成と、ベネリのe-Bikeならではの36V250Wモーター、10.4Ahの大容量バッテリーによるパワフルな走りを楽しめるクロスバイクです。

 

その2

五輪先導車の技術をフィードバック!

パナソニック

XU1

25万1000円(税込)

パナソニックの「XU1」は東京2020 夏季オリンピック、ケイリン先導車の開発で培ったデータをフィードバックし、フレームやフロントフォークのジオメトリーなどを見直したことで従来車種より低重心化を実現。これにより安定感のあるハンドリングを確保すると共に跨ぎやすさも高まり、走行フィーリングが向上したモデルです。サイズは全長1840×全幅590mm。

 

その3

ママチャリっぽく見えてクロスバイク並みに速い!

トレック

Verve+ 2 Lowstep

29万5900円(税込)

トレックはアメリカの総合自転車メーカー。その新作モデル「Verve+ 2 Lowstep」は、もっと外に出てバイクに乗る気にさせる電動クロスバイクです。BOSCH製ペダルアシストシステムが、日々のサイクリング、通勤、フィットネスをサポート。さらに安定性に優れたワイドなタイヤ、前後のライトなど、快適さと安全性を重視したパーツを搭載しています。好みに合わせて、クロスバイクタイプの「Verve+ 2」とスタイルを選べるのも魅力。

 

 

<比較ポイントはこちら>

【比較ポイントA】ドライブユニット

今回、紹介する3モデルはそれぞれクロスバイクタイプのe-Bikeですが(Verve+ 2 Lowstepのみフレームの低いタイプですが、同価格でクロスバイクタイプの「Verve+ 2」も選べます)、価格には結構開きがあります。この価格差は、基本的に採用されているパーツによるものです。特にe-Bikeの心臓部であるドライブユニット(モーター)は、3車3様。MANTUS 27 TRKはAKM製、XU1はパナソニックの自社製、Verve+ 2 LowstepはBOSCH製です。

 

【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」

↑ほかの2モデルが車体中央に搭載するセンタータイプなのに対して、リアホイールの軸と一体となったタイプを採用する

 

【その2】パナソニック「XU1」

↑唯一自社製のドライブユニットを搭載する。車体もユニットも製造しているパナソニックならでは

 

【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」

↑BOSCHの街乗り向けドライブユニットであるActive Line Plusを搭載する

 

【比較ポイントB】バッテリー

バッテリーもe-Bikeにとっては重要なパーツ。容量によってアシスト走行できる距離が変わるほか、車体への収め方によってデザインにも関わる部分です。MANTUS 27 TRKはフレーム内部に収納するインチューブタイプ、XU1はフレームに沿わせるように装着するセミインテグレーテッドタイプ、Verve+ 2 Lowstepは外付けタイプとなっています。

 

【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」

↑フレーム内にバッテリーが収まっているので、外観からはe-Bikeとわかりにくくなっている。容量は36V 10.4Ah(374Wh相当)で、航続距離は最大100km

 

【その2】パナソニック「XU1」

↑今回の3モデルのなかで中間的なフォルムとなっているXU1。容量は36V 8.0Ah(288Wh相当)で、航続距離は最大82kmです

 

【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」

↑外から見てもバッテリーの形状がよくわかる。容量は300Whで、アシスト可能な航続距離は最大100kmです

 

 

【比較ポイントC】ディスプレイ

ディスプレイも3車3様です。MANTUS 27 TRKは、LED表示のみのシンプルなタイプでコストを抑えています。XU1はハンドル中央部に装備されますが、サイズは小ぶりです。Verve+ 2 Lowstepは、大きめのディスプレイをハンドル中央部に搭載。

 

【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」

↑価格の安いMANTUS 27 TRは、ディスプレイがコントローラーと一体となったLEDのみのシンプルなもの

 

【その2】パナソニック「XU1」

↑小さめのディスプレイながら、走行速度や走行距離表示、アシストパワー表示など8項目を表示できる

 

【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」

↑BOSCH製のIntuvia(イントゥービア)と呼ばれるタイプの大きなディスプレイを装備する

 

 

【チェックポイントD】ホイール径

ホイール径や変速ギア、ブレーキなども、自転車としての走行性能に関わるパーツ。この部分も車種ごとにチェックしておきましょう。XU1とVerve+ 2 Lowstepのホイール径は、700Cと呼ばれるロードバイクなどに装備されるものと同じ規格。タイヤはそれぞれ太めのものが装着されています。MANTUS 27 TRKは27インチという一般の自転車に採用されるもの。タイヤ外径にはそれほど違いはありませんが、タイヤやチューブを交換する際には27インチのほうが安く済む傾向にありますが、あまりスポーツ向けのタイヤが選べないというデメリットもあります。

 

【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」

↑27×1-3/8というタイヤサイズを採用する。フロントに唯一サスペンションを装備しています

 

【その2】パナソニック「XU1」

↑700×50Cというかなり太いタイヤを履く

 

【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」

↑700×45Cという太めのタイヤを装着する。3モデルともフェンダーを装備

 

 

【チェックポイントE】変速ギア/ブレーキ

変速ギアは3モデルともリアのみで、フロントには装備していません。これは近年のe-Bikeに共通する傾向。変速パーツは3モデルともシマノ製ですが、グレードや変速段数はそれぞれ異なります。一方、ブレーキは3モデルとも制動力が高いディスクを採用していますがMANTUS 27 TRKは機械式で、それ以外の2モデルは油圧式という違いがあります。一般的に、油圧式ディスクブレーキは少ない力でブレーキを効かせることができるメリットがあり、一方の機械式デュスクブレーキは車両価格が抑えられるメリットがあります。

 

【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」

↑7速のTOUNEY(ターニー)グレードを採用する

 

【その2】パナソニック「XU1」

↑9速のシマノAlivioグレードを装備しています

 

【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」

↑シマノのAlivio(アリビオ)グレードで9速

 

【チェックポイントF】走行フィーリング

実際に乗ってみても、各車の特徴が感じられます。e-Bikeは法規によってアシストできる力は人がペダルを踏んだ力の2倍まで、時速10kmから徐々にアシストが弱まり、時速24kmでゼロになります。そこまで規定されていると大きな差はなさそうですが、走行フィーリングには結構違いがあります。

 

一般の電動アシスト自転車に比べると、e-Bike向けのドライブユニットは出だしからパワーの出方がスムーズという特性がありますが、なかでもパナソニックとBOSCHのユニットは低速からパワフルな乗り味。パナソニックのほうがやや出足が鋭く、BOSCHのほうが回転を上げていったときにスムーズな印象です。MANTUS 27 TRKに搭載されるAKM製ユニットは、パワフルさでは前の2モデルに一歩譲りますが、e-Bikeらしいスムーズなアシストが味わえます。

 

ブレーキの違いについては触れましたが、機械式と油圧式の差異だけでなくレバー形状による違いも感じました。唯一、機械式を装備するMANTUS 27 TRKはレバーも4本の指で操作するタイプで、一般の自転車から乗り換えた人にも操作しやすそう。逆にスポーツタイプに乗り慣れた人は2本の指で操作するタイプのほうが握りやすいと感じるでしょう。

 

【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」

↑車重22.0kg(バッテリー含む)と3モデルの中で最も軽いだけあり、走行フィーリングはかなり軽快

 

↑機械式ディスクブレーキのMANTUS 27 TRKは、レバー形状が4本の指で握るタイプ

 

【その2】パナソニック「XU1」

↑24.5kgと3モデルの中で車重が一番重いXU1ですが、アシストが出足からパワフルなので、重さを感じることはありませんでした

 

↑グリップは手のひらを受け止めるエルゴノミック形状。ブレーキレバーは2本の指で操作するタイプ

 

【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」

↑車重23.58kg(Mサイズ)の「Verve+ 2 Lowstep」はクロスバイクタイプがルーツだけに見た目よりもかなり速い

 

↑ほかの2モデルとは違い、本モデルは油圧式ディスクブレーキなので、2本の指でレバーを握っても十分な制動力を発揮します

 

 

【今回のまとめ】

3モデルを乗り比べてみましたが、最も価格が安いMANTUS 27 TRKは随所に一般自転車のパーツを採用し、コストを抑えながら初めてスポーツタイプの自転車に乗る人にも乗りやすく仕上がっています。これからe-Bikeに乗り始めようという人におすすめできます。

 

XU1は五輪ケイリン競技の先導車からフィードバックされたフレーム設計を採用しているだけあり、スピードを出した際の安定感は抜群。通勤などの日常使いから、休日の長距離ツーリングなどにも対応できます。乗っていると遠くに出掛けたくなる乗り味です。

 

Verve+ 2 Lowstepはローステップのフレーム形状ですが、BOSCHユニットを採用していることもあって、クロスバイクタイプと遜色ない走行性能。ハンドルやサドルの調整幅も大きく、幅広い体格に対応するので、夫婦で共用する使い方にも対応できそう。

 

e-Bikeは行動範囲を飛躍的に広げてくれる乗り物ですが、価格は決して安くないので、使い方や好みに合わせて適した車種を選びたいところ。この記事が参考になれば幸いですが、まだ乗ったことがない人は、一度試乗してみることをおすすめします。乗ってみれば、その車種が1つの基準になりますし、確実に新たな世界が開けるはずです。

 

撮影/松川 忍

 

 

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